クライミングクレーン
【課題】クレーン本体を組み立てる作業を容易にでき、且つ建造物の建造時には本体支持架台と上部架台によってクレーン本体を構造物に支持できるようにする。
【解決手段】マスト1の下端に固定した本体支持架台と、本体支持架台の上側においてマスト1に沿って盛り換えが可能な上部架台と、上部架台の上側においてマスト1に沿って盛り換えが可能なガイドマスト8と、上部架台とガイドマスト8との間を連結する昇降シリンダと、ガイドマスト8の上側において旋回環受けフレーム15を介してマスト1に沿って昇降が可能なクレーンとを備えたクライミングクレーンであって、ガイドマスト8の上端に、旋回環受けフレーム15に対して固定・切り離しが可能なガイドマスト取付金具17を備え、且つ旋回環受けフレーム15に、マスト1の上端に対して固定・切離しが可能な連結アーム19を備える。
【解決手段】マスト1の下端に固定した本体支持架台と、本体支持架台の上側においてマスト1に沿って盛り換えが可能な上部架台と、上部架台の上側においてマスト1に沿って盛り換えが可能なガイドマスト8と、上部架台とガイドマスト8との間を連結する昇降シリンダと、ガイドマスト8の上側において旋回環受けフレーム15を介してマスト1に沿って昇降が可能なクレーンとを備えたクライミングクレーンであって、ガイドマスト8の上端に、旋回環受けフレーム15に対して固定・切り離しが可能なガイドマスト取付金具17を備え、且つ旋回環受けフレーム15に、マスト1の上端に対して固定・切離しが可能な連結アーム19を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライミングクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
低層のビル等の建造物を建設する場合は、地上にマストを支持するための架台を固定したクレーン本体が用いられるが、高層の建造物を建造する場合には、建造の進行に合わせてクレーン本体を建造物の上層階に順次盛り換えるようにしたクライミングクレーンが使用される。
【0003】
図10は従来の鉄骨構造の高層建築の建設に用いられているクライミングクレーンの一例を示すもので、このクライミングクレーンは、マスト1の頂部にはクレーン2が備えられ、マスト1の下端には本体支持架台3を固定したクレーン本体4を有している。更に、前記本体支持架台3の上部におけるマスト1の外周には、ロックピン5の抜き差しによりマスト1への固定・切離しを行ってマスト1に対する盛り換えが可能な上部架台6を設けており、更に、該上部架台6の上部にはロックピン7の抜き差しによりマスト1への固定・切離しを行ってマスト1に対する盛り換えが可能なガイドマスト8を設けており、前記上部架台6とガイドマスト8は昇降シリンダ9により連結している。
【0004】
尚、前記クレーン2は、図示しない旋回環により旋回環受けフレーム15に対して旋回可能に支持されており、旋回環受けフレーム15はマスト1に対して上下に移動可能に支持されており、該旋回環受けフレーム15の下面が前記ガイドマスト8の上端に固定されている。
【0005】
前記本体支持架台3と上部架台6の夫々には、水平な十字方向(前後左右)、或いは前後左右の一方向に伸縮する伸縮ビーム12,14(図10、図12)が備えてあり、該伸縮ビーム12,14は、柱10bと梁10a(横材)で構成される建造物10の梁10a上に伸長してアンカーボルト11,13により梁10aに固定できるようになっており、これによりクレーン本体4を建造物10に固定するようにしている。
【0006】
前記クライミングクレーンにより、図10、図11に示している建造物10に対して上層への建造を行い、図12の如く上層の建造が終了すると、クレーン本体4を建造物10の上部へ盛り換える作業を行う。
【0007】
クレーン本体4を上方へ盛り換えるには、クレーン2に吊り荷が無い無負荷(図11)の状態において、先ず上部架台6の伸縮ビーム14を図12のように伸長し、ガイドマスト8のロックピン7(図10参照)がマスト1に差込まれた状態で、上部架台6のロックピン5をマスト1から引き抜き、昇降シリンダ9を伸長して上部架台6を下降させることにより前記伸長した伸縮ビーム14を建造物10の梁10a上に載置し、更に上部架台6のロックピン5をマスト1に挿入して上部架台6をマスト1に固定し、伸縮ビーム14をアンカーボルト13により梁10aに固定する。これにより、クレーン本体4は図12に示すように本体支持架台3と上部架台6の両方で建造物10に支持された状態になる。
【0008】
次に、本体支持架台3の伸縮ビーム12を梁10aに固定しているアンカーボルト11(図10参照)の固定を解除して伸縮ビーム12を縮小する。続いて、上部架台6のロックピン5をマスト1から引き抜いて昇降シリンダ9を伸長すると、クレーン本体4が上昇するので、上昇した位置で上部架台6のロックピン5をマスト1に差込んで固定し、続いて、ガイドマスト8のロックピン7をマスト1から引き抜き、昇降シリンダ9を縮小してガイドマスト8を下降させてロックピン7をマスト1に挿入することによりガイドマスト8をマスト1に固定する(図13の状態)。この操作によりクレーン本体4が所定ストローク分だけ上昇する。再び、上記と同様にしてクレーン本体4を所定ストローク分上昇させる操作を繰返すことにより、前記本体支持架台3の伸縮ビーム12が今まで支持されていた梁10aより上層の梁10aの上側位置になるまでマスト1を上昇させた後、図14に示す如く、本体支持架台3の伸縮ビーム12を梁10a上に伸長し、伸縮ビーム12をアンカーボルト11により梁10aに固定する。
【0009】
次に、上部架台6の伸縮ビーム14を梁10aに固定しているアンカーボルト13の固定を解除し、伸縮ビーム14を縮小した後、ガイドマスト8のロックピン7をマスト1から引き抜き、昇降シリンダ9を伸長させてガイドマスト8とクレーン2を上昇させ、ガイドマスト8のロックピン7をマスト1に挿入して固定する。続いて、上部架台6のロックピン5をマスト1から引き抜き、昇降シリンダ9を縮小させて上部架台6を上昇させ、上昇した位置でロックピン5をマスト1に挿入して上部架台6をマスト1に固定する。これによりクレーン2は所定ストローク分だけ上昇する。再び、上記と同様にしてクレーン2を所定ストローク分上昇させる操作を繰返すことにより、旋回環受けフレーム15がマスト1の上端になった位置(図11)で上部架台6のロックピン5をマスト1に挿入して固定すると共に、ガイドマスト8のロックピン7をマスト1に挿入して固定する。これにより、クレーン2はガイドマスト8に固定された旋回環受けフレーム15を介してマスト1の上端に固定される。こうしてクレーン本体4の盛り換えが終了する。
