説明

クレーンの吊り荷位置監視システム及び吊り治具

【課題】吊り荷の位置を3次元的に検出し、監視することによって吊り荷を安全に昇降させることが可能なクレーンの吊り荷位置監視システム及び吊り治具を提供する。
【解決手段】吊り荷位置監視システム2は、吊り荷4の3次元座標を検出可能な吊り荷位置検出手段10と、吊り荷位置検出手段10による3次元座標の検出結果を送信するための無線送信手段11と、無線送信手段11より送信された検出結果を受信するための無線受信手段12と、を備えている。また、吊り荷4及びブーム6の姿勢を算出する計算手段50と、吊り荷4の位置及び傾斜角度と、フックブロック3の鉛直方向中心軸3aの位置と、ブーム6の先端部6aの位置と、ブーム6の起伏角度と、旋回部7の旋回角度及び旋回中心位置を表示するための表示手段60と、を更に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの吊り荷位置監視システム及び吊り治具に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンのオペレーターは、玉掛け時や揚重時において、吊り荷の状態及びフックブロックの位置を、肉眼による視認やブームの先端に取り付けられたカメラにて取得された映像により確認している。
【0003】
例えば、特許文献1には、クレーンのブームの先端部にズーム倍率を調整可能なカメラを垂下するように取り付けて、吊り荷及びフックブロックの位置を確認する照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−2369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した確認方法には、次のような問題点があった。
超高層構築予定構造物用のクレーンにおいては、オペレーターの位置やブームの先端部からフックブロックまでの距離が長いため、雨天時等に肉眼やカメラの映像では吊り荷及びフックブロックを確認することが困難である。
【0006】
また、超高層構築予定構造物用のクレーンのフックブロックやワイヤーロープは、風の影響を受け易く、例えば、400m揚程で風速10m/sec、20m/secの場合には、フックブロックが水平方向へそれぞれ15m、60m移動するという知見が得られている。このようにフックブロックが移動するとカメラの撮影範囲から外れてしまう場合がある。さらに、係る状態では、吊り荷の位置を確認できないので、吊り荷が周辺の機材等に接触する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、吊り荷の位置を3次元的に検出し、監視することによって吊り荷を安全に昇降させることが可能なクレーンの吊り荷位置監視システム及び吊り治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、クレーンの吊り荷位置監視システムであって、
吊り荷又は当該吊り荷を吊り下げるためのフックブロックに取り付けられ、前記吊り荷及び前記フックブロックの3次元座標を検出可能な吊り荷位置検出手段と、
前記吊り荷位置検出手段による3次元座標の検出結果を送信するための無線送信手段と、
前記無線送信手段より送信された前記検出結果を受信するための無線受信手段と、
前記無線受信手段にて受信した前記吊り荷の3次元座標の前記検出結果を表示するための表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、吊り荷位置検出手段にて吊り荷又はフックブロックの位置の3次元座標を検出し、その位置を表示手段に表示することができるので、吊り荷又はフックブロックの位置を3次元的に把握することができる。したがって、吊り荷又はフックブロックを肉眼やカメラの映像で確認できなくても、これらの位置を把握することができる。
【0010】
本発明は、前記フックブロックをワイヤーロープを介して支持するブームの先端部の3次元座標を検出可能なブーム先端位置検出手段と、
前記ブームの起伏角度を検出可能な起伏角度検出手段と、
前記ブームを旋回させるための旋回部の旋回角度を検出可能な旋回角度検出手段と、を更に備え、
前記表示手段は、前記ブーム先端位置検出手段による3次元座標の検出結果、前記起伏角度検出手段による検出結果、及び前記旋回角度検出手段による検出結果を表示する機能を有することとしてもよい。
