説明

クラスE区分のケーブルおよびチューブ

本発明は、ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、ポリマーソフトブロックと、ウレタン結合とを含むコポリエステルエラストマーの、このコポリエステルエラストマーの融解温度より高い熱過負荷温度を規定する熱過負荷要件を有する用途における使用に関する。本発明はまた、フィルムならびにチューブおよび電気ケーブル(例えば、ケーブルハーネス系に用いる回旋状チューブおよび電気ケーブル)に関する。本発明は、さらに、チューブおよびケーブルにおいて用いられ得る高熱特性を有するポリマー材料、ならびにそのポリマー材料からなる層を少なくとも含むチューブおよびケーブルに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマーから作製される、チューブおよび電気ケーブル(例えば、ケーブルハーネス系用の回旋状チューブおよび電気ケーブル)ならびにフィルム、射出成形品、オーバーモールド成形品(overmoulding)および吹込成形物に関する。本発明は、より具体的には、上記チューブおよびケーブルに用いられ得る高熱特性を有するポリマー材料、ならびにそのポリマー材料からなる層を少なくとも含むチューブおよびケーブルに関する。本発明はまた、高熱特性を要求する用途における上記ポリマー材料の使用に関する。
【0002】
電気ケーブルは、典型的には導電性心線、一般的には導電性金属心線、およびその導電性心線を取り巻くプラスチック層を含む。多くの場合、電気ケーブルは、2つ以上の導電性心線を含み、その各々が、絶縁層としてのプラスチック層と、全ての導電性心線および絶縁層の周りを囲むクラッド層またはコーティング層とで覆われている。チューブ(例えば、導電性チューブ)は、一般的には1つのプラスチック材料から作製されるが、異なるプラスチック材料から作製された複数の層からなるものもある。
【0003】
ケーブルハーネスは、信号(情報)または駆動電流(エネルギー)を伝達する、例えば自動車製造における、一群のケーブルである。これらのケーブルは、例えばクランプ、ケーブルタイもしくはスリーブにより一緒に纏められるか、または束ねてチューブ(例えば、回旋状チューブ)に通される。こうして、例えば現代の自動車は、完全に伸ばすと数キロメートルに及ぶ電線を収容する。
【0004】
種々の電気用途に用いられるケーブルおよびチューブは、異なる要件を満たさなければならない。例えば、ケーブルハーネスの組立て(confectioning)および自動車へのケーブルハーネスの取り付けのためには、ケーブルハーネスは十分な可撓性を示さなければならない。これが、ケーブルおよびチューブが、一般的に、可撓性プラスチック材料を含むか、または可撓性プラスチック材料から作製される理由である。エンジンにより生じる熱のため、プラスチック材料は高温に耐え得なければならない。
【0005】
自動車のエンジンにより生じる熱は、自動車のボンネット下の温度上昇を引き起こす。この熱は、通常、冷却ファンおよび他の解決手段により放出されるが、それでも温度上昇はかなりのものであり得る。これらの用途に用いられる材料は、通常、特定の用途に適用し得る連続使用温度(CUT)下での性能に基づいて選択される。しかしながら、一時的な冷却不足および/または熱過剰発生に起因して(例えば、運転時の自動車の渋滞に起因して)温度は著しく上昇し得、CUTよりかなり高いピークを示し得る。これが、そのような温度オーバーシュートに対する耐性についての拡張要件を多くの規範が有する理由である。いくつかの規範において、これは、CUTより50℃高い温度にて6時間という熱過負荷要件で言い換えられる。
【0006】
プラスチック材料はまた、冬季の衝撃に耐えるために低温において十分な耐衝撃性も有さなければならない。要件のうちのいくつかが、ISO6722などの規格または規範に規定されている。この規範は、ケーブルに焦点を当てているが、実際には、電気用途に用いられる回旋状チューブにも適用されている。これは、例えば、同じ温度クラスおよび熱過負荷要件を用いているBMW規範のGS 95008−4において当てはまる。要件のうちの1つは、連続使用中に経験される高温においてだけではなく、熱過負荷状態においても特性を保持する耐熱性である。ISO6722は、使用目的ならびにそうした用途において起こり得る連続使用温度および熱過負荷に応じ、異なるクラスの材料に対し、異なる要件を規定している。例えば、クラスD区分については、製品は、150℃にて3000時間、175℃にて240時間、そして200℃にて6時間、耐えなければならず、クラスE区分については、製品は、175℃にて3000時間、200℃にて240時間、そして225℃にて6時間、耐えなければならない。
【0007】
後者のクラスE区分の要件を満たし得ると同時に、低温にて十分に可撓性があり耐衝撃性がある材料の数は、限られている。これらの用途には、典型的に、例えば、エチレン−テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)ならびに他のフルオロエラストマーおよびペルフルオロエラストマーといった、高価な材料が用いられる。例えば、PA11および12などのポリアミドならびにポリエーテルエステルエラストマーなどの多くのポリマーは、可撓性を有するが、熱過負荷試験で不合格となる。例えば、PA66などのポリアミドおよびPETなどのポリエステルなどのポリマーは、熱過負荷試験を満たし得るが、十分な可撓性を有していない。
【0008】
クラスD区分の熱要件を満たし得る材料の数が多いほど、可撓性および耐衝撃性の向上が要求されていることになる。
【0009】
したがって、可撓性があり、クラスE区分の電気用途用のチューブおよびケーブルに用いられ得る熱過負荷に耐えるのに十分な耐熱性があるより多くのプラスチック材料、ならびに改善された特性を有する他区分のためのプラスチック材料に対する要求がある。
【0010】
本発明の目的は、プラスチック材料ならびにクラスE区分の熱過負荷要件を満たし得る可撓性プラスチック材料を含むチューブおよびケーブルを提供することである。
【0011】
この目的は、ポリマー組成物(X)からなる少なくとも1つの層を含む本発明に係るチューブおよびケーブルであって、上記ポリマー組成物(X)は、
(A)コポリエステルエラストマー、および必要に応じて
(B)半結晶質ポリエステル
を含み、
