説明

クリープ強度劣化部の再生熱処理方法

【課題】クリープ損傷により劣化した部位、特に溶接部等のクリープ劣化部を再生する熱処理方法を提供する。
【解決手段】クリープボイドを生じている部材をAc3変態点以上の加熱温度に加熱し、Ac3変態点以上の加熱温度で下記(1)式に示すLarson Miller パラメータ(LMP値)が24000以上を満足する条件で熱処理を施し、熱処理前の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数に対する熱処理後の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数の比を0.3以下とする((1)式において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(h))。
LMP=(T+273)×(20+logt) ・・・(1)
前記加熱温度を、「Ac3変態点+30℃」から「Ac3変態点+70℃」の範囲内とすることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電プラントや化学工業プラント等で使用されている耐熱鋼などの鋼製部材において、クリープ損傷により劣化した部位、特に溶接部等のクリープ劣化部を再生する熱処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高温での長時間使用によりクリープ劣化した溶接部や母材部の代表的な延命化方法としては、クリープ損傷箇所を削除した後、補修溶接を行う方法や、クリープ劣化部をAc3変態点以上の高温に加熱して未使用の母材と同等の組織にする再生熱処理法が知られている。特に、クリープ損傷箇所を削除する必要がなく、かつ、クリープ強度の回復も期待できる再生熱処理法が期待されており、従来から研究開発がなされてきた。
【0003】
例えば、特許文献1では、クリープ劣化部の膨張を拘束した状態で、該クリープ劣化部を好ましくはA3変態点以上に加熱して再生処理する方法が提案されている。この方法によればクリープ劣化部の膨張による圧力を利用して、クリープボイドや亀裂が圧接される効果が得られるとしている。
【0004】
また、特許文献2では、特にクリープ損傷を受けて強度劣化した部分や溶接部等のようなクリープ強度が低い部分をA3変態点以上の高温で加熱保持することにより強度を回復させる方法が提案されている。この方法は、前掲の特許文献1に記載されるような、強度劣化部を拘束することによりボイドや亀裂を圧接するのではなく、A3変態点以上の高温で加熱保持することにより、析出した炭化物を固溶させ、または微細化した結晶粒を回復させ、或いはフェライト組織をベイナイト化することができ、強度劣化部の強度を劣化前の強度と同程度に回復させ得るとしている。
【0005】
ところで、火力発電や化学工業プラント等で使用されている耐熱鋼の多くは、結晶粒界でクリープボイドや亀裂が生成して破壊する形態を呈するのが一般的である。なお、「クリープボイド」とは、結晶粒内の強度が比較的高い材料(例えば、Cr−Mo鋼の溶接部等)においてクリープ損傷により粒界に歪みが集中して発生するキャビティ(空孔)である。このボイドは粒界に発生し、損傷の進行とともに増加、成長し、粒界亀裂を生じさせる。
【0006】
しかしながら、前掲の特許文献1では、再生熱処理前後のボイド総数とクリープ強度(寿命消費率)との相関について記載されてはいるが、クリープボイドの存在形態に関する定量的な記載はなされていない。また、特許文献2では、クリープボイドの存在形態に関する記載は一切なされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−253337号公報
【特許文献2】特開2008−95133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、火力発電プラント等で使用されている耐熱鋼の多くは、結晶粒界でクリープボイドや亀裂が生成して破壊する形態を呈する。このような破壊に至る前の、粒界にクリープボイドが存在するクリープ劣化部に再生熱処理を施した場合、もとの結晶粒界とは異なる位置に粒界を有する新たな結晶粒が生成し、もとの結晶粒界は最終的には消滅する。一方、クリープボイドは、再生熱処理時に拘束状態が発生しない場合には再生熱処理の前後で存在位置や量の変化はないので、再生熱処理時に残存するクリープボイドは、新しく生成し、成長した結晶の粒内と粒界の両方の位置に存在することとなる。
【0009】
したがって、クリープ劣化部の延命化法として再生熱処理法を適用した場合、その延命化の程度をクリープボイドの総数だけで精度よく定量評価することは困難である。
【0010】
本発明は、高温での長時間使用によりクリープ劣化し、クリープボイドが残存している部位、特に溶接部等の劣化部を再生するに際し、耐熱鋼のクリープ劣化に深く係わるクリープボイドの存在形態(言い換えれば、結晶の粒内と粒界のいずれに存在しているか)を考慮したクリープ強度劣化部の再生熱処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するにあたり、再生熱処理によりクリープ劣化部材の組織を未使用の母材組織と同等にすることが前提になる。そのためには、前掲の特許文献1、2に記載されているように、被熱処理部をAc3変態点以上の温度で加熱保持する必要がある。また、クリープボイドの存在状態とクリープ強度との相関性を定量的に把握する必要がある。クリープ劣化に対して、結晶粒内ではなく粒界に存在しているボイドが影響を及ぼすからである。
