説明

クレーン付車両及びこれを用いた被移送物の移送方法

【課題】地面に存在する障害物により移送不能となったり、被移送物を傷つけたり破損したりしてしまう危険性を回避するために、主線や搬器等を利用して被移送物を地面よりも上方で懸架した状態で移送する方法を容易に実行することができる新規なクレーン付車両及びこれを用いた被移送物の移送方法を提供する。
【解決手段】車両本体を構成するキャブと荷台との間に配置されたクレーンと,第1ないし第3のウインチと、ウインチ支持部材と、第2のウインチのワイヤの中途部が掛け渡される第2の滑車と、第3のウインチのワイヤの中途部が掛け渡される第3の滑車と、を備え、上記第2のウインチを構成する第2のワイヤは、車両本体の後方に張設されるとともに搬器を走行可能に支持するものであるとともに、上記第1及び第3のウインチは、上記搬器を往復動させる際に使用されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台の前部又はキャブの背後にクレーンが配置されたクレーン付車両及びこれを用いた被移送物の移送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで荷台の前部又はキャブの背後にクレーンが配置されたクレーン付車両は、その車両の用途に応じて様々な構成や機能を有するものが提案され実施されているが、基本的には、上記クレーンを用いて、車両の近傍に存在する荷物等を荷台に載置したり、荷台に載置された荷物等を降ろしたりして(荷役として)使用されている。なお、上記クレーンは、上方に起立したコラムと、このコラムの上端側に配置された軸を介して連結されたブームと、上記コラムを回動・回旋させる油圧モータと、上記軸を中心に上記ブームを回動するシリンダと、上記コラムに固定された油圧ウインチと、このウインチを構成し先端にフックが固定されたワイヤと、上記ブームの先端に配置され上記ワイヤの中途部が掛け渡された滑車等から構成されている。したがって、作業者では持ち上げることが困難な高重量の被移送物は、上記ワイヤの先端に固定されたフックに係止し、上記クレーンによって持ち上げ、荷台に積載したり或いは荷台に積載された被移送物を地上等に降ろしたりすることができる。
【0003】
また、こうした車両の近傍にある被移送物を荷台に積んだり、荷台の被移送物を車両の近傍に降ろしたりするのではなく、上記油圧ウインチからワイヤを引き出し、車両から離間した位置にある被移送物にフックを係止し、荷台に該被移送物を移送する方法ないしはそうした構造を持つクレーン付車両も提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に開示されたクレー付車両は、キャブの背後に、クレーンに配置された(ウインチを構成する)ワイヤをガイドするガイドローラを設け、テールゲートのインナパネルに該ワイヤを車両後方に案内する第2補助ローラを設けたものである。そして、こうした従来のクレーン付車両では、上記ワイヤの先端に固定されたフックを車両から離れた位置にある被移送物に係止させ、ウインチ(を構成するモータ)を駆動させることによりドラムにワイヤを巻回させて行くと、被移送物は地面(地表)に摺接しながら徐々に車両に近づき、やがて該車両を構成する荷台に移送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−100781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のクレーン付車両では、被移送物が地面に摺接しながら車両に近づく(移送される)ものであることから、以下に説明する様々な課題を有する。
【0006】
先ず、上記従来のクレーン付車両では、被移送物が通過するルートに障害物がある場合には、その障害物に当接し、それ以後の移送が不能となる場合が多い。例えば、上記従来のクレーン付車両を用いて、山林で伐採された伐倒木(被移送物)を荷台まで移送することを考えると、地面には多数の凹凸があるばかりか多数の切り株も存在し、伐倒木の移送途中にこれら切り株等に当接した場合には、該クレーン付車両まで伐倒木を移送することはできない。また、移送途中において、被移送物が壊れたり傷ついたりする危険性が高く、被移送物の価値を減殺してしまったり場合によっては無価値としてしまう場合もある。上記例のように、山林で伐採された伐倒木を荷台まで移送する場合、伐倒木に傷が付いてしまう可能性が高く、商品価値は大きく下がる。また、ヒューム管や土管等のように、割れたり欠けたりするコンクリートやセラミック等を素材とする被移送物を、上記特許文献1で開示された従来のクレーン付車両を使用して移送することはできない。
【0007】
ところで、山林では、主線(主索),滑車が取り付けられた搬器,2つの(第1及び第2の)ウインチを組み合わせた設備を用いて、伐採された伐倒木を集材場に移送・集材する方法が従来から採用されている。こうした設備は、詳細に説明すれば、種々のタイプに分けることができるが、概ね以下の通りである。すなわち、上記主線はワイヤ等の線材からなるものであり、一端と他端とをそれぞれ立木等に張設し、上記搬器は、この主線に沿って走行可能に支持させたものである。また、上記(第1及び第2の)ウインチは、搬器を主線の一端側と他端側とに渡って往復動させる目的で主に使用されるものであり、それぞれのウインチを構成するワイヤの先端にはフックが固定されている場合が多い。また、どちらかのウインチ(例えば、第1のウインチ)を構成するワイヤの中途部は、上記主線の端部(一端又は他端)の近傍に設置された中間滑車に掛け渡されている。また、上記中間滑車に中途部が掛け渡されている(第1のウインチを構成する)ワイヤとは異なる他のワイヤ(第2のウインチを構成するワイヤ)の中途部を、上記搬器に取り付けられている滑車に掛け渡し、先端に固定されたフックにより伐倒木を係止する。こうした設備では、上記第2のウインチを駆動させワイヤを巻上げると、被移送物は搬器に接近するように上昇し、宙づりの状態となされ、さらに第2のウインチを駆動させワイヤを巻上げて行くと、第2のウインチが設置された位置(主線の一端側)まで被移送物は搬器とともに移送され、逆に、上記第1のウインチを駆動すると、搬器は主線の他端側に移送される。このように、主線を張設し、この主線に沿って搬器を往復動させることにより被移送物を移送する方法は、被移送物を地面よりも上方で懸架した状態(宙づりとされた状態)で移送するものであり、上述したように、地面に被移送物を摺接させながら移送するものではないことから、障害物により移送不能となったり、被移送物を傷つけたり破損したりしてしまう危険性は相当低く、上記伐倒木ばかりではなく、種々の被移送物を移送する方法として利用価値は大きい。
【0008】
しかしながら、上記主線や搬器等を使用した被移送物の移送方法では、移送された被移送物は、クレーン車等により、或いはクレーン付車両に設けられているクレーンにより、トラック等の車両の荷台に移載しなければならず、搬器により移送された被移送物をそのまま荷台上に降ろすことはできない。換言すれば、上記主線や搬器等を使用した被移送物の移送方法では、別個にクレーン車等の重機やそれを操作する作業者が必要となり、少人数で効率の良い作業ができない。
【0009】
すなわち、上記特許文献1に開示されたクレーン付車両では、上述した種々の課題を有する一方、従来から使用されている主線や搬器等を用いた被移送物の移送方法では、被移送物をトラック等の車両の荷台に移載しなければならず、極めて効率性に欠ける
【0010】
そこで、本発明は、上記従来のクレーン付車両が有する課題を解決するために提案されたものであって、地面に存在する障害物により移送不能となったり、被移送物を傷つけたり破損したりしてしまう危険性を回避するために、主線や搬器等を利用して被移送物を地面よりも上方で懸架した状態で移送する方法を容易に実行することができる新規なクレーン付車両及びこれを用いた被移送物の移送方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、クレーン付車両に係るものであって、キャブの後方に荷台を有してなる車両本体と、上記キャブと荷台との間に配置されてなるとともにモータの駆動により旋回自在とされたクレーンと、このクレーンに配置され、先端に係止手段が配置された第1のワイヤを有する第1のウインチと、上記クレーンの先端側に配置され、上記第1のワイヤの中途部が掛け渡される第1の滑車と、上記クレーンの近傍に配置されたウインチ支持部材と、このウインチ支持部材に支持され、第2のワイヤを有する第2のウインチと、上記ウインチ支持部材に支持され、先端に係止手段が配置された第3のワイヤを有する第3のウインチと、上記クレーンに取り付けられ、第2のワイヤの中途部が掛け渡される第2の滑車と、上記クレーンに取り付けられ、第3のワイヤの中途部が掛け渡される第3の滑車と、を備え、上記第2のウインチを構成する第2のワイヤは、車両本体の後方に張設されるとともに搬器を走行可能に支持するものであるとともに、上記第1及び第3のウインチは、上記搬器を往復動させる際に使用されるものであることを特徴とするものである。
