説明

クレーン制御装置

【課題】吊り装置がワークを正常な状態で掴んでいない場合にはクレーンの巻き上げ操作を不可能にして安全性を確保する。
【解決手段】クレーン制御装置60は、オペレータによりクレーン巻上スイッチ62がONにされたときにモータ63によるクレーン巻上を許容するクレーン巻上操作回路61において、常時閉のリレー64をこれらと直列に配し、コイルリフターなどの吊り装置がワークを正常に掴んでいないことを検知したときに送信される異常検知信号NSをクレーン側の受信手段65が受信したときに、制御信号C1によってリレーを開く。これにより、クレーン巻上スイッチがON操作されてもクレーン巻上が行われないよう強制遮断する制御が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はクレーン制御装置に関し、より詳しくは、吊り装置を介してワークを吊り上げる際にワークの落下等による事故を未然に防止して安全性を高めたクレーン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より荷役作業において天井走行クレーンなどのクレーンのクレーンフックに吊り装置(クランプ、コイルリフターなど)を介してワーク(鋼板、コイルなど)を吊り上げることが広く行われている。この場合において、ワークが落下すると重大事故に繋がる危険性があることから、吊り装置において作業の安全性を確保するための手段を設けることが望ましい。
【0003】
たとえば、本出願人は、下記特許文献1においてコイルリフターにおける在荷検出装置を提案した。この装置は、コイルの内径空間に挿入される爪部にコイル内面が載っていることを検出するリミットスイッチを備えており、このリミットスイッチが作動したときには在荷状態にあることが確認されるので、アームの移動をロックして、オペレータが誤ってアーム開操作を指示した場合であってもアームの開移動を防止し、コイル落下事故を未然に防ぐようにしている。
【特許文献1】実用新案登録第3125035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1を含めた多くの従来技術は、在荷状態ないしワーク負荷状態を検出する手段を吊り装置に設け、この検出手段が在荷状態を検出したときには吊り装置がワーク開放側に移動することを規制して、ワークの落下を防止しようとする技術思想に立脚している。
【0005】
このようなワーク落下防止手段を吊り装置に設けることも有効ではあるが、これだけではクレーンを用いた荷役作業の安全性を最大限に確保することができない。たとえば、上記特許文献1記載のコイルリフターにおいては、コイルの両側面がアーム内面に圧接された状態でクレーンを巻き上げてコイルを吊り上げることが好ましいが、コイルの片側面または両側面がアーム内面に圧接することなくアーム内面との間に隙間が存在する状態(片利き状態)で在荷されることがある。この場合であっても、一対の爪部がコイルの内径空間に挿入されていてコイル内面がこれら爪部上に載っていればリミットスイッチが作動して、アームが開放移動することはないが、このままの状態で吊り上げられると、コイルが爪部上に載置されたまま水平方向に移動して、他のコイルなどに接触して作業者が怪我をする原因となったり、最悪の場合にはコイルが爪部から外れて落下する危険性も生じかねない。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、吊り装置がワークを正常な状態で掴んでいない場合にはクレーンの巻き上げ操作を不可能にして安全性を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を達成するため、請求項1にかかる本発明は、吊り装置を介してワークを吊り上げるクレーンにおいて、オペレータの操作によりクレーン巻上スイッチがONにされたときにモータを駆動させてクレーンを上昇させるように構成されたクレーン巻上操作回路と、ワークを正常に掴んでいないことを前記吊り装置が検知したときに送信される異常検知信号を受信する異常検知信号受信手段とを備え、前記クレーン巻上操作回路には、常時は閉じられているがクレーン強制遮断信号を受けたときに開くように動作するリレー手段が前記クレーン巻上スイッチと直列に接続され、前記異常検知信号受信手段が異常検知信号を受信したときにリレー手段を動作させて前記クレーン巻上操作回路を開き、吊り装置がワークを正常に掴んでいないときにはオペレータがクレーン巻上スイッチをONにしてもクレーン巻上が行われないよう強制遮断する制御を行うことを特徴とするクレーン制御装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コイルリフターがコイルを片利き状態で掴んでいる場合など、吊り装置がワークを正常な状態で掴んでいない場合に、吊り装置側で当該異常を検知し、この検知信号をクレーン側の受信手段が受信する。クレーン巻上操作回路にはクレーン巻上スイッチと直列に常時閉のリレー手段が設けられており、クレーン側の送信手段が異常検知信号を受信すると、リレー手段が開となる。したがって、この状態でオペレータがクレーン巻上スイッチをONにしても、モータが駆動せず、クレーン巻上は行われないので、片利きなどの異常状態のままでワークが吊り上げられることが強制遮断され、安全性が確保される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態によるクレーン制御装置について詳述する。この実施形態では、クレーンフック1に掛着したコイルリフター10でコイル2を吊り上げる際に、コイル2がコイルリフター10に正常な状態で(片利き状態でなく)捕まれているか否かを検知し、片利き状態であることが検知されたときにはクレーンの巻上操作を無効にさせる制御を行う。
【0010】
まずコイルリフター10の構成について、図1ないし図4を参照して説明する。このコイルリフター10は、クレーンフック1を係止する吊部11と、吊部11に対して旋回可能に連結された本体20とを有する。
【0011】
吊部11は、一対の垂直板12,12間に掛け渡された水平軸13を有し、この水平軸13にクレーンフック1を係止可能としている。一対の垂直板12,12の下端には固定歯車(図示せず)が固着されているが、その大半は本体20の上端に取り付けられた歯車カバー21に被覆されている。
【0012】
本体20はハウジング22を有し、その上端に上記歯車カバー21が固着されている。ハウジング22にはネジスクリュー23が収容されている。ネジスクリュー23は固定歯車の回転軸と同軸であり、且つ、該回転軸に対して互いに相対回転可能に連結されている。
【0013】
また、ハウジング22の中間部において、ネジスクリュー23と噛み合う雌ネジ部24がハウジング22内を上下移動可能に収容されていて、この雌ネジ部24に一対の第一リンク25,25および一対の第二リンク26,26が各々枢軸(符号なし)で回転自在に連結されている。第一リンク25,25および第二リンク26,26の先端にはアーム27,27が連結され、これらアーム27,27の先端には内向きに突出する爪部28,28が一体に固定されている。第二リンク26,26は中間地点において補助リンク29,29を介してハウジング22の下端部に連結されており、これによって、アーム27,27を常に実質的に垂直に保持している。
【0014】
ハウジング22の下端外周に設けられた第一モータボックス30内にはアーム開閉駆動用の正逆回転モータおよび減速機(図示せず)が収容されており、これらによりネジスクリュー23を所定方向に所定速度で回転させると雌ネジ部24がハウジング22内で上下移動し、これに連動して開閉する第一リンク25,25および第二リンク26,26を介してアーム27,27が水平移動する。すなわち、アーム27,27が開放位置にあるときに雌ネジ部24をハウジング22内において上昇させる方向にモータを駆動させることにより、アーム27,27は互いに近接移動して、アーム間距離が徐々に狭められていく。このアーム開閉動作は従来技術と同様であるので、詳細な説明を割愛する。
【0015】
ハウジング22の上端外周に設けられた第二モータボックス31内には旋回駆動用の正逆回転モータ(図示せず)が収容され、このモータの出力に減速機(図示せず)を介して連結されたピニオンギア(図示せず)が、吊部11の前記固定歯車と噛み合っている。したがって、たとえばアーム27,27を閉じることにより爪部28,28をコイル2の内径空間2aに挿入係止してコイルを吊り上げた状態のときであっても、モータを所定方向に駆動させることにより、クレーンフック1を係止した吊部11は実質的に不動に保持しつつ、この吊部11に対して本体20を所定方向に旋回させることができる。
