説明

クラッチ装置

本発明は、第1のクラッチエレメント(38)と、第2のクラッチエレメント(40)とを有する、クラッチ装置(10)、特にブースタクラッチ装置に関し、第1のクラッチエレメント(38)と第2のクラッチエレメント(40)とを互いに連結するねじりばね装置(30,32)が設けられており、ねじりばね装置(30,32)は多段式のばね特性曲線(B)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のクラッチ装置、特にブースタクラッチに関する。
【0002】
クラッチにおける操作力を著しく下げるために、新たな手段を講じる必要がある。1つの可能性としては、いわゆるブースタクラッチを使用することである。このクラッチシステムは、パイロット制御式クラッチとメインクラッチとを有している。この構成において2つのエレメントは、傾斜機構により転動体を介して互いに結合されている。パイロット制御式クラッチの接続時には、形成されたモーメントにより、傾斜機構の斜面は相対回動し、もってメインクラッチが接続される。メインクラッチの操作のために必要なエネルギは、このシステムにおいてはエンジンによって調達され、パイロット制御式クラッチの接続のための力だけを外部から供給する必要がある。
【0003】
本発明の目的は、改良されたクラッチ装置を提供することである。
【0004】
上記目的は請求項1に記載したクラッチ装置により達成される。
【0005】
本発明によりクラッチ装置を提供する。クラッチ装置、特にブースタクラッチ装置は、第1のクラッチエレメントと第2のクラッチエレメントとを有し、ねじりばね装置が設けられている。このねじりばね装置は、第1のクラッチエレメントと、第2のクラッチエレメントとを互いに連結するか又は結合する。ねじりばね装置は、多段式のばね特性曲線を有しているか又は提供するように形成されている。
【0006】
ばね特性曲線は、ばね特性曲線の段部により適切な又は所望の特性曲線の延びに適合可能である点において利点を有する。したがって、ねじりばね装置のばね特性曲線は、ライニング特性曲線又は指数関数的に延びる特性曲線に近似することができる。これにより、クラッチ装置の一例である、例えばブースタクラッチにおいて、メインクラッチの押圧力を、伝達されるエンジントルクに良好に適合させることができる。
【0007】
本発明の有利な構成及び改良形は、従属請求項及び図面に関する記載から明らかになる。
【0008】
本発明に係る構成において、第1のクラッチエレメントはクラッチフランジであり、第2のクラッチエレメントはクラッチハブである。
【0009】
他の構成によれば、ねじりばね装置は圧縮ばね装置を有しており、この圧縮ばね装置は少なくとも1つの圧縮ばねを有している。この圧縮ばねは、第1のクラッチエレメント若しくはクラッチフランジ、及び第2のクラッチエレメント若しくはクラッチハブにより圧縮可能にクラッチ装置に設けられている。
【0010】
別の構成において、ねじりばね装置は板ばね装置を有している。この板ばね装置は、特にクラッチハブに設けられており、少なくとも1つの板ばねから成る特に少なくとも1つの板ばねパッケージを有している。板ばねは、圧縮ばねとは異なり高い剛性を有しており、これによりねじりばね装置においては種々異なる剛性を提供し、かつ組み合わせることができる点で有利である。
【0011】
さらに別の構成において、ねじりばね装置の二段式のばね特性曲線の場合に、板ばね装置は、クラッチフランジと接触領域において接触可能であるように、クラッチハブに結合されている。しかし二段式のねじりばね装置には、例えばハブにおける板ばね収容部の端部又は端部の領域において、例えば板ばね及びクラッチハブによって第3の付加的な接触はもたらされない。
【0012】
さらに別の構成によれば、ねじりばね装置の三段式のばね特性曲線の場合に、板ばね装置が、クラッチフランジと接触領域において接触可能であり、さらにクラッチハブと接触領域において接触可能であるように、クラッチハブに結合される。これにより指数関数的なばね特性曲線は良好に近似することができる。
【0013】
さらに別の構成において、クラッチハブは各板ばね収容部を有している。この板ばね収容部は、板ばね装置が収容されていて固定されている凹部として形成されている。板ばね装置は、クラッチフランジの段部又はストッパに接触可能であるように、板ばね収容部から突出している。クラッチフランジの段部又はストッパは、凸部又は凹部若しくは切欠きとして形成されている。
