説明

クリップ

【課題】クリップに関し、特にピンを挿入するグロメットの挿入孔中への砂利等の異物の進入を防止することができるようにしたものである。
【解決手段】ピン40と、ピン40が挿入可能な挿入孔を有し、脚部90の長さ方向に設けたスリット91により、複数の脚片92を形成したグロメット50とからなる。グロメット50がピン40の挿入孔への挿入により、一部を拡開可能となるクリップ10である。ピン40又はグロメット50の少なくともどちらか一方(例えばピン40)に、砂利等の異物の進入を防ぐ防止部110を設けている。防止部110を、ピン40の挿入脚60の一部に位置させたり、又、グロメット50の脚片92の一部に位置させたり、或いはグロメットのフランジの下面から、スリットの長さ方向に沿って延設させても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クリップに関し、特にピンを挿入するグロメットの挿入孔中への砂利等の異物の進入を防止することができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ピンと、該ピンが挿入可能な挿入孔を有し、脚部の長さ方向に設けたスリットにより、複数の脚片を形成したグロメットとからなり、グロメットがピンの挿入孔への挿入により、一部を拡開可能となるクリップが知られている(例えば特許文献1の段落番号「0008」及び図1〜6、特許文献2の段落番号「0015」及び図1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-105359号公報
【特許文献2】特開2010-7687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した従来のクリップは、例えば自動車のバンパー等の締結に使用した場合に、外部から砂利や泥等が、ピンとグロメットとの間に進入するおそれがあった。
このため、上記した従来のクリップでは、砂利や泥等の進入すると、締結状態の解除が困難になるという問題点があった。
すなわち、ピンとグロメットとの間に、砂利等の異物が進入することで、両者の間の摩擦抵抗が増加したり、或いは砂利等の異物が一種の”くさび”として作用して、ピンを抜くことができなくなるおそれがあった。
【0005】
そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を目的とする。
すなわち、請求項1に記載の発明は、ピン又はグロメットの少なくともどちらか一方に、砂利等の異物の進入を防ぐ防止部を設けることにより、ピンを挿入するグロメットの挿入孔中への砂利等の異物の進入を防止することができるようにしたものである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0006】
すなわち、請求項2に記載の発明は、防止部を、ピンの挿入脚の一部に位置させ、スリットの長さ方向に沿って延設させることで、スリットからの砂利等の異物の進入を防止することができるようにしたものである。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0007】
すなわち、請求項3に記載の発明は、防止部を、グロメットの脚片の一部に位置させ、スリットの長さ方向に延設させることで、スリットからの砂利等の異物の進入を防止することができるようにしたものである。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0008】
すなわち、請求項4に記載の発明は、防止部を、グロメットのフランジの下面から、スリットの長さ方向に沿って延設させることで、スリットからの砂利等の異物の進入を防止することができるようにしたものである。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0009】
すなわち、請求項5に記載の発明は、防止部を、ピンの挿入脚に延設された壁部とすることで、当該壁部により砂利等の異物の進入を防止することができるようにしたものである。
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、上記した請求項1、請求項2、請求項5のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0010】
すなわち、請求項6に記載の発明は、ピンの挿入脚に、中央脚から外方に延びた羽部を備えることで、当該羽部により砂利等の異物の進入を防止することができるようにしたものである。
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、上記した請求項6に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0011】
