説明

クリーニング装置及び画像形成装置

【課題】簡易な構成で、ブラシローラの清掃能力を長期にわたって良好に維持することを可能とする。
【解決手段】被清掃体の表面に当接する絶縁性のブラシ規制部材121cをブラシローラ121に設け、ブラシ規制部材121cを被清掃体の表面に当接させることによって、被清掃体に対するブラシローラ121の位置決め作用が容易に得られ、ブラシローラ121の食い込み量の規制精度が向上されるとともに、起毛状ブラシ片121bの毛倒れが長期使用後においても大幅に抑制されて良好な清掃能力が安定的に維持されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被清掃体の表面に付着した付着物を除去するブラシローラを備えたクリーニング装置及び画像形成装置に関する。
【0002】
一般に、各種機器においてブラシローラを備えたクリーニング装置が広く採用されている。例えば、電子写真方式による複写機やプリンター等の画像形成装置では、感光ドラム(像担持体)が帯電ローラにより一様に帯電されて露光により静電潜像が形成され、その静電潜像が現像装置によって現像材(トナー)で可視像化される。この可視像化されたトナー像は、転写材に転写された後に定着装置によって固着されることで、印刷画像が形成される。そして、トナー像の転写後に転写材に転移することなく感光ドラムに残留したトナーは、そのままクリーニング装置に達し、当該クリーニング装置に設けられたクリーニングブレードにより除去されることによって、感光ドラムは次の画像形成工程に入り得る状態になされる。
【0003】
ところで、このような画像形成装置にあっては、使用が長期に渡るにつれてクリーニング装置のクリーニングブレードをすり抜けたトナーや、装置本体内の浮遊トナーが、次第に帯電ローラに付着してこれを汚染し、帯電ムラ、帯電不良等を発生して画質の劣化の原因となることがある。また、クリーニングブレードによって、微量ではあるが感光ドラム(像担持体)の表面感光層が削られていき、その削り粉が感光ドラムに乗って帯電ローラに付着し、付着物となって帯電ローラを汚染することがある。
【0004】
このような異物汚染の問題に対処するため、従来から図5に示されているようなクリーニング装置1が、上述した帯電ローラ2や感光ドラム等を被清掃体として付設されている。このクリーニング装置1は、ブラシローラ本体1aから略放射状に延出する多数の起毛状ブラシ片1bが設けられたブラシローラ1cを有しており、そのブラシローラ1cに設けられた起毛状ブラシ片1bの先端部を、帯電ローラや感光ドラム等からなる被清掃体2の外周表面に当接させながらブラシローラ1cを従動により回転させ、それによって被清掃体2の表面をクリーニングし、そこに付着している付着物を除去する構成になされている。
【0005】
このようにクリーニング装置1は、帯電ローラや感光ドラム(像担持体)等の被清掃体2の表面に一定圧で押し当てられたブラシローラ1cを有していて、そのブラシローラ1cの起毛状ブラシ片1bを摺擦させることで、被清掃体2に対するクリーニング作用を行うように構成されたものであるが、従来から、そのブラシローラ1cのクリーニング作用による清掃能力をさらに向上させるために、導電性が異なる複数の起毛状ブラシ片を設けたものや、異種のブラシ片間に感光ドラム表面の付着物を機械的に除去する掻き取り部材を備えたものも提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−101978号公報
【特許文献1】特開2007−147708号公報
【特許文献1】特開2007−212626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上述した特許文献にも記載があるように、ブラシローラを被清掃体に当接させてクリーニング作用を行う場合の清掃能力は、起毛状ブラシ片の材質・長さ・太さといった物性、被清掃体との周速比の他、被清掃体に対する起毛状ブラシ片の食い込み量(侵入量)に依存したものとなっている。しかしながら、ブラシローラの使用が長期にわたってくると、起毛状ブラシ片が塑性変形して、いわゆる毛倒れが発生し、その結果、ブラシローラの清掃能力が大幅に低下するという問題がある。また、被清掃体に対する起毛状ブラシ片の食い込み量を、回転軸方向に沿って精度良く規制するには、一般に、高価な位置決め機構を用いてブラシローラを被清掃体に位置合わせする必要がある。さらに、被清掃体の表面に付着している付着物は異なる極性を有しているものが有り、このように異なる極性の付着物を除去するためには、異なる帯電極性を有する複数本のブラシローラを並べた装置が必要となり、装置全体が大型化されるという問題がある。
