説明

クリップ及びそのクリップを用いた挟持構造、並びに、クリップ付き撮像装置及びその固定構造。

【課題】ボード(20)面上に固定することができ、容易に外すことができないクリップ(50)を提供することにある。
【解決手段】共通の回動軸(CL1)まわりに互いに開閉する方向に回動する第1の挟持部(1)及び第2の挟持部(2)と、第1の挟持部(1)と第2の挟持部(2)とを閉方向に付勢する付勢手段(3)と、第1の挟持部(1)と第2の挟持部(2)とを、両者の成す角度(θ)が所定の角度(α)未満の状態から付勢手段(3)の付勢力に抗して開方向に回動させて成す角度が所定の角度(α)に達した際に、閉方向への回動を禁止する回動禁止手段(RK)と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップ及びそのクリップを用いた挟持構造、並びに、クリップ付き撮像装置及びその固定構造に係る。
【背景技術】
【0002】
書類などを挟んで保持することができるクリップは、使い勝手を向上させる改良が日々行われており、例えば、特許文献1に示すようなクリップとしての挟持構造に加えてピンを備え、オフィスのパーテションや連絡板に使用されるコルクボードなどの面上にそのピンを差し込むことで固定できるものが提案されている。
一方、インターネットを利用したリアルタイムの画像通信などに用いるため、モニター装置に取り付けてパーソナルコンピュータ(以下、PC)と接続する小型の撮像装置が近年普及してきている。
この撮像装置をモニター装置にとりつける取り付け手段として、クリップを用いたものが知られており、例えば、特許文献2に記載されたクリップ付きカメラがある。
【0003】
【特許文献1】特開平8−93724号公報
【特許文献2】特開平11−153832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的なクリップは、書類などの縁部を挟み込むものであり、縁部から引き抜く方向に力を加えると、外れてしまうものである。
また、パーテションボードやコルクボードのようなボード面上に着脱自在に取り付けるには、ボード側に磁性体を配設すると共にクリップ側にマグネットを設けて磁力で取り付けるか、ボード側を軟らかい材料のものとして特許文献1に記載されたようにピンを差し込むのが一般的である。
しかしながら、磁力で取り付けるものは汎用性に乏しく、また、ピンを用いるものは、尖っているピンの扱いに注意が必要であるため、気軽に取り扱えるクリップであることが望まれている。
【0005】
一方、特許文献2に記載されたクリップ付きカメラも、モニター装置への取り付けにおいて、その画像表示部の枠体を挟み込むものであり、容易に外すことができるものである。
従って、使用中、不用意に身体が触れて落下させてしまったり、販売店での展示において来店者が勝手に外してしまうことが懸念される。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ボード面上に固定することができ、容易に外すことができないクリップ及びそのクリップを用いた挟持構造を提供することにある。
また、モニター装置に取り付けた際に、容易に外すことができないクリップ付き撮像装置及びその固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本願発明は手段として次の1)〜7)の構成を有する。
1) 共通の回動軸(CL1)まわりに互いに開閉する方向に回動する第1の挟持部(1)及び第2の挟持部(2)と、
前記第1の挟持部(1)と前記第2の挟持部(2)とを閉方向に付勢する付勢手段(3)と、
前記第1の挟持部(1)と前記第2の挟持部(2)とを、両者の成す角(θ)が所定の角度(α)未満の状態から前記付勢手段(3)の付勢力に抗して開方向に回動させて前記成す角度が前記所定の角度(α)に達した際に、前記閉方向への回動を禁止する回動禁止手段(RK)と、
を備えたクリップ(50)である。
2) 前記回動禁止手段(RK)による回動の禁止を解除する解除手段(9)を備えたことを特徴とする1)に記載のクリップ(50)である。