【0012】
上記第1の発明に係るクレーン付車両では、段落番号「0002」で説明した(油圧)ウインチ(本発明では、第1のウインチ)に加えて、第2及び第3のウインチを構成要素としていることから、例えば、上記第2のウインチを構成する第2のワイヤの先端を、このクレーン付車両から離間した位置に存在する立木やポール或いは重機等に固定し張設することにより、段落番号「0007」で説明した主線として利用し、この(第2の)ワイヤに、滑車を備えた搬器を走行可能に支持させることができる。また、この(第2の)ワイヤの先端近傍に、中間滑車を取り付け、この中間滑車に、上記第3のウインチを構成する第3のワイヤの中途部を掛け渡すとともに、先端に形成された係止手段を利用して上記搬器に係止させることができる。また、上記第1のウインチを構成する第1のワイヤの中途部を上記搬器に設けられた滑車に掛け渡すことができ、該第1のワイヤの先端に配置された第1の係止手段を利用して被移送物に係止させることができる。
【0013】
すなわち、この第1の発明に係るクレーン付車両によれば、上記第1ないし第3のウインチを利用して、被移送物を移送することができ、主線として使用される第2のワイヤは、車両本体の後方に張設されるものであり、搬器はこの第2のワイヤに支持されて往復動され、しかも、第1ないし第3のウインチはキャブと荷台との間に配置されていることから、(主線である第2のワイヤの張設長さにも依るが)車両本体から離間した被移送物に傷を付けることなく、また移送不能となることもなく安定した状態で移送することができ、移送した被移送物をそのまま荷台に積載することが可能となり、効率が良い。また、荷台に積載された被移送物を車両本体から離間した場所に移送する場合も、同じように、効率よく行うことが可能となる。
【0014】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記第3のウインチは、搬器を往動させる際に使用するものとされ、前記第2及び第3のウインチは、前記車両本体に対して着脱可能とされてなるとともに、前記第2のワイヤを第2の滑車から取り外すことが可能で且つ第3のワイヤを第3の滑車から取り外すことが可能とされてなるか、或いは、第2の滑車と第3の滑車とがクレーンから取り外すことが可能とされてなることを特徴とするものである。
【0015】
この第2の発明は、先ず、第3のウインチは、搬器を往動させる際に使用するものとされている。すなわち、第3のウインチは、第2のウインチを構成する第2のワイヤに支持された搬器を該第2のワイヤの先端側に移動させる(往動させる)ことを目的とした専用のウインチとされている。そして、前記第2のウインチと第3のウインチとは、前記車両本体に対して着脱可能とされている。すなわち、ウインチ支持部材に支持された第2及び第3のウインチは、該ウインチ支持部材から取り外し、(例えば)地上に載置することが可能とされている。次に、この第2の発明では、前記第2のワイヤを第2の滑車から取り外すことが可能で且つ第3のワイヤを第3の滑車から取り外すことが可能とされてなるか、或いは、第2の滑車と第3の滑車とがクレーンから取り外すことが可能とされている。前者のように、前記第2のワイヤを第2の滑車から取り外すことが可能で且つ第3のワイヤを第3の滑車から取り外すことが可能とされてなる場合には、それまで主線として張設されていた第2のウインチと第3のウインチとをそれぞれ地上に載置し、第2の滑車からは第2のワイヤを第3の滑車からは第3のワイヤをそれぞれ取り外す。或いは、第2の滑車と第3の滑車とがクレーンから取り外すことが可能とされている。つまり、この第2の発明では、第2及び第3のウインチを取り外すとともに、第2及び第3の滑車とをそれぞれ取り外すか、該第2の滑車から第2のワイヤを取り外し、第3の滑車から第3のワイヤを取り外すことができるようにされている。なお、前述したように、第3のウインチは、搬器を往動させる際に使用するものであるから、必然的に第1のウインチは、搬器を該第2のワイヤの基端側に移動させる(復動させる)ことを目的とした専用のウインチとなり、該第1のウインチを構成する第1のワイヤの先端に形成された第1の係止手段を介して搬器に係止されている場合には、その係止状態を解除し、或いは、搬器に設けられた滑車に第1のワイヤが掛け渡され、該第1のワイヤの先端に形成された係止手段により被移送物に係止されている場合には、その被移送物と第1の係止手段との係止状態を解除することができる。
【0016】
したがって、この第2の発明に係るクレーン付車両によれば、主線や搬器等を利用して、(例えば)多数の被移送物を荷台に積載する作業が終了した場合には、第2及び第3のウインチを取り外すとともに、第2及び第3の滑車とをそれぞれ取り外すか、該第2の滑車から第2のワイヤを取り外し、第3の滑車から第3のワイヤを取り外し、第1のワイヤの先端に形成された第1の係止手段と搬器又は被移送物との係止手段との係止状態を解除することにより、そのまま運転して他所に該被移送物を運搬することが可能となる。或いは、荷台に多数積載された被移送物を全て、該クレーン付車両から離間した他所に移送する作業が終了した場合、第2及び第3のウインチを取り外すとともに、第2及び第3の滑車とをそれぞれ取り外すか、該第2の滑車から第2のワイヤを取り外し、第3の滑車から第3のワイヤを取り外し、第1のワイヤの先端に形成された第1の係止手段と搬器又は被移送物との係止手段との係止状態を解除することにより、そのまま運転して被移送物を積載して再び戻ってくることが可能となる。
【0017】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第2の発明において、前記車両本体には、前記第2のウインチと第3のウインチを支持する第2のウインチ支持部材が設けられ、この第2のウインチ支持部材には、前記ウインチ支持部材に支持された第2及び第3のウインチの方向性を90度変更して支持できるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0018】
この第3の発明に係るクレーン付車両では、前記第2のウインチと第3のウインチを支持する第2のウインチ支持部材が設けられ、この第2のウインチ支持部材には、前記ウインチ支持部材に支持された第2及び第3のウインチの方向性を90度変更して支持できるように構成されてなることから、車両本体の長さ方向に被移送物を移送するようにセットされた状態から、該車両本体の長さ方向と直交する方向に被移送物を移送することが可能となる。すなわち、この第3の発明に係るクレーン付車両によれば、(例えば)それまで車両本体の長さ方向に(第2のワイヤ)主線を張設して被移送物を移送している状態から、クレーンを90度旋回させるとともに、上記第2のウインチと第3のウインチとをウインチ支持部材上から取り外し、第2のウインチ支持部材上に取り付け、その上で先に説明したように(第2のワイヤにより)主線を張設し、該主線に搬器を支持させるなどすれば、車両本体の側方に被移送物を移送することが可能となる。換言すれば、この第3の発明に係るクレーン付車両によれば、車両本体の長さ方向に被移送物を移送することもできるし、車両本体の長さ方向と直交する方向に被移送物を移送することも可能となる。
【0019】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第1,第2又は第3の発明の何れかにおいて、前記第1のウインチを構成する第1のワイヤの先端側中途部には、一方の搬器用係止手段が配置され、前記第3のウインチを構成する第3のワイヤの先端側中途部には、他方の搬器用係止手段が配置されてなることを特徴とするものである。
【0020】
