説明

クラッチレリーズ軸受装置

【課題】軸方向の長さ寸法を短縮することができるクラッチレリーズ軸受装置を提供する。
【解決手段】リテーナ9の外周面に摺動可能に組み付けられる第1可動スリーブ10と、第1可動スリーブ10に組み付けられる第1クラッチレリーズ軸受30と、第1可動スリーブ10の外周に一体状に配置された案内筒40と、案内筒40の外周面に摺動可能に組み付けられ第2可動スリーブ50と、第2可動スリーブ50に組み付けられる第2クラッチレリーズ軸受70とを備える。案内筒40の端部には、第1クラッチレリーズ軸受30を収納する延長筒部42が形成される。延長筒部42を含む案内筒40の外周面には、第2可動スリーブを軸方向へ相対的に摺動案内する第1摺動部45と、第2摺動部46とがそれぞれ形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デュアルクラッチトランスミッション(以下、単にDCTという)に採用されるクラッチレリーズ軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乾式DCTに採用されるクラッチレリーズ軸受装置においては、例えば、特許文献1に開示されている。
これにおいては、図5に示すように、リテーナ9の外周面に軸方向へ摺動可能に配設される第1可動スリーブ210と、この第1可動スリーブ210の一端側に形成されたフランジ部210aの前側(図5では右側)に配置された第1カバー部材230に組み付けられて第1ダイヤフラムスプリング(図示しない)を作動する第1クラッチレリーズ軸受240と、第1可動スリーブ210の外周に軸方向へ摺動可能に組み付けられた第2可動スリーブ250と、この第2可動スリーブ250前側に第2カバー部材260を介して組み付けられて第2ダイヤフラムスプリング(図示しない)を作動する第2クラッチレリーズ軸受270とを備えている。
そして、第1可動スリーブ210のフランジ部210aの後側(図5では左側)に位置する外周面には、第2可動スリーブ250が待機位置に配置された状態で第1可動スリーブ210が作動位置まで軸方向へ摺動されたときに第2可動スリーブ250を軸方向へ相対的に摺動案内する第1摺動部245と、第1可動スリーブ210が待機位置に配置された状態で第2可動スリーブ250が作動位置まで軸方向へ摺動されたときに第2可動スリーブ250を軸方向へ摺動案内する第2摺動部246とがそれぞれ形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−156402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されたクラッチレリーズ軸受装置においては、第1可動スリーブ210のフランジ部210aの前側に第1カバー部材230を介して第1クラッチレリーズ軸受240が配設され、フランジ部210aの後側に第2可動スリーブ250の第1摺動部245と第2摺動部246とがそれぞれ形成される。
このため、第1可動スリーブ210のフランジ部210aの後側の長さ寸法L1’は、第2可動スリーブ250の軸方向の長さ寸法L2’と、第1摺動部245の軸方向の長さ寸法L3’と、第2摺動部246の軸方向の長さ寸法L4’とを加えた長さ寸法と同じかあるいは若干長く設定される。これによって、クラッチレリーズ軸受装置の軸方向の長さ寸法L’が長くなる。
【0005】
この発明の目的は、前記問題点に鑑み、軸方向の長さ寸法を短縮することができるクラッチレリーズ軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明の請求項1に係るクラッチレリーズ軸受装置は、リテーナの外周面に摺動可能に組み付けられ第1レリーズフォークによって軸方向へ摺動される第1可動スリーブと、前記第1可動スリーブに組み付けられて第1ダイヤフラムスプリングを作動する第1クラッチレリーズ軸受と、前記第1可動スリーブの外周に一体状に配置された案内筒と、前記案内筒の外周面に摺動可能に組み付けられ第2レリーズフォークによって軸方向へ摺動される第2可動スリーブと、前記第2可動スリーブに組み付けられて第2ダイヤフラムスプリングを作動する第2クラッチレリーズ軸受とを備え、