−上記熱可塑性コポリエステルエラストマーは、ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、ポリマーソフトブロックと、ウレタン結合とを含み、
−上記熱可塑性ポリマー組成物(X)は、200℃より高い融解温度(Tm−X)を有する
チューブおよびケーブルにより達成された。
【0012】
ポリマー組成物(X)は、コポリエステルエラストマー(A)を含み、さらに、必要に応じ、半結晶質ポリエステル(B)および/または他の成分を含むことに留意されたい。コポリエステルエラストマー(A)は、同様に、本明細書においてTm−lと示される融解温度を有し、他方で半結晶質ポリエステル(B)は、本明細書においてTm−Bと示される融解温度を有する。半結晶質ポリエステル(B)および/または他の成分を含まない場合、ポリマー組成物(X)はコポリエステルエラストマー(A)からなり、Tm−XはTm−Aと等しくなる。融解温度Tm−Aを有するコポリエステルエラストマー(A)および融解温度Tm−Bを有する半結晶質ポリエステル(B)の両方を含み、かつポリマー組成物(X)がコポリエステルエラストマー(A)および半結晶質ポリエステル(B)のそれぞれの代表的な2つの融解温度を示す場合、Tm−Xについては、これら2つの融解温度のうちの高い方が採用されなければならない。
【0013】
本発明のポリマー組成物(X)の使用に関する実施形態において、熱過負荷温度(Tto)を規定する熱過負荷要件を有する製品を製造するための、融解温度(Tm−X)を有し、かつコポリエステルエラストマー(A)を含むかまたはコポリエステルエラストマー(A)からなるポリマー組成物(X)の使用であって、コポリエラストマー(A)が融解温度(Tm−A)を有し、かつ(a)ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、(b)ポリマーソフトブロックと、(c)ウレタン結合とを含み、TtoはTm−Aおよび/またはTm−Xより高く、Tm−Aおよび/またはTm−Xは、ASTM D3418−97に従って示差走査熱量計(DSC)(2回目の試験、10℃/分)により測定される場合、200℃より高い、ポリマー組成物(X)の使用が提供される。
【0014】
熱過負荷温度(Tto)を規定する熱過負荷要件を有する製品は、ISO6722に従って6時間の間225℃の温度に耐えることが要求されるクラスE区分のものを包含する。従って、200℃より上での高温性能を規定する、そのような工業仕様書などに適合するように製造された製品は、本発明の範囲内にある。
【0015】
本発明のポリマー組成物(X)の使用に関する別の実施形態において、融解温度(Tm−X)を有し、かつコポリエステルエラストマー(A)を含むかまたはコポリエステルエラストマー(A)からなるポリマー組成物(X)の、製品の製造のための使用であって、上記コポリエステルエラストマーは融解温度(Tm−A)を有し、かつ(a)ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、(b)ポリマーソフトブロックと、(c)ウレタン結合とを含み、組成物(X)は、その製造または将来の使用の間に、組成物の架橋を開始してそれにより組成物を熱硬化性組成物に変えるのに十分な時間にわたってTm−Aおよび/またはTm−Xを超えて加熱される、ポリマー組成物(X)の使用が提供される。このことは、この組成物がTm−Aおよび/またはTm−Xより上でその機能的完全性を維持することを可能にする。Tm−Aおよび/またはTm−Xは、ASTM D3418−97に従って示差走査熱量計(DSC)(2回目の試験、10℃/分)により測定される場合、200℃より高い。
【0016】
この現象は、出発ポリマー組成物がTm−Aおよび/またはTm−Xの融点より上で配合され得、加工され得、なおかつ熱可塑性ポリマーとして挙動することを考慮すると、驚くべきことである。しかしながら、高温(すなわち、200℃より高い温度)にさらに長い時間暴露すると、この組成物は熱硬化性組成物の性質を帯びる。ポリマー組成物(X)に固有の以前には知られていなかったこれらの特性は、この組成物に長時間にわたりTm−Aおよび/またはTm−Xより上でその機械的結着性を維持しそれによりその機能的要件(例えば、ISO6722またはGS 95008−4に従うクラスE区分適性の要件)を満たすことを要求する新たな用途において、この組成物が成功裏に使用されることを可能にする。さらに、組成物(X)の新たに見出された特性は、この組成物がTm−Aおよび/またはTm−Xと同等以上の熱過負荷温度(Tto)を有する高温用途において好都合に用いられることを可能にする。組成物(X)を使用した高温性能は、より高い融点ではあるがTtoよりもなお低い融点を有する組成物の使用による高温性能の向上をはるかに凌ぐ。
【0017】
本発明の目的のための熱可塑性ポリマー組成物とは、繰り返し熱加工されるまたはされ得るポリマー組成物を意味し、その物質は同じかまたは他の用途において再生利用し得るとみなされる。したがって、電線の絶縁被覆などに一度または何度も加工された熱可塑性プラスチック組成物の機械的特性は、出発物質の特性と同等である。
【0018】
本発明の目的のための熱硬化性組成物とは、熱加工され得なくなる程度まで架橋されるまたはされ得るポリマー組成物を意味し、その物質は再生利用し得るとみなされない。典型的に、これは、電子線架橋法または化学架橋法により達成される。
【0019】
ポリマー組成物(X)の使用は、ポリマー組成物(X)を含む製品の使用に及ぶ。
【0020】
本明細書に記載される場合、機能的完全性とは、組成物が、その使用目的に適用し得る規定の性能基準に従って、要求されるとおりに機能し得ることを意味する。例えば、クラスE区分のものは、ISO6722に従って、6時間の間225℃の温度に耐えなければならない。
【0021】
意外なことに、ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、ポリマーソフトブロックと、ウレタン結合とを含むコポリエステルエラストマー(本明細書において簡潔にTPE−EUSとも示される)は、特性を実質的に保持したままTPE−EUSの融解温度(Tm−A)より高いピーク温度に耐え得るため、TPE−EUSを、熱過負荷状態の間に起こり、Tmより高くかつ相当な時間にわたって維持されるピーク温度を有する用途に使用し得ることが見出された。
【0022】