この第4の発明に係るクレーン付車両は、後述する(請求項6記載の発明に係る)被移送物の移送方法を実施する際に使用されるものであり、二つの固定滑車(往動側固定滑車と復動側固定滑車)を備えた搬器を用いるとともに、これら二つの固定滑車(往動側固定滑車と復動側固定滑車)に中途部が掛け渡されたそれぞれの(二つの)ワイヤで被移送物を支持しながら被移送物を移送する場合に使用されるクレーン付車両である。なお、上記二つのワイヤは、請求項1記載の発明の構成要素である第1のウインチを構成する第1のワイヤと、第3のウインチを構成する第3のワイヤである。そして、この第4の発明では、第1のウインチを構成する第1のワイヤの先端側中途部には、一方の搬器用係止手段が配置され、前記第3のウインチを構成する第3のワイヤの先端側中途部には、他方の搬器用係止手段が配置されている。上記一方の搬器用係止手段も他方の搬器用係止手段も、搬器に係止される機能を有したものであり、例えば、第1のワイヤに配置された一方の搬器用係止手段を搬器(に形成された往動側係止手段又は復動側係止手段)に係止させれば、該第1のワイヤの先端に形成された第1の係止手段を介して被移送物を支持している場合、第1のウインチがフリーの状態でも、該被移送物は下降しない。同様に、第3のワイヤに配置された他方の搬器用係止手段を搬器(に形成された復動側係止手段又は往動側係止手段)に係止させれば、該第3のワイヤの先端に形成された第3の係止手段を介して被移送物を支持している場合、第3のウインチがフリーの状態でも、該被移送物は下降しない。すなわち、このクレーン付車両によれば、第6の発明として記載した被移送物の移送方法のように、往動側固定滑車と復動側固定滑車との二つの固定滑車を備えた搬器を使用し、この往動側固定滑車には、(例えば)第1のウインチを構成する第1のワイヤの中途部を掛け渡し、上記複動側固定滑車には、第3のウインチを構成する第3のワイヤの中途部を掛け渡し、該第1及び第3のワイヤの先端に形成された第1又は第3の係止手段を介して被移送物を支持した状態で被移送物を移送する場合であって、上記第1のウインチと第3のウインチとを交互に駆動させて搬器を往復動させる際、第1のウインチが駆動している場合は第3のウインチはフリーの状態であり、第3のウインチが駆動している場合は第1のウインチはフリーの状態としたときであっても、該フリーとされた(第1又は第3の)ウインチを構成する(第1又は第3の)ワイヤを、一方又は他方の搬器用係止手段を上記搬器(を構成する往動側係止手段又は復動側係止手段)に係止させることにより、被移送物が鉛直方向に垂れ下がった状態となることを防止することができ、該被移送物を水平又はそれに近い姿勢で移送することができる。
【0021】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、前記第1ないし第3の発明に係るクレーン付車両を用いた被移送物の移送方法に係るものであって、前記第2のウインチを構成する第2のワイヤを、その中途部を前記第2の滑車に掛け渡して前記車両本体の後方に引き延ばすとともに、該車両本体から離間した位置に固定し、該第2のワイヤを主線として張設し、この主線である第2のワイヤに、搬器側滑車を備えた搬器を該第2のワイヤに沿って走行可能に支持させ、前記第1のウインチを構成する第1のワイヤ又は第3のウインチを構成する第3のワイヤの何れか一方のワイヤの中途部を、前記第1の滑車又は第3の滑車の何れかと、上記搬器側滑車とに掛け渡し、上記搬器側滑車に掛け渡された一方のワイヤの先端に配置された係止手段を用いて被移送物を係止し、上記主線である第2のウインチの先端側に中間滑車を配置し、上記第1のウインチを構成する第1のワイヤ又は第3のウインチを構成する第3のワイヤの何れか一方のワイヤとは異なる他方のワイヤを、その中途部を上記中間滑車に掛け渡すとともに該他方のワイヤの先端に配置された係止手段を介して上記搬器に係止させ、上記第3のウインチと第1のウインチとをそれぞれ交互に駆動させることにより、上記搬器を往復動させて被移送物を移送することを特徴とするものである。
【0022】
この第5の発明に係る被移送物の移送方法、特に、第1の発明(請求項1記載の発明)に係るクレーン付車両を用いた被移送物の移送方法によれば、先に説明したように、搬器の往復動により移送した被移送物を、特別な重機を使用することなく、そのまま荷台で降ろし積載することが可能となり、或いは、荷台に積載した被移送物を車両本体から離間した場所に移送することができる。また、第2の発明(請求項2記載の発明)に係るクレーン付車両を用いた被移送物の移送方法によれば、第2のウインチや第3のウインチを取り外す等することにより、このクレーン付車両を運転して荷台に積載した被移送物を他所に移送することができ、或いは、荷台から被移送物を他所に移送した後に、第2のウインチや第3のウインチを取り外す等し、その後このクレーン付車両を運転して再び被移送物を積載した状態に戻り、取り外した第2及び第3のウインチ等を再び取り付け、被移送物を他所に移送することができる。また、第3の発明(請求項3記載の発明)に係るクレーン付車両を用いた被移送物の移送方法によれば、第2及び第3のウインチを第2のウインチ支持部材に支持させ、クレーンを90度旋回することにより、車両本体の長さ方向に被移送物を移送することも可能となる。
【0023】
また、第6の発明(請求項5記載の発明)は、前記請求項4記載の発明に係るクレーン付車両を用いた被移送物の移送方法に係るものであって、前記第2のウインチを構成する第2のワイヤを、その中途部を前記第2の滑車に掛け渡し、前記車両本体の後方に引き延ばすとともに、該車両本体から離間した位置に固定し、該第2のワイヤを主線として張設し、この主線である第2のワイヤの先端側には、中間滑車を配置し、上記主線である第2のワイヤに、往動側固定滑車と複動側固定滑車と、該往動側固定滑車と複動側固定滑車との間に配置された往動側係止手段と複動側係止手段を備えてなる搬器を、該第2のワイヤに沿って走行可能に支持させ、前記第1のウインチを構成する第1のワイヤ又は第3のウインチを構成する第3のワイヤの何れか一方のワイヤの中途部を、上記中間滑車と上記往動側固定滑車とに掛け渡し、上記一方のワイヤとは異なる他方のワイヤの中途部を、上記複動側固定滑車に掛け渡し、上記第3のウインチと第1のウインチとをそれぞれ交互に駆動させるとことにより、上記搬器を往復動させて被移送物を移送するとともに、上記搬器を往動させる際には、前記一方の搬器用係止手段又は他方の係止手段の何れか一方を上記往動側係止手段に係止させ、該搬器を複動させる場合には、前記一方の搬器用係止手段又は他方の係止手段の何れか他方を上記複動側係止手段に係止させて、被移送物の移送を行うことを特徴とするものである。
【0024】
上記第6の発明に係る被移送物の移送方法は、第4の発明(請求項4記載の発明)に係るクレーン付車両を使用するとともに、主線である第2のワイヤには、往動側固定滑車と複動側固定滑車と、該往動側固定滑車と複動側固定滑車との間に配置された往動側係止手段と複動側係止手段を備えてなる搬器を、該主線(第2のワイヤ)に走行可能に支持させるものである。上記第4の発明(請求項4記載の発明)に係るクレーン付車両は、先に説明した通り、第1のワイヤの先端側中途部には、一方の搬器用係止手段が配置され、第3のワイヤの先端側中途部には、他方の搬器用係止手段は配置されている。上記一方又は他方の搬器用係止手段は、上記往動側係止手段又は複動側係止手段に係止される部位である。したがって、上記第3のウインチと第1のウインチとをそれぞれ交互に駆動させるとことにより、上記搬器を往復動させて被移送物を移送するとともに、上記搬器を往動させる際には、前記一方の搬器用係止手段又は他方の係止手段の何れか一方を上記往動側係止手段に係止させ、該搬器を複動させる場合には、前記一方の搬器用係止手段又は他方の係止手段の何れか他方を上記複動側係止手段に係止させて、被移送物の移送を行うことにより、被移送物が鉛直方向に垂れ下がった状態となることを防止することができ、該被移送物を水平又はそれに近い姿勢で移送することができる。
【発明の効果】
【0025】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係るクレーン付車両によれば、上記第1ないし第3のウインチを利用して、被移送物を移送することができ、主線として使用される第2のワイヤは、車両本体の後方に張設されるものであり、搬器はこの第2のワイヤに支持されて往復動され、しかも、第1ないし第3のウインチはキャブと荷台との間に配置されていることから、(主線である第2のワイヤの張設長さにも依るが)車両本体から離間した被移送物に傷を付けることなく、また移送不能となることもなく安定した状態で移送することができ、移送した被移送物をそのまま荷台に積載することが可能となり、効率が良い。また、荷台に積載された被移送物を車両本体から離間した場所に移送する場合も、同じように、効率よく行うことが可能となる。