【0010】
上記したクライミングクレーンでは、前記ガイドマスト8の上端が旋回環受けフレーム15の下面に一体に固定された構成を有しているため、クレーン本体4の盛り換え作業を行う際は、その都度、クレーン2と一体になっているガイドマスト8と上部架台6とを下降させて上部架台6を建造物10の梁10a上に支持させる必要がある。このため、クレーン本体4の盛り換え作業が大変面倒となり、且つその作業に時間が掛るという問題がある。
【0011】
又、上部架台6の上側には常時クレーン2が位置しており、クレーン2は建造物10の内部には入り込むことができないため、上部架台6は常に建造物10の最上部の梁10aに支持させる必要がある。このため、例えばコンクリートで建造される建造物10の場合には、最上部の梁10aのコンクリートが固化して強度が得られるまでは上部架台6を支持することができず、このために最上部の梁10aの強度が得られるまでの待ち時間が長くなって工期が延長されるという問題がある。
【0012】
一方、クレーン2によって吊り荷の吊上げ下げを行う作業時には、図10、図11に示すようにクレーン本体4を本体支持架台3のみで支持している。このため、クレーン本体4に作用する重力WとモーメントMは、本体支持架台3を支持している梁10aに集中して作用することになり、従って梁10aが曲ることが考えられるため梁10aを補強するための補強部材を取り付けることも行っているが、この補強部材の取り付け・取り外しにも時間が掛るという問題がある。
【0013】
又、クライミングクレーンとしては特許文献1に示したものがある。このクライミングクレーンでは、マストの頂部にクレーンを固定し、且つマストの下端に本体支持架台を固定したクレーン本体を備えており、前記本体支持架台は、十字状ビームと、このビームの各先端に着脱可能に備えた延長ビームとによって建造物の梁上に支持するようにしている。又、前記マストには夫々ロッドを着脱して盛り換えできるようにした上部架台と昇降装置が備えてあり、且つ上部架台と昇降装置との間は昇降シリンダで連結されている。そして、上部架台には、水平方向外側に張出して建造物の梁の上面或いは内面、又は柱の内面に支持するようにした延長ビームを備えている。
【特許文献1】特開2000−203788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上記特許文献1に示されたクライミングクレーンは、マストの上端にクレーンが予め固定された構成を有するものであり、従ってこのクライミングクレーンでは、上部架台がマストに対して昇降できるため、クレーン作業時には本体支持架台と上部架台の両方でクレーン本体を建造物に支持することができる。
【0015】
しかし、上記したように、マストの上端にクレーンを予め固定した構成のクライミングクレーンでは、クレーン本体の初期の組立時に、マストの下端に追加のマストを継ぎ足してクレーン本体をせり上げて行く必要があるため、本体支持架台の下部に追加のマスト搬入のための空間が必要である。そのため、例えば本体支持架台を2階に設置して1階をマスト搬入のための空間とし、上部架台を3階に設置するようにした場合には、別のクレーンによって最低3階分の建造物を予め建造した後でないと、前記クレーン本体を組立てることができないという問題がある。
【0016】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、クレーン本体を組み立てる際に別のクレーンによって建造する建造物の高さを低くでき、クレーン本体を組み立てた後はマストの上端にクレーンを固定して上部架台は自由に昇降できるようにすることにより、建造物の建造時には本体支持架台と上部架台によってクレーン本体を構造物に支持できるようにしたクライミングクレーンを提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のクライミングクレーンは、マストの下端に固定した本体支持架台と、該本体支持架台の上側においてマストに沿って盛り換えが可能な上部架台と、該上部架台の上側においてマストに沿って盛り換えが可能なガイドマストと、前記上部架台とガイドマストとの間を連結する昇降シリンダと、前記ガイドマストの上側において旋回環受けフレームを介してマストに沿って昇降が可能なクレーンとを備えたクライミングクレーンであって、前記ガイドマストの上端に、前記旋回環受けフレームに対して固定・切り離しが可能なガイドマスト取付金具を備え、且つ前記旋回環受けフレームに、マストの上端に対して固定・切離しが可能な連結アームを備えたことを特徴とする。
【0018】
上記手段において、前記連結アームは、旋回環受けフレームに対して外側の待機位置と内側のマスト上端位置とに回動可能に備えられ、内側回動時にマストの上端に固定できるようにしていることは好ましい。
【0019】
又、前記旋回環受けフレームに備える連結アームが、前記マスト上端の4隅部に固定されるように配置されていることは好ましい。
【0020】
又、前記ガイドマスト取付金具が、ガイドマスト上端の4隅部に設けられていることは好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のクライミングクレーンでは、本体支持架台に固定したマストに、夫々が盛り換え可能に備えられ且つ昇降シリンダにより相互に連結された上部架台及びガイドマストと、マストに対して移動可能な旋回環受けフレームに支持されたクレーンとを有し、ガイドマストの上端をガイドマスト取付金具により旋回環受けフレームに固定・切離し可能とし、且つ旋回環受けフレームに備えた連結アームにより旋回環受けフレームをガイドマストの上端に固定・切離し可能としたので、ガイドマスト取付金具により旋回環受けフレームをガイドマストの上端に固定したクレーンにより、マストの上端に追加のマストを継ぎ足しながらクレーン自身を上昇させて所要の高さのクレーン本体を組み立てることができ、よってクレーン本体を組み立てるために他のクレーンによって所要高さの建造物を建造するという必要がないので、建造物の初期の建造が容易になる効果がある。
【0022】