【0008】
本発明はこのような背景においてなされたものであり、目的とするところは、静電転写プロセスを利用した画像形成装置等において、簡易な構成で、ブラシローラの清掃能力を長期にわたって良好に維持することができるようにしたクリーニング装置及び画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明では、ローラ本体から放射状に延出する多数の起毛状ブラシ片が設けられたブラシローラを有し、回転する前記ブラシローラの前記起毛状ブラシ片が被清掃体の表面に摺擦することにより、前記被清掃体の表面をクリーニングするクリーニング装置において、前記ブラシローラは、前記被清掃体の表面に当接して前記被清掃体と前記ブラシローラとの軸間距離を規制する絶縁性のブラシ規制部材を有し、前記ブラシローラの起毛状ブラシ片は、前記ブラシ規制部材と、前記被清掃体の軸方向に対し交互に接する位置関係で前記ブラシローラ上に配置され、かつ前記起毛状ブラシ片は、前記ブラシ規制部材を挟んで互いに帯電極性が異なる構成が採用されている。
【0010】
このような構成によれば、起毛状ブラシ片の先端部よりも内周側に位置するブラシ規制部材の外径部分が被清掃体の表面に当接することによって、被清掃体に対するブラシローラの位置関係が一定状態に規制されることから両者の位置決め作用が容易に得られ、その結果、被清掃体に対するブラシローラの食い込み量の規制精度が容易に向上されて起毛状ブラシ片の先端部分における撓み量が適宜の一定状態に維持される。また、ブラシ規制部材の外径以上に起毛状ブラシ片が倒れ込むことが無くなることから、いわゆる毛倒れが、長期使用後においても大幅に抑制されることとなって、良好な清掃能力が安定的に維持される。さらに、ブラシ規制部材に沿うようにして起毛状ブラシ片の植毛が行われることによって、回転軸方向における起毛状ブラシ片の植毛量が容易かつ正確に制御される。
【0011】
また、本発明においては、前記ブラシ規制部材は、前記回転軸の軸方向に沿って複数配置された円盤状片から構成され、それらの各円盤状片が、前記ブラシローラの径方向に対して傾斜角を有するように配置されたものであって、前記ブラシローラの起毛状ブラシ片は、前記ブラシ規制部材を構成している円盤状片を境界として軸方向に異なる帯電極性を有するものが隣接するように配置されていることが望ましい。
【0012】
このような構成によれば、ブラシローラの円周方向に異なる帯電極性の起毛状ブラシ片が交互に配列された状態となり、その異なる帯電極性の起毛状ブラシ片が被清掃体の表面に交互に到来することによって、当該被清掃体の表面に付着している異なる極性の異物が良好に除去される。その結果、被清掃体に対する良好なクリーニング作用が単体のブラシローラによって得られることとなり、従来のような異なる帯電極性を有する複数本のブラシローラを並べた装置に比して、装置全体が大幅に小型化される。
【0013】
また、本発明においては、前記ブラシ規制部材は、前記ブラシローラの軸方向に沿って複数配置された円盤状片から構成され、前記複数の円盤状片のうちの軸方向に隣接する一対のもの同士を連結する板状仕切片を有し、その板状仕切片は、前記ブラシローラの軸方向に複数設けられ、それらの各板状仕切片を境界として、前記ブラシローラの起毛状ブラシ片が周方向に異なる帯電極性を有するものが隣接するように配置されていることが望ましい。
【0014】
このような構成においても、ブラシローラの円周方向に異なる帯電極性の起毛状ブラシ片が交互に配列された状態となることから、その異なる帯電極性の起毛状ブラシ片が被清掃体の表面に交互に到来することによって、被清掃体の表面に付着している異なる極性の異物が良好に除去され、単体のブラシローラによって被清掃体の良好なクリーニングが可能となって、異なる帯電極性を有する複数本のブラシローラを並べて用いた従来の装置に比して装置全体が大幅に小型化される。
【0015】
また、本発明においては、前記ブラシ規制部材は、前記ブラシローラの軸方向に沿って捻られるように延在する螺旋状片から構成されていることが可能である。
【0016】