すなわち、請求項7に記載の発明は、羽部を、中央脚の長さの途中に位置させることで、中央脚の長さの途中からの砂利等の異物の進入を防止することができるようにしたものである。
(請求項8)
請求項8に記載の発明は、上記した請求項6又は請求項7に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0012】
すなわち、請求項8に記載の発明は、羽部を、中央脚の先端部に位置させることで、中央脚の先端部からの砂利等の異物の進入を防止することができるようにしたものである。
(請求項9)
請求項9に記載の発明は、上記した請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0013】
すなわち、請求項9に記載の発明は、グロメットの脚片の内周面と、ピンの挿入脚の外周面とを脚部の長さ方向に沿って線接触させることで、ピンの移動時の摩擦抵抗を減少させることができるようにしたものである。
(請求項10)
請求項10に記載の発明は、上記した請求項9に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0014】
すなわち、請求項10に記載の発明は、グロメットの脚片の内周面を平坦面とし、ピンの挿入脚の外周面を突面とすることで、ピンの移動時の摩擦抵抗を減少させることができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した各目的を達成するためになされたものであり、各発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて、以下に説明する。
なお、カッコ内の符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
また、図面番号も、発明の実施の形態において用いた図番を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を特徴とする。
【0016】
第1に、例えば図1に示すように、ピン(40)と、ピン(40)が挿入可能な挿入孔(51)を有し、脚部(90)の長さ方向に設けたスリット(91)により、複数の脚片(92)を形成したグロメット(50)とからなる。
第2に、例えば図2に示すように、グロメット(50)がピン(40)の挿入孔(51)への挿入により、一部を拡開可能となるクリップ(10)である。
【0017】
第3に、ピン(40)又はグロメット(50)の少なくともどちらか一方(例えばピン(40))に、例えば図1に示すように、砂利等の異物の進入を防ぐ防止部(110)を設けている。
なお、防止部(110)を、ピン(40)に設けたが、これに限定されず、例えば図20及び図21に示すように、グロメット50側に位置させたり、或いは、図示しないが、ピン40及びグロメット50にそれぞれ位置させても良い。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0018】
すなわち、防止部(110)は、例えば図1に示すように、ピン(40)の挿入脚(60)の一部に位置し、スリット(91)の長さ方向に沿って延設されている。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0019】
すなわち、防止部(200)は、例えば図20及び図21に示すように、グロメット(50)の脚片(92)の一部に位置し、スリット(91)の長さ方向に延設されている。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0020】
すなわち、防止部は、図示しないが、グロメットのフランジの下面から、スリットの長さ方向に沿って延設されている。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0021】
すなわち、防止部(110)は、例えば図1に示すように、ピン(40)の挿入脚(60)に延設された、壁部(例えば羽部111〜118)である。
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、上記した請求項1、請求項2、請求項5のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0022】
すなわち、ピン(40)の挿入脚(60)は、例えば図1及び図2に示すように、グロメット(50)の脚片(92)の内周に接する当接部(101,102)を備えた中央脚(100)と、中央脚(100)から外方に延びた羽部(111〜118)とからなる。
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、上記した請求項6に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0023】
