説明

クランクプレスの回転位置検出装置

【課題】クランクプレスのクランク軸の回転位置を高い精度と信頼性で検出可能とし、その回転位置の検出に用いるアブソリュート型回転位置検出器にノイズが印加されても、回転位置検出器の故障を的確に判定できるようにすることである。
【解決手段】クランク軸3の2種類の回転位置検出器の一方を、レゾルバ11aと位置変換器11bから成るアブソリュート型回転位置検出器、他方をロータリエンコーダ12aとパルスカウンタ12bから成るインクリメンタル型回転位置検出器として、クランクプレスのクランク軸3の回転位置を高い精度と信頼性で検出可能にするとともに、演算器13で比較演算される両者の検出値の差が複数回連続して所定の閾値を越えたときに、いずれかの回転位置検出器が故障であると判定することにより、アブソリュート型回転位置検出器にノイズが印加されても、回転位置検出器の故障を的確に判定できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクプレスのクランク軸の回転位置を検出するクランクプレスの回転位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クランクプレスはクランク軸を回転させてラムを昇降させ、高速でプレス動作を行う。タンデムプレスラインやトランスファプレス等に適用され、ワークの搬送等のハンドリングが自動で行なわれるクランクプレスでは、高速で行なわれるプレス動作にワークのハンドリングタイミングを合わせるために、クランク軸の回転位置を精度よく検出する必要がある。このため、高精度で信頼性の高い回転位置検出装置が求められる。
【0003】
一方、各種機械の回転部の回転位置を高い精度と信頼性で検出する回転位置検出装置として、回転部に2つの回転位置検出器を取り付けて、このうちの一方を絶対回転位置信号を出力するアブソリュート型ロータリポテンショメータ、他方を相対回転量を検出するインクリメンタル型ロータリエンコーダとして、両者から出力される検出値を比較演算し、比較演算された両検出値の差が所定の閾値を越えたときにいずれかの回転位置検出器が故障であると判定する故障判定回路を設けたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、回転位置を検出するものではないが、プレス機械のワーク搬送装置を駆動するリニアモータの位置検出を行う複数個のエンコーダ(位置検出器)を設け、そのうちの少なくとも1つをアブソリュート型エンコーダ、他をインクリメンタル型エンコーダとして、これらの検出値の偏差を演算し、この偏差が所定の閾値を越えたときにいずれかのエンコーダが異常であると判定する異常判定手段を設けたものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
前記絶対回転位置を検出するアブソリュート型回転位置検出器には、アナログ信号を出力するロータリポテンショメータや、デジタル信号を直接、またはアナログ信号をデジタル信号に変換して出力する各種のロータリエンコーダがある。このアブソリュート型回転位置検出器の1つとして、レゾルバと呼ばれる検出部で、1次巻線に交流電圧を加えて2次巻線から位相のずれた交流信号(アナログ信号)を得、この検出部で得られた交流信号の位相のずれを絶対回転位置(デジタル信号)に変換する電磁誘導式のものが知られている(例えば、特許文献3参照)。この電磁誘導式のアブソリュート型回転位置検出器は、検出部の構造が簡単で無接触式であるので、クランクプレスのクランク軸のように振動が大きい環境で使用しても、ハード的に高い信頼性を得ることができる。
【0006】
一方、相対回転量を検出するインクリメンタル型回転位置検出器には、回転部に取り付けた被検出部材による光切断等のパルスをカウントするロータリエンコーダが多く用いられている。このインクリメンタル型のロータリエンコーダは、基準位置からの相対回転量を検出することにより回転位置を精度よく検出できるが、被検出部材が回転部に取り付けられるので、振動が大きい環境では、ハード的にあまり高い信頼性を得ることができない。
【0007】
【特許文献1】特開平5−157584号公報
【特許文献2】特開2004−255418号公報
【特許文献3】特開昭57−70406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
クランクプレスのクランク軸の回転位置を高い精度と信頼性で検出するためには、特許文献1、2に記載されたもののように、(回転)位置を検出する2種類の(回転)位置検出器を設けて、比較演算される両者の検出値の差が所定の閾値を越えたときにいずれかの位置検出器が故障であると判定する故障判定回路を設けるようにし、2種類の回転位置検出器の一方を、レゾルバと呼ばれる検出部で、1次巻線に交流電圧を加えて2次巻線から位相のずれた交流信号を得、この検出部で得られた交流信号の位相のずれを絶対回転位置に変換する電磁誘導式のアブソリュート型回転位置検出器、他方を相対回転量を検出するインクリメンタル型回転位置検出器とすることが考えられる。
【0009】
しかしながら、前記電磁誘導式のアブソリュート型回転位置検出器は、使用環境に対するハード的な信頼性は高いが、検出部からの交流信号にノイズが印加されると、微少時間毎に変換される絶対回転位置が一時的に異常値を示すことがあり、いずれの回転位置検出器にも故障が生じていないのに、故障と判定する恐れがある。
【0010】
そこで、本発明の課題は、クランクプレスのクランク軸の回転位置を高い精度と信頼性で検出可能とし、その回転位置の検出に用いるアブソリュート型回転位置検出器にノイズが印加されても、回転位置検出器の故障を的確に判定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明は、クランクプレスのクランク軸の回転位置を検出する2種類の回転位置検出器を設け、これらの回転位置検出器の検出値を比較演算することにより、いずれか一方の回転位置検出器が故障であると判定する故障判定手段を備えたクランクプレスの回転位置検出装置において、前記2種類の回転位置検出器の一方を、1次巻線に交流電圧を加えて2次巻線から位相のずれた交流信号を得、この交流信号の位相のずれを絶対回転位置に変換する電磁誘導式のアブソリュート型回転位置検出器とし、他方を相対回転量を検出するインクリメンタル型回転位置検出器として、微少時間毎に出力される前記アブソリュート型とインクリメンタル型との2種類の回転位置検出器の検出値を比較演算し、比較演算された両検出値の差が複数回連続して所定の閾値を越えたときに、前記2種類の回転位置検出器のいずれかが故障であると判定する構成を採用した。
【0012】
すなわち、クランク軸の回転位置を検出する2種類の回転位置検出器の一方を、ハード的な信頼性の高い電磁誘導式のアブソリュート型回転位置検出器、他方を高精度のインクリメンタル型回転位置検出器として、クランクプレスのクランク軸の回転位置を高い精度と信頼性で検出可能にするとともに、比較演算される両者の検出値の差が複数回連続して所定の閾値を越えたときに、2種類の回転位置検出器のいずれかが故障であると判定することにより、アブソリュート型回転位置検出器にノイズが印加されても、回転位置検出器の故障を的確に判定できるようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクランクプレスの回転位置検出装置は、クランク軸の回転位置を検出する2種類の回転位置検出器の一方を、ハード的な信頼性の高い電磁誘導式のアブソリュート型回転位置検出器とし、他方を高精度のインクリメンタル型回転位置検出器として、比較演算される両者の検出値の差が複数回連続して所定の閾値を越えたときに、2種類の回転位置検出器のいずれかが故障であると判定するようにしたので、クランクプレスのクランク軸の回転位置を高い精度と信頼性で検出可能とし、アブソリュート型回転位置検出器にノイズが印加されても、回転位置検出器の故障を的確に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1(a)、(b)は、本発明に係る回転位置検出装置を取り付けたクランクプレスを示す。このクランクプレスは、フレーム1にプーリ2でベルト駆動されるクランク軸3が横架されて、クランク軸3の偏心軸部3aにコンロッド4が外嵌され、コンロッド4にピン結合されたラム5が昇降するようになっており、ラム5とフレーム1のベースに取り付けられた上下の金型6a、6b間でワークがプレスされる。図示は省略するが、ワークは自動ハンドリング装置によって、上下の金型6a、6b間に搬入、搬出されるようになっている。
【0015】
前記クランク軸3の軸端部にはギヤボックス7が設けられ、このギヤボックス7に、クランク軸3の回転位置を検出する電磁誘導式のアブソリュート型回転位置検出器のレゾルバ11aと、インクリメンタル型回転位置検出器のロータリエンコーダ12aとが取り付けられている。
【0016】
前記レゾルバ11aは、図2に示すように、1次巻線に交流電圧Aを加えて2次巻線から位相のずれた交流信号Bを得るものであり、後述する位置変換器11bで位相のずれαを回転位置に変換することにより、絶対回転位置を検出することができる。
【0017】
図3に示すように、前記レゾルバ11aの出力は位置変換器11bを介して演算器13に入力され、ロータリエンコーダ12aの出力はパルスカウンタ12bを介して演算器13に入力されている。演算器13は、微少時間毎に出力されるレゾルバ11aと位置変換器11bで構成されるアブソリュート型回転位置検出器の検出値と、ロータリエンコーダ12aとパルスカウンタ12bで構成されるインクリメンタル型回転位置検出器の検出値とを比較演算し、比較演算された両検出値の差が複数回連続して所定の閾値を越えたときに、その故障判定回路13aから、いずれかの回転位置検出器が故障と判定する故障信号を出力する。
【0018】
なお、前記位置変換器11b、パルスカウンタ12bおよび演算器13は、クランクプレスの制御盤14に組み込まれており、いずれの回転位置検出器も正常の場合は、検出されたクランク軸3の回転位置に基づいて、自動ハンドリング装置を作動するON・OFF信号を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】aは本発明に係る回転位置検出装置を取り付けたクランクプレスを示す縦断面図、bはaのIb−Ib線に沿った断面図
【図2】図1のレゾルバの出力を説明するグラフ
【図3】本発明に係る回転位置検出装置のブロック図
【符号の説明】
【0020】
1 フレーム
2 プーリ
3 クランク軸
3a 偏心軸部
4 コンロッド
5 ラム
6a、6b 金型
7 ギヤボックス
11a レゾルバ
11b 位置変換器
12a ロータリエンコーダ
12b パルスカウンタ
13 演算器
13a 故障判定回路
14 制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクプレスのクランク軸の回転位置を検出する2種類の回転位置検出器を設け、これらの回転位置検出器の検出値を比較演算することにより、いずれか一方の回転位置検出器が故障であると判定する故障判定手段を備えたクランクプレスの回転位置検出装置において、前記2種類の回転位置検出器の一方を、1次巻線に交流電圧を加えて2次巻線から位相のずれた交流信号を得、この交流信号の位相のずれを絶対回転位置に変換する電磁誘導式のアブソリュート型回転位置検出器とし、他方を相対回転量を検出するインクリメンタル型回転位置検出器として、微少時間毎に出力される前記アブソリュート型とインクリメンタル型との2種類の回転位置検出器の検出値を比較演算し、比較演算された両検出値の差が複数回連続して所定の閾値を越えたときに、前記2種類の回転位置検出器のいずれかが故障であると判定するようにしたことを特徴とするクランクプレスの回転位置検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−85925(P2007−85925A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275955(P2005−275955)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】