説明

クラッド材製造設備の加熱冷却装置

【課題】母材の表面に圧着した金属粉末の加熱・冷却を効率良く安定して行い得ると共に、加熱により金属粉末が軟化した状態となっているロウ材層が傷付くことを防止しつつ、加熱炉や冷却器内でクラッド材を安定して搬送し得るクラッド材製造設備の加熱冷却装置を提供する。
【解決手段】加熱炉5をクラッド材4の搬送方向へ複数の加熱ブロック5a,5b,5cに分割すると共に、冷却器6をクラッド材4の搬送方向へ複数のガス冷却ブロック6a,6b及び水冷却ブロック6cに分割し、前記加熱ブロック5a,5b,5cの接続部と、前記ガス冷却ブロック6a,6b及び水冷却ブロック6cの接続部とに、少なくともクラッド材4の両幅端部を支持可能なサポートローラを有するサポート装置18を配設し、該サポート装置18間でクラッド材4を宙吊り状態で搬送し得るよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッド材製造設備の加熱冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、母材である銅、ステンレス或いは耐熱合金等の金属板の両面又は片面に、リン銅、ニッケル等を主成分とする金属粉末を圧着してロウ材層を形成したクラッド材を製造することが行なわれるようになっており、このようなクラッド材を製造する際には、図12に示されるような装置を使用することが提案されている。
【0003】
図12はクラッド材製造設備を構成する粉末圧着装置の一例を示したものであり、粉末圧着装置1は、水平方向へ対向配置された一対のロール1a,1bを備え、該一対のロール1a,1bは、対向側が下方へ回転するよう図示していないモータ等の駆動装置により駆動されると共に、ロールギャップGを調整し得るようになっている。
【0004】
前記ロール1a,1bの上面には、金属粉末供給ローラ2a,2bが回転駆動可能に配置され、該金属粉末供給ローラ2a,2bよりもロール1a,1bの回転方向上流側には、金属粉末Pmが貯留され且つ該金属粉末Pmをロール1a,1b上面に供給可能な金属粉末ホッパ3a,3bが配設されている。
【0005】
尚、図12中、Sは図示していない巻戻機により上方からロール1a,1b間に供給される銅やステンレス等の母材である。
【0006】
前述の如きクラッド材製造設備を構成する粉末圧着装置1においては、図示していないモータ等の駆動装置により一対のロール1a,1bが図12の矢印方向へ回転駆動されると共に、上方よりロール1a,1b間に母材Sが送給され、金属粉末ホッパ3a,3bからロール1a,1b上面に金属粉末Pmが供給される。
【0007】
而して、前記ロール1a,1b上面に供給された金属粉末Pmは、回転する金属粉末供給ローラ2a,2bにより供給量が調整されて母材S側へ送給され、ロール1a,1bのロールギャップGにおいて母材Sの表面に圧着され、クラッド材4が形成される。
【0008】
尚、前述の如きクラッド材製造設備を構成する粉末圧着装置と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開2002−212608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述の如きクラッド材4においては、母材Sの表面に圧着した金属粉末Pmを加熱して焼結させた後、冷却することがロウ材層をより安定化させる上で有効となるが、現時点では、金属粉末Pmの加熱・冷却を効率良く安定して行い得る加熱炉や冷却器の具体的な形態に関しては確立されておらず、特に、加熱により金属粉末Pmが軟化した状態となっているロウ材層が傷付くことを防止しつつ、加熱炉や冷却器内でいかにクラッド材4を安定して搬送するかという点は解決すべき大きな課題となっていた。尚、ここで言う焼結には、加熱炉に導かれて加熱されることにより金属粉末Pmが融解して母材Sに融着されること、言い換えると、加熱によって金属粉末Pmの粒子表面又はその一部が融解して(液相を出させて)軟化することにより金属粉末Pmが母材Sに融着することも含まれる。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、母材の表面に圧着した金属粉末の加熱・冷却を効率良く安定して行い得ると共に、加熱により金属粉末が軟化した状態となっているロウ材層が傷付くことを防止しつつ、加熱炉や冷却器内でクラッド材を安定して搬送し得るクラッド材製造設備の加熱冷却装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、母材の表面に粉末圧着装置で金属粉末を圧着し、該金属粉末を加熱炉で加熱して焼結させた後、冷却器で冷却することにより、クラッド材を製造するようにしたクラッド材製造設備の加熱冷却装置において、
