説明

クメンヒドロペルオキシドからビスフェノールAを製造する連続法

【課題】 CHPをBPAに転化するプロセスの第1及び第2工程に特定の組合せの触媒を使用して、中間の精製工程の必要をなくして、BPAの収率を上げ、不純物の収率を下げる。
【解決手段】 第1工程で、硫酸化ジルコニアのような硫酸化金属酸化物触媒の存在下でCHPを開裂してフェノール及びアセトンを生成する。第2工程で、得られたフェノール及びアセトンを、好ましくは中間精製なしに、カチオン交換樹脂及びメルカプタン又はメルカプトアルカン酸促進剤を含有するカチオン交換樹脂触媒の存在下で反応させて、BPAを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クメンヒドロペルオキシド(CHP)からビスフェノールA(BPA)を製造する連続法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールAは、ポリカーボネート樹脂の製造に用いる重要な反応物質である。既知のBPA製造方法では、CHPを触媒で分解してフェノールとアセトンにし、その後フェノールとアセトンを酸性触媒の存在下で反応させてBPAを形成する。これらの2つの工程それぞれで用いる種々の触媒が知られている。
【0003】
CHPを硫酸のような均一系触媒で開裂することが広範に実施されている。種々の固体酸触媒でのCHPの不均一な開裂も報告されている。例えば、米国特許第5824622号は、触媒としてペルフルオロ化イオン交換ポリマー及び金属酸化物の多孔質マイクロ複合材、シリカのネットワーク及び金属酸化物及びシリカのネットワークを開示し、これらを、例えば脂肪族もしくは芳香族炭化水素のアルキル化、CHPのような有機ヒドロペルオキシドの分解、有機化合物のスルホン化もしくはニトロ化、ヒドロキシル化合物のオキシアルキル化に触媒として使用できることを示唆している。国際公開第03/002499号は、同様の触媒に言及し、触媒の粒径を小さくする(したがって触媒の表面積を増加する)とCHPの分解の反応速度が高くなるという当たり前の結果を実証し、同じ触媒をCHP分解及びBPA合成両方に使用できることを示唆している。CHPの開裂に用いることができる他の触媒には、米国特許第4490565号に開示された、ゼオライトβなどの固体酸触媒;米国特許第4490566号に開示された、ZSM−5などの拘束係数(constraint index)1〜12のゼオライト;欧州特許出願公開第492807に開示されたホージャサイト;米国特許第4870217号に開示されたスメクタイトクレイ;米国特許第4898995号に開示された、スルホン酸官能性を有するイオン交換樹脂又はシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの不活性担体に担持された十二タングストリン酸などのヘテロポリ酸がある。本発明に用いるのに適当な他の固体酸触媒として、米国特許第6169216号に記載されているような、鉄の酸化物又は鉄及びマンガンの酸化物と組み合わせた硫酸化ジルコニアなどの硫酸化遷移金属酸化物を含有する触媒、並びに米国特許第6297406号に記載されているセリウム及びIVB族金属(例えばジルコニウム)の混成酸化物を含有する触媒がある。他の既知の固体酸触媒は、米国特許第6169215号に開示されているように、酸化物種を400℃以上の温度でか焼することにより、VIB族金属のオキシアニオン又は酸化物で変性したIVB族金属の酸化物を含有する。IVB族金属酸化物をVIB族金属のオキシアニオンで変性することにより材料に酸官能性を付与する。IVB族金属酸化物、特にジルコニアをVIB族金属オキシアニオン、特にタングステン酸で変性することは、米国特許第5113034号及びK. Arata and M. Hino in Proceedings of 9th International Congress on Catalysis, Volume 4, pages 1727−1735 (1988)の論文に記載されている。使用するマクロレティキュラー(巨大網状)酸イオン交換樹脂は、スルホン酸基の存在で代表され、例えばスルホン酸化スチレン−ジビニルベンゼン共重合体交換樹脂、具体的にはAmberlyst−15、Amberlyst XN−1005、Amberlyst XN−1010、Amberlyst XN−1011、Amberlyst XN−1008及びAmberlyst200として市販されている樹脂がある。
【0004】