【0014】
さらに別の構成において、さらにねじりばね装置の三段式のばね特性曲線の場合に、板ばね装置の収容部は接触領域を有している。この接触領域でもって板ばね装置は、クラッチフランジとの接触部に対して付加的に、クラッチハブ、例えばハブにおける板ばね収容部の端部又は端部領域と接触可能である。これにより剛性を付加的に高めることができる。
【0015】
さらに別の構成において、第1のクラッチエレメント若しくはクラッチフランジの固有剛性及び/又は第2のクラッチエレメント若しくはクラッチハブの固有剛性は、可変に形成されているので、例えば板ばね装置を省くことができ、かつねじりばね装置のばね特性曲線が指数関数的な特性曲線に近似することを達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ブースタクラッチ装置の並進的な図である。
【図2】図1に示したクラッチ装置におけるトルク分配を示す図である。
【図3】トルクフィーラを備えたブースタクラッチ装置の並進的な図である。
【図4】荷重変動時のトルクフィーラを備えたブースタクラッチ装置の並進的な図である。
【図5】傾斜モーメント及びねじりばねの特性曲線を示すグラフである。
【図6】ゼロ状態におけるクラッチ装置のフランジ及びハブを示す概略図である。
【図7】小さな角度における図6に示したクラッチ装置のフランジ及びハブを示す別の概略図である。
【図8】角度αより大きく、角度βより小さな角度において、図7に示したクラッチ装置のフランジ及びハブを示すさらに別の概略図である。
【図9】角度βよりも大きな角度において、図8に示したクラッチ装置のフランジ及びハブを示すさらに別の概略図である。
【図10】クラッチ装置を示す斜視図である。
【図11】図10に示したクラッチ装置を示す平面図である。
【図12】図11に示したクラッチ装置の一区分を示す図である。
【図13】図10〜12に示したクラッチ装置のハブの斜視図である。
【0017】
以下に、本発明を、実施の形態を示す概略的な図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
以下の図面において同一又は類似の構成部材には、別物でない限りは同じ符号を付す。
【0019】
本発明は、図1〜13に基づいて以下に記載するように、傾斜機構16により転動体18を介して互いに結合されている、パイロット制御式クラッチ12(第1のクラッチ12)と、メイン制御クラッチ14(第2のクラッチ14)とを備えたクラッチ装置10に関する。本発明に係るクラッチ装置10、本発明においては、例えばブースタクラッチ装置は、特に車両、例えば商用車、トラック又はオートバイ若しくはモータサイクルにおいて使用することができる。
【0020】
図1に、まずブースタクラッチ装置であるクラッチ装置10の並進的な図を示す。このクラッチ装置10は、エンジン20のエンジンモーメントを使用することによりレリーズ力の低減を可能にする。この実施の形態においてクラッチ装置10は、傾斜機構16により転動体18を介して互いに結合されているパイロット制御式クラッチ12(第1のクラッチ12)と、メインクラッチ14(第2のクラッチ14)とを有している。この実施の形態において傾斜機構16は、例えば第1の及び第2の傾斜22,24を有している。これらの傾斜22,24は適切な転動体18を介して互いに結合されている。図1に示した傾斜機構16は、例えば球体用の傾斜を形成する。図1にさらに、ブースタクラッチ装置10に結合されているエンジン20及び変速機26を示す。図1に示した、クラッチ装置10の並進的な図において、図における鉛直方向の運動は、クラッチ装置における軸線方向の運動に相当し、図において水平方向の運動は、クラッチ装置の回動又は相対回動(Verdrehung)に相当する。
【0021】
図2に、メインクラッチ14及びパイロット制御式クラッチ12を備えた、図1に示したブースタクラッチ装置10を示し、また、エンジン20及び変速機26を示す。図2に、クラッチ装置10のクラッチ機能及びトルク分配28を示す。クラッチ操作は、パイロット制御式クラッチ12又は第1のクラッチ12に作用する。パイロット制御式クラッチ12(第1のクラッチ12)は、例えば、傾斜機構16(球体用の傾斜)により軸線方向力に変換される、エンジン20の最大のエンジントルクの約10分の1を引き受ける。この力は押圧力として、エンジントルク伝達の大部分を引き受けることができるメインクラッチ14又は第2のクラッチ14に作用する。
