クラッチ及びこれを搭載した画像形成装置
【課題】入力軸と出力軸が連結されていないときに生じる異常音を低減できるクラッチを提供すること。
【解決手段】クラッチ本体66を入力ギア64の回転と反対方向に付勢しておき、カムシャフト52の回転が停止したときにカラー73を入力ギア64の回転と反対方向に回転させて、コイルスプリング76を拡径する板バネ77を具備する。
【解決手段】クラッチ本体66を入力ギア64の回転と反対方向に付勢しておき、カムシャフト52の回転が停止したときにカラー73を入力ギア64の回転と反対方向に回転させて、コイルスプリング76を拡径する板バネ77を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸の回転を出力軸に伝達するクラッチ及びこれを搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、感光体ドラム上に各色のトナー像を形成するごとに、このトナー像を中間転写ベルトに重ね転写し、この重ね転写が終了した後、中間転写ベルト上の重ね転写像を転写ローラにより一括して用紙に転写するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、この画像形成装置では、各色のトナー像の重ね転写を終える前に転写ローラを中間転写ベルトに接触させると、転写ローラにより中間転写ベルト上のトナー像が擦り取られてしまう。そのため、重ね転写中は、転写ローラを中間転写ベルトから離間させておき、トナー像の重ね転写が終了するのを待って、転写ローラを中間転写ベルトに当接している。
【0004】
上記転写ローラは、回動フレームの回動端側に取付けられ、この回動フレームがスプリングにより付勢されることで、中間転写ベルトから離間されている。そして、カムの回転により回動フレームがスプリングの付勢に抗して回転することで、転写ローラが中間転写ベルトに押圧される。
【0005】
カムに回転力を伝達する方法として、入力軸の回転をスプリングクラッチを介してカムが設けられる出力軸に伝達する方法が知られている。このスプリングクラッチは、コイル状のスプリングの巻き込みを利用して入力軸と出力軸を連結し、入力軸の回転力を出力軸に伝達するものである。
【特許文献1】特開平8−190288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスプリングクラッチでは、入力軸と出力軸とを連結していないとき、何らかの理由によりスプリングの捩じり量が不十分となり、入力軸と出力軸がスプリングにより僅かに連結された状態、すなわち半クラッチ状態となることがあった。この場合に、スプリングと入力軸との間の摩擦により、ビビリ振動が発生し、異常音の原因となることがあった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、入力軸と出力軸が連結されていないときに生じる異常音を低減できるクラッチ及びこれを搭載した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明のクラッチ及びこれを搭載した画像形成装置は次のように構成されている。
【0009】
(1)軸心線を中心に所定角度範囲内で回転可能に支持されるクラッチ本体と、上記軸心線を中心に一定方向に回転駆動される入力軸と、上記軸心線を中心に回転可能に設けられる出力軸と、上記軸心線を中心に回転可能に設けられる回転体と、上記入力軸の回転方向と反対の巻方向を有し、一端部が上記出力軸に固定され、他端部が上記回転体に固定されるコイルスプリングと、上記入力軸に一体的に設けられ、上記コイルスプリング内に挿入されて、上記コイルスプリングの内面で締め付けられることで、上記入力軸の回転を上記出力軸および回転体に伝達する伝達部と、上記出力軸と回転体が回転しているときに、上記回転体の回転を停止させ、上記コイルスプリングの内径を拡大する第1の拡径手段と、上記クラッチ本体を上記入力軸の回転と反対方向に付勢しておくことで、上記出力軸の回転が停止したときに、上記回転体を上記付勢方向に回転させ、上記コイルスプリングの内径をさらに拡大する第2の拡径手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
(2)(1)に記載されたクラッチにおいて、上記第2の拡径手段は板バネであることを特徴とする。
【0011】
(3)(1)に記載されたクラッチを有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入力軸と出力軸が連結されていないときに生じる異常音を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
まず、図1〜図3を参照しながら電子写真複写機の全体構成について簡単に説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施の形態に係る電子写真複写機の外観を示す斜視図、図2は同実施の形態に係る両面印字ユニット25が開放された状態を示す斜視図、図3は同実施の形態に係る電子複写機の内部構成を示す概略図である。
【0016】
図1に示すように、この電子写真複写機は複写機本体1を備えており、その上面には原稿を原稿台へ搬送するための原稿搬送ユニット22が設けられている。複写機本体1前面の上部にはタッチパネル式の操作パネル23が設けられている。また、複写機本体1の下部には複数段の給紙カセット24が配設され、一側面には用紙の両面に印字を行うときに使用される両面印字ユニット25が設けられている。
【0017】
図2に示すように、両面印字ユニット25が開放されると、開閉カバー26が現れ、その内面側には2次転写ユニット36(図2には図示しない)が設けられている。この2次転写ユニット36については、後で詳しく説明する。
【0018】
図3に示すように、複写機本体1内には感光体ドラム2が回転自在に設けられている。
【0019】
感光体ドラム2の周囲には、その回転方向に沿って、感光体ドラム2の表面を所定の電位に帯電させる帯電器5、静電潜像を現像するモノクロ用の現像装置8B、カラー用の回転式現像装置8A、現像剤像を一時的に転写させる中間転写ベルト3、感光体ドラム2上の残留トナーを除去するクリーナ6が配設されている。
【0020】
カラー用の回転式現像装置8Aは、イエロートナーを供給する第1の現像部8a、シアントナーを供給する第2の現像部8b、マゼンタトナーを供給する第3の現像部8cを有している。
【0021】
中間転写ベルト3は、第1〜第4のローラ3a〜3d間に所定の張力で掛け渡され、これら第1〜第4のローラ3a〜3dと共に転写ベルトユニット35を構成している。中間転写ベルト3の外周面は、1次転写ローラ12により感光体ドラム2に押し付けられている。中間転写ベルト3の第1のローラ3aに巻き付けられる部分には、中間転写ベルト3をクリーニングするためのクリーナ15aが接触している。
【0022】
現像装置8A、8Bの下方には、感光体ドラム2上に静電潜像を形成するための露光装置4が設けられている。露光装置4の下方には、上記給紙カセット24が設けられている。給紙カセット24には、用紙を取り出すピックアップローラ7が設けられている。ピックアップローラ7により取り出された用紙は、給紙ローラ15と分離ローラ16により1枚ずつに分離され、搬送系19内の搬送経路に沿って搬送されるようになっている。