このような構成によれば、螺旋状片により規制されて螺旋状に延在する起毛状ブラシ片が、回転時に軸方向への搬送作用を備えることとなり、その起毛状ブラシ片に回収された異物が当該起毛状ブラシ片の搬送作用によって機外に向かって円滑に送り出される。
【0017】
また、本発明においては、前記ブラシ規制部材が前記被清掃体の表面に当接可能となるように設定されていることが望ましい。
【0018】
このような構成によれば、上述した被清掃体に対するブラシ規制部材の位置決め作用が確実に行われる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように本発明は、被清掃体の表面に当接する絶縁性のブラシ規制部材をブラシローラに設け、被清掃体に対するブラシローラの位置決め作用を容易に得ることとし、被清掃体に対するブラシローラの食い込み量の規制精度を容易に向上させるとともに、ブラシ規制部材の外径以上に起毛状ブラシ片が倒れ込むことを無くして、いわゆる毛倒れを大幅に抑制して良好な清掃能力を安定的に維持するように構成したものであるから、静電転写プロセスを利用した画像形成装置等において、簡易な構成で、ブラシローラのクリーニング作用による清掃能力を長期にわたって良好に維持することができ、さらに、異なる帯電極性の起毛状ブラシ片が被清掃体の表面に交互に到来することによって、当該被清掃体の表面に付着している異なる極性の付着物が良好に除去され、クリーニング装置及び画像形成装置の信頼性及び小型化を低コストで大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用する画像形成装置の一例としてのレーザプリンターの内部構造を表した縦断面説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態にかかるブラシローラの構成を表した正面説明図である。
【図3】図2に表したブラシローラの横断面説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかるブラシローラの構成を表した正面説明図である。
【図5】従来のブラシローラの構造を表した横断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、当然のことであるが、以下の実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
図1は、本発明を適用した画像形成装置としてのプリンターを示す概略図であって、当該プリンター10は、像担持体としての感光ドラム11を備えており、その感光ドラム11の周囲には、回転方向aに沿って順に、帯電ローラ12、現像装置13、転写ローラ14、クリーニング装置15が設置されているとともに、前記帯電ローラ12と現像装置13の間の上方位置には露光装置16が配設されている。また、前記帯電ローラ12には、当該帯電ローラ12の駆動を受けて従動で回転するクリーニングローラとしてのブラシローラ121が、前記帯電ローラ12背面側(図1の上方側)に配設されている。
【0023】
本実施形態で用いられている感光ドラム(像担持体)11は、負帯電の有機感光ドラムから構成されており、不図示の駆動手段により所定の周速(プロセススピード)で矢印a方向に回転駆動され、その回転過程において当該感光ドラム11の外周表面に接触する帯電ローラ12に所定のバイアスを印加することによって感光ドラム11の表面が一様な負極性の所定電位に帯電される。そして、その帯電された感光ドラム11の表面上に露光装置16からレーザー光による走査露光が照射されて感光ドラム11の電位が部分的に低下し、画像情報に応じた静電潜像が形成される。
【0024】
現像装置13の現像スリーブ131が感光ドラム(像担持体)11に対面された現像領域においては、感光ドラム11の帯電極性と同極性に現像スリーブ131に現像バイアスが印加されることにより、感光ドラム11上の静電潜像にトナーが付着されてトナー像として顕像化される。その感光ドラム11上のトナー像が、感光ドラム11と転写ローラ14と間の転写ニップ部に到達すると、前記転写ローラ14にトナーと逆極性のバイアスが印加され、それによって感光ドラム11上のトナー像が転写材Pに転写される。
【0025】
トナー像が転写された転写材Pは定着装置18に搬送され、定着ローラ181と加圧ローラ182との間の定着ニップにて加熱・加圧により転写材P上のトナー像が熱定着されて画像形成動作が終了される。転写後に感光ドラム(像担持体)11上に残留している転写残トナーは、クリーニング装置15に設けられたクリーニングブレード151によって除去・回収される。