【0012】
そこで、本発明者らは、2.25Cr−1Mo鋼の溶接継手の細粒熱影響部(HAZ)組織を模擬した再現細粒HAZ材を用いて、再生熱処理を行い、光学顕微鏡による組織観察と、走査電子顕微鏡(SEM)によるクリープボイド観察を実施するとともに、クリープ破断試験を行い、クリープボイドの存在状態とクリープ強度の相関性について調査した。
【0013】
その結果、後述する実施例に述べるように、再生熱処理後の部材の粒界に存在するクリープボイドの数と熱処理前の前記部材の粒界に存在するクリープボイドの数の比を0.3以下とすることにより、再現細粒HAZ材のクリープ強度を大きく回復させ、新材とのクリープ破断時間比で0.8以上となし得ることを知見した。そのときの熱処理条件について調査したところ、Larson Miller パラメータ(LMP)の値が24000以上となるような条件で再生熱処理を施すことが必要であることを確認した。
【0014】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、下記のクリープ強度劣化部の再生熱処理方法を要旨とする。
【0015】
すなわち、クリープボイドを生じている部材をAc3変態点以上の加熱温度に加熱して、オーステナイト変態を生じさせるクリープ強度劣化部の再生熱処理方法において、Ac3変態点以上の加熱温度で下記(1)式に示すLarson Miller パラメータの値(以下、「LMP値」と記す)が24000以上を満足する条件で熱処理を施し、熱処理前の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数に対する熱処理後の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数の比を0.3以下とすることを特徴とするクリープ強度劣化部の再生熱処理方法である。
LMP=(T+273)×(20+logt) ・・・(1)
ただし、T:加熱温度(℃)
t:加熱時間(h)
である。
【0016】
本発明のクリープ強度劣化部の再生熱処理方法において、前記加熱温度を、「Ac3変態点+30℃」から「Ac3変態点+70℃」の範囲内とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のクリープ強度劣化部の再生熱処理方法によれば、クリープ損傷により劣化した部位、特に溶接部等のクリープ劣化部を再生してクリープ強度を回復させることが可能である。クリープ破断時間を新材との比で0.8以上と大きくすることができ、クリープ劣化部の延命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】再生熱処理のパターンを模式的に例示する図で、(a)は焼きならし後、焼き戻し処理を行う場合、(b)は焼きなまし処理を行う場合である。
【図2】再生熱処理前後のボイド生成(または存在)形態を模式的に示す図で、(a)は再生熱処理前のボイドの生成形態を示す図、(b)は再生熱処理後のボイドの存在形態を示す図である。
【図3】再現細粒HAZ材の形状およびクリープ損傷を付与するための高周波熱処理を施す部位を示す外観図である。
【図4】環状切欠試験片の各部の寸法を示す図である。
【図5】クリープ損傷付与材の処理の流れを示す図である。
【図6】LMP値と新材に対するクリープ破断時間比との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のクリープ強度劣化部の再生熱処理方法は、前記のとおり、クリープボイドを生じている部材をAc3変態点以上の加熱温度に加熱して、オーステナイト変態を生じさせるクリープ強度劣化部の再生熱処理方法において、Ac3変態点以上の加熱温度で下記(1)式に示すLMP値が24000以上を満足する条件で熱処理を施し((1)式において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(h)である)、熱処理前の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数に対する熱処理後の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数の比を0.3以下とすることを特徴とするクリープ強度劣化部の再生熱処理方法である。
LMP=(T+273)×(20+logt) ・・・(1)
【0020】
本発明の再生熱処理方法において、クリープボイドを生じている部材をAc3変態点以上の加熱温度に加熱することを前提とするのは、この加熱処理によりクリープ劣化部材の組織を未使用の部材の組織と同等にすることができるからである。
【0021】
本発明の再生熱処理方法において、Ac3変態点以上の加熱温度で上記(1)式に示すLMP値が24000以上を満足する条件で、クリープボイドを生じている部材に熱処理を施すのは、熱処理前の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数に対する熱処理後の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数の比を0.3以下とし、クリープ強度の回復の程度を高めるためである。後述する実施例に示すように、LMP値を24000以上とすることにより、新材とのクリープ破断時間比を0.8以上に高めることができる。
