説明

クラッチオイルリザーバーキャップ

【課題】 クラッチオイルリザーバータンク内の圧力を大気圧と等しくすることができるクラッチオイルリザーバーキャップを提供する。
【解決手段】 ヘッド及びボディーを含むクラッチオイルリザーバーキャップに於いて、前記ヘッドとボディーの接合部分に形成された排気口と、前記ヘッドに形成された吸気口と、クラッチオイルリザーバータンクの圧力変動によって前記排気口または前記吸気口のいずれか一方をを選択的に開閉するように前記ヘッド内部に配備された差動バルブと、を含んで構成されるクラッチオイルリザーバーキャップを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクラッチを制御する油圧系統装置の部品に係り、より詳細には、クラッチオイルリザーバータンク内の圧力を大気圧と等しくすることができるクラッチオイルリザーバーキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両を駆動する駆動力はエンジンによって発生され、エンジンで発生した駆動力は変速過程を経て車輪に伝達される。
前記変速過程は、車両が必要とする駆動力を効率的に利用するためのもので、変速後の駆動力を円滑に伝達する機構としてクラッチが使用される。
前記クラッチは油圧制御装置によって作動し、該油圧制御装置にクラッチオイルリザーバータンクからオイルが供給される。
前記クラッチオイルリザーバータンクの内部の圧力は、オイルを安定的に供給するために、常に大気圧を維持する必要がある。
【0003】
しかし、夏と冬とでは気温が異なるのでクラッチオイルリザーバータンク内の圧力が変化し、またクラッチディスクが磨耗すると油圧系統の油量が変化してクラッチオイルリザーバータンク内の圧力が変化するなど、種々の要因によってクラッチオイルリザーバータンク内の圧力は変化する。
このようなクラッチオイルリザーバータンク内の圧力の変化に対処するために、大気と連通するホール(hole)を形成することが考えられるが、単純にホールを形成しただけでは、クラッチオイルによってホールが詰まったり、クラッチオイルが漏出したりする可能性があり、好ましくない。
【0004】
【特許文献1】特開2002−68262
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、クラッチオイルリザーバータンク内の圧力を大気圧と等しくすることができ、排気口及び吸気口がオイルによって詰まるのが防止され、かつ、オイルが前記排気口及び吸気口から漏出するのが防止された、クラッチオイルリザーバーキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を解決するために提供する本発明のクラッチオイルリザーバーキャップは、ボディーと、ボディーに形成されたヘッドと、ヘッドに形成された排気口及び吸気口と、ヘッドの内部に形成された差動バルブと、を含んで構成され、前記差動バルブは、ボディーに接続されたクラッチオイルリザーバータンクの圧力の変動に対応して排気口又は吸気口の何れか一方を選択的に開放することを特徴とする。
【0007】
また、差動バルブが初期位置に戻る復原力を有するように、ヘッドに弾性体が配備される。
また、吸気口は、外部と差動バルブ及びヘッドの間に形成された第1空間とを連通する第1ホールと、第1空間と連通してヘッドの内部側方に形成された第2ホールと、差動バルブに形成されてクラッチオイルリザーバータンクと連通した第3ホールと、を含み、第2ホール及び第3ホールは、クラッチオイルリザーバータンクの圧力変動に対応して、選択的に第1空間とクラッチオイルリザーバータンクとを連通させる。
【0008】
また、差動バルブは、該差動バルブの上方に向けて突出して形成された第1突出部と、該第1突出部に穿設された第3ホールと、を含んで形成される。
また、排気口は、ヘッドとボディーとの接続部分に形成される。
また、差動バルブは、クラッチオイルリザーバータンクの圧力変動に対応して選択的に排気口を開閉する、差動バルブの下方に向けて突出して形成された第2突出部を含む。
また、ボディーには、クラッチオイルが漏出するのを防止する遮断部とシーリングゴムとが形成される。
【0009】
本発明請求項8に記載の発明は請求項3に記載の発明であって、排気口は、ヘッドとボディーとの接続部分に形成される。
また、差動バルブは、クラッチオイルリザーバータンクの圧力変動に対応して選択的に排気口を開閉する、差動バルブの下方に向けて突出して形成された第2突出部を含む。
また、ボディーには、クラッチオイルが漏出するのを防止する遮断部とシーリングゴムとが形成される。
【0010】
本発明請求11に記載の発明は請求項2に記載の発明であって、差動バルブは、該差動バルブの下方に向けて突出形成されたところの、弾性体を支持する第3突出部を備える。