フェノール及びアセトンからのBPAの形成を促進するために、カチオン交換樹脂触媒を用いることを多数の文献が開示している。例えば、米国特許第5315042号は、この目的にスルホン化ポリスチレンやスルホン化ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)樹脂などのイオン交換樹脂触媒を開示している。反応速度を上げるためにメルカプタン及びグリコール酸などの二価の硫黄化合物を用いることも示唆されている。スルホン酸基の一部がメルカプタン官能価に転化されたスルホン化ポリスチレン−ジビニルベンゼンイオン交換樹脂が、未変性の樹脂より触媒として良好であることが認められている(米国特許第3172916号及び米国特許第3394089号)。メルカプトアミンで被覆されたゼオライトを120〜180℃で使用することが報告されている(特公昭49−20565)。Singh(Catal.Lett.,27(1992)431)は、H−ZSM−5、Hモルデナイト、H−Y及びRE−Yのようなゼオライト触媒でのBPAの合成をAmberlyst−15と比較して詳述しており、イオン交換樹脂がゼオライトより活性であるにもかかわらず、より大きな開口を有するゼオライトがこのプロセスにより選択的であることを示した。しかし、一般的な傾向としては、変性したイオン交換樹脂がビスフェノールAの収率がよいため世界中で使用されている触媒である。BPAの合成のため、フリーデル・クラフツ触媒を用いてハロゲン化プロペニルをフェノールでアルキル化することが報告されている(フランスデマンデ2646418、1990)。上記プロセスで60%程度の転化率が得られる。いくつかの論文に、ビスフェノールAの合成に市販の酸処理クレイを使用することが述べられている(Preparative Chemistry using Supported Reagents, Academic Press, San Diego, CA., 1987, Solid Supports and Catalysts in Organic Synthesis, Ellis Horwood, Chechester, U.K., 1992)。Scriabineらは米国特許第2923744号で、硫酸を用いてビスフェノールAを生成し、ベース装填量の0.1〜5重量%のレベルのメルカプトアルカンスルホン酸又は塩又は対応するスルホン酸エステルで生成を促進し、総装填量の0.1〜5重量%の量で使用するときアセトン及びフェノール化合物の縮合への触媒作用を得ている。硫酸をアセトン1モル当たり2モル程度の量使用する。反応はハロゲン化炭化水素溶剤中で行うことができる。Bottenbruchらは米国特許第4996373号で、カルボニル化合物及びフェノール化合物から高圧下でかつスルホン酸樹脂を含む種々の触媒の存在下で、ジヒドロキシアリール化合物を製造するプロセスを提案した。チオール官能性を有する触媒、例えばメルカプト化合物で処理したイオン交換樹脂がこの用途に開示されている。Meyerらは米国特許第4387251号で、芳香族スルホン酸を縮合剤として使用して4,4’−ジヒドロキシジフェニルアルカンを製造するプロセスを提案した。Jansenは米国特許第2468982号で、縮合剤として無水塩化水素とメルカプトアルカン酸(メルカプトールとケトンとの反応によりその場で形成することができる)とを併用して、ビスフェノール類を製造することを提案した。Knebelらは米国特許第4931594号で、未結合3−メルカプトプロピオン酸と混合したスルホン酸樹脂を多量に使用して、縮合を起こさせることを開示した。英国特許第1185223号で、ビスフェノール類を製造するのに、複数の不溶性樹脂、即ち一つはスルホン酸樹脂、もう一つはメルカプト基含有樹脂の混合物を使用することが提案された。Randolphらは米国特許第5212206号で、スルホン化イオン交換樹脂をジアルキルアミノメルカプタンで処理することにより製造した触媒を開示している。スルホン酸イオン交換樹脂の変性に関する刊行物を代表する他の文献としては、Wagnerの米国特許第3172916号、McNuttらの米国特許第3394089号、Falerらの米国特許第4455409号、第4294995号及び第4396728号、Heydenrichらの米国特許第4369293号、Bergらの米国特許第5302774号及び真木らの米国特許第4423252号がある。反応性触媒は通常、スルホン酸基に結合したメルカプト官能価をスルホンアミド又はアンモニウムスルホネート塩の形態で含む。
【特許文献1】米国特許第5824622号明細書
【特許文献2】国際公開第03/002499号明細書