更に、旋回環受けフレームがマストの上端に位置した状態で旋回環受けフレームを連結アームにてマストの上端に固定することにより、ガイドマスト取付金具によりクレーンの旋回環受けフレームに固定していたガイドマストの固定を解除することができるので、その後は上部架台とガイドマストはマストに沿って自由に昇降することができ、よってクレーン作業中は、前記本体支持架台と上部架台の両方でクレーン本体を建造物に支持することができ、よってクレーン本体に作用する重力とモーメントを複数階の梁で分散して支持することができるので、梁が曲ることを防止でき、よって梁を補強部材で補強する作業も省略できる効果がある。
【0023】
又、上部架台は建造物の最上部の梁よりも下層の梁で支持することができるので、建造物をコンクリートで建造する場合にも、最上部の梁のコンクリートが固化して強度が得られるまで待つことなくクレーン作業を進めることができるので、作業能率が高められる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1〜図9は本発明のクライミングクレーンを実施する形態の一例を示すもので、図1は本発明のクライミングクレーンの概略正面図、図2は図1のII部分の拡大斜視図、図3は図2の平面図、図4は図1のクライミングクレーンで建造物の建造を行っている状態を示す正面図、図5は建造物の建造が進んだ状態を示す正面図、図6は図4のVI部分の拡大斜視図、図7は図6の平面図、図8は連結アームを回動する状態を示す斜視図、図9は連結アームをマストに固定する状態を示す斜視図であり、図1〜9中、図10に示したものと同一のものには同一の符号を付してある。
【0026】
図1は基礎上にクレーン本体4を組み立てる状態を示しており、クレーン本体4の本体支持架台3の伸縮ビーム12を伸長してアンカーボルト11により基礎に固定し、前記本体支持架台3に一体に立設したマスト1に、上部架台6とガイドマスト8を装備している。この上部架台6とガイドマスト8は、図10に示した昇降シリンダ9によって相互に連結されており、且つ夫々に備えたロックピン5,7により別個にマスト1に固定・切離しできるように構成されて盛り換えができるようになっている。前記上部架台6とガイドマスト8は、図2、図3ではガイドマスト8のみを示しているが、断面が矩形形状を有しているマスト1が貫通できる矩形の孔16を夫々備えている。
【0027】
前記ガイドマスト8は、図2、図3に示す如く、ガイドマスト8の上端の4隅部にガイドマスト取付金具17を備えており、該ガイドマスト取付金具17は、図示しない旋回環を介してクレーン2を旋回可能に支持している旋回環受けフレーム15の下面に対して、ボルト18等により固定・切離し可能になっている。
【0028】
又、旋回環受けフレーム15には、図6〜図9に示す如くマスト1の上端に対して固定・切離しが可能な連結アーム19が備えられており、図4に示すように、クレーン2のクレーン作業によって建造物10の建造を行う際には、旋回環受けフレーム15を連結アーム19によりマスト1の上端に固定している。
【0029】
連結アーム19は、図6〜図9に示す如く、旋回環受けフレーム15をマスト1が貫通する矩形の孔16の四辺の各外側に沿うように4個配置されており、連結アーム19は夫々の一端が鉛直の支点軸20(又は支点ボルト)により旋回環受けフレーム15に対して水平回動可能に取り付けられており、又、連結アーム19の夫々の他端には内側(孔16側)を向いた切込部21が形成してあり、又各連結アーム19を内側に回動さて連結アーム19がマスト1の4隅部を略45゜の角度で横切った位置になった時に前記切込部21に嵌合するようにした固定ボルト22が旋回環受けフレーム15に設けてあり、前記固定ボルト22により連結アーム19の他端を旋回環受けフレーム15に固定できるようにしている。
【0030】
矩形を有する前記マスト1の端部の4隅部には、図9に示す如くマスト1を相互に連結するためのボルト孔23を備えた連結プレート24が設けてあり、前記したように内側に回動させて他端を固定ボルト22によって旋回環受けフレーム15に固定するようにした連結アーム19には、前記連結プレート24に対向する固定プレート25が形成してあり、該固定プレート25には前記連結プレート24のボルト孔23に対応するボルト孔26が形成してある。そして、前記連結プレート24と固定プレート25のボルト孔23,26にボルト27を通して締め付けることにより、連結プレート24と固定プレート25を固定できるようにしている。
【0031】
従って、図7に二点鎖線で示すように、旋回環受けフレーム15の孔16の四辺の外側に沿った待機位置の連結アーム19を、破線矢印で示すように内側(孔16側)に回動させて他端の切込部21を固定ボルト22に嵌合して固定すると、連結アーム19はマスト1の4隅部を略45゜の角度で横切った状態になり、図9のマスト1の連結プレート24と連結アーム19の固定プレート25が対応する。従って、連結プレート24と固定プレート25をボルト孔23,26にボルト27を通して締め付け固定すると、旋回環受けフレーム15はマスト1の上端に固定される。このとき、連結アーム19は、他端の切込部21が固定ボルト22に内側から嵌合する構成を有しているので、連結アーム19はこの位置から外側へ回動することはできず安全が保たれる。
【0032】
上記したように、連結アーム19によってマスト1の上端に旋回環受けフレーム15を固定すると、クレーン2はマスト1の上端に支持されることになるので、ガイドマスト取付金具17によって旋回環受けフレーム15に固定していたガイドマスト8の固定を解除することができる。従って、その後は図4に示すように上部架台6とガイドマスト8が自由に昇降できるので、以後はクレーン本体4を本体支持架台3と上部架台6の両方で建造物10の異なる高さの梁10aに支持させてクレーン作業を行うことができる。
【0033】
次に、上記した実施の形態の作動を説明する。
【0034】
図1は基礎上にクレーン本体4を組み立てる状態を示しており、本体支持架台3の伸縮ビーム12を伸長させてアンカーボルト11により基礎に固定することにより本体支持架台3を固定する。この本体支持架台3に第1段目のマスト1(例えば長さが4メートル)を立設する。このマスト1に昇降シリンダ9によって連結された上部架台6とガイドマスト8を装備し、更に前記ガイドマスト8の上部に、クレーン2を図示しない旋回環を介して支持する旋回環受けフレーム15を装備する。上記一連の作業は他のクレーンを用いて行うことができる。
【0035】
そして、図2、図3に示す如く、ガイドマスト8の上端の4隅部に備えたガイドマスト取付金具17を、前記旋回環受けフレーム15の下面にボルト18等を用いて固定する。
【0036】
この状態で、上部架台6のロックピン5(図10参照)をマスト1から引き抜き、ガイドマスト8のロックピン7をマスト1に差込んで昇降シリンダ9を伸長すると、ガイドマスト8と旋回環受けフレーム15とクレーン2は一体に上昇するので、上昇した位置でガイドマスト8のロックピン7をマスト1に差込んで固定し、続いて、上部架台6のロックピン5を引き抜いて昇降シリンダ9を縮小することにより上部架台6を引き上げてロックピン5をマスト1の差込んで固定する。これにより、ガイドマスト8と旋回環受けフレーム15とクレーン2は所定ストローク分だけ上昇する。再び、上記と同様の操作を行うことによりクレーン2を上昇させ、クレーンが所定の高さになった時、クレーン2により前記第1段のマストの上端に第2段のマストを継ぎ足す作業を行う。上記作業を繰返して所要の高さのマスト1を組み立て、更にクレーン2の旋回環受けフレーム15がマスト1の上端に位置するように高さを調整する。このとき、マスト1の旋回環受けフレーム15はガイドマスト取付金具17によってガイドマスト8に固定されているので、クレーン2は安定した状態でマスト1に支持される。
【0037】
上記したように、ガイドマスト取付金具17により旋回環受けフレーム15をガイドマスト8の上端に固定したクレーン2により、マスト1の上端に追加のマスト1を継ぎ足しながらクレーン2自身を上昇させて所要の高さのクレーン本体4を組み立てることができるので、クレーン本体4を組み立てるために他のクレーンによって所要高さの建造物を建造するという必要がなくなり、よって建造物の初期の建造が容易になる。
【0038】
続いて、図7に二点鎖線で示すように、旋回環受けフレーム15の矩形の孔16の各四辺の外側に沿う位置に待機している4個の連結アーム19を、破線矢印で示すように内側(孔16側)に回動させて他端の切込部21を固定ボルト22に嵌合し、固定ボルト22を締め付けることにより固定する。すると、図9のマスト1の端部の4隅に設けられた連結プレート24と連結アーム19の固定プレート25とが対応するので、連結プレート24と固定プレート25のボルト孔23,26にボルト27を通して締め付ける。これにより、マスト1の上端に旋回環受けフレーム15が固定される。
【0039】
上記したように、連結アーム19によりマスト1の上端に旋回環受けフレーム15が固定されると、クレーン2はマスト1の上端に支持されることになるので、ガイドマスト取付金具17によって旋回環受けフレーム15に固定していたガイドマスト8の固定を解除することができる。
【0040】
従って、その後は図4に示すように上部架台6とガイドマスト8は自由に昇降できるので、クレーン作業時には、クレーン本体4を本体支持架台3と上部架台6の両方で建造物10の異なる高さの梁10aに支持させることができる。このように、クレーン本体4を本体支持架台3と上部架台6の両方で建造物10の異なる高さの梁10aに支持することにより、クレーン本体4に作用する重力WとモーメントMを複数階の梁10aで分散して支持することができるので、梁10aが曲ることを防止でき、よって梁10aを補強部材で補強する作業も省略できる。
【0041】
又、上部架台6は、図4、図5に示す如く建造物10の最上部の梁10aよりも下層の梁10aで支持することができるので、建造物10をコンクリートで建造する場合にも、最上部の梁10aのコンクリートが固化して強度が得られるまで待つことなくクレーン作業を進めることができ、よって作業能率を高めることができる。
【0042】
なお、本発明は上記形態のみに限定されるものではなく、ガイドマスト取付金具の形状、連結アームの形状は種々選定し得ること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更を加え得ること、等は勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のクライミングクレーンの概略正面図である。
【図2】図1のII部分の拡大斜視図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図1のクライミングクレーンで建造物の建造を行っている状態を示す正面図である。
【図5】建造物の建造が進んだ状態を示す正面図である。
【図6】図4のVI部分の拡大斜視図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】連結アームを回動する状態を示す斜視図である。
【図9】連結アームをマストに固定する状態を示す斜視図である。
【図10】従来のクライミングクレーンの一例を示す正面図である。
【図11】図10のクレーンの無負荷の状態を示す概略正面図である。
【図12】建造物に対して上層への建造を行った状態を示す概略正面図である。
【図13】クレーン本体の盛替えを行う状態を示す概略正面図である。
【図14】クレーンを上昇させてマストの上端に固定するための作動を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 マスト
2 クレーン
3 本体支持架台
4 クレーン本体
6 上部架台
8 ガイドマスト
9 昇降シリンダ
15 旋回環受けフレーム
17 ガイドマスト取付金具
19 連結アーム
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライミングクレーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
低層のビル等の建造物を建設する場合は、地上にマストを支持するための架台を固定したクレーン本体が用いられるが、高層の建造物を建造する場合には、建造の進行に合わせてクレーン本体を建造物の上層階に順次盛り換えるようにしたクライミングクレーンが使用される。
【0003】
図10は従来の鉄骨構造の高層建築の建設に用いられているクライミングクレーンの一例を示すもので、このクライミングクレーンは、マスト1の頂部にはクレーン2が備えられ、マスト1の下端には本体支持架台3を固定したクレーン本体4を有している。更に、前記本体支持架台3の上部におけるマスト1の外周には、ロックピン5の抜き差しによりマスト1への固定・切離しを行ってマスト1に対する盛り換えが可能な上部架台6を設けており、更に、該上部架台6の上部にはロックピン7の抜き差しによりマスト1への固定・切離しを行ってマスト1に対する盛り換えが可能なガイドマスト8を設けており、前記上部架台6とガイドマスト8は昇降シリンダ9により連結している。