前記加熱炉をクラッド材の搬送方向へ複数の加熱ブロックに分割すると共に、前記冷却器をクラッド材の搬送方向へ複数の冷却ブロックに分割し、前記加熱ブロックの接続部と、前記冷却ブロックの接続部とに、少なくともクラッド材の両幅端部を支持可能なサポートローラを有するサポート装置を配設し、該サポート装置間でクラッド材を宙吊り状態で搬送し得るよう構成したことを特徴とするクラッド材製造設備の加熱冷却装置にかかるものである。
【0012】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0013】
クラッド材は、加熱炉の加熱ブロックの接続部と冷却器の冷却ブロックの接続部とに配設されたサポート装置のサポートローラにより、少なくともその両幅端部が支持されつつ、前記加熱ブロックと冷却ブロック内部を宙吊り状態で安定して搬送され、たとえ加熱により金属粉末が軟化した状態となっていたとしてもロウ材層が傷付く心配はない。
【0014】
前記クラッド材製造設備の加熱冷却装置において、クラッド材の搬送方向最後の加熱ブロックの出口近傍で金属粉末がそれほど軟化せずに固着するようなクラッド材を扱う場合には、前記加熱ブロックと冷却ブロックとの接続部に前記サポート装置を配設しても良い。
【0015】
前記クラッド材製造設備の加熱冷却装置においては、前記サポート装置のサポートローラを前記粉末圧着装置によるクラッド材の搬送速度と同期させて回転駆動する駆動装置を備えるようにすることができ、このようにすると、加熱により金属粉末が軟化した状態となっているロウ材層が傷付くことをより確実に防止可能となる。
【0016】
更に、前記クラッド材の幅方向中間部を支持するサポートローラを配設することが、クラッド材の重量を複数のサポートローラによって分散させて支持し、クラッド材の搬送をより安定化させると共にロウ材層の傷付きを防止する上でより有効となる。
【0017】
又、前記サポート装置を冷却する冷却機構を備えることが、サポートローラの昇温を回避する上で望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1〜5記載のクラッド材製造設備の加熱冷却装置によれば、母材の表面に圧着した金属粉末の加熱・冷却を効率良く安定して行い得ると共に、加熱により金属粉末が軟化した状態となっているロウ材層が傷付くことを防止しつつ、加熱炉や冷却器内でクラッド材を安定して搬送し得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1〜図6は本発明を実施する形態の一例であって、前記粉末圧着装置1(図12参照)において金属粉末Pmが母材Sの表面に圧着されたクラッド材4を加熱して前記金属粉末Pmを焼結させる加熱炉5と、該加熱炉5の下流側に配設された冷却器6とを備え、該冷却器6が、窒素等の不活性ガスによってクラッド材4を冷却するガス冷却領域6Aと、該ガス冷却領域6Aで冷却されたクラッド材4を噴射される水によって直接冷却する水冷却領域6Bとを有するよう構成したものである。
【0021】
前記加熱炉5は、クラッド材4の搬送方向へ複数(図1の例では三個)の加熱ブロック5a,5b,5cに分割すると共に、前記冷却器6のガス冷却領域6Aは、クラッド材4の搬送方向へ複数(図1の例では二個)のガス冷却ブロック6a,6bに分割し、且つ前記冷却器6の水冷却領域6Bは水冷却ブロック6cにて構成してある。
【0022】