【0022】
この実施の形態において生じる問題は、クラッチ装置10が上述のように構成されている場合に、傾斜機構16(球体用の傾斜)の傾斜22,24が引っ掛かって動かなくなることがある点にある。この問題は、トルクフィーラ若しくはトルクフィーラ装置によって解消することができる。
【0023】
図3に、トルクフィーラ装置30を備えたブースタクラッチ装置10の並進的な図を示す。クラッチ装置10は、パイロット制御式クラッチ12(第1のクラッチ12)と、メインクラッチ14(第2のクラッチ14)とを有している。さらに、クラッチ装置10に結合されているか又は連結されているエンジン20及び変速機26が示されている。パイロット制御式クラッチ12及びメイン制御クラッチ14は、第1及び第2の傾斜22,24を有する傾斜機構16により、転動体18を介して互いに結合されている。
【0024】
構造に関してトルクフィーラ装置30は、変速機26と、メインクラッチ14(第2のクラッチ14)との間に設けられているねじりばね装置32として考えることができる。荷重変動が生じる場合には、パワートレインにおいて伝達されるトルクは変化し、これによりまたねじりばね装置32の応力が変化する。
【0025】
これまでねじりばね若しくはねじりばね装置32の設計に関する指針は存在しなかった。仮に傾斜機構16の傾斜22,24が引っ掛からなくても、クラッチ装置10は荷重変動時にはやはり非常に敏感に反応する。問題は、力対距離のライニング特性曲線は線形でなく、指数関数的である点にある。したがってねじりばね装置32の設計時に、傾斜22,24の完璧な若しくは確実な解除を保証するために、ねじりばね特性曲線34は、有利には指数関数的又はほぼ指数関数的であることが望ましい。
【0026】
このことについては以下のように説明することができる。荷重変動時に伝達されるトルクは変化する。目的は、メインクラッチ14(第2のクラッチ14)の押圧力を、上記伝達されるトルクに適合させることである。
【0027】
図4に、トルクフィーラ装置30を備えた他のブースタクラッチ装置10の並進的な図と、ブースタクラッチ装置10に結合されているモータ20と変速機26とを示す。上述のようにクラッチ装置10は、2つの傾斜22,24を有する傾斜機構16により、転動体18を介して互いに結合されているパイロット制御式クラッチ12(第1のクラッチ12)と、メインクラッチ14(第2のクラッチ14)とを有している。図4に基づき、ねじりばね装置32をさらに最適化することができる形態を説明する。図4に、荷重変動時における、トルクフィーラ装置30を有するブースタクラッチ装置10の挙動を示す。
【0028】
伝達可能なトルクCは、この実施の形態においてメインクラッチ押圧力に相当する。メインクラッチ押圧力は、押圧板(例えば多板パッケージ)36の軸線方向の移動量sに対応する。また軸線方向の移動sは、傾斜22,24の所定の角度θだけの相対回動に相当する。したがって伝達可能なトルクCは、角度θだけの傾斜22,24の相対回動に相当する。以下の図5における特性曲線Aは、傾斜モーメント特性曲線に相当する。
【0029】
トルクフィーラ装置30をパワートレインにおいて使用する場合、ねじりばね角度θがトルクCに対応するので、荷重変動時におけるモーメント変化が相対回動をもたらす。続きの図5における特性曲線Bは、ねじりばね特性曲線に相当する。
【0030】
図5に、傾斜モーメントの特性曲線Aと、ねじりばねの特性曲線Bとが図示されているグラフを示す。このグラフの2つの軸は、回動角シータθに基づくトルクC(Nm)を表す。ねじりばねの特性曲線若しくは特性曲線Bは、有利には傾斜モーメントの特性曲線若しくは特性曲線Aと同じ又は可能な限りほぼ同じであるように設計される。この前提が満たされない場合には、傾斜機構の傾斜は引っ掛かったままであり得るか、又はクラッチ装置全体が、伝達可能なモーメントを非規則的に調整又は調節することになる。
【0031】
ねじりばね剛性が傾斜モーメント剛性よりも低い場合、ねじりばね装置又はねじりばねは過度に相対回動するので、一方の傾斜が、伝達されるトルクに対して押圧力が著しく小さくなっている位置を占める。この不均衡のために、傾斜が反対方向に相対回動するか又は回動することが望ましい。
【0032】