【0004】
尚、前記クレーン2は、図示しない旋回環により旋回環受けフレーム15に対して旋回可能に支持されており、旋回環受けフレーム15はマスト1に対して上下に移動可能に支持されており、該旋回環受けフレーム15の下面が前記ガイドマスト8の上端に固定されている。
【0005】
前記本体支持架台3と上部架台6の夫々には、水平な十字方向(前後左右)、或いは前後左右の一方向に伸縮する伸縮ビーム12,14(図10、図12)が備えてあり、該伸縮ビーム12,14は、柱10bと梁10a(横材)で構成される建造物10の梁10a上に伸長してアンカーボルト11,13により梁10aに固定できるようになっており、これによりクレーン本体4を建造物10に固定するようにしている。
【0006】
前記クライミングクレーンにより、図10、図11に示している建造物10に対して上層への建造を行い、図12の如く上層の建造が終了すると、クレーン本体4を建造物10の上部へ盛り換える作業を行う。
【0007】
クレーン本体4を上方へ盛り換えるには、クレーン2に吊り荷が無い無負荷(図11)の状態において、先ず上部架台6の伸縮ビーム14を図12のように伸長し、ガイドマスト8のロックピン7(図10参照)がマスト1に差込まれた状態で、上部架台6のロックピン5をマスト1から引き抜き、昇降シリンダ9を伸長して上部架台6を下降させることにより前記伸長した伸縮ビーム14を建造物10の梁10a上に載置し、更に上部架台6のロックピン5をマスト1に挿入して上部架台6をマスト1に固定し、伸縮ビーム14をアンカーボルト13により梁10aに固定する。これにより、クレーン本体4は図12に示すように本体支持架台3と上部架台6の両方で建造物10に支持された状態になる。
【0008】
次に、本体支持架台3の伸縮ビーム12を梁10aに固定しているアンカーボルト11(図10参照)の固定を解除して伸縮ビーム12を縮小する。続いて、上部架台6のロックピン5をマスト1から引き抜いて昇降シリンダ9を伸長すると、クレーン本体4が上昇するので、上昇した位置で上部架台6のロックピン5をマスト1に差込んで固定し、続いて、ガイドマスト8のロックピン7をマスト1から引き抜き、昇降シリンダ9を縮小してガイドマスト8を下降させてロックピン7をマスト1に挿入することによりガイドマスト8をマスト1に固定する(図13の状態)。この操作によりクレーン本体4が所定ストローク分だけ上昇する。再び、上記と同様にしてクレーン本体4を所定ストローク分上昇させる操作を繰返すことにより、前記本体支持架台3の伸縮ビーム12が今まで支持されていた梁10aより上層の梁10aの上側位置になるまでマスト1を上昇させた後、図14に示す如く、本体支持架台3の伸縮ビーム12を梁10a上に伸長し、伸縮ビーム12をアンカーボルト11により梁10aに固定する。
【0009】
次に、上部架台6の伸縮ビーム14を梁10aに固定しているアンカーボルト13の固定を解除し、伸縮ビーム14を縮小した後、ガイドマスト8のロックピン7をマスト1から引き抜き、昇降シリンダ9を伸長させてガイドマスト8とクレーン2を上昇させ、ガイドマスト8のロックピン7をマスト1に挿入して固定する。続いて、上部架台6のロックピン5をマスト1から引き抜き、昇降シリンダ9を縮小させて上部架台6を上昇させ、上昇した位置でロックピン5をマスト1に挿入して上部架台6をマスト1に固定する。これによりクレーン2は所定ストローク分だけ上昇する。再び、上記と同様にしてクレーン2を所定ストローク分上昇させる操作を繰返すことにより、旋回環受けフレーム15がマスト1の上端になった位置(図11)で上部架台6のロックピン5をマスト1に挿入して固定すると共に、ガイドマスト8のロックピン7をマスト1に挿入して固定する。これにより、クレーン2はガイドマスト8に固定された旋回環受けフレーム15を介してマスト1の上端に固定される。こうしてクレーン本体4の盛り換えが終了する。
【0010】
上記したクライミングクレーンでは、前記ガイドマスト8の上端が旋回環受けフレーム15の下面に一体に固定された構成を有しているため、クレーン本体4の盛り換え作業を行う際は、その都度、クレーン2と一体になっているガイドマスト8と上部架台6とを下降させて上部架台6を建造物10の梁10a上に支持させる必要がある。このため、クレーン本体4の盛り換え作業が大変面倒となり、且つその作業に時間が掛るという問題がある。
【0011】
又、上部架台6の上側には常時クレーン2が位置しており、クレーン2は建造物10の内部には入り込むことができないため、上部架台6は常に建造物10の最上部の梁10aに支持させる必要がある。このため、例えばコンクリートで建造される建造物10の場合には、最上部の梁10aのコンクリートが固化して強度が得られるまでは上部架台6を支持することができず、このために最上部の梁10aの強度が得られるまでの待ち時間が長くなって工期が延長されるという問題がある。
【0012】
一方、クレーン2によって吊り荷の吊上げ下げを行う作業時には、図10、図11に示すようにクレーン本体4を本体支持架台3のみで支持している。このため、クレーン本体4に作用する重力WとモーメントMは、本体支持架台3を支持している梁10aに集中して作用することになり、従って梁10aが曲ることが考えられるため梁10aを補強するための補強部材を取り付けることも行っているが、この補強部材の取り付け・取り外しにも時間が掛るという問題がある。
【0013】
又、クライミングクレーンとしては特許文献1に示したものがある。このクライミングクレーンでは、マストの頂部にクレーンを固定し、且つマストの下端に本体支持架台を固定したクレーン本体を備えており、前記本体支持架台は、十字状ビームと、このビームの各先端に着脱可能に備えた延長ビームとによって建造物の梁上に支持するようにしている。又、前記マストには夫々ロッドを着脱して盛り換えできるようにした上部架台と昇降装置が備えてあり、且つ上部架台と昇降装置との間は昇降シリンダで連結されている。そして、上部架台には、水平方向外側に張出して建造物の梁の上面或いは内面、又は柱の内面に支持するようにした延長ビームを備えている。
