説明

クリーム類

【課題】 クリームを凍結保存する場合に重要な解凍後の保型性が改善されたクリーム類、及び消費者の健康志向やライト志向に合致した、油っぽさの少ないあっさりとした味質のクリーム類を提供する。
【解決手段】 粉末還元水飴、好ましくは粉末高糖化還元水飴、更に好ましくは単糖類40〜60%、二糖類40〜60%を含有する粉末還元水飴を添加することにより、解凍後の保型性が改善され、油っぽさの少ないあっさりとした味質のクリーム類を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーム類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、大量生産したケーキ類を凍結保存し、流通させることが多くなってきたが、ホイップクリームを凍結保存する場合には、解凍後の保型性が重要となる。上記の問題点を解決するために、カラギーナン、グアーガム、アラビアガム、ペクチンなどの増粘剤を添加して保型性を保つ方法(例えば特許文献1から3を参照)や、ホイップしたクリ−ムとホイップしたクリ−ムよりも乳脂肪含量が高い非ホイップクリームの混合物を用いる方法(例えば特許文献4を参照)などが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−219909号公報
【特許文献2】特開平6−225720号公報
【特許文献3】特開2003−180280号公報
【特許文献4】特開2001−321074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の技術を用いた場合、増粘剤を添加する方法は味質的に問題が生じる場合があり、また、ホイップしたクリ−ムとホイップしたクリ−ムよりも乳脂肪含量が高い非ホイップクリームの混合物を用いる方法は工程が煩雑になるという問題点があった。さらに近年、消費者の健康志向やライト志向から油っぽさが敬遠されるようになってきており、クリーム類においても油っぽさの少ない、あっさりとしたものが好まれるようになってきた。そのためクリーム中の油脂分を低減することがあるが、この場合油脂分のもつ美味しさまで低減してしまうという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記のような従来提案の欠点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、粉末還元水飴を添加することによって、クリーム類の保型性や油っぽさが改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は粉末還元水飴を添加することにより、保型性や油っぽさが改善された、好ましくは、粉末高糖化還元水飴を含有することにより保型性や油っぽさが改善されたクリーム類に関する。また、更に好ましくは単糖類40〜60%、二糖類40〜60%を含有する粉末還元水飴を含有することにより保型性や油っぽさが改善されたクリーム類に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、粉末還元水飴が添加されていることを特徴とし、これによって、保型性、油っぽさが改善されたクリーム類を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に使用する粉末還元水飴としては、還元水飴を粉末化したものであればどのようなものでも良く、還元水飴を乾燥して得られたガラス状(アモルファス)粉末でも良いが、ハンドリング等を考えると還元水飴中のソルビトールとマルチトールが共に結晶化している共晶状態の粉末を用いることが好ましい。この共晶状態の粉末の一例として、特開2002−253167記載の粉末還元水飴が挙げられる。還元水飴の粉末化についてはどのような方法を用いても良い。還元水飴は、デンプンを酸や酵素等を用いて加水分解して得られた水飴を水素添加して製造するのが一般的であり、糖化度の高い水飴を水素添加したものを高糖化還元水飴というが、本発明における還元水飴は、どのような方法で調製しても良い。例として、別に調製した2種類以上の水飴や糖類を混合した混合物を水素添加したものでも良く、また、別に調製した2種類以上の糖アルコールや還元水飴を混合したものでも良い。さらには、調製した水飴をクロマト分離等で分画したものを水素添加したものでも良く、また、調製した還元水飴を、クロマト分離等で分画したものでも良い。
【0009】
本発明においてクリーム類とは、油相と水相とを混合し乳化したものであり、例として生クリーム、ホイップクリーム、バタークリーム、カスタードクリームなどが挙げられる。油相に用いる油脂の原料は、通常食用に用いられるものであれば何でも良く、例えば大豆油、菜種油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、胡麻油、パーム油、ヤシ油等の植物性油脂並びに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油等の動物性油脂が挙げられる。また、上記油脂類の混合油あるいは硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂(融点15〜40℃程度のもの)など一般にクリーム用に使用される油脂が使用できる。
【0010】
本発明では、油脂類、水、粉末還元水飴の他に、タンパク質、糖質、乳化剤、安定剤、各種リン酸塩、重炭酸ナトリウム、その他副原料(チョコレート、ココア、コーヒー、果汁、フルーツソース、抹茶、澱粉、加工澱粉、乳製品、保存料、色素、香料等)などを使用することが出来る。
【0011】
本発明のクリーム類を製造するには、従来公知の方法に準じて製造すればよく、例えば、油相と水相とを混合し予備乳化した後、均質化、殺菌もしくは滅菌処理、再均質化、冷却、エージングを行うことによって製造することができる。なお、殺菌もしくは滅菌(UHT)処理に前後して均質化処理もしくは攪拌処理することができ、均質化は前均質、後均質のどちらか一方でも、両者を組み合わせた二段均質でもよい。本発明におけるクリーム類は、これを天然の生クリームと混合しても効果が発揮される。
【0012】
本発明における粉末還元水飴は、クリーム類の1%以上添加すれば、保型性や油っぽさが改善されるといった効果が得られる。添加量を多くすると保型性や油っぽさがさらに改善されるが、添加量が多すぎると緩下性の問題が出てくるため、添加量は40%以下が好ましい。
【0013】
以下、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0014】
(製造例)
本発明における粉末還元水飴の製造例を示す。
還元水飴(ソルビトール46%、マルチトール50%、マルトトリイトール3%、デキストリンアルコール類1%)を100g(固形分換算)用い、これを固形分濃度99%に調製し、結晶種として特開2002−253167の実施例3記載の方法で調製した粉末還元水飴を40g添加し、80℃で約5分練合し、50℃の恒温室に保存した。24時間後、結晶化した本品を室温に取り出し、冷却後、乳鉢で粉砕し、乾燥したところ、粉末還元水飴135gを得た。この結晶粉末は室温に放置しても固結せず流動性を有し安定であった。
【実施例1】
【0015】
植物性クリーム(脂肪分45%)100gと糖質10gを泡立てないよう、静かに混ぜ合わせ糖質を溶解し、5℃まで冷却した後スイップマシンを用いてオーバーランが150〜160となるように調製した。糖質として、製造例の方法で調製した粉末還元水飴、砂糖、ソルビトール(日研化成株式会社製ソルビトールFP)、マルチトール(東和化成株式会社製アマルティMR)、ラクチトール(日研化成株式会社製ラクチトール日研)、トレハロース(株式会社林原製トレハオース)、ソルビトールとマルチトールの混合品(混合比率1:1)を使用した。ホイップクリームを絞り袋に入れ、アルミトレイに高さ約4cmに絞り出し(口金:星形)、-20℃で1ヶ月保存後、5℃で30分解凍後に35℃の恒温器で15分間保持した後、ホイップクリームの高さの変化を測定し、以下の式により変化率を求めた。変化率(%)=(はじめの高さ−保持後の高さ)/はじめの高さ×100。各種糖質によるクリーム保型性改善効果を表1に示す。変化率が少ないと保型性が良いということになるが、粉末還元水飴処方が最も変化率が少ない、つまり最も保型性が良いという結果となった。
【0016】
【表1】