【0011】
本発明によれば、ブーム先端位置検出手段にてブームの先端部の位置の3次元座標を検出し、その位置を表示手段に表示することができるので、ブームの先端部の位置を3次元的に把握することができる。したがって、ブームの先端部を肉眼やカメラの映像で確認できなくても、これらの位置を把握することができる。
また、起伏角度検出手段及び旋回角度検出手段にてブームの起伏角度及び旋回角度を検出し、その検出結果を表示手段に表示することができるので、ブームの位置を3次元的に把握することができる。
したがって、風等の影響で吊り荷が水平方向へ移動しても、吊り荷の移動に追随するようにブームを移動させて、吊り荷の横揺れを効率良く抑制することができる。すなわち、超高層構築予定構造物を構築する際にも安全に吊り荷の昇降作業を行うことができる。
【0012】
また、本発明において、前記吊り荷位置検出手段は複数設けられ、
複数の前記吊り荷位置検出手段による3次元座標の検出結果に基づいて、前記吊り荷の傾斜角度を計算する計算手段を更に備え、
前記表示手段は、前記計算手段による計算結果に基づいて、前記吊り荷の傾斜角度を表示する機能を有することとしてもよい。
【0013】
本発明によれば、吊り荷位置検出手段を複数備えているので、吊り荷の複数箇所の3次元座標を検出することができる。そして、それらの座標情報に基づいて計算手段により吊り荷の傾斜角度を算出することができる。すなわち、吊り荷を肉眼やカメラの映像で確認できなくても、吊り荷の傾きを把握することができる。したがって、吊り荷の荷崩れ等を防止し、安全に昇降作業を行うことができる。
【0014】
また、本発明において、前記計算手段は、前記複数の前記吊り荷位置検出手段による3次元座標の検出結果に基づいて、前記フックブロックの鉛直方向中心軸の位置の座標を計算する機能を有し、
前記表示手段は、前記計算手段による計算結果に基づいて、前記鉛直方向中心軸の位置の座標を表示する機能を有することとしてもよい。
【0015】
本発明によれば、吊り荷位置検出手段がフックブロックに直接取り付けられていない場合でも、所定の位置に配置された複数の吊り荷位置検出手段による検出結果に基づいて、計算手段によりフックブロックの鉛直方向中心軸の位置を算出し、その位置が表示手段に表示されるので、フックブロックの位置を把握することができる。したがって、超高層構築予定構造物を構築する際にも安全に吊り荷の昇降作業を行うことができる。
【0016】
また、本発明において、前記吊り荷位置検出手段による3次元座標の検出結果に基づいて、前記吊り荷位置検出手段が所定の作業範囲内からその外へ移動したことを検出する判定手段を更に備え、
前記判定手段は、前記吊り荷位置検出手段が所定の作業範囲内からその外へ移動した場合に、その旨を出力する機能を有することとしてもよい。
【0017】
本発明によれば、判定手段を備えているので、吊り荷が所定の作業範囲内からその外へ移動したことを検出するとともに、その旨が警告表示や警告音等にて出力されるので、吊り荷が所定の作業範囲内からその外へ移動したことを直ちに把握することができる。
【0018】
また、本発明において、前記吊り荷は、吊り治具を含むこととしてもよい。
【0019】
本発明によれば、吊り治具に吊り荷位置検出手段及び無線送信手段を取り付けることとすれば、運搬する資機材等にこれらの手段を取り付けなくてよい。これにより、運搬前後にこれらの手段を資機材等に着脱する手間を省くことができる。したがって、資機材等を短時間で効率良く運搬することができる。
【0020】
本発明は、吊り荷とフックブロックとの間に設けられる吊り治具であって、
3次元座標を検出可能な吊り荷位置検出手段と、
前記吊り荷位置検出手段による3次元座標の検出結果を送信するための無線送信手段と、
前記無線送信手段より送信された前記検出結果を受信するための無線受信手段と、が取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、吊り荷の位置を3次元的に検出し、監視することによって吊り荷を安全に昇降させることが可能なクレーンの吊り荷位置監視システム及び吊り治具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るクレーンの吊り荷位置監視システムの全体構成図である。