前記案内筒の前記第1ダイヤフラムスプリングに対向する側の端部には、前記第1クラッチレリーズ軸受を収納する延長筒部が形成され、
前記延長筒部を含む前記案内筒の外周面には、前記第2可動スリーブが待機位置に配置された状態で前記第1可動スリーブが作動位置まで軸方向へ摺動されたときに前記第2可動スリーブを軸方向へ相対的に摺動案内する第1摺動部と、前記第1可動スリーブが待機位置に配置された状態で前記第2可動スリーブが作動位置まで軸方向へ摺動されたときに前記第2可動スリーブを軸方向へ摺動案内する第2摺動部とがそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0007】
前記構成によると、第1可動スリーブの外周に一体状に配置された案内筒の延長筒部内に、第1クラッチレリーズ軸受を収納し、延長筒部を含む案内筒の外周面に第1摺動部と第2摺動部とをそれぞれ形成することによって、クラッチレリーズ軸受装置の軸方向の長さ寸法を短縮することができる。
すなわち、案内筒の延長筒部内に第1クラッチレリーズ軸受を収納した分だけ軸方向の長さ寸法を短縮することができる。
【0008】
請求項2に係るクラッチレリーズ軸受装置は、請求項1に記載のクラッチレリーズ軸受装置であって、
第1可動スリーブの内周面の軸方向両端部近傍には、リテーナの外周面に摺動可能に接する環状の内径側接触部がそれぞれ形成され、
前記両内径側接触部以外の前記第1可動スリーブの内周面は、前記両内径側接触部よりも大径に形成されて前記リテーナの外周面に非接触状態に保持され、
前記第1可動スリーブの外周面の軸方向両端部近傍には、案内筒の内周面に圧入状態で接する環状の外径側接触部がそれぞれ形成され、
前記両外径側接触部以外の前記第1可動スリーブの外周面は、前記両外径側接触部よりも小径に形成されて前記案内筒の内周面に非接触状態に保持されることを特徴とする。
【0009】
前記構成によると、第1可動スリーブの内周面の軸方向両端部近傍にそれぞれ形成された環状の両内径側接触部がリテーナの外周面に摺動可能に接し、両内径側接触部以外の第1可動スリーブの内周面が両内径側接触部よりも大径に形成されてリテーナの外周面に非接触状態に保持される。
このため、リテーナの外周面の軸方向へ第1可動スリーブが摺動する際、リテーナの軸線方向に対し第1可動スリーブが傾くことを抑制することができる。この結果、リテーナの外周面の軸方向へ第1可動スリーブが円滑に摺動される。
また、第1可動スリーブの外周面の軸方向両端部近傍にそれぞれ形成された環状の両外径側接触部が案内筒の内周面に圧入状態で接し、両外径側接触部以外の第1可動スリーブの外周面が両外径側接触部よりも小径に形成されて案内筒の内周面に非接触状態に保持される。
このため、第1可動スリーブの外周面に案内筒を圧入して一体化する際、第1可動スリーブの軸線方向に対し案内筒が傾くことを抑制することができる。この結果、案内筒の外周面の軸方向へ第2可動スリーブが円滑に摺動される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施例1に係るクラッチレリーズ軸受装置を示す縦断面図である。
【図2】図1のクラッチレリーズ軸受装置の第2可動スリーブが待機位置に配置された状態で第1可動スリーブが作動位置まで軸方向へ摺動された状態を示す縦断面図である。
【図3】図1のクラッチレリーズ軸受装置の第1可動スリーブが待機位置に配置された状態で第2可動スリーブが作動位置まで軸方向へ摺動された状態を示す縦断面図である。
【図4】この発明の実施例2に係るクラッチレリーズ軸受装置を示す縦断面図である。
【図5】従来のクラッチレリーズ軸受装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明を実施するための形態について実施例にしたがって説明する。
【実施例1】
【0012】
この発明の実施例1に係るクラッチレリーズ軸受装置を図1〜図3にしたがって説明する。
図1に示すように、乾式DCTに採用されるクラッチレリーズ軸受装置は、第1レリーズフォーク5と第1ダイヤフラムスプリング7との間に配設される第1可動スリーブ10と、第1クラッチレリーズ軸受30と、案内筒40とを備えると共に、第2レリーズフォーク6と第2ダイヤフラムスプリング8との間に配設される第2可動スリーブ50と、第2クラッチレリーズ軸受70とを備える。