すなわち、羽部(例えば中央羽部111〜114)は、例えば図1に示すように、中央脚(100)の長さの途中に位置している。
(請求項8)
請求項8に記載の発明は、上記した請求項6又は請求項7に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0024】
すなわち、羽部(例えば先端羽部115〜118)は、例えば図1に示すように、中央脚(100)の先端部に位置している。
(請求項9)
請求項9に記載の発明は、上記した請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0025】
すなわち、グロメット(50)の脚片(92)の内周面と、当該内周面に当接するピン(40)の挿入脚(60)の外周面とを、図示しないが、脚部(90)の長さ方向に沿って線接触させている。
(請求項10)
請求項10に記載の発明は、上記した請求項9に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0026】
すなわち、グロメット(50)の脚片(92)の内周面を、例えば図1及び図2に示すように、平坦面(93)として、ピン(40)の挿入脚(60)の外周面を、例えば図1及び図8に示すように、平坦面(93)に向かって突出する突面(103,104)としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
(請求項1)
請求項1に記載の発明によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、ピン又はグロメットの少なくともどちらか一方に、砂利等の異物の進入を防ぐ防止部を設けることにより、ピンを挿入するグロメットの挿入孔中への砂利等の異物の進入を防止することができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明によれば、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0028】
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、防止部を、ピンの挿入脚の一部に位置させ、スリットの長さ方向に沿って延設させることで、スリットからの砂利等の異物の進入を防止することができる。
(請求項3)
請求項3に記載の発明によれば、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0029】
すなわち、請求項3に記載の発明によれば、防止部を、グロメットの脚片の一部に位置させ、スリットの長さ方向に延設させることで、スリットからの砂利等の異物の進入を防止することができる。
(請求項4)
請求項4に記載の発明によれば、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0030】
すなわち、請求項4に記載の発明によれば、防止部を、グロメットのフランジの下面から、スリットの長さ方向に沿って延設させることで、スリットからの砂利等の異物の進入を防止することができる。
(請求項5)
請求項5に記載の発明によれば、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0031】
すなわち、請求項5に記載の発明によれば、防止部を、ピンの挿入脚に延設された壁部とすることで、当該壁部により砂利等の異物の進入を防止することができる。
(請求項6)
請求項6に記載の発明によれば、上記した請求項1、請求項2、請求項5のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0032】
すなわち、請求項6に記載の発明によれば、ピンの挿入脚に、中央脚から外方に延びた羽部を備えることで、当該羽部により砂利等の異物の進入を防止することができる。
(請求項7)
請求項7に記載の発明によれば、上記した請求項6に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0033】
すなわち、請求項7に記載の発明によれば、羽部を、中央脚の長さの途中に位置させることで、中央脚の長さの途中からの砂利等の異物の進入を防止することができる。
(請求項8)
請求項8に記載の発明によれば、上記した請求項6又は請求項7に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0034】
すなわち、請求項8に記載の発明によれば、羽部を、中央脚の先端部に位置させることで、中央脚の先端部からの砂利等の異物の進入を防止することができる。
(請求項9)