【図2】クレーンに吊り荷位置監視システムを取り付けた状態を示す側面図である。
【図3】クレーンに吊り荷位置監視システムを取り付けた状態を示す平面図である。
【図4】ブームの先端部及び吊り荷部分を拡大して示す図である。
【図5】判定部により表示手段に描画された表示画面の例を示す図である。
【図6】判定部により表示手段に描画された表示画面の例を示す図であり、吊り荷が作範囲外へ移動したときの状況を示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るクレーンの吊り荷位置監視システムの全体構成図である。また、図2及び図3は、それぞれクレーンに吊り荷位置監視システムを取り付けた状態を示す側面図及び平面図である。さらに、図4は、ブームの先端部及び吊り荷部分を拡大して示す図である。
【0025】
図1〜図4に示すように、クレーン1の吊り荷位置監視システム2は、フックブロック3と運搬する資機材等の吊り荷4との間に介在する吊り治具5に取り付けられ、吊り荷4の3次元座標を検出可能な吊り荷位置検出手段10と、吊り荷位置検出手段10による3次元座標の検出結果を送信するための無線送信手段11と、ブーム6の先端部6aに設けられ、無線送信手段11より送信された検出結果を受信するための無線受信手段12と、を備えている。
【0026】
吊り荷位置検出手段10は、吊り治具5の上面に、フックブロック3の鉛直方向中心軸3aを中心とした半径rの円周上に複数配置されている。
【0027】
また、吊り荷位置検出手段10は、それぞれ吊り荷用GPSアンテナ10aと吊り荷用GPS計測装置10bとから構成され、吊り荷用GPSアンテナ10aは吊り荷用GPS計測装置10bを介して、無線送信手段11に接続されている。
【0028】
吊り荷用GPS計測装置10bは、吊り荷用GPSアンテナ10aがGPS衛星からそれぞれ受信したGPS信号に基づいて、各アンテナ取付部位の3次元座標、すなわち緯度、経度、及び高度を検出する。
【0029】
なお、以下の説明では、2台の吊り荷用GPSアンテナ10aを吊り治具5に設置した場合について説明するが、この数に限定されるものでは無い。
【0030】
2台の吊り荷用GPSアンテナ10aの座標をそれぞれ(x11、y11、h11)、(x12、y12、h12)で表し、また、クレーン1の平面的な位置を旋回中心O1の絶対座標(X、Y)で表すものとする。ここで、一方の吊り荷用GPSアンテナ10aは、他方の吊り荷用GPSアンテナ10aの取付位置と、フックブロック3の鉛直方向中心軸3aとを含む鉛直平面内の位置に取り付けられている。
【0031】
無線送信手段11は、例えば無線LAN、携帯電話通信、赤外線通信、あるいはレーザ通信等の無線方式で通信を行う機能を有しており、無線受信手段12と通信を行うことができる。本実施形態では、無線送信手段11は無線受信手段12に向けて、GPS計測装置により検出された座標情報を送信する。そして、無線受信手段12が、無線送信手段11から、GPS計測装置にて検出した座標情報を受信する。
【0032】
また、吊り荷位置監視システム2は、ブーム6の先端部6aの3次元座標を検出可能なブーム先端位置検出手段20と、水平面内を旋回運動可能な旋回部7の、旋回中心位置から外れたクレーン1本体に取り付けられ、当該位置の3次元座標を検出可能なクレーン本体位置検出手段30と、ブーム先端位置検出手段20及びクレーン本体位置検出手段30による3次元座標の検出結果を受信する位置情報受信手段40と、運転室内に設置され、吊り荷4及びブーム6の姿勢を算出する計算手段50と、を更に備えている。
【0033】
ブーム先端位置検出手段20はブーム6の先端部6aに取り付けられている。また、クレーン本体位置検出手段30は、ブーム先端位置検出手段20の取付位置と、旋回部7の旋回中心O1とを含む鉛直平面内の位置に取り付けられている。
【0034】
ブーム先端位置検出手段20及びクレーン本体位置検出手段30は、それぞれブーム先端用GPSアンテナ20aとブーム先端用GPS計測装置20bと、クレーン本体用GPSアンテナ30aとクレーン本体用GPS計測装置30bと、から構成されている。そして、ブーム先端用GPSアンテナ20a及びクレーン本体用GPSアンテナ30aは、それぞれブーム先端用GPS計測装置20b及びクレーン本体用GPS計測装置30bを介して、位置情報受信手段40に接続されている。
【0035】