【0026】
一方、上述したように帯電ローラ12には、当該帯電ローラ12に対するクリーニング装置としてのブラシローラ121が付設されているが、そのブラシローラ121の構成を詳細に説明する。
【0027】
図2及び図3は、本実施形態にかかるブラシローラ121を示す図であって、そのブラシローラ121は、長尺状に延在するローラ本体としての回転軸121aを有しており、当該回転軸121aを中心としてブラシローラ121が回転される構成になされている。前記回転軸121aには、当該回転軸121aから略放射状に延出する多数の起毛状ブラシ片121bが設けられている。そして、それらの起毛状ブラシ片121bの先端部が、被清掃体としての帯電ローラ12の外周表面に当接しながらブラシローラ121が回転した際において、前記起毛状ブラシ片121bの先端部が帯電ローラ(被清掃体)12の外周表面に摺擦することによって、前記帯電ローラ(被清掃体)12の表面をクリーニングし、当該表面上に付着していた付着物の除去が行われる構成になされている。
【0028】
一方、上述したブラシローラ121は、被清掃体としての帯電ローラ12の外周表面に当接する絶縁性のブラシ規制部材121cを有しており、当該ブラシ規制部材121cの当接によって、被清掃体としての帯電ローラ12と、ブラシローラ121との軸間距離が規制される構成になされている。そのブラシ規制部材121cは、前記回転軸121aと略同心状をなすように取り付けられたリング状の円盤状片から構成されており、その円盤状片からなるブラシ規制部材121cが、前記回転軸121aの軸方向に沿って略一定の間隔をなして複数配置されている。これによって、前記ブラシローラ121の起毛状ブラシ片121bは、前記帯電ローラ(被清掃体)12の軸方向において前記ブラシ規制部材121cと交互に接する位置関係でブラシローラ121上に配置されている。また、それらのブラシ規制部材121cを構成している各円盤状片は、ブラシローラ121の径方向に対して適宜の傾斜角を有するように設けられており、互いに略平行状態となるように配置されている。
【0029】
すなわち、上述したようにブラシ規制部材121cが所定の傾斜角度をもって配置されていることによって、ブラシローラ121の外周方向に沿って異なる起毛状ブラシ片121bが交互に配置される構成になされている。そして、そのブラシローラ121の外周方向に沿って配置される異なる起毛状ブラシ片121bは、後述する帯電極性の観点から、少なくとも一対以上となることが望まれ、そのため本実施形態においては、上述したブラシ規制部材121cの傾斜角度が30°に設定されている。
【0030】
上述したブラシ規制部材121cを構成している各円盤状片の外径D1は、起毛状ブラシ片121bの先端部を円周状に結んだブラシローラ121のローラ外径D2よりも小さい外径を有するように形成されている(D1<D2)。従って、それらの各ブラシ規制部材(円盤状片)121c同士の間に植設された起毛状ブラシ片121bの先端部が、当該ブラシ規制部材121cの外周表面から半径方向外方に向かって突出する構成になされている。その起毛状ブラシ片121bの突出量は、本実施形態では0.5mmに設定されている。
【0031】
そして、被清掃体としての帯電ローラ12の外周表面に対するブラシローラ121の当接圧(例えば100g)が、ブラシ規制部材121cを帯電ローラ(被清掃体)12の外周表面に接触可能とするように設定されており、これによってブラシ規制部材121cの外周表面が帯電ローラ(被清掃体)12の外周表面に当接した状態に位置決めされたブラシローラ121が配置されている。その結果、帯電ローラ(被清掃体)12に対する当該ブラシローラ121の食い込み量、つまり前記起毛状ブラシ片121bの撓み量が適正状態となるようにセットされる。
【0032】
すなわち、図3に示されているように、ブラシローラ121の外径より小さい外径を有する絶縁性部材からなるブラシ規制部材121cの外周表面を、被清掃体としての帯電ローラ12の外周表面に当接した状態で配置することによって、当該ブラシ規制部材121cが、帯電ローラ(被清掃体)12と起毛状ブラシ片121bとの接触距離を一定に保つコロの役割を果たすこととなり、その結果、ブラシローラ121の帯電ローラ12へのブラシ食い込み量(侵入量)が精度良く規制されるとともに、ブラシローラ121の毛倒れが防止されて安定した清掃能力が保たれるようになっている。