【0023】
搬送系19中には、用紙の搬送方向に沿って順次、搬送ローラ対9、レジストローラ対17、2次転写ローラ11が配設されている。レジストローラ対17は、搬送されてくる用紙を一旦停止させて、搬送方向に対する用紙の傾きを修正するとともに、用紙の先端と中間転写ベルト3上のトナー像の先端とを一致させるものである。
【0024】
2次転写ローラ11の用紙搬送方向下流側には、用紙に転写されたトナー像を定着させるための定着器13が配設されている。定着器13は加熱ローラ13aと加圧ローラ13bとにより構成されている。
【0025】
定着器13の用紙搬送方向下流側には、用紙を排出させるための排出ローラ対30が設けられている。排出ローラ対30の搬出側には排出される用紙を受ける排出トレイ31が設けられている。
【0026】
次に、電子写真複写機の印字動作について簡単に説明する。
【0027】
まず、原稿搬送ユニット22に原稿をセットし、操作パネル23のコピーボタンをONする。これにより原稿が原稿台の所定位置にセットされるとともに、読取装置(図示しない)により用紙上の図柄が光学的に読取られる。
【0028】
このとき、感光体ドラム2の表面は帯電器5により一様に帯電される。そして、帯電された感光体ドラム2上には、露光装置4により読取情報に応じた情報光が照射され、これにより感光体ドラム2上に静電潜像が形成される。
【0029】
この静電潜像は、感光体ドラム2の回転により現像装置8Bまたは現像装置8Aに送られ、現像装置8A、8Bから供給される各色のトナーによって現像される。現像されたトナー像は、感光体ドラム2の回転により中間転写ベルト3上に送られ、1次転写ローラ12により1次転写される。
【0030】
このとき、中間転写ベルト3と2次転写ローラ11の間には、給紙カセット24から用紙が送り込まれており、中間転写ベルト3上のトナー像はこの用紙に2次転写される。用紙にトナー像が転写されると、この用紙は中間転写ベルト3から剥離されて定着器13に送られ、この定着器13でトナー像が加熱、加圧により定着される。用紙にトナー像が定着すると、この用紙は排出ローラ対30を介して外部に排出され、排出トレイ31上に載置される。
【0031】
なお、中間転写ベルト3にトナー像が転写されると、感光体ドラム2は、除電器(図示しない)で光除電される。また、感光体ドラム2上に残ったトナーはクリーナ6でクリーニングされる。
【0032】
次に、図4〜図12を参照しながら2次転写ユニット36及びその周辺部について詳しく説明する。
【0033】
図4は同実施の形態に係る転写ベルトユニット35と2次転写ユニット36を示す斜視図である。
【0034】
図4に示すように、上記開閉カバー26は、その下部側両端部が支軸(図示しない)を介して複写機本体1に回動自在に支持され、その内面側には2次転写ユニット36が設けられている。2次転写ユニット36と転写ベルトユニット35との間に用紙が詰まった場合には、開閉カバー26を開放することにより、用紙を除去できるようになっている。
【0035】
図5(A)と図5(B)は同実施の形態に係る2次転写ユニット36を互いに異なる角度から示す斜視図、図6は同実施の形態に係る2次転写ユニット36を示す正面図である。
【0036】
図5(A)(B)と図6に示すように、開閉カバー26内面の両側には、それぞれ支持ブラケット38が設けられ、これら支持ブラケット38には2次転写ユニット36が支軸39を介して回動可能に取付けられている。
【0037】
図7(A)と図7(B)は同実施の形態に係る2次転写ユニット36を異なる角度から示す斜視図である。
【0038】
図7(A)に示すように、2次転写ユニット36には、2次転写ローラ11が回転可能に設けられている。2次転写ローラ11は、その両端部に軸受口41を備え、これら軸受口41に上記支軸39が挿入されることで、支持ブラケット38に回転自在に支持される。
【0039】
図7(B)に示すように、2次転写ユニット36の上面には、その長手方向に沿ってL字型の板金42が設けられている。板金42の両端部には、L字型の板バネ45が設けられている。この板バネ45は、固定ネジ46により板金42に固定されている。また、板金42の両端部の、板バネ45と反対側の位置には、圧縮スプリング44が設けられている。
【0040】
図8は同実施の形態に係る開閉カバー26を示す斜視図である。
【0041】
図8に示すように、開閉カバー26の下部両側には、上記支軸(図示しない)を嵌合させる軸受部26aが設けられている。開閉カバー26内面の上下部には、用紙の搬送をガイドするための上下のガイド用リブ49a、49bが形成されている。開閉カバー26内面の上下方向中央部の両側には支持ブラケット38が設けられ、この支持ブラケット38に支軸39を介して上記2次転写ユニット36が回動可能に支持されている。また、開閉カバー26の上部には、カムシャフト52が略水平に設けられており、その中途部には複数、本実施の形態では2つのカム53が設けられている。
【0042】
開閉カバー26の内面側の一側には動力伝達ギア列57が設けられ、2次転写ローラ11は上記動力伝達ギア列57を介して、複写機本体1側の駆動機構に接続される。また、動力伝達ギア列57には、シャフト61、駆動ベルト62、駆動ギア63、電磁クラッチ58を介してカムシャフト52が接続されている。このカムシャフト52は、180度回転するごとに、電磁クラッチ58の動作により回転が断続されるようになっている。なお、電磁クラッチ58については、本発明の重要なポイントであるため、後に詳細に説明する。
【0043】
図9は同実施の形態に係る板金42と圧縮バネ47とカム53の配置構成を示す概略図である。
【0044】
図9に示すように、カム53は、板金42の起立部42aの一面側に、板バネ45を介して対向されている。圧縮バネ47は、板金42の起立部42aの他面側と、開閉カバー26内に一体的に設けられる受部材55との間に介在され、板金42の起立部42aを弾性的に押圧するようになっている。
【0045】
図10は同実施の形態に係る中間転写ベルト3に2次転写ローラ11が圧接された状態において、中間転写ベルト3が掛け渡されるローラ3cと2次転写ローラ11と2次転写ユニット36の回動支点36aの配置構成を示す概略図である。
【0046】
図10に示すように、ローラ3cの中心S1と2次転写ローラ11の中心S2とを結ぶ直線L1に対して垂直で、かつ2次転写ローラ11の中心S2を通る直線L2上に位置するように2次転写ユニット36の回動支点36aが設けられている。
【0047】
ところで、カラー画像形成時においては、感光体ドラム2上に時間差を持って形成したイエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像が中間転写ベルト3上に順に重ね転写されるが、この重ね転写が終了するまで、2次転写ローラ11は図11に示すように、中間転写ベルト3から離間させ、重ね転写の終了後に、図12に示すように中間転写ベルト3に接触させる必要がある。
【0048】