3) 2)に記載されたクリップ(50)をボード(20)に形成された孔(21)に挟持する、クリップ(50)を用いた挟持構造であって、
前記孔(21)は、その一方向の幅(W21)が、少なくとも前記第2の挟持部の幅(W33)よりも広く、かつ、前記一方向に直交する方向の幅(H21)が、前記回動が禁止された状態の当該クリップ(50)における前記第1の挟持部(1)の表面(1bm)から前記第2の挟持部(2)を含んで突出する部分を通過可能な幅で形成されており、
前記孔(21)の一方向の幅(W21)に沿う縁部近傍の両面を、それぞれ前記第1の挟持部(1)と前記第2の挟持部(2)とにより前記付勢手段(3)の付勢力で挟持して成ることを特徴とするクリップ(50)を用いた挟持構造である。
4) 共通の回動軸(CL1)まわりに互いに開閉する方向に回動する第1の挟持部(1)及び第2の挟持部(2)と、前記第1の挟持部(1)と前記第2の挟持部(2)とを閉方向に付勢する付勢手段(3)と、前記第1の挟持部(1)と前記第2の挟持部(2)とを、両者の成す角度(θ)が所定の角度(α)未満の状態から前記付勢手段(3)の付勢力に抗して開方向に回動させて前記成す角度が前記所定の角度(α)に達した際に、前記閉方向への回動を禁止する回動禁止手段(RK)と、を備えたクリップと、
前記第1の挟持部(1)に取り付けられたカメラ部(53)と、
を備えたクリップ付き撮像装置(60)である。
5) 前記クリップ(60)は、前記回動禁止手段(RK)による回動の禁止を解除する解除手段(9)を備えたことを特徴とする4)に記載のクリップ付き撮像装置(60)である。
6) 5)に記載されたクリップ付き撮像装置(60)をボード(2)に形成された孔(21)に挟持する、クリップ付き撮像装置(60)の固定構造であって、
前記孔(21)は、その一方向の幅(W21)が、少なくとも前記第2の挟持部(2)の幅(W33)よりも広く、かつ、前記一方向に直交する方向の幅(H21)が、前記回動が禁止された状態の当該クリップにおける前記第1の挟持部(1)の表面(1bm)から前記第2の挟持部(2)を含んで突出する部分を通過可能な幅で形成されており、
前記孔(21)の一方向の幅(W21)に沿う縁部近傍の両面を、それぞれ前記第1の挟持部(1)と前記第2の挟持部(2)とにより前記付勢手段(3)の付勢力で挟持して成ることを特徴とするクリップ付き撮像装置(60)の固定構造である。
7) 前記ボード(20)は、FPMPIの取り付け規格で規定された雌ねじ群(70a)に対して雄ねじ(62)で取り付け可能な孔(61a)を有していることを特徴とする6)に記載のクリップ付き撮像装置(60)の固定構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のクリップ及びそのクリップを用いた挟持構造によれば、クリップを、ボード面上に固定することができ、容易に外すことができない、という効果を奏する。
また、本発明のクリップ付き撮像装置及びその固定構造によれば、モニター装置に取り付けた際に、容易に外すことができない、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図10を用いて説明する。
【0010】
図1は、実施例のクリップ50の外観斜視図である。
【0011】
このクリップ50は、概ね角板状に形成された本体部1と、この本体部1に対して回動軸CL1回りに(矢印D1方向)回動自在とされた挟持部2と、を備えている(本体部1と挟持部2との成す角度をθとする)。
この回動において、後述する捩りコイルばね3により、挟持部2は、常に閉じる方向に付勢されている。従って、本体部1は挟持部2と共に挟持部として機能する。
挟持部2は、その端部2t側が本体部1に当接して回動が規制された閉位置Aと、本体部1に対し捩りコイルばね3の付勢力に抗して略直交する方向まで開いた開位置Bとの間の範囲を回動するように構成されている。
そして、開位置Bに至った際に閉位置Aへの回動は、詳細を後述するロック機構RKにより禁止される。
【0012】