ブーム先端用GPS計測装置20b及びクレーン本体用GPS計測装置30bは、吊り荷用GPS計測装置10bと同様に、各GPSアンテナ20a、30aがGPS衛星からそれぞれ受信したGPS信号に基づいて、各GPSアンテナ20a、30a取付部位の3次元座標、すなわち緯度、経度、及び高度を検出する。
また、位置情報受信手段40は、両GPS計測装置20b、30bと通信を行う機能を有しており、両GPS計測装置20b、30bが検出した座標情報を受信する。
【0036】
計算手段50は、無線受信手段12が受信した複数の吊り荷位置検出手段10による3次元座標の検出結果に基づいて、吊り荷4の傾斜角度及びフックブロック3の鉛直方向中心軸3aの位置の座標を計算する機能を有する。
【0037】
再び、図1を参照して説明すると、計算手段50は、位置姿勢計算部51と、判定部52と、作業範囲記憶部53と、判定結果送信部54と、を備えている。
【0038】
位置姿勢計算部51は、無線受信手段12が受信した座標情報に基づいて、吊り荷4の傾斜角度及びフックブロック3の鉛直方向中心軸3aの位置を計算する機能を有している。より具体的には、各吊り荷用GPS計測装置10bにより計測された座標(x11、y11、h11)及び(x12、y12、h12)に基づいて、吊り荷4の傾斜角度θF及びフックブロック3の鉛直方向中心軸3aの位置(xF、yF、hF)を下式に従って計算する。
θF=tan−1[(h11−h12)/[{(x11−x12)+(y11−y12)}1/2]]
xF=(x11+x12)/2
yF=(y11+y12)/2
hF=(h11+h12)/2
【0039】
また、位置姿勢計算部51は、位置情報受信手段40が受信した座標情報に基づいて旋回部7の旋回角度を計算し、該計算した旋回角度と、クレーン本体位置検出手段30による3次元座標の検出結果と、クレーン本体位置検出手段30による検出部位の旋回中心位置に対する相対位置とに基づいて旋回中心位置の座標を計算し、該計算した旋回中心位置の座標と、ブーム先端位置検出手段20による3次元座標の検出結果と、ブーム6の起伏中心O2の旋回中心位置に対する相対位置とに基づいてブーム6の起伏角度を計算する機能を有する。
【0040】
なお、以下の説明では、図2及び図3に示す通り、クレーン本体用GPSアンテナ30aの取付位置と旋回中心O1との距離をL1、ブーム6の起伏中心O2と旋回中心O1との距離をL2、ブーム先端用GPSアンテナ20aの取付位置と起伏中心O2との距離をL3、クレーン本体用GPSアンテナ30aの取付位置の地上高をH1、起伏中心O2の地上高をH2で表すものとする。また、ブーム先端用GPSアンテナ20a及びクレーン本体用GPSアンテナ30aの座標をそれぞれ(x2、y2、h2)、(x3、y3、h3)で表すものとする。さらに、クレーン1の旋回角度をX軸方向からの角度φで表し、起伏角度を水平面からの角度θBで表すものとする。
【0041】
位置姿勢計算部51は、位置情報受信手段40が受信した座標情報に基づいて、クレーン1の位置及び姿勢を計算する。より具体的には、GPS計測装置により計測された座標(x2、y2、h2)及び(x3、y3、h3)に基づいて、旋回部7の旋回角度φ、旋回中心O1の絶対座標(X、Y)、及びブーム6の起伏角度θBを下式に従って計算する。
φ=tan−1{(y2−y3)/(x2−x3)}
X=x3+L1・cosφ
Y=y3+L1・sinφ
θB=tan−1[(h3−H2)/[{(x2−X)+(y2−Y)}1/2−L2]]
【0042】
作業範囲記憶部53には、建築現場の敷地内の作業範囲を現す3次元モデルデータが格納されている。
【0043】
判定部52は、吊り荷4の位置と、ブーム6の先端部6aの位置と、位置姿勢計算部51による吊り荷4の姿勢の計算結果と、位置姿勢計算部51によるクレーン1の位置及び姿勢の計算結果と、作業範囲記憶部53に記憶された作業範囲の3次元モデルデータとに基づいて、建築現場における吊り荷4及びクレーン1の状況を表示手段60(後述する)に描画すると共に、吊り荷4やブーム6の先端部6aの作業範囲内からその外への移動を検出する機能を有する。
また、吊り荷4やブーム6の先端部6aが作業範囲内からその外へ移動したと判定された場合には、例えば、警告表示を表示手段60に描画する機能を有する。
【0044】