2次転写ローラ11を中間転写ベルト3に接触させる場合には、電磁クラッチ58を連結状態とし、図11に示す状態から、動力伝達ギア列57、シャフト61、駆動ベルト62、駆動ギア63、カムシャフト52を介して、カム53に反時計方向の回転力を付与する。これにより、図12に示すように、カム53が180度回転されて、板バネ45を介して板金42の起立部42aを圧縮バネ47の付勢力に抗して押圧する。
【0049】
この押圧により2次転写ユニット36が矢印B方向に回転され、2次転写ローラ11を中間転写ベルト3に接触させる。このように圧接される2次転写ローラ11と中間転写ベルト3との間に用紙が搬送されて中間転写ベルト3上のカラートナー像が用紙に転写されることとなる。
【0050】
この転写後には、2次転写ローラ11を再度中間転写ベルト3から離間させる。この場合には、電磁クラッチ58を遮断状態とし、図12に示す状態から、動力伝達ギア列57、シャフト61、駆動ベルト62、駆動ギア63、カムシャフト52を介して、カム53に反時計方向の回転力を付与する。
【0051】
これにより、カム53がさらに180度回転されて板金42の押圧を解除する方向に回転される。この回動により、図11に示すように、2次転写ユニット36は圧縮バネ47の付勢力により回動支点36aを中心として矢印A方向に回動し、中間転写ベルト3と2次転写ローラ11との間に隙間aが形成されることになる。
【0052】
次に、図13〜図16を参照しながら本発明の重要なポイントである電磁クラッチ58について説明する。
【0053】
図13は同実施の形態に係る電磁クラッチ58が開閉カバー26に取付けられた状態を示す斜視図、図14は同実施の形態に係る電磁クラッチ58を入力ギア64側から示す正面図、図15は同実施の形態に係る電磁クラッチ58の連結状態を示す断面図、図16は同実施の形態に係る電磁クラッチ58の遮断状態を示す断面図である。
【0054】
図13〜図16に示すように、開閉カバー26の内面には、支持機構65(図14にのみ図示)を介して、電磁クラッチ58がカムシャフト52の軸心線を中心に所定角度範囲内で回転できるよう多少のガタを持って支持されている。
【0055】
また、電磁クラッチ58下面の幅方向一側には板バネ77が設けられている。この板バネ77は、電磁クラッチ58を入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に付勢している。なお、板バネ77により電磁クラッチ58に付与される付勢力は、0.4〜0.8N程度に設定されている。
【0056】
次に、電磁クラッチ58の構成を説明する。
【0057】
電磁クラッチ58はクラッチ本体66を有している。このクラッチ本体66は、互いに平行な上下壁66a、66bと、上下壁66a、66bを連結する垂直な側壁66cとにより断面コ字型に形成されており、その内側には円筒型のコイル67が略水平に配設されている。
【0058】
このコイル67は、その一端面をクラッチ本体66の側壁66cの内面に対向させており、コイル67の他端面と対向する位置には金属製の揺動板68が配設されている。この揺動板68は、クラッチ本体66の下壁66bにより回転可能に支持されており、クラッチ本体66の下壁66bよりも下側に配設されたバネ69により、揺動板68の上端部をクラッチ本体66から離間させるように付勢されている。
【0059】
揺動板68の上端中央部の、クラッチ本体66の反対側には、ストッパー70が設けられている。このストッパー70は、カラー73(後述する)の回転を止めるためのものであり、互いに平行な第1、第2の側壁70a、70bと、第1、第2の側壁70a、70bを連結する略水平な上壁70cとにより断面コ字型に形成されている。
【0060】
コイル67の内部には、円筒型の出力ハブ71が回転可能に挿入され、さらに出力ハブ71の内部には上記カムシャフト52の一端部が嵌着されている。出力ハブ71とカムシャフト52は、揺動板68の略中央部を貫いてコイル67の反対側まで延びており、その先端部には入力ギア64(入力軸)が回転可能に外嵌されている。
【0061】
この入力ギア64は、駆動ギア63により一定方向(矢印D方向)に回転されるものであり、その揺動板68側の側面の径方向中心部には円筒型の入力ハブ72(伝達部)が設けられている。入力ハブ72の周囲には、所定の隙間を空けて略円筒型のカラー73(回転体)が回転可能に設けられている。このカラー73は、クラッチ本体66側の端部にフランジ部74を備え、その両側面にはそれぞれ第1、第2の突起部75a、75bが設けられている。
【0062】
これら第1、第2の突起部75a、75bは、フランジ部74の周方向に対して180度ずれた位置に配置されており、カラー73が180度回転するごとに、第1の突起部75aまたは第2の突起部75bがストッパー70の位置に到達するようになっている。
【0063】
カラー73と入力ハブ72との間には、入力ギア64の回転方向(矢印D方向)と反対の巻方向を有するコイルスプリング76が配設されている。このコイルスプリング76は、自然状態での内径が入力ハブ72よりも小さく、通常は入力ハブ72の外周面に所定の締め付け力で巻き付いている。
【0064】
なお、コイルスプリング76を構成する金属線の断面は矩形状をしており、入力ハブ72に巻き付いた状態でコイルスプリング76の内面と入力ハブ72の外周面とが広い面積で接触するようになっている。
【0065】
また、このコイルスプリング76は、一端部がカラー73の入力ギア64側の部位に固定され、他端部は出力ハブ71の所定部位に固定されている。これにより、カラー73をカムシャフト52(実施には出力ハブ71)に対して、入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に回転すると、コイルスプリング76が捩じれ、その内径が拡大するようになっている。
【0066】
次に、上記構成の電磁クラッチ58の作用について説明する。
【0067】
入力ハブ72がコイルスプリング76により締め付けられているときは、入力ハブ72の外周面とコイルスプリング76の内周面の間に作用する摩擦力により、入力ギア64の回転がコイルスプリング76を介してカムシャフト52とカラー73に伝達される。
【0068】
このとき、コイル67で揺動板68を吸着すると、図16に示すように、揺動板68の上端に設けられたストッパー70の第2の側壁70bがフランジ部74の入力ギア64側の側面に接近する。
【0069】
これにより、フランジ部74の入力ギア64側の側面に設けられた第2の突起部75bは、ストッパー70の第2の側壁70bと衝突して、カラー73の回転が停止することになる。
【0070】
このとき、カム53の外周面と2次転写ユニット36の板バネ45との間には、摩擦力が作用しているため、カムシャフト52は回転し難い状態となっている。
【0071】
このため、カラー73の回転が停止すると、カラー73とカムシャフト52とが相対回転し、これらを連結しているコイルスプリング76に捩じれが生じることで、コイルスプリング76の内径が拡大することになる。
【0072】
その結果、入力ハブ72の外周面とコイルスプリング76の内周面の間に作用する摩擦力が低下し、入力ギア64の回転がカムシャフト52に伝達されない、いわゆる遮断状態となる。なお、遮断状態であっても、入力ハブ72の外周面とコイルスプリング76の内周面は、僅かに接触しており、ビビリ振動を引き起こすことがある。
