説明

クリンカホッパアッシュゲートの開閉装置

【課題】クリンカホッパのアッシュゲートにおいて、クリンカ塊に起因する開操作不良が発生した場合でも、迅速に対応して開操作することができるバックアップ装置を安価に提供する。
【解決手段】クリンカホッパ1内に溜まったクリンカを排出するアッシュゲート2と、該アッシュゲート2を開閉操作する圧力シリンダ3と、該圧力シリンダ3の開操作室4aへ作動水を供給する作動水供給機構を有し、前記圧力シリンダ3の開操作室4aに前記作動水より高圧な高圧水を作動水と切り替え可能に供給する高圧水供給機構を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭火力発電所におけるクリンカホッパのアッシュゲートの開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力発電所の石炭ボイラにおいては、微粉炭等の燃料の燃焼によって生成される灰が塊状となったクリンカが生じる。この石炭ボイラの底部には、落下したクリンカを水冷して貯留するクリンカホッパを設置してある。このクリンカホッパ内に水と一緒に貯留されたクリンカは、クリンカホッパの下部に設けたアッシュゲートを開閉操作して定期的(3回/日)に外部へ排出される。
【0003】
従来、アッシュゲートの開閉装置は、図2に示すように、アッシュゲート2を開閉操作する圧力シリンダ3と、リザーバタンク出口弁8を介してリザーバタンク5から圧力シリンダ3の開操作室4aへ作動水を供給する作動水供給機構とから構成されている。このアッシュゲートは、クリンカホッパ内に溜まったクリンカ塊に起因する開操作不良を生じる場合があった。
【0004】
また、クリンカホッパのアッシュゲート装置としては、アッシュゲートの開閉方向と平行にガイドレールを配置し、該ガイドレールに沿って転動するようにローラをアッシュゲートに取り付け、このガイドレールとローラの間に洗浄水を噴射するスプレノズルを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平6−331124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、アッシュゲートの開操作不良対策として、オペレータが繰り返しアッシュゲートの開閉操作を行ったり、デレッキを使ってクリンカの塊を移動させたりしていた。しかし、アッシュゲートを開閉するための作動水供給機構にはバックアップ装置が無く、常用設備のみで対応していために、アッシュゲートの開操作不良が発生した場合にクリンカ処理を停滞させるという問題があった。クリンカ処理が長時間停滞すると、火炉のスートブロワが使用できず蒸発管に灰が付着するため、火炉収熱低下によるボイラ効率への影響や、節炭器出口ガス温度上昇による空気予熱器・脱硫装置への影響が懸念される。
【0007】
また、特許文献1に記載のクリンカホッパのアッシュゲート装置は、ガイドレールとローラに付着したクリンカを洗浄水で洗い流すことにより、アッシュゲートの開閉を円滑に行うことができるようにしているが、既存のアッシュゲートを改造するとコスト高になると共に、洗浄が不十分で開操作不良が発生した場合の対応ができないという課題が残っていた。
【0008】
そこで、本発明は、クリンカホッパのアッシュゲートにおいて、クリンカ塊に起因する開操作不良が発生した場合でも、迅速に対応して開操作することができるバックアップ装置を安価に提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、クリンカホッパ内に溜まったクリンカを排出するアッシュゲートと、該アッシュゲートを開閉操作する圧力シリンダと、該圧力シリンダの開操作室へ作動水を供給する作動水供給機構を有するクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置であって、前記圧力シリンダの開操作室に前記作動水より高圧な高圧水を作動水と切り替え可能に供給する高圧水供給機構を設けたクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置を提供するものである。
【0010】
また、本発明のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置は、前記作動水供給機構が、リザーバタンクと該リザーバタンク内を加圧する加圧手段とからなるものである。
【0011】
また、本発明のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置は、前記高圧水供給機構が、前記作動水の供給系統に水圧ポンプを着脱自在に設けてなるものである。
【0012】
また、本発明のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置は、前記作動水の供給系統にT字管部を設け、該T字管部に前記水圧ポンプを連結可能に設けてなるものである。