ねじりばね剛性が傾斜モーメント剛性よりも高い場合、傾斜は引っ掛かったままであることがある。したがって特性曲線A及びBが近ければ近いほど、荷重変動は良好に行われる。
【0033】
したがって、可能な限り傾斜モーメント特性曲線に近似している特性曲線を有する多段式のトルクフィーラ装置又は多段式のねじりばね装置が使用される。例えば、可能な限り傾斜モーメント特性曲線に近似している特性曲線を有する三段式のねじりばね装置が提供される。
【0034】
図5に示したように、ねじりばね弾性部若しくはねじりばね弾性部の特性曲線Bが、三段式の構造を有している。三段式の特性曲線Bは、例えば第1の段において少なくとも1つの圧縮ばねを有する圧縮ばね装置が作用し、次いで圧縮ばね装置及び板ばね装置が協働することにより得られる。
【0035】
図6に、フランジ38及びクラッチ装置10のハブ40の協働状態を概略的かつ簡潔に示す。多段式のトルクフィーラ装置30若しくは多段式のねじりばね装置32が設けられている。具体的には三段式のねじりばね装置32が設けられている。図6に、ゼロ位置にあるねじりばね状態を示す。図6に示すように、ねじりばね装置32は板ばね装置42を有している。この板ばね装置42は、少なくとも1つの板ばね46から成る少なくとも1つの板ばねパッケージ44を有している。板ばね46は、ハブ40における、例えば凹部の形式の板ばね収容部48に取り付けられている。さらにねじりばね装置32は、少なくとも1つの圧縮ばね52を有する圧縮ばね装置50を有する。圧縮ばね52はハブ40とフランジ38とを結合するか又は連結する。
【0036】
図6に示したようにゼロ位置において、ハブ40に不動に結合されている板ばね装置42と、フランジ38との間に角度αが生じるようにすることができる。ハブ40とフランジ38との間に配置されているか又は取り付けられている圧縮ばね装置50は、例えば既に予付勢された状態にある。
【0037】
同様に図7に、図6に示したクラッチ装置10のフランジ38及びハブ40の協働を概略的にかつ簡潔に示す。図7において多段式のトルクフィーラ装置30又は多段式のねじりばね装置32が、つまり三段式のねじりばね装置32が設けられている。
【0038】
図7に、ねじりばね装置32のねじりばねの状態を、小さな角度、つまり板ばね46とフランジ38との間における角度αよりも小さな角度において示す。図7に示すように、圧縮ばね装置50の圧縮ばね52だけが作用しており、板ばね装置42の板ばね46は作用していないので、小さな角度だけフランジ38が相対回動した場合には、ねじりばね装置32の剛性は低い。
【0039】
図8に、図7に示したクラッチ装置10のフランジ38及びハブ40の協働を概略的にかつ簡潔に示す。図8において同様に、多段式のトルクフィーラ装置30又は多段式のねじりばね装置32、つまり三段式のねじりばね装置32が設けられている。
【0040】
具体的には、図8に、角度αよりも大きく、板ばね装置42の板ばね46とフランジ38との間の角度βよりも小さい角度におけるねじりばねの状態を示す。図6,8から看取可能であるように、板ばね装置42の板ばね46は、フランジ38に所定の角度αから当たる。これにより剛性が明らかに高まる。板ばね46はハブ40との接触領域54(第1の接触部)を形成する。この接触領域54(第1の接触部)において板ばね46は、例えばハブ40に支承されているか又は固定されている。さらに板ばね46は、フランジ38との接触領域56(第2の接触部)を形成する。この接触領域56(第2の接触部)において板ばね46は、図8に示されているように、フランジ38がハブ40に対して相対的に、角度αより大きくかつ角度βより小さい角度だけ回動している場合に、フランジ38に接触する。さらにこの実施の形態において、図8に示されているように圧縮ばね装置50の圧縮ばね52が作用する。
【0041】
図9において、図8に示したクラッチ装置10のフランジ38及びハブ40の協働を概略的にかつ簡潔に示す。図9において、多段式のトルクフィーラ装置30又は多段式のねじりばね装置32、この実施の形態においては三段式のねじりばね装置32が設けられている。
【0042】
図9に、板ばね装置42の板ばね46とフランジ38との間の角度βよりも大きな角度におけるねじり状態を示す。板ばね装置42の板ばね46の支承部は、図9に示すように、板ばね46とフランジ38との間の角度βから変化する。図9に例示的に示されている、板ばね装置42の板ばね46は、ハブ40において第3の接触領域58(第3の接触部)に接する。これにより板ばね46の撓みは極めて困難になり、これにより高いねじり剛性がもたらされる。