請求項9に記載の発明によれば、上記した請求項1〜8のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0035】
すなわち、請求項9に記載の発明によれば、グロメットの脚片の内周面と、ピンの挿入脚の外周面とを脚部の長さ方向に沿って線接触させることで、ピンの移動時の摩擦抵抗を減少させることができる。
(請求項10)
請求項10に記載の発明によれば、上記した請求項9に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0036】
すなわち、請求項10に記載の発明によれば、グロメットの脚片の内周面を平坦面とし、ピンの挿入脚の外周面を突面とすることで、ピンの移動時の摩擦抵抗を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】クリップの分解斜視図である。
【図2】クリップの取付状態の断面図である。
【図3】ピンの斜視図である。
【図4】ピンの正面図である。
【図5】ピンの底面図である。
【図6】ピンの側面図である。
【図7】図6のA−A線に沿う断面図である。
【図8】図6のB−B線に沿う断面図である。
【図9】図8のC部分の拡大図である。
【図10】図6のD−D線に沿う断面図である。
【図11】グロメットを上方から見た斜視図である。
【図12】グロメットを下方から見た斜視図である。
【図13】一半を断面にしたグロメットの側面図である。
【図14】グロメットの底面図である。
【図15】一半を断面にしたグロメットの正面図である。
【図16】クリップの仮止状態の斜視図である。
【図17】一半を断面にした仮止状態のクリップの正面図である。
【図18】仮止状態のクリップの平面図である。
【図19】一半を断面にした仮止状態のクリップの正面図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態を示し、防止部の説明図である。
【図21】図20に対応し、グロメットの脚部が拡開した状態を示す防止部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1中、10は、クリップを示し、図2に示すように、例えば自動車のボディー等のベース20に対して、アンダーカバー等の部品30を取り付けるのに使用されている。
なお、ベース20として、自動車のボディーを例示し、又、部品30としてアンダーカバーを例示したが、これらに限定されない。
上記ベース20には、図2に示すように、クリップ10を挿入可能であり、表裏面に貫通した方形の取付孔21を設けている。また、部品30には、クリップ10を挿入可能であり、取付孔21と整合するとともに、表裏面に貫通した方形の貫通孔31を設けている。
【0039】
クリップ10は、図1に示すように、大別すると、次のパーツを備える。
なお、次の(1)及び(2)については、後述する。
(1)ピン40
(2)グロメット50
なお、クリップ10のパーツは、上記した(1)及び(2)に限定されない。
(ピン40)
ピン40は、図1〜10に示すように、後述するグロメット50の挿入孔51に挿入可能なものである。ピン40は、適度な剛性と弾性とを有する熱可塑性の合成樹脂、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)により一体的に成形されている。
【0040】
具体的には、ピン40は、図1〜10に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)及び(2)については、後述する。
(1)挿入脚60
(2)頭部70
なお、ピン40の各部は、上記した(1)及び(2)に限定されない。
(グロメット50)
グロメット50は、図1、図2及び図11〜15に示すように、ピン40の後述する挿入脚60が挿入可能な挿入孔51を有し、後述する脚部90の長さ方向に設けたスリット91により、複数、例えば2個の脚片92を形成したものである。グロメット50は、図2に示すように、挿入脚60の挿入孔51への挿入により、一部が拡開可能となるものである。グロメット50は、ピン40と同様に、適度な剛性と弾性とを有する熱可塑性の合成樹脂、例えばPOM(ポリアセタール)により一体的に成形されている。
【0041】
なお、脚片92の個数として、2個を例示したが、これに限定されず、3個以上形成しても良い。
具体的には、グロメット50は、図1及び図11〜15に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)及び(2)については、後述する。
【0042】
(1)フランジ80
(2)脚部90
なお、グロメット50の各部は、上記した(1)及び(2)に限定されない。
(挿入脚60)
挿入脚60は、図1〜10に示すように、後述するグロメット50の挿入孔51に挿入可能なものである。
【0043】