前記加熱炉5の加熱ブロック5a,5b,5cはそれぞれ、図1及び図2に示す如く、耐火ケーシング7内に耐熱金属製隔壁8で覆われたクラッド材流通路9を形成すると共に、前記耐火ケーシング7内における耐熱金属製隔壁8の外側に電熱ヒータ等の発熱体10を配設することにより構成し、該加熱ブロック5a,5b,5cをクラッド材4の搬送方向へ連結するようにしてある。尚、前記耐熱金属製隔壁8で覆われたクラッド材流通路9内には、図示していないノズルから窒素等の不活性ガスが供給されるようになっている。
【0023】
一方、前記ガス冷却ブロック6a,6bはそれぞれ、図3に示す如く、冷却ケーシング11で覆われたクラッド材流通路12内に、ノズル13から窒素等の冷却用の不活性ガスを供給し得るようにしてある。
【0024】
前記水冷却ブロック6cは、図4(a)に示す如く、冷却ケーシング14で覆われたクラッド材流通路15内に、水噴射ノズル16から冷却用の水をクラッド材4の上下面へ向けて噴射し得るようにすると共に、図4(b)に示す如く、冷却ケーシング14で覆われたクラッド材流通路15内における前記水噴射ノズル16より少なくともクラッド材4の搬送方向下流側位置に、ガス噴射ノズル17から窒素等の不活性ガスをクラッド材4の上下面へ向けて噴射し得るようにしてある。尚、前記ガス噴射ノズル17から噴射される不活性ガスは、前記水冷却ブロック6cの冷却ケーシング14で覆われたクラッド材流通路15内部を不活性ガス雰囲気に保持してクラッド材4の酸化防止を図ることに加え更に、クラッド材4表面に付着した水を吹き飛ばして乾燥させる役割も果たしている。又、前記水冷却ブロック6cの出側には、ゴムパッド等でクラッド材4の上下面を挟み込み、前記クラッド材4表面に残存する水滴を掻き落とすための水切り装置(図示せず)を設置してある。
【0025】
そして、前記加熱ブロック5a,5b,5cの接続部と、前記ガス冷却ブロック6a,6bの接続部と、前記ガス冷却ブロック6b及び水冷却ブロック6cの接続部にはそれぞれ、図1に示す如く、クラッド材4のサポート装置18を配設し、該サポート装置18間でクラッド材4を宙吊り状態で搬送し得るよう構成してある。
【0026】
尚、図1に示す例では、クラッド材4の搬送方向最後の加熱ブロック5cと、クラッド材4の搬送方向最初のガス冷却ブロック6aとの接続部には、クラッド材4のサポート装置18は配設していない。これは、クラッド材4の搬送方向最後の加熱ブロック5cの出口近傍で金属粉末Pmは最も軟化するが、加熱によって大きく軟化する金属粉末Pmが圧着されたクラッド材4の場合は、金属粉末Pmが軟化した状態において、クラッド材4のサポート装置18への接触を避けることが必要となるためである。
【0027】
しかし、クラッド材4の搬送方向最後の加熱ブロック5cの出口近傍で金属粉末Pmがそれほど軟化せずに固着するようなクラッド材4では、該クラッド材4のサポート装置18への接触はあまり気にしなくてよいため、サポート装置18を配設しても良いことは言うまでもない。
【0028】
そして、図1に示す例では、クラッド材4の搬送方向最後の加熱ブロック5cの出口近傍では金属粉末Pmが大きく軟化してクラッド材4のサポート装置18への接触を避ける必要がある場合を想定し、クラッド材4を、その搬送方向最後の加熱ブロック5cの搬入側に配設したサポート装置18と、クラッド材4の搬送方向最初のガス冷却ブロック6aの搬出側に配設したサポート装置18とによって、加熱ブロック5cから冷却ブロック6aにかけて宙吊り状態になるように支えながら搬送するようにしてある。
【0029】
又、クラッド材4は、その品質を保つために粉末圧着装置1から冷却器6の後方に配置される巻取装置(図示せず)の区間で張力が所定の値になるように制御されながら搬送される。
【0030】
しかし、クラッド材4が宙吊り状態となる長さが長くなると、クラッド材4の搬送方向と直角な方向のたるみが増えて、安定した張力制御が難しくなる。又、このたるみが増大すると、加熱ブロック5a,5b,5cやガス冷却ブロック6a,6bのクラッド材流通路9,12の通路高さを高くする必要が生じて設備が大きくなる。
【0031】
そこで、図1に示す例の場合、クラッド材4の搬送方向最後の加熱ブロック5cより前の加熱ブロック5bまでで、クラッド材4の温度を焼結温度近くまで上昇させ、最後の加熱ブロック5cでクラッド材4の焼結を完了させるようにすれば、最後の加熱ブロック5cの長さが長大化することを避けることができる。
【0032】