【0043】
図10に、例えば第1のクラッチ、本発明においてはパイロット制御式クラッチと、第2のクラッチ、本発明においてはメインクラッチとを有することができるクラッチ装置10の実施の形態若しくはクラッチ装置10の一部分の斜視図を示す。さらにパイロット制御式クラッチ12及びメインクラッチ14は、傾斜機構を介して、例えば第1及び第2の傾斜でもって転動体を介して互いに結合されていてよい。クラッチ装置10は、例えば三段式のねじりばね装置32を有している。このねじりばね装置32の基本構造は、特に図5〜9に基づいて既に説明した。
【0044】
図10に示すクラッチ装置10は、例えばモータサイクルのための、例えばブースタクラッチ装置といったクラッチ装置であってよく、モータサイクルクラッチ装置を形成する。しかしまたクラッチ装置10は、例えば商用車、トラック又は他の車両のために形成されていてもよい。また、ブースタクラッチ装置における使用の他に、以下に記載する多段式のねじりばね装置32又はトルクフィーラ装置30は、他の慣用のクラッチ装置、例えば減衰ディスクを備えたクラッチ装置において、又は多段式のねじりばね若しくはトルクフィーラ装置32,30との使用に適している、他のあらゆるクラッチ装置において使用することもできる。
【0045】
図10に示すように、クラッチ装置10は、例えばクラッチフランジ38とクラッチハブ40とを有している。この実施の形態において、クラッチハブ40には板ばね装置42が設けられている。クラッチハブ40の適切な板ばね収容部48において、1つ又は図10においては複数の板ばね46(板ばねパッケージ44)が取り付けられていて、かつ支承若しくは固定されている。さらに圧縮ばね装置50が設けられていて、複数の圧縮ばね52が圧縮ばね収容部60、例えばクラッチハブ40に収容されており、クラッチハブ40とクラッチフランジ38とを結合するか若しくは連結する。
【0046】
図11に、図10に示した多板パッケージ62を備えたクラッチ装置10の平面図を示す。図11には、クラッチハブ40が示されている。このクラッチハブ40の板ばね収容部48に夫々、複数の板ばね46から成る板ばねパッケージ44が配置されていて、固定されている。板ばね収容部48は、板ばねパッケージ44が挿入され、例えば固定リングといった固定エレメント64により固定される、例えば凹部の形式において形成されている。板ばね46は、固定リング64を収容する、例えば凹部の形式の固定リング64のための収容部66を有する。固定リング64は、さらにクラッチハブ40に、例えばねじ68により固定される。板ばねパッケージ44は、クラッチハブ40の各板ばね収容部48から突出していて、クラッチフランジ38の第1及び第2の接触区分70,72と接触することができる。これにより、クラッチフランジ38及びクラッチハブ40が、図5〜9に関して既述したように、互いに相対的に回動するか又は相対回動する場合に、第2及び第3の接触部56,58が形成される。板ばねパッケージ44は、板ばね収容部48において板ばねパッケージ44の固定部と共に、図6,7に関して既述したように、いわゆる第1の接触部54を形成する。
【0047】
フランジ38及びハブ40が対応して互いに相対的にどの程度回動若しくは相対回動しているかに応じて、各板ばねパッケージ44は、クラッチフランジ38との、いわゆる第2の接触部56を、クラッチハブ40との、いわゆる第3の接触部58を形成することができる。
【0048】
図6,7に基づいて既述したように、いわゆる第1の接触部54しかない実施の形態において、板ばね装置42とクラッチフランジ38との間の角度は、角度α以下である。この実施の形態において、圧縮ばね52がクラッチフランジ38とクラッチハブ40とによって又はクラッチフランジ38とクラッチハブ40との間において圧縮される場合には、圧縮ばね52だけしか作用しない。図6,7に基づいて既述したように、板ばね装置42若しくは板ばねパッケージ44は、この実施の形態においては作用しない。
【0049】