【特許文献1】特開2000−203788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、上記特許文献1に示されたクライミングクレーンは、マストの上端にクレーンが予め固定された構成を有するものであり、従ってこのクライミングクレーンでは、上部架台がマストに対して昇降できるため、クレーン作業時には本体支持架台と上部架台の両方でクレーン本体を建造物に支持することができる。
【0015】
しかし、上記したように、マストの上端にクレーンを予め固定した構成のクライミングクレーンでは、クレーン本体の初期の組立時に、マストの下端に追加のマストを継ぎ足してクレーン本体をせり上げて行く必要があるため、本体支持架台の下部に追加のマスト搬入のための空間が必要である。そのため、例えば本体支持架台を2階に設置して1階をマスト搬入のための空間とし、上部架台を3階に設置するようにした場合には、別のクレーンによって最低3階分の建造物を予め建造した後でないと、前記クレーン本体を組立てることができないという問題がある。
【0016】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、クレーン本体を組み立てる際に別のクレーンによって建造する建造物の高さを低くでき、クレーン本体を組み立てた後はマストの上端にクレーンを固定して上部架台は自由に昇降できるようにすることにより、建造物の建造時には本体支持架台と上部架台によってクレーン本体を構造物に支持できるようにしたクライミングクレーンを提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のクライミングクレーンは、マストの下端に固定した本体支持架台と、該本体支持架台の上側においてマストに沿って盛り換えが可能な上部架台と、該上部架台の上側においてマストに沿って盛り換えが可能なガイドマストと、前記上部架台とガイドマストとの間を連結する昇降シリンダと、前記ガイドマストの上側において旋回環受けフレームを介してマストに沿って昇降が可能なクレーンとを備えたクライミングクレーンであって、前記ガイドマストの上端に、前記旋回環受けフレームに対して固定・切り離しが可能なガイドマスト取付金具を備え、且つ前記旋回環受けフレームに、マストの上端に対して固定・切離しが可能な連結アームを備えたことを特徴とする。
【0018】
上記手段において、前記連結アームは、旋回環受けフレームに対して外側の待機位置と内側のマスト上端位置とに回動可能に備えられ、内側回動時にマストの上端に固定できるようにしていることは好ましい。
【0019】
又、前記旋回環受けフレームに備える連結アームが、前記マスト上端の4隅部に固定されるように配置されていることは好ましい。
【0020】
又、前記ガイドマスト取付金具が、ガイドマスト上端の4隅部に設けられていることは好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明のクライミングクレーンでは、本体支持架台に固定したマストに、夫々が盛り換え可能に備えられ且つ昇降シリンダにより相互に連結された上部架台及びガイドマストと、マストに対して移動可能な旋回環受けフレームに支持されたクレーンとを有し、ガイドマストの上端をガイドマスト取付金具により旋回環受けフレームに固定・切離し可能とし、且つ旋回環受けフレームに備えた連結アームにより旋回環受けフレームをガイドマストの上端に固定・切離し可能としたので、ガイドマスト取付金具により旋回環受けフレームをガイドマストの上端に固定したクレーンにより、マストの上端に追加のマストを継ぎ足しながらクレーン自身を上昇させて所要の高さのクレーン本体を組み立てることができ、よってクレーン本体を組み立てるために他のクレーンによって所要高さの建造物を建造するという必要がないので、建造物の初期の建造が容易になる効果がある。
【0022】
更に、旋回環受けフレームがマストの上端に位置した状態で旋回環受けフレームを連結アームにてマストの上端に固定することにより、ガイドマスト取付金具によりクレーンの旋回環受けフレームに固定していたガイドマストの固定を解除することができるので、その後は上部架台とガイドマストはマストに沿って自由に昇降することができ、よってクレーン作業中は、前記本体支持架台と上部架台の両方でクレーン本体を建造物に支持することができ、よってクレーン本体に作用する重力とモーメントを複数階の梁で分散して支持することができるので、梁が曲ることを防止でき、よって梁を補強部材で補強する作業も省略できる効果がある。
【0023】
又、上部架台は建造物の最上部の梁よりも下層の梁で支持することができるので、建造物をコンクリートで建造する場合にも、最上部の梁のコンクリートが固化して強度が得られるまで待つことなくクレーン作業を進めることができるので、作業能率が高められる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1〜図9は本発明のクライミングクレーンを実施する形態の一例を示すもので、図1は本発明のクライミングクレーンの概略正面図、図2は図1のII部分の拡大斜視図、図3は図2の平面図、図4は図1のクライミングクレーンで建造物の建造を行っている状態を示す正面図、図5は建造物の建造が進んだ状態を示す正面図、図6は図4のVI部分の拡大斜視図、図7は図6の平面図、図8は連結アームを回動する状態を示す斜視図、図9は連結アームをマストに固定する状態を示す斜視図であり、図1〜9中、図10に示したものと同一のものには同一の符号を付してある。
【0026】
図1は基礎上にクレーン本体4を組み立てる状態を示しており、クレーン本体4の本体支持架台3の伸縮ビーム12を伸長してアンカーボルト11により基礎に固定し、前記本体支持架台3に一体に立設したマスト1に、上部架台6とガイドマスト8を装備している。この上部架台6とガイドマスト8は、図10に示した昇降シリンダ9によって相互に連結されており、且つ夫々に備えたロックピン5,7により別個にマスト1に固定・切離しできるように構成されて盛り換えができるようになっている。前記上部架台6とガイドマスト8は、図2、図3ではガイドマスト8のみを示しているが、断面が矩形形状を有しているマスト1が貫通できる矩形の孔16を夫々備えている。
【0027】
前記ガイドマスト8は、図2、図3に示す如く、ガイドマスト8の上端の4隅部にガイドマスト取付金具17を備えており、該ガイドマスト取付金具17は、図示しない旋回環を介してクレーン2を旋回可能に支持している旋回環受けフレーム15の下面に対して、ボルト18等により固定・切離し可能になっている。