【0013】
また、本発明のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置は、前記水圧ポンプが0.8MPa以上の高圧水を供給するようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置は、クリンカホッパ内に溜まったクリンカを排出するアッシュゲートと、該アッシュゲートを開閉操作する圧力シリンダと、該圧力シリンダの開操作室へ作動水を供給する作動水供給機構を有するクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置であって、前記圧力シリンダの開操作室に前記作動水より高圧な高圧水を作動水と切り替え可能に供給する高圧水供給機構を設けた構成を有することにより、通常時には圧力シリンダの開操作室に作動水を供給してアッシュゲートを開操作でき、クリンカホッパに溜まったクリンカを定期的に排出することができる。一方、クリンカの塊等によってアッシュゲートの開操作が不良となった時には、圧力シリンダの開操作室に高圧水を供給してアッシュゲートを強制的に開操作でき、クリンカ排出処理の停滞によるボイラ効率の低下や周辺機器への影響を防止することができる効果がある。
【0015】
また、本発明のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置は、前記作動水供給機構が、リザーバタンクと該リザーバタンク内を加圧する加圧手段とからなることにより、圧力シリンダの駆動に汎用圧力源を利用して、アッシュゲートの開閉操作に要するエネルギーを低減することができる効果がある。
【0016】
また、本発明のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置は、前記高圧水供給機構が、前記作動水の供給系統に水圧ポンプを着脱自在に設けたことにより、供給系統に水圧ポンプを着脱して連結して開操作することができる効果がある。
【0017】
また、本発明のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置は、前記作動水の供給系統にT字管部を設け、該T字管部に前記水圧ポンプを連結可能に設けたことにより、作動水の供給系統のT字管部に水圧ポンプを容易に連結することができる効果がある。
【0018】
また、本発明のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置は、前記水圧ポンプが0.8MPa以上の高圧水を供給するようにしたことにより、クリンカの塊等によってアッシュゲートの開操作が不良となった時でも、アッシュゲートを確実に開操作することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図示する実施例に基づいて説明する。
本発明に係るクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置は、クリンカホッパ1内に溜まったクリンカを排出するアッシュゲート2と、該アッシュゲート2を開閉操作する圧力シリンダ3と、該圧力シリンダ3の開操作室4aへ作動水を供給する作動水供給機構を有し、前記圧力シリンダ3の開操作室4aに前記作動水より高圧な高圧水を作動水と切り替え可能に供給する高圧水供給機構を設けてある。
【実施例1】
【0020】
図1の本発明装置において、1はボイラ底部に設けた水槽からなるクリンカホッパである。クリンカホッパ1は、ボイラ火炉から落下したクリンカを水冷して一定期間貯留した後、クリンカホッパ1の下部に設けたアッシュゲート2からクリンカを定期的に排出して、図示しない脱水槽へ送ることができるように構成してある。
【0021】
アッシュゲート2は、ゲート口にスライド可能に設けたゲート本体21を圧力シリンダ3で開閉操作することができるように構成してある。圧力シリンダ3は、シリンダ31と、該シリンダ31内に往復摺動自在に嵌合したピストン32と、該ピストン32の駆動力をゲート本体21に伝達するロッド33とからなる。シリンダ31内のピストン32で仕切られた開操作室4aには、供給系統6を介してリザーバタンク5を接続してある。供給系統6にはリザーバタンク出口弁8を設けてあり、リザーバタンク5から作動水を開操作室4aに供給することにより、アッシュゲート2を開操作することができるようにしてある。
【0022】
リザーバタンク5及び閉操作室4bには、所内にある圧縮エア供給装置を接続してある。リザーバタンク5は、圧縮エアにより加圧され、開操作室4aに作動水である圧力水を供給することができるようにして、作動水供給機構を構成してある。また、閉操作室4b内の圧縮エアは、電磁切替弁34を介して大気に排出される。圧縮エア供給装置は、電磁切替弁34を介して閉操作室4bに圧縮エアを供給してアッシュゲート2を閉操作することができるようにしてある。その時、開操作室4a内の作動水は供給系統6を介してリザーバタンクへ戻される。