【0073】
ところで、カムシャフト52が回転しているときには、出力ハブ71とクラッチ本体66との摩擦等により、クラッチ本体66にカムシャフト52の回転と同じ方向(矢印D方向)に対して僅かに回転力が生じている。
【0074】
このため、クラッチ本体66は、カムシャフト52の回転方向(矢印D方向)、すなわち入力ギア64の回転方向に対して僅かに傾くことになる。しかしながら、電磁クラッチ58が遮断状態となると、カムシャフト52の回転が停止するため、クラッチ本体66には入力ギア64の回転方向に対する回転力が作用しなくなる。
【0075】
その結果、クラッチ本体66は、板バネ77の付勢によって入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に僅かに回転することになる。このとき、カムシャフト52は、上記2次転写ユニット36の板バネ45との間に作用する摩擦力により殆んど回転しないから、クラッチ本体66はカムシャフト52に対して入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に回転することになる。
【0076】
このとき、カラー73の第1の突起部75aと揺動板68に設けられたストッパー70の第1の側壁70aとは係合しているから、クラッチ本体66が入力ギア64の回転と反対方向に回転すると、それに伴ってカラー73が入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に回転する。
【0077】
その結果、カムシャフト52とカラー73の間に相対回転が生じ、これらを連結しているコイルスプリング76に捩じれが発生することで、コイルスプリング76の内径が拡大する。
【0078】
すなわち、板バネ77でクラッチ本体66を入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に付勢しておくと、電磁クラッチ58が遮断状態となったときに、コイルスプリング76の内径がさらに拡大することになる。
【0079】
これにより、電磁クラッチ58が遮断状態となったときに、入力ハブ72の外周面とコイルスプリング76の外周面の間に作用する摩擦力をさらに低減させることができるから、この摩擦力により生じるビビリ振動が低減し、異常音などの発生が抑制されることになる。
【0080】
上記構成の電子写真複写機によれば、板バネ77により電磁クラッチ58を入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に付勢している。そのため、電磁クラッチ58が遮断状態となると、カムシャフト52の回転が停止することで、板バネ77による付勢力が支配的になるから、電磁クラッチ58は入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に回転することになる。
【0081】
そして、これに伴ってカラー73が同方向(矢印C方向)に回転することで、カムシャフト52とカラー73を連結しているコイルスプリング76の内径が大きくなり、入力ハブ72の外面とコイルスプリング76の内面との間に作用する摩擦力がさらに低減することになる。
【0082】
その結果、入力ハブ72の外面とコイルスプリング76の内面との間に作用する摩擦力に起因するビビリ振動が低減し、電子写真複写機の稼動中に発生する異常音等の発生を抑制することができる。
【0083】
なお、本実施の形態では、2次転写ローラ11を中間転写ベルト3に対して接離するときの切り替えについて述べているが、これに限定されるものではなく、本発明の電磁クラッチ58は、例えばクリーナ15aを中間転写ベルト3に対して接離するときの切り替えにも適用することもできるし、またモノクロ用の現像装置8Bを感光体ドラム2に対して接離するときの切り替えにも適用することもできる。
【0084】
本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電子写真複写機の外観を示す斜視図。
【図2】同実施の形態に係る両面印字ユニットが開放された状態を示す斜視図。
【図3】同実施の形態に係る電子複写機の内部構成を示す概略図。
【図4】同実施の形態に係る転写ベルトユニットと2次転写ユニットを示す斜視図。
【図5A】同実施の形態に係る2次転写ユニットを示す斜視図
【図5B】同実施の形態に係る2次転写ユニットを異なる角度から示す斜視図。
【図6】同実施の形態に係る2次転写ユニットを示す正面図。
【図7A】同実施の形態に係る2次転写ユニットを示す斜視図。
【図7B】同実施の形態に係る2次転写ユニットを異なる角度から示す斜視図。
【図8】同実施の形態に係る開閉カバーを示す斜視図。
【図9】同実施の形態に係る板金と圧縮バネとカムの配置構成を示す概略図。
【図10】同実施の形態に係る中間転写ベルトに2次転写ローラ11が圧接された状態において、中間転写ベルトが掛け渡されるローラと2次転写ローラと2次転写ユニットの回動支点の配置構成を示す概略図。
【図11】同実施の形態に係る2次転写ユニットの転写ローラが中間転写ベルトから離間した状態を示す概略図。
【図12】同実施の形態に係る2次転写ユニットの転写ローラが中間転写ベルトに当接した状態を示す概略図である。
【図13】同実施の形態に係る電磁クラッチが開閉カバーに取付けられた状態を示す斜視図。
【図14】同実施の形態に係る電磁クラッチを入力ギア側から示す正面図。
【図15】同実施の形態に係る電磁クラッチの連結状態を示す断面図。
【図16】同実施の形態に係る電磁クラッチの遮断状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0086】
52…カムシャフト(出力軸)、64…入力ギア(入力軸)、66…クラッチ本体、72…入力ハブ(伝達部)、73…カラー(回転体)、76…コイルスプリング、77…板バネ(第2の拡径手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力軸の回転を出力軸に伝達するクラッチ及びこれを搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、感光体ドラム上に各色のトナー像を形成するごとに、このトナー像を中間転写ベルトに重ね転写し、この重ね転写が終了した後、中間転写ベルト上の重ね転写像を転写ローラにより一括して用紙に転写するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、この画像形成装置では、各色のトナー像の重ね転写を終える前に転写ローラを中間転写ベルトに接触させると、転写ローラにより中間転写ベルト上のトナー像が擦り取られてしまう。そのため、重ね転写中は、転写ローラを中間転写ベルトから離間させておき、トナー像の重ね転写が終了するのを待って、転写ローラを中間転写ベルトに当接している。
【0004】
上記転写ローラは、回動フレームの回動端側に取付けられ、この回動フレームがスプリングにより付勢されることで、中間転写ベルトから離間されている。そして、カムの回転により回動フレームがスプリングの付勢に抗して回転することで、転写ローラが中間転写ベルトに押圧される。