【0028】
又、旋回環受けフレーム15には、図6〜図9に示す如くマスト1の上端に対して固定・切離しが可能な連結アーム19が備えられており、図4に示すように、クレーン2のクレーン作業によって建造物10の建造を行う際には、旋回環受けフレーム15を連結アーム19によりマスト1の上端に固定している。
【0029】
連結アーム19は、図6〜図9に示す如く、旋回環受けフレーム15をマスト1が貫通する矩形の孔16の四辺の各外側に沿うように4個配置されており、連結アーム19は夫々の一端が鉛直の支点軸20(又は支点ボルト)により旋回環受けフレーム15に対して水平回動可能に取り付けられており、又、連結アーム19の夫々の他端には内側(孔16側)を向いた切込部21が形成してあり、又各連結アーム19を内側に回動さて連結アーム19がマスト1の4隅部を略45゜の角度で横切った位置になった時に前記切込部21に嵌合するようにした固定ボルト22が旋回環受けフレーム15に設けてあり、前記固定ボルト22により連結アーム19の他端を旋回環受けフレーム15に固定できるようにしている。
【0030】
矩形を有する前記マスト1の端部の4隅部には、図9に示す如くマスト1を相互に連結するためのボルト孔23を備えた連結プレート24が設けてあり、前記したように内側に回動させて他端を固定ボルト22によって旋回環受けフレーム15に固定するようにした連結アーム19には、前記連結プレート24に対向する固定プレート25が形成してあり、該固定プレート25には前記連結プレート24のボルト孔23に対応するボルト孔26が形成してある。そして、前記連結プレート24と固定プレート25のボルト孔23,26にボルト27を通して締め付けることにより、連結プレート24と固定プレート25を固定できるようにしている。
【0031】
従って、図7に二点鎖線で示すように、旋回環受けフレーム15の孔16の四辺の外側に沿った待機位置の連結アーム19を、破線矢印で示すように内側(孔16側)に回動させて他端の切込部21を固定ボルト22に嵌合して固定すると、連結アーム19はマスト1の4隅部を略45゜の角度で横切った状態になり、図9のマスト1の連結プレート24と連結アーム19の固定プレート25が対応する。従って、連結プレート24と固定プレート25をボルト孔23,26にボルト27を通して締め付け固定すると、旋回環受けフレーム15はマスト1の上端に固定される。このとき、連結アーム19は、他端の切込部21が固定ボルト22に内側から嵌合する構成を有しているので、連結アーム19はこの位置から外側へ回動することはできず安全が保たれる。
【0032】
上記したように、連結アーム19によってマスト1の上端に旋回環受けフレーム15を固定すると、クレーン2はマスト1の上端に支持されることになるので、ガイドマスト取付金具17によって旋回環受けフレーム15に固定していたガイドマスト8の固定を解除することができる。従って、その後は図4に示すように上部架台6とガイドマスト8が自由に昇降できるので、以後はクレーン本体4を本体支持架台3と上部架台6の両方で建造物10の異なる高さの梁10aに支持させてクレーン作業を行うことができる。
【0033】
次に、上記した実施の形態の作動を説明する。
【0034】
図1は基礎上にクレーン本体4を組み立てる状態を示しており、本体支持架台3の伸縮ビーム12を伸長させてアンカーボルト11により基礎に固定することにより本体支持架台3を固定する。この本体支持架台3に第1段目のマスト1(例えば長さが4メートル)を立設する。このマスト1に昇降シリンダ9によって連結された上部架台6とガイドマスト8を装備し、更に前記ガイドマスト8の上部に、クレーン2を図示しない旋回環を介して支持する旋回環受けフレーム15を装備する。上記一連の作業は他のクレーンを用いて行うことができる。
【0035】
そして、図2、図3に示す如く、ガイドマスト8の上端の4隅部に備えたガイドマスト取付金具17を、前記旋回環受けフレーム15の下面にボルト18等を用いて固定する。
【0036】
この状態で、上部架台6のロックピン5(図10参照)をマスト1から引き抜き、ガイドマスト8のロックピン7をマスト1に差込んで昇降シリンダ9を伸長すると、ガイドマスト8と旋回環受けフレーム15とクレーン2は一体に上昇するので、上昇した位置でガイドマスト8のロックピン7をマスト1に差込んで固定し、続いて、上部架台6のロックピン5を引き抜いて昇降シリンダ9を縮小することにより上部架台6を引き上げてロックピン5をマスト1の差込んで固定する。これにより、ガイドマスト8と旋回環受けフレーム15とクレーン2は所定ストローク分だけ上昇する。再び、上記と同様の操作を行うことによりクレーン2を上昇させ、クレーンが所定の高さになった時、クレーン2により前記第1段のマストの上端に第2段のマストを継ぎ足す作業を行う。上記作業を繰返して所要の高さのマスト1を組み立て、更にクレーン2の旋回環受けフレーム15がマスト1の上端に位置するように高さを調整する。このとき、マスト1の旋回環受けフレーム15はガイドマスト取付金具17によってガイドマスト8に固定されているので、クレーン2は安定した状態でマスト1に支持される。
【0037】
上記したように、ガイドマスト取付金具17により旋回環受けフレーム15をガイドマスト8の上端に固定したクレーン2により、マスト1の上端に追加のマスト1を継ぎ足しながらクレーン2自身を上昇させて所要の高さのクレーン本体4を組み立てることができるので、クレーン本体4を組み立てるために他のクレーンによって所要高さの建造物を建造するという必要がなくなり、よって建造物の初期の建造が容易になる。
【0038】
続いて、図7に二点鎖線で示すように、旋回環受けフレーム15の矩形の孔16の各四辺の外側に沿う位置に待機している4個の連結アーム19を、破線矢印で示すように内側(孔16側)に回動させて他端の切込部21を固定ボルト22に嵌合し、固定ボルト22を締め付けることにより固定する。すると、図9のマスト1の端部の4隅に設けられた連結プレート24と連結アーム19の固定プレート25とが対応するので、連結プレート24と固定プレート25のボルト孔23,26にボルト27を通して締め付ける。これにより、マスト1の上端に旋回環受けフレーム15が固定される。
【0039】
上記したように、連結アーム19によりマスト1の上端に旋回環受けフレーム15が固定されると、クレーン2はマスト1の上端に支持されることになるので、ガイドマスト取付金具17によって旋回環受けフレーム15に固定していたガイドマスト8の固定を解除することができる。
