説明

クレーン及びその制御方法

【課題】
荷役具(例えば、クラブバケット)を有するクレーンにおいて、荷役具を任意の角度に旋回することのできるクレーン及びその制御方法を提供する。
【解決手段】
トロリ2が、2本の懸吊ワイヤロープW3、W4を支持する2つの可動シーブ21と、可動シーブ21に設置した移動装置22を有しており、海側懸吊ドラムD3及び陸側懸吊ドラムD4で、2本の懸吊ワイヤロープW3、W4を同一速度で巻き取る又は送り出す荷役具昇降制御と、2本の懸吊ワイヤロープW3、W4の一方を巻き取り、他方を送り出すトロリ横行制御と、可動シーブ21を移動装置22によりトロリ2の横行方向xに移動させ、可動シーブ21の移動に伴い荷役具3が鉛直方向zを軸として旋回Rする荷役具旋回制御のうち、少なくとも2つの制御を同時に、又はいずれか1つの制御を単独で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロリと、トロリで懸吊した荷役具(例えばクラブバケット、モッコ、スプレッダ等)を有するクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
鉱石、鉱物等(以下、ばら荷という)の荷役にクラブバケットを有するクレーン(クラブバケット式アンローダともいう)が使用されている(例えば特許文献1参照)。このクレーンは、港湾等でばら積み船に搭載したばら荷の荷役を行ったり、製鉄所等で鉄鉱石等の運搬を行ったりする際に、使用されている。
【0003】
図5に、港湾等で使用するクラブバケットを有するクレーン1Xの概略を示す。クレーン1Xは、脚構造物50と、機械室51と、ブーム52及びガーダ53と、トロリ2Xと、荷役具であるクラブバケット3Xを有している。また、クレーン1Xは、機械室51内に設置した複数のドラムDと、ブーム52及びガーダ53の端部にそれぞれ設置した複数のシーブSを有している。このドラムDには、それぞれワイヤロープ(以下、ロープという)Wが巻きつけてある。この複数のロープWは、ドラムDからシーブSを介して、クラブバケット3Xにそれぞれ連結している。なお、xはクレーン1Xの横行方向x、zは鉛直方向zを示している。
【0004】
図6に、クレーン1Xの作動部の概略図を示す。クレーン1Xは、トロリ2Xと、クラブバケット3Xを有している。また、クレーン1Xは、クラブバケット3Xの開閉を操作する2本の操作ワイヤロープ(以下、操作ロープという)W1、W2と、クラブバケット3Xを支持する2本の懸吊ワイヤロープ(以下、懸吊ロープという)W3、W4を有している。更に、クレーン1Xは、4本のロープWに対応した4つのドラムDと4つのシーブSを有している。ここで、D1は海側操作ドラム、D2は陸側操作ドラム、D3は海側懸吊ドラム、D4は陸側懸吊ドラムとする。また、S1は海側操作シーブ、S2は陸側操作シーブ、S3は海側懸吊シーブ、S4は陸側懸吊シーブとする。
【0005】
また、トロリ2Xは、4本のロープWに対応した2つの操作ロープ用シーブ41と、2つの懸吊ロープ用シーブ42を有している。更に、クラブバケット3Xは、2つのバケット部31と、このバケット部31を開閉するための開閉機構部32を有している。
【0006】
次に、このクレーン1Xの動作について説明する。このクレーン1Xは、独立して回転制御できる4つのドラムDにより、クラブバケット3Xの開閉動作、クラブバケット3Xの上下動作、及びトロリ2Xの横行動作(トロリ2Xの横行方向xの移動)を制御することができる。以下、具体的に説明する。
【0007】
まず、クラブバケット開閉制御について説明する。クラブバケット3Xを開く場合は、ドラムD1、D2を制御し、操作ロープW1、W2を繰り出す。クラブバケット3Xを閉じる場合は、操作ロープW1、W2を巻き取る。
【0008】
次に、クラブバケット昇降制御について説明する。クラブバケット3Xを上昇させる場合は、ドラムD1〜4を制御し、操作ロープW1、W2及び懸吊ロープW3、W4を同一速度で巻き取る。クラブバケット3Xを下降させる場合は、操作ロープW1、W2及び懸吊ロープW3、W4を同一速度で送り出す。