【0005】
カムに回転力を伝達する方法として、入力軸の回転をスプリングクラッチを介してカムが設けられる出力軸に伝達する方法が知られている。このスプリングクラッチは、コイル状のスプリングの巻き込みを利用して入力軸と出力軸を連結し、入力軸の回転力を出力軸に伝達するものである。
【特許文献1】特開平8−190288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のスプリングクラッチでは、入力軸と出力軸とを連結していないとき、何らかの理由によりスプリングの捩じり量が不十分となり、入力軸と出力軸がスプリングにより僅かに連結された状態、すなわち半クラッチ状態となることがあった。この場合に、スプリングと入力軸との間の摩擦により、ビビリ振動が発生し、異常音の原因となることがあった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、入力軸と出力軸が連結されていないときに生じる異常音を低減できるクラッチ及びこれを搭載した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明のクラッチ及びこれを搭載した画像形成装置は次のように構成されている。
【0009】
(1)軸心線を中心に所定角度範囲内で回転可能に支持されるクラッチ本体と、上記軸心線を中心に一定方向に回転駆動される入力軸と、上記軸心線を中心に回転可能に設けられる出力軸と、上記軸心線を中心に回転可能に設けられる回転体と、上記入力軸の回転方向と反対の巻方向を有し、一端部が上記出力軸に固定され、他端部が上記回転体に固定されるコイルスプリングと、上記入力軸に一体的に設けられ、上記コイルスプリング内に挿入されて、上記コイルスプリングの内面で締め付けられることで、上記入力軸の回転を上記出力軸および回転体に伝達する伝達部と、上記出力軸と回転体が回転しているときに、上記回転体の回転を停止させ、上記コイルスプリングの内径を拡大する第1の拡径手段と、上記クラッチ本体を上記入力軸の回転と反対方向に付勢しておくことで、上記出力軸の回転が停止したときに、上記回転体を上記付勢方向に回転させ、上記コイルスプリングの内径をさらに拡大する第2の拡径手段とを具備することを特徴とする。
【0010】
(2)(1)に記載されたクラッチにおいて、上記第2の拡径手段は板バネであることを特徴とする。
【0011】
(3)(1)に記載されたクラッチを有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、入力軸と出力軸が連結されていないときに生じる異常音を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0014】
まず、図1〜図3を参照しながら電子写真複写機の全体構成について簡単に説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施の形態に係る電子写真複写機の外観を示す斜視図、図2は同実施の形態に係る両面印字ユニット25が開放された状態を示す斜視図、図3は同実施の形態に係る電子複写機の内部構成を示す概略図である。
【0016】
図1に示すように、この電子写真複写機は複写機本体1を備えており、その上面には原稿を原稿台へ搬送するための原稿搬送ユニット22が設けられている。複写機本体1前面の上部にはタッチパネル式の操作パネル23が設けられている。また、複写機本体1の下部には複数段の給紙カセット24が配設され、一側面には用紙の両面に印字を行うときに使用される両面印字ユニット25が設けられている。
【0017】
図2に示すように、両面印字ユニット25が開放されると、開閉カバー26が現れ、その内面側には2次転写ユニット36(図2には図示しない)が設けられている。この2次転写ユニット36については、後で詳しく説明する。
【0018】
図3に示すように、複写機本体1内には感光体ドラム2が回転自在に設けられている。
【0019】
感光体ドラム2の周囲には、その回転方向に沿って、感光体ドラム2の表面を所定の電位に帯電させる帯電器5、静電潜像を現像するモノクロ用の現像装置8B、カラー用の回転式現像装置8A、現像剤像を一時的に転写させる中間転写ベルト3、感光体ドラム2上の残留トナーを除去するクリーナ6が配設されている。
【0020】
カラー用の回転式現像装置8Aは、イエロートナーを供給する第1の現像部8a、シアントナーを供給する第2の現像部8b、マゼンタトナーを供給する第3の現像部8cを有している。
【0021】
中間転写ベルト3は、第1〜第4のローラ3a〜3d間に所定の張力で掛け渡され、これら第1〜第4のローラ3a〜3dと共に転写ベルトユニット35を構成している。中間転写ベルト3の外周面は、1次転写ローラ12により感光体ドラム2に押し付けられている。中間転写ベルト3の第1のローラ3aに巻き付けられる部分には、中間転写ベルト3をクリーニングするためのクリーナ15aが接触している。
【0022】
現像装置8A、8Bの下方には、感光体ドラム2上に静電潜像を形成するための露光装置4が設けられている。露光装置4の下方には、上記給紙カセット24が設けられている。給紙カセット24には、用紙を取り出すピックアップローラ7が設けられている。ピックアップローラ7により取り出された用紙は、給紙ローラ15と分離ローラ16により1枚ずつに分離され、搬送系19内の搬送経路に沿って搬送されるようになっている。
【0023】
搬送系19中には、用紙の搬送方向に沿って順次、搬送ローラ対9、レジストローラ対17、2次転写ローラ11が配設されている。レジストローラ対17は、搬送されてくる用紙を一旦停止させて、搬送方向に対する用紙の傾きを修正するとともに、用紙の先端と中間転写ベルト3上のトナー像の先端とを一致させるものである。
【0024】
2次転写ローラ11の用紙搬送方向下流側には、用紙に転写されたトナー像を定着させるための定着器13が配設されている。定着器13は加熱ローラ13aと加圧ローラ13bとにより構成されている。
【0025】
定着器13の用紙搬送方向下流側には、用紙を排出させるための排出ローラ対30が設けられている。排出ローラ対30の搬出側には排出される用紙を受ける排出トレイ31が設けられている。
【0026】
次に、電子写真複写機の印字動作について簡単に説明する。
【0027】
まず、原稿搬送ユニット22に原稿をセットし、操作パネル23のコピーボタンをONする。これにより原稿が原稿台の所定位置にセットされるとともに、読取装置(図示しない)により用紙上の図柄が光学的に読取られる。
【0028】
このとき、感光体ドラム2の表面は帯電器5により一様に帯電される。そして、帯電された感光体ドラム2上には、露光装置4により読取情報に応じた情報光が照射され、これにより感光体ドラム2上に静電潜像が形成される。
【0029】
この静電潜像は、感光体ドラム2の回転により現像装置8Bまたは現像装置8Aに送られ、現像装置8A、8Bから供給される各色のトナーによって現像される。現像されたトナー像は、感光体ドラム2の回転により中間転写ベルト3上に送られ、1次転写ローラ12により1次転写される。