また、吸気口は、外部と差動バルブ及びヘッドの間に形成された第1空間とを連結する第1ホールと、第1空間と連通してヘッドの内側側方に形成された第2ホールと、差動バルブに形成されてクラッチオイルリザーバータンクと連通した第3ホールと、を含み、第2ホール及び第3ホールは、クラッチオイルリザーバータンクの圧力変動に対応して、選択的に第1空間と前記第3突出部及び前記差動バルブの間に形成された第2空間とを連通させる。
【0011】
差動バルブに形成されてクラッチオイルリザーバータンクと連通した第3ホールと、を含み、第2ホール及び第3ホールは、クラッチオイルリザーバータンクの圧力変動に対応して、選択的に第1空間とクラッチオイルリザーバータンクとを連通させる。
また、差動バルブは、該差動バルブの上方に向けて突出して形成された第1突出部と、該第1突出部に穿設された第3ホールと、を含んで形成される。
また、排気口は、ヘッド及びボディーの接続部分に形成され、差動バルブは、クラッチオイルリザーバータンクの圧力変動に対応して選択的に排気口を開閉する、差動バルブの下方に向けて突出して形成された第2突出部を含む。
また、ボディーには、クラッチオイルが漏出するのを防止する遮断部とシーリングゴムとが形成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施例によるクラッチオイルリザーバーキャップは、単純な構造の差動バルブを用いて、クラッチオイルリザーバータンク内の圧力を大気圧と等しくすることができきる。
本発明の実施例によるクラッチオイルリザーバーキャップは、内部に第1空間を形成し、急激な圧力変化なくクラッチオイルリザーバータンク内の圧力を大気圧と等しくすることができる。
本発明の実施例によるクラッチオイルリザーバーキャップは、内部に第1空間を形成して外部からの汚染物質の流入を遮断することができる。
本発明の実施例によるクラッチオイルリザーバーキャップは、第2空間を形成してクラッチオイルの逆流を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を、添付した図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるクラッチオイルリザーバーキャップの構成を概略的に示した断面図であり、図2及び図3は、各々図1のクラッチオイルリザーバーキャップの空気排出時及び流入時の作動状態を概略的に示した断面図である。
図1に示すように、本発明のクラッチオイルリザーバーキャップは、瓶口のみ破線で示したクラッチオイルリザーバータンク500に螺合して装着される蓋であって、クラッチオイルリザーバータンク500内部の圧力が所定より低くなった場合にクラッチオイルリザーバータンク500内部に空気を流入させ、所定より高くなった場合に内部の気体を排出する機能を有する。
【0014】
本発明の一実施形態によるクラッチオイルリザーバーキャップの外観は、円盤状のボディー200に、ボディー200より直径の短い円盤状であるヘッド100を中心軸を合わせて重ねた形状を有する。
ボディー200上面とヘッド100下面とが接合する部分に第3突出部400が設置される。
【0015】
本発明の排気口(exhaust hole)130は、ヘッド100とボディー200との接続部分を貫通して、外部とボディー200内部とを連通して形成される。
ヘッド100には吸気口(inhale hole)が形成される。
ヘッド100の内部には、円板状の差動バルブ300が、ヘッド100の上面と平行に、ヘッド100の内面と摺合して気密に、且つ、上下動可能に配設される。差動バルブ300は、差動バルブ300の下面と連通したクラッチオイルリザーバータンク500内部の圧力変動に対応して上下動する。
【0016】
差動バルブ300は、周縁部上方に突設された第1突出部310と、該第1突出部310に穿設された第3ホール330と、周縁部下方に突設された第2突出部320と、を含んで構成される。
差動バルブ300上方のヘッド100の内部に第1空間140が形成され、差動バルブ300下面と第3突出部400との間に第2空間340が形成される。
【0017】
第1空間140の、差動バルブ300上面とヘッド100の上部下面と間に上部弾性体410が張着され、第2空間340の、差動バルブ300下面と第3突出部400上面との間には下部弾性体420が張着され、差動バルブ300が初期位置に戻る復原力を与える。前記初期位置とは、ヘッド100と第3突出部400との中間付近である。
【0018】
本発明の吸気口は、ヘッド100を貫通し外部と第1空間140とを連通する第1ホール110と、第1空間140と第1突出部310とを連通するようにヘッド100の内部側面に穿設された第2ホール120と、第1突出部310内部に穿設されて第2空間340と連通する第3ホール330と、第2空間340と、を含んで構成される。
第2ホール120と第3ホール330とは、差動バルブ300が初期位置にある場合は封鎖され、差動バルブ300が可動範囲の下端まで移動した時にのみ解放するように配設される。
排気口130は、差動バルブ300が初期位置にある場合は第2突出部320によって閉鎖され、差動バルブ300が可動範囲の上端まで移動したときにのみ解放されるように配設される。