具体的には、挿入脚60は、図1〜10に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)及び(2)については、後述する。
(1)中央脚100
(2)防止部110
なお、挿入脚60の各部は、上記した(1)及び(2)に限定されない。
(頭部70)
頭部70は、図1〜6、図8及び図10に示すように、挿入脚60の端部、すなわち図1において上端部から張り出し、その外径を後述するグロメット50の挿入孔51の内径より大きく設定している。具体的には、頭部70は、図5に示すように、平面を長円形或いは小判形に形成している。
【0044】
なお、頭部70を、平面が長円形或いは小判形に形成したが、これに限定されない。
(フランジ80)
フランジ80は、図1、図2及び図11〜15に示すように、その中央にピン40の挿入脚60を挿入可能な挿入孔51が形成され、外径をベース20の取付孔21の内径より大きく設定している。
【0045】
具体的には、フランジ80は、図1及び図11〜15に示すように、略円盤形に形成され、又、挿入孔51は、直径方向に長い略長方形に形成されている。
なお、フランジ80を、略円盤形に形成し、挿入孔51を略長方形に形成したが、これらに限定されない。
具体的には、フランジ80には、図1、図2及び図11〜15に示すように、挿入孔51のほか、次の各部を備える。
【0046】
なお、フランジ80の各部は、次の(1)及び(2)に限定されない。
(1)窪部81
窪部81は、図11、図13及び図15に示すように、ピン40の頭部70がはまり込むものである。窪部81は、フランジ80の上面から、挿入孔51を中心に略円形に窪んでいる。頭部70の下面が、図2に示すように、窪部81の底面に当接した位置(以下、「ロック位置」という。)において、頭部70の上面と、フランジ80の周囲の環状の突縁部とが略面一に揃うようにしている。
【0047】
(2)凹部82
凹部82は、図1、図11、図13及び図15に示すように、窪部81内にピン40の頭部70がはまり込んだ状態において、図示しないが、ドライバー等を差し込み、ピン40の頭部70を窪部81の底面から浮上させるものである。凹部82は、図1及び図11に示すように、挿入孔51を中心に、その長手方向の両端部に位置し、窪部81の周囲の環状の突縁部を凹状に凹ませて形成している。
【0048】
一方、挿入孔51には、図1、図11及び図14に示すように、次の各部を備える。
なお、挿入孔51の各部は、次の(3)及び(4)に限定されない。
(3)スライド突起52
スライド突起52は、図14に示すように、挿入孔51内に突出し、当該挿入孔51に挿入されたピン40の挿入脚60をスライド可能にガイドするためのものである。スライド突起52は、挿入孔51の長手方向の両端部のうち、少なくとも一端部から断面半円形に突出する。スライド突起52は、後述する中央脚100のスライド溝106にはまり込み、ピン40の挿入時に、当該スライド溝106に沿って相対的にスライドする。
【0049】
(4)仮止突起53
仮止突起53は、図14に示すように、挿入孔51内に突出し、当該挿入孔51に挿入されたピン40の挿入脚60を仮止めするためのものである。仮止突起53は、挿入孔51の長手方向の両端部の四隅に計4個位置し、断面半円形に突出する。仮止突起53は、後述する中央脚100の仮止溝107にはまり込み、図16、図17及び図19に示すように、中央脚100を挿入孔51に浅く挿入した状態に仮止めする(以下、「仮止め位置」という。)。
(脚部90)
脚部90は、図1、図2及び図11〜15に示すように、フランジ80の下面から垂下し、ベース20の取付孔21及び部品30の貫通孔31に挿入可能なものである。
【0050】
具体的には、脚部90は、図1、図2及び図11〜15に示すように、次の各部を備える。
なお、脚部90の各部は、次の(1)〜(5)に限定されない。
(1)スリット91
スリット91は、図1、図2、図11、図12、図14及び図15に示すように、脚部90の長さ方向に設けられ、脚部90を、複数、例えば2個の脚片92に切り割るものである。具体的には、スリット91は、脚部90の先端部の端面からフランジ80の下面に向かって延びている。また、スリット91は、フランジ80の挿入孔51の長手方向に沿って設けられ、挿入孔51の短手方向に対向する。
【0051】
なお、脚片92の個数として、2個を例示したが、これに限定されず、スリット91の個数を増加することで、脚片92の個数を3個以上に増加可能である。
(2)脚片92
脚片92は、図1、図2、図11〜15に示すように、スリット91を挟んで対向し、2個形成されている。
【0052】
(3)平坦面93
平坦面93は、図1、図2、図12、図13及び図15に示すように、脚片92の内周面に形成され、同図においてほぼ垂直に形成されている。
平坦面93は、図示しないが、後述するピン40の挿入脚60の突面103,104と当接し、両者は脚部90の長さ方向に沿って線接触する。