【0016】
在荷検出装置50は、アーム27の下端部および爪部28に組み込まれており、左右一対で構成されている。左右の構成は同一ないし対称であるので、図1において右側に示されているアーム27の下端部および該下端部に一体に固定されている爪部28に組み込まれた在荷検出装置50について、図3および図4を参照して以下に詳述する。
【0017】
この在荷検出装置50は、回転軸51を中心にシーソー状に揺動自在であるアーム52と、このアーム52の内方端に一体に固定された在荷検出ドッグ53と、アーム52の外方端にブラケット54を介して一体に固定されたリミットスイッチ用ドッグ55と、このリミットスイッチ用ドッグ55の先端に対向して近接配置されたリミットスイッチ56とを有して構成されている。
【0018】
アーム52は爪部28の上板28aの下方に配置されている。爪部28の内方突出部において上板28a上に受け金28bが固定され、在荷検出ドッグ53はこれら上板28aおよび受け金28bに形成された穴(いずれも符号なし)を通って、コイルが在荷していない状態(図3)においては、ブラケット54が重りとして作用することから、その半球面状の頭部53aが受け金28bの表面(コイル内径支持面)28cから突出した状態に維持される。リミットスイッチ用ドッグ55は略L字形のアーム状部材であり、その上方先端は爪部上板28aを超えてアーム27内に突入している。リミットスイッチ56はアーム27の下端部に固定され、その下端のスイッチ部材56aがリミットスイッチ用ドッグ55の先端に対向して該先端により押動可能とされている。
【0019】
このコイルリフター10を用いてコイル2を吊り上げようとするとき、コイルリフター10をクレーン操作にてコイル内径2a位置まで爪部28を下げた後、一対のアーム27,27を近接移動させてアームを閉じる。アームを閉じる方向に移動させたときに、爪部28がコイル2に当たらずに内径2aに挿入できる高さ位置になければならないので、これを検出するための光電センサ32が爪部上板28a上に設置されると共に、この光電センサ32からの光電33を受信する受信部(図示せず)が他方のアーム27に光電センサ32と略同一高さ位置に設けられる。光電センサ32からの光電33を他方アームの受信部で受信することによって爪部28がコイル内径2aに挿入可能であることが確認されるので、その後にアーム27,27を閉じていく。
【0020】
リミットスイッチ34は、アーム27,27が完全に閉じられたことを検出する。すなわち、リミットスイッチ34は、コイルが在荷していない状態ではアーム27の内側面より内方に突出した位置(図3)にあるストライカ35が同位置からアーム27の内側面と略面一となる位置(図4)に後退したことを検知する。爪部28がコイル内径2aに挿入された状態でアーム27,27を閉じていくと、アーム27,27の内側面から内方に突出した位置にあるストライカ35,35がコイル2の両側面に当たり、さらにアームを閉じていくとストライカ35,35がアーム27,27内に沈み込んでアーム内側面と略面一となる。このときにリミットスイッチ34が作動して、アーム27,27の閉移動を停止させる。ストライカ35はリンク36a,36bにより垂直状態を維持しつつ平行移動可能である。
【0021】
このようにして爪部28がコイル内径2aに挿入され且つストライカ35,35がコイル両側面に当接した状態でクレーン操作にてコイル2を吊り上げると、図4に示すように、コイル内径2aが爪部受け金28bの表面28cに乗った状態となるため、その荷重によって在荷検出ドッグ53の半球面状頭部53aが受け金28b内に埋没する。すなわち、アーム52が回転軸51を中心として図において反時計方向に回動するので、リミットスイッチ用ドッグ55が上昇し、その先端がリミットスイッチ56のスイッチ部材56aに当接して、リミットスイッチ56を作動させ、リミットスイッチ56からの信号によりアーム27,27の開放移動をロックする。これにより、コイル2を吊り上げているときにオペレータが誤ってアーム開操作を指示した場合であってもアームが開くことはなく、コイル落下事故を未然に防止することができる。