【特許文献3】米国特許第4490565号明細書
【特許文献4】米国特許第4490566号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第492807号明細書
【特許文献6】米国特許第4870217号明細書
【特許文献7】米国特許第4898995号明細書
【特許文献8】米国特許第6169216号明細書
【特許文献9】米国特許第6297406号明細書
【特許文献10】米国特許第6169215号明細書
【特許文献11】米国特許第5113034号明細書
【特許文献12】米国特許第5315042号明細書
【特許文献13】米国特許第3172916号明細書
【特許文献14】米国特許第3394089号明細書
【特許文献15】特公昭49−20565公報
【特許文献16】フランス特許出願公開第2646418号明細書
【特許文献17】米国特許第2923744号明細書
【特許文献18】米国特許第4996373号明細書
【特許文献19】米国特許第4387251号明細書
【特許文献20】米国特許第2468982号明細書
【特許文献21】米国特許第4931594号明細書
【特許文献22】英国特許第1185223号明細書
【特許文献23】米国特許第5212206号明細書
【特許文献24】米国特許第3172916号明細書
【特許文献25】米国特許第3394089号明細書
【特許文献26】米国特許第4455409号明細書
【特許文献27】米国特許第4294995号明細書
【特許文献28】米国特許第4396728号明細書
【特許文献29】米国特許第4369293号明細書
【特許文献30】米国特許第5302774号明細書
【特許文献31】米国特許第4423252号明細書
【特許文献32】米国特許第4898987号明細書
【特許文献33】欧州特許出願公開第0367408号明細書
【非特許文献1】K. Arata and M. Hino in Proceedings of 9th International Congress on Catalysis, Volume 4, pages 1727−1735 (1988)
【非特許文献2】Singh, Catal. Lett., 27 (1992) 431
【非特許文献3】Preparative Chemistry using Supported Reagents, Academic Press, San Diego, CA., 1987,
【非特許文献4】Solid Supports and Catalysts in Organic Synthesis, Ellis Horwood, Chechester, U.K., 1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、中間の精製工程の必要をなくして、BPAの収率を上げ、不純物の収率を下げることのできる、CHPをBPAに転化するプロセスの第1及び第2工程に用いる特定の組合せの触媒を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の方法によれば、
(a)固体の硫酸化金属酸化物触媒の存在下でCHPを開裂してフェノール及びアセトンを生成し、
(b)工程(a)で生成したフェノール及びアセトンを、好ましくは中間精製なしに、カチオン交換樹脂触媒の存在下で反応させて、BPAを生成する
工程を含む方法により、CHPからBPAを製造する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本明細書及び特許請求の範囲において、数値は整数値で表示している。これは、整数値と同じ数の有効数字で表示した場合に、その整数値に等しい値を包含する。
【0008】
本発明は、CHPから出発してBPAを製造する方法を提供する。従来の方法と異なり、本発明の方法に使用する触媒の組合せは、時間と経費のかかる中間精製工程を必要とすることなく、CHP開裂物から直接BPAを合成することを可能にする。その上、生成物中のp,p−ビスフェノール(p−p)対o,p−ビスフェノール(o−p)の比が目的とするp−p生成物に大きく片寄り、90%を超える選択率である。
【0009】