【0022】
ここでは、Ac3変態点以上での加熱条件をLMP値で規定しているので、再生熱処理における加熱温度(T)、加熱時間(t)のそれぞれを適宜調整して、LMP値を24000以上とすればよい。
【0023】
図1は、再生熱処理のパターンを模式的に例示する図で、(a)は焼きならし後、焼き戻し処理を行う場合、(b)は焼きなまし処理を行う場合である。図1(a)では、Ac3変態点以上で所定時間加熱し、空冷した後、Ac1変態点より低い温度で焼き戻す。同図中に、「N.T.(Normalizing→Tempering)」と表示している。(b)はAc3変態点以上で所定時間加熱した後、炉内等で冷却速度を調整しつつ冷却する。同図中に、「A.(Annealing)」と表示している。(a)、(b)いずれのパターンの再生熱処理を採用してもよい。
【0024】
本発明の再生熱処理方法においては、熱処理前の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数に対する熱処理後の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数の比を0.3以下とする。これは、前述のように、クリープボイドを生じている部材のクリープ強度を大きく回復させるためである。
【0025】
図2は、再生熱処理前後のボイド生成(または存在)形態を模式的に示す図で、(a)は再生熱処理前のボイドの生成形態を示す図、(b)は再生熱処理後のボイドの存在形態を示す図である。この図は、SEMによりボイドを観察した結果を参照して模式的に示した図である。
【0026】
図2(a)に示すように、ボイド2は再生熱処理前の結晶粒界(旧粒界)1に生成する。このようなボイドが生成した部材に再生熱処理を施すと、新しい結晶粒が発生し、成長して再生熱処理を施した部分全体が新たな結晶によって置き換わる。すなわち、図2(b)に示すように、再生熱処理後の新粒界3が形成され、旧粒界5のボイド4は、新たな結晶の粒内または新粒界3に存在することとなる。なお、図2(b)において細線で示した粒界5は再生熱処理前の旧粒界1であり、説明の便宜上記載しているが、オーステナイト変態にともない、本発明の再生熱処理が完了した時点では消滅する。
【0027】
「熱処理前の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数」とは、図2(a)、(b)に示した部分がそれぞれ単位面積を表していると仮定すると、図2(a)に示される旧粒界1に生成したボイド2の数となる。ボイドは粒界にのみ生成するので、以下、「全ボイド数」ともいう。一方、「熱処理後の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数」とは、図2(b)に示されたボイドのうち、本発明の再生熱処理が完了した後に新粒界3に残ったボイドの数(これを、以下「粒界ボイド数」ともいう)である。すなわち、前記の規定は、全ボイド数に対する粒界ボイド数の比を0.3以下とすることを意味する。
【0028】
この比が0.3を超える場合は、亀裂発生に関与する粒界ボイドの比率が高く、クリープ劣化が進み易くなると考えられ、0.3以下とすることにより、クリープ劣化を遅延させ、新材とのクリープ破断時間比を0.8以上と大きくすることが可能となる。
【0029】
上記本発明のクリープ強度劣化部の再生熱処理方法において、加熱温度を、「Ac3変態点+30℃」から「Ac3変態点+70℃」の範囲内とすることが望ましい。加熱温度を「Ac3変態点+30℃」以上とすることにより、炭窒化物等の析出物の固溶を促進させるとともに、結晶を速やかに成長させ、再生熱処理の効率を高めることができる。一方、加熱温度を「Ac3変態点+70℃」以下とすることにより、結晶の粗大化を抑えて、部材の機械的性質を新材のそれと同等とすることができる。
【0030】
以上説明したように、本発明のクリープ強度劣化部の再生熱処理方法は、耐熱鋼のクリープ劣化に深く係わるクリープボイドの存在形態を考慮し、新たな結晶の粒界に存在するボイドの数(粒界ボイド数)の全ボイド数に対する比を所定値以下に制限している点に大きな特徴を有している。この再生熱処理方法によれば、クリープ損傷により劣化した部位、特に溶接部等のクリープ劣化部を再生して、新材とのクリープ破断時間比で0.8以上と大きくすることができ、クリープ劣化部の延命化を図ることができる。
【0031】
本発明のクリープ強度劣化部の再生熱処理方法は、結晶粒界にクリープボイドが生成し、クリープ劣化する耐熱鋼、例えば2.25Cr−1Mo鋼等の、特に溶接部のクリープ劣化部の再生、延命化に好適に利用できる。
【実施例】
【0032】
2.25Cr−1Mo鋼製溶接継手の細粒熱影響部(HAZ)組織を模擬した再現細粒HAZ材を用い、クリープボイド量の異なるクリープ損傷付与材を作製した。
【0033】
再現細粒HAZ材は、平行部直径15mmの試験片に対して、Ac3変態点(881℃)以上への急速加熱および急速冷却を含む高周波熱処理を施し、最後に715℃×4時間の応力除去焼なまし(SR)処理を施すことにより作製した。
【0034】
