説明

クレンジング化粧料

【課題】カロテノイドを高い安定性及び溶解性で含有すると共に優れた洗浄性を有するクレンジング化粧料を提供する。
【解決手段】(A)含有量が30質量%以上であって、I/O値が0.05〜0.25の範囲の第一の油性成分と、(B)含有量が10質量%を超え、脂肪族炭化水素鎖を有し且つ不飽和脂肪族炭化水素鎖を有しない液状の乳化剤と、(C)カロテノイドと、を含有するクレンジング化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
クレンジング化粧料は、油剤の溶剤効果を利用して油性汚れを肌より除去することを目的とする化粧料である。なかでもクレンジングオイルは、油剤を大量に含み、化粧持ちに優れたメークアップ化粧料に対して良好な洗浄性を示すクレンジング化粧料として知られている。
例えば、特許文献1には、所定のHLB値を有する非イオン性界面活性剤と液体油とを含有すると共に透明ないし半透明である非水クレンジング料が開示されており、この非水クレンジング料は、使用後に水により容易に乳化分散して、すすぎ落とせる優れた使用感を有すると記載されている。
特許文献2には、水溶性多価アルコールと、HLB7以上12未満のノニオン性界面活性剤と、HLB12以上のノニオン性界面活性剤と、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体とをそれぞれ所定量含むクレンジング化粧料が開示されており、このクレンジング化粧料について、クレンジング効果が優れ且つ使用中及び使用後の感触が良好であると記載されている。
また特許文献3には、保存安定性に優れ、使用性の良好な油状皮膚洗浄料として、常温液状油分と、HLB4〜15の非イオン性界面活性剤と、所定の2価アルコールとを、それぞれ所定量で含有し水を含有しない油状皮膚洗浄料が開示されている。
このようなクレンジング化粧料では、カロテノイド及びビタミンBなどの油溶性活性物質、ビタミンC及びビタミンBなどの水溶性活性物質など、種々の添加成分の添加が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−99275号公報
【特許文献2】特開2002−284672号公報
【特許文献3】特開2005−68082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クレンジング化粧料として要求される洗浄性は未だ十分とは言えない。また、カロテノイドなどの活性成分を添加成分としてクレンジング化粧料に添加する場合には、添加された成分がクレンジング化粧料中で均一に溶解し、且つ安定して存在しなければその活性が期待できない。
従って本発明は、カロテノイドを高い溶解性及び安定性で含有すると共に優れた洗浄性を有するクレンジング化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下のとおりである。
[1] (A)含有量が30質量%以上であって、I/O値が0.05〜0.25の範囲の第一の油性成分と、(B)含有量が10質量%を超え、脂肪族炭化水素鎖を有し且つ不飽和脂肪族炭化水素鎖を有しない液状の乳化剤と、(C)カロテノイドと、を含有するクレンジング化粧料。
[2] I/O値が0.05未満の第二の油性成分とI/O値が0.25を超える第三の油性成分との合計含有量が、前記第一の油性成分の含有量の80質量%以下である[1]に記載のクレンジング化粧料。
[3] 前記前記乳化剤が、非イオン性乳化剤である[1]又は[2]に記載のクレンジング化粧料。
[4] 前記前記乳化剤が、HLB6.0〜13.0の乳化剤である[1]〜[3]のいずれかに記載のクレンジング化粧料。
[5] 前記乳化剤が、炭素数18以下の脂肪族炭化水素鎖を有する乳化剤である[1]〜[4]のいずれかに記載のクレンジング化粧料。
[6] 前記乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択された少なくとも1種である[1]〜[5]のいずれかに記載のクレンジング化粧料。
[7] 前記乳化剤がポリグリセリン脂肪酸エステルである[1]〜[6]のいずれかに記載のクレンジング化粧料。
[8] 前記第一の油性成分が、エステル油、炭化水素油、シリコーン油及び油脂からなる群より選択された少なくとも1種である[1]〜[7]のいずれかに記載のクレンジング化粧料。
[9] 前記カロテノイドがアスタキサンチンである[1]〜[8]のいずれかに記載のクレンジング化粧料の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、カロテノイドを高い溶解性及び安定性で含有すると共に優れた洗浄性を有するクレンジング化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のクレンジング化粧料は、(A)含有量が30質量%以上であって、I/O値が0.05〜0.25の範囲の第一の油性成分と、(B)含有量が10質量%を超え、脂肪族炭化水素鎖を有し且つ不飽和脂肪族炭化水素鎖を有しない液状の乳化剤と、(C)カロテノイドと、を含有するクレンジング化粧料である。
【0008】
カロテノイドは種々の生理活性を示すことが知られているが、クレンジング化粧料中に存在させると、早期に分解する場合があり、またクレンジング化粧料に対する溶解性も十分に高くないことから、クレンジング化粧料中に均一に溶解しない場合があった。本発明によれば、このようなカロテノイドを含有するクレンジング化粧料であっても、中程度のI/O値を有する第一の油性成分と、脂肪族炭化水素鎖を有し且つ不飽和脂肪族炭化水素鎖を有しない液状の乳化剤とをそれぞれ所定量で含有するので、カロテノイドを高い溶解性及び安定性で含有すると共に優れた洗浄性を有することができる。