【0009】
最後に、トロリ横行制御について説明する。トロリ2Xを海側に移動させる場合は、ド
ラムD1〜4を制御し、海側の操作ロープW1及び懸吊ロープW3を巻き取り、陸側の操作ロープW2及び懸吊ロープW4を送り出す。このとき、4つのドラムDの回転速度は同一とする。トロリ2Xを陸側に移動させる場合は、陸側の操作ロープW2及び懸吊ロープW4を巻き取り、海側の操作ロープW1及び懸吊ロープW3を送り出す。
【0010】
しかしながら、上記のクレーン1Xは、クラブバケット3Xの開閉方向を制御できないという問題を有している。つまり、クラブバケット3Xは、鉛直方向zを中心軸とした旋回方向R(図6参照)に旋回することができない。そのため、クレーン1Xには、ばら積み船の船倉内の側壁近傍等、クラブバケット3Xによる荷役作業が困難な場所が存在する。従来は、船倉内にブルドーザを搬入し、このブルドーザでばら荷を船倉中心に集める作業を行っていた。このクレーン1Xによる荷役作業には、多大な時間及び人員が必要となり、荷役効率が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第0920399号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、荷役具(例えば、クラブバケット)を有するクレーンにおいて、荷役具を任意の角度に旋回することのできるクレーン及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するための本発明に係るクレーンの制御方法は、脚構造物と、前記脚構造物に設置したブーム及びガーダと、トロリと、2本の懸吊ワイヤロープを有するクレーンであり、一方の前記懸吊ワイヤロープを、海側懸吊ドラムから、前記ブームに設置した海側懸吊シーブと、前記トロリを介して荷役具に連結し、他方の前記懸吊ワイヤロープを、陸側懸吊ドラムから、前記ガーダに設置した陸側懸吊シーブと、前記トロリを介して前記荷役具に連結し、前記トロリが、2本の前記懸吊ワイヤロープを支持する2つの可動シーブと、前記可動シーブに設置した移動装置を有しており、前記荷役具の上面の平面視において、前記荷役具と2本の前記懸吊ワイヤロープを連結した箇所を2つの懸吊点とし、前記懸吊点を結んだ直線が、前記トロリの横行方向に対して予め定めた角度を有するように構成したクレーンの制御方法であって、前記海側懸吊ドラム及び前記陸側懸吊ドラムで、前記2本の懸吊ワイヤロープを同一速度で巻き取る又は送り出す荷役具昇降制御と、前記2本の懸吊ワイヤロープの一方を巻き取り、他方を送り出すトロリ横行制御と、前記可動シーブを前記移動装置により前記トロリの横行方向に移動させ、前記可動シーブの移動に伴い前記荷役具が鉛直方向を軸として旋回する荷役具旋回制御のうち、少なくとも2つの制御を同時に、又はいずれか1つの制御を単独で行うことを特徴とする。
【0014】
この構成により、可動シーブを移動させると、荷役具を、鉛直方向を軸として旋回することができる。そのため、荷役効率を向上することができる。また、例えば荷役具を旋回しながら(荷役具旋回制御)、荷役具の巻上げ(荷役具昇降制御)を行うなど、複数の制御を同時に実現することができるため、荷役時間を短縮することができる。
【0015】
上記の目的を達成するための本発明に係るクレーンの制御方法は、脚構造物と、前記脚構造物に設置したブーム及びガーダと、トロリと、2本の懸吊ワイヤロープと2本の操作ワイヤロープを有するクレーンであり、一方の前記懸吊ワイヤロープを、海側懸吊ドラムから、前記ブームに設置した海側懸吊シーブと、前記トロリを介してクラブバケットに連結し、他方の前記懸吊ワイヤロープを、陸側懸吊ドラムから、前記ガーダに設置した陸側
