説明

クリップ、及び、その製造方法

【課題】立体的な形状でもデザインパターンの制約を受けないで装飾効果を有しかつ、耐食性(耐久性)を有するクリップを提供する。
【解決手段】基材に金属めっきを多層形成すると共に、その表面めっき層以外のめっき層にレーザー加工を施したクリップA。具体的には、下地金属めっきを形成した後、レーザー加工工程で下地めっきの表面に微細凹凸を有する装飾パターンを形成し、その後下地めっき表面を活性化し、後工程のめっきを行うことにより、耐食性を有しかつ装飾効果の高いクリップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美麗で装飾的な金属めっきを形成したクリップ、およびクリップに均一で美麗で装飾的なかつ耐久性の高い金属めっきを形成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
筆記具のクリップは、基材材料として主に炭素工具鋼やステンレス、リン青銅を用いている。これら材質の板状基材をプレス成形で曲げたり、カシメたりして所定の形状に成形し、その後、これらの金属は単独では錆びてしまうことから金属めっきを行い、耐食性の付与および装飾を行っていた。
【0003】
さらに、筆記具のクリップは、衣服のポケットに差してかがんだときに自重でポケットから滑り落ちないような適度な弾力が必要であり、弾力が弱すぎても強すぎても使い勝手が悪いものである。また、手帳等に差し込むときには、手帳の厚みに対応できるように適度な開きの変位が必要である。例えば、クリップが軸筒から3ミリ以上開いたときにクリップが折れたり、弾力が著しく小さくなってしまったりするなどの不具合があってはならないものである。
【0004】
一方、商品の高付加価値化を目的に金やパラジウムなどの貴金属めっきを形成する場合、鉄素材などは、素材の耐食性が悪いことからめっき層を厚くしたり、多層構造にしたりすることによって耐食性を付与していた。
【0005】
また、素材にブラスト加工を行い、ベロア調の表面形態にする場合、光沢な表面にくらべ微細な凹凸を有する面が、耐食性が小さくなることが知られている。これは基材の表面に結晶学的な構造欠陥ができ、被めっき金属の析出が阻害され、結果的に均一なめっき層が形成されないため(ピンホール等の存在)と考えられている。
特に、耐食性の小さい鉄合金などは、物理的な加工(彫刻,刻印,ブラスト等)が工程に入った場合、耐食性を持たせるためめっきを厚くするだけではなく、様々な防食対策が必要であった。また、前記ブラスト加工にあっては、部分的にパターンを形成しようとした場合、加工部以外の範囲にマスキング処理を施す必要があった。そのため他の物理的な加工方法よりもコストがアップする傾向があった。
【0006】
前記のように、防食対策で最も効果的で実施の容易な手段としてめっき厚さを大きくする方法があるが、めっきを厚くすることによりせっかく施した物理加工面がめっき皮膜で埋まってしまい、所望の装飾効果が得られなくなってしまうという問題があった。
【0007】
また、クリップ部材としては、めっきが厚くなることにより曲げ弾性が得られる部分にもめっきが厚く付いてしまうことから、クリップが硬くなり結局弾力が大きすぎて持ち上げにくいという問題もあった。
【0008】
さらに、めっきを厚くしすぎる弊害として、クリップの弾性変形部分において、繰り返しの持ち上げにより弾性発現部分の基材とめっき皮膜に応力が集中し、一度めっき面にクラックが入ると簡単に折れやすくなってしまうという問題もあった。
【0009】
クリップに装飾を行う方法は、別部材となる装飾部材を取り付ける方法(特許文献1,2)とクリップ基材にあらかじめ刻印(特許文献3)を形成し、その後、めっき処理などを行う方法があった。
しかしながら、別部材を取り付ける方法(特許文献1,2)は、取り付ける部材が後で取れてしまったり、出っ張りがあることにより衣服に引っかかったりするという不具合があった。また部材を取り付けるという工程が別途必要になり、コストアップにもつながっていた。
一方、クリップ基材にあらかじめ刻印を施す方法(特許文献3)は、最も簡便な方法であるが、刻印の深さによっては、めっき後に刻印が見えにくくなってしまうという問題があった。これは、めっきが刻印の凹部にも付着するため凹部がめっき皮膜により埋められてしまうためである。これを防止するためにめっき厚さを薄くするという方法があるが、特に耐食性の小さい鉄基材を用いた場合は、めっきを薄くしてしまうと、耐食性(耐久性)に問題があり、後に赤さびが発生してしまうという問題があった。これはめっき皮膜に存在するピンホールにより基材が腐食して赤さびがピンホールから表面に出てくる現象である。一般的にめっきを厚くするとピンホールが少なくなり、耐食性が向上すると考えられている。
また、クリップ基材に凹部を形成する刻印は、作製の性質上文字の大きさや細さあるいはパターンの複雑さに制約あり、形成できる装飾パターンが限られてしまうという問題があった。