板ばねパッケージ44とクラッチフランジ38との付加的な第2の接触部56を提供するために、クラッチフランジ38は、例えば図10に示したように、凹部若しくは切欠き、又は図6〜9に示したように凸部により形成されるストッパ74を有する。第2の接触部56は、板ばねパッケージ44とクラッチフランジ38のストッパ74、この実施の形態においては図6〜9におけるフランジ38又は凸部の側壁における凹部の側壁との接触時にもたらされる。本発明の2つの接触部54,56の実施の形態については、図8に基づいても説明した。この実施の形態において、板ばね装置42とクラッチフランジ38との間の角度は、角度αよりも大きくかつ角度βよりも小さい。圧縮ばね52は、クラッチハブ40及びクラッチフランジ38によりさらに圧縮されるので、圧縮ばね52も作用する。
【0050】
クラッチハブ40及びクラッチフランジ38が互いに回動するか若しくは相対回動していると、第3の接触部58がもたらされる。これにより、板ばねパッケージ44が付加的にクラッチハブ40に、例えば図12において破線により示すように、クラッチハブ40の板ばね収容部48の上側の端部において接触する。3つの接触部54,56,58が設けられた実施の形態は、先に図9に基づいて例示的に説明した。この実施の形態において、板ばね装置42とクラッチフランジ38との間の角度は、角度βよりも大きい。これにより高いねじり剛性がもたらされる。さらにこの実施の形態において、クラッチハブ40及びクラッチフランジ38により圧縮される圧縮ばね52が作用する。
【0051】
図12に、図10,11に示したクラッチ装置10の一区分を拡大して示す。この区分に、クラッチハブ40の板ばね収容部48が示されている。この板ばね収容部48に複数の板ばね46から成る板ばねパッケージ44が配置されている。板ばね46は、収容部48において、固定リングといった固定エレメント64を介して固定されていて、固定リング84は、例えば板ばねパッケージ44の切欠き又は凹部の形式の収容部66に案内されていて、クラッチハブ40にねじ止めされている。板ばねパッケージ44は、板ばね収容部48から、クラッチフランジ38における凹部の形式の収容部内に突出している。さらに、一方の側でクラッチフランジ38により圧縮可能であり、他方の側でクラッチハブ40により圧縮可能であるように配置されている圧縮ばね装置50の圧縮ばね52を示す。図12に、板ばね装置42と圧縮ばね装置50とを有するねじりばね装置32が、ゼロ位置において示されている。このゼロ位置において、例えば圧縮ばね装置50だけが作用する場合、つまり圧縮ばね52が、クラッチフランジ38及びクラッチハブ40により圧縮される。つまり図12は、板ばね装置42とクラッチフランジ38との間の角度が、角度α以下である、図6,7に基づき先に説明した実施の形態を示す。この実施の形態においては、圧縮ばね52がクラッチフランジ38とクラッチハブ40とによって又はクラッチフランジ38とクラッチハブ40との間において圧縮される場合に、圧縮ばね52だけが作用する。板ばね装置42若しくは板ばねパッケージ44は、図6,7に基づいて先にも説明したように、この実施の形態においては作用しない。さらに、接触部54,56,58が存在し、板ばね装置42若しくは板ばね装置42の各板ばねパッケージ44が、クラッチフランジ38のストッパと接触し、かつクラッチハブ40、例えばクラッチハブ40の板ばね収容部48の端部に付加的に接触する実施の形態を破線によって示す。
【0052】
図13に、図10〜12に示したクラッチハブ40を、ねじりばね装置及びクラッチフランジがない状態で斜視図において示す。図13に、板ばね装置の板ばねパッケージのための収容部48と、圧縮ばね装置の圧縮ばねのための収容部60とを示す。クラッチハブ40は、クラッチフランジと同様に(図示せず)、メインクラッチの変速機、例えばブースタクラッチ装置に結合されていてよい。クラッチフランジと結合されている多板パッケージ(図示せず)は、例えばメインクラッチに属する。エンジンのエンジントルクは、多板パッケージを介してクラッチフランジへと伝達でき、このクラッチフランジからねじりばね装置の圧縮ばね装置及び板ばね装置を介してクラッチハブに伝達でき、このクラッチハブから変速機に伝達することができる。
【0053】
既述したように本発明は、ブースタクラッチに限定されるものではなく、他のクラッチにおいても実現することができる。これらの他のクラッチは、必ずしも第1のクラッチ若しくはパイロット制御式クラッチと、第2のクラッチ又はメインクラッチとを有する必要はない。さらにクラッチは、必ずしも転動体を備えた傾斜機構を有している必要はない。
【0054】