【0026】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)に係るクレーン付車両では、第3のウインチは、搬器を往動させる際に使用するものとされ、前記第2及び第3のウインチは、前記車両本体に対して着脱可能とされてなるとともに、前記第2のワイヤを第2の滑車から取り外すことが可能で且つ第3のワイヤを第3の滑車から取り外すことが可能とされてなるか、或いは、第2の滑車と第3の滑車とがクレーンから取り外すことが可能とされてなることから、主線や搬器等を利用して、(例えば)多数の被移送物を荷台に積載する作業が終了した場合には、第2及び第3のウインチを取り外すとともに、第2及び第3の滑車とをそれぞれ取り外すか、該第2の滑車から第2のワイヤを取り外し、第3の滑車から第3のワイヤを取り外し、第1のワイヤの先端に形成された第1の係止手段と搬器又は被移送物との係止手段との係止状態を解除することにより、そのまま運転して他所に該被移送物を運搬することが可能となる。或いは、荷台に多数積載された被移送物を全て、該クレーン付車両から離間した他所に移送する作業が終了した場合、第2及び第3のウインチを取り外すとともに、第2及び第3の滑車とをそれぞれ取り外すか、該第2の滑車から第2のワイヤを取り外し、第3の滑車から第3のワイヤを取り外し、第1のワイヤの先端に形成された第1の係止手段と搬器又は被移送物との係止手段との係止状態を解除することにより、そのまま運転して被移送物を積載して再び戻ってくることが可能となる。
【0027】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)に係るクレーン付車両では、前記第2のウインチと第3のウインチを支持する第2のウインチ支持部材が設けられ、この第2のウインチ支持部材には、前記ウインチ支持部材に支持された第2及び第3のウインチの方向性を90度変更して支持できるように構成されてなることから、車両本体の長さ方向に被移送物を移送するようにセットされた状態から、該車両本体の長さ方向と直交する方向に被移送物を移送することが可能となる。すなわち、この第3の発明に係るクレーン付車両によれば、(例えば)それまで車両本体の長さ方向に(第2のワイヤ)主線を張設して被移送物を移送している状態から、クレーンを90度旋回させるとともに、上記第2のウインチと第3のウインチとをウインチ支持部材上から取り外し、第2のウインチ支持部材上に取り付け、その上で先に説明したように(第2のワイヤにより)主線を張設し、該主線に搬器を支持させるなどすれば、車両本体の側方に被移送物を移送することが可能となる。換言すれば、この第3の発明に係るクレーン付車両によれば、車両本体の長さ方向に被移送物を移送することもできるし、車両本体の長さ方向と直交する方向に被移送物を移送することも可能となる。
【0028】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)や、第6の発明(請求項6記載の発明)に係るクレーン付車両を用いた被移送物の移送方法によれば、被移送物が鉛直方向に垂れ下がった状態となることを防止することができ、該被移送物を水平又はそれに近い姿勢で移送することができる。
【0029】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)に係るクレーン付車両を用いた被移送物の移送方法によれば、搬器の往復動により移送した被移送物を、特別な重機を使用することなく、そのまま荷台で降ろし積載することが可能となり、或いは、荷台に積載した被移送物を車両本体から離間した場所に移送することができる。特に、第2の発明(請求項2記載の発明)に係るクレーン付車両を用いた被移送物の移送方法によれば、第2のウインチや第3のウインチを取り外す等することにより、このクレーン付車両を運転して荷台に積載した被移送物を他所に移送することができ、或いは、荷台から被移送物を他所に移送した後に、第2のウインチや第3のウインチを取り外す等し、その後このクレーン付車両を運転して再び被移送物を積載した状態で戻り、取り外した第2及び第3のウインチ等を再び取り付け、被移送物を他所に移送することができる。また、第3の発明(請求項3記載の発明)に係るクレーン付車両を用いた被移送物の移送方法によれば、第2及び第3のウインチを第2のウインチ支持部材に支持させ、クレーンを90度旋回することにより、車両本体の長さ方向に被移送物を移送することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】クレーン付車両を示す斜視図である。
【図2】図1に示すクレーン付車両のクレーン近傍を拡大して示す斜視図である。
【図3】図2に示す状態からクレーンが90度旋回した状態を示す斜視図である。
【図4】クレーンの先端側をさらに拡大して示す斜視図である。
【図5】油圧ポンプに接続されている各ウインチやシリンダ等を示すブロック図である。
【図6】図1に示すクレーン付車両を用いて伐倒木を移送している状態を模式的に示す側面図である。
【図7】図6に示す状態から伐倒木がクレーン付車両の荷台上まで移送された後の状態を示す側面図である。
【図8】クレーン付車両のクレーンを図3に示す状態に旋回した状態で伐倒木を移送している状態を模式的に示す正面図である。
【図9】図9に示す状態から伐倒木がクレーン付車両の近傍まで移送された後の状態を示す側面図である。
【図10】図1に示すクレーン付車両を用いて埋設管を移送している状態を模式的に示す側面図である。
【図11】図10に示す搬器及びその周辺の部材の構成を一部分解する等し又拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための最良の形態に係るクレーン付車両及びこのクレーン付車両を用いた被移送物の移送方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
この実施の形態に係るクレーン付車両1は、図1に示すように、車両本体2と、この車両本体2に配置されたクレーン3とを備えている。上記車両本体2は、作業者が運転時に着座するキャブ4と、このキャブ4の後方に配置された荷台5とを備えている。
【0033】
上記荷台5は、フロアボード5aと、このフロアボード5aの左右から起立してなる側パネル5b,5cと、上記フロアボード5aの後部から起立してなるリアパネル5dと、上記フロアボード5aのフロント側から起立してなると共に、ほぼ上記キャブ4の天井高さと同じ高さとされた前立てボード5eとから構成されている。なお、上記リアパネル5dの下端は、図示しない蝶番を介してフロアボード5aに回動可能に連結されている。そして、上記荷台5を構成する前立てボード5eの正面の上端側には、本発明を構成する第1のウインチ支持部材7が配置されている。この第1のウインチ支持部材7は、図3に示すように、上記前立てボード5eの正面に溶接又は図示しないボルト等の締結部材を介して固定された固定板部7aと、この固定板部7aの上端から水平に起立してなる支持板部7bとから構成されている。また、上記前立てボード5eの下端側の一側には、第2のウインチ支持部材8が配置されている。この第2のウインチ支持部材8も、上記第1のウインチ支持部材7と同じように、上記前立てボード5eの正面に溶接又は図示しないボルト等の締結部材を介して固定された固定板部8aと、この固定板部8aの上端から水平に起立してなる支持板部8bとから構成されている。
【0034】
また、上記クレーン3は、上記キャブ4と荷台5との間に配置されたものであって、図2に示すように、キャブ4と荷台5との間に配置されたベース10と、このベース10上に配置された固定基台11と、この固定基台11上に設けられ図示しない旋回用油圧モータを介して旋回するコラム12と、このコラム12の先端に図示しない枢支軸を介して連結され該枢支軸を中心に起伏自在とされたブーム13とを備えている。そして、上記コラム12には、油圧で駆動する起伏シリンダ14が固定され、該起伏シリンダ14のシリンダロッド14aは、上記ブーム13の基端側に固定されている。また、上記コラム12内には、本発明を構成する第1のウインチ15が固定されている。この第1のウインチ15は、図示しない油圧モータの駆動によりドラムを回転させるものであり、このドラムには、第1のワイヤ15aが巻回され、この第1のワイヤ15aの先端には、図1又は図3に示すように、第1の係止手段である第1のフック15bが固定されている。また、上記ブーム13は、テレスコピック型の多段伸縮ブームであり、内部には図示ないブーム伸縮用シリンダが配置されている。また、上記ブーム13の先端には、上記第1のワイヤ15aの中途部が掛け渡された第1のクレーン側滑車18が配置されている。