更に刻印は、クリップ基材が平らな状態でないと均一に深く凹部を形成することが出来ない。作製工程は、平らな状態で刻印を行い、その後曲げ加工やカシメ加工を行っている。よって、刻印は、曲げやカシメ部分に形成することが出来ず、限られた部分にのみしか形成出来なかった。刻印による装飾部分を大きくするには、クリップの平らな面積を大きくするしか方法がなく、よってクリップ形状デザイン自由度が小さくなるという問題があった。尚、刻印にあっては、めっき後に加工を行う方法も考えられるが、刻印は圧縮によって基材を変形させてパターン形成するため、その圧縮作用によってめっき層が割れてしまう危険性があった。めっき層が割れると耐食性が著しく損なわれるだけでなく、基材の破断の原因にもなり好ましくないものである。
【特許文献1】特開平10−278483号公報。(飾り部材を取り付ける,寿)
【特許文献2】特開2002−225492号公報(樹脂よりなる装飾体をつける,パイロット)
【特許文献3】特開2001−96980号公報 (刻印,小さなドットでパターン形成,ぺんてる)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、めっきを形成した基材の腐食や、金属めっきのはく離を防止し、3次元形状の基材に対して、複雑なパターンでも装飾が可能で長年にわたり装飾効果が保持できるクリップを提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材に金属めっきを多層形成すると共に、その表面めっき層以外のめっき層にレーザー加工を施したことを特徴とするクリップを第1の要旨とし、基材に金属めっきを形成する方法において、多層めっき層を形成する複数のめっき工程間にレーザー加工工程を入れることを特徴とするクリップの製造方法を第2の要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、既に成形されたクリップのめっき工程の途中で部品を乾燥し、そのめっき工程の途中にレーザー加工工程を入れることにより、基材形状によらず複雑なパターンや細かいパターンが形成できることを見いだした。また、レーザー加工の後は、レーザーの熱と圧力により微細な凹凸が形成されていることを確認し、この微細な凹凸と周りのめっき面の表面状態の違いにより、形成されたパターンがより鮮明になることを見いだし、本発明を完成させたものである。
また、レーザー加工は、ある程度の焦点深度を持つことから、ある程度のアール形状、曲げ形状面でも加工が可能であり、更に、クリップ基材を自由に回転させることにより、最大限の装飾面を形成出来るという利点も有する。よって、より高い装飾性を有しかつ耐久性の高いクリップを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、基材上に銅あるいはニッケルよりなる下地めっき層を形成し、一旦、めっき処理を中断し、レーザー加工工程を介在させることにより、基材の形状によらず装飾面の大きさや装飾のパターンの制約を受けないクリップを得ることができた。そして、長期にわたり装飾効果を保持するというクリップを、少ないコストで実現した。
【0014】
図1は、本発明の1実施例の断面図であって、参照符号1は基材、2は下地めっき層、3はレーザー加工層、4はニッケルめっき層、5は装飾めっき層である。
【0015】
基材1は、鉄および鉄合金、銅および銅合金からなる。具体的には、加工のし易さやめっきのし易さ、材料の単価などから鉄の場合は、炭素工具鋼、バネ鋼など、銅の場合は、リン青銅などである。
また、基材1は、切削やプレス加工、射出成形などを用いて所定の形状に作製・加工される。この作製後、加工のバリを取ったり、表面の光沢や荒さを調整するため、バレル研磨やバフ研磨、ブラスト処理などが行われる。次いで、溶剤などを用いて脱脂処理を行い、めっき工程へ供される。
【0016】
下地めっき層2は、本例においては銅あるいはニッケルであるが、各々それぞれの合金であっても何ら差し支えない。また、下地めっき層2は、電気めっき、或いは、無電解めっきにより基材1の表面に形成される。その下地めっき層2の厚さは、10ミクロンから50ミクロンが好ましい。また、銅めっき後にニッケルめっきを形成し、2層重なった下地めっき層としても何ら差し支えない。下地めっき層の厚さが10ミクロン未満の場合、レーザー加工条件によっては、下地めっき層が取れてしまい基材が露出し、耐食性が悪くなるという問題がある。50ミクロンを超えるとクリップの弾性反発部分が変形しにくくなり硬いクリップになり使い勝手の悪いものになるという問題がある。更にめっき処理のコストアップにもなってしまうという問題があった。
【0017】
レーザー加工層3は、市販のYAGあるいは炭酸ガスレーザーマーキング装置を用いて形成する。レーザー加工条件は、希望する凹凸の深さや基材形状等により適宜選択されるものであり限定されるものではない。
レーザー加工は、レーザー光線をめっき表面にドット状に当てて網点を形成したり、線状に走査して文字を形成したり、線状の走査を複数回行うことによりパターンを形成し行う。
レーザー加工面は、熱により最表面の金属が一時的に溶融し、そして凝固することから微細な凹凸が形成される。この微細な凹凸と加工部以外の周りの表面状態とのコントラストによりパターンが鮮明に確認することが出来る。加工部の断面をよく観察すると、レーザー光線の軌跡に沿って、溶融し凹部となった部分の両側のめっき金属が表面より盛り上がっていることが確認できた。すなわち、レーザ加工部の凹凸断面は、めっき表面を中心にサインカーブを描くように形成されていた。よってレーザー加工部の凹凸の高低差は、山の頂点と谷の底の距離を云うものである。