判定結果送信部54は、判定部52により吊り荷4やブーム6の先端部6aが作業範囲内からその外へ移動したと判定された場合に、警報信号を警報装置70へ送信する。警報装置70は、この警報信号を受信した際に、例えば、光りの点滅や音による警報機能が設けられているものとする。
【0045】
図5は、判定部52により表示手段60に描画された表示画面の例を示す図である。
図5に示すように、表示手段60には、吊り荷4の位置及び傾斜角度と、フックブロック3の鉛直方向中心軸3aの位置と、ブーム6の先端部6aの位置と、ブーム6の起伏角度と、旋回部7の旋回角度及び旋回中心位置が表示されている。また、作業範囲外が警告領域(図中の斜線部)として表示されている。表示手段60には、吊り荷4の位置が表示されるので、吊り荷4の方位を把握することができる。
【0046】
本実施形態においては、表示手段60としてモニターを用いた。表示手段60は、運転席に設けられており、オペレーターはこの表示画面を見ながら吊り荷4の昇降操作、ブーム6の旋回及び起伏操作等を行う。
【0047】
図6は、判定部52により表示手段60に描画された表示画面の例を示す図であり、吊り荷4の一部が作範囲内から外へ移動したときの状況を示している。
図6に示すように、吊り荷4の一部やブーム6の先端部6aが作業範囲外へ移動した場合は、表示手段60に警告ランプが表示されるとともに、警報信号が判定結果送信部54から警報装置70へ送信され、警報装置70が作動する。
【0048】
上述した計算手段50は、コンピュータシステムにより構成されており、位置姿勢計算部51、判定部52及び判定結果送信部54はコンピュータがプログラムを実行することにより実現され、作業範囲記憶部53はコンピュータシステムが備えるハードディスク等の記憶装置に格納されている。
【0049】
以上説明した本実施形態におけるクレーン1の吊り荷位置監視システム2によれば、吊り荷位置検出手段10及びブーム先端位置検出手段20にて吊り荷4及びブーム6の先端部6aの位置の3次元座標を検出し、その位置を表示手段60に表示することができるので、吊り荷4及びブーム6の先端部6aの位置を3次元的に把握することができる。したがって、吊り荷4やブーム6の先端部6aを肉眼やカメラの映像で確認できなくても、これらの位置を把握することができる。
【0050】
また、ブーム6の先端部6aの座標情報に加えて、クレーン本体位置検出手段30にてクレーン1の一の部位の3次元座標を検出し、これらの検出結果を計算手段50にて計算することにより、旋回部7の旋回角度及びブーム6の起伏角度を算出することができる。
【0051】
そして、吊り荷4の位置、ブーム6の先端部6aの位置、旋回部7の旋回角度、ブーム6の起伏角度を把握することができるので、風等の影響で吊り荷4が水平方向へ移動しても、ブーム6を操作することにより吊り荷4の横揺れを効率良く抑制することができる。したがって、超高層構築予定構造物を構築する際にも安全に吊り荷4の昇降作業を行うことができる。
【0052】
また、吊り荷位置検出手段10を2台備えているので、吊り荷4の傾斜角度を算出することができる。すなわち、吊り荷4を肉眼やカメラの映像で確認できなくても、吊り荷4の傾きを把握し、吊り荷4の荷崩れ等を防止することができる。
【0053】
また、判定部52を備えているので、吊り荷4が所定の作業範囲内からその外へ移動したことを検出するとともに、その旨が表示手段60に表示されるので、吊り荷4が所定の作業範囲内からその外へ移動したことを直ちに把握することができる。
【0054】
また、吊り治具5に吊り荷位置検出手段10、無線送信手段11を取り付けることとすれば、運搬する資機材等の吊り荷4に直接これらの手段を取り付けなくてよい。これにより、運搬前後にこれらの手段を吊り荷4に着脱する手間を省くことができる。したがって、吊り荷4を短時間で効率良く運搬することができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、吊り荷位置検出手段10を吊り治具5に取り付けた場合について説明したが、これに限定されるものでは無く、例えば、フックブロック3から外方へ突出するように延長金物を設け、その延長金物に吊り荷位置検出手段10を取り付けてもよい。
【0056】
なお、本実施形態においては、クレーン本体位置検出手段30及び計算手段50を用いて旋回部7の旋回角度及びブーム6の起伏角度を算出したが、これに限定されるものでは無く、旋回角度及び起伏角度を計測するための検出手段、例えば、ロータリエンコーダをそれぞれ設けてもよい。