懸吊シーブと、前記トロリを介して前記クラブバケットに連結し、一方の前記操作ワイヤロープを、海側操作ドラムから、前記ブームに設置した海側操作シーブと、前記トロリを介してクラブバケットに連結し、他方の前記操作ワイヤロープを、陸側操作ドラムから、前記ガーダに設置した陸側操作シーブと、前記トロリを介して前記クラブバケットに連結し、前記トロリが、2本の前記懸吊ワイヤロープを支持する2つの可動シーブと、前記可動シーブに設置した移動装置と、2本の前記操作ワイヤロープを支持する2つの固定シーブを有し、前記クラブバケットが、2つのバケット部と、開閉機構部と、2つの腕部を有しており、2本の前記操作ワイヤロープを、それぞれ前記固定シーブを介して前記開閉機構部に連結し、2本の前記懸吊ワイヤロープを、それぞれ前記可動シーブを介して前記腕部に連結し、前記クラブバケットの上面の平面視において、前記腕部と前記懸吊ワイヤロープを連結した箇所を2つの懸吊点とし、前記懸吊点を結んだ直線が、前記トロリの横行方向に対して予め定めた角度を有するように構成したクレーンの制御方法であって、前記海側操作ドラム及び前記陸側操作ドラムで、前記2本の操作ワイやロープを同一速度で巻き取る又は送り出すクラブバケット開閉制御と、前記海側懸吊ドラム及び前記陸側懸吊ドラムで、前記2本の懸吊ワイヤロープを同一速度で巻き取る又は送り出す荷役具昇降制御と、前記2本の懸吊ワイヤロープの一方を巻き取り、他方を送り出すトロリ横行制御と、前記可動シーブを前記移動装置により前記トロリの横行方向に移動させ、前記可動シーブの移動に伴い前記荷役具が鉛直方向を軸として旋回する荷役具旋回制御のうち、少なくとも2つの制御を同時に、又はいずれか1つの制御を単独で行うことを特徴とする。この構成により、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0016】
上記のクレーンの制御方法において、前記荷役具旋回制御の際に、前記2本の懸吊ワイヤロープの繰り出し又は巻き取りを行い、前記可動シーブから前記荷役具又は前記クラブバケットまでの前記懸吊ワイヤロープの長さを一定に維持する制御を行うことを特徴とする。この構成により、荷役具の旋回に伴い、荷役具の高さが変化することを防止できる。また、荷役具がクラブバケットである場合は、クラブバケットの旋回に伴い、クラブバケットが開閉してしまうことを防止できる。
【0017】
上記の目的を達成するための本発明に係るクレーンは、脚構造物と、前記脚構造物に設置したブーム及びガーダと、トロリと、2本の懸吊ワイヤロープを有するクレーンであり、一方の前記懸吊ワイヤロープを、海側懸吊ドラムから、前記ブームに設置した海側懸吊シーブと、前記トロリを介して荷役具に連結し、他方の前記懸吊ワイヤロープを、陸側懸吊ドラムから、前記ガーダに設置した陸側懸吊シーブと、前記トロリを介して前記荷役具に連結したクレーンにおいて、前記トロリが、2本の前記懸吊ワイヤロープを支持する2つの可動シーブと、前記可動シーブに設置した移動装置を有しており、前記荷役具の上面の平面視において、前記荷役具と2本の前記懸吊ワイヤロープを連結した箇所を2つの懸吊点とし、前記懸吊点を結んだ直線が、前記トロリの横行方向に対して予め定めた角度を有するように構成したことを特徴とする。この構成により、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【0018】
上記の目的を達成するための本発明に係るクレーンは、脚構造物と、前記脚構造物に設置したブーム及びガーダと、トロリと、2本の懸吊ワイヤロープと2本の操作ワイヤロープを有するクレーンであり、
一方の前記懸吊ワイヤロープを、海側懸吊ドラムから、前記ブームに設置した海側懸吊シーブと、前記トロリを介してクラブバケットに連結し、他方の前記懸吊ワイヤロープを、陸側懸吊ドラムから、前記ガーダに設置した陸側懸吊シーブと、前記トロリを介して前記クラブバケットに連結し、一方の前記操作ワイヤロープを、海側操作ドラムから、前記ブームに設置した海側操作シーブと、前記トロリを介してクラブバケットに連結し、他方の前記操作ワイヤロープを、陸側操作ドラムから、前記ガーダに設置した陸側操作シーブと、前記トロリを介して前記クラブバケットに連結したクレーンにおいて、前記トロリが