【0053】
なお、グロメット50の脚片92の内周面と、当該内周面に当接するピン40の挿入脚60の外周面とを、脚部90の長さ方向に沿って線接触させる構成としては、平坦面93に限定されない。
(4)先端肉厚部94
先端肉厚部94は、図1、図2、図11、図12及び図15に示すように、脚片92の先端部に位置し、スリット91に向かって突出するように、脚片92の肉厚を先端部に向かって徐々に増加させている。
【0054】
(5)係止爪95
係止爪95は、図2、図13及び図15に示すように、先端肉厚部94の内面に位置し、スリット91に向かって断面略台形形或いは略三角形に突出する。係止爪95は、スリット91に向かって斜め下向きに傾斜した傾斜面と、当該傾斜面の傾斜下端に位置し、図15において略水平な下面とから構成されている。
【0055】
係止爪95は、図2に示すように、ロック位置において、ピン40の後述する係止溝105にはまり込み、ピン40をロック位置に係止する。
(中央脚100)
中央脚100は、図1〜10に示すように、グロメット50の脚片90の内周に接するものである。中央脚100は、板状に形成され、フランジ80の挿入孔51の長手方向の左右の横幅以下、例えば略等しい横幅を有し、挿入孔51の長手方向の前後の横幅以下、例えば横幅より薄い厚みを有する。
【0056】
具体的には、中央脚100は、図1〜10に示すように、次の各部を備える。
なお、中央脚100の各部は、次の(1)〜(5)に限定されない。
(1)第1、第2当接部101,102
第1、第2当接部101,102は、図1、図3、図5〜8及び図10に示すように、中央脚100の厚み方向に背向する表裏面に位置し、グロメット50の脚片92の内周、すなわち平坦面93や先端肉厚部94に接するものである。
【0057】
(2)第1、第2突面103,104
第1、第2突面103,104は、図1、図3、図4、図6及び図8に示すように、第1、第2当接部101,102にそれぞれ位置し、グロメット50の脚片92の平坦面93に向かって突出するものである。第1、第2突面103,104は、図8に示すように、中央脚100の幅方向の略中央に位置し、断面略半円形に突出する。また、第1、第2突面103,104は、中央脚100の長さ方向に沿って、図1、図3、図4及び図6において上下方向に延びている。
【0058】
第1、第2突面103,104は、図示しないが、グロメット50の脚片92の平坦面93と当接し、両者は脚部90の長さ方向に沿って線接触する。
なお、グロメット50の脚片92の内周面と、当該内周面に当接するピン40の挿入脚60の外周面とを、脚部90の長さ方向に沿って線接触させる構成としては、第1、第2突面103,104に限定されない。
【0059】
(3)係止溝105
係止溝105は、図1、図2、図6、図7及び図10に示すように、中央脚100の下端部側に位置し、グロメット50の係止爪95がはまり込むものである。係止溝105は、図10に示すように、凹状に凹み、上縁部を底に向かって下り傾斜した傾斜面と、下縁部を同図において略水平な下面とから構成されている。
【0060】
(4)スライド溝106
スライド溝106は、図4、図5、図7及び図8に示すように、中央脚100の幅方向の両端部の少なくとも一方の端部に形成され、グロメット50のスライド突起52がはまり込むものである。スライド溝106は、中央脚100の長手方向、すなわち図4において上下方向に延びている。
【0061】
(5)仮止溝107
仮止溝107は、図1、図3及び図4に示すように、中央脚100の下端部側に位置し、グロメット50の仮止突起53がはまり込むものである。仮止溝107は、後述する中央羽部111と先端羽部112との間に形成され、略U字形に凹んでいる。
(防止部110)
防止部110は、図1、図3〜6、図8及び図9に示すように、ピン40又はグロメット50の少なくともどちらか一方に、例えばピン40の挿入脚60に位置し、砂利等の異物の進入を防ぐものである。
【0062】
なお、防止部110を、ピン40に位置させたが、これに限定されず、グロメット50側に位置させたり、或いはピン40及びグロメット50にそれぞれ位置させても良い。
具体的には、防止部110は、図1、図3〜6、図8及び図9に示すように、次の各部を備える。
なお、防止部110の各部は、次の(1)及び(2)に限定されず、(1)と(2)とのいずれか一方から防止部110を構成しても良い。
【0063】
(1)中央羽部111〜114
中央羽部111〜114は、図1、図3〜6、図8及び図9に示すように、中央脚100の長さの途中に位置し、当該中央脚100から外方に略羽根状に延びている。
中央羽部111〜114は、ピン40の挿入脚60に延設された、防止部110の壁部として機能する。なお、壁部として、中央羽部111〜114を例示したが、これらに限定されない。