【0013】
第1可動スリーブ10は、合成樹脂材の射出成形によってリテーナ9の外径寸法よりも若干大きい内径寸法を有する円筒状に形成され、リテーナ9の外周面の軸方向へ摺動可能に組み付けられる。
また、第1可動スリーブ10は、その径方向の中間部分において、軸方向中央部に連結部14を残して空間部13が形成され、これによって第1可動スリーブ10の軽量化や射出成形後のひけによる歪みの発生を防止している。
また、この実施例1において、第1可動スリーブ10の内周面の軸方向両端部近傍には、リテーナ9の外周面に摺動可能に接する環状の内径側接触部11がそれぞれ形成され、これら両内径側接触部11以外の第1可動スリーブ10の内周面は、内径側接触部11よりも大径に形成されてリテーナ9の外周面に非接触状態に保持される。
また、第1可動スリーブ10の外周面の軸方向両端部近傍には、次に詳述する案内筒40の内周面に圧入状態で接する環状の外径側接触部12がそれぞれ形成され、これら両外径側接触部12以外の第1可動スリーブ10の外周面は、両外径側接触部12よりも小径に形成されて案内筒40の内周面に非接触状態に保持される。
【0014】
なお、リテーナ9は、円筒状をなし、乾式DCTのトランスミッションケース(図示ない)から延出される。リテーナ9の筒内には、中心部に第2動力伝達軸4が挿通された筒軸状の第1動力伝達軸3が配置される。
そして、第1動力伝達軸3は、第1クラッチ機構(図示ない)を介してエンジンの出力軸側に動力伝達可能に接続され、第2動力伝達軸4は、第2クラッチ機構(図示ない)を介してエンジンの出力軸側に動力伝達可能に接続される。
【0015】
第1クラッチレリーズ軸受30は、外輪31と、内輪35と、これら両輪間に転動可能に配設され、保持器33によって保持される転動体(図1では玉)32とを備えている。
そして、第1クラッチレリーズ軸受30は、第1可動スリーブ10の一端部(第1ダイヤフラムスプリング7が配置される側の端部)に第1カバー部材20を介して組み付けられる。
この実施例1において、第1カバー部材20は、第1可動スリーブ10の一端側の空間部13の大径側内周面に圧入される固定筒部21と、この固定筒部21の一端部外周面から第1可動スリーブ10の一端面に沿って径方向外方へ環状に形成された環状部22と、この環状部22の外径端から円筒状をなして延出された外径側筒部23とを一端に備えている。
また、外径側筒部23の外径寸法は、第1可動スリーブ10の外径寸法よりも若干小さく設定されている。
そして、外径側筒部23の内周面に第1クラッチレリーズ軸受30の外輪31が圧入されて組み付けられる。
また、第1クラッチレリーズ軸受30の内輪35の一端には、第1ダイヤフラムスプリング7の内径側部分を押圧する押圧部36が形成されている。
【0016】
案内筒40は、金属板が円筒状に加工されることで形成されると共に、第1可動スリーブ10の外周面の軸方向全長にわたって一体状に配置される。
案内筒40の第1ダイヤフラムスプリング7に対向する側の端部には、第1クラッチレリーズ軸受30を第1カバー部材20と共に収納する延長筒部42が形成されている。
また、案内筒40の第1レリーズフォーク5に対向する側の端部には、第1レリーズフォーク5に連結される第1連動体41が形成されている。
第1連動体41は、案内筒40の第1レリーズフォーク5に対向する側の端部から第1可動スリーブ10の端面に接して径方向内方へ環状に形成された環状部41aと、この環状部41aの内径端から第1レリーズフォーク5に連結可能に曲げられた連結部41bとを備えている。
そして、第1レリーズフォーク5の動きが第1連動体41を介して第1可動スリーブ10に伝達される。
【0017】
案内筒40の外周面には、第2可動スリーブ50が組み付けられる。
また、延長筒部42を含む案内筒40の外周面には、図2に示すように、第2可動スリーブ50が待機位置に配置された状態で第1可動スリーブ10が作動位置まで軸方向へ摺動されたときに第2可動スリーブ50を軸方向へ相対的に摺動案内する第1摺動部45と、図3に示すように、第1可動スリーブ10が待機位置に配置された状態で第2可動スリーブ50が作動位置まで軸方向へ摺動されたときに第2可動スリーブ50を軸方向へ摺動案内する第2摺動部46とがそれぞれ形成されている。