【実施例2】
【0017】
実施例1と同様の配合で、オーバーラン150〜160となるようにスイップマシンで調製したホイップクリームを、−20℃で10日間冷凍し、5℃で6時間解凍後に官能検査を行った。最も油っぽい処方を1点、最も油っぽくない処方を7点として順番に点数を付けてもらい、平均点を算出した。クリームの油っぽさ(官能検査)の結果を表2に示す。この結果より粉末還元水飴処方が最も油っぽさが改善されることが確認された。
【0018】
【表2】

【実施例3】
【0019】
生クリーム100gと糖質10gを泡立てないよう、静かに混ぜ合わせ糖質を溶解し、5℃まで冷却した後スイップマシンを用いてオーバーランが150〜160となるように調製した。糖質として粉末還元水飴、砂糖、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、トレハロース、ソルビトールとマルチトールの混合品(混合比率1:1)を使用した。−20℃で10日間冷凍し、5℃で6時間解凍後に官能検査を行ったところ、粉末還元水飴処方がもっとも油っぽさが改善された。
【実施例4】
【0020】
卵白60gに糖質80gを加えて良く泡立て、バターを225g添加し良く混合する。ここにリキュールを15g添加しバタークリームを調製した。糖質として粉末還元水飴、砂糖、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、トレハロース、ソルビトールとマルチトールの混合品(混合比率1:1)を使用した。このバタークリームの官能検査を行ったところ、粉末還元水飴処方がもっとも油っぽさが改善された。
【実施例5】
【0021】
薄力粉40g、糖質80g、卵黄20g、牛乳600mlを混合し煮立て、バター20gを添加し冷却しカスタードクリームを調製した。糖質として粉末還元水飴、砂糖、ソルビトール、マルチトール、ラクチトール、トレハロース、ソルビトールとマルチトールの混合品(混合比率1:1)を使用した。このカスタードクリームの官能検査を行ったところ、粉末還元水飴処方がもっとも油っぽさが改善された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖質として粉末還元水飴を含有することを特徴とする、クリーム類。
【請求項2】
粉末還元水飴が粉末高糖化還元水飴であることを特徴とする、請求項1記載のクリーム類。
【請求項3】
粉末還元水飴の固形分当たりの糖組成が、単糖類が40〜60重量%、二糖類が40〜60重量%であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のクリーム類。
【請求項4】
粉末還元水飴の添加量が、クリーム重量の1%以上40%以下であることを特徴とする請求項1〜3記載のクリーム類。
【請求項5】
クリーム類がホイップクリームであることを特徴とする、請求項1〜4記載のクリーム類。
【請求項6】
クリーム類がバタークリームであることを特徴とする、請求項1〜4記載のクリーム類。


【公開番号】特開2006−50923(P2006−50923A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233881(P2004−233881)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000226415)日研化成株式会社 (30)
【Fターム(参考)】