【0019】
ボディー200の内側下部側面には、クラッチオイルリザーバーキャップとクラッチオイルリザーバータンク500とを螺着するための螺子が刻設された結合部230が形成され、ボディー200の内部上面にはクラッチオイルリザーバータンク500の内径に対応する遮断部210が形成される。クラッチオイルリザーバーキャップの結合部230と、クラッチオイルリザーバータンク500とを、シーリングゴム220を介在させて螺合することによって、クラッチオイルリザーバーキャップがクラッチオイルリザーバータンク500に装着される。
【0020】
以下、クラッチオイルリザーバーキャップの作動状況について説明する。
図1は本発明の実施例によるクラッチオイルリザーバータンク500内の圧力が外気圧と等しい状態に於ける作動状況を示した図面である。
オイルリザーバータンク500内の圧力が大気圧と均衡している状態では、差動バルブ300は、上部弾性体410と下部弾性体420の弾性によって、ヘッド100と第3突出部400との中間の初期位置に遊着される。この状態に於いては、第1突出部310に形成された第3ホール330とヘッド100に形成された第2ホール120とは連通されない状態であり、吸気口は封鎖される。また、第2突出部320によって排気口130も封鎖される。
【0021】
クラッチオイルリザーバータンク500内の温度の上昇などによってクラッチオイルリザーバータンク500内の圧力が上昇すると、図2に示したように、差動バルブ300が可動範囲の上端まで上昇して、排気口130が開かれる。その後、排気口130を通じてクラッチオイルリザーバータンク500内の圧力が解消されると、差動バルブ300は下降して、図1に示す初期位置に戻る。
【0022】
クラッチオイルリザーバータンク500内の温度の下降などによってクラッチオイルリザーバータンク500内の圧力が低下すると、図3に示したように、差動バルブ300が可動範囲の下端まで下降して、第2ホール120と第3ホール330とが連通され、これによって空気が第1ホール110と第1空間140と第2ホール120と第3ホール330と、第2空間340とを通ってクラッチオイルリザーバータンク500内に流入する。
従って、クラッチオイルリザーバータンク500内の圧力変化が急激に起こらず、騒音や振動の発生を防止することができる。
また、外部からの汚染物質の流入は第2空間340で遮断される。
【0023】
また、第2空間340が形成されるので、クラッチオイルが逆流して外部に漏出するのを防止する。
吸気口からクラッチオイルリザーバータンク500内の圧力が大気圧と同一な状態になると、差動バルブ300は初期位置に上昇して、再び図1のような状態を維持する。
【0024】
前記弾性体は、上部弾性体410及び下部弾性体420の両方を用いて形成することもでき、上部弾性体410または下部弾性体420のうちのいずれか一方のみを用いて形成することもできる。
以上で本発明に関する好ましい実施例を説明したが、本発明は前記実施例に限定されず、本発明の実施例から当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって容易に変更されて均等だと認められる範囲の全ての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の1実施形態によるクラッチオイルリザーバーキャップの構成を概略的に示した断面図である。
【図2】図1のクラッチオイルリザーバーキャップの空気排出時の作動状態を概略的に示した断面図である。
【図3】図1のクラッチオイルリザーバーキャップの空気流入時の作動状態を概略的に示した断面図である。
【符号の説明】
【0026】
100 ヘッド
110 第1ホール
120 第2ホール
130 排気口
140 第1空間
200 ボディー
210 遮断部
220 シーリングゴム
230 結合部
300 差動バルブ
310 第1突出部
320 第2突出部
330 第3ホール
340 第2空間
400 第3突出部
410 上部弾性体
420 下部弾性体
500 クラッチオイルリザーバータンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディーと、前記ボディーに形成されたヘッドと、前記ヘッドに形成された排気口及び吸気口と、前記ヘッドの内部に形成された差動バルブと、を含んで構成され、
前記差動バルブは、前記ボディーに接続されたクラッチオイルリザーバータンクの圧力の変動に対応して前記排気口又は前記吸気口の何れか一方を選択的に開放することを特徴とするクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項2】
前記差動バルブが初期位置に戻る復原力を有するように、前記ヘッドに弾性体が配備されていることを特徴とする請求項1に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項3】