【0040】
従って、その後は図4に示すように上部架台6とガイドマスト8は自由に昇降できるので、クレーン作業時には、クレーン本体4を本体支持架台3と上部架台6の両方で建造物10の異なる高さの梁10aに支持させることができる。このように、クレーン本体4を本体支持架台3と上部架台6の両方で建造物10の異なる高さの梁10aに支持することにより、クレーン本体4に作用する重力WとモーメントMを複数階の梁10aで分散して支持することができるので、梁10aが曲ることを防止でき、よって梁10aを補強部材で補強する作業も省略できる。
【0041】
又、上部架台6は、図4、図5に示す如く建造物10の最上部の梁10aよりも下層の梁10aで支持することができるので、建造物10をコンクリートで建造する場合にも、最上部の梁10aのコンクリートが固化して強度が得られるまで待つことなくクレーン作業を進めることができ、よって作業能率を高めることができる。
【0042】
なお、本発明は上記形態のみに限定されるものではなく、ガイドマスト取付金具の形状、連結アームの形状は種々選定し得ること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において変更を加え得ること、等は勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明のクライミングクレーンの概略正面図である。
【図2】図1のII部分の拡大斜視図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】図1のクライミングクレーンで建造物の建造を行っている状態を示す正面図である。
【図5】建造物の建造が進んだ状態を示す正面図である。
【図6】図4のVI部分の拡大斜視図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】連結アームを回動する状態を示す斜視図である。
【図9】連結アームをマストに固定する状態を示す斜視図である。
【図10】従来のクライミングクレーンの一例を示す正面図である。
【図11】図10のクレーンの無負荷の状態を示す概略正面図である。
【図12】建造物に対して上層への建造を行った状態を示す概略正面図である。
【図13】クレーン本体の盛替えを行う状態を示す概略正面図である。
【図14】クレーンを上昇させてマストの上端に固定するための作動を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 マスト
2 クレーン
3 本体支持架台
4 クレーン本体
6 上部架台
8 ガイドマスト
9 昇降シリンダ
15 旋回環受けフレーム
17 ガイドマスト取付金具
19 連結アーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マストの下端に固定した本体支持架台と、該本体支持架台の上側においてマストに沿って盛り換えが可能な上部架台と、該上部架台の上側においてマストに沿って盛り換えが可能なガイドマストと、前記上部架台とガイドマストとの間を連結する昇降シリンダと、前記ガイドマストの上側において旋回環受けフレームを介してマストに沿って昇降が可能なクレーンとを備えたクライミングクレーンであって、前記ガイドマストの上端に、前記旋回環受けフレームに対して固定・切り離しが可能なガイドマスト取付金具を備え、且つ前記旋回環受けフレームに、マストの上端に対して固定・切離しが可能な連結アームを備えたことを特徴とするクライミングクレーン。
【請求項2】
前記連結アームは、旋回環受けフレームに対して外側の待機位置と内側のマスト上端位置とに回動可能に備えられ、内側回動時にマストの上端に固定できるようにしたことを特徴とする請求項1記載のクライミングクレーン。
【請求項3】
前記旋回環受けフレームに備える連結アームが、前記マスト上端の4隅部に固定されるように配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のクライミングクレーン。
【請求項4】
前記ガイドマスト取付金具が、ガイドマスト上端の4隅部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のクライミングクレーン。
【請求項1】
マストの下端に固定した本体支持架台と、該本体支持架台の上側においてマストに沿って盛り換えが可能な上部架台と、該上部架台の上側においてマストに沿って盛り換えが可能なガイドマストと、前記上部架台とガイドマストとの間を連結する昇降シリンダと、前記ガイドマストの上側において旋回環受けフレームを介してマストに沿って昇降が可能なクレーンとを備えたクライミングクレーンであって、前記ガイドマストの上端に、前記旋回環受けフレームに対して固定・切り離しが可能なガイドマスト取付金具を備え、且つ前記旋回環受けフレームに、マストの上端に対して固定・切離しが可能な連結アームを備えたことを特徴とするクライミングクレーン。
【請求項2】
前記連結アームは、旋回環受けフレームに対して外側の待機位置と内側のマスト上端位置とに回動可能に備えられ、内側回動時にマストの上端に固定できるようにしたことを特徴とする請求項1記載のクライミングクレーン。
【請求項3】
前記旋回環受けフレームに備える連結アームが、前記マスト上端の4隅部に固定されるように配置されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のクライミングクレーン。
【請求項4】
前記ガイドマスト取付金具が、ガイドマスト上端の4隅部に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のクライミングクレーン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−7252(P2008−7252A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178188(P2006−178188)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)
【Fターム(参考)】
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