本発明の方法の第1工程は、硫酸化ジルコニアのような固体の硫酸化金属酸化物酸触媒の存在下でCHPを開裂してフェノール及びアセトンを含有する開裂物を生成する工程である。この開裂物はヒドロキシアセトンを実質的に含まない。硫酸化金属酸化物触媒は、金属水酸化物又は金属酸化物、具体的には周期律表のIV族に属する金属、例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウム、ゲルマニウム、錫、鉛及びアルミニウムから形成される群から選ばれる金属又は鉄の水酸化物又は酸化物が、硫酸イオン源、例えば硫酸又は(好ましくは)硫酸アンモニウムで硫酸化されたものである。このようにして得られる固体酸触媒は、酸強度がハメットの酸度関数で表してHo<−12であり、硫黄含量が0.5〜10重量%である。したがって、本発明に使用する固体酸触媒は、酸強度がハメットの酸度関数で表してHo<−12であり、硫黄含量が0.5〜10重量%、特に0.5〜5重量%であるのが望ましい。硫酸化金属酸化物触媒は、硫酸イオンの存在下で金属水酸化物をか焼することにより製造できる。(Hino and Arata, JCS Chemical Communications, p. 1148, 1979; Kumbhar et al. in ”Chemically Modified Oxide Surfaces”, Ed. D.E. Leyden, Gordon and Breech, p.81, 1989)
クメンの酸化により得られるCHP(工業用CHP)は通常、80%程度のCHPを含有し、残部がジメチルベンジルアルコール(DMBA)、α−メチルスチレン(AMS)、クメン及びアセトフェノンである。この材料又は同等もしくはそれより高い純度のCHP組成物を、CHPの量に対して10〜100重量%のアセトンとともに、固体酸触媒、例えば硫酸化ジルコニアもしくは他の金属酸化物を入れた反応器に導入する。反応器は、バッチ、半連続又は連続反応器いずれでもよい。適当な触媒装填レベルは、供給材料の総重量に基づいて2〜8重量%、代表的には5%である。温度は45〜85℃の範囲に維持し、好ましくは55〜65℃の範囲に維持する。反応は、CHPをフェノール及びアセトンに実質的に転化するのに十分な時間期間進行させる。当業者に明らかなように、特定の時間期間は反応器の容積及び触媒表面積、温度及び他の装置特有のパラメータに依存する。同様に、連続プロセスにおいて、反応時間は反応器容積及び流量によって決まることが明らかである。本明細書において、用語「実質的に転化する」は、CHPのフェノール及びアセトンへの転化率が90%以上、好ましくは95%以上であることを意味する。
【0010】
本発明の方法の第2工程は、CHPの開裂から得られるフェノール及びアセトンを、カチオン交換樹脂触媒の存在下で反応させて、ビスフェノールAを生成する工程である。カチオン交換樹脂触媒は、カチオン交換樹脂及びバルク促進剤としてメルカプタン速度促進剤又はメルカプトアルカン酸を含有する。
【0011】
適当なカチオン交換樹脂には、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼン共重合体交換樹脂、例えばAmberlyst−15、Amberlyst XN−1005、Amberlyst XN−1010、Amberlyst XN−1011、Amberlyst XN−1008及びAmberlyst200として市販されている樹脂があるが、これらに限らない。カチオン交換樹脂が架橋されている、例えば1〜25%架橋されているのが好ましい。以下の実施例で用いる特定のカチオン交換樹脂はミクロレティキュラーゲル型樹脂AmberlystXE−760(以下XE−760)(Rohm&Haas社製)である。
【0012】
カチオン交換樹脂触媒のメルカプタン部分は、本出願人に譲渡された米国特許第6534686号(ここに先行技術として援用する)に記載されているような、ピリジルエチルメルカプタン(PEM)又は他のメルカプタン促進剤であるのが適当である。メルカプタンは触媒上に20〜70重量%、好ましくは35〜60重量%、より好ましくは40〜55重量%の装填量で添加される。
【0013】
第2工程では、開裂物の組成を適切に、アセトンとフェノールとが1:35〜1:10、より好ましくは1:20〜1:10、もっとも好ましくは1:13のモル比で存在するように調節するのが適当である。開裂物を、カチオン交換樹脂触媒を入れた第2反応器に導入する。反応器はバッチ、半連続又は連続反応器いずれでもよい。第2反応器を温度40〜100℃、より好ましくは60〜85℃、もっとも好ましくは75℃に、開裂物中の限定的反応物質であるアセトンをビスフェノールAに実質的に転化するのに十分な期間維持するのが適当である。当業者に明らかなように、特定の時間期間は反応器の容積及び触媒表面積、温度及び他の装置特有のパラメータに依存する。本明細書において、用語「実質的に転化する」は、アセトンのBPAへの転化率が90%以上、好ましくは95%以上であることを意味する。本プロセスの第2工程における触媒装填量は、適切には全供給材料の1〜10重量%、好ましくは3〜7重量%、もっとも好ましくは約5重量%である。