、2本の前記懸吊ワイヤロープを支持する2つの可動シーブと、前記可動シーブに設置した移動装置と、2本の前記操作ワイヤロープを支持する2つの固定シーブを有し、前記クラブバケットが、2つのバケット部と、開閉機構部と、2つの腕部を有しており、2本の前記操作ワイヤロープを、それぞれ前記固定シーブを介して前記開閉機構部に連結し、2本の前記懸吊ワイヤロープを、それぞれ前記可動シーブを介して前記腕部に連結し、前記クラブバケットの上面の平面視において、前記腕部と前記懸吊ワイヤロープを連結した箇所を2つの懸吊点とし、前記懸吊点を結んだ直線が、前記トロリの横行方向に対して予め定めた角度を有するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るクレーンによれば、荷役具(例えばクラブバケット)を有するクレーンにおいて、荷役具を任意の角度に旋回することのできるクレーン及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る実施の形態のクレーンのトロリ及びクラブバケットを示した図である。
【図2】本発明に係る実施の形態のクレーンのトロリ及びクラブバケットを示した図である。
【図3】本発明に係る実施の形態のクレーンのクラブバケットの平面概略図である。
【図4】本発明に係る実施の形態のクレーンのクラブバケットの平面概略図である。
【図5】従来のクレーンを示した図である。
【図6】従来のクレーンの作動部を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施の形態のクレーンについて、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明に係る実施の形態のクレーン1(図示しない)のトロリ2及び荷役具(以下、クラブバケットを例として説明する)3周辺の概略を示す。トロリ2は、移動装置22をそれぞれ有する2つの可動シーブ21と、2つの固定シーブ23を有している。クラブバケット3は、2つのバケット部31と、開閉機構部32と、2つの腕部33を有している。また、2本の操作ワイヤロープ(操作ロープ)W1、W2は、それぞれ固定シーブ23を介して、開閉機構部32に連結している。更に、2本の懸吊ワイヤロープ(懸吊ロープ)W3、W4は、それぞれ可動シーブ21を介してクラブバケット3の腕部33に連結している。加えて、xはクレーン1及びトロリ2の横行方向x、yはクレーン1の走行方向y、zは鉛直方向、Rはクラブバケット3の旋回方向Rを示している。
【0022】
ここで、腕部33において、懸吊ロープW3、W4を連結した点を、懸吊点P1、P2とする。この懸吊点P1、P2は、平面視において、クラブバケット3の中心から離間した位置としている。また、平面視において、2つの懸吊点P1、P2を結ぶ直線は、トロリ2(クレーン1)の横行方向xと予め定めた角度で交わるように決定している。
【0023】
なお、移動装置22は、可動シーブ21の位置を制御できる構成であればよい。具体的には、電動アクチュエータ、油圧シリンダ、エアシリンダ、スクリュージャッキ式シリンダ、及びラックアンドピニオン機構等を利用することができる。
【0024】
次に、このクレーン1のクラブバケット3の旋回制御(荷役具旋回制御)について説明する。まず、移動機構22を作動させ、可動シーブ21の位置を移動させる。この2つの可動シーブ21は、横行方向xにおいて、互いに逆方向(接近又は離間する方向等)に移動する。この可動シーブ21の移動により、クラブバケット3は鉛直方向zを中心軸とする旋回方向Rに旋回する(図2参照)。このとき、可動シーブ21の移動距離に応じて、
ドラムDから懸吊ロープW3、W4を繰り出す(又は巻き取る)制御を行うことが望ましい。これは、可動シーブ21の移動により、見かけ上、可動シーブ21から懸吊点P1、P2までの懸吊ロープW3、W4の長さが変化し、クラブバケット3の高さ及び開閉動作に影響がでるためである。
【0025】