まず、本体部1について、図2を用いて説明する。
この図2は、本体部1のみを挟持部2側から見た斜視図である。
【0013】
この本体部1は、図2の上下方向を長手とされた箱状の筐体1aと、その開口側を塞ぐ蓋1bとが組み合わされて構成されている。
筐体1a及び蓋1bは、樹脂の射出成形により形成される。
図1では、蓋1bを、筐体1aに対して四隅をねじ1cでねじ止めすることで一体化している。もちろん爪係合のいわゆるスナップフィットで一体化してもよい。
【0014】
蓋1bには、長手に沿って互いに平行な外側面1d1,1e1を有して突出する一対のリブ1d,1eが設けられている。その外側面1d1,1e1の間隔をW1とし、内側面の間隔をW2としておく。
このリブ1d,1eには、蓋部1bの表面1bmから距離H1だけ離れた位置に回動軸CL1が設定されており、その回動軸CL1を軸とする軸孔1d2,1e2が形成されている。
また、回動軸CL1よりも図の上方側であって、蓋1bに近い位置に、ロック軸CL2が設定されており、リブ1d,1eには、このロック軸CL2を軸とするロック軸孔1d3,1e3が形成されている。
【0015】
一方、リブ1d,蓋1b,及び筐体1aには、それらを跨るようにえぐれたノブ収容部4が設けられている。
このノブ収容部4は、リブ1dについては、その板厚を薄くする薄板部1d4として形成されており、ロック軸孔1d3は、この薄板部1d4に設けられている。
このノブ収容部4は、後述するロック解除ボタン9がロック軸CL2方向に所定のストロークで往復移動するための空間である。
【0016】
一対のリブ1d,1eの図2における下方には、リブ1d側に偏った位置に、長手方向に延在する窪み5A1と袋部5A2とを有するばね腕収容部5Aが設けられている。
この袋部5A2は、後述するように、その袋中に捩りコイルばね3の一方の腕3aを収めて保持するものである。
【0017】
また、腕収容部5Aに隣接して、蓋1bの表面1bmに直交する方向に可撓性を有する爪6が形成されている。
この爪6の先端部には、縦断面が三角形状なる頭部6aが、その先端側を蓋1bの表面1bmから突出されるように形成されている。
また、蓋1bの下端(図2の下方)部には、一対の突起7a,7bが形成されている。
これは、被挟持部材の当てとなるものである。
【0018】
次に、挟持部2,捩りコイルばね3,及びシャフト8について図3を用いて説明する。
【0019】
挟持部2は、樹脂の射出形成により形成されており、図3の上下方向を長手とされた幅W33なる板状の基部2aと、この基部2aから長手に沿って互いに平行な外側面2d1,2e1を有して突出する一対のリブ2d,2eが設けられている。その外側面2d1,2e1の間隔をW3としておく。W3はW2よりわずかに小さくなるように設定される。
このリブ2d,2eには、基部2aの表面2amから距離H2だけ離れた位置に回動軸CL1が位置するように設定されており、その回動軸CL1を軸とする軸孔2d2,2e2が形成されている。
挟持部2と本体部1との組み合わせにおいて、この回動軸CL1は、本体部1と共用される。
【0020】
また、リブ2dには、挟持部2を、本体部1に対して回動軸CL1を合致させ、さらに、その回動軸CL1回りに回動させた際の、ロック軸CL2の軌跡に対応する円弧状に、法線方向幅d1なるスリット2fが形成されている。
リブ2eの外周半径R2は、リブ2fのスリット2fの内径R1よりもさらに所定量小さく設定されている。
【0021】
2つのリブ2d,2eの図3における下方には、リブ2e側に偏った位置に、長手方向に延在する窪み5B1と袋部5B2とを有するばね腕収容部5Bが設けられている。
この袋部5B2は、その袋中に捩りコイルばね3の一方の腕3bを収めて保持するものである。
また、基部2aの端部2tには、突起7cが形成されている。
この突起7cは、被挟持部材の当てとなるものである。
【0022】
シャフト8は、例えばステンレス棒で形成され、次に説明する捩りコイルばね3が挿通されてリブ2d,2eにおける軸孔2d2,2e2に嵌着される。