【0033】
このとき、上述したようにしてブラシローラ121に設けられた起毛状ブラシ片121bは、ブラシ規制部材121cを構成している各円盤状片を挟んで、軸方向に互いに異なる帯電極性のものが隣接するように配置されている。すなわち、これら異なる帯電極性を有する起毛状ブラシ片121bは、各ブラシ規制部材121cを境界として、正極性に帯電する領域と、負極性に帯電する領域とに仕分けされて配置されており、それらの両領域が、軸方向に交互に配置された構成になされている。
【0034】
それらの各領域における起毛状ブラシ片121bは、ブラシローラ121が回転した際に、被清掃体としての帯電ローラ12の外周表面に当接して摺擦することにより帯電することとなるが、上述したように各領域の起毛状ブラシ片121bは、互いに異なる極性に帯電することから、帯電ローラ(被清掃体)12の外周表面に対して円周方向に異なる帯電極性の起毛状ブラシ片121bが交互に摺擦することとなり、それによって帯電ローラ12の外周表面に付着している異なる極性の付着物が円滑に回収されるようになっている。
【0035】
このように異なる帯電極性の起毛状ブラシ片121bを有するブラシローラ121を用いることによって、帯電ローラ(被清掃体)12上における両極性の付着物を効率よく回収することができることとなるが、単に、異なる帯電極性を有する起毛状ブラシ片121bが隣り合って配置されている場合には、それら異なる帯電極性のブラシ同士が吸着し合うことで電気的な中和が行われてしまい、それぞれの極性に応じた異物の清掃能力が低下することが懸念される。そのため本実施形態では、異なる帯電極性を有する起毛状ブラシ片121bの各領域同士の間の境界部分に、絶縁性のブラシ規制部材121cが、両帯電領域を仕切るように配置されている。そのため、異なる帯電極性を有する起毛状ブラシ片121b同士が吸着し合うことが防止され、良好な清掃能力が得られるようになっている。
【0036】
ここで、本実施形態にかかるブラシローラ121の回転軸121aは、SUS21等の金属軸体により形成されているが、特に限定されるものではなく、金属製の中実体からなる芯金や、内部を中空状にくり抜いた金属製の円筒体等が用いられ、その金属材料も、鉄、アルミニウム等、特に限定されるものではない。さらに、本実施形態にかかるブラシローラ121に設けられた起毛状ブラシ片121bを構成するブラシ糸としては、太さ1〜3デニール(デニールは9000mあたり1gである糸の太さをいう)、長さ0.5〜1.5mm、電気抵抗106〜8Ωの繊維が好ましい。また、そのブラシ糸には、合成繊維、半合成繊維、再生繊維等の化学繊維や、天然繊維が、目的に応じて適宜に選択して使用される。例えば、合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、脂肪族ポリアミド(ナイロン)、芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂、又はポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂等で形成されたものが挙げられる。その他、ポリアクリル等のアクリル系樹脂等、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂等で形成されたものが挙げられる。また、天然繊維としては、綿、絹等が挙げられる。
【0037】
さらに、本実施形態にかかるブラシローラ121に設けられた起毛状ブラシ片121bのうち、正極性に帯電する領域の材質としては、正極性に帯電しやすいナイロンやレーヨンなどの繊維材を採用することが可能である。また、負極性に帯電する領域の材質としては、負極性に帯電しやすいポリエチレン、アクリル、ポリエステルなどの繊維材を用いることができる。また、この起毛状ブラシ片121bの密度は、1inch2(約6.45cm2)当たり2万本以上に設定されているが、1inch2(約6.45cm2)当たり3万本以上になされていることが好ましい。
【0038】
さらに、上述したように絶縁部材からなるブラシ規制部材121cは、被清掃体としての帯電ローラ12へのブラシ食い込み量を規制するコロの役割を持つため、起毛状ブラシ片121bよりも剛性が高くなるように設定されており、帯電ローラ(被清掃体)12の外周表面と当接した際に撓み難いように構成しておくことで、ブラシ食い込み量が精度良く規制されるようにしている。