なお、クラブバケット3におけるバケット部31の合わせ面が、横行方向xに平行となる位置を、クラブバケット3の初期位置(図1の状態)として、バケット部31の合わせ面が、横行方向xと直角となる位置を旋回時の状態(図2の状態)としているが、本発明は、この構成に限らない。クラブバケット3の初期位置を、バケット部31の合わせ面が、横行方向xと直角になる位置(図2の状態)としてもよい。更に、バケット部31の合わせ面が、横行方向xと予め定めた角度を有する状態を初期位置とすることもできる。
【0026】
上記の構成により、以下の作用効果を得ることができる。第1に、クレーン1のクラブバケット3の旋回制御が可能となり、荷役効率を向上することができる。特に、ブルドーザ等によるばら荷を集める作業が、低減又は不要となるため、荷役作業に必要となる時間及び人員を抑制することができる。
【0027】
第2に、荷役作業にかかる時間を短縮することができる。これは、荷役具(クラブバケット)旋回制御を、他のクラブバケット開閉制御、クラブバケット昇降制御、トロリ横行制御と同時に実行することができるからである。つまり、例えば、クラブバケット3を船倉内に降下させながら、旋回させることが可能となる。
【0028】
第3に、可動シーブ21の移動距離に応じ、懸吊ロープを繰り出す又は巻き取る制御を行う構成により、クレーンの操作性が向上し、荷役効率を向上することができる。これは、荷役具旋回制御に伴い、クラブバケットが上下動や、開閉してしまうことを防止できるためである。
【0029】
なお、クラブバケット3の旋回角度は、上記の90度旋回に限られず、可動シーブ21の移動距離により、0度〜90度の間の任意の角度とすることができる。
【0030】
図3及び4に、クラブバケット3と、可動シーブ21及び固定シーブ23の平面視における位置関係を示した概略図を示す。トロリ2(図示しない)は、2つの固定シーブ23と、2つの可動シーブ21を有している。また、クラブバケット3は、2つのバケット部31と、クラブバケット3の中心部から外周方向に突設した2つの腕部33を有している。この腕部33に、可動シーブ21を介して懸吊ロープW3、W4(図示しない)を連結しており、この連結点を、懸吊点P1、P2として示している。また、平面視において、この2つの懸吊点P1、P2を結ぶ対角線と、横行方向xがなす角を角度θとして示している。
【0031】
次に、クラブバケット3の旋回制御について説明する。まず、図3に示すように、2つの可動シーブ21を横行方向xであって、互いに接近する方向(又は離間する方向)に移動させる。この可動シーブ21の移動により、懸吊ロープW3、W4(図示しない)の位置が変化し、クラブバケット3に旋回する回転力が生じる(図4参照)。図4には、クラブバケット3を90度旋回させた状態を示している。このクラブバケット3は、可動シーブ21の移動距離により、旋回角度を制御することができる。
【0032】
なお、クラブバケット3は、平面視においてクラブバケット3の中心から、外側にずれた位置に、2つの懸吊点P1、P2を有していればよい。そのため、特に腕部33を形成しないクラブバケットを利用することもできる。
【0033】
また、懸吊点P1、P2の位置は、この懸吊点P1、P2を結ぶ直線(対角線)が、平面視におけるクラブバケット3の中心を通るように決定することが望ましい。更に、懸吊点P1、P2は、平面視におけるクラブバケット3の中心から遠い位置とすると、クラブバケット3の旋回角度を決定する精度を向上することができる。他方で、懸吊点P1、P2は、平面視におけるクラブバケット3の中心から近い位置とすると、可動シーブ21の移動距離が小さくても、クラブバケット3の旋回角度を大きくすることができる。つまり、トロリ2を小型化することが可能となる。
【0034】
加えて、初期状態(図3の状態)における懸吊点P1、P2を結ぶ直線(対角線)と、横行方向xのなす角θは、任意に決定することができる。具体的には、5度≦θ≦175度の範囲、望ましくは30度≦θ≦150度の範囲、更に望ましくはθ=45度又は135度とする。これは、クラブバケット3の開口方向を、船倉の壁面に対して直角又は平行に維持することが容易となるからである。また、θ=45度又は135度とし、且つクラブバケット3の旋回角度を90度とした場合、可動シーブからクラブバケットまでの懸吊ロープの長さが、変化しない。そのため、懸吊ロープの繰り出し又は巻き取りの制御が不要となる。