捩りコイルばね3は、ばね線材で形成され、コイル部3aと、その両端からそれぞれ延出する腕3a,3bを備えている。
【0023】
挟持部2と本体部1とを組み合わせた際に、コイル部3aにシャフト8が挿通されて回動軸CL1上に配置され、腕3aは、本体部1のばね腕収容部5Aに保持され、腕3bは、挟持部2のばね腕収容部5Bに保持される。
【0024】
次に、ロック機構RKを構成するロック解除ボタン9などについて、図4を用いて説明する。
この図4において、ロック軸CL2は、本体部1で設定されたロック軸CL2に沿って配設される。
【0025】
まず、ロック解除ボタン9は、平板状のボタン部9a1とこのボタン部9a1からリブ状に突出するリブ部9a2とを有して概ねT字状に形成された本体部9aと、リブ部9a2の先端部に矩形平板状に張り出して設けられたプレート部9bと、そのプレート部9b内の本体部9aと干渉しない位置に設定されたロック軸CL2に沿って本体部9aとは反対側に延びる軸部9cと、を有して、樹脂の射出成形により形成されている。もちろん、金属の削りだしで形成されていてもよく、材料や形成方法は限定されない。
【0026】
このロック解除ボタン9は、プッシュバー10と組み合わされる。
すなわち、プッシュバー10は、円筒状のバー本体部10aと、その一端面から延出する棒軸部10bと、を有して形成されている。バー本体部10aの他端面には、ロック解除ボタン9の軸部9cが挿入される有底穴10aが形成されている。
また、プッシュバー10の棒軸部10cには、圧縮コイルばね11が装着される。この圧縮コイルばね11の外径は、バー本体部10aの外径と同じかそれより小さく設定されている。
【0027】
上述した各部材の組み付けについて図5及び図6を用い、図1乃至図4を参照しながら説明する。
図5は図1における閉位置Aの状態を、図6は図1における開位置Bの状態を示している。
【0028】
図5の閉位置Aの状態において、プッシュバー10の棒軸部10cには圧縮コイルばね11が装着されており、棒軸部10cは、本体部1のリブ1eのロック軸孔1e3に挿入されている。
また、ロック解除ボタン9は、その軸部9cが、本体部1のリブ1dに設けられたロック軸孔1d3及び挟持部2のスリット2f(図6参照)に挿通されてプッシュバー10の有底穴10cに挿入されている。
この軸部9cと有底穴10cとは接着剤により固定されている。
従って、ロック解除ボタン9とプッシュバー10とは一体化されている。
また、この固定において、軸部9cの先端は有底孔10cの底面に当接しており、その状態で、ロック解除ボタン9のボタン部9a1の表面9a1aが、筐体1aの側面とほぼ同面となるように設定されている。
【0029】
シャフト8は、一部上述の繰り返しとなるが、図5の手前側から、本体部1のリブ1dにおける軸孔1d2,挟持部2のリブ2dにおける軸孔2d2,捩りコイルばね3,リブ2eの軸孔2e2,及びリブ1dの軸孔1d2の順に挿通されている。そして、このシャフト8は、軸孔2d2、2e2に対して遊嵌状態とされ、リブ1d,1eにおける軸孔1d2,1e2に、圧入やE形止め輪(Eリング)による抜け止めを施されて取り付けられている。
【0030】
また、捩りコイルばね3の一方の腕3aは、本体部1のばね腕収容部5Aにおける袋部5A2内に収められて保持され、他方の腕3bは、挟持部2のばね腕収容部5Bにおける袋部5B2に収められて保持されている。
捩りコイルばね3は、この閉位置Aの状態で本体部1と挟持部2とをさらに接近させる方向に付勢しており、この付勢力が、このクリップ50が被挟持部材を挟む挟持力となる。
従って、手などにより、この付勢力に抗する力を与えることで挟持部2を開状態にすることは可能である。
【0031】
そこで、この付勢力に抗して、挟持部2を開位置Aから図5のD5方向に回動させ、本体部1と挟持部2とのなす角度が約90°となる開位置Bとするまでの経過について、図5及び図6を用いて説明する。
図6においては、理解容易のため、シャフト8,捩りコイルばね3,及びリブ1e,2eを削除して示している。
【0032】
図5においては、スリット2fに、ロック解除ボタン9の軸部9cが挿通されている。