【0064】
具体的には、中央羽部111〜114は、図8に示すように、中央脚100の第1、第2当接部101,102の四隅に計4個設けられ、全体として断面略H形に張り出している。
4個の中央羽部111〜114のうち、中央脚100を挟んで背向する中央羽部111と113、112と114との外側に位置する端面迄の距離は、グロメット50のスリット91の溝幅以上、例えば溝幅より長く設定されている。また、4個の中央羽部111〜114のうち、第1、第2突面103,104を挟んで対向する中央羽部111と112、113と114との間隔は、脚片92の横幅以上、例えば当該横幅にほぼ一致させている。
【0065】
なお、中央羽部111〜114の個数として、4個を例示したが、これに限定されず、スリット91の解放面を塞げる個数とすれば良い。
(2)先端羽部115〜118
先端羽部115〜118は、図1、図3〜6及び図8に示すように、中央脚100の先端部に位置し、当該中央脚100から外方に略羽根状に延びている。
【0066】
先端羽部115〜118は、中央羽部111〜114とともに、ピン40の挿入脚60に延設された、防止部110の壁部として機能する。なお、壁部として、先端羽部115〜118を例示したが、これらに限定されない。
先端羽部115〜118は、図5に示すように、中央脚100の第1、第2当接部101,102の四隅に計4個設けられ、全体として断面略H形に張り出している。
【0067】
4個の先端羽部115〜118は、中央脚100を挟んで背向する先端羽部115と117、116と118との外側に位置する端面迄の距離は、グロメット50のスリット91の溝幅以上、例えば溝幅より長く設定されている。また、4個の先端羽部115〜118のうち、第1、第2突面101,102を挟んで対向する中央羽部115と116、117と118との間隔は、脚片92の横幅以上、例えば当該横幅にほぼ一致させている。
【0068】
なお、先端羽部115〜118中の個数として、4個を例示したが、これに限定されず、スリット91の解放面を塞げる個数とすれば良い。
(クリップ10の使用方法)
つぎに、上記した構成を備えたクリップ10の使用方法について説明する。
まず、図16〜19に示すように、ピン40の挿入脚60を、グロメット50の挿入孔51に合わせて挿入し、仮止め状態とする。
【0069】
つぎに、仮止め状態としたクリップ10を使用して、図2に示すように、ベース20に対して部品30を取り付ける。
なお、クリップ10を仮止め状態としたが、部品30を取り付ける際に、グロメット50を先にベース20及び部品30に取り付け、最後にピン40を挿入するようにしても良い。
まず、図2に示すように、ベース20と部品30とを重合させ、両者の取付孔21と貫通孔31とを整合させる。
【0070】
つぎに、仮止め状態としたグロメット50の脚部90を、図2に示すように、ベース20の取付孔21側から部品30の貫通孔31に向かって挿入する。
最後に、ピン40をグロメット50の挿入孔51に深く挿入することで、図2に示すように、グロメット50の脚部90を、部品30の裏側で拡開させる。グロメット50の脚部90を拡開させることで、フランジ80の下面との間でベース20及び部品30を重合状態に挟み持ち、部品30をクリップ10を介してベース20の取付孔21に締結する。
【0071】
クリップ10の締結状態においては、グロメット50のスリット91の対向した解放面が、図示しないが、ピン40の防止部110、すなわち4個の中央羽部111〜114及び4個の先端羽部115〜118により外側から塞がれる。
このため、ピン40の防止部110により、グロメット50のスリット91から脚部90の中空内部への、砂利、砂、泥、埃等の異物の進入が阻止される。
【0072】
すなわち、ピンとグロメットとの間に、砂利等の異物が進入すると、両者の間の摩擦抵抗が増加したり、或いは砂利等の異物が一種の”くさび”として作用して、ピンを抜くことができなくなるおそれがあったが、ピン40の防止部110により、砂利等の異物の進入を防止できることから、これらの不具合を解消できる。。
一方、クリップ10の締結状態を解除する際には、グロメット50の凹部82から、図示しないが、ドライバー等を差し込み、ピン40の頭部70を窪部81の底面から浮上させることで、ピン40の挿入脚60をグロメット50の挿入孔51から抜ける方向にスライドさせることができる。
(第2の実施の形態)
つぎに、図20及び図21を用いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0073】
本実施の形態の特徴は、図20及び図21に示すように、防止部200は、グロメット50の脚片92の一部に位置させ、スリット91の長さ方向に延設させている点である。
すなわち、図20及び図21を用いて、スリット91により切り割らせた脚片92を一部を延長して、延長部201,202を形成している。