又、図1に示す例の場合、クラッド材4の搬送方向最初のガス冷却ブロック6aにおいては、該ガス冷却ブロック6aの搬出側でクラッド材4の金属粉末Pmが軟化した状態となっているロウ材層がサポート装置18に接触しても傷つかない程度まで冷却できるようにすれば良いため、最初のガス冷却ブロック6aの長さが長大化することを避けることができる。
【0033】
このように、加熱炉5と冷却器6とをそれぞれ、複数の加熱ブロック5a,5b,5cと複数のガス冷却ブロック6a,6bとに分けることで、クラッド材4の搬送方向最後の加熱ブロック5cと、クラッド材4の搬送方向最初のガス冷却ブロック6aのそれぞれの長さの長大化を避けることができるし、その間でクラッド材4が宙吊り状態となる長さの長大化を避けることができて、クラッド材4の宙吊りによるたるみを抑制しつつ安定した搬送が可能となる。
【0034】
一方、前記サポート装置18は、図5及び図6に示す如く、前記耐熱金属製隔壁8(図2参照)、冷却ケーシング11(図3参照)、及び冷却ケーシング14(図4参照)に連結可能なサポートケーシング19に、クラッド材4の搬送方向と直角な水平方向へ延びるサポート軸20を軸受21を介して回転自在に配設し、該サポート軸20に、複数(図6の例では四個)のサポートローラ22を、クラッド材4の両幅端部並びに幅方向中間部を支持可能となるよう等間隔に外嵌せしめると共に、前記サポート軸20に、前記サポートローラ22を前記粉末圧着装置1(図12参照)によるクラッド材4の搬送速度と同期させて回転駆動する駆動装置23を接続し、前記軸受21の部分に、サポート軸20及びサポートローラ22を冷却する冷却機構24を設け、前記サポートケーシング19内には、ガス供給ノズル25から窒素等の不活性ガスを供給し得るようにしてある。
【0035】
前記サポートローラ22の駆動装置23は、前記サポートケーシング19の外部に取り付けたモータ26により減速機27を介して駆動される駆動プーリ28と、前記サポート軸20の端部に嵌着した従動プーリ29との間に、無端状の駆動ベルト30を掛け回して構成してある。
【0036】
前記サポート装置18の冷却機構24は、前記サポートケーシング19の外側に、サポート軸20の外周を包囲するよう軸受21と一体にウォータジャケット31を設け、該ウォータジャケット31の内部空間32に冷却水を流通させることにより、前記サポート軸20及びサポートローラ22を冷却し得るよう構成してある。
【0037】
更に、前記加熱炉5及び冷却器6内には、図1に示す如く、該加熱炉5及び冷却器6内を通して外部へ循環させるようにしたメッシュベルト等からなる無端状の搬送ベルト33を設けてあり、該搬送ベルト33を図1の矢印方向へ駆動することによって前記クラッド材4の先端を前記加熱炉5及び冷却器6内に対して通過させることができるようにしてある。尚、前記搬送ベルト33は、図5及び図6に示す如く、その幅方向へ三分割してあり、サポートローラ22間のサポート軸20の部分を覆うように配設したアーチ状の受部材34の上面に沿って移動できるようにしてある。
【0038】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0039】
前記粉末圧着装置1(図12参照)において金属粉末Pmが母材Sの表面に圧着されたクラッド材4は、先ず、その先端部が図1の矢印方向へ駆動される無端状の搬送ベルト33上に載置された状態で、加熱炉5及び冷却器6内を通過し、巻取装置(図示せず)に巻き込まれる。
【0040】
前記クラッド材4の先端が巻取装置に巻き込まれたら、前記搬送ベルト33の張力を緩めると、該搬送ベルト33は、図1、図5及び図6に示す如く、サポート装置18のアーチ状の受部材34の上面に支持された状態となって、加熱炉5の加熱ブロック5a,5b,5c内並びに冷却器6のガス冷却ブロック6a,6b内でたるむ形となる。尚、前記搬送ベルト18は、最初からたるませておき、このたるんだ搬送ベルト18でクラッド材4を搬送してサポートローラ22の上に載せるようにしても良い。
【0041】