エンジントルクの増大と共に、押圧力は一層大きくなり(したがってレリーズ力も一層大きくなり)、これにより走行快適性は損なわれる。したがってレリーズ力の低減をもたらす廉価なシステムへの期待が高まる。この理由から、ブースタクラッチは、成果を収める大きなチャンスを有しているので本発明にとって重要であるが、ブースタクラッチに限定されることはない。それでもやはりこのシステムは、走行快適性を損なうことがある二次的作用を惹起しない(又は殆ど惹起しない)ようになっている。
【0055】
ブースタクラッチは、荷重変動時に敏感に反応することがあり、ブースタクラッチの球体用の傾斜が引っ掛かることがある。したがって、上述のように、有利にはねじりばねであるトルクフィーラをメインクラッチにおいて使用する。このねじりばねのモーメント−角度特性曲線は、ライニング特性曲線(指数関数的な特性曲線)に一致するか、又は図5に示したように、可能な限り近似している。構造的に上記特性曲線は圧縮ばねと板ばねとの組合せにより形成される。したがって球体用の傾斜は完全に解除することができる。荷重変動時の特性及び上記ブースタクラッチにおけるプル−プッシュ特性を上記ブースタクラッチにおいて改良するために、メインクラッチの押圧力は、伝達されるエンジントルクに可能な限り正確に適合される。
【0056】
上述のように、図5に示した三段式の特性曲線Bを形成する構成が、板ばねと圧縮ばねとの組合せから成っていてよい。三段式の特性曲線の他に、二段式の特性曲線が機能することもできる。この二段式の特性曲線においては、板ばね装置又は板ばね装置の少なくとも1つの板ばねが、第2の接触部だけをもたらし、第3の接触部をもたらさないようにクラッチハブに設けられている。つまり板ばね装置は、クラッチフランジとクラッチハブとが十分に互いに回動するか若しくは相対回動する場合に、確かにクラッチフランジと接触することができる(第2の接触部)が、クラッチフランジとクラッチハブとがさらに互いに回動するか若しくは相対回動する場合に、板ばね装置が付加的にクラッチハブと接触する第3の接触部がもたらされないように、クラッチハブに配置されている。
【0057】
基本的に三段よりも多い段を備えた特性曲線が考慮可能でもある。別の実施の形態において、フランジ若しくはクラッチフランジの固有剛性及び/又はハブ若しくはクラッチハブの固有剛性を変えることも可能である。これにより板ばねを省くことはできるが、省かなければならないわけではない。
【符号の説明】
【0058】
10 クラッチ装置
12 第1のクラッチ若しくはパイロット制御式クラッチ
14 第2のクラッチ若しくはメインクラッチ
16 傾斜機構
18 転動体
20 エンジン
22 第1の傾斜
24 第2の傾斜
26 変速機
28 トルク分配部
30 トルクフィーラ(装置)
32 ねじりばね装置
34 ねじりばね特性曲線
36 押圧板
38 クラッチフランジ
40 クラッチハブ
42 板ばね装置
44 板ばねパッケージ
46 板ばね
48 板ばね収容部
50 圧縮ばね装置
52 圧縮ばね
54 第1の接触部
56 第2の接触部
58 第3の接触部
60 圧縮ばね収容部
62 多板パッケージ
64 固定エレメント
66 収容部
68 ねじ
70 第1の接触区分
72 第2の接触区分
74 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のクラッチエレメント(38)と、第2のクラッチエレメント(40)とを有する、クラッチ装置(10)、特にブースタクラッチ装置において、
前記第1のクラッチエレメント(38)と第2のクラッチエレメント(40)とを互いに連結するねじりばね装置(30,32)が設けられており、該ねじりばね装置(30,32)は多段式のばね特性曲線(B)を有していることを特徴とする、クラッチ装置。
【請求項2】
前記第1のクラッチエレメント(38)はクラッチフランジ(38)であり、前記第2のクラッチエレメント(40)はクラッチハブ(40)であることを特徴とする、請求項1記載のクラッチ装置。
【請求項3】
前記ねじりばね装置(30,32)は圧縮ばね装置(50)を有しており、該圧縮ばね装置(50)は少なくとも1つの圧縮ばね(52)を有しており、該圧縮ばね(52)は、前記第1のクラッチエレメント(38)若しくは前記クラッチフランジ(38)と、前記第2のクラッチエレメント(40)若しくは前記クラッチハブ(40)とにより圧縮可能に前記クラッチ装置(10)内に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2記載のクラッチ装置。