そのような効果は、例えば、ポリエーテルソフトブロックとポリエステルハードブロックとを含むがウレタン結合を含まないポリエーテルエステルエラストマー、ならびにポリエステルソフトブロックとポリエステルハードブロックとを含むがウレタン結合を含まないコポリエステルエステルエラストマーでは得られない。
【0023】
その結果として、前記ポリマー組成物(X)からなる層を含むチューブおよび/またはケーブルは、例えば、同等の融解温度を有する前記コポリエーテルエステルエラストマーおよびコポリエステルエステルエラストマーに比べ、熱過負荷試験により良く耐え得る。
【0024】
TPE−EUSの熱的性能は、ポリマー組成物においてTPE−EUSを、Tm−Aより高い融解温度を有する1種以上の他のポリマーと組み合わせてそれによりポリマー組成物の融解温度を上昇させるか、または無機充填剤および/または補強剤を添加することにより、さらに向上させ得る。
【0025】
TPE−EUSがそれ自体で用いられる場合は、TPE−EUSは、例えば、Tm−Aより0℃〜25℃高い熱過負荷温度(Tto)で6時間の間、熱過負荷に耐え得るが、TPE−EUSとTPE−EUSより高い融解温度(Tm−B)を有する別のポリマー(例えば、半結晶質ポリエステル)とを組み合わせた結果、ポリマー組成物がTm−Aより高い融解温度(Tm−X)を有するようなポリマー組成物(X)については、Ttoはさらに高くなり得る。6時間の熱過負荷の間、Tm−XはTtoより25℃未満低いことが好ましいが、最終的には、Tm−XはTtoと同等以上になり得る。Tm−Xは、例えば、ポリマー組成物(X)がコポリエステルエラストマー(A)とは別に半結晶質ポリエステル(B)を含む場合、Ttoと同等以上になり得る。
【0026】
好ましくは、TtoとTm−Aとの間および/またはTtoとTm−Xとの間の差異は、0℃と25℃の間である。Tm−Aおよび/またはTm−XがTtoより25℃未満低い中でのこの差異の利点は、ポリマー組成物(X)は比較的低い加工温度で成形物に加工され得ると同時に、得られた成形物は熱過負荷条件において良好な性能を有し、本発明に係るウレタン基を含まない他のコポリエステルエラストマー組成物と比較して加工温度および/または熱過負荷性能が改善されていることである。
【0027】
本発明の好ましい実施形態において、TPE−EUSは、それ自体であるかまたはポリマー組成物に含まれており、200℃より高い融解温度Tm−Aを有する。
【0028】
別の好ましい実施形態において、ポリマー組成物は、TPE−EUSおよび半結晶質ポリエステルを含み、このポリマー組成物は、200℃より高い融解温度Tm−AまたはTm−X(該当する場合)を有する。好適には、本明細書において用いられるTPE−EUSは200℃より低いTm−Aを有し、半結晶質ポリエステルは200℃より高いTm−Xを有する。
【0029】
200℃より高いTm−Aを有するTPE−EUS、または−EUSと200℃より高いTm−Xを有する半結晶質ポリエステルとを含むポリマー組成物の利点は、それらから作製されたチューブおよびケーブルが、それぞれ、ケーブルについてはISO6722またはチューブについてはGS95008−4のクラスE要件に従い、225℃にて6時間の熱過負荷に適合することである。
【0030】
好ましくは、Tm−Aおよび/またはTm−XはTtoより低く、ISO6722のクラスE要件を有する用途のためのチューブおよびケーブルの場合には、225℃より低い。このことには、ケーブルおよびホースが依然として熱過負荷要件を満たす一方で、TPE−EUSおよびTPE−EUSを含むポリマー組成物はより低い硬度およびより大きな可撓性を有するという利点がある。
【0031】
意外なことに、熱可塑性ポリマー組成物の融解温度(Tm−X)は、225℃以上である必要はない。熱可塑性ポリマー組成物がより低い融解温度(Tm−X)を有する場合であっても、チューブ系は225℃にて6時間の熱過負荷試験を満たし得る。
【0032】
求められる200℃より高い融解温度を達成するために、別のポリマー(例えば、半結晶質ポリマー)と必要に応じて組み合わされ得る200℃より高い融解温度を有するTPE−EUSが用いられるか、または高くても200℃以下の融解温度を有するTPE−EUSを200℃より高い融解温度を有する半結晶質ポリエステルと組み合わせて用いられる。
【0033】
好ましくは、TPE−EUSならびに/または半結晶質ポリエステルの種類および量は、TPE−EUSまたはポリマー組成物の融解温度が205℃〜225℃、より好ましくは210℃〜220℃の範囲内となるように選択される。
【0034】
ここで、上記、下記および本発明の全体にわたって言及されるコポリエステルエラストマーおよびポリマー組成物の融解温度の値は、示差走査熱量計(DSC)(2回目の試験、10℃/分)により測定される融解温度を指すことに留意されたい。融解温度は、ASTM D3418−97に従い、窒素下で、以下の温度プロファイルを用いて測定される:10℃/分の速度を用いて室温から250℃まで加熱;材料を2分間250℃に維持;10℃/分の速度を用いて材料を70℃に冷却;材料を2分間70℃に維持;そして10℃/分の速度を用いて材料を250℃に加熱。融解温度は、融点範囲内の最も速い融解速度を示す温度として2回目の加熱の間に決定される。
【0035】
TPE−EUSまたはポリマー組成物のより高い融解温度の利点は、TPE−EUSまたはポリマー組成物を用いたチューブまたはケーブルが高温でより優れた特性保持を有することであり、他方でより低い融解温度の利点は、このチューブまたはケーブルがより高い可撓性および加工容易性を有することである。
【0036】
本発明はまた、フィルムに関する。TPE−EUSまたはポリマー組成物は、チューブおよびケーブルで使用され得るだけでなく、フィルムでも使用され得る。そのようなフィルムはまた、上記のように、高温(特に、それぞれの融点のうちの1つ以上より高い温度)における熱安定性の増大および低温における可撓性の保持という利点を有する。
【0037】
同様の利点が、本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物から作製されるオーバーモールド成形品、射出成形品および吹込成形品(例えば、オーバーモールドされた(overmoulded)コネクター、インボードブーツ(例えばCVJブーツ)、燃料管、および空気入口マニホルドにおけるもの)にも当てはまる。
【0038】