【0009】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本発明において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書においてI/O値とは、化合物あるいは置換基の親水性/親油性の尺度を表すパラメーターを意味する。「有機概念図」(甲田善生著・三共出版 1984年)にその詳細な解説があり、Iは無機性をOは有機性を表し、I/O値が大きいほど無機性が大きい(極性が高く、親水性が大きい)ことを示す。
以下、本発明について説明する。
【0010】
(A) 油性成分
本クレンジング化粧料では、油性成分として、I/O値が0.05〜0.25の範囲の第一の油性成分を30質量%以上含有する。
第一の油性成分のクレンジング化粧料における含有量が30質量%以下では、クレンジング化粧料中のカロテノイドを均一に溶解し且つ安定して含むことができない。カロテノイドの溶解性及び安定性の観点から、第一の油性成分の含有量は40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。クレンジング化粧料においては後述する他の成分の機能性を担保する観点から、第一の油性成分は85質量%以下であってもよく、65質量%以下であってもよい。
第一の油性成分のI/O値は、カロテノイド安定性とカロテノイド溶解性の観点から、0.075〜0.22の範囲であることが好ましく、0.10〜0.20の範囲であることがより好ましい。
【0011】
本クレンジング化粧料では、本発明の効果を妨げない範囲で他の油性成分を含んでいてもよい。他の油性成分としては、I/O値が0.05未満の第二の油性成分とI/O値が0.25超の第三の油性成分を挙げることができる。
第二の油性成分は、低極性の油性成分であって、カロテノイドの溶解性の観点からクレンジング化粧料中に30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。第二の油性成分が10質量%以下であれば、カロテノイドの溶解性を損なうことがなく、好ましい。
第三の油性成分は、高極性の油性成分であって、カロテノイドの分解性の観点からクレンジング化粧料中に30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。第三の油性成分が20質量以下であれば、カロテノイドの分解を十分に抑制し、安定性を損なわないため、好ましい。
【0012】
クレンジング化粧料に使用可能な第一の油性成分、第二の油性成分及び第三に油性成分の種類としては、クレンジング化粧料に通常用いられ、25℃で液状のものであれば特に制限はなく、エステル油、炭化水素油、シリコーン油、油脂及びこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0013】
例えば、セバシン酸ジエチル、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、オレイン酸エチル、トリカプリン酸カプリル酸グルセリル等のエステル油;流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン等の炭化水素油;ジメチルポリシロキサン、ポリメチルシクロシロキサン、ポリエーテル変性メチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン等のシリコーン油;オリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油等の液体油脂が挙げられる。
【0014】
中でも、エチルヘキサン酸セチル(I/O=0.13)、イソノナン酸トリデシル(I/O=0.14)、パルミチン酸イソプロリル(I/O=0.16)、ミリスチン酸イソプロピル(I/O=0.18)、パルミチン酸エチルヘキシル(I/O=0.20)、等は、第一の油性成分として使用することができる。これらは単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、カロテノイドの安定性と溶解性の観点からパルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシルが好ましい。
【0015】
クレンジング化粧料において第一の油性成分以外の油性成分を含有する場合、第一の油性成分を含む油性成分の合計量は、クレンジング化粧料の50質量%〜90質量%とすることができ、クレンジング落ちと刺激性の観点から55質量%〜85質量%とすることが好ましい。
クレンジング化粧料中のカロテノイドの溶解性及び安定性の観点から、第一の油性成分は、第二の油性成分及び第三の油性成分の合計含有量よりも多いことが好ましく、第二の油性成分と第三の油性成分との合計含有量が、前記第一の油性成分の含有量の80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以下、であることが最も好ましい。
【0016】
(B)乳化剤
本クレンジング化粧料は、脂肪族炭化水素鎖を有し且つ不飽和脂肪族炭化水素鎖を有しない液状の乳化剤を、10質量%を超える量で含む。本発明において「液状」とは、25℃において液状であることを意味する。不飽和脂肪族炭化水素鎖を有する乳化剤では、液状を維持しつつ、クレンジング化粧料中でカロテノイドを安定して保持することができない。
このような乳化剤がクレンジング化粧料中に10質量%以下では、クレンジング化粧料の洗浄性を損なう。クレンジング化粧料の洗浄性の観点から、このような乳化剤の含有量は15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることが更に好ましい。また、クレンジング化粧料の他の成分の機能を損なわないこと及び安全性の観点から、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることが更に好ましい。