【0023】
図1に示す実施例において、供給系統6には、リザーバタンク出口弁8と開操作室4aの間にT字管部10を配置してある。T字管部10の突出管部には、水圧ポンプ出口弁11と接続部材12を設けてあり、水圧ポンプ13の高圧ホース14を着脱自在に連結することができるように構成してある。なお、T字管部10と高圧ホース14とを接続する接続部材12の構造は、従来公知の種々のタイプの管接続機構を適宜に採用することができることは勿論である。
【0024】
水圧ポンプ13は、リザーバタンク5から供給される作動水より高圧な高圧水を開操作室4aに供給することができ、高圧水供給機構を構成してある。水圧ポンプ13は、アッシュゲート2を確実に開操作することができるから、0.8MPa以上の高圧水を供給するようにしてあることが好ましく、実施例では1.0MPaの高圧水を供給することができるようにしてある。
【0025】
また、水圧ポンプ13は、図示のように移動可能で水源を備えた仮設ポンプを使用することも可能である。
【0026】
上記実施例の構成において、通常操作時には、T字管部10の水圧ポンプ出口弁11を閉じ、供給系統6のリザーバタンク出口弁8を開き、圧力シリンダ3を操作してアッシュゲート2を開放することができる。このとき、クリンカの塊等によってクリンカホッパ1のアッシュゲート2の開操作が不良となった場合には、オペレータが直ちに水圧ポンプ13の高圧ホース14をT字管部10の管接続部材12に接続し、供給系統6のリザーバタンク出口弁8を閉鎖して、T字管部10の水圧ポンプ出口弁11を開いて、作動水から高圧水への切り替えを行うことができる。次に、水圧ポンプ13を起動して高圧ホース14から高圧水を圧力シリンダ3の開操作室4aに送り込み、アッシュゲート2を強力に開けることができる。
【0027】
処置完了後は、水圧ポンプ13を停止してT字管部10の水圧ポンプ出口弁11を閉じることにより、供給系統6のリザーバタンク出口弁8を開けて通常の操作に戻ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明装置の一実施例の概略説明図。
【図2】従来装置の概略説明図。
【符号の説明】
【0029】
1 クリンカホッパ
2 アッシュゲート
3 圧力シリンダ
4a 開操作室
4b 閉操作室
5 リザーバタンク
6 供給系統
7 直管部
8 リザーバタンク出口弁
10 T字管部
11 水圧ポンプ出口弁
12 管接続部材
13 水圧ポンプ
14 高圧ホース
21 ゲート本体
31 シリンダ
32 ピストン
33 ロッド
34 電磁切替弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリンカホッパ内に溜まったクリンカを排出するアッシュゲートと、該アッシュゲートを開閉操作する圧力シリンダと、該圧力シリンダの開操作室へ作動水を供給する作動水供給機構を有するクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置であって、前記圧力シリンダの開操作室に前記作動水より高圧な高圧水を作動水と切り替え可能に供給する高圧水供給機構を設けたクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置。
【請求項2】
前記作動水供給機構が、リザーバタンクと該リザーバタンク内を加圧する加圧手段とからなる請求項1に記載のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置。
【請求項3】
前記高圧水供給機構が、前記作動水の供給系統に水圧ポンプを着脱自在に設けてなる請求項1又は2に記載のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置。
【請求項4】
前記作動水の供給系統にT字管部を設け、該T字管部に前記水圧ポンプを連結可能に設けてなる請求項3に記載のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置。
【請求項5】
前記水圧ポンプが0.8MPa以上の高圧水を供給するようにした請求項3又は4に記載のクリンカホッパアッシュゲートの開閉装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−85458(P2009−85458A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253142(P2007−253142)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】