説明

クロクマの副甲状腺ホルモン及びクロクマの副甲状腺ホルモンを使用する方法

クロクマの副甲状腺ホルモン(PTH)及びその機能的フラグメントが提供される。さらにまた提供されるものは、クロクマのPTH及び機能的フラグメントを使用して、骨形成細胞でcAMPを増加させ;骨形成細胞でアポトーシスを減少させ;骨形成細胞でBaxタンパク質対Bcl-2タンパク質の発現レベルの比率を低下させ;骨形成細胞で骨マトリックスタンパク質、転写活性化因子、又は転写調節因子の1つ以上の発現レベルを増加させ;骨形成細胞で骨の鉱物濃度を高め、骨質量を増加させ、骨減少を低下させ、若しくは骨折発生率を低下させ、又は前記のいずれかの組合せを生じる方法であり、さらにまた提供されるものは、クロクマの副甲状腺ホルモン(PTH)及びその機能的フラグメントに対して生成された抗体である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本願は、米国仮出願第60/736,145号(2005年11月10日出願)(参照することにより本明細書に組み込まれる)の利益を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発に関する記載
本発明は、国立衛生研究所(NIAMS AR050420及びNIA R21 AA 14399−01A2)及び国立科学財団(IBN−0343515)より与えられた米国政府支援によりなされた。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
背景技術
骨減少疾患は現在、骨粗しょう症を有する1千万人及び骨質量が低下し骨粗しょう症を発症するリスクがある3千4百万人を含む、ほぼ4千4百万人のアメリカ人の健康を脅かしている。骨粗しょう症を有するアメリカ人の数は2020年までに増加すると予想される。結果として多数の人が骨質量低下のために骨折のおそれがある。50歳を超える白人女性のほぼ40%及び白人男性の13%が、彼らの生涯において股関節部、背骨又は前腕を骨折するおそれがある。骨粗しょう症関連骨折に付随する経費は2002年でほぼ10億ドルであり、さらに上昇し続けると予想される。一次性(年齢関連)骨粗しょう症に加えて、不使用による骨粗しょう症は、特に卒中又は脊髄損傷のために長期にわたって固定化される患者にとって重要な臨床的問題である。骨折率は、脊髄損傷後最初の年で健常コントロールと比較して2倍であり、骨折率はまた卒中発作後に健常コントロールと比較して上昇する。不使用は、主として骨格負荷の低下が不均衡な骨のリモデリングを引き起こす(前記は骨減少を生じる)ために骨折率を増加させる。
【0004】
要旨
ある実施態様では、本発明は、配列番号:2の連続する少なくとも10アミノ酸残基を含む単離されたポリペプチドを提供する。ここで前記ポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸残基の41及び52の少なくとも1つを含む。本発明はまた、配列番号:1を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
別の実施態様では、本発明は骨形成細胞でcAMPレベルを増加させる方法を提供する。前記方法は、配列番号:2のアミノ酸残基1−34を含むポリペプチドの有効量と骨形成細胞を接触させることを含み、この場合、骨形成細胞とポリペプチドとの接触は、骨形成細胞でcAMPレベルを増加させる。
さらに別の実施態様では、本発明は、骨形成細胞のアポトーシスを減少させる方法を提供する。前記方法は、配列番号:2のアミノ酸残基1−34を含むポリペプチドの有効量と骨形成細胞を接触させることを含み、この場合、骨形成細胞とポリペプチドとの接触は、骨形成細胞でアポトーシスを減少させる。
さらに別の実施態様では、本発明は、Baxタンパク質対Bcl-2タンパク質の発現レベルの比率を骨形成細胞で減少させる方法を提供する。前記方法は、配列番号:2のアミノ酸残基1−34を含むポリペプチドの有効量と骨形成細胞を接触させることを含み、この場合、骨形成細胞とポリペプチドとの接触は、Baxタンパク質対Bcl-2タンパク質の発現レベルの比率を骨形成細胞で減少させる。