従って、圧縮コイルばね11の伸長方向の付勢力により、バー本体部10aは、リブ2dをリブ1dに押し付けている。
従って、挟持部2の回動に伴い、バー本体部10aとリブ2dとリブ1dとは互いに摺動しつつ回動が行われる。
【0033】
ある程度回動が進むと、スリット2fに沿って摺動していた軸部9cが相対的にスリット2fの端部2f1を越えて、スリット2fから開放される(図6参照)。
すると、バー本体部10aの端面とリブ2dの内側面との当接も解除され、バー本体部10aは、圧縮コイルばね11の付勢力に従ってリブ1dに向かって矢印D6方向に移動し、リブ1dの内側面に当接する。
【0034】
この移動により、バー本体部10aと一体化されているロック解除ボタン9も矢印D6方向に移動して、その表面9a1は、筐体1aの外面から突出して押し込み可能な状態となる。
そして、この図6の開位置Bになると、挟持部2の閉位置Aに向けての回動が、リブ2dがバー本体部10aの側面に当接することで禁止される。
従って、挟持部2は、本体部1に対して所定の角度α(この実施例において約90°)において、それ未満の角度への回動が禁止された状態で維持される。
【0035】
このロックがかかる角度は、スリット2fの端部2f1の位置を、挟持部2の基部2aの表面2amからどれだけ離すかで自由に設定することができる。
この離す距離は、図3においてH3で示される。
【0036】
ロックの解除は、開位置Bにおいて筐体1aの表面から突出したロック解除ボタン9を、圧縮コイルばね11の付勢力に抗して押し込むことで実行される。
すなわち、ロック解除ボタン9を押し込むと、圧縮コイルばね11を圧縮させつつ軸部9cを介してバー本体部10aがリブ1e側に移動する。
【0037】
バー本体部10aが所定量移動すると、その側面へのリブ2dの当接が解除される。これがロック解除のタイミングであり、これにより挟持部2は、捩りコイルばね3の付勢力により閉位置Aに向けて回動する。
【0038】
このように、実施例のクリップは、本体部1と挟持部2とが閉じた閉位置Aから開いた開位置Bに両者を相対回動させると、両者のなす角度θが所定の角度αにおいてロックが作用して閉位置B方向への回動が禁止されその状態で維持されるものである。
従って、以下に説明する、面上に設けられた孔への取り付け(挟着)を行うことができる。
【0039】
図7は、例えば、ボードの一例であるパーテション20の面上に設けられた取り付け孔21に、実施例のクリップ50を取り付ける作業を説明する図である。
【0040】
ここで、図7(a)に示すように、取り付け孔21は、その開口幅W21を、クリップ50における本体部1以外の部分の最大幅(図7におけるW1)よりも広く、また、開口高さH21を、本体部1から突出している部分(挟持部2やリブ2d,2eなど)の長手方向の最大長さH1よりも大きく形成しておく。
開口幅W21は、少なくとも挟持部2の幅W33よりも広く設定されている。
また、この条件内であれば、取り付け孔21は、横に細長いスリット状でもよい。
【0041】
まず、図7(a)に示すように、クリップ50を、開位置Bとしてロック状態とする。そして、挟持部2の先端2t側から取り付け孔21に挿入する。
【0042】
図7(b)は、その挿入途中の状態を示している。
【0043】
そして、図7(c)に示すように、本体部1の蓋1bの表面1bmが、パーテション20の表面20mにほぼ当接するまで挿入してロック解除ボタン9を押し込む。
このロック解除ボタン9の押し込みによって挟持部2の回動ロックが解除され、挟持部2は、捩りコイルばね3の付勢力に従って本体部1側に回動し、パーテション20を挟み込む。この状態を図(c−1)に断面図として示す。
従って、実施例のクリップ50は、面上に設けられた孔に対して取り付けることができる。
この取り付け構造は、従来のような被取り付け部材の縁部に取り付ける構造とは全く異なる取り付け構造であり、外部から付与される引き抜き力などによって容易に外れるものではない。
【0044】
ここで、取り付け孔21の開口寸法とクリップ50の外形寸法とにおいて、以下の設定とすると、更なるメリットが得られるので説明する。