【0014】
本発明の方法は、本発明に準じるプラント又は設備で適切に実施することができる。図1及び図2に、このような設備の2つのいずれも適当な実施態様を線図的に示す。図1及び図2に示すように、CHP及びアセトンを入れた容器10がライン11で反応器12に連結されている。反応器12は、硫酸化ジルコニアのような固体酸触媒を含有する触媒床13を収容する。反応器12からの生成物をライン14に回収し、アセトン:フェノールのモル比を所望レベルに調節するシステムに通す。図1ではこの調節システムは追加のフェノールを供給する補充ライン15である。図2ではこの調節システムはフラッシュ蒸留カラム25であり、反応器12で生成した開裂物からアセトンを除去して所望のアセトン:フェノールモル比を達成する。アセトン:フェノールモル比の調節システムを通過した後、開裂物をライン16を通ってカチオン交換樹脂触媒18を入れた第2反応器17に移送する。粗BPA生成物を第2反応器17からライン19に回収し、その後所望に応じて精製してもよい。
【0015】
図3は、粗BPAをさらに精製するのに適当な分離セクションを示す。図示のように、粗BPA流れ30を順次蒸留カラム31、32、33及び34に通す。第1カラム31で、高揮発性不純物、例えばメシチルオキサイド、アルデヒド類、アセトンなどを除去する。第2カラム32で、フェノール及びクメンを回収し、所望に応じて再循環することができる。第3カラム33で、粗p−クミルフェノール(PCP)、α−メチルスチレンの二量体を除去する。最後のカラム34で蒸留される留分がBPAである。蒸留されたBPAを溶融結晶化装置35に送り、そこから純粋なBPAをライン36に回収する。
【実施例】
【0016】
本発明を以下に実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0017】
実施例1
空気流中で600℃で3時間か焼した市販の硫酸化ジルコニア(MEL Chemicals社製X20 999/01:S019270、Engelhard社製ZrO530E1/16)を触媒として使用した。
【0018】
25.3gの工業用80%CHP(分析値81%CHP、8.7%DMBA、1.36%α−メチルスチレン、0.7%アセトフェノン及び7.2%クメン)を16.33mLのアセトン及び1.658gの硫酸化ジルコニアの混合物に55℃でゆっくり添加した。添加を反応温度が65℃以下に維持されるように制御した。CHPの添加終了後、混合物を55℃でさらに半時間撹拌し、ガスクロマトグラフィ(GC)を用いて反応の終了について分析した。フェノールをCHPに基づいて98%の収率で得た。
【0019】
5gの反応混合物を、55.188gのフェノール(混合物のアセトン対フェノールモル比を1:13に調節する)と3gの40%PEM担持XE−760カチオン交換樹脂との混合物に75℃で添加した。反応混合物をこの温度に12時間維持し、GCで分析した。p,p−BPAの収率はCHPに基づいて94%で、p−p対o−p比が97%であった。
【0020】
実施例2
CHP(分析値81重量%CHP、8.7%DMBA、1.36%AMS、0.7%アセトフェノン及び7.2%クメン)とアセトンとの混合物(CHP:アセトン体積比1.5:1)を触媒床より上に位置する入口から、温度約50〜90℃、圧力0〜10psig、WHSV0.1〜2hr−1のCHP分解条件下で導入して、フェノール及びアセトンを含む生成物を得た。触媒床は、硫酸化ジルコニア触媒の充填床である。触媒は、代表的には粒径範囲400〜600μmの粒子の形態で、触媒床は液体が触媒床を流れ落ちるのに十分な気孔率をもつ。フェノールを24時間以上の操業中にCHPに基づいて95%超えの収率で得た。
【0021】
5gの上記反応混合物を55.188gのフェノール(混合物のアセトン対フェノールモル比を1:13に調節する)と3gの40%PEM担持XE−760カチオン交換樹脂との混合物に75℃で添加した。反応混合物をこの温度に12時間維持し、GCで分析した。p,p−BPAの収率はCHPに基づいて92.1%で、p−p対o−p比が96%であった。
【0022】
実施例3
実施例1の方法を同じ操作条件で繰り返したが、本例では、BPA合成用の触媒として3gのXE−760とともに0.602gの3−メルカプトプロピオン酸(3−mpa)をバルク促進剤として使用した。得られたp,p−BPAのモル収率は(CHPに基づいて)89.2%で、BPAのp−p対o−p比が95%であった。