図3は、再現細粒HAZ材の形状および前記高周波熱処理を施した部位を示す外観図である。この再現細粒HAZ材の中央部付近の破線を施した部位(すなわち、軸方向に長さ10mmの部位)が模擬細粒HAZ組織となっている。
【0035】
クリープボイド量の異なるクリープ損傷付与材は、630℃×49MPa(5kgf/mm2)の単軸クリープ試験において、途中止め時間を600時間または1600時間と変化させることにより作製した。なお、単軸クリープ試験では、クリープボイドの生成を加速させるために、環状切欠試験片を用いた。
【0036】
図4は、環状切欠試験片の各部の寸法を示す図である。この試験片は、図3に示した再現細粒HAZ材を加工して作製したもので、同HAZ材の模擬細粒HAZ組織となっている部分が環状切欠試験片の中央部(切欠部分)に含まれている。図示するように、環状の切欠(ノッチ)を入れることによりその部分の応力分布が多軸応力分布になり、結晶粒が変形せず(伸びず)にボイドが発生する。
【0037】
このようにしてクリープ損傷を付与した環状切欠試験片から長さ50mmのクリープ損傷付与材を切り出した。
【0038】
図5は、このクリープ損傷付与材の処理の流れを示す図である。図示するように、環状切欠試験片から切り出した長さ50mmのクリープ損傷付与材を縦方向に半割り(二分割)し、片方はそのまま光学顕微鏡による組織観察およびSEMによるクリープボイドの調査に用いた。もう片方は再生熱処理を施した後、同様の調査を行った。再生熱処理は900〜950℃の温度範囲で、30分〜3時間保持することにより実施した。なお、前記所定時間保持後は炉内で徐冷した。
【0039】
再生熱処理材については、さらに、平行部の直径が5mm、平行部長さが10mmのクリープ破断試験片を切り出し、クリープ損傷を付与した試験条件(630℃×49MPa(5kgf/mm2))と同じ条件でクリープ破断試験を行い、再生熱処理による延命化効果の定量評価を行った。なお、延命化効果の検証には未損傷材(新材)との比較が必要となるため、未損傷材(新材)についても、クリープ損傷付与材と同じ試験片を使用し、同じ条件でクリープ破断試験を実施した。
【0040】
試験結果を表1にまとめて示す。なお、表1において、左欄の「クリープ試験時間」とは、クリープ損傷付与材を作製するためのクリープ試験における途中止め時間(600時間または1600時間)を意味する。
【0041】
【表1】

【0042】
表1に示すように、比較例のG、HおよびIはいずれも、再生熱処理温度がAc3変態点以上という条件は満たしているが、LMP値が24000未満で、全ボイド数に対する粒界ボイド数の比も0.3を超えており、クリープ破断時間は新材の80%をかなり下回った。一方、規定条件をすべて満たす本発明例のA〜Fでは、クリープ損傷付与材作製時における途中止め時間(600時間または1600時間)には関係なく、いずれもクリープ破断時間が新材の80%以上で、80%を大きく超えるケースもあり、クリープ劣化部の回復が顕著であった。
【0043】
図6は、表1の結果から、LMP値とクリープ破断時間の関係を図に表したもので、LMP値と新材に対するクリープ破断時間比との関係を示す図である。両者間には一定の相関性が認められ、LMP値が24000以上になると、新材とのクリープ破断時間比が0.8を大きく超え、顕著な再生効果が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のクリープ強度劣化部の再生熱処理方法は、耐熱鋼のクリープ劣化に深く係わるクリープボイドの存在形態を考慮した再生熱処理方法であり、クリープ損傷により劣化した部位、特に溶接部等のクリープ劣化部を再生してクリープ強度を回復させ、その延命化を図ることができる。
したがって、本発明の再生熱処理方法は、火力発電や化学工業プラント等で使用されている耐熱鋼におけるクリープ劣化部の再生に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1:再生熱処理前の結晶粒界(旧粒界)、 2:ボイド
3:再生熱処理後の新粒界、 4:旧粒界のボイド、 5:細線で示した粒界(旧粒界)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリープボイドを生じている部材をAc3変態点以上の加熱温度に加熱して、オーステナイト変態を生じさせるクリープ強度劣化部の再生熱処理方法において、
Ac3変態点以上の加熱温度で下記(1)式に示すLarson Miller パラメータ(LMP)の値が24000以上を満足する条件で熱処理を施し、
熱処理前の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数に対する熱処理後の前記部材の単位面積当たりの粒界に存在するクリープボイドの数の比を0.3以下とすることを特徴とするクリープ強度劣化部の再生熱処理方法。
LMP=(T+273)×(20+logt) ・・・(1)
ただし、T:加熱温度(℃)
t:加熱時間(h)
である。
【請求項2】
前記加熱温度を、「Ac3変態点+30℃」から「Ac3変態点+70℃」の範囲内とすることを特徴とする請求項1に記載のクリープ強度劣化部の再生熱処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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