具体的には、取り付け孔21の開口幅W21よりも本体部1の幅W51を大きくし、かつ、本体部1の最上端位置を、本体部1からの突出部分の内、取り付け孔21内に位置する範囲の最上端位置よりも高くしておく。
この高さの差は、図7(c−1)におけるΔDで示される。
もちろん、取り付け孔21の開口高さは、図7(c−1)におけるΔDの下側基準位置Pから、挟持のためにパーテション20に当接する本体部1及び挟持部2の位置のいずれか高い方までの距離H7、よりも短く、挟持可能な範囲内で設定しておく。
【0045】
このような設定にしておくと、図7(d)に示すように、図7(c−1)に至った後に、更にクリップ50全体を、パーテション20を挟んだまま上方に移動させることで、本体部1によって取り付け孔21の開口を隠すことができる。
この状態を図7(e)に示す。
【0046】
さらに、図1などに示すように、本体部1の蓋1bに可撓性の爪6を設けておくと、この爪6は、図7(c−1)の挟持状態では、内部に向けて押し込まれ撓んで隠れているものの、クリップ50を上方にずらして取り付け孔を隠す際には、所定の位置に達すると取り付け孔21に入り込み、クリック感を発生させる。
従って、使用者は、取り付け孔21に対してクリップ50が所定の取り付け位置にあるか否かを把握することができる。
また、爪6の頭部6aの傾斜をきつく(パーテション20の表面20mとなす角度を大きく)形成することにより、クリック感に加えて嵌り込んだ後の引き下げに対して抗力を発揮させることができる。これによって、地面側へのずり落ちを効果的に防止することができる。
【0047】
上述した構造を有している実施例のクリップ50は、パーテション20の表面20mに対して、あたかも直接面付けで取り付けられているように装着される。
このように、実施例のクリップとそのクリップを用いた挟持構造によれば、クリップをボードの面上に固定でき、また、固定したクリップは容易に外れるものではないばかりでなく、クリップの取り付け構造を見た目でわからないようにできるので、意図せず他人に外されることがない。
【0048】
次に、上述したようにパーテション20に取り付けたクリップ50を取り外す作業について図8を用いて説明する。
【0049】
図8(a)は、図7(e)に相当する。取り付け孔21は、クリップ50の本体部1に覆われて隠れている。
ここから、図8(b)に示すように、クリップ50全体を、パーテション20を挟持させたまま下方に引き下げる。
次に、図8(c)に示すように、本体部1の下方を手で掴み〔2〕の方向に回動させつつ、〔1〕のようにパーテション20から引き離す。
本体部1をさらに回動させると、挟持部2に対して所定の角度となった時点でロック機構RKが作動し、本体部1と挟持部2とは所定の角度以下にならないように維持される。
この状態で、図8(d)に示すように、挟持部2を取り付け孔21から引き抜くことで、クリック50は、パーテション20から完全に取り外すことができる。
【0050】
以上詳述した実施例のクリップ50は、パーテションなどのボード20と本体部1との間に書類やメモなどのボード20以外の被挟持物51を挟んでおくことができる〔図9(a)参照〕。
また、本体部1にフック52を形成しておけば、壁掛けフックとしても利用することができる〔図9(b)参照〕
また、本体部1の内部に小型のカメラ53を搭載すれば、定点観測用や監視用途としてのカメラ装置として利用することができる〔図9(c)参照〕。
【0051】
このカメラ53を、本体部1からフレキシブルパイプ54などにより連結してクリップ付き撮像装置60としてもよい〔図9(d)参照〕。
この場合は、カメラ53と外部とを連結するケーブル53aの逃げとして、挟持部2にケーブルスリット2sを形成しておくとよい〔図9(e)参照〕
【0052】
この図9(d)で示した、クリップ付き撮像装置60は、上述した取り付け構造を用いて以下に説明するようにモニター装置に固定することができる。
【0053】
図10(a)は、実施例のクリップ付き撮像装置60をモニター装置70に固定した状態を正面側から見た斜視図であり、図10(b)は、背面側から見た斜視図である。