【0035】
以上より、トロリ2で懸吊したクラブバケット3(荷役具)を、鉛直方向zを中心軸とした旋回方向Rに旋回することのできるクレーン1を提供することができる。なお、本発明は、クラブバケット3を有するクレーンの他に、ばら荷を荷役するモッコや、コンテナを荷役するスプレッダ等の荷役具を有するクレーンに採用することもできる。このクレーンにより、荷役するコンテナの方向を変更したりすることが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1 クレーン
2 トロリ
3 荷役具、クラブバケット
21 可動シーブ
22 移動装置
23 固定シーブ
31 バケット部
32 開閉機構部
33 腕部
W ワイヤロープ、ロープ
W1、W2 操作ワイヤロープ、操作ロープ
W3、W4 懸吊ワイヤロープ、懸吊ロープ
P1、P2 懸吊点
x (クレーン及びトロリの)横行方向
R 旋回方向
θ (トロリの横行方向xと懸吊点P1、P2を結んだ対角線の)なす角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚構造物と、前記脚構造物に設置したブーム及びガーダと、トロリと、2本の懸吊ワイヤロープを有するクレーンであり、一方の前記懸吊ワイヤロープを、海側懸吊ドラムから、前記ブームに設置した海側懸吊シーブと、前記トロリを介して荷役具に連結し、他方の前記懸吊ワイヤロープを、陸側懸吊ドラムから、前記ガーダに設置した陸側懸吊シーブと、前記トロリを介して前記荷役具に連結し、前記トロリが、2本の前記懸吊ワイヤロープを支持する2つの可動シーブと、前記可動シーブに設置した移動装置を有しており、
前記荷役具の上面の平面視において、前記荷役具と2本の前記懸吊ワイヤロープを連結した箇所を2つの懸吊点とし、前記懸吊点を結んだ直線が、前記トロリの横行方向に対して予め定めた角度を有するように構成したクレーンの制御方法であって、
前記海側懸吊ドラム及び前記陸側懸吊ドラムで、前記2本の懸吊ワイヤロープを同一速度で巻き取る又は送り出す荷役具昇降制御と、
前記2本の懸吊ワイヤロープの一方を巻き取り、他方を送り出すトロリ横行制御と、
前記可動シーブを前記移動装置により前記トロリの横行方向に移動させ、前記可動シーブの移動に伴い前記荷役具が鉛直方向を軸として旋回する荷役具旋回制御のうち、少なくとも2つの制御を同時に、又はいずれか1つの制御を単独で行うことを特徴とするクレーンの制御方法。
【請求項2】
脚構造物と、前記脚構造物に設置したブーム及びガーダと、トロリと、2本の懸吊ワイヤロープと2本の操作ワイヤロープを有するクレーンであり、一方の前記懸吊ワイヤロープを、海側懸吊ドラムから、前記ブームに設置した海側懸吊シーブと、前記トロリを介してクラブバケットに連結し、他方の前記懸吊ワイヤロープを、陸側懸吊ドラムから、前記ガーダに設置した陸側懸吊シーブと、前記トロリを介して前記クラブバケットに連結し、一方の前記操作ワイヤロープを、海側操作ドラムから、前記ブームに設置した海側操作シーブと、前記トロリを介してクラブバケットに連結し、他方の前記操作ワイヤロープを、陸側操作ドラムから、前記ガーダに設置した陸側操作シーブと、前記トロリを介して前記クラブバケットに連結し、
前記トロリが、2本の前記懸吊ワイヤロープを支持する2つの可動シーブと、前記可動シーブに設置した移動装置と、2本の前記操作ワイヤロープを支持する2つの固定シーブを有し、前記クラブバケットが、2つのバケット部と、開閉機構部と、2つの腕部を有しており、2本の前記操作ワイヤロープを、それぞれ前記固定シーブを介して前記開閉機構部に連結し、2本の前記懸吊ワイヤロープを、それぞれ前記可動シーブを介して前記腕部に連結し、