本明細書に記載される、または本発明に係る用途に用いられるケーブルは、より具体的には電気ケーブルである。電気ケーブルは、典型的には、導電性心線(A)およびその導電性心線を覆う1つ以上のプラスチック層を含む。この1つ以上のプラスチック層は、例えば、外部クラッド層またはコーティング層(B)、および必要に応じて絶縁層(C)を含み得る。電気ケーブルはまた、2つ以上の導電性心線(A)を含み得、その各々が1つ以上の絶縁層(C)で必要に応じて覆われ、全ての導電性心線(A)および必要に応じて含まれる絶縁層(C)は、外部クラッド層もしくはコーティング層(B)で覆われかつ/または囲まれ得る。
【0039】
個々の層の各々は、別個にまたは全て一緒に構成され得、TPE−EUSもしくはTPE−EUSを含むポリマー組成物(X)または本明細書に記載されるそれらの任意の好ましい実施形態からなり得る。
【0040】
電気ケーブルの耐熱性およびその特性の保持は、例えば、次のとおりに試験され得る:熱処理後、ケーブルを、例えば、マンドレルの周りに巻きつけ、亀裂の発生を目視検査し、かつ/または水に浸漬して短絡について試験する。好適には、ケーブルはISO 6722に従って試験される。
【0041】
本発明に係る、または本発明に係る用途に用いられるチューブは、原則的に、任意のチューブ(例えば、単層チューブもしくは多層チューブおよび/または平滑もしくは波形チューブ)であり得る。チューブは、好適には、TPE−EUSもしくは本明細書に記載されるその任意の好ましい実施形態を含む層またはTPE−EUSを含むプラスチック組成物もしくは本明細書に記載されるその任意の好ましい実施形態から作製された層からなる単層チューブ、あるいはTPE−EUSもしくは本明細書に記載されるその任意の好ましい実施形態を含む層またはTPE−EUSを含むプラスチック組成物もしくは本明細書に記載されるその任意の好ましい実施形態から作製された層を少なくとも含む多層チューブである。
【0042】
チューブの耐熱性およびその特性の保持は、例えば、次のとおりに試験され得る:熱処理後、チューブを、例えば、その形状の保持について目視検査し、かつ/または可撓性および衝撃強度について機械的に試験する。不合格になる場合は、チューブが潰れたか、または脆くなった可能性がある。好適には、チューブはBMW規範のGS−95008−4に従って試験される。
【0043】
上記の利点を有する本発明に係るケーブルおよびチューブは、自動車製造用のケーブルハーネスにおける使用に特に適している。したがって、本発明はまた、本発明に係るケーブルおよび/もしくはチューブまたはそれらの任意の好ましい実施形態を含む自動車製造用のケーブルハーネス、ならびに自動車におけるそのケーブルハーネスの使用に関する。
【0044】
本発明に係るフィルムまたは本発明に係る用途に使用されるフィルムは、原則的に、任意のフィルム(例えば、単層フィルムまたは多層フィルム)であり得る。フィルムは、好適には、TPE−EUSもしくは本明細書に記載されるその任意の好ましい実施形態を含む層またはTPE−EUSを含むプラスチック組成物もしくは本明細書に記載されるその任意の好ましい実施形態から作製された層からなる単層フィルム、あるいはTPE−EUSもしくは本明細書に記載されるその任意の好ましい実施形態を含む層またはTPE−EUSを含むプラスチック組成物もしくは本明細書に記載されるその任意の好ましい実施形態から作製された層を少なくとも含む多層フィルムである。
【0045】
フィルムの耐熱性およびその特性の保持は、例えば、次のとおりに試験され得る:熱処理後、フィルムを、例えば、その形状の保持について目視検査し、かつ/または可撓性について機械的に試験する。不合格になる場合は、フィルムが崩れたか、または破断点伸びが低くなりすぎた可能性がある。
【0046】
本発明に係る成形物は、ウレタン結合を含むコポリエステルエラストマー(A)の融解温度Tm−Aまたは前記コポリエステルエラストマー(A)を含むポリマー組成物(X)の融解温度Tm−Xより高い温度での熱過負荷に耐え得ることが見出されただけでなく、意外なことに、前記融解温度より低い連続使用温度での前記成形物の性能を、前記融解温度より高い温度で短時間の間、この成形物を処理することによって向上させ得ることも見出された。
【0047】
そのため、成形物は、好ましくは、10分〜30時間の間の時間の間、より好ましくは30分〜5時間の間、Tm−Aおよび/またはTm−Xより0℃〜25℃高い温度(Ty)に供される。また、好ましくは、この熱処理は、酸素が乏しい環境、好ましくは酸素が5モル%未満、より好ましくは1モル%未満の気体環境下で適用される。さらにより好ましくは、この熱処理は、不活性環境下(例えば窒素ガス下)で適用される。
【0048】
本発明はまた、コポリエステルエラストマーに関する。本発明に係るコポリエステルエラストマーは、(a)ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、(b)ポリマーソフトブロックと、(c)ウレタン結合とを含み、上記ポリマーソフトブロックは、ポリカーボネートソフトブロックを含み(コポリカーボネートウレタンエステルエラストマーと示される)、上記コポリマーエラストマーは、200℃〜225℃の間の融解温度を有する。
【0049】
好適には、コポリカーボネート−ウレタン−エステルエラストマーは、芳香族ジカルボン酸から、必要に応じ、例えば脂環式ジカルボン酸および脂肪族ジオールと組み合わせて誘導される反復単位で構成されるハードポリエステルセグメントと、脂肪族カーボネートの反復単位で構成されるソフトセグメント、ならびに/あるいは脂肪族カーボネートおよび脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸もしくはラクトンのいずれかまたはそれらの組み合わせのランダムに分布した反復単位で構成されるソフトセグメントとからなる。ポリカーボネートソフトブロックは、好ましくは、ヘキサメチレンカーボネートから誘導される反復単位を含む。
【0050】
ポリカーボネートソフトブロックおよびウレタン結合を含むコポリエステルエラストマーは、例えば欧州特許第0846712−B1号明細書から知られている。この特許出願から公知のコポリカーボネートエステルエラストマーの融解温度は181〜199の範囲内である。欧州特許第0846712−B1号明細書は、Tmより高い熱過負荷温度を有する用途にこのコポリカーボネートエステルエラストマーを用いることについては言及も示唆もしておらず、クラスE区分の用途においてそのような物質を用いることについては言うまでもない。
【0051】