【0017】
乳化剤の種類としては、クレンジング化粧料において通常用いられている乳化剤であれば特に制限はなく、カチオン性、アニオン性、両性、非イオン性の各乳化剤が挙げられるが、安全性の観点から非イオン性乳化剤が好ましい。非イオン性乳化剤のなかでも、本発明では、HLBが6.0〜13.0の範囲のものがクレンジングの落ちと水の観点から好ましい。
【0018】
ここで、HLBは、通常、界面活性剤の分野で使用される親水性−疎水性のバランスで、通常用いる計算式、例えば川上式等が使用できる。本発明においては、下記の川上式を採用する。
HLB=7+11.7log(M/M
ここで、Mは親水基の分子量、Mは疎水基の分子量である。
また、カタログ等に記載されているHLBの数値を使用してもよい。また、上記の式からも分かるように、HLBの加成性を利用して、任意のHLB値の界面活性剤を得ることができる。
【0019】
また乳化剤における脂肪族炭化水素鎖の炭素数は、乳化剤を液状の形態に維持できる範囲であれば特に制限はないが、液状を保つ観点から、炭素数18以下であることが好ましく、8〜16であることがより好ましく、10〜14であることが更に好ましい。
【0020】
非イオン性界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらの乳化剤は蒸留などで高度に精製されたものであることは必ずしも必要ではなく、反応混合物であってもよい。これらの非イオン性界面活性剤の中でも、メイク落ちの観点からポリグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、ポリグリセリン脂肪酸エステルが更に好ましい。
【0021】
ポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、HLBの観点から、その少なくとも一つが、平均重合度が6〜14のポリグリセリンと、炭素数14以下の脂肪酸、例えば、ミリスチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、カプリル酸、ヘプチル酸、カプロン酸等とのエステルであることが特に好ましい。
【0022】
このようなポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリントリミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリントリラウリン酸エステル、ヘキサグリセリントリカプリル酸エステル、ヘキサグリセリントリカプロン酸エステル、デカグリセリントリミリスチン酸エステル、デカグリセリントリラウリン酸エステル、デカグリセリントリカプリル酸エステル、デカグリセリントリカプロン酸エステル等が挙げられる。
本発明においては、これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0023】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、脂肪酸の炭素数が18以下のものが好ましい。ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい例としては、モノカプリル酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノミリスチン酸ソルビタン、セスキミリスチン酸ソルビタン、トリラウリン酸ソルビタン等が挙げられる。
本発明においては、これらのソルビタン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0024】
(C) カロテノイド
本発明のクレンジング化粧料には、カロテノイドが含まれている。カロテノイドは、黄色から赤のテルペノイド類の色素であり、植物類、藻類、及びバクテリア等の天然物のものが挙げられる。このカロテノイドは機能性の天然成分として利用されている。その一方で、皮脂汚れとしての過酸化脂質と構造的が類似しているため、過酸化脂質とのなじみがよく、洗浄成分として機能することが見出された。このため、カロテノイドは、本発明において洗浄成分としても利用されている。
本明細書における「機能性成分」とは、生体に適用した場合に、適用された生体において所定の生理学的効果の誘導が期待され得る成分を意味する。
【0025】
本発明に使用可能なカロテノイド類は天然由来のものに限定されない。常法に従って得られるものであればいずれのものも、本発明におけるカロテノイド類に含まれる。例えば、後述のカロテノイド類のカロチン類の多くは合成によっても製造されており、市販のβ−カロチンの多くは合成により製造されている。
カロテノイド類としては、炭化水素類(カロチン類)及びそれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられる。
【0026】
カロテノイド類としては、アクチニオエリスロール、ビキシン、アスタキサンチン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−8’−アポ−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロチン、β−カロチン、”カロチン”(α−及びβ−カロチン類の混合物)、γ−カロチン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオラキサンチン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類が挙げられる。
【0027】