延長部201,202は、図20に示すように、脚部90の通常状態では、その先端部が外方に突出している。ピン40の挿入脚60を脚部90内に深く挿入し、脚片92を拡開した状態では、両脚片92が延長部201,202に沿って移動することで、スリット91が拡大するのを防止できる。
【0074】
すなわち、脚片92の拡開に時にも、スリット91の溝幅が変化しないことから、スリットの溝幅が拡張する従来のグロメットと比較し、砂利等の異物の進入を低減することができる。
なお、防止部200を、延長部201,202から構成したが、これらに限定されない。
(第3の実施の形態)
つぎに、図示しないが、本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0075】
本実施の形態の特徴は、防止部を、グロメットのフランジの下面から、スリットの長さ方向に沿って延設させている点である。
本実施例では、防止部を、グロメットのフランジ側に形成することができる。
【符号の説明】
【0076】
(第1の実施の形態)
10 クリップ
20 ベース 21 取付孔
30 部品 31 貫通孔
40 ピン
50 グロメット 51 挿入孔
52 スライド突起 53 仮止突起
60 挿入脚 70 頭部
80 フランジ 81 窪部
82 凹部
90 脚部 91 スリット
92 脚片 93 平坦面
94 先端肉厚部 95 係止爪
100 中央脚
101,102 第1、第2当接部
103,104 第1、第2突面
105 係止溝 106 スライド溝
107 仮止溝
110 防止部
111〜114 中央羽部 115〜118 先端羽部
(第2の実施の形態)
200 防止部 201,202 延長部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンと、
該ピンが挿入可能な挿入孔を有し、脚部の長さ方向に設けたスリットにより、複数の脚片を形成したグロメットとからなり、
前記グロメットが前記ピンの前記挿入孔への挿入により、一部を拡開可能となるクリップにおいて、
前記ピン又は前記グロメットの少なくともどちらか一方に、
砂利等の異物の進入を防ぐ防止部を設けていることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記防止部は、
前記ピンの挿入脚の一部に位置し、前記スリットの長さ方向に沿って延設されていることを特徴とする請求項1に記載にクリップ。
【請求項3】
前記防止部は、
前記グロメットの前記脚片の一部に位置し、前記スリットの長さ方向に延設されていることを特徴とする請求項1に記載にクリップ。
【請求項4】
前記防止部は、
前記グロメットのフランジの下面から、前記スリットの長さ方向に沿って延設されていることを特徴とする請求項1に記載にクリップ。
【請求項5】
前記防止部は、
前記ピンの挿入脚に延設された、壁部であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載にクリップ。
【請求項6】
前記ピンの挿入脚は、
前記グロメットの前記脚片の内周に接する当接部を備えた中央脚と、
前記中央脚から外方に延びた羽部とからなることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項5のいずれか1項に記載にクリップ。
【請求項7】
前記羽部は、
前記中央脚の長さの途中に位置していることを特徴とする請求項6に記載にクリップ。
【請求項8】
前記羽部は、
前記中央脚の先端部に位置していることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載にクリップ。
【請求項9】
前記グロメットの前記脚片の内周面と、当該内周面に当接する前記ピンの挿入脚の外周面とを、前記脚部の長さ方向に沿って線接触させていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載にクリップ。
【請求項10】
前記グロメットの前記脚片の内周面を平坦面として、
前記ピンの挿入脚の外周面を前記平坦面に向かって突出する突面としていることを特徴とする請求項9に記載にクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−79726(P2013−79726A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−283738(P2012−283738)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2010−168562(P2010−168562)の分割
【原出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】