【0035】
また、このクレーン3は、上記旋回用油圧モータを介して旋回可能とされているが、図2又は図4に示すように、ブーム13の先端に配置された第1のクレーン側滑車18が車両本体2の後方に位置している状態において、該ブーム13の背面の上端側中途部には、第1の滑車取付片20と第2の滑車取付片21と第3の滑車取付片22とが該ブーム13の長さ方向とは直交する方向に並んで溶接されており、これら第1ないし第3の滑車取付片20,21,22の先端側には、貫通穴20a,21a,22aが穿設されている。そして、上記第1の滑車取付片20には、第2のクレーン側滑車24が、第2の滑車取付片21には、第3のクレーン側滑車25が、また、第3の滑車取付片22には、第4のクレーン側滑車26が、それぞれ該第1ないし第3の滑車取付片20,21,22に対して取り外し可能に取り付けられている。上記第2ないし第4のクレーン側滑車24,25,26は、それぞれ同一の滑車であり、この構成を第4のクレーン側滑車26を例に挙げて説明すると、滑車本体26aと、この滑車本体26aの左右両側に配置された左右のカバー26b,26cと、上記滑車本体26aを回動可能に支持する軸体26dと、上記第3の滑車取付片22に穿設された貫通穴22a内に挿通されU字状に成形された取付金具26eと、この取付金具26eと上記左右のカバー26b,26cの上端側を接続する二つのピン26f,26gとから構成されている。なお、上記取付金具26eの各先端には、上記ピン26f,26gが挿通される穴26h,26iが形成され、上記左右のカバー26b,26cにも上記ピン26f,26gが挿通される穴26j,26kが形成されている。そして、これら上記第2ないし第4のクレーン側滑車24,25,26は、上記ピン26f,26gの何れか一方のみを取り外すことにより、該第2ないし第4のクレーン側滑車24,25,26を第1ないし第3の滑車取付片20,21,22に取り付けたままの状態で、後述するように、滑車本体に掛け渡されたワイヤを該滑車本体から取り外すことができる。また、上記二つのピン26f,26gの両方を取り外すことにより、上記クレーン3(第3の滑車取付片22)から取り外すことができる。
【0036】
また、上記第1ないし第3の滑車取付片20,21,22の固定位置とは反対側の面(ブーム13の正面)には、二つのピン30,31により、クレーン側係止金具32が固定されている。このクレーン側係止金具32は、上記二つのピン30,31によりブーム13に固定される固定部位32aと、この部位の左右両側に形成されフックやワイヤの先端等が係止又は固定される左右の係止部32b,32cとから構成されている。
【0037】
そして、上記第1のウインチ支持部材7上には、固定板35が図示しないボルト及びナット等の締結具を介して固定され、この固定板35上には、本発明を構成する第2のウインチ36と、第3のウインチ37とが固定されている。上記固定板35の各角部には、上記第2のウインチ36と第3のウインチ37とを該固定板35上に固定したままの状態で、上記第1のウインチ支持部材7上から取り外す際に用いる係止用金具38が固定されている。また、上記第2のウインチ36は、第2のワイヤ36aが巻回されているドラム(符号は省略する。)を備えており、このドラムに巻回されたワイヤ36aの先端には、第2の係止手段としての第2のフック36bが固定されている。なお、本実施の形態においては、上記第2のウインチ36は、手動ウインチであり、上記第2のワイヤ36aが巻回されているドラム(符号は省略する。)には、該ドラムを回動操作するハンドル36cが配置されている。また、上記第3のウインチ37は、油圧ウインチであり、油圧モータ(符号は省略する。)の駆動により回動するとともに第3のワイヤ37aが巻回されたドラム(符号は省略する。)を備えている。また、上記第3のワイヤ37aの先端には、第3の係止手段としての第3のフック37bが固定されている。
【0038】
また、上記車両本体2であって、上記クレーン3の下方には、前方アウトリガー40が配置され、上記荷台5の後方側の下方には、後方アウトリガー41が配置されている。そして、上記前方アウトリガー40には、それぞれ前方アウトリガー用油圧シリンダ43が配置され、上記後方アウトリガー41には後方アウトリガー用油圧シリンダ44がそれぞれ配置されている。すなわち、この車両本体3は、図5に示すように、エンジン42の駆動力により駆動するモータを有する油圧ポンプ45を備え、この油圧ポンプ45には、上記第1のウインチ15,起伏シリンダ14,前方アウトリガー用シリンダ43,後方アウトリガー用シリンダ44,旋回用油圧モータ46に接続されているとともに、上記第3のウインチ37も接続されている。なお、上記油圧ポンプ45には、図示しないリモートコントローラが接続され、上記第1のウインチ15,起伏シリンダ14,前方アウトリガー用シリンダ43,後方アウトリガー用シリンダ44,旋回用油圧モータ46並びに第3のウインチ37の各駆動操作は、それぞれの流量制御弁を制御するリモートコントローラの操作により行われる。また、上記油圧ポンプ45と第3のウインチ37とは、それぞれのチューブ45a,37cの先端に配置されたカプラー45b,37dとを連結することにより接続されている。換言すれば、上記第3のウインチ37は、上記カプラー37dと、上記油圧ポンプ45側のカプラー45bとの接続状態を解除することにより、該油圧ポンプ45と切り離すことが可能とされている。
【0039】
以下、上述したクレーン付車両1を使用して、被移送物を移送する方法について詳細に説明する。この実施の形態では、山林で伐採された伐倒木(被移送物)を、伐採された地点から上記クレーン付車両1を構成する荷台5に移送する方法に適用した例について、図6及び図7を参照しながら詳細に説明する。
【0040】
上記クレーン付車両1は、伐倒木が伐採された方向、すなわち被移送物が存在する方向に、荷台5が位置するように停車させる。そして、上記前方アウトリガー用シリンダ43と後方アウトリガー用シリンダ44との双方又は何れか一方を伸長させておく。そして、上記第1のウインチ支持部材7上に支持された上記第2のウインチ36から第2のワイヤ36aを繰り出し、中途部を上記第3のクレーン側滑車25に掛け渡すとともに、その先端を、上記クレーン付車両1から後方に離間した図示しない立木等に固定・張設する。このように張設された第2のワイヤ36aを、主線として利用・使用する。なお、移送しようとする被移送物としての伐倒木は、上記クレーン付車両1と主線である第2のワイヤ36aの先端が固定された位置との間に存在する。
【0041】
そして、上記第2のワイヤ36aを張設する作業が終了すると、次いで、上記第2のワイヤ36aの先端を固定した位置の近傍に、中間滑車49(図6参照)を配置する。次いで、上記主線である第2のワイヤ36aに搬器50を、該第2のワイヤ36aの基端側(荷台5上)から先端側に移動(往動)し、該第2のワイヤ36aの先端側から基端側(荷台5上)に復動することができるように支持させる。この搬器50は、本実施の形態においては、図6に示すように、主線である第2のワイヤ36aの長さ方向に長さを有する搬器本体51と、この搬器本体51が往動する側に配置された一方の走行滑車52と、上記搬器本体51が複動する側に配置された他方の走行滑車53とを備えている。上記一方及び他方の走行滑車52,53は、何れも上記搬器本体51の上方に位置してなるものであり、それぞれ下端が上記搬器本体51に固定されたアーム(符号は省略する。)に支持されている。すなわち、上記一方及び他方の走行滑車52,53は、上記第2のワイヤ36aに支持される部位である。また、上記搬器本体51の往動側端部には、後述するように、第3のウインチ37を構成する上記第3のワイヤ37aの先端に固定された第3のフック37bと係止する第1の被係止金具55が配置されている。なお、上記搬器本体51の複動側端部には、第2の被係止金具56が配置されている。また、上記搬器本体51の下方には、アーム(符号は省略する。)を介して搬器側滑車57が配置されている。なお、この搬器側滑車57は、カバー57aを有してなるとともに、後述するように、第1のワイヤ15aの中途部が掛け渡されるものであるが、掛け渡された該第1のワイヤ15aを取り外すことができる構造を備えている。
【0042】