レーザー加工の凹凸の高低差は、特に限定されるものではないが0.5〜20ミクロンが好ましい。これは、高低差が0.5ミクロン未満だと微細な凹凸が小さすぎて装飾パターンが認識しづらいこと、また20ミクロンを超えると下地めっき層2が取れてしまい、耐食性が悪くなったり、加工時間が長くなりコストアップになるからである。
【0018】
ニッケルめっき層4は、上記のレーザー加工工程を経た後、電気めっきにより形成される。下地めっき層2の表面形態をそのまま生かしたい場合は、無光沢または半光沢のニッケルめっきを形成する。金属光沢感が必要な場合は、光沢ニッケルめっきを形成する。ニッケルめっき層4の厚さは、3ミクロン以上が好ましい。
またニッケルめっき層4は、単独光沢のめっきでも何ら差し支えないが、無光沢、半光沢、光沢のめっきを3層形成しても良いし、3つの内2つを選択して形成しても良い。但し、耐食性の観点から、めっきを形成する順序としては、無光沢、半光沢、光沢の順であり、これを逆転させてはならない。
ニッケルめっき層4は、レーザー加工工程を経た後行うことから、加工表面の金属酸化物や金属スラッジを除去するため活性化が必要である。アルカリによる脱脂、酸活性の後ストライク銅あるいはストライクニッケルめっきを行った後、前記のニッケルめっき層を形成するのが好ましい。
【0019】
前記装飾めっき層5は、金やパラジウム、プラチナ(白金)等の貴金属めっき、及び、クロム、スズ−ニッケル合金等、現在装飾で用いられているめっきを形成すれば良い。特に貴金属めっきを形成する場合は、貴金属めっきを行った後に電解クロメート処理を行うのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、筆記具の軸はもちろん装飾品などのクリップ部品に使用できる。
【0021】
(実施例1)
炭素工具鋼の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ1ミリサイズで断面形状が五角形で正面から見ると真ん中に稜線がある剣型のクリップを作製した。加工のバリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、銅めっきを10ミクロン、次にニッケルめっきを15ミクロン形成した。水洗・乾燥の後、前記ニッケルめっき層の表面を線状に複数回レーザー光線を走査し、稜線を挟んで両側の斜面にパターン状にレーザー加工を行った。このときの凹凸の高低差は10ミクロンであった。その後、公知の方法でめっき前処理・活性化を行い、ストライクニッケルめっきを形成し、半光沢ニッケルめっき層を5ミクロン形成後、パラジウムめっき層を1ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0022】
(実施例2)
リン青銅の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ1ミリサイズで断面形状がかまぼこ型のクリップを作製した。加工のバリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、ニッケルめっきを10ミクロン形成した。水洗・乾燥の後、前記ニッケルめっき層の表面を線状に複数回レーザー光線を走査し、かまぼこのアール形状部のアール全面にパターン状にレーザー加工を行った。このときの凹凸の高低差は5ミクロンであった。その後、公知の方法でめっき前処理・活性化を行い、ストライクニッケルめっきを形成し、光沢ニッケルめっき層を5ミクロン形成後、金めっき層を1ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0023】
(実施例3)
炭素工具鋼の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ1ミリサイズで断面形状が五角形で正面から見ると真ん中に稜線がある剣型のクリップを作製した。加工のバリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、銅めっきを10ミクロン、次にニッケルめっきを20ミクロン形成した。水洗・乾燥の後、前記ニッケルめっき層の表面を線状に複数回レーザー光線を走査し、稜線を挟んで両側の斜面にパターン状にレーザー加工を行った。このときの凹凸の高低差は20ミクロンであった。その後、公知の方法でめっき前処理・活性化を行い、ストライクニッケルめっきを形成し、無光沢、半光沢の純にそれぞれニッケルめっき層を5ミクロン形成後、プラチナめっき層を0.5ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0024】
(実施例4)