続いて、前記加熱炉5の加熱ブロック5a,5b,5cにおける耐熱金属製隔壁8で覆われたクラッド材流通路9内へ図示していないノズルから窒素等の不活性ガスを供給した状態で、電熱ヒータ等の発熱体10による加熱を開始すると共に、冷却器6のガス冷却領域6Aのガス冷却ブロック6a,6bにおける冷却ケーシング11で覆われたクラッド材流通路12内へノズル13から窒素等の冷却用の不活性ガスを供給し、更に前記冷却器6の水冷却領域6Bの水冷却ブロック6cにおける冷却ケーシング14で覆われたクラッド材流通路15内へ水噴射ノズル16から冷却用の水をクラッド材4の上下面へ向けて噴射しつつ、ガス噴射ノズル17から窒素等の不活性ガスをクラッド材4の上下面へ向けて噴射し、前記巻取装置によりクラッド材4の巻取りを開始する。
【0042】
このとき、前記巻取装置によってクラッド材4に張力が付与されることにより、前記クラッド材4は、図1、図5及び図6に示す如く、サポート装置18のサポートローラ22によりその両幅端部並びに幅方向中間部が支持され、前記加熱炉5の加熱ブロック5a,5b,5cと冷却器6のガス冷却領域6Aのガス冷却ブロック6a,6b内部を宙吊り状態で搬送されるようになる。尚、前記サポート装置18のサポートローラ22は、駆動装置23のモータ26により、減速機27と駆動プーリ28と駆動ベルト30と従動プーリ29とサポート軸20とを介して、前記粉末圧着装置1(図12参照)によるクラッド材4の搬送速度と同期させて回転駆動される。又、前記搬送ベルト33は、仮にその駆動を停止した場合、前記加熱炉5内において一部分だけが加熱されて昇温するとまずいため、張力を緩めた状態のまま常時駆動される。
【0043】
そして、前記加熱炉5では、クラッド材4の母材Sの表面に圧着した金属粉末Pmを、該金属粉末Pmが軟化して互いに融着する温度に加熱し、又、前記冷却器6では、前記金属粉末Pmが軟化して互いに融着する温度よりも充分に低い温度に冷却する必要がある。
【0044】
ここで、図7及び図8は本発明を実施する形態の一例における解析結果を示すものであって、母材Sの材質を純銅、母材Sの幅を200.0[mm]、母材Sの厚さを0.4[mm]、輻射率εを0.20、搬送速度を12.0[m/min]、冷却器内熱伝達率αを30.0[W/m2・K]、加熱炉5入側のクラッド材4の温度を20.0[℃]、加熱ブロック5a,5b,5cの長さをそれぞれ4200[mm]、加熱ブロック5a,5b,5cの設定温度をそれぞれ800.0[℃]、ガス冷却領域6Aのガス冷却ブロック6a,6bへ供給する不活性ガス(窒素)の流量を300.0[L/min]、該不活性ガス(窒素)の入側温度を30.0[℃]、不活性ガス(窒素)の出側温度を30.0[℃]、ガス冷却ブロック6a,6bの長さをそれぞれ3000[mm]、水冷却領域6Bへ供給する水温を30.0[℃]、水冷却ブロック6cの長さを1300[mm]とした場合、加熱炉5出側のクラッド材4の温度は765.9[℃]となり、ガス冷却終了後のクラッド材4の温度は258.0[℃]となり、水冷却後のクラッド材4の温度は、水冷熱伝達率を500[W/m2・K]とすると58.6[℃](図8の実線を参照)となり、水冷熱伝達率を1000[W/m2・K]とすると33.7[℃](図8の破線を参照)となる。
【0045】
これに対し、前記水冷却領域6Bを構成する水冷却ブロック6cを設ける代わりに、ガス冷却ブロック6a,6bと同様の第三のガス冷却ブロックを設け、それ以外の条件は上述と同様とした場合、ガス冷却終了後のクラッド材4の温度は152.3[℃](図8の仮想線を参照)までしか低下せず、しかも、設備全長の長大化も避けられなくなることが確認された。
【0046】
上記図示例では水冷却ブロック6cの効果を示すため、各加熱ブロック5a,5b,5cの設定温度は同じ温度としたが、各加熱ブロック5a,5b,5cの設定温度は同一でなくても良い。
【0047】
即ち、前記加熱炉5を複数の加熱ブロック5a,5b,5cに分割し、それぞれの加熱ブロック5a,5b,5cの設定温度を個々に設定して各加熱ブロック5a,5b,5c毎に発熱体10の出力を調整し加熱温度を制御するようにしても、設備全長の長大化を避けることができる。
【0048】