そこで、上述した搬器50を第2のワイヤ36a上に支持させる作業が終了すると、次いで、第3のウインチ37を構成する第3のワイヤ37aの中途部を、上記第4のクレーン側滑車26に掛け渡すとともに、上記中間滑車49にも掛け渡し、その先端に固定された第3のフック37bを上記第1の被係止金具55に係止させる。また、上記第1のウインチ15を構成する第1のワイヤ15aを上記搬器側滑車57に掛け渡す。なお、上記第1のワイヤ15aの先端に固定された第1のフック15bの基端側には、ストッパー15cが固定され、第1のワイヤ15aが巻き戻された結果、このストッパー15cが上記カバー57aに当接するように構成されている。
【0043】
したがって、上記搬器50が上記クレーン付車両1の荷台5上に存在している(図7に示す)状態において、先に説明したリモートコントローラを用いて、上記第3のウインチ37の駆動を介し、第3のワイヤ37aを該第3のウインチ37を構成するドラムに巻上げて行く。この際、上記第1のウインチ15は、フリーの状態としておく。なお、こうしたリモートコントローラを用いた作業は、クレーン付車両1を運転する作業者の役割としても良く、以下、こうした作業を行う作業者を「作業者A」と表記する。このように、作業者Aの操作により、上記搬器50は、主線である第2のワイヤ36aに沿って、該第2のワイヤ36aの先端側に向かって徐々に走行し、(例えば)図6に示す位置に移動する。この状態において、伐倒木Tが存在する場所で待機する作業者(以下、この作業者を「作業者B」と表記する。)は、上記第1のワイヤ15aを第1のウインチ15から引き出し、先端に固定されたフック15bを使用して伐倒木T又は該伐倒木Tに巻きつけられたワイヤに係止する。
【0044】
こうした作業者Bの作業が終了すると、次いで、上記作業者Aが、第1のウインチ15の駆動を開始させ、第1のワイヤ15aをドラムに巻き取って行くと、伐倒木Tは徐々に搬器50に近づき、上記ストッパー15cがカバー57aに当接すると、次いで、搬器50は第2のワイヤ36aにガイドされながら、クレーン付車両1方向に移動する。このとき、伐倒木Tである被移送物は、地上に摺接することなく、懸架ないし宙づりとなされた状態で移送されることから、移送不能となったり、移送途中において何らかの障害物に衝突して商品価値を低下させたりすることがない。そして、図6に示すように、伐倒木Tを荷台5上まで移送すると、次いで、上記第1のウインチ15の駆動を停止させ、フリーの状態とする。そして、作業者Aが、伐倒木T又は第1のワイヤ15aに対して下方に力を及ぼすと、該第1のウインチ15を構成するドラムが反転し、第1のワイヤ15aは第1のウインチ15から繰り出され伐倒木Tは下降してフロアボード5a上に載置される。そして、上記伐倒木Tから第1のフック15bを外す。こうした一連の作業により、1つの伐倒木Tの移送作業が終了する。こうした作業を繰り返すことにより、多数の伐倒木Tをクレーン付車両1の荷台5に移送することができる。すなわち、上記クレーン付車両1を構成する上記第3のウインチ37と第1のウインチ15とを交互に駆動させ、搬器50を往復動させることにより、該クレーン付車両1から離間した位置に存在する多数の被移送物である伐倒木Tを荷台5に移送することができる。しかも、こうした作業は、上記作業者Aと作業者Bとの二人で行うことができる。
【0045】
そして、所定の被移送物である伐倒木Tを荷台5に移送する作業が終了すると、次いで、作業者Aは、荷台5上に位置する搬器50の搬器側滑車57から、上記第1のワイヤ15aを取り外し、また、上記第3のクレーン側滑車25から第2のワイヤ36aを取り外し、第4のクレーン側滑車26から第3のワイヤ37aを取り外すとともに、上記第1のウインチ支持部材7上に固定されていた固定板35を、該第1のウインチ支持部材7から取り外す(すなわち、第2及び第3のウインチ36,37を取り外す)。こうした固定板35を取り外す作業は、上記第1のワイヤ15aの先端に固定された第1のフック15bを、上記固定板35に固定された係止用金具38に係止させ、第1のウインチ15を駆動させ、釣り上げるとともに上記クレーン3を利用して、地上に載置することもできる。こうした作業により、クレーン付車両1は、荷台5に積載された被移送物である伐倒木Tを製材所等のような他所に運搬することができ、また、その後に元の場所に戻り、再び上記固定板35等を元の状態に固定する等して、上述した移送方法を再開することができる。
【0046】
また、上記クレーン付車両1では、該クレーン付車両1の長さ方向と直交する方向に存在する被移送物をクレーン付車両1近傍まで移送することもできる。この方法を行う場合には、上記第1のウインチ支持部材7上に固定されている固定板35を、該第1のウインチ支持部材7上から取り外し、図3に示すように、該固定板35上に固定されている第2及び第3のウインチ36,37の方向が90度変更された状態となるようにして、上記第2のウインチ支持部材8上に固定する。また、上記クレーン3を構成する旋回用油圧モータ46を駆動し、図1に示す状態から90度回転させ、図3に示す状態に変更する。
【0047】
その上で、図8に示すように、上記第2のウインチ36を構成する第2のワイヤ36aの先端を、上記クレーン付車両1の長さ方向と直交する方向に存在する図示しない立木等に固定し、該第2のワイヤ36を主線として張設する。また、こうした張設した第2のワイヤ36の先端近傍に、上記中間滑車49を配置する。後は、先に説明した要領と同じ要領で、上記搬器50を第2のワイヤ36aに支持させ、第3のウインチ37を構成する第3のワイヤ37aや第1のウインチ15を構成する第1のワイヤ15aを、図7に示すように接続し又は所定の滑車に掛け渡す。
【0048】
そして、先に説明した要領と同じ要領で、第3のウインチ37と第1のウインチ15とを交互に駆動させ、図8及び図9に示すように、搬器50を往復動させることにより、クレーン付車両1の側方に被移送物である多数の伐倒木Tを移送することができる。
【0049】
すなわち、上述したクレーン付車両1によれば、多数の立木が密集した山林に、上記クレーン付車両1等の車両が通行することができる林道を形成し、この林道に上記クレーン付車1を停車させ、伐採された伐倒木Tを伐採された地点から荷台5又はその近傍まで移送する際、以下に説明する2つの使用方法を実現することが可能となる。先ず、山林に林道を形成する場合には、林道とされる場所に存在する立木を伐採し、それらを取り除いてからショベルカー等を用いて山の傾斜面を削り、幅方向に水平な林道を少しずつ作っていく過程が取られるが、途中まで作られた林道にこのクレーン付車両1を停車させ、その先(さらに延長されるべき林道のルート上)で伐採された伐倒木を移送し、荷台5に積載する場合には、先に説明したように、図5及び図6に示す方法で伐倒木Tを移送する。また、こうした方法を使用しながら、所定の林道が形成され、今度は、その林道から谷側又は山側において伐採された伐倒木Tを、図8及び図9に示す方法で林道まで集材し、その集材された伐倒木Tを図示しない伐採造木用プロセッサにより、枝葉を切り落とすとともに所定の長さに切断した後に、荷台5に積載し、他所に運搬する方法にもこのクレーン付車両1を使用することができる。
【0050】
このように、上述したクレーン付車両1を使用すれば、主線を張設してこれに搬器50を支持させ、該搬器50の往復動により被移送物を容易に移送することができ、また、こうしたクレーン付車両1を用いた被移送物の移送方法によれば、搬器50を利用して被移送物移送物を移送するものであることから、被移送物が移送不能となる事態を避けることができるばかりか、移送途中に被移送物に傷を付け商品価値を低下させる事態も回避することが可能となり、しかも、基本的には二人の作業者A,Bにより被移送物を移送することができる。特に、上記クレーン付車両1では、第2及び第3のウインチ36,37が第1のウインチ支持部材7に対して着脱可能であり、第3のクレーン側滑車25から第2のワイヤ36aを取り外すことができ、第4のクレーン側滑車26からは第3のワイヤ37aを取り外すことができ、さらに搬器50を構成する搬器側滑車57から第1のワイヤ15aを取り外すことができるようにされていることから、クレーン付車両1を運転して他所に移動し、また帰って来た後に、上記第2のワイヤ36a等を元の状態に戻して移送作業に復帰することも可能となることから、極めて使い勝手が良い。
【0051】