【0030】
このとき、中間転写ベルト3と2次転写ローラ11の間には、給紙カセット24から用紙が送り込まれており、中間転写ベルト3上のトナー像はこの用紙に2次転写される。用紙にトナー像が転写されると、この用紙は中間転写ベルト3から剥離されて定着器13に送られ、この定着器13でトナー像が加熱、加圧により定着される。用紙にトナー像が定着すると、この用紙は排出ローラ対30を介して外部に排出され、排出トレイ31上に載置される。
【0031】
なお、中間転写ベルト3にトナー像が転写されると、感光体ドラム2は、除電器(図示しない)で光除電される。また、感光体ドラム2上に残ったトナーはクリーナ6でクリーニングされる。
【0032】
次に、図4〜図12を参照しながら2次転写ユニット36及びその周辺部について詳しく説明する。
【0033】
図4は同実施の形態に係る転写ベルトユニット35と2次転写ユニット36を示す斜視図である。
【0034】
図4に示すように、上記開閉カバー26は、その下部側両端部が支軸(図示しない)を介して複写機本体1に回動自在に支持され、その内面側には2次転写ユニット36が設けられている。2次転写ユニット36と転写ベルトユニット35との間に用紙が詰まった場合には、開閉カバー26を開放することにより、用紙を除去できるようになっている。
【0035】
図5(A)と図5(B)は同実施の形態に係る2次転写ユニット36を互いに異なる角度から示す斜視図、図6は同実施の形態に係る2次転写ユニット36を示す正面図である。
【0036】
図5(A)(B)と図6に示すように、開閉カバー26内面の両側には、それぞれ支持ブラケット38が設けられ、これら支持ブラケット38には2次転写ユニット36が支軸39を介して回動可能に取付けられている。
【0037】
図7(A)と図7(B)は同実施の形態に係る2次転写ユニット36を異なる角度から示す斜視図である。
【0038】
図7(A)に示すように、2次転写ユニット36には、2次転写ローラ11が回転可能に設けられている。2次転写ローラ11は、その両端部に軸受口41を備え、これら軸受口41に上記支軸39が挿入されることで、支持ブラケット38に回転自在に支持される。
【0039】
図7(B)に示すように、2次転写ユニット36の上面には、その長手方向に沿ってL字型の板金42が設けられている。板金42の両端部には、L字型の板バネ45が設けられている。この板バネ45は、固定ネジ46により板金42に固定されている。また、板金42の両端部の、板バネ45と反対側の位置には、圧縮スプリング44が設けられている。
【0040】
図8は同実施の形態に係る開閉カバー26を示す斜視図である。
【0041】
図8に示すように、開閉カバー26の下部両側には、上記支軸(図示しない)を嵌合させる軸受部26aが設けられている。開閉カバー26内面の上下部には、用紙の搬送をガイドするための上下のガイド用リブ49a、49bが形成されている。開閉カバー26内面の上下方向中央部の両側には支持ブラケット38が設けられ、この支持ブラケット38に支軸39を介して上記2次転写ユニット36が回動可能に支持されている。また、開閉カバー26の上部には、カムシャフト52が略水平に設けられており、その中途部には複数、本実施の形態では2つのカム53が設けられている。
【0042】
開閉カバー26の内面側の一側には動力伝達ギア列57が設けられ、2次転写ローラ11は上記動力伝達ギア列57を介して、複写機本体1側の駆動機構に接続される。また、動力伝達ギア列57には、シャフト61、駆動ベルト62、駆動ギア63、電磁クラッチ58を介してカムシャフト52が接続されている。このカムシャフト52は、180度回転するごとに、電磁クラッチ58の動作により回転が断続されるようになっている。なお、電磁クラッチ58については、本発明の重要なポイントであるため、後に詳細に説明する。
【0043】
図9は同実施の形態に係る板金42と圧縮バネ47とカム53の配置構成を示す概略図である。
【0044】
図9に示すように、カム53は、板金42の起立部42aの一面側に、板バネ45を介して対向されている。圧縮バネ47は、板金42の起立部42aの他面側と、開閉カバー26内に一体的に設けられる受部材55との間に介在され、板金42の起立部42aを弾性的に押圧するようになっている。
【0045】
図10は同実施の形態に係る中間転写ベルト3に2次転写ローラ11が圧接された状態において、中間転写ベルト3が掛け渡されるローラ3cと2次転写ローラ11と2次転写ユニット36の回動支点36aの配置構成を示す概略図である。
【0046】
図10に示すように、ローラ3cの中心S1と2次転写ローラ11の中心S2とを結ぶ直線L1に対して垂直で、かつ2次転写ローラ11の中心S2を通る直線L2上に位置するように2次転写ユニット36の回動支点36aが設けられている。
【0047】
ところで、カラー画像形成時においては、感光体ドラム2上に時間差を持って形成したイエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像が中間転写ベルト3上に順に重ね転写されるが、この重ね転写が終了するまで、2次転写ローラ11は図11に示すように、中間転写ベルト3から離間させ、重ね転写の終了後に、図12に示すように中間転写ベルト3に接触させる必要がある。
【0048】
2次転写ローラ11を中間転写ベルト3に接触させる場合には、電磁クラッチ58を連結状態とし、図11に示す状態から、動力伝達ギア列57、シャフト61、駆動ベルト62、駆動ギア63、カムシャフト52を介して、カム53に反時計方向の回転力を付与する。これにより、図12に示すように、カム53が180度回転されて、板バネ45を介して板金42の起立部42aを圧縮バネ47の付勢力に抗して押圧する。
【0049】
この押圧により2次転写ユニット36が矢印B方向に回転され、2次転写ローラ11を中間転写ベルト3に接触させる。このように圧接される2次転写ローラ11と中間転写ベルト3との間に用紙が搬送されて中間転写ベルト3上のカラートナー像が用紙に転写されることとなる。
【0050】
この転写後には、2次転写ローラ11を再度中間転写ベルト3から離間させる。この場合には、電磁クラッチ58を遮断状態とし、図12に示す状態から、動力伝達ギア列57、シャフト61、駆動ベルト62、駆動ギア63、カムシャフト52を介して、カム53に反時計方向の回転力を付与する。
【0051】
これにより、カム53がさらに180度回転されて板金42の押圧を解除する方向に回転される。この回動により、図11に示すように、2次転写ユニット36は圧縮バネ47の付勢力により回動支点36aを中心として矢印A方向に回動し、中間転写ベルト3と2次転写ローラ11との間に隙間aが形成されることになる。
【0052】
次に、図13〜図16を参照しながら本発明の重要なポイントである電磁クラッチ58について説明する。
【0053】
図13は同実施の形態に係る電磁クラッチ58が開閉カバー26に取付けられた状態を示す斜視図、図14は同実施の形態に係る電磁クラッチ58を入力ギア64側から示す正面図、図15は同実施の形態に係る電磁クラッチ58の連結状態を示す断面図、図16は同実施の形態に係る電磁クラッチ58の遮断状態を示す断面図である。
【0054】