例えば、母材Sの表面に金属粉末Pmが圧着されたクラッド材4を約760[℃]に加熱して焼結する場合、クラッド材4の温度と焼結温度の差が比較的大きなクラッド材4搬入側の加熱ブロック5a,5bでは、その設定温度を焼結温度よりも高い温度に設定してクラッド材4の加熱を促進させる。このようにすることで、クラッド材4を焼結させるための温度に上昇させる加熱区間を短縮できる。又、クラッド材4の温度と焼結温度の差が小さくなるクラッド材4搬出側の加熱ブロック5cでは、その設定温度を焼結するためにきめ細かく制御することで、品質のばらつきを少なくすることができる。因みに、前述の如く、クラッド材4搬入側の加熱ブロック5a,5bの設定温度を焼結温度よりも高い温度に設定してクラッド材4の加熱を促進させた場合におけるクラッド材4の温度制御曲線は、図9に示すようになる。
【0049】
このように、加熱炉5を複数の加熱ブロック5a,5b,5cに分割することで、各加熱ブロック5a,5b,5c毎に発熱体10の出力を調整し加熱温度を制御することが可能となるので、品質を損なわずに設備全長の長大化を避けることができる。
【0050】
又、前記冷却器6も複数のガス冷却ブロック6a,6bと水冷却ブロック6cとに分割することでガス冷却領域6Aの長さの長大化を避けることが可能となる。
【0051】
即ち、水冷却ブロック6cでは水冷であるがためにクラッド材4の冷却能力がガス冷却よりかなり高いので、ガス冷却領域6Aでの冷却は、クラッド材4の搬送方向最後のガス冷却ブロック6b出口でクラッド材4の温度が金属粉末Pmを母材Sにしっかり固着させる温度まで降下する程度の冷却であればよく、これによりガス冷却領域6Aの長さの長大化を避けることができる。尚、水冷却ブロック6cの搬送方向入口でのクラッド材4の温度は、変質防止温度以下、即ち該水冷却ブロック6cにおいて噴射される水によってロウ材層が損なわれないよう金属粉末Pmが母材Sにしっかり固着する約500[℃]以下となっていることが好ましい。又、ガス冷却後のクラッド材4の温度が高い場合、その後の水冷によってクラッド材4表面が変色することがあるが、該クラッド材4表面の変色が起こらないようにするには、水冷却ブロック6cの搬送方向入口でのクラッド材4の温度は、変質防止温度以下、即ち約250[℃]以下となっていることが好ましい。
【0052】
前述の図1〜図6に示す例の如く構成すると、母材Sの表面に圧着された金属粉末Pmは加熱炉5で加熱されて焼結された後、冷却器6のガス冷却領域6Aで窒素等の不活性ガスによって冷却され、続いて、水冷却領域6Bで噴射される水によって直接冷却され、この結果、金属粉末Pmの加熱・冷却が効率良く安定して行われ、設備全長の長大化を抑えて、設備費を削減することが可能となる。
【0053】
しかも、前記加熱炉5をクラッド材4の搬送方向へ複数の加熱ブロック5a,5b,5cに分割すると共に、前記冷却器6のガス冷却領域6Aをクラッド材4の搬送方向へ複数のガス冷却ブロック6a,6bに分割し、且つ前記冷却器6の水冷却領域6Bを水冷却ブロック6cにて構成しているため、加熱炉5及び冷却器6のメンテナンスを行う際には、各ブロックを必要に応じて幅方向へサイドシフトさせることにより、その使い勝手をより向上させることが可能となる。
【0054】
又、耐火ケーシング7内に耐熱金属製隔壁8で覆われたクラッド材流通路9を形成すると共に、前記耐火ケーシング7内における耐熱金属製隔壁8の外側に発熱体10を配設することにより、前記加熱炉5の加熱ブロック5a,5b,5cを構成し、該加熱ブロック5a,5b,5cをクラッド材4の搬送方向へ連結しているため、金属粉末Pmの加熱焼結をより安定化させることも可能となる。
【0055】
更に、前記クラッド材4は、前記加熱炉5の加熱ブロック5a,5b,5cと冷却器6のガス冷却領域6Aのガス冷却ブロック6a,6b内部を宙吊り状態で搬送されるため、加熱により金属粉末Pmが軟化した状態となっているロウ材層が傷付く心配はない。尚、前記クラッド材4は、前記加熱ブロック5a,5b,5cの接続部と、前記ガス冷却ブロック6a,6bの接続部と、前記ガス冷却ブロック6b及び水冷却ブロック6cの接続部に配設された前記サポート装置18のサポートローラ22によって支持されるが、該サポートローラ22は、駆動装置23のモータ26により、減速機27と駆動プーリ28と駆動ベルト30と従動プーリ29とサポート軸20とを介して、前記粉末圧着装置1(図12参照)によるクラッド材4の搬送速度と同期させて回転駆動されており、しかも、クラッド材4の重量を複数(図6の例では四個)のサポートローラ22によって分散させて支持しているため、前記クラッド材4の搬送をより安定化させることが可能となると共に、たとえ加熱により金属粉末Pmが軟化した状態となっていたとしてもロウ材層が傷付く心配はない。