【0054】
このモニター装置70は、液晶パネル70eを用いた画像表示装置であり、その液晶パネル70eを内蔵した本体部70Aと、それを支える台座部70Bとを有して構成されている。
本体部70Aの背面には、オプション機器などを取り付けるための雌ねじ70aが複数箇所、雌ねじ群として設けられている。
この雌ねじ群は、一般的に、液晶ディスプレイの標準化団体であるVESA(Video Electronics Standards Association)で規定された規格FPMPMI(Flat Panel Monitor Physical Mounting Interface)に準拠して設けられている。
この雌ねじ群のねじ呼びや位置に合わせた孔61aを有するパネル61を用意し、これを本体部70Aにねじ62により固定する。
【0055】
このパネル61には、その上方であって、本体部70Aに固定した際にその上方に突出する部分に、取り付け孔61bが形成されている。この取り付け孔61bは、上述したパーテション20における取り付け孔21に相当するものである。
この取り付け孔61bに、実施例のクリップ50を搭載したクリップ付き撮像装置60を上述の方法により取り付けることができる。
【0056】
これにより、このクリップ付き撮像装置60は、従来のように、画面枠の縁部に挟み込んで取り付けられるものではないので、外部から付与される引き抜き力などによって容易に外れるものではない。
また、パネル61の取り付け孔61bを隠して取り付けられるので、外観品位も大変良好である。また、例えば、店舗に展示した場合にも、パネル61の表面61m上にあたかも直接面付けで取り付けられているように見え、来店者にはその取り付け構造がわからないので、このクリップ付き撮像装置60は勝手に外されてしまうことがない。
【0057】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
実施例で説明した図5において、挟持部2の端部2tに、二点鎖線F内に示すようにローラ12を設けてもよい。これにより、取り付け孔21を挟持後にその孔を隠す移動が容易になる。特に、取り付けるパーテション20などのボードの表面が粗い場合には有効である。
このローラ12は、本体部1側に設けてあってももちろんよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明のクリップの実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明のクリップの実施例における本体部を説明するための斜視図である。
【図3】本発明のクリップの実施例における挟持部などを説明するための斜視図である。
【図4】本発明のクリップの実施例におけるロック機構の要部を説明するための図である。
【図5】本発明のクリップの実施例の要部を説明するための図である。
【図6】本発明のクリップの実施例の要部を説明するための他の図である。
【図7】本発明のクリップの実施例をパーテション面へ取り付ける作業を説明するための図である。
【図8】本発明のクリップの実施例を取り付けたパーテション面から取り外す作業を説明するための図である。
【図9】本発明のクリップの実施例に対する変形例と、本発明のクリップ付き撮像装置の実施例と、を説明するための図である。
【図10】本発明のクリップ付き撮像装置をモニター装置に固定するための固定構造を説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
1 本体部
1a 筐体
1b 蓋
1bm 表面
1c ねじ
1d,1e リブ
1d1,1e1 外側面
1d2,1e2 軸孔
1d3,1e3 ロック軸孔
2 挟持部
2a 基部
2am 表面
2d,2e リブ
2d1,2e1 外側面
2d2,2e2 軸孔
2f スリット
2f1 端部
2s ケーブルスリット
2t 端部
3 捩りコイルばね
3a 腕
4 ノブ収容部
5A,5B ばね腕収容部
5A1,5B1 窪み