さらに別の実施態様では、本発明は、骨マトリックスタンパク質、転写活性化因子、又は転写調節因子の発現レベルを骨形成細胞で増加させる方法を提供する。前記方法は、配列番号:2のアミノ酸残基1−34を含むポリペプチドの有効量と骨形成細胞を接触させることを含み、この場合、骨形成細胞とポリペプチドとの接触は、骨マトリックスタンパク質、転写活性化因子、又は転写調節因子の発現レベルを骨形成細胞で増加させる。
さらに別の実施態様では、本発明は、対象者で骨の鉱物濃度(bone mineral density)を高め、骨質量を増加させ、骨減少を低下させ、又は骨折発生率を低下させる方法を提供する。前記方法は、配列番号:2のアミノ酸残基1−34を含むポリペプチドの有効量と骨形成細胞を対象者で接触させることを含み、この場合、骨形成細胞とポリペプチドとの接触は、対象者で骨の鉱物濃度を高め、骨質量を増加させ、骨減少を低下させ、又は骨折発生率を低下させる。
さらに別の実施態様では、本発明は、対象者で骨の鉱物濃度を高め、骨質量を増加させ、骨減少を低下させ、若しくは骨折発生率を低下させ、又は前記のいずれかの組合せを生じる方法を提供する。前記方法は、クマの副甲状腺ホルモン又はその機能的フラグメントを含むポリペプチドの有効量と骨形成細胞を対象者で接触させることを含み、この場合、骨形成細胞と前記ポリペプチドとの接触は、対象者で骨の鉱物濃度を高め、骨質量を増加させ、骨減少を低下させ、又は骨折発生率を低下させる。
さらに別の実施態様では、本発明は、本質的に配列番号:2のアミノ酸残基1−34から成る単離されたポリペプチドを提供する。
さらにまた別の実施態様では、本発明は、本質的に配列番号:2のアミノ酸残基1−36から成る単離されたポリペプチドを提供する。
【0005】
詳細な説明
ヒト及び他の大半の哺乳動物では、例えば加齢及び長期の不使用のような要因は骨粗しょう症及び骨折リスクの増加をもたらしえる。脊髄損傷による不使用は、特に脛骨及び大腿骨における骨の鉱物濃度を顕著に低下させ、さらに大腿骨骨幹断面の慣性モーメントを顕著に低下させる。したがって、骨の曲げ強さは脊髄損傷によって低下し、骨折リスクは増加する。卒中による不使用もまた骨折リスクを増加させる。さらにまた、骨の力学的負荷ゼロは、骨形成の持続的低下に加えて骨吸収の急激な増加のために急速な骨減少を引き起こしえる。不使用により誘発される骨のリモデリングにおける変化は皮質内多孔度を増加させ、長骨骨幹の断面特性及び力学的特性を低下させる。負荷ゼロはまた小柱の骨質量及び微細構造を顕著に低下させる。
骨に対する不使用の有害な作用は再可動化期間にも持続しえる。いくつかの骨は再可動化時に回復しえるが、回復は遅く、しばしば不完全である。例えば、ベッド上長期療養時の骨減少速度は再可動化時の骨獲得速度の3倍を超え、さらに宇宙飛行中に失われた骨の回復は5年後でさえも不完全でありえる。骨における不使用誘発変化が再開した活性によって完全に復帰しえるとき、再可動化期間はしばしば固定化期間の2から3倍長い。骨に対する力学的負荷を減少させる多くの状況で骨形成が低下するか、及び/又は骨吸収が増加する。しかしながら、骨吸収及び骨形成の両方がイヌの前肢の固定化時に増加するが、それでもなお前記事例で顕著な骨減少が存在する。同様に、脊髄損傷患者では大腿骨の入れ替えが生じ、前記は骨減少及び骨折発生率の増加をもたらす。
【0006】
これとは対照的に、クロクマは、加齢(図1)又は、より重要なことに冬眠時に生じる長期の不使用による顕著な骨減少を示さない。冬眠するクロクマは、北部領域ではほぼ同じ長さの固定化期間及び活動期間を有する。骨代謝の血清マーカーに関するデータ(下記参照)は、不使用の間に、吸収と形成の間で通常のラグタイム(すなわち復帰期間)を示しながら吸収及び形成の両方がクマでは増加し、さらに形成の増加は吸収の増加と対になり均衡することを示唆した。クロクマの腸骨稜の生検の組織学的データもまた、不活動時の吸収と形成の増加を示している。しかしながら、クマは、小柱骨体積、骨の鉱物濃度及び骨の鉱物含有量が冬眠時に減少しないという点で固有である。さらにまた、毎年の不使用の期間にもかかわらず、クロクマでは皮質の骨強度及び灰分は年齢とともに増加し、さらに多孔度は年齢とともに変化しない。皮質の骨多孔度は、活動中のハイイログマより冬眠時のハイイログマで顕著に低く、さらに大腿骨断面の幾何学及び強度は冬眠によって影響を受けない。