【請求項4】
前記ねじりばね装置(30,32)は板ばね装置(32)を有しており、該板ばね装置(32)は、一方のクラッチエレメント(38,40)に、特にクラッチハブ(40)に設けられており、かつ、少なくとも1つの板ばね(46)を備える特に少なくとも1つの板ばねパッケージ(44)を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項記載のクラッチ装置。
【請求項5】
前記板ばね装置(42)は、一方のクラッチエレメント(38,40)に、特にクラッチハブ(40)に結合されていて、前記ねじりばね装置(30,32)の二段式のばね特性曲線の場合に、他方のクラッチエレメント(40,38)、特にクラッチフランジ(38)の接触領域(56)に接触可能であることを特徴とする、請求項4記載のクラッチ装置。
【請求項6】
前記板ばね装置(42)は、クラッチエレメント(38,40)に、特にクラッチハブ(40)に結合されていて、前記ねじりばね装置(32)の三段式のばね特性曲線の場合に、他のクラッチエレメント(40,38)に、特にクラッチフランジ(38)に接触(56)可能であり、さらに前記クラッチエレメント(40)、特に前記クラッチハブ(40)の接触領域(58)に接触可能であることを特徴とする、請求項4記載のクラッチ装置。
【請求項7】
一方のクラッチエレメント(38,40)、特に前記クラッチハブ(40)は、各板ばね収容部(48)を有し、該板ばね収容部(48)は、前記板ばね装置(42)が収容されていてかつ固定されている凹部として形成されており、前記板ばね装置(42)は、他方のクラッチエレメント(38,40)、特にクラッチフランジ(38)のストッパ(74)に接触可能であるように、前記板ばね収容部(48)から突出しており、前記クラッチエレメントのストッパ(74)は、凸部又は凹部若しくは切欠きとして形成されていることを特徴とする、請求項4から6までのいずれか一項記載のクラッチ装置。
【請求項8】
前記板ばね装置(42)の収容部(48)は、前記ねじりばね装置(30,32)の三段式のばね特性曲線(B)の場合に、さらに接触領域を有しており、該接触領域でもって、前記板ばね装置(42)は、一方のクラッチエレメント(38,40)、特に前記クラッチフランジ(38)との接触(56)に対して付加的に、他方のクラッチエレメント(40)、特にクラッチハブ(40)の接触領域(58)に接触可能であることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか一項記載のクラッチ装置。
【請求項9】
1つ又は2つの前記クラッチエレメント(38,40)若しくは前記クラッチフランジ(38)及び/又は前記クラッチハブ(40)の固有剛性が、可変に構成されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項記載のクラッチ装置。
【請求項10】
前記ねじりばね装置(30,32)のばね特性曲線(B)は、ライニング特性曲線、又は指数関数的に延びる特性曲線に一致するか又は近似していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項記載のクラッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−509543(P2013−509543A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535626(P2012−535626)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【国際出願番号】PCT/DE2010/001226
【国際公開番号】WO2011/050774
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512006239)シェフラー テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (59)
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1−3, D−91074 Herzogenaurach, Germany
【Fターム(参考)】