【0057】
なお、本発明の吊り荷位置監視システム2は、天井クレーン、ジブクレーン、タワークレーン、橋形クレーン等の各種クレーンに適用可能であり、クレーンの形式は問わない。
【符号の説明】
【0058】
1 クレーン
2 吊り荷位置監視システム
3 フックブロック
3a 鉛直方向中心軸
4 吊り荷
5 吊り治具
6 ブーム
6a 先端部
7 旋回部
10 吊り荷位置検出手段
10a 吊り荷用GPSアンテナ
10b 吊り荷用GPS計測装置
11 無線送信手段
12 無線受信手段
20 ブーム先端位置検出手段
20a ブーム先端用GPSアンテナ
20b ブーム先端用GPS計測装置
30 クレーン本体位置検出手段
30a クレーン本体用GPSアンテナ
30b クレーン本体用GPS計測装置
40 位置情報受信手段
50 計算手段
51 位置姿勢計算部
52 判定部
53 作業範囲記憶部
54 判定結果送信部
60 表示手段
70 警報装置
O1 旋回中心
O2 起伏中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの吊り荷位置監視システムであって、
吊り荷又は当該吊り荷を吊り下げるためのフックブロックに取り付けられ、前記吊り荷及び前記フックブロックの3次元座標を検出可能な吊り荷位置検出手段と、
前記吊り荷位置検出手段による3次元座標の検出結果を送信するための無線送信手段と、
前記無線送信手段より送信された前記検出結果を受信するための無線受信手段と、
前記無線受信手段にて受信した前記吊り荷の3次元座標の前記検出結果を表示するための表示手段と、
を備えることを特徴とするクレーンの吊り荷位置監視システム。
【請求項2】
前記フックブロックをワイヤーロープを介して支持するブームの先端部の3次元座標を検出可能なブーム先端位置検出手段と、
前記ブームの起伏角度を検出可能な起伏角度検出手段と、
前記ブームを旋回させるための旋回部の旋回角度を検出可能な旋回角度検出手段と、を更に備え、
前記表示手段は、前記ブーム先端位置検出手段による3次元座標の検出結果、前記起伏角度検出手段による検出結果、及び前記旋回角度検出手段による検出結果を表示する機能を有することを特徴とする請求項1に記載のクレーンの吊り荷位置監視システム。
【請求項3】
前記吊り荷位置検出手段は複数設けられ、
複数の前記吊り荷位置検出手段による3次元座標の検出結果に基づいて、前記吊り荷の傾斜角度を計算する計算手段を更に備え、
前記表示手段は、前記計算手段による計算結果に基づいて、前記吊り荷の傾斜角度を表示する機能を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のクレーンの吊り荷位置監視システム。
【請求項4】
前記計算手段は、前記複数の前記吊り荷位置検出手段による3次元座標の検出結果に基づいて、前記フックブロックの鉛直方向中心軸の位置の座標を計算する機能を有し、
前記表示手段は、前記計算手段による計算結果に基づいて、前記鉛直方向中心軸の位置の座標を表示する機能を有することを特徴とする請求項3に記載のクレーンの吊り荷位置監視システム。
【請求項5】
前記吊り荷位置検出手段による3次元座標の検出結果に基づいて、前記吊り荷位置検出手段が所定の作業範囲内からその外へ移動したことを検出する判定手段を更に備え、
前記判定手段は、前記吊り荷位置検出手段が所定の作業範囲内からその外へ移動した場合に、その旨を出力する機能を有することを特徴とする請求項1〜4のうち何れか一項に記載のクレーンの吊り荷位置監視システム。
【請求項6】
前記吊り荷は、吊り治具を含むことを特徴とする請求項1〜5のうち何れか一項に記載のクレーンの吊り荷位置監視システム。
【請求項7】
吊り荷とフックブロックとの間に設けられる吊り治具であって、
3次元座標を検出可能な吊り荷位置検出手段と、
前記吊り荷位置検出手段による3次元座標の検出結果を送信するための無線送信手段と、
前記無線送信手段より送信された前記検出結果を受信するための無線受信手段と、が取り付けられていることを特徴とする吊り治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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