クマは多くの固有の生物学的メカニズムを進化させ、食物の無い長期の固定化を生き抜く。これらのメカニズムはカルシウム及び骨代謝の他の生成物の再循環を含むようである。なぜならば、クマは冬眠時に骨の入れ替えを増加させるが、廃棄物を排出しないからである。ヒトでは、ベッド上長期療養によって誘発される不使用による骨粗しょう症は、対応する形成の増加が存在しない吸収増加によって主として引き起こされる。これは高カルシウム血症をもたらし、負のカルシウムバランスが尿及び糞便カルシウムの増加によって発生する。クマは冬眠時には排尿や排便を行わないので、吸収によって骨から遊離したカルシウムの大半が骨芽細胞による骨形成を介して骨に再循環されることはありそうなことである。イオン化カルシウムが、おそらく吸収と形成との間のラグタイムのために冬眠時には約23%増加することが見出されている。逆説的に、クロクマのPTHレベルは、イオン化カルシウムが最高時にもっとも高い(表1)。総合すれば、これらの発見は、クマが骨粗しょう症を回避するために生物学的メカニズムを進化させてきたことを示唆している。
【0007】
不使用時に吸収との連結から骨形成を切り離すメカニズムは大半の動物で不明であるが、おそらく力学的及び生化学的因子の両方が必要とされるであろう。力学的ひずみの欠如は、骨細胞のアポトーシスを開始させ、同時に骨芽細胞の活性を減少させることによって吸収の増加をもたらしえる。ホルモン(例えばヒトPTH)は、骨細胞を力学的刺激に対して鋭敏にし、さらに力学的負荷と協調して骨形成を増加させることができる。ヒトに1日1回投与したヒトPTHは骨質量を増加させ、骨折発生率を低下させる。したがって、クロクマでは、循環PTHは低レベルの力学的刺激(おそらく冬眠期間の寒さによる震え又は姿勢の変更による)に対して感受性を高め、負使用時の骨形成の維持を促進する。PTHはまた、クロクマで骨芽細胞の分化を刺激しさらに骨芽細胞のアポトーシスを抑制することによって骨形成の維持を促進する。
PTHは血中カルシウムレベルの一次調整因子であり、したがってクロクマでは負使用時に恒常的な血清カルシウムレベルを維持するために役割を果たす。血清PTHレベルは、活動中及び冬眠中のクロクマにおいて骨形成マーカーオステオカルシンと正比例し(図2)、オステオカルシン及びPTHは冬眠時に両方とも増加する。さらにまた、クロクマのPTH濃度は、イオン化カルシウム濃度が最高の時に最も高い。骨の吸収は冬眠時に増加するが総血清カルシウム(tCa)は変化しないので、増加したPTHレベルはおそらくカルシウムの腎の再吸収を高め、鉱物の骨への再循環を促進して骨形成の均衡増加を生じる。これによって、小柱及び皮質の骨特性(例えば骨の鉱物濃度(“BMD”)及び皮質多孔度)の観察された保全がもたらされる。骨吸収は冬眠時に増加するが、クマは冬眠時に老廃物を排出しないという事実にもかかわらず、血中カルシウム濃度は一定である。冬眠時に骨吸収によって遊離したカルシウムは再循環され、骨形成と骨吸収との均衡連結を維持することによって骨に戻される。このことは、PTHは冬眠中のクロクマでは合成作用を有するという考えを支持し、冬眠時に均衡した骨のリモデリングを維持するクマの特異な能力についての説明を提供する。PTHの合成作用は、冬眠からの覚醒に続いて物理的活動が開始したときクロクマでは強化されえる。力学的負荷とヒトPTHは、相乗的に作用してラットではin vivoで骨形成を増加させ、さらにin vitroで生化学的シグナリングを増加させることが以前に示された。春の再可動化時のクロクマの骨形成は、血清オステオカルシンによって表示されるように、冬眠前のレベルよりも高いままである。
【0008】