【0022】
なお、在荷検出ドッグ53はシーソー状に揺動するアーム52の一端に固定されているため、コイル在荷状態では直立している(図3)が、コイル内径2aに押圧されると徐々に傾き、コイル内径2aと当接する部分が変わっていく。これに対応するために在荷検出ドッグ53の頭部は半球状に形成され、当接位置変化によっても円滑な動作が確保されるようにしている。
【0023】
符号37は制御ボックスであり、このコイルリフター10の各部の作動を制御するための制御回路やその関連部品などが収容されている。制御ボックス37の前面には、各種確認ランプ39が設けられている。
【0024】
図5は、制御ボックス37に収容された制御回路のうち、片利き検知に関連した部分のみを示す結線図である。CSは片利き検知機能を有効/無効にするための切替スイッチであり、コイルリフター10の運転中は通常はONの状態とされている。この状態で、前述のリミットスイッチ34およびリミットスイッチ56からの検知信号によって「片利き状態」が検知されると、タイマーリレーTMが作動して所定時間(たとえば1〜2秒程度)経過後に、警報ブザーBUZZを鳴動させると共に、片利き異常検知信号を出力する。なお、ここでタイマーを設けているのは、クレーンによる巻上操作を開始したときに吊荷(コイル2)が振動や若干の位置移動などによって掴み確認用リミットスイッチ34や在荷確認用リミットスイッチ56が誤作動する可能性があることを考慮して、若干のタイムラグを設けて片利き状態を検知することとしているためである。
【0025】
リミットスイッチ34,56による「片利き状態」の検知について図5と共に図6を参照して説明する。前述のように、リミットスイッチ34はコイル掴み確認を行うスイッチであり、コイルリフター10の左右一対の開閉アーム27に設けられており、コイル2の側面がアーム27の内側面に圧接されている状態を検知してONとなる。また、リミットスイッチ56は在荷確認を行うスイッチであり、在荷検出ドッグ53と共働して爪部28上にコイル2が在荷していることを検知してONとなる。これらリミットスイッチ34,56は左右に各々一個設けられており、個々のリミットスイッチを特定するために正面視左側に設置されているリミットスイッチ34,56をそれぞれリミットスイッチ34a,56aとし、同右側に設置されているリミットスイッチ34,56をそれぞれリミットスイッチ34b,56bとする。そして、これら4個のリミットスイッチ34a,34b,56a,56bのON/OFFの組み合わせによって「片利き状態」の有無が検知され、「片利き状態」が検知されたときには後述のようにクレーン巻上操作を自動遮断ないし無効化する。図5において、コイル掴み確認用リミットスイッチ34a,34bがONになるとコイル掴み確認用リレーST1,ST2が作動し、在荷確認用リミットスイッチ56a,56bがONになると在荷確認用リレーKK1,KK2が作動する。
【0026】
図6(1)は、左右両側のコイル掴み確認用リミットスイッチ34a,34bがいずれもOFFであり、一方の在荷確認用リミットスイッチ56aはONであるが他方の在荷確認用リミットスイッチ56bはOFFの状態である。このままの状態で吊り上げるとコイル2が水平方向に移動して危険が生ずる可能性があるので、「片利き状態」と異常検知される。この図とは左右が逆の状態、すなわち、左右両側のコイル掴み確認用リミットスイッチ34a,34bがいずれもOFFであって、在荷確認用リミットスイッチ56aがOFF、在荷確認用リミットスイッチ56bがONになっているときも同様である。
【0027】
図6(2)は、在荷確認用リミットスイッチ56a,56bはいずれもONであるが、左右のコイル掴み確認用リミットスイッチ34a,34bがいずれもOFFの状態である。この場合も、このままの状態で吊り上げるとコイル2が水平方向に移動して危険が生ずる可能性があるので、「片利き状態」と異常検知される。
【0028】