また、上記クレーン付車両1は、山林における上記伐倒木Tを移送する場合以外にも種々の被移送物を移送する際に用いることができる。例えば、道路又は道路の脇に埋設され又は設置される埋設管や側溝等の土木工事や、又は既設の埋設管や側溝から新たな埋設管や側溝に取り換える取換工事等の土木工事にも使用することができる。また、これとは別の視点から付言すれば、上述した被移送物の移送方法は、クレーン付車両1から離間した場所に存在する被移送物を、該クレーン付車両1に設けられた荷台5又はその近傍に移送する方法に本発明を適用したものであるが、このクレーン付車両1に積載された被移送物を、上記第1及び第3のウインチ15,37を交互に駆動させながら、該クレーン付車両1から離間した場所に移送するものであっても良い。
【0052】
そこで、以下、上記クレーン付車両1を用いて、該クレーン付車両1を構成する荷台5に積載された新たな埋設管を移送する方法に付いて、図10及び図11を参照しながら詳細に説明する。先ず、上記クレーン付車両1を(例えば、方側一車線の道路である場合には、)道路の一車線に停車させる。なお、このクレーン付車両1の後方には、新たな埋設管が埋設されるエリアが位置しており、さらにその後方には、図示しない重機又はトラック等を停車させておく。上記重機は、(この例においては)埋設管を埋設する溝を掘削したり埋め戻したりする際には、パワーショベルが使用される場合が多いことから、このパワーショベルを停車させておく。
【0053】
そして、上記第2のウインチ36から第2のワイヤ36aを引き出し、その中途部を上記第3のクレーン側滑車25に掛け渡すとともに、その先端を上記パワーショベルのアームに水平となるように固定する。すなわち、上記第2のワイヤ36aを水平に張設し主線とする。そして、この主線である第2のワイヤ36aに対して、搬器60を、該第2のワイヤ36aの基端側(荷台5上)から先端側に移動(往動)し、該第2のワイヤ36aの先端側から基端側(荷台5上)に復動することができるように支持させる。この搬器60は、本実施の形態においては、図10又は図11に示すように、主線である第2のワイヤ36aの長さ方向に長さを有する搬器本体61と、この搬器本体61が往動する側に配置された一方の走行滑車62と、上記搬器本体61が複動する側に配置された他方の走行滑車63とを備えている。上記一方及び他方の走行滑車62,63は、何れも上記搬器本体61の上方に位置してなるものであり、それぞれ下端が上記搬器本体61に固定された両側のアーム62a,63aの上端側で支持されている。すなわち、上記一方及び他方の走行滑車62,63は、上記第2のワイヤ36aに走行可能に支持される部位である。また、上記搬器本体61の下方であってこの搬器本体61が往動する側には、一方の搬器側滑車65が配置され、上記搬器本体61が複動する側には、他方の搬器側滑車66が配置されている。上記一方の搬器側滑車65及び他方の搬器側滑車66は、何れも上記搬器本体61からそれぞれ垂下してなる二つのアーム(符号は省略する。)にそれぞれ固定されたカバー65a,66aの内側において回動可能に支持されてなるものであり、上記一方の搬器側滑車65は後述するように、第3のワイヤ37aの中途部が掛け渡されるものであり、上記他方の搬器側滑車66は、第1のワイヤ15aの中途部が掛け渡される部位である。また、上記一方の搬器側滑車65及び他方の搬器側滑車66は、一旦掛け渡された上記第3のワイヤ37a又は第1のワイヤ15aを取り除くことができる構造とされている。なお、上記一方の搬器側滑車65は、本発明を構成する往動側固定滑車であり、上記他方の搬器側滑車66は、本発明を構成する複動側固定滑車である。
【0054】
また、この実施の形態に係る搬器60には、一方の係止金具69と他方の係止金具70が固定されている。上記一方の係止金具69は、上記一方の搬器側滑車65の配置位置よりもやや他方の搬器側滑車66側であって、上端は上記搬器本体61の下面に固定されている。また、他方の係止金具70は、上記他方の搬器側滑車66の配置位置よりもやや一方の搬器側滑車65側であって、上端は上記搬器本体61の下面に固定されている。なお、上記一方の係止金具69は、本発明を構成する往動側係止手段であり、上記他方の係止金具70は、本発明を構成する複動側係止手段である。
【0055】
そして、上述した搬器60を主線として張設された第2のワイヤ36aに支持させると、次いで、上記パワーショベルに、中間滑車49を固定する。そして、先に説明した方法と同じように、上記第3のウインチ37から第3のワイヤ37aを引き出し、その中途部を上記第4のクレーン側滑車26に掛け渡すとともに、上記中間滑車49にも掛け渡し、さらに上記一方の搬器側滑車65に掛け渡す。また、上記第1のワイヤ15aの中途部を上記第1のクレーン側滑車18から第2のクレーン側滑車24に掛け渡すとともに、上記他方の搬器側滑車66に掛け渡す。なお、この実施の形態では、上記第3のワイヤ37aの先端に固定された第3のフック37bの基端には、図11に示すように、ストッパー37eが固定され、このストッパー37eには、一方のシャックル37fが固定ピン37gを介して着脱可能に取り付けられている。なお、上記ストッパー37eには、上記固定ピン37gが挿通される挿通穴37hが穿設されている。また、さらにこの一方のシャックル37fには、先端に係止用フック37iが固定された線材37jの基端が取り付けられている。上記係止用フック37iは、上記一方の係止金具69に係止される部材である。また、この実施の形態では、上記第1のワイヤ15aの先端に固定された第1のフック15bの基端には、ストッパー15eが固定され、このストッパー15eには、他方のシャックル15fが固定ピン15gを介して着脱可能に取り付けられている。なお、上記ストッパー15eには、上記固定ピン15gが挿通される挿通穴15hが穿設されている。また、さらにこのシャックル15fには、先端に係止用フック15iが固定された線材15jの基端が取り付けられている。上記係止用フック15iは、上記他方の係止金具70に係止される部材である。
【0056】
そして、上記第1のフック15bと第3のフック37bとを利用して、埋設管Pを支持する。この埋設管Pを支持する場合には、上記クレーン付車両1の荷台5に積載された埋設管Pに対して、移送用ワイヤY,Yを取り付け、これらの移送用ワイヤY,Yに上記第1のフック15bと第3のフック37bとを係止すれば良い。そして、図11に示すように、第1のフック15bと第3のフック37bと移送用ワイヤY,Yとを係止する作業が終了すると、次いで、上記第1のウインチ15と第3のウインチ37とを駆動させ、第1及び第3のワイヤ15a,37aを巻上げ、徐々に上記埋設管Pを上昇させる。そして、所定の高さ(上記各ストッパー15e,37eが上記カバー65a,66aに当接する位置)まで上昇させると、次いで、上記係止用フック15iを他方の係止金具70に係止させる。なお、このとき同時に係止用フック37iを上記一方の係止金具69に係止させても良い。そして、上記第3のウインチ37を駆動させると、上記搬器60は、クレーン付車両1の荷台5上から搬器60に懸架された状態で該クレーン付車両1の後方に移送される。このとき、上記第1のウインチ15はフリーの状態とされているが、係止用フック15iが他方の係止金具70に係止されていることから、その位置を保持することができ、埋設管Pの荷重により垂れ下がることがない。
【0057】
そして、この埋設管Pを所定の位置(埋設管Pの埋設位置)まで移送すると、次いで、
係止用フック15iと他方の係止金具70との係止状態を解除させる(係止用フック37iが上記一方の係止金具69に係止されている場合には、それも解除させる)とともに、上記第1及び第2のウインチ15,37を逆回転駆動させることにより、徐々に埋設管Pを下降させる。埋設管Pの埋設位置又はその近傍に埋設管Pが接地された場合には、上記移送用ワイヤY,Yと上記第1のフック15bと第3のフック37bとの係止状態を解除し、該移送用ワイヤY,Yを埋設管Pから取り除く。このように、埋設管Pを移送し、接地する作業が終了すると、次いで、第3のウインチをフリーの状態としながら、第1のウインチ15を駆動させると上記搬器60は複動し、クレーン付車両1上まで移動する。
【0058】