クロクマ(ウルスス・アメリカヌス(Ursus americanus))の副甲状腺ホルモン(PTH)をコードするポリヌクレオチドの配列(配列番号:1)が、84アミノ酸の成熟PTHタンパク質のポリペプチド配列(配列番号:2)とともに発見された。さらにまた、完全長のPTHタンパク質(配列番号:4)をコードするcDNA(配列番号:3)の配列が決定された(前記完全長PTHタンパク質は25アミノ酸のシグナルペプチド(配列番号:4のアミノ酸残基1−25)及び6アミノ酸ペプチド(配列番号:4のアミノ酸残基26−31)を含む)。クロクマの前記成熟PTHタンパク質は他の公知のPTHタンパク質とは異なっている(図5)。ヒトPTHと比較して、クロクマのPTHは、完全長の成熟PTHポリペプチドの合計84アミノ酸残基のうち11の異なるアミノ酸残基を有する。さらにまた本明細書に開示されるものは、クロクマのPTH及びその機能的フラグメントを使用する種々の方法である。配列番号:2の連続する少なくとも10アミノ酸残基を含みさらにアミノ酸残基41又は52の少なくとも1つを含むポリペプチドサブフラグメントを用いて、クロクマのPTHに特異的な抗体を開発することができることが特に想定される。これらの抗体を用いて、例えばELISAアッセイでクロクマのPTHを定量することができる。
骨形成細胞表面のPTHレセプターは、細胞内の環状アデノシンモノホスフェート(cAMP)依存性第二メッセンジャーシグナリング経路と連結される。これらのシグナリング経路は順次骨形成に必要とされる遺伝子(例えばI型コラーゲン、オステオネクチン及びオステオポンチンをコードする遺伝子)の発現を増加させる。cAMP/タンパク質キナーゼA経路は骨形成の組織学的指標及び血清指標におけるPTH-誘発増加の大半について中心的に関わっているので、当然cAMP応答の増加はより大きな骨形成をもたらしえるということになる。あるPTHタンパク質配列中の比較的少数のアミノ酸置換が、天然形と比較してより強い環状アデノシンモノホスフェート(cAMP)生成を刺激することができる。例えば、卵巣摘出ラットは、ラットPTH1-34に対するよりもウシPTH1-34の注射(毎日25μg)に対し25%強い骨形成応答を示した(ここでラットPTH1-34はウシPTH1-34と比較して5アミノ酸の配列相違を有する)。ウシPTH1-34の注射は治療時に37%の骨体積増加をもたらす。
【0009】
したがって、クロクマのPTHのアミノ酸置換が、ヒトPTHよりも骨形成でより強いcAMP産生を誘発するということはありそうなことである。一般的に、PTHは、例えば骨芽細胞のアポトーシスの低下、Runx2を介する骨芽細胞の分化の増加、骨細胞でのSOSTによる負のフィードバックのダウンレギュレーション、及び骨マトリックスタンパク質のmRNAの産生増加(いずれもcAMP仲介経路を介する)のようなメカニズムによってより強い骨形成応答を誘引する。本発明のメカニズムを知ることは必要ではないが、クロクマのPTHは、他のPTH型よりもおそらく骨形成性であると考えられ、このことがなぜクロクマだけが不使用時に骨の均衡リモデリングを維持することができるかを説明している。本発明の別の実施態様では、骨形成細胞とクロクマのPTH又はその機能的フラグメントとの接触が、骨形成細胞でcAMPレベルを増加させる。本発明のまた別の実施態様では、骨形成細胞は配列番号:2のアミノ酸残基1−34又は1−36を含むポリペプチドと接触される。本発明のまた別の実施態様では、骨形成細胞は配列番号:2を含むポリペプチドと接触される。別の実施態様では、骨形成細胞は配列番号:2のアミノ酸残基11−84又は7−84を含むポリペプチドと接触される。
本明細書で用いられる、PTHポリペプチドと“細胞を接触させる”とは、in vitro実験の場合には、ポリペプチドを培養液に添加すること、又はポリペプチド治療薬のための適切な投与方法を用いてポリペプチドを対象者に投与することを含む。“細胞を接触させる”とはまた、ある発現系で所望のポリペプチドをコードする外因性ポリヌクレオチドを対象者に導入し、それによって対象者でポリペプチドを合成及び放出することを含む。本明細書で用いられる、“骨形成細胞”には骨芽細胞、骨細胞、骨基底細胞、軟骨芽細胞及び軟骨細胞が含まれるが、ただしこれらに限定されない。適切には、骨形成細胞は対象者中に存在しえる。
【0010】