【0039】
これに対して起毛状ブラシ片121bは、被清掃体としての帯電ローラ12の外周表面に付着した付着物を静電的に吸着して除去するものであることから、起毛状ブラシ片121bが帯電ローラ(被清掃体)12と接触した際における接触面積が大きい方が、より多くの付着物を静電的に吸着することができ好ましいこととなる。従って、各起毛状ブラシ片121bの剛性を比較的低く設定することによって、帯電ローラ12と接触した際に大きく撓ませることにより接触面積が大きくなる構成としている。
【0040】
このように本実施形態によれば、起毛状ブラシ片121bの先端部よりも内周側に位置するブラシ規制部材121cの外径部分が、被清掃体としての帯電ローラ12の外周表面に当接することによって、帯電ローラ(被清掃体)12に対するブラシローラ121の位置関係が一定状態に維持されることから位置決め作用が容易に得られ、帯電ローラ12に対するブラシローラ121の食い込み量(侵入量)の規制精度が向上されて起毛状ブラシ片121bの先端部分における撓み量が一定状態(例えば略0.5mm)に維持される。
【0041】
また、起毛状ブラシ片121bが、ブラシ規制部材121cの外径以上に倒れ込むことが無くなることから、いわゆる毛倒れが、従来と比較すると大幅に抑制されることとなって、良好な清掃能力が安定的に維持される。さらに、ブラシ規制部材121cに沿って起毛状ブラシ片121bの植毛が行われることにより、回転軸方向における起毛状ブラシ片121bの植毛量が容易かつ正確に制御される。
【0042】
また、本実施形態においては、ブラシローラ121の円周方向に異なる帯電極性の起毛状ブラシ片121bが交互に配列された状態となっており、その異なる帯電極性の起毛状ブラシ片121bが、帯電ローラ(被清掃体)12の表面に交互に到来することによって、当該帯電ローラ12の表面に付着している異なる極性の付着物が良好に除去される。その結果、帯電ローラ12に対する良好なクリーニング作用が単体のブラシローラによって得られることとなり、従来のような異なる帯電極性を有する複数本のブラシローラを並べた装置に比して、装置全体が大幅に小型化される。
【0043】
さらにまた本実施形態においては、被清掃体としての帯電ローラ12の外周表面に対するブラシローラ121の当接圧が、ブラシ規制部材121cが帯電ローラ(被清掃体)12の外周表面に接触可能となるように設定されていることから、帯電ローラ12に対するブラシ規制部材121cの位置決め作用が確実に行われる。
【0044】
一方、図4に示されている本発明の第2の実施形態では、回転軸121aの軸方向に沿ってブラシ規制部材121cが、ブラシローラ121の軸方向に沿って格子状に配置されている。このブラシ規制部材121cを境界として、起毛状ブラシ片121cが周方向に異なる帯電極性のものが隣接するように配置されている。すなわち、これらの帯電極性が異なる起毛状ブラシ片121bは、前記ブラシ規制部材121cを境界として、正極性に帯電する領域と、負極性に帯電する領域とを、円周方向に交互に形成するように植設されている。
【0045】
このときのブラシ規制部材121cの好適条件としては、長手方向に少なくとも2個以上設けられていることが望ましく、本実施形態では7個としている。また、少なくとも軸方向に2個以上設けられていることが望ましく、本実施形態では6個としている。
【0046】
また、それらの起毛状ブラシ片121bは、ブラシ規制部材121cを境界として、軸方向に異なる帯電極性のものが隣接するように配置されている。すなわち、これら帯電極性の異なる起毛状ブラシ片121bは、前記各ブラシ規制部材121cを境界として、正極性に帯電する領域と、負極性に帯電する領域とを、軸方向に交互に形成するように植設されている。
【0047】
このような第2の実施形態にかかる構成においても、ブラシローラ121の円周方向には異なる帯電極性の起毛状ブラシ片121bが交互に配列された状態となることから、異なる帯電極性の起毛状ブラシ片121bによって被清掃体としての帯電ローラ12の外周表面に付着した異なる極性の付着物が効率的に除去され、単体のブラシローラ121によって帯電ローラ(被清掃体)12の良好なクリーニングが可能となる。特に、本実施形態においては、円周方向に極性の異なるブラシを、より細かいピッチで配置することが可能となり、そのように回転方向により細かく極性の異なるブラシ配置を行うことで、それぞれの極性部位が帯電ローラ12に接触する回数が増えることとなることから、帯電ローラ12を第1の実施形態よりムラなく清掃することが可能となる。