本発明において用いられるカロテノイドとしては、取り扱い・乳化分散等の観点から好ましくは常温で油状のものである。特に好ましい例としては、酸化防止効果、抗炎症効果、皮膚老化防止効果、美白効果などを有し、黄色から赤色の範囲の着色料として知られているアスタキサンチンである。本発明におけるアスタキサンチンは、脂肪酸とのエステルであってもよい。
【0028】
アスタキサンチンは、天然物から分離・抽出したアスタキサンチン含有オイルとしてクレンジング化粧料に含まれてもよい。このようなアスタキサンチン含有オイルとしては、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物からの抽出物、ナンキョクオキアミ等からの抽出物を挙げることができる。
【0029】
本発明において用いることができるアスタキサンチンは、前記抽出物、またさらにこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また合成品であってもよい。前記アスタキサンチンとしては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(以下、ヘマトコッカス藻抽出物ともいう)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0030】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
【0031】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、天然物よりアセトン、エーテル、クロロホルム及びアルコール(エタノール、メタノール等)等の有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えて抽出することによって得たものであってもよく、市販品を用いてもよい。
市販品としては、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5O、同−5O、同−10O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstinSCE7等が挙げられる。
本発明において、ヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチンの色素純分としての含有量は、好ましくは0.001質量%〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01質量%〜25質量%である。
【0032】
クレンジング化粧料におけるカロテノイドの含有量は、機能的効果及び色味の観点から、0.00001質量%〜1質量%であることが好ましく、0.00005質量%〜0.5質量%であることがより好ましく、0.0001質量%〜0.1質量%であることが最も好ましい。
0.00001質量%以上であれば、カロテノイド含有の機能的効果を発揮するに良好となる傾向であり、0.0001質量%以上であれば、カロテノイドの高い効果が期待できる。一方、カロテノイドは色がついていることが特徴であり、色味の観点から、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることが最も好ましい。
【0033】
(D)その他の成分
クレンジング化粧料には、上記以外のその他の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。
クレンジング化粧料は、カロテノイドの溶剤としてビタミンE類を含有してもよい。ビタミンEを用いることによって、ビタミンEそのものの機能性が期待できると共に、カロテノイドの溶解性を向上させることができる。
ビタミンE類をカロテノイドの溶剤として使用する場合の含有量は、カロテノイドの溶解性・安定性付与の観点から、カロテノイドの質量の10倍〜100000倍であることが好ましく、100倍〜10000倍であることがより好ましい。
【0034】
ビタミンE類としては、特に限定されず、例えばトコフェロール及びその誘導体からなる化合物群、並びにトコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群から選ばれるものを挙げることができる。これらは単独で用いても、複数併用して用いてもよい。またトコフェノール及びその誘導体からなる化合物群とトコトリエノール及び誘導体からなる化合物群からそれぞれ選択されたものを組み合わせて使用してもよい。
【0035】
トコフェロール及びその誘導体からなる化合物群としては、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール;酢酸dl−α−トコフェロール、ニコチン酸−dl−α−トコフェロール、リノール酸−dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール等のカルボン酸エステルが含まれる。これらの内で、dl−α−トコフェロール、dl−β−トコフェロール、dl−γ−トコフェロール、dl−δ−トコフェロール、及び、これらの混合物(ミックストコフェロール)がより好ましい。また、トコフェロール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。
【0036】
トコトリエノール及びその誘導体からなる化合物群としては、α−トコトリエノール、β−トコトリエノール、γ−トコトリエノール、δ−トコトリエノール等や、これらのカルボン酸エステルが含まれる。また、トコトリエノール誘導体としては、これらの酢酸エステルが好ましく用いられる。トコトリエノールは麦類、米糠、パーム油等に含まれるトコフェロール類似化合物で、トコフェロールの側鎖部分に二重結合が3個含まれ、優れた酸化防止性能を有する。