すなわち、延長筒部42を含む案内筒40の軸方向の長さ寸法(筒長寸法)L1は、第2可動スリーブ50の軸方向の長さ寸法L2と、第1摺動部45の軸方向の長さ寸法L3と、第2摺動部46の軸方向の長さ寸法L4とを加えた長さ寸法と同じかあるいは若干長く設定されている。
【0018】
第2可動スリーブ50は、合成樹脂材の射出成形によって案内筒40の外径寸法と同等又は若干大きい内径寸法を有する円筒状に形成されて案内筒40の外周面に軸方向へ摺動可能に組み付けられる。
第2可動スリーブ50の外周部の軸方向中央部近傍には、第2レリーズフォーク6に連結される第2連動体55と、第2クラッチレリーズ軸受70が組み込まれる第2カバー部材60とがそれぞれ固定されている。
【0019】
第2連動体55は、第2可動スリーブ50の外周部に埋設状に固定される固定筒部56と、この固定筒部56の一端から径方向外方へ環状に形成された環状部57と、この環状部57の外径端から第2レリーズフォーク6に連結可能に曲げられた連結部58とを備えている。
そして、第2レリーズフォーク6の動きが第2連動体55を介して第2可動スリーブ50に伝達される。
【0020】
第2カバー部材60は、第2連動体55の固定筒部56の外周面に嵌合された状態で第2可動スリーブ50の外周部に埋設状に固定される固定筒部61と、この固定筒部61の一端部外周面から第2連動体55の環状部57に沿って径方向外方へ環状に形成された環状部62と、この環状部62の外径端から円筒状をなして延出された外径側筒部63とを備えている。
【0021】
第2クラッチレリーズ軸受70は、外輪71と、内輪75と、これら両輪間に転動可能に配設され、保持器73によって保持される転動体(図1では玉)72とを備えている。
そして、第2クラッチレリーズ軸受70は、その外輪71が第2カバー部材60の外径側筒部63の内周面に圧入されて組み付けられる。
また、第2クラッチレリーズ軸受70の内輪75の一端には、第2ダイヤフラムスプリング8の内径側部分を押圧する押圧部76が形成されている。
【0022】
この実施例1に係る乾式DCTに採用されるクラッチレリーズ軸受装置は上述したように構成される。
したがって、図2に示すように、第2可動スリーブ50が待機位置に配置された状態において、第1レリーズフォーク5によって、第1連動体41と共に、第1可動スリーブ10がリテーナ9の外周面の軸方向へ摺動されて作動位置に配置されることで、第1クラッチレリーズ軸受30の内輪35の押圧部36によって第1ダイヤフラムスプリング7の内径側部分が押圧される。これによって、第1クラッチ機構(図示しない)が接続状態となり、エンジンの出力軸側と第1動力伝達軸3との動力伝達がなされる。そして、この状態で、例えば、7段変速の自動制御式マニアルトランスミッションである場合には、そのトランスミッションにおいて、奇数段(1速、3速、5速、7速)の変速がなされる。
また、第1可動スリーブ10がリテーナ9の外周面の軸方向へ摺動される際、第2可動スリーブ50は、第1可動スリーブ10の第1摺動部45上を相対的に摺動する。
【0023】
また、図3に示すように、第1可動スリーブ10が待機位置に配置された状態において、第2レリーズフォーク6によって、第2連動体55と共に、第2可動スリーブ50が第1可動スリーブ10の第2摺動部46に沿って軸方向へ摺動されて作動位置に配置されることで、第2クラッチレリーズ軸受70の内輪75の押圧部76によって第2ダイヤフラムスプリング8の内径側部分が押圧される。これによって、第2クラッチ機構(図示しない)が接続状態となり、エンジンの出力軸側と第2動力伝達軸4との動力伝達がなされる。そして、この状態で、トランスミッション側では、偶数段(2速、4速、6速)の変速がなされる。
【0024】
さて、この実施例1に係るクラッチレリーズ軸受装置においては、第1可動スリーブ10の外周に一体状に配置された案内筒40の延長筒部42内に、第1クラッチレリーズ軸受30を収納し、延長筒部42を含む案内筒40の外周面に第1摺動部45と第2摺動部46とをそれぞれ形成している。
これによって、図5に示すように、第1可動スリーブ210の一端側に形成されたフランジ部210aの前側に第1クラッチレリーズ軸受240が配設され、フランジ部210aの後側に第1摺動部245と第2摺動部246とがそれぞれ形成される従来と比べ、案内筒40の延長筒部42内に第1クラッチレリーズ軸受30を収納した分だけクラッチレリーズ軸受装置の軸方向の長さ寸法Lを短縮することができる(図1参照)。