【0023】
比較例1
CHP開裂触媒として硫酸化ジルコニアの代わりに2gのXE−760(Rohm&Haas)を使用し、BPA合成の第2工程で触媒として40%PEM担持XE−760の代わりに3gのXE−760を使用した以外は、実施例1の実験を行った。得られたp,p−BPAのモル収率は(CHPに基づいて)50.9%で、p−p対o−p比が88.97%であった。
【0024】
比較例2
CHP開裂触媒として硫酸化ジルコニアの代わりに300ppmの硫酸を使用した以外は、実施例1の実験を行った。選択率は同等であったが、p,p−BPAの収率はCHPに基づいて18.45%にすぎなかった。
比較例3
実施例1の方法を同じ操作条件で繰り返したが、本例では、CHP開裂に使用する触媒を2.0gのAmberlystXE−760(Rohm&Haas)とした。フェノール収率は95%であったが、得られたp,p−BPAのモル収率は(CHPに基づいて)85.4%で、BPAのp−p対o−p比が97.3%であった。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にしたがってBPAを製造する設備の第1実施態様を示す線図である。
【図2】本発明にしたがってBPAを製造する設備の第2実施態様を示す線図である。
【図3】本発明の方法で製造したBPAを精製する分離セクションを示す線図である。
【符号の説明】
【0026】
10 CHP貯蔵容器
12 反応器
13 固体酸触媒の触媒床
17 第2反応器
18 カチオン交換樹脂触媒
30 粗BPA流
31,32,33,34 蒸留カラム
35 溶融結晶化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールAの製造方法であって、
(a)硫酸化金属酸化物酸触媒の存在下でクメンヒドロペルオキシドを開裂してクメンヒドロペルオキシドをフェノール及びアセトンを含有する開裂物に実質的に転化し、
(b)開裂物を、好ましくは中間精製なしに、カチオン交換樹脂及びメルカプタン又はメルカプトアルカン酸促進剤を含有するカチオン交換樹脂触媒の存在下で反応させて、開裂物中のフェノール及びアセトンをビスフェノールAに実質的に転化する
工程を含む方法。
【請求項2】
工程(a)で生成した開裂物を中間精製なしに工程(b)で反応させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
クメンヒドロペルオキシドを開裂する工程を温度55〜65℃で行う、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
さらに、工程(a)で生成した開裂物にフェノールを添加するか或いは該開裂物からアセトンを除去して、アセトン:フェノールのモル比を1:20〜1:10とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
アセトン:フェノールのモル比を1:13とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
工程(b)を温度40〜100℃で行う、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
カチオン交換樹脂触媒が促進剤としてピリジルエチルメルカプタンを含有する、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ピリジルエチルメルカプタンがカチオン交換樹脂に20〜70重量%の量添加されている、請求項7記載の方法。
【請求項9】
ピリジルエチルメルカプタンがカチオン交換樹脂に40重量%の量添加されている、請求項8記載の方法。
【請求項10】
触媒が硫酸化ジルコニアである、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−526627(P2006−526627A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510029(P2006−510029)
【出願日】平成16年4月14日(2004.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/011504
【国際公開番号】WO2004/108641
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】