【0037】
その他、本発明のクレンジング化粧料には、化粧品に常用されている添加剤を本発明の性能を損なわない範囲で配合してもよい。例えば、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールなどの多価アルコール;アルギン酸、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム等の水溶性高分子;ピロリドンカルボン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、食塩等の有機又は無機塩類;pH調整剤である酸及びアルカリ;殺菌剤;キレート剤;抗酸化剤;紫外線吸収剤;その他のビタミン類;顔料及び色素等を配合することができる。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」「部」は質量基準である。
【0039】
[実施例1]
下記の各成分を室温で攪拌溶解して、オイル試料Aを得た。なおアスタキサンチン類としては、ヘマトコッカス油(アスタキサンチン類含有率20質量%;武田紙器(株)製ASTOTS−S)を用いた。
パルミチン酸エチルヘキシル(I/O=0.20) 55部
トリカプリン酸カプリル酸グリセリル(I/O=0.30) 20部
トリラウリン酸ポリグリセリル−10(HLB=10.5) 25部
トコフェロール 0.5部
ヘマトコッカス油 0.0052部
[実施例2〜3、比較例1〜5]
表1の各成分を用いた以外は、実施例1と同様にして、オイル試料B〜Hを得た。
【0040】
[評価]
1.カロテノイド溶解性
カロテノイド溶解性は以下評価方法にて実施した。
オイル試料A〜Hで使用した油性成分に、カロテノイドを、オイル試料A〜Hと同様の量比となるように添加し、室温1時間攪拌を実施した。各オイル試料のカロテノイド溶解性評価は、目視にて行い、以下のように評価した。評価結果を表1に示す。
◎:カロテノイドが完全に溶解した水準
×:とけ残りがある水準。
【0041】
2.カロテノイド残存率
オイル試料A〜Hについて、調製直後と50℃1ヶ月間に維持した後のそれぞれで、試料中のカロテノイドの量を紫外線吸収スペクトル法に基づいて測定し、カロテノイドの紫外吸収変化量に基づいて、各オイル試料のカロテノイド残存率を算出した。残存率評価は、以下のように行った。評価結果を表1に示す。
◎:残存量が90%以上
○:残存量が80%以上
×:残存量が80%以下。
【0042】
3.洗浄性
市販のウォータープルーフマスカラを、PETベース(2cm×2cm)に塗布した。塗布から30分後に、塗布面に更に各オイル試料0.2gを添加し、1分間マッサージするようにして混合し、流水で洗い流した。各オイル試料のカロテノイド残存率評価は、以下のように行った。評価結果を表1に示す。
◎:完全にマスカラが取れた。
×:完全にマスカラが取れなかった。
【0043】
【表1】

【0044】
表1に示されるように、I/O値が中程度のパルミチン酸エチルヘキシル又はパルミチン酸イソプロピルを30質量%以上含有すると共に不飽和脂肪酸鎖を含まないトリラウリン酸ポリグリセリル−10を25質量%以上で含有する実施例1〜3のオイル試料A〜Cでは、カロテノイドの溶解性及び安定性が良好であり、洗浄性にも優れていた。
【0045】
従って、本発明によれば、カロテノイドを高い安定性及び溶解性で含むと共に洗浄性に優れたクレンジング化粧料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)含有量が30質量%以上であって、I/O値が0.05〜0.25の範囲の第一の油性成分と、
(B)含有量が10質量%を超え、脂肪族炭化水素鎖を有し且つ不飽和脂肪族炭化水素鎖を有しない液状の乳化剤と、
(C)カロテノイドと、
を含有するクレンジング化粧料。
【請求項2】
I/O値が0.05未満の第二の油性成分とI/O値が0.25を超える第三の油性成分との合計含有量が、前記第一の油性成分の含有量の80質量%以下である請求項1記載のクレンジング化粧料。
【請求項3】
前記乳化剤が、非イオン性乳化剤である請求項1又は請求項2記載のクレンジング化粧料。
【請求項4】
前記乳化剤が、HLB6.0〜13.0の乳化剤である請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のクレンジング化粧料。
【請求項5】
前記乳化剤が、炭素数18以下の脂肪族炭化水素鎖を有する乳化剤である請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のクレンジング化粧料。
【請求項6】
前記乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選択された少なくとも1種である請求項1〜請求項5のいずれか1項記載のクレンジング化粧料。
【請求項7】
前記乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のクレンジング化粧料。
【請求項8】
前記第一の油性成分が、エステル油、炭化水素油、シリコーン油及び油脂からなる群より選択された少なくとも1種である請求項1〜請求項7のいずれか1項記載のクレンジング化粧料。
【請求項9】
前記カロテノイドがアスタキサンチンである請求項1〜請求項8のいずれか1項記載のクレンジング化粧料。

【公開番号】特開2011−241156(P2011−241156A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112551(P2010−112551)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】