骨形成細胞は規則的に消長し、細胞死の大半はプログラムされた細胞死又はアポトーシスによる。この規則的な消長速度が与えられるならば、骨形成細胞のアポトーシスを減少させるいずれのメカニズムも骨形成細胞数の増加をもたらすであろう(おそらく骨増殖を促進するであろう)。したがって、本発明の別の実施態様では、骨形成細胞とクロクマのPTH又はその機能的フラグメントとの接触は、骨形成細胞のアポトーシスを減少させる。本発明のまた別の実施態様では、骨形成細胞は配列番号:2のアミノ酸残基1-34又は1−36を含むポリペプチドと接触される。本発明のまた別の実施態様では、骨形成細胞は配列番号:2を含むポリペプチドと接触される。
さらにまた、内因性クロクマPTHのより大きなC-末端フラグメントのいくつかは、CPTHR(C-末端PTHレセプター)との結合を介してシーズン性骨リモデリングプロセスで役割を果たすことが可能である。特に、クマのPTHのC-末端フラグメントは、破骨細胞形成の妨害によって、及び、おそらく、例えば不使用のような吸収刺激に応答して通常生じる成熟破骨細胞の活性に影響を与えることによってPTH1-84及び1-34のカルシウム血症性作用と拮抗しえる(P. Divieti et al. 2002, Endocrinology 143(1):171-6)。これは、クマが恒常的なカルシウムレベルを冬眠中に維持するために役立ちえる。したがって、本発明の別の実施態様では、骨細胞及び骨芽細胞は配列番号:2のアミノ酸残基11−84又は7−84を含むポリペプチドと接触される。
【0011】
タンパク質Baxはアポトーシスを促進し、一方、Bcl-2タンパク質は細胞をアポトーシスから保護し、Bax対Bcl-2の発現比率の低下は個々の細胞集団におけるアポトーシスの低下の指標である。したがって、本発明の別の実施態様では、骨形成細胞とクロクマのPTH又はその機能的フラグメントとの接触は、Bcl-2タンパク質の発現レベルに対するBaxタンパク質の発現レベルの比率を骨形成細胞中で低下させる。本発明のまた別の実施態様では、骨形成細胞は、配列番号:2のアミノ酸残基1−34又は1−36を含むポリペプチドと接触される。本発明のまた別の実施態様では、骨形成細胞は、配列番号:2を含むポリペプチドと接触される。本発明のまた別の実施態様では、骨形成細胞は、配列番号:2のアミノ酸残基11−84又は7−84を含むポリペプチドと接触される。
実施例11は、クロクマのPTH1-34は培養細胞でBax/Bcl-2の発現比率を低下させ、一方ヒトのPTH1-34はBax/Bcl-2の発現比率を増加させる(図7)。したがって、クロクマのPTH1-34はアポトーシスの防止にヒトPTH1-34よりも有効であるようである。理論に拘束されないが、この相違は、ヒトとクロクマのPTH1-34との間で2つのアミノ酸が相違する結果の可能性がある。これらのデータは、クマのPTHはヒトのPTHよりもより合成的であることを示唆している。なぜならば骨芽細胞のアポトーシスの低下はPTH処理によって誘発された骨形成応答に寄与しえるからである。
骨形成細胞とクロクマのPTH又はその機能的フラグメントとの接触はまた、骨マトリックスタンパク質、転写活性化因子、又は転写調節因子の発現を骨形成細胞で増加させる。本発明のまた別の実施態様では、転写活性化因子はRunx2である。本発明の別の実施態様では、転写調節因子はc-fosである。骨マトリックスタンパク質は適切にはオステオカルチン、オステオポンチン及びI型コラーゲンを含みえる。本発明の別の実施態様では、骨形成細胞は配列番号:2のアミノ酸残基1−34又は1−36を含むポリペプチドと接触される。本発明のまた別の実施態様では、骨形成細胞は、配列番号:2を含むポリペプチドと接触される。本発明のまた別の実施態様では、骨形成細胞は、配列番号:2のアミノ酸残基11−84又は7−84を含むポリペプチドと接触される。
【0012】
ヒトで閉経後及び年齢関連骨粗しょう症を治療するために外因性ヒトPTHが用いられるが、前記は理想的な治療薬ではない。組換えヒトPTH1-34(LY333334, Eli Lilly, Indianapolis IN)のみが現在臨床的使用のために認可され、組換えヒトPTH1-84の一形態(ALX1-11, NPS Pharmaceuticals, Parsippany, NJ)のみが米国食品医薬局によって認可が検討されている。LY333334及びALX1-11はほぼ同じ規模で骨形成をin vivoで刺激することができるが、それらの生物学的作用は同一ではない。例えば、PTH1-34はプロコラーゲン-1のmRNAの産生をダウンレギュレートするが、PTH1-84はダウンレギュレートしない(Nasu et al. 1998, Endocr J 45:229-34)。さらにまた、ヒトPTHのC-末端部分は、成熟ホルモンから切り離されたとき、重要な生物学的機能(例えば骨吸収の阻害)をもつ。