5A2,5B2 袋部
6 爪
6a 頭部
7a,7b,7c 突起
8 シャフト
9 ロック解除ボタン
9a1 ボタン部
9a1a 表面
9a2 リブ部
9b プレート部
9c 軸部
10 プッシュバー
10a バー本体部
10b 棒軸部
10c 有底穴
11 圧縮コイルばね
20 パーテション(ボード)
21 取り付け孔
50 クリップ
51 被挟持物
52 フック
53 カメラ
53a ケーブル
54 フレキシブルパイプ
60 クリップ付き撮像装置
70 モニター装置
70e 液晶パネル
70A 本体部
70B 台座部
A 閉位置
B 開位置
CL1 回動軸
RK ロック機構
d1 (スリットの)幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の回動軸まわりに互いに開閉する方向に回動する第1の挟持部及び第2の挟持部と、
前記第1の挟持部と前記第2の挟持部とを閉方向に付勢する付勢手段と、
前記第1の挟持部と前記第2の挟持部とを、両者の成す角度が所定の角度以下の状態から前記付勢手段の付勢力に抗して開方向に回動させて前記成す角度が前記所定の角度に達した際に、前記閉方向への回動を禁止する回動禁止手段と、
を備えたクリップ。
【請求項2】
前記回動禁止手段による回動の禁止を解除する解除手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のクリップ。
【請求項3】
請求項2に記載されたクリップをボードに形成された孔に挟持する、クリップを用いた挟持構造であって、
前記孔は、その一方向の幅が、少なくとも前記第2の挟持部の幅よりも広く、かつ、前記一方向に直交する方向の幅が、前記回動が禁止された状態の当該クリップにおける前記第1の挟持部の表面から前記第2の挟持部を含んで突出する部分を通過可能な幅で形成されており、
前記孔の一方向の幅に沿う縁部近傍の両面を、それぞれ前記第1の挟持部と前記第2の挟持部とにより前記付勢手段の付勢力で挟持して成ることを特徴とするクリップを用いた挟持構造。
【請求項4】
共通の回動軸まわりに互いに開閉する方向に回動する第1の挟持部及び第2の挟持部と、前記第1の挟持部と前記第2の挟持部とを閉方向に付勢する付勢手段と、前記第1の挟持部と前記第2の挟持部とを、両者の成す角度が所定の角度未満の状態から前記付勢手段の付勢力に抗して開方向に回動させて前記成す角度が前記所定の角度に達した際に、前記閉方向への回動を禁止する回動禁止手段と、を備えたクリップと、
前記第1の挟持部に取り付けられたカメラ部と、
を備えたクリップ付き撮像装置。
【請求項5】
前記クリップは、前記回動禁止手段による回動の禁止を解除する解除手段を備えたことを特徴とする請求項4記載のクリップ付き撮像装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたクリップ付き撮像装置をボードに形成された孔に挟持する、クリップ付き撮像装置の固定構造であって、
前記孔は、その一方向の幅が、前記第2の挟持部の幅よりも広く、かつ、前記一方向に直交する方向の幅が、前記回動が禁止された状態の当該クリップにおける前記第1の挟持部から前記第2の挟持部を含んで突出する部分を通過可能な幅で形成されており、
前記孔の一方向の幅に沿う縁部近傍の両面を、それぞれ前記第1の挟持部と前記第2の挟持部とにより前記付勢手段の付勢力で挟持して成ることを特徴とするクリップ付き撮像装置の固定構造。
【請求項7】
前記ボードは、FPMPIの取り付け規格で規定された雌ねじ群に対して雄ねじで取り付け可能な孔を有していることを特徴とする請求項6記載のクリップ付き撮像装置の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−133409(P2009−133409A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310227(P2007−310227)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】