リン青銅の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ1ミリサイズで断面形状がかまぼこ型のクリップを作製した。加工のバリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、ニッケルめっきを50ミクロン形成した。水洗・乾燥の後、前記ニッケルめっき層の表面を線状に複数回レーザー光線を走査し、かまぼこのアール形状部のアール全面にパターン状にレーザー加工を行った。このときの凹凸の高低差は0.5ミクロンであった。その後、公知の方法でめっき前処理・活性化を行い、ストライクニッケルめっきを形成し、無光沢ニッケルめっき層を3ミクロン形成後、パラジウムめっき層を1ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0025】
(実施例5)
炭素工具鋼の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ1ミリサイズで断面形状が五角形で正面から見ると真ん中に稜線がある剣型のクリップを作製した。加工のバリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、銅めっきを10ミクロン、次にニッケルめっきを40ミクロン形成した。水洗・乾燥の後、前記ニッケルめっき層の表面を線状に複数回レーザー光線を走査し、稜線を挟んで両側の斜面にパターン状にレーザー加工を行った。このときの凹凸の高低差は20ミクロンであった。その後、公知の方法でめっき前処理・活性化を行い、ストライクニッケルめっきを形成し、無光沢、半光沢、光沢の純にそれぞれニッケルめっき層を3ミクロン形成後、パラジウムめっき層を1ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0026】
(実施例6)
炭素工具鋼の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ1ミリサイズで断面形状が五角形で正面から見ると真ん中に稜線がある剣型のクリップを作製した。加工のバリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、銅めっきを5ミクロン形成した。水洗・乾燥の後、前記銅めっき層の表面を線状に複数回レーザー光線を走査し、稜線を挟んで両側の斜面にパターン状にレーザー加工を行った。このときの凹凸の高低差は5ミクロンであった。その後、公知の方法でめっき前処理・活性化を行い、ストライクニッケルめっきを形成し、半光沢ニッケルめっき層を3ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0027】
(実施例7)
リン青銅の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ1ミリサイズで断面形状がかまぼこ型のクリップを作製した。加工のバリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、ニッケルめっきを60ミクロン形成した。水洗・乾燥の後、前記ニッケルめっき層の表面を線状に複数回レーザー光線を走査し、かまぼこのアール形状部のアール全面にパターン状にレーザー加工を行った。このときの凹凸の高低差は0.5ミクロンであった。その後、公知の方法でめっき前処理・活性化を行い、ストライクニッケルめっきを形成し、パラジウムめっき層を1ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0028】
(実施例8)
炭素工具鋼の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ1ミリサイズで断面形状が五角形で正面から見ると真ん中に稜線がある剣型のクリップを作製した。加工のバリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、銅めっきを20ミクロン、次にニッケルめっきを50ミクロン形成した。水洗・乾燥の後、前記銅めっき層の表面を線状に複数回レーザー光線を走査し、稜線を挟んで両側の斜面にパターン状にレーザー加工を行った。このときの凹凸の高低差は2ミクロンであった。その後、公知の方法でめっき前処理・活性化を行い、ストライクニッケルめっきを形成し、半光沢ニッケルめっき層を1ミクロン形成後、パラジウムめっき層を1ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0029】
(比較例1)
炭素工具鋼の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ0.8ミリサイズの板状のクリップを作製した。生地の平板の状態で刻印を行い、刻印の深さは0.5ミリであった。その後曲げ加工などのプレス成形を行い、クリップ形状とした。バリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、銅めっきを10ミクロン、次に光沢ニッケルめっきを15ミクロン、最後にパラジウムめっき層を1ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0030】
(比較例2)