本発明に係るコポリカーボネートウレタンエステルエラストマーの調製のために、欧州特許第0846712−B1号明細書に言及されるようなポリカーボネートソフトブロック、ポリエステルハードブロックおよびウレタン結合の出発物質、ならびに欧州特許第0846712−B1号明細書に記載される方法が用いられ得る。より高い融点を得るためには、ポリエステルハードブロックとポリカーボネートソフトブロックの比率を上昇させ得るか、またはより長いポリエステルハードブロックをより長いポリカーボネートソフトブロックと組み合わせて用い得る。
【0052】
TPE−EUSまたはコポリエステルエラストマー(A)中のウレタン結合は、ハードブロックとポリマーソフトブロックとの間の結合であり得る。また、ウレタン結合は、ハードブロックおよび/またはポリマーソフトブロックの一部でもあり得、したがって、ハードブロック内および/またはポリマーソフトブロック内のセグメント間の結合を形成し得る。
【0053】
本発明はまた、
(A)ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、ポリマーソフトブロックと、ウレタン結合とを含むコポリエステルエラストマー(TPE−EUSと示される)、および
(B)半結晶質ポリエステル
を含むポリマー組成物(X)であって、
−上記熱可塑性コポリエステルエラストマー(A)は、200℃より高い融解温度(Tm−A)を有し、かつ/または
−上記ポリマー組成物(X)は、200℃より高い融解温度(Tm−X)を有する
ポリマー組成物(X)に関する。
【0054】
上記ポリマー組成物の好ましい実施形態において、Tm−Aおよび/またはTm−Xは200℃〜225℃の間であり、好ましくは205℃〜220℃の範囲内であり、さらにより好ましくは210℃〜215℃の範囲内である。
【0055】
ポリマー組成物(X)の別の好ましい実施形態において、コポリエステルエラストマー(A)は、200℃より低い、より好ましくは160℃または180℃より高い融解温度(Tm−A)を有し、半結晶質ポリエステル(B)は、200℃より高い、好ましくは210℃〜250℃の範囲内、なお好ましくは220℃〜240℃の範囲内の融解温度を有する。この実施形態は、低温可撓性および高温特性保持のより一層の最適化を可能とする。
【0056】
ポリエステルハードブロックは、短鎖ジオールおよび芳香族ジカルボン酸に基づく、または短鎖ジオールおよび芳香族ジカルボン酸から誘導される反復エステル単位からなり得る。
【0057】
TPE−EUSのハードセグメント中の芳香族ジカルボン酸は、例えば、テレフタル酸、ナフタリンジカルボン酸およびビフェニルジカルボン酸、またはそれらの混合物であり得る。必要に応じ、ジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)を少量含む。脂肪族ジオールは、例えば、エチレンジオール(エチレングリコールとしても知られている)、プロピレンジオール、ブチレンジオール(1,4−ブタンジオールとしても知られている)、ヘキサメチレンジオール、またはそれらの混合物であり得る。ハードセグメントは、好ましくは、テレフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコールおよび/または1,4−ブタンジオールを含む脂肪族ジオールとから誘導される反復単位で構成され、言い換えれば、ポリエステルハードブロックは、PBTセグメントおよび/またはPETセグメントを含む。より好ましくは、ハードセグメントは、テレフタル酸および1,4−ブタンジオールからなる(PBT)。
【0058】
本発明において用いられるTPE−EUS中のソフトブロックは、組成が広範に異なるポリマーから選択され得、好ましくは、ウレタン結合により組み込まれ得る。ソフトブロックは、例えば、ポリエーテル、ポリエステルおよび/またはポリカーボネートセグメントを含み得る。好適には、ソフトブロックは、ポリエーテルソフトブロック、ポリエステルソフトブロック、および/またはポリカーボネートソフトブロックを含む。ポリエーテルソフトブロックを含むTPE−EUSは、本明細書において、コポリエーテル−ウレタン−エステルエラストマーとも示される。ポリエステルソフトブロックを含むTPE−EUSは、本明細書において、コポリエステル−ウレタン−エステルエラストマーとも示され、ポリカーボネートソフトブロックを含むTPE−EUSは、上述のように、本明細書において、コポリカーボネート−ウレタン−エステルエラストマーと示される。
【0059】
コポリエーテル−ウレタン−エステルエラストマーについては、本明細書において、高融点の結晶質もしくは半結晶質の芳香族もしくは半芳香族(semi−aromatic)ポリエステルのブロックからなるハードセグメントと、低融点ポリエーテルのブロックからなるソフトセグメントとを含み、ハードセグメントおよびソフトセグメントがウレタン基で連結されてい得るブロックコポリマーと理解される。好適には、ハードセグメントおよびソフトセグメントの一部がウレタン基で連結されており、好都合には、すべてのハードセグメントおよびソフトセグメントがウレタン基で連結されている。また、好適には、コポリエーテル−ウレタン−エステルエラストマーは、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジオールから誘導される反復単位で構成されるハードポリエステルセグメントと、ポリ(アルキレンオキシド)としても知られているポリグリコールエーテルで構成されるソフトセグメントとからなる。コポリエーテルエステルエラストマー中の適切なソフトセグメントであるポリ(アルキレンオキシド)の例には、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)およびポリ(テトラメチレンオキシド)、ならびにモノマー単位(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはテトラメチレンオキシド)から誘導される構造反復単位のランダムコポリマーおよびブロックコポリマーがある。コポリエーテル−ウレタン−エステルエラストマーならびにその調製は、例えば、PCT特許出願国際公開第99/51656号パンフレットに記載されている。
【0060】