LY333334又はALX1-11のいずれかの長期使用はラットで骨肉種を生じるが、予備的結果は、ヒトPTH1-84はヒトPTH1-34よりも低い発癌率を有することを示した(おそらく外因性ヒトPTH1-84のC-末端フラグメント(抹消タンパク分解プロセッシングから生じる)はC-末端PTHレセプター(CPTHR)と結合し、骨細胞のアポトーシスを高めるためであろう)。したがって、等しく合成的ではあるけれども、ヒトPTH1-84は、ヒトPTH1-34と比較してより優れた骨粗しょう症治療でありえる。しかしながら、ヒトPTH1-84は失われた骨を完全には回復しえず、男性及び女性で、年齢関連骨粗しょう症により皮質及び海面質の20−30%が失われるが、ALX1-11を用いたその推奨治療スケジュールの間に8%しか回復されないと言われている。したがって、より高い骨形成能力を有する骨粗しょう症治療が臨床で要求される。
【0013】
本発明のさらに別の実施態様では、対象者での骨形成細胞とクロクマのPTH又はその機能的フラグメントとの接触は、対象者で骨の鉱物濃度を高め、骨質量を増加させ、骨減少を低下させ、又は骨折発生率を低下させる。本発明の別の実施態様では、骨形成細胞は、配列番号:2のアミノ酸残基1−34又は1−36を含むポリペプチドと接触される。本発明のまた別の実施態様では、骨形成細胞は、配列番号:2を含むポリペプチドと接触される。本発明のまた別の実施態様では、骨形成細胞は、配列番号:2のアミノ酸残基11−84又は7−84を含むポリペプチドと接触される。
適切には、対象者での骨形成細胞とクロクマのPTH又はその機能的フラグメントとの接触は、少なくとも約5%又は少なくとも約10%、骨の鉱物濃度を高め、骨質量を増加させ、骨減少を低下させ、又は骨折発生率を低下させる。骨の鉱物濃度の増加、骨質量の増加、骨減少の低下又は骨折発生率の低下は、少なくとも約15%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約75%又は少なくとも約90%である。骨の鉱物濃度の増加、骨質量の増加、骨減少の低下又は骨折発生率の低下は、同じ患者の治療前及び治療後の所望の特徴を当業者に公知の技術によって測定することによって決定される。例えば、骨の鉱物濃度は、脊柱、手首、腕又は脚の骨の二重エネルギーX-線(DEXA)又はCTスキャンを含む方法によって決定することができる。
【0014】
対象者は、適切にはヒト、ウマ、イヌ、ネコ、マウス、クマ、ウシ、ブタ又はシカを含む(ただしこれらに限定されない)哺乳動物でありえる。対象者は骨粗しょう症を有しているものでも、又は骨粗しょう症を発症するリスクがあるものでもよい。骨粗しょう症を発症するリスク因子には以下が含まれる:50歳以降の骨折の既往歴、現時点での低い骨質量、一親等の親族の骨折歴、女性であること、痩せているか及び/又は小柄な骨格を有すること、高齢、骨粗しょう症の家族歴、閉経の結果としてのエストロジェン欠乏(特に初期又は外科的に誘発されたもの)、月経期間の異常な欠落(無月経)、神経性食欲不振、生涯にわたる低いカルシウム摂取、ビタミンD欠乏、ある種の医薬の使用(コルチコステロイド、化学療法、抗痙攣薬、及び他のもの)、ある種の慢性的症状の存在(例えば腸でカルシウム吸収を低下させるもの(例えばクローン病))、男性でテストステロンレベルの低下、非活動的なライフスタイル、現時点での喫煙、アルコールの過剰使用、白人又はアジア系であること、ただしアフリカ系アメリカ人及びヒスパニック系アメリカ人も同様にリスクが高い。さらにまた、女性は閉経後5から7年でその骨質量の20%を失い、彼らを骨粗しょう症に対しより感受性にしている。
【0015】