前記クラブバケットの上面の平面視において、前記腕部と前記懸吊ワイヤロープを連結した箇所を2つの懸吊点とし、前記懸吊点を結んだ直線が、前記トロリの横行方向に対して予め定めた角度を有するように構成したクレーンの制御方法であって、
前記海側操作ドラム及び前記陸側操作ドラムで、前記2本の操作ワイやロープを同一速度で巻き取る又は送り出すクラブバケット開閉制御と、
前記海側懸吊ドラム及び前記陸側懸吊ドラムで、前記2本の懸吊ワイヤロープを同一速度で巻き取る又は送り出す荷役具昇降制御と、
前記2本の懸吊ワイヤロープの一方を巻き取り、他方を送り出すトロリ横行制御と、
前記可動シーブを前記移動装置により前記トロリの横行方向に移動させ、前記可動シーブの移動に伴い前記荷役具が鉛直方向を軸として旋回する荷役具旋回制御のうち、少なくとも2つの制御を同時に、又はいずれか1つの制御を単独で行うことを特徴とするクレーンの制御方法。
【請求項3】
前記荷役具旋回制御の際に、前記2本の懸吊ワイヤロープの繰り出し又は巻き取りを行い、前記可動シーブから前記荷役具又は前記クラブバケットまでの前記懸吊ワイヤロープの長さを一定に維持する制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のクレーンの
制御方法。
【請求項4】
脚構造物と、前記脚構造物に設置したブーム及びガーダと、トロリと、2本の懸吊ワイヤロープを有するクレーンであり、
一方の前記懸吊ワイヤロープを、海側懸吊ドラムから、前記ブームに設置した海側懸吊シーブと、前記トロリを介して荷役具に連結し、他方の前記懸吊ワイヤロープを、陸側懸吊ドラムから、前記ガーダに設置した陸側懸吊シーブと、前記トロリを介して前記荷役具に連結したクレーンにおいて、
前記トロリが、2本の前記懸吊ワイヤロープを支持する2つの可動シーブと、前記可動シーブに設置した移動装置を有しており、
前記荷役具の上面の平面視において、前記荷役具と2本の前記懸吊ワイヤロープを連結した箇所を2つの懸吊点とし、前記懸吊点を結んだ直線が、前記トロリの横行方向に対して予め定めた角度を有するように構成したことを特徴とするクレーン。
【請求項5】
脚構造物と、前記脚構造物に設置したブーム及びガーダと、トロリと、2本の懸吊ワイヤロープと2本の操作ワイヤロープを有するクレーンであり、
一方の前記懸吊ワイヤロープを、海側懸吊ドラムから、前記ブームに設置した海側懸吊シーブと、前記トロリを介してクラブバケットに連結し、他方の前記懸吊ワイヤロープを、陸側懸吊ドラムから、前記ガーダに設置した陸側懸吊シーブと、前記トロリを介して前記クラブバケットに連結し、
一方の前記操作ワイヤロープを、海側操作ドラムから、前記ブームに設置した海側操作シーブと、前記トロリを介してクラブバケットに連結し、他方の前記操作ワイヤロープを、陸側操作ドラムから、前記ガーダに設置した陸側操作シーブと、前記トロリを介して前記クラブバケットに連結したクレーンにおいて、
前記トロリが、2本の前記懸吊ワイヤロープを支持する2つの可動シーブと、前記可動シーブに設置した移動装置と、2本の前記操作ワイヤロープを支持する2つの固定シーブを有し、
前記クラブバケットが、2つのバケット部と、開閉機構部と、2つの腕部を有しており、
2本の前記操作ワイヤロープを、それぞれ前記固定シーブを介して前記開閉機構部に連結し、2本の前記懸吊ワイヤロープを、それぞれ前記可動シーブを介して前記腕部に連結し、
前記クラブバケットの上面の平面視において、前記腕部と前記懸吊ワイヤロープを連結した箇所を2つの懸吊点とし、前記懸吊点を結んだ直線が、前記トロリの横行方向に対して予め定めた角度を有するように構成したことを特徴とするクレーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−184060(P2012−184060A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47469(P2011−47469)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】