コポリエステル−ウレタン−エステルエラストマーについては、本明細書において、高融点の結晶質もしくは半結晶質の芳香族もしくは半芳香族ポリエステルのブロックからなるハードセグメントと、低融点ポリエステルジオールのブロックからなるソフトセグメントとを含み、ハードセグメントおよびソフトセグメントがウレタン基で連結され得るブロックコポリマーと理解される。好適には、ハードセグメントおよびソフトセグメントの一部がウレタン基で連結されており、好都合には、全てのハードセグメントおよびソフトセグメントがウレタン基で連結されている。また、好適には、コポリエステル−ウレタン−エステルエラストマーは、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジオールから誘導される反復単位で構成されるハードポリエステルセグメントと、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸もしくはラクトンのいずれかまたはそれらの組み合わせで構成されるソフトセグメントとからなる。本明細書において、脂肪族ジオールは脂環式ジオールを含み得、かつ/または脂肪族ジカルボン酸は脂環式ジカルボン酸を含み得る。コポリエステル−ウレタン−エステルエラストマーおよびその調製は、例えば、欧州特許第0102115−B1号明細書に記載されている。
【0061】
ポリエーテルソフトブロックは、より優れた耐加水分解性を提供し、ポリエステルソフトブロック、そしてそれよりもさらにポリカーボネートセグメントは、より良い熱過負荷特性保持を提供する。
【0062】
ウレタン結合を形成するための合成単位としての使用に適したイソシアネートは、式OCN−R−NCOにより表される通常の二官能性イソシアネート、すなわちジイソシアネートである。
【0063】
本明細書に記載される発明において、TPE−EUSに含まれるウレタン結合は、ジイソシアネートと、例えば長鎖ジオールおよび短鎖ジオールとを反応させることによって形成されたものであり得る。ウレタン基は、以下の式により化学的に表される:−O−C(O)−NH−。したがって、得られたウレタン結合は、構造−O−C(O)N(H)−R−N(H)C(O)−O−を有する反復単位により表され得る。
【0064】
式OCN−R−NCOおよび式−O−C(O)N(H)−R−N(H)C(O)−O−の両方において、Rは、脂肪族ビラジカル(bi−iradical)部分、脂肪族−芳香族ジラジカル部分、または脂肪族ビラジカル部分を表し得る。
【0065】
脂肪族ジラジカル部分は、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれか、またはそれらの組み合わせ(例えば、脂環式ビラジカル)であり得、好ましくは、2個〜15個の炭素原子を含む。
【0066】
TPE−ESUに用いられ得、ウレタン結合が由来し得るジイソシアネートは、例えば、芳香族ジイソシアネート(例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)(R=−C(−CH)−)、フェニルジイソシアネート(−C−)およびメチレンジフェニルジイソシアネートまたはジフェニルメタン−ジイソシアネート(MDI)(R=(−C−CH−C−))、脂肪族−芳香族ジイソシアネート(例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)(R=−(CHC−C−CH(CH−))、および脂肪族ジイソシアネート(例えば、ヘキサンジイソシアネートもしくはヘキサメチレン−ジイソシアネート(HMDI)(R=−(CH−)、シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)(R=−C10−)、またはイソホロン/ジイソシアネート(IPDI)(R=−C−(CH−))である。好ましくは、ジイソシアネートは、芳香族ジイソシアネートであり、より好ましくは、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)である。MDIの利点は、熱過負荷条件下における製品の熱安定性へのより一層の寄与である。
【0067】
ウレタン結合を有するコポリエステルエラストマーの調製に用いられるイソシアネートは、純粋なジイソシアネートであり得、または市販のジイソシアネート製品に通常含まれるような他の成分(例えば、カルボジイミド(carbodimide)、ウレトンイミン(uretonimine)、イソシアヌレート、ならびにウレトジオン(urethdion)および/またはアロファネート残留物)を少量、ならびにトリイソシアネートを少量含み得る。ソフトブロックセグメントおよびハードブロックセグメントとは別にウレタン結合を含むコポリエステルエラストマーまたはその前駆体の調製のために、ジイソシアネートはまた、連鎖延長剤(例えば、短鎖ジオールおよび/または短鎖ジアミン)と組み合わせて用いられ得る。
【0068】
ウレタン結合は、本発明に係るポリマー組成物またはそのポリマー組成物から作製された製品に、広範囲にわたる種々の量で含まれ得る。ウレタン結合の量を計算するために、反復単位−O−C(O)−NH−R−NH−C(O)−O−の構造を用い得る。実用上の理由からは、むしろ、この反復単位が誘導されたジイソシアネートについての式を用いるのが好ましい。そうして計算された量は、形式上、長鎖ジオールおよび短鎖ジオールの−OH末端基に由来するO原子およびH原子を考慮に入れない。そうすることにより、ウレタン結合は、式−O−C−N−R−N−C−O−により表され得る。
【0069】
好ましくは、式−O−C−N−R−N−C−O−により表されるウレタン結合は、コポリエステルエラストマー(A)と必要に応じて含まれる半結晶質ポリエステル(B)との総重量に対し、0.5重量%〜15重量%、好ましくは1重量%〜10重量%、より好ましくは2重量%〜6重量%の量で含まれる。
【0070】
意外なことに、非常に少量で既に特性保持に対する効果が認められ、この効果は量の増加とともに上昇する。量が増えると、この上昇は横ばいになる。最大量を小さくすると、ポリマー組成物の熱過負荷条件での非常に優れた熱安定性と可撓性をより良く均衡させるという点で有利である。
【0071】
本発明において用いられるポリマー組成物(X)またはコポリエステルエラストマー(A)は、好ましくは80未満、より好ましくは60〜75の範囲内のショアーD硬度を有するが、広範囲にわたる種々の硬度または可撓性を有し得る。硬度が低いほどより高い可撓性が得られるのに対し、硬度が高いほどより優れた熱過負荷性能が得られる。
【0072】