クロクマのPTH又はその機能的フラグメントはまた、防止薬又は予防薬(不使用性骨粗しょう症と戦うため、又は骨粗しょう症を発症するリスクがある対象者で骨粗しょう症を予防するための手段)として有用である。クマは、不使用時に均衡した骨のリモデリングを維持する唯一の動物のように思われるので、クロクマのPTH又はその機能的フラグメントはまた、例えば宇宙飛行中に宇宙飛行士で及び損傷後の脊髄損傷患者で生じる骨格への負荷の低下時における骨減少を防ぐために有用である。
クロクマのPTH又はその機能的フラグメントは、カルシウム及び/又はビタミンDと一緒に投与することができる。カルシウム及び/又はビタミンDはクロクマのPTH又はその機能的フラグメントと同時に投与してもよく、又はクロクマのPTH又はその機能的フラグメントの前若しくは後で投与してもよい。適切には、“ビタミンD”は完全なビタミンDクラスの化合物を指す。
クロクマのPTH若しくはその機能的フラグメント、又はクロクマのPTH若しくはその機能的フラグメントを含む組成物の投与は、任意の適切な技術によって達成することができる。クロクマのPTH又はその機能的フラグメントは、例えば経口、経鼻、直腸及び非経口ルート投与を含む任意の適切なルートによって投与することができる。本明細書で用いられる、非経口という用語には皮下、皮内、静脈内、筋肉内、腹腔内及び脊髄内投与(例えば注射による)が含まれるが、ただしこれらに限定されない。上記で考察したように、ポリペプチドの投与には外因性ポリヌクレオチドの投与が含まれる(前記ポリヌクレオチドは、それが対象者で前記ポリペプチドを発現することができるようにプロモーターと機能的に連結されている)。ポリペプチドの投与にはまた、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むウイルスベクターの投与が含まれる。適切には、ウイルスベクターはアデノウイルスベクターである。
【0016】
クロクマのPTH若しくはその機能的フラグメント、又はクロクマのPTH若しくはその機能的フラグメントを含む組成物は、継続的に又は当業者が容易に決定することができる別個の間隔で投与することができる。通常の技量を有する臨床医は、対象者に投与されるべき、クロクマのPTH又はその機能的フラグメントの適切な量を決定することができる。
個々の任意の対象者に対する個々の有効用量は、治療される異常及び前記異常の重篤度、用いられる個々の化合物の活性、用いられる個々の組成物、対象者の年齢、体重、一般的健康状態、性別及び食事療法、投与ルート、用いられるクロクマのPTH又はその機能的フラグメントの排泄速度又は不活化速度、治療期間、クロクマのPTH又はその機能的フラグメントと一緒に又は同時に用いられる他の医薬、及び医療分野で周知の同様な因子を含む多様な因子に左右されるであろう。例えば、所望の効果を達成するために必要な用量よりも低いレベルで用量を開始し、前記用量を所望の効果が達成されるまで徐々に増加させることは当分野の通常の技術レベル内である。
適切には、ある実施態様のクロクマのPTH又はその機能的フラグメントの投与量は1日当たり0.10μg/kgから1日当たり40μg/kgである。また別の実施態様では、投与量は1日当たり5μg/kgから1日当たり20μg/kgである。さらに別の実施態様では、投与量は対象者当たり10μg/kg/日である。また別の実施態様では、投与量は対象者当たり20μg/kg/日から40μg/kg/日の範囲内である。さらに別の実施態様では、投与量は対象者当たり30μg/kg/日である。ある実施態様では対象者は人間である。適切には、ある実施態様では1日の投与量が1週間投与され、別の実施態様では1ヶ月間投与され、さらに別の実施態様では3ヶ月間、さらに別の実施態様では6ヶ月間、さらに別の実施態様では1年間、さらに別の実施態様では1年半、さらに別の実施態様では2年間、さらに別の実施態様では3年間投与される。
【0017】
所望の場合は、有効な1日の用量を投与の目的のために複数の用量に分割することができる。結果として、1回の用量の組成物は1日の用量を構成する量又はサブ用量を含むことができる。所望の場合は、適切なデリバリー装置に、1日の有効用量が1日以上、例えば7日間、14日間、21日間、28日間などの使用のために添加され、このデリバリー装置を用いて、所望の総日数間、所望の1日1回用量又は1日複数回用量が繰り返し投与される。当業者は、適正な医療手順及び個々の対象者の臨床症状によって決定される有効用量及び同時投与実施計画を容易に最適化しえるであろう。