【0056】
又、前記サポート装置18のサポート軸20及びサポートローラ22は、サポートケーシング19の外側にサポート軸20の外周を包囲するよう軸受21と一体に設けられた冷却機構24のウォータジャケット31の内部空間32に冷却水を流通させることによって冷却されるため、必要以上に昇温してしまうことが防止される。
【0057】
こうして、母材Sの表面に圧着した金属粉末Pmの加熱・冷却を効率良く安定して行い得ると共に、加熱により金属粉末Pmが軟化した状態となっているロウ材層が傷付くことを防止しつつ、加熱炉5や冷却器6内でクラッド材4を安定して搬送し得、更に、設備全長の長大化を抑えることができ、設備費削減を図り得る。
【0058】
図10及び図11は前記サポート装置18の変形例を示すものであって、該変形例としてのサポート装置18は、図10及び図11に示す如く、前記耐熱金属製隔壁8(図2参照)、冷却ケーシング11(図3参照)、及び冷却ケーシング14(図4参照)に連結可能なサポートケーシング19内に、クラッド材4の両幅端部を支持可能なサポートローラ22を、ローラ位置調節機構35の作動により互いに近接・離反可能となるよう配設し、幅寸法の異なるクラッド材4に対応できるようにしたものである。
【0059】
前記サポートローラ22は、截頭円錐形状のローラで、前記ローラ位置調節機構35を構成するサポート軸20のサポートケーシング19内に挿入された先端部にその半径方向へ張り出すサポートアーム36を介して回転自在に取り付けてある。
【0060】
又、前記ローラ位置調節機構35は、前記サポートケーシング19の幅方向両側から、クラッド材4の搬送方向と直角な水平方向へ延びる前記サポート軸20を軸受21を介して回転自在且つ軸線方向へスライド自在に挿入し、前記サポートケーシング19の外部下方へ張り出す固定ブラケット37に、前記サポート軸20と平行に延びるガイドシャフト38を固定配置すると共に、前記サポート軸20と平行に延び且つ両端部に互いに反対方向の雄ネジ部39aが刻設されたスクリューシャフト39を回転自在に配置し、該スクリューシャフト39の両端部に雄ネジ部39aと螺合するナット部材40を嵌装し、前記ガイドシャフト38の両端部にガイドブロック41をスライド自在に嵌装し、前記サポート軸20の基端部に該サポート軸20を回転自在に支持するための支持ブロック42を嵌装し、前記ナット部材40とガイドブロック41と支持ブロック42とをベースブラケット43によって連結し、前記サポート軸20の基端に、前記サポートローラ22のポジションをクラッド材4のサポートポジションと待機ポジションとの間で回動させて切り換えるための切換アーム44を取り付け、該切換アーム44を蝶ボルト45により前記ベースブラケット43に対してサポートポジションと待機ポジションのいずれかのポジションに固定可能とし、前記スクリューシャフト39の一端にハンドル46を取り付け、該ハンドル46を所定方向へ回してスクリューシャフト39を回転させることにより、前記ナット部材40と一体のベースブラケット43を移動させて前記サポートローラ22を互いに近接させる方向へスライドさせる一方、前記ハンドル46を反対方向へ回してスクリューシャフト39を回転させることにより、前記ナット部材40と一体のベースブラケット43を移動させて前記サポートローラ22を互いに離反させる方向へスライドさせ得るようにしてある。
【0061】
尚、図10及び図11に示すサポート装置18においても、前記サポートケーシング19内には、ガス供給ノズル25から窒素等の不活性ガスを供給し得るようにしてある。
【0062】
図10及び図11に示すようにサポート装置18を構成した場合、前記クラッド材4の両幅端部のみが截頭円錐形状のサポートローラ22によって支持され、前記クラッド材4のサポートローラ22に対する接触箇所が最小限に抑えられるため、特に図5及び図6に示すような駆動装置23を設けクラッド材4の搬送速度と同期させてサポートローラ22を回転駆動しなくても、ロウ材層が傷付く心配はなく、加熱炉5や冷却器6内でクラッド材4を安定して搬送し得る。