図13〜図16に示すように、開閉カバー26の内面には、支持機構65(図14にのみ図示)を介して、電磁クラッチ58がカムシャフト52の軸心線を中心に所定角度範囲内で回転できるよう多少のガタを持って支持されている。
【0055】
また、電磁クラッチ58下面の幅方向一側には板バネ77が設けられている。この板バネ77は、電磁クラッチ58を入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に付勢している。なお、板バネ77により電磁クラッチ58に付与される付勢力は、0.4〜0.8N程度に設定されている。
【0056】
次に、電磁クラッチ58の構成を説明する。
【0057】
電磁クラッチ58はクラッチ本体66を有している。このクラッチ本体66は、互いに平行な上下壁66a、66bと、上下壁66a、66bを連結する垂直な側壁66cとにより断面コ字型に形成されており、その内側には円筒型のコイル67が略水平に配設されている。
【0058】
このコイル67は、その一端面をクラッチ本体66の側壁66cの内面に対向させており、コイル67の他端面と対向する位置には金属製の揺動板68が配設されている。この揺動板68は、クラッチ本体66の下壁66bにより回転可能に支持されており、クラッチ本体66の下壁66bよりも下側に配設されたバネ69により、揺動板68の上端部をクラッチ本体66から離間させるように付勢されている。
【0059】
揺動板68の上端中央部の、クラッチ本体66の反対側には、ストッパー70が設けられている。このストッパー70は、カラー73(後述する)の回転を止めるためのものであり、互いに平行な第1、第2の側壁70a、70bと、第1、第2の側壁70a、70bを連結する略水平な上壁70cとにより断面コ字型に形成されている。
【0060】
コイル67の内部には、円筒型の出力ハブ71が回転可能に挿入され、さらに出力ハブ71の内部には上記カムシャフト52の一端部が嵌着されている。出力ハブ71とカムシャフト52は、揺動板68の略中央部を貫いてコイル67の反対側まで延びており、その先端部には入力ギア64(入力軸)が回転可能に外嵌されている。
【0061】
この入力ギア64は、駆動ギア63により一定方向(矢印D方向)に回転されるものであり、その揺動板68側の側面の径方向中心部には円筒型の入力ハブ72(伝達部)が設けられている。入力ハブ72の周囲には、所定の隙間を空けて略円筒型のカラー73(回転体)が回転可能に設けられている。このカラー73は、クラッチ本体66側の端部にフランジ部74を備え、その両側面にはそれぞれ第1、第2の突起部75a、75bが設けられている。
【0062】
これら第1、第2の突起部75a、75bは、フランジ部74の周方向に対して180度ずれた位置に配置されており、カラー73が180度回転するごとに、第1の突起部75aまたは第2の突起部75bがストッパー70の位置に到達するようになっている。
【0063】
カラー73と入力ハブ72との間には、入力ギア64の回転方向(矢印D方向)と反対の巻方向を有するコイルスプリング76が配設されている。このコイルスプリング76は、自然状態での内径が入力ハブ72よりも小さく、通常は入力ハブ72の外周面に所定の締め付け力で巻き付いている。
【0064】
なお、コイルスプリング76を構成する金属線の断面は矩形状をしており、入力ハブ72に巻き付いた状態でコイルスプリング76の内面と入力ハブ72の外周面とが広い面積で接触するようになっている。
【0065】
また、このコイルスプリング76は、一端部がカラー73の入力ギア64側の部位に固定され、他端部は出力ハブ71の所定部位に固定されている。これにより、カラー73をカムシャフト52(実施には出力ハブ71)に対して、入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に回転すると、コイルスプリング76が捩じれ、その内径が拡大するようになっている。
【0066】
次に、上記構成の電磁クラッチ58の作用について説明する。
【0067】
入力ハブ72がコイルスプリング76により締め付けられているときは、入力ハブ72の外周面とコイルスプリング76の内周面の間に作用する摩擦力により、入力ギア64の回転がコイルスプリング76を介してカムシャフト52とカラー73に伝達される。
【0068】
このとき、コイル67で揺動板68を吸着すると、図16に示すように、揺動板68の上端に設けられたストッパー70の第2の側壁70bがフランジ部74の入力ギア64側の側面に接近する。
【0069】
これにより、フランジ部74の入力ギア64側の側面に設けられた第2の突起部75bは、ストッパー70の第2の側壁70bと衝突して、カラー73の回転が停止することになる。
【0070】
このとき、カム53の外周面と2次転写ユニット36の板バネ45との間には、摩擦力が作用しているため、カムシャフト52は回転し難い状態となっている。
【0071】
このため、カラー73の回転が停止すると、カラー73とカムシャフト52とが相対回転し、これらを連結しているコイルスプリング76に捩じれが生じることで、コイルスプリング76の内径が拡大することになる。
【0072】
その結果、入力ハブ72の外周面とコイルスプリング76の内周面の間に作用する摩擦力が低下し、入力ギア64の回転がカムシャフト52に伝達されない、いわゆる遮断状態となる。なお、遮断状態であっても、入力ハブ72の外周面とコイルスプリング76の内周面は、僅かに接触しており、ビビリ振動を引き起こすことがある。
【0073】
ところで、カムシャフト52が回転しているときには、出力ハブ71とクラッチ本体66との摩擦等により、クラッチ本体66にカムシャフト52の回転と同じ方向(矢印D方向)に対して僅かに回転力が生じている。
【0074】
このため、クラッチ本体66は、カムシャフト52の回転方向(矢印D方向)、すなわち入力ギア64の回転方向に対して僅かに傾くことになる。しかしながら、電磁クラッチ58が遮断状態となると、カムシャフト52の回転が停止するため、クラッチ本体66には入力ギア64の回転方向に対する回転力が作用しなくなる。
【0075】
その結果、クラッチ本体66は、板バネ77の付勢によって入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に僅かに回転することになる。このとき、カムシャフト52は、上記2次転写ユニット36の板バネ45との間に作用する摩擦力により殆んど回転しないから、クラッチ本体66はカムシャフト52に対して入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に回転することになる。
【0076】
このとき、カラー73の第1の突起部75aと揺動板68に設けられたストッパー70の第1の側壁70aとは係合しているから、クラッチ本体66が入力ギア64の回転と反対方向に回転すると、それに伴ってカラー73が入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に回転する。
【0077】
その結果、カムシャフト52とカラー73の間に相対回転が生じ、これらを連結しているコイルスプリング76に捩じれが発生することで、コイルスプリング76の内径が拡大する。