【0025】
また、この実施例1において、第1可動スリーブ10の内周面の軸方向両端部近傍にそれぞれ形成された環状の両内径側接触部11がリテーナ9の外周面に摺動可能に接し、両内径側接触部11以外の第1可動スリーブ10の内周面が両内径側接触部11よりも大径に形成されてリテーナ9の外周面に非接触状態に保持される。
このため、リテーナ9の外周面の軸方向へ第1可動スリーブ10が摺動する際、リテーナ9の軸線方向に対し第1可動スリーブ10が傾くことを抑制することができる。この結果、リテーナ9の外周面の軸方向へ第1可動スリーブ10が円滑に摺動される。
また、第1可動スリーブ10の外周面の軸方向両端部近傍にそれぞれ形成された環状の両外径側接触部12が案内筒40の内周面に圧入状態で接し、両外径側接触部12以外の第1可動スリーブ10の外周面が両外径側接触部12よりも小径に形成されて案内筒40の内周面に非接触状態に保持される。
このため、第1可動スリーブ10の外周面に案内筒40を圧入して一体化する際、第1可動スリーブ10の軸線方向に対し案内筒40が傾くことを抑制することができる。この結果、案内筒40の外周面の軸方向へ第2可動スリーブ50が円滑に摺動される。
また、この実施例1において、案内筒40は金属製であるため、案内筒40が合成樹脂製の場合と比較して、第2可動スリーブ50の摺動抵抗を小さくすることができる。
【実施例2】
【0026】
次に、この発明の実施例2に係るクラッチレリーズ軸受装置を図4にしたがって説明する。
図4に示すように、この実施例2においては、第1可動スリーブ110に対し、第1クラッチレリーズ軸受130を径方向へ移動可能に組み付けて調心機能をもたせ、第2可動スリーブ150に対しても第2クラッチレリーズ軸受170を径方向へ移動可能に組み付けて調心機能をもたせたものである。
すなわち、第1可動スリーブ110の一端部に形成された支持部115に、皿ばねよりなる第1調心ばね180を介して第1カバー部材120の環状部122が径方向へ移動可能に組み付けられる。また、第1カバー部材120の外径側筒部123には、第1クラッチレリーズ軸受130の外輪131が圧入されて組み付けられる。
【0027】
また、第2可動スリーブ150の外周面に固定される第2カバー部材160の外径側筒部163には、第2クラッチレリーズ軸受170の外輪171が径方向に移動可能に組み付けられ、外径側筒部163の先端には径方向内方へ環状に曲げられたばね受け部165が形成されている。そして、外輪171の端面とばね受け部165との間にはウエーブワッシャよりなる第2調心ばね181が介在されている。
【0028】
この実施例2のその他の構成は、実施例1と同様にして構成される。
すなわち、第1可動スリーブ110の内周面の軸方向両端部近傍には、リテーナ9の外周面に摺動可能に接する環状の内径側接触部111がそれぞれ形成され、これら両内径側接触部111以外の第1可動スリーブ110の内周面は、内径側接触部111よりも大径に形成されてリテーナ9の外周面に非接触状態に保持される。
また、第1可動スリーブ110の外周面の軸方向両端部近傍には、案内筒140の内周面に圧入状態で接する環状の外径側接触部112がそれぞれ形成され、これら両外径側接触部112以外の第1可動スリーブ110の外周面は、両外径側接触部112よりも小径に形成されて案内筒140の内周面に非接触状態に保持される。
【0029】
また、案内筒140の第1ダイヤフラムスプリング7に対向する側の端部には、第1クラッチレリーズ軸受130を第1カバー部材120と共に収納する延長筒部142が形成されている。
また、案内筒140の第1レリーズフォーク5に対向する側の端部には、第1レリーズフォーク5に連結される第1連動体141が形成されている。
延長筒部142を含む案内筒140の外周面には、第1摺動部145と、第2摺動部146とがそれぞれ形成されている。
第2可動スリーブ150の外周部には、第2カバー部材160と共に、第2レリーズフォーク6に連結される第2連動体155が固定されている。
【0030】
上述したように構成される実施例2に係るクラッチレリーズ軸受装置は、実施例1と同様の作用効果を奏する。