前記吸気口は、
外部と、前記差動バルブと前記ヘッドとの間に形成された第1空間と、を連通する第1ホールと、
前記第1空間と連通し、前記ヘッド内部側方に形成された第2ホールと、
前記差動バルブに形成され、前記クラッチオイルリザーバータンクと連通する第3ホールと、を含み、
前記第2ホールと前記第3ホールとは、前記クラッチオイルリザーバータンク内の圧力変動に対応して、選択的に前記第1空間と前記クラッチオイルリザーバータンクとを連通させることを特徴とする請求項2に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項4】
前記差動バルブは、該差動バルブ上方に突出して形成された第1突出部と、該第1突出部に穿設された前記第3ホールと、を含んで形成されることを特徴とする請求項3に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項5】
前記排気口は、前記ヘッドと前記ボディーとの接続部分に形成されることを特徴とする請求項4に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項6】
前記差動バルブは、前記クラッチオイルリザーバータンクの圧力変動に対応して選択的に前記排気口を開閉する、前記差動バルブの下方に向けて突出して形成された第2突出部を含むことを特徴とする請求項5に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項7】
前記ボディーには、クラッチオイルが漏出するのを防止する遮断部とシーリングゴムとが形成されることを特徴とする請求項6に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項8】
前記排気口は、前記ヘッドと前記ボディーとの接続部分に形成されることを特徴とする請求項3に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項9】
前記差動バルブは、前記クラッチオイルリザーバータンクの圧力変動に対応して選択的に前記排気口を開閉する、前記差動バルブの下方に向けて突出して形成された第2突出部を含むことを特徴とする請求項8に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項10】
前記ボディーには、クラッチオイルが漏出するのを防止するように遮断部とシーリングゴムとが形成されることを特徴とする請求項9に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項11】
前記差動バルブは、該差動バルブの下方に向けて突出形成されたところの、前記弾性体を支持する第3突出部を備えることを特徴とする請求項2に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項12】
前記吸気口は、
外部と、前記差動バルブと前記ヘッドとの間に形成された第1空間と、を連結する第1ホールと、
前記第1空間と連通し、前記ヘッドの内側側方に形成された第2ホールと、
前記差動バルブに形成され、前記クラッチオイルリザーバータンクと連通した第3ホールと、を含み、
前記第2ホールと前記第3ホールとは、前記クラッチオイルリザーバータンクの圧力変動に対応して、選択的に前記第1空間と、前記第3突出部と前記差動バルブとの間に形成された第2空間と、を連通させることを特徴とする請求項11に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項13】
前記差動バルブは、該差動バルブ上方に突出して形成された第1突出部と、該第1突出部に穿設された第3ホールと、を含んで形成されることを特徴とする請求項12に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項14】
前記排気口は、ヘッド及びボディーの接続部分に形成され、
前記差動バルブは、前記クラッチオイルリザーバータンクの圧力変動に対応して選択的に前記排気口を開閉する、前記差動バルブの下方に向けて突出して形成された第2突出部を含むことを特徴とする請求項13に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。
【請求項15】
前記ボディーには、クラッチオイルが漏出するのを防止する遮断部とシーリングゴムとが形成されることを特徴とする請求項14に記載のクラッチオイルリザーバーキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−46194(P2009−46194A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325847(P2007−325847)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【Fターム(参考)】