このように、被移送物である埋設管Pを上述した方法により移送することにより、簡単に埋設管Pを移送できるとともに、こうした工事は、道路の一車線のみを閉鎖すれば良く、二車線を閉鎖して行う必要性はなくなることから、土木工事に伴う道路の交通渋滞も緩和することができる。しかも、こうした移送方法を実施する際に使用される上記クレーン付車両1は、先の実施の形態で説明したように、固定板35(第2のウインチ36と第3のウインチ37と)を取り外し、上記第3のクレーン側滑車25から第2のワイヤ36aを、また、第4のクレーン側滑車26から第3のワイヤ37aを取り外し、他方の搬器側滑車66から第1のワイヤ15aを取り外すことにより、クレーン付車両1を移動させることができるので、上記例に即して説明すれば、荷台5から全ての埋設管Pを移送する作業が終了した場合には、この工事現場から移動して再び埋設管Pを搬入することができ、こうした間に、接地させた埋設管Pを埋設する作業が可能となることから、大きく作業性を向上させることができる。
【0059】
なお、上記埋設管Pを例に挙げた実施の形態では、クレーン付車両1に積載された多数の埋設管Pを、該クレーン付車両1から離間した場所に移送する方法を説明したが、このクレーン付車両1は、地中から取り除かれた古い埋設管Pを上記第1及び第3のフック15b,37bに係止させ、このクレーン付車両1の荷台5に積載し、或いは、第2のワイヤ36aの先端や中間滑車49を、上記パワーショベルに代えて、古い埋設管Pを積載する図示しないトラックにそれぞれ固定し、上記古い埋設管Pを地上から上昇させて懸架し、上記第3のウインチ37の駆動により、上記トラック側に移送させても良い。
【0060】
なお、最初に説明した実施の形態に係る被移送物の移送方法では、搬器50を複動させるために第1のウインチ15を駆動させ、第3のウインチ37は、搬器50を往動させるために使用した例を示したが、逆に、搬器50を複動させるために第3のウインチ37を使用し、第1のウインチ15を、搬器50を往動させるために使用しても良い。
【0061】
また、先に説明した実施の形態では、第3のクレーン側滑車25から第2のワイヤ36aを、第4のクレーン側滑車26から第3のワイヤ37aをそれぞれ取り外す旨を説明したが、それぞれ第2又は第3のワイヤ36a,37aを取り外すのではなく、上記第3のクレーン側滑車25と第4のクレーン側滑車26をクレーン3から取り外しても良い。また、上記実施の形態に係るクレーン付車両1に設けられた上記第3のクレーン側滑車24と第4のクレーン側滑車26とを一体(例えば、ダブル滑車)とし、その一体とされた滑車をクレーン3に対して着脱可能としたものであっても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 クレーン付車両
2 車両本体
3 クレーン
4 キャブ
5 荷台
7 第1のウインチ支持部材
8 第2のウインチ支持部材
15 第1のウインチ
15a 第1のワイヤ
15b 第1のフック
18 第1のクレーン側滑車
24 第2のクレーン側滑車
25 第3のクレーン側滑車
26 第4のクレーン側滑車
36 第2のウインチ
36a 第2のワイヤ(主線)
36b 第2のフック
37 第3のウインチ
37a 第3のワイヤ
37b 第3のフック
49 中間滑車
50 搬器
57 搬器側滑車
60 搬器
65 一方の搬器側滑車
66 他方の搬器側滑車
69 一方の係止金具
70 他方の係止金具
T 伐倒木(被移送物)
P 埋設管(被移送物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブの後方に荷台を有してなる車両本体と、
上記キャブと荷台との間に配置されてなるとともにモータの駆動により旋回自在とされたクレーンと、
このクレーンに配置され、先端に係止手段が配置された第1のワイヤを有する第1のウインチと、
上記クレーンの先端側に配置され、上記第1のワイヤの中途部が掛け渡される第1の滑車と、
上記クレーンの近傍に配置されたウインチ支持部材と、
このウインチ支持部材に支持され、第2のワイヤを有する第2のウインチと、
上記ウインチ支持部材に支持され、先端に係止手段が配置された第3のワイヤを有する第3のウインチと、
上記クレーンに取り付けられ、第2のワイヤの中途部が掛け渡される第2の滑車と、上記クレーンに取り付けられ、第3のワイヤの中途部が掛け渡される第3の滑車と、を備え、
上記第2のウインチを構成する第2のワイヤは、車両本体の後方に張設されるとともに搬器を走行可能に支持するものであるとともに、上記第1及び第3のウインチは、上記搬器を往復動させる際に使用されるものであることを特徴とするクレーン付車両。
【請求項2】
前記第3のウインチは、搬器を往動させる際に使用するものとされ、
前記第2及び第3のウインチは、前記車両本体に対して着脱可能とされてなるとともに、
前記第2のワイヤを第2の滑車から取り外すことが可能で且つ第3のワイヤを第3の滑車から取り外すことが可能とされてなるか、或いは、第2の滑車と第3の滑車とがクレーンから取り外すことが可能とされてなることを特徴とする請求項1記載のクレーン付車両。
【請求項3】
前記車両本体には、前記第2のウインチと第3のウインチを支持する第2のウインチ支持部材が設けられ、この第2のウインチ支持部材には、前記ウインチ支持部材に支持された第2及び第3のウインチの方向性を90度変更して支持できるように構成されてなることを特徴とする請求項2記載のクレーン付車両。
【請求項4】
前記第1のウインチを構成する第1のワイヤの先端側中途部には、一方の搬器用係止手段が配置され、前記第3のウインチを構成する第3のワイヤの先端側中途部には、他方の搬器用係止手段が配置されてなることを特徴とする請求項1,2又は3記載のクレーン付車両。
【請求項5】
前記請求項1ないし請求項3記載の発明に係るクレーン付車両を用いた被移送物の移送方法に係るものであって、
前記第2のウインチを構成する第2のワイヤを、その中途部を前記第2の滑車に掛け渡して前記車両本体の後方に引き延ばすとともに、該車両本体から離間した位置に固定し、該第2のワイヤを主線として張設し、
この主線である第2のワイヤに、搬器側滑車を備えた搬器を該第2のワイヤに沿って走行可能に支持させ、
前記第1のウインチを構成する第1のワイヤ又は第3のウインチを構成する第3のワイヤの何れか一方のワイヤの中途部を、前記第1の滑車又は第3の滑車の何れかと、上記搬器側滑車とに掛け渡し、
上記搬器側滑車に掛け渡された一方のワイヤの先端に配置された係止手段を用いて被移送物を係止し、
上記主線である第2のウインチの先端側に中間滑車を配置し、上記第1のウインチを構成する第1のワイヤ又は第3のウインチを構成する第3のワイヤの何れか一方のワイヤとは異なる他方のワイヤを、その中途部を上記中間滑車に掛け渡すとともに該他方のワイヤの先端に配置された係止手段を介して上記搬器に係止させ、
上記第3のウインチと第1のウインチとをそれぞれ交互に駆動させることにより、上記搬器を往復動させて被移送物を移送することを特徴とする被移送物の移送方法。
【請求項6】
前記請求項4記載の発明に係るクレーン付車両を用いた被移送物の移送方法に係るものであって、
前記第2のウインチを構成する第2のワイヤを、その中途部を前記第2の滑車に掛け渡し、前記車両本体の後方に引き延ばすとともに、該車両本体から離間した位置に固定し、該第2のワイヤを主線として張設し、
この主線である第2のワイヤの先端側には、中間滑車を配置し、
上記主線である第2のワイヤに、往動側固定滑車と複動側固定滑車と、該往動側固定滑車と複動側固定滑車との間に配置された往動側係止手段と複動側係止手段を備えてなる搬器を、該第2のワイヤに沿って走行可能に支持させ、
前記第1のウインチを構成する第1のワイヤ又は第3のウインチを構成する第3のワイヤの何れか一方のワイヤの中途部を、上記中間滑車と上記往動側固定滑車とに掛け渡し、
上記一方のワイヤとは異なる他方のワイヤの中途部を、上記複動側固定滑車に掛け渡し、
上記第3のウインチと第1のウインチとをそれぞれ交互に駆動させるとことにより、上記搬器を往復動させて被移送物を移送するとともに、
上記搬器を往動させる際には、前記一方の搬器用係止手段又は他方の係止手段の何れか一方を上記往動側係止手段に係止させ、該搬器を複動させる場合には、前記一方の搬器用係止手段又は他方の係止手段の何れか他方を上記複動側係止手段に係止させて、
被移送物の移送を行うことを特徴とする被移送物の移送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−111578(P2012−111578A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260291(P2010−260291)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(510271211)明林コンサルタント株式会社 (3)
【Fターム(参考)】