図6(3)は、一方の側のコイル掴み確認用リミットスイッチ34aおよび在荷確認用リミットスイッチ56aはいずれもONであるが、他方の側のコイル掴み確認用リミットスイッチ34bおよび在荷確認用リミットスイッチ56bがいずれもOFFの状態である。この場合も、このままの状態で吊り上げるとコイル2が水平方向に移動して危険が生ずる可能性があるので、「片利き状態」と異常検知される。この図とは左右が逆の状態、すなわち、コイル掴み確認用リミットスイッチ34aおよび在荷確認用リミットスイッチ56aがいずれもOFFで、コイル掴み確認用リミットスイッチ34bおよび在荷確認用リミットスイッチ56bがいずれもONのときも同様である。
【0029】
図6(4)は、一方の側のコイル掴み確認用リミットスイッチ34aおよび在荷確認用リミットスイッチ56aはいずれもONであり、他方の側の在荷確認用リミットスイッチ56bもONであるが、該他方の側のコイル掴み確認用リミットスイッチ34bがOFFの状態である。この場合も、このままの状態で吊り上げるとコイル2が水平方向に移動して危険が生ずる可能性があるので、「片利き状態」と異常検知される。この図とは左右が逆の状態、すなわち、コイル掴み確認用リミットスイッチ34bおよび在荷確認用リミットスイッチ56bがいずれもONで、在荷確認用リミットスイッチ56aもONであるが、コイル掴み確認用リミットスイッチ34aのみがOFFになっているときも同様である。
【0030】
図6(5)は、コイル2が斜めに把持された状態であり、両側のコイル掴み確認用リミットスイッチ34a,34bはいずれもONであり、一方の側の在荷確認用リミットスイッチ56aもONであるが、他方の側においてはコイル2が浮いた状態となっているために在荷確認用リミットスイッチ56bがOFFになっている。この場合も、このままの状態で吊り上げるとコイル2が揺れ動いて危険が生ずる可能性があるので、「片利き状態」と異常検知される。この図とは逆向きにコイル2が斜めに把持された状態、すなわち、両側のコイル掴み確認用リミットスイッチ34a,34bはいずれもONであり、在荷確認用リミットスイッチ56bもONであるが、在荷確認用リミットスイッチ56aがOFFになっているときも同様である。
【0031】
図6(6)は、すべてのリミットスイッチ34a,34b,56a,56bがOFFとなっている。この状態はコイル2を掴むためにコイルリフター10のアーム27,27を閉じていく前の状態であるから、この時点ではクレーン巻上操作が許容されていなければならず、正常な状態であるので、「片利き状態」とは検知されない。
【0032】
図6(7)は、両側のコイル掴み確認用リミットスイッチ34a,34bはいずれもONであり、両側の在荷確認用リミットスイッチ56a,56bはいずれもOFFである。この状態からクレーンを巻き上げて吊り上げるものであるから、この時点ではクレーン巻上操作が許容されていなければならず、正常な状態であるので、「片利き状態」とは検知されない。
【0033】
図6(8)は、すべてのリミットスイッチ34a,34b,56a,56bがすべてONとなっており、正常な状態でコイルが吊り上げられている場合であるので、当然のことながら「片利き状態」とは検知されない。
【0034】
これらをまとめると、「片利き状態」有無は次の条件で検知される。
(ア)両側のコイル掴み確認用リミットスイッチ34a,34bがいずれもOFFの場合:在荷確認用リミットスイッチ56a,56bのいずれか一方(図6(1)の場合)または両方(図6(2)の場合)がONであれば「片利き状態」あり、両方ともOFF(図6(6)の場合)であれば「片利き状態」なし。
(イ)コイル掴み確認用リミットスイッチ34a,34bのいずれか一方がON、他方がOFFの場合:在荷確認用リミットスイッチ56a,56bのいずれか一方(図6(3)の場合)または両方(図6(4)の場合)がONのときに「片利き状態」あり。なお、コイル掴み確認用リミットスイッチがONになっている側の在荷確認用リミットスイッチ56aまたは56bはONになっているはずなので、(イ)の場合には「片利き状態」なしと検知されることはなく、常に「片利き状態」ありと検知される。
(ウ)両側のコイル掴み確認用リミットスイッチ34a,34bがいずれもONの場合:在荷確認用リミットスイッチ56a,56bのいずれか一方のみがON(図6(5)の場合)であれば「片利き状態」あり、両方ともOFF(図6(7)の場合)またはON(図6(8)の場合)であれば「片利き状態」なし。
【0035】
図7は本発明実施形態によるクレーン制御装置60の全体構成図であり、クレーン巻上操作回路61を備えている。クレーン巻上操作回路61は、オペレータの操作によりONとされるクレーン巻上スイッチ62と、クレーン巻上のための駆動手段となるモータ駆動リレー63とが直列に接続されているが、これらの間に接点64が設けられている。この接点64は常時はONとされているので、オペレータの操作によってスイッチ62がONにされると、モータ駆動リレー63によってクレーンフック1が巻き上げられ、コイルリフター10を介してワーク(コイル2)を吊り上げることができる。
【0036】
しかしながら、前述のようにして片利き状態(図6(1)〜(5))が検知された後タイマー設定時間経過後にコイルリフター10の制御ボックス37に付設された送信機38から異常検知信号NSが送信されると、これをクレーン側の異常検知信号受信機65で受信し、制御信号C1を送出して、常時はOFFであるリレー接点68をONにする。あるいは、片利き状態検知後のタイマー設定時間経過後に異常検知を示す信号ないしデータがコイルリフター20の制御ボックス37から有線でケーブルリール66を介してクレーンの中継箱67に送られ、ここから制御信号C2を送出してリレー接点68をONにする。これによって片利き検知リレー69が作動して、前記接点64がOFFになるので、オペレータがクレーン巻上スイッチ62をON操作してもクレーン巻き上げが行われず、片利き状態でコイル2を把持しているコイルリフター10が吊り上げられることがなく、危険を未然に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のクレーン制御装置が適用可能なコイルリフターをコイル在荷状態で示す正面図である。
【図2】この在荷状態コイルリフターの側面視断面図である。
【図3】このコイルリフターの一方のアーム下部に設けたコイル掴み確認用リミットスイッチおよび爪部に設けた在荷確認用リミットスイッチに関連する詳細構成を示す正面視部分拡大断面図である。
【図4】図3と同じ部分の詳細をコイル在荷状態で示す正面視部分拡大断面図である。
【図5】リミットスイッチによる片利き検知に関連した部分の結線図である。
【図6】リミットスイッチにより片利き検知とされる場合(1〜5)および片利き検知とされない場合(6〜8)を示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態によるクレーン制御装置の全体構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1 クレーンフック
2 コイル(ワーク)
10 コイルリフター
27 アーム
28 爪部
34 コイル掴み確認用リミットスイッチ
37 制御ボックス
38 異常検知信号送信機
50 在荷検出装置
53 在荷検出用ドッグ
56 在荷検出用リミットスイッチ
60 クレーン制御装置
61 クレーン巻上操作回路
62 クレーン巻上スイッチ
63 モータ
64 リレー
65 異常検知信号受信機
66 ケーブルリール
67 中継箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り装置を介してワークを吊り上げるクレーンにおいて、オペレータの操作によりクレーン巻上スイッチがONにされたときにモータを駆動させてクレーンを上昇させるように構成されたクレーン巻上操作回路と、ワークを正常に掴んでいないことを前記吊り装置が検知したときに送信される異常検知信号を受信する異常検知信号受信手段とを備え、前記クレーン巻上操作回路には、常時は閉じられているがクレーン強制遮断信号を受けたときに開くように動作するリレー手段が前記クレーン巻上スイッチと直列に接続され、前記異常検知信号受信手段が異常検知信号を受信したときにリレー手段を動作させて前記クレーン巻上操作回路を開き、吊り装置がワークを正常に掴んでいないときにはオペレータがクレーン巻上スイッチをONにしてもクレーン巻上が行われないよう強制遮断する制御を行うことを特徴とするクレーン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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