炭素工具鋼の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ0.8ミリサイズの板状のクリップを作製した。生地の平板の状態で刻印を行い、刻印の深さは0.5ミリであった。その後曲げ加工などのプレス成形を行い、クリップ形状とした。バリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、銅めっきを5ミクロン、次に光沢ニッケルめっきを3ミクロン、最後にパラジウムめっき層を1ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0031】
(比較例3)
炭素工具鋼の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ0.8ミリサイズの板状のクリップを作製した。生地の平板の状態で刻印を行い、刻印の深さは0.5ミリであった。その後曲げ加工などのプレス成形を行い、クリップ形状とした。バリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、銅めっきを20ミクロン、次に光沢ニッケルめっきを100ミクロン、最後にパラジウムめっき層を1ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0032】
(比較例4)
リン青銅の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ0.8ミリサイズの板状のクリップを作製した。生地の平板の状態で刻印を行い、刻印の深さは0.5ミリであった。その後曲げ加工などのプレス成形を行い、クリップ形状とした。バリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、光沢ニッケルめっきを80ミクロン、最後にパラジウムめっき層を1ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0033】
(比較例5)
リン青銅の板をプレス加工し、長さ40ミリ、幅3ミリ、厚さ0.8ミリサイズの板状のクリップを作製した。生地の平板の状態で刻印を行い、刻印の深さは0.3ミクロンであった。その後曲げ加工などのプレス成形を行い、クリップ形状とした。バリ取りと表面の研磨のためバレル研磨を行い、めっきに供した。公知のめっき前処理を行った後、光沢ニッケルめっきを10ミクロン、最後にパラジウムめっき層を1ミクロン形成した。次に、電解クロメート処理を行い、純水で洗浄後乾燥した。
【0034】
(クリップの評価結果)
パターンの鮮明さは、目視で観察しパターンが良く認識できるものを良好、パターンが不鮮明なものを不鮮明と表現した。
クリップ弾力は、600グラム±100グラムを最適値とし、これより小さいものを柔らかい、大きいものを硬いと表現した。柔らかいものであると、クリップの挟持物に対する挟持力が弱く、直ぐに離脱してしまい、硬いものであると、挟持させる際に、クリップを軸筒から離脱させることが困難となる。
めっきクラックは、クリップを軸筒より3ミリの高さまで持ち上げ、その後外観をルーペで観察し、クラックの発生の有無を確認した。
耐食性は、塩水噴霧試験(JISZ2371(2000))を用いて評価した。
評価方法は、24時間ごとに腐食の発生状況を目視で確認した。最長で96時間まで実施した。その結果を表1に示す。
【0035】
【表1】


※1 ただしクリップの変位耐久試験10,000回でクリップが折れてしまった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のクリップの正面図。
【図2】図1の斜視図。
【図3】図2の要部断面拡大図。
【図4】本発明を示す断面図(模式図)。
【符号の説明】
【0037】
A クリップ
1 金属基材
2 下地めっき層(レーザー加工層)
3 レーザー領域
4 ニッケルめっき層
5 装飾めっき層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に金属めっきを多層形成すると共に、その表面めっき層以外のめっき層にレーザー加工を施したことを特徴とするクリップ。
【請求項2】
基材に金属めっきを形成する方法において、多層めっき層を形成する複数のめっき工程間にレーザー加工工程を入れることを特徴とするクリップの製造方法。
【請求項3】
前記基材が鉄および鉄合金または銅および銅合金であることを特徴とする請求項1、或いは、請求項2記載のクリップ、及び、そのクリップの製造方法。
【請求項4】
前記レーザー加工を行うめっき層が銅またはニッケルであることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載のクリップ、及び、そのクリップの製造方法。
【請求項5】
前記レーザー加工を行うめっき層の厚さが10ミクロン以上50ミクロン以下であることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載のクリップ、及び、そのクリップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−184669(P2008−184669A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−20264(P2007−20264)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】