本発明において用いられるポリマー組成物中の半結晶質ポリエステル(B)は、ケーブル、チューブまたはフィルム用途における使用に適し、例えば、TPE−EUSの機械的性質の均衡を保たせ得、かつ/または融解温度を上昇させる任意の半結晶質ポリエステルであり得る。好ましくは、PBTおよび/またはPETが用いられる。より好ましくは、PBTハードセグメントを含むコポリエステルエラストマーと組み合わせて、PBTが半結晶質ポリエステルとして用いられる。
【0073】
半結晶質ポリエステル(B)は、本発明に係るポリマー組成物またはそのポリマー組成物から作製された製品に、非常に広い範囲で含まれ得る。好ましくは、半結晶質ポリエステル(B)は、コポリエステルエラストマー(A)および半結晶質ポリエステル(B)の総重量に対し、1重量%〜40重量%、より好ましくは5重量%〜35重量%、さらにより好ましくは10重量%〜30重量%の量で含まれる。
【0074】
本発明に係るポリマー組成物およびそのポリマー組成物から作製された製品は、コポリエステルエラストマー(A)および必要に応じて含まれる結晶質ポリエステル(B)とは別に、一種以上の追加のポリマー成分および/または添加剤を含み得る。
【0075】
ポリマー組成物およびそのポリマー組成物から作製された製品に含まれ得る添加剤としては、可撓性コポリエステルエラストマーの製造および使用に係る当業者により知られた補助的な通常の添加剤が挙げられる。好適な添加剤には、例えば、安定剤(例えば、UV安定剤、熱安定剤および酸化防止剤)、顔料および着色剤、加工助剤(例えば、離型剤および滑剤)、流動性改良添加剤、耐衝撃性改善剤、充填剤ならびに難燃剤(例えば、ハロゲン含有難燃剤、ハロゲン非含有難燃剤および難燃相乗剤)がある。
【0076】
ポリマー組成物に含まれ得るポリマーとしては、例えば、TPE−EUS以外のコポリエステルエラストマー、すなわち、ウレタン結合を含まないコポリエステルエラストマーが挙げられる。
【0077】
前記ポリマー組成物が追加のポリマー成分を含む場合、コポリエステルエラストマー(A)および必要に応じて含まれる半結晶質ポリエステル(B)は、ポリマー組成物中のポリマー成分の総量に対し、合わせて、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%、さらには95重量%の量で含まれる。
【0078】
ポリマー組成物が1つ以上の添加剤を含む場合、これらの添加剤は、好ましくは多くて40重量%、より好ましくは多くて25重量%の量で含まれる。
【0079】
上記の本発明に係るポリマー組成物の一部を成す半結晶質ポリエステルは、本発明に係る製品(例えば、フィルム、チューブおよびケーブル)または製品に少なくとも含まれる層を形成するためのポリマー組成物に、必要に応じて含まれる成分である。これまで随所で半結晶質ポリエステル以外の構成要素について述べた好ましい特徴、実施形態、範囲または組成が記載されたが、これらの好ましい特徴、実施形態、範囲または組成は、本発明に係るポリマー組成物およびポリエステルエラストマーまたはポリマー組成物から作製される製品(例えば、フィルム、チューブおよびケーブル)の、半結晶質ポリエステルが含まれる局面および半結晶質ポリエステルが含まれない局面の両方に適用され得ることに留意されたい。
【0080】
本発明を、以下の実施例および比較実験を用いてさらに説明する。
【0081】
[材料]
I−P コポリエーテルエステル、Tm 210℃、ウレタン結合無し。
II−UC ウレタン結合を含むコポリカーボネートエステル、Tm 199℃、5重量%ウレタン結合。
III−UE ウレタン結合を含むコポリカーボネートエステル、Tm 220℃、5重量%ウレタン結合。
PBT Tm 225℃。
【0082】
ウレタン結合の重量パーセントは、コポリエステルエラストマーの総重量、またはポリマー組成物中のコポリエステルエラストマーおよびPBTの総重量に対するジイソシアネートの量を基準にしている。
【0083】
[融解温度]
融解温度を、ASTM D3418−97に従い、窒素下で、以下の温度プロファイルを用い、示差走査熱量計(DSC)(2回目の試験、10℃/分)により測定した:10℃/分の速度を用いて室温から250℃に加熱;材料を2分間250℃に維持;10℃/分の加熱速度を用いて材料を70℃に冷却;材料を2分間70℃に維持;そして10℃/分の加熱速度を用いて材料を250℃に加熱。融解温度は、融点範囲内の最も速い融解速度を示す温度として2回目の加熱試験の間に決定される。測定には、5mgの量のポリマー材料を用いた。
【0084】
熱過負荷試験の間に適用される温度は、標準的な方法および温度計を用いて測定され得る。
【0085】
[加工および試験]
製品はそのまま用いるか、該当する場合に、加工前にドライブレンドした。
【0086】
これらの製品またはブレンドは、チューブおよびケーブルを製造するための標準的な押出装置を用いて押出した。得られた生成物を、周囲雰囲気および圧力において、6時間、225℃の温度で熱過負荷試験に供した。チューブを、形状の保持および可撓性について検査した(巻き付け試験についてはGS95008−4参照)。ケーブルを、可撓性について、マンドレルに巻き付けることにより、そして漏電試験において検査した。これらの試験は、ISO6722に従って実施された。組成および試験結果を表1に示す。
【0087】
【表1】



【0088】
試験結果は、融解温度が低すぎる、かつ/またはウレタン結合を含まない製品(CE−AおよびCE−B)が試験に不合格であることを示している。それに対し、Ex−IおよびEx−IIの製品は、これらが熱過負荷試験を行った温度より低い融解温度を有するという事実にもかかわらず、満足な結果を示している。Ex−IおよびIIの製品は、これらの製品がウレタン結合を含まなければならないという本発明の要件を満たしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱過負荷温度(Tto)を規定する熱過負荷要件を有する製品を製造するための、融解温度(Tm−X)を有し、かつコポリエステルエラストマー(A)を含むかまたはコポリエステルエラストマー(A)からなるポリマー組成物(X)の使用であって、前記コポリエステルエラストマー(A)は、融解温度(Tm−A)を有し、かつ(a)ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、(b)ポリマーソフトブロックと、(c)ウレタン結合とを含み、TtoはTm−Aおよび/またはTm−Xより高く、Tm−Aおよび/またはTm−Xは、ASTM D3418−97に従って示差走査熱量計(DSC)(2回目の試験、10℃/分)により測定される場合、200℃より高い、使用。
【請求項2】
規定された熱過負荷温度(Tto)を有する用途における、融解温度(Tm−X)を有し、かつコポリエステルエラストマー(A)を含むかまたはコポリエステルエラストマー(A)からなるポリマー組成物(X)を含む製品の使用であって、前記コポリエステルエラストマー(A)は、融解温度(Tm−A)を有し、かつ(a)ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、(b)ポリマーソフトブロックと、(c)ウレタン結合とを含み、TtoはTm−Aおよび/またはTm−Xより高く、Tm−Aおよび/またはTm−Xは、ASTM D3418−97に従って示差走査熱量計(DSC)(2回目の試験、10℃/分)により測定される場合、200℃より高い、使用。
【請求項3】
ISO6722もしくはGS95008−4に従うクラスE区分適性ならびに/または少なくとも225℃の熱過負荷温度Ttoが要求され、TtoとTm−Aの間および/またはTtoとTm−Xの間の差異が0℃〜25℃の間である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記製品が押出品、吹込成形品または射出成型品であり、前記製品は、好ましくは、ケーブル、チューブ、フィルム、オーバーモールドされたコネクター、インボードブーツ、または空気入口マニホルドである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
成形物の熱処理の方法であって、前記成形物はポリマー組成物(X)から作製され、前記ポリマー組成物(X)は、融解温度(Tm−X)を有し、かつコポリエステルエラストマー(A)を含み、前記コポリエステルエラストマー(A)は、(a)ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、(b)ポリマーソフトブロックと、(c)ウレタン結合とを含み、かつ融解温度(Tm−A)を有し、前記成形物は、10分〜30時間の間の時間にわたってTm−Aおよび/またはTm−Xより0℃〜25℃高い温度(Ty)に供され、Tm−Aおよび/またはTm−Xは、ASTM D3418−97に従って示差走査熱量計(DSC)(2回目の試験、10℃/分)により測定される場合、200℃より高い方法。
【請求項6】
(a)ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、(b)ポリマーソフトブロックと、(c)ウレタン結合とを含むコポリマーエラストマーであって、前記ポリマーソフトブロックはポリカーボネートソフトブロックを含み、前記コポリマーエラストマーは200℃〜225℃の間の融解温度を有し、前記融解温度は、ASTM D3418−97に従って示差走査熱量計(DSC)(2回目の試験、10℃/分)により測定される、コポリマーエラストマー。
【請求項7】
(A)(a)ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、(b)ポリマーソフトブロックと、(c)ウレタン結合とを含むコポリエステルエラストマー、および
(B)半結晶質ポリエステル
を含むポリマー組成物(X)であって、
−前記コポリエステルエラストマー(A)は、200℃より高い融解温度(Tm−A)を有し、かつ/または
−前記ポリマー組成物(X)は、200℃より高い融解温度(Tm−X)を有し、
前記融解温度は、ASTM D3418−97に従って示差走査熱量計(DSC)(2回目の試験、10℃/分)により測定される
ポリマー組成物(X)。
【請求項8】
Tm−Aおよび/またはTm−Xが、200℃〜225℃の間である、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
Tm−Aおよび/またはTm−Xが、210℃〜215℃の間である、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記ウレタン結合が、式−O−C−N−R−N−C−O−により表され、コポリエステルエラストマー(A)と前記半結晶質ポリエステル(B)との総重量に対して0.5重量%〜15重量%の量で存在する、請求項7〜9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
ポリマー組成物(X)からなる層を少なくとも含むチューブ、電気ケーブルまたはフィルムであって、前記ポリマー組成物(X)は、
(A)(a)ポリエステルセグメントを含むハードブロックと、(b)ポリマーソフトブロックと、(c)ウレタン結合とを含むコポリエステルエラストマー、および必要に応じて、
(B)半結晶質ポリエステル
を含み、
前記コポリエステルエラストマー(A)は200℃より高い融解温度Tm−Aを有し、かつ/または前記ポリマー組成物(X)は200℃より高い融解温度Tm−Xを有し、前記融解温度は、ASTM D3418−97に従って示差走査熱量計(DSC)(2回目の試験、10℃/分)により測定される
チューブ、電気ケーブルまたはフィルム。
【請求項12】
Tm−Aおよび/またはTm−Xが200℃〜225℃の間であり、かつ/または前記ウレタン結合が式−O−C−N−R−N−C−O−により表され、コポリエステルエラストマー(A)と前記半結晶質ポリエステル(B)との総重量に対して0.5重量%〜15重量%の量で存在する、請求項10に記載のチューブ、電気ケーブルまたはフィルム。
【請求項13】
請求項11または12に記載のケーブルおよび/またはチューブを含む自動車製造用のケーブルハーネス。
【請求項14】
ISO6722またはGS95008−4に従うクラスE区分適性を有する、請求項10〜12のいずれか一項に記載のチューブ、電気ケーブルまたはフィルム。

【公表番号】特表2011−504944(P2011−504944A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534444(P2010−534444)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065325
【国際公開番号】WO2009/065755
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】