【0078】
すなわち、板バネ77でクラッチ本体66を入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に付勢しておくと、電磁クラッチ58が遮断状態となったときに、コイルスプリング76の内径がさらに拡大することになる。
【0079】
これにより、電磁クラッチ58が遮断状態となったときに、入力ハブ72の外周面とコイルスプリング76の外周面の間に作用する摩擦力をさらに低減させることができるから、この摩擦力により生じるビビリ振動が低減し、異常音などの発生が抑制されることになる。
【0080】
上記構成の電子写真複写機によれば、板バネ77により電磁クラッチ58を入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に付勢している。そのため、電磁クラッチ58が遮断状態となると、カムシャフト52の回転が停止することで、板バネ77による付勢力が支配的になるから、電磁クラッチ58は入力ギア64の回転と反対方向(矢印C方向)に回転することになる。
【0081】
そして、これに伴ってカラー73が同方向(矢印C方向)に回転することで、カムシャフト52とカラー73を連結しているコイルスプリング76の内径が大きくなり、入力ハブ72の外面とコイルスプリング76の内面との間に作用する摩擦力がさらに低減することになる。
【0082】
その結果、入力ハブ72の外面とコイルスプリング76の内面との間に作用する摩擦力に起因するビビリ振動が低減し、電子写真複写機の稼動中に発生する異常音等の発生を抑制することができる。
【0083】
なお、本実施の形態では、2次転写ローラ11を中間転写ベルト3に対して接離するときの切り替えについて述べているが、これに限定されるものではなく、本発明の電磁クラッチ58は、例えばクリーナ15aを中間転写ベルト3に対して接離するときの切り替えにも適用することもできるし、またモノクロ用の現像装置8Bを感光体ドラム2に対して接離するときの切り替えにも適用することもできる。
【0084】
本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施の形態に係る電子写真複写機の外観を示す斜視図。
【図2】同実施の形態に係る両面印字ユニットが開放された状態を示す斜視図。
【図3】同実施の形態に係る電子複写機の内部構成を示す概略図。
【図4】同実施の形態に係る転写ベルトユニットと2次転写ユニットを示す斜視図。
【図5A】同実施の形態に係る2次転写ユニットを示す斜視図
【図5B】同実施の形態に係る2次転写ユニットを異なる角度から示す斜視図。
【図6】同実施の形態に係る2次転写ユニットを示す正面図。
【図7A】同実施の形態に係る2次転写ユニットを示す斜視図。
【図7B】同実施の形態に係る2次転写ユニットを異なる角度から示す斜視図。
【図8】同実施の形態に係る開閉カバーを示す斜視図。
【図9】同実施の形態に係る板金と圧縮バネとカムの配置構成を示す概略図。
【図10】同実施の形態に係る中間転写ベルトに2次転写ローラ11が圧接された状態において、中間転写ベルトが掛け渡されるローラと2次転写ローラと2次転写ユニットの回動支点の配置構成を示す概略図。
【図11】同実施の形態に係る2次転写ユニットの転写ローラが中間転写ベルトから離間した状態を示す概略図。
【図12】同実施の形態に係る2次転写ユニットの転写ローラが中間転写ベルトに当接した状態を示す概略図である。
【図13】同実施の形態に係る電磁クラッチが開閉カバーに取付けられた状態を示す斜視図。
【図14】同実施の形態に係る電磁クラッチを入力ギア側から示す正面図。
【図15】同実施の形態に係る電磁クラッチの連結状態を示す断面図。
【図16】同実施の形態に係る電磁クラッチの遮断状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0086】
52…カムシャフト(出力軸)、64…入力ギア(入力軸)、66…クラッチ本体、72…入力ハブ(伝達部)、73…カラー(回転体)、76…コイルスプリング、77…板バネ(第2の拡径手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心線を中心に所定角度範囲内で回転可能に支持されるクラッチ本体と、
上記軸心線を中心に一定方向に回転駆動される入力軸と、
上記軸心線を中心に回転可能に設けられる出力軸と、
上記軸心線を中心に回転可能に設けられる回転体と、
上記入力軸の回転方向と反対の巻方向を有し、一端部が上記出力軸に固定され、他端部が上記回転体に固定されるコイルスプリングと、
上記入力軸に一体的に設けられ、上記コイルスプリング内に挿入されて、上記コイルスプリングの内面で締め付けられることで、上記入力軸の回転を上記出力軸および回転体に伝達する伝達部と、
上記出力軸と回転体が回転しているときに、上記回転体の回転を停止させ、上記コイルスプリングの内径を拡大する第1の拡径手段と、
上記クラッチ本体を上記入力軸の回転と反対方向に付勢しておくことで、上記出力軸の回転が停止したときに、上記回転体を上記付勢方向に回転させ、上記コイルスプリングの内径をさらに拡大する第2の拡径手段と、
を具備することを特徴とするクラッチ。
【請求項2】
上記第2の拡径手段は板バネであることを特徴とする請求項1記載のクラッチ。
【請求項3】
請求項1記載のクラッチを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
軸心線を中心に所定角度範囲内で回転可能に支持されるクラッチ本体と、
上記軸心線を中心に一定方向に回転駆動される入力軸と、
上記軸心線を中心に回転可能に設けられる出力軸と、
上記軸心線を中心に回転可能に設けられる回転体と、
上記入力軸の回転方向と反対の巻方向を有し、一端部が上記出力軸に固定され、他端部が上記回転体に固定されるコイルスプリングと、
上記入力軸に一体的に設けられ、上記コイルスプリング内に挿入されて、上記コイルスプリングの内面で締め付けられることで、上記入力軸の回転を上記出力軸および回転体に伝達する伝達部と、
上記出力軸と回転体が回転しているときに、上記回転体の回転を停止させ、上記コイルスプリングの内径を拡大する第1の拡径手段と、
上記クラッチ本体を上記入力軸の回転と反対方向に付勢しておくことで、上記出力軸の回転が停止したときに、上記回転体を上記付勢方向に回転させ、上記コイルスプリングの内径をさらに拡大する第2の拡径手段と、
を具備することを特徴とするクラッチ。
【請求項2】
上記第2の拡径手段は板バネであることを特徴とする請求項1記載のクラッチ。
【請求項3】
請求項1記載のクラッチを有することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−17938(P2006−17938A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194609(P2004−194609)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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