【0048】
さらに、図示は省略したが、ブラシ規制部材を、ブラシローラの軸方向に沿って捻られるように延在する螺旋状片から構成することも可能である。このような実施形態とすれば、螺旋状片からなるブラシ規制部材により規制されて螺旋状に延在する起毛状ブラシ片121bが回転時に軸方向への搬送作用を備えることとなり、その起毛状ブラシ片121bに回収された付着物が、当該起毛状ブラシ片121bの搬送作用によって機外に向かって円滑に送り出される。
【0049】
また、そのようなブラシ規制部材を構成している螺旋状片を、二重の螺旋形状を備えるように構成しておけば、異なる帯電極性の起毛状ブラシ片を、電気的に分離させた状態で仕切るように配置することが可能である。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。
【0051】
例えば、上述した実施形態は、プリンターに対して本発明を適用したものであるが、複写機・ファクシミリなどの他の画像形成装置や、その他の種々の装置に対しても本発明は同様に適用することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上述べたように本発明にかかるクリーニング装置及び画像形成装置は、プリンターや複写機などの多種多様な画像形成装置や、その他の各種装置に対して広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 プリンター
11 感光ドラム(像担持体)
12 帯電ローラ(被清掃体)
121 ブラシローラ
121a 回転軸(ローラ本体)
121b 起毛状ブラシ片
121c ブラシ規制部材
121d 板状仕切片
13 現像装置
14 転写ローラ
15 クリーニング装置
151 クリーニングブレード
16 露光装置
18 定着装置
P 転写材
D1 ローラ外径
D2 ブラシ規制部材の外径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ本体から放射状に延出する多数の起毛状ブラシ片が設けられたブラシローラを有し、
回転する前記ブラシローラの前記起毛状ブラシ片が被清掃体の表面に摺擦することにより、前記被清掃体の表面をクリーニングするクリーニング装置において、
前記ブラシローラは、前記被清掃体の表面に当接して前記被清掃体と前記ブラシローラとの軸間距離を規制する絶縁性のブラシ規制部材を有し、
前記ブラシローラの起毛状ブラシ片は、前記ブラシ規制部材と、前記被清掃体の軸方向に対し交互に接する位置関係で前記ブラシローラ上に配置され、かつ
前記起毛状ブラシ片は、前記ブラシ規制部材を挟んで互いに帯電極性が異なることを特徴とするクリーニング装置。
【請求項2】
前記ブラシ規制部材は、前記ブラシローラの軸方向に沿って複数配置された円盤状片から構成され、
それらの各円盤状片が、前記ブラシローラの径方向に対して傾斜角を有するように配置されていることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項3】
前記ブラシ規制部材は、前記ブラシローラの軸方向に沿って格子状に構成されていることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項4】
前記ブラシ規制部材は、前記ブラシローラの軸方向に沿って捻られるように延在する螺旋部材から構成されていることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。
【請求項5】
記録媒体にトナー像を形成する画像形成部を備えたものであって、
前記画像形成部に、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のクリーニング装置が設けられていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−32552(P2012−32552A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171204(P2010−171204)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】