【0063】
尚、本発明のクラッド材製造設備の加熱冷却装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概要側断面図である。
【図2】本発明を実施する形態の一例における加熱炉の加熱ブロックを示す正断面図である。
【図3】本発明を実施する形態の一例における冷却器のガス冷却領域のガス冷却ブロックを示す正断面図である。
【図4】本発明を実施する形態の一例における冷却器の水冷却領域の水冷却ブロックを示す正断面図であって、(a)は水冷却ブロックの水噴射ノズルが配設された部分を示す図、(b)は水冷却ブロックのガス噴射ノズルが配設された部分を示す図である。
【図5】本発明を実施する形態の一例におけるサポート装置を示す側断面図である。
【図6】本発明を実施する形態の一例におけるサポート装置を示す正断面図であって、図5のVI−VI矢視相当図である。
【図7】本発明を実施する形態の一例における解析結果を示す図表である。
【図8】本発明を実施する形態の一例におけるクラッド材の温度履歴を示すグラフである。
【図9】本発明を実施する形態の一例において、クラッド材搬入側の加熱ブロックの設定温度を焼結温度よりも高い温度に設定してクラッド材の加熱を促進させた場合におけるクラッド材の温度制御曲線である。
【図10】本発明を実施する形態の一例におけるサポート装置の変形例を示す側断面図である。
【図11】本発明を実施する形態の一例におけるサポート装置の変形例を示す正断面図であって、図10のXI−XI矢視相当図である。
【図12】クラッド材製造設備を構成する粉末圧着装置の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 粉末圧着装置
4 クラッド材
5 加熱炉
5a 加熱ブロック
5b 加熱ブロック
5c 加熱ブロック
6 冷却器
6A ガス冷却領域
6B 水冷却領域
6a ガス冷却ブロック(冷却ブロック)
6b ガス冷却ブロック(冷却ブロック)
6c 水冷却ブロック(冷却ブロック)
18 サポート装置
19 サポートケーシング
20 サポート軸
22 サポートローラ
23 駆動装置
24 冷却機構
26 モータ
27 減速機
28 駆動プーリ
29 従動プーリ
30 駆動ベルト
31 ウォータジャケット
32 内部空間
33 搬送ベルト
G ロールギャップ
Pm 金属粉末
S 母材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材の表面に粉末圧着装置で金属粉末を圧着し、該金属粉末を加熱炉で加熱して焼結させた後、冷却器で冷却することにより、クラッド材を製造するようにしたクラッド材製造設備の加熱冷却装置において、
前記加熱炉をクラッド材の搬送方向へ複数の加熱ブロックに分割すると共に、前記冷却器をクラッド材の搬送方向へ複数の冷却ブロックに分割し、前記加熱ブロックの接続部と、前記冷却ブロックの接続部とに、少なくともクラッド材の両幅端部を支持可能なサポートローラを有するサポート装置を配設し、該サポート装置間でクラッド材を宙吊り状態で搬送し得るよう構成したことを特徴とするクラッド材製造設備の加熱冷却装置。
【請求項2】
前記加熱ブロックと冷却ブロックとの接続部に前記サポート装置を配設した請求項1記載のクラッド材製造設備の加熱冷却装置。
【請求項3】
前記サポート装置のサポートローラを前記粉末圧着装置によるクラッド材の搬送速度と同期させて回転駆動する駆動装置を備えた請求項1又は2記載のクラッド材製造設備の加熱冷却装置。
【請求項4】
前記クラッド材の幅方向中間部を支持するサポートローラを配設した請求項3記載のクラッド材製造設備の加熱冷却装置。
【請求項5】
前記サポート装置を冷却する冷却機構を備えた請求項4記載のクラッド材製造設備の加熱冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−150647(P2008−150647A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337485(P2006−337485)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】