特に、この実施例2においては、第1可動スリーブ110に対し、第1調心ばね180によって、第1カバー部材120と共に、第1クラッチレリーズ軸受130を径方向へ移動可能に支持することで調心機能をもたせることができる。
さらに、第2可動スリーブ150に対し、第2調心ばね181によって第2カバー部材160と共に、第2クラッチレリーズ軸受170を径方向へ移動可能に支持することで調心機能をもたせることができる。
【0031】
なお、この発明は前記実施例1に限定するものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施例1及び2においては、第1、第2クラッチレリーズ軸受30、70(130、170)の内輪35、75(135、175)の端部に、第1、第2ダイヤフラムスプリング7、8を押圧する押圧部36、76(136、176)が形成される場合を例示したが、第1、第2クラッチレリーズ軸受30、70(130、170)の外輪31、71(131、171)の端部に、第1、第2ダイヤフラムスプリング7、8を押圧する押圧部を形成してもよい。この場合、第1、第2クラッチレリーズ軸受30、70(130、170)の内輪35、75(135、175)が第1、第2カバー部材20、60(120、160)に組み付けられる。
【符号の説明】
【0032】
5 第1レリーズフォーク
6 第2レリーズフォーク
7 第1ダイヤフラムスプリング
8 第2ダイヤフラムスプリング
9 リテーナ
10 第1可動スリーブ
11 内径側接触部
12 外径側接触部
30 第1クラッチレリーズ軸受
40 案内筒
42 延長筒部
45 第1摺動部
46 第2摺動部
50 第2可動スリーブ
70 第2クラッチレリーズ軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リテーナの外周面に摺動可能に組み付けられ第1レリーズフォークによって軸方向へ摺動される第1可動スリーブと、前記第1可動スリーブに組み付けられて第1ダイヤフラムスプリングを作動する第1クラッチレリーズ軸受と、前記第1可動スリーブの外周に一体状に配置された案内筒と、前記案内筒の外周面に摺動可能に組み付けられ第2レリーズフォークによって軸方向へ摺動される第2可動スリーブと、前記第2可動スリーブに組み付けられて第2ダイヤフラムスプリングを作動する第2クラッチレリーズ軸受とを備え、
前記案内筒の前記第1ダイヤフラムスプリングに対向する側の端部には、前記第1クラッチレリーズ軸受を収納する延長筒部が形成され、
前記延長筒部を含む前記案内筒の外周面には、前記第2可動スリーブが待機位置に配置された状態で前記第1可動スリーブが作動位置まで軸方向へ摺動されたときに前記第2可動スリーブを軸方向へ相対的に摺動案内する第1摺動部と、前記第1可動スリーブが待機位置に配置された状態で前記第2可動スリーブが作動位置まで軸方向へ摺動されたときに前記第2可動スリーブを軸方向へ摺動案内する第2摺動部とがそれぞれ形成されていることを特徴とするクラッチレリーズ軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクラッチレリーズ軸受装置であって、
第1可動スリーブの内周面の軸方向両端部近傍には、リテーナの外周面に摺動可能に接する環状の内径側接触部がそれぞれ形成され、
前記両内径側接触部以外の前記第1可動スリーブの内周面は、前記両内径側接触部よりも大径に形成されて前記リテーナの外周面に非接触状態に保持され、
前記第1可動スリーブの外周面の軸方向両端部近傍には、案内筒の内周面に圧入状態で接する環状の外径側接触部がそれぞれ形成され、
前記両外径側接触部以外の前記第1可動スリーブの外周面は、前記両外径側接触部よりも小径に形成されて前記案内筒の内周面に非接触状態に保持されることを特徴とするクラッチレリーズ軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36553(P2013−36553A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173691(P2011−173691)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】