本発明の方法で有用なクロクマのPTH又はその機能的フラグメントを含む組成物は、医薬的に有用な組成物を製造する公知の方法にしたがって処方することができる。処方は周知でありかつ容易に当業者が入手できる多数の情報源に詳細に記載されている。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences(E.W. Martin)は、本開示方法で用いることができる処方を記載している。一般的には、組成物は、効果的な組成物の投与を促進するために、有効量のポリペプチドが適切な担体と結合できるように処方されるであろう。
本発明で用いられる組成物はまた多様な形態を有することができる。これら形態には、例えば固体、半固体及び液体投薬形、例えば錠剤、ピル、散剤、液体溶液又は懸濁液、座薬、注射用及び輸液用溶液、並びにスプレーが含まれる。前記形態は、意図する投与態様及び治療薬の適用態様に左右されるであろう。適切には、組成物はまた当業者に公知の通常の医薬的に許容できる賦形剤を含む。賦形剤の例には、注射用の水、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、アルミナ、デンプン、氷酢酸、酢酸ナトリウム、マンニトール、メタクレソール、組成物のpHを適切な値に調節するための塩酸及び/又は水酸化ナトリウム、並びに等価或いは適切な担体及び稀釈剤が含まれる。所望する適用に合致する調剤の投与を提供するために、医薬組成物は、担体又は稀釈剤を含む組成物の総重量を基準にして、1つ以上の本発明のポリペプチドの総重量で約0.1%から99%、適切には約1から15%を含む。
【0018】
本明細書で用いられる、“単離された”核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどは、事例に応じて、その天然の状態以外で見出される夾雑物(例えば他のポリヌクレオチド種、ポリペプチド種など)から少なくとも部分的に精製された成分を指す。単離された核酸、ポリヌクレオチド、又はポリペプチドは、前記が本来一緒に存在している細胞性成分の約50%未満、適切には約75%未満、もっとも適切には約90%未満を含む。残りの細胞性成分から十分にかつ容易に区別することができるようにPCRを用いて増幅されたポリヌクレオチドは“単離されている”と考えられる。本発明の核酸分子、ポリヌクレオチド及びポリペプチドは、“実質的に純粋”、すなわち当分野で公知の精製技術を用いて達成することができる最高の純度を有する。
本明細書で用いられる、“機能的フラグメント”とは、より大きなポリペプチド又はポリヌクレオチドの領域若しくは部分であるポリペプチド又はポリヌクレオチドの任意の領域若しくは部分であって、前記領域もしくは部分が、前記より大きなポリペプチド又はポリヌクレオチドに起因しえる活性若しくは機能を有する、前記領域若しくは部分を指す。例えば、ヒトPTHの機能的フラグメントはヒトPTHの1−34領域である。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる、単数形の“a”、“an”及び“the”には、内容が明瞭に他のものを指していない限り、複数形の指示対象が含まれる。さらにまた、“又は”という用語は一般的には、その内容が明瞭に他のものを指していない限り、“及び/又は”を含む意味で用いられるということは認識されるべきである。全ての刊行物、特許、特許出願は、あたかも個々の刊行物又は特許出願が具体的に及び個々に参照により本明細書に含まれるように、全ての目的について同程度にその全体が参照により本明細書に含まれる。本開示に取り込まれた特許、刊行物及び参考文献との間に矛盾が存在する場合、本開示が優先される。
本明細書に記載の全ての数値範囲がより小さな値からより大きな値の全ての値を含み、すなわち列挙された最低値から最高値までの数値の全ての可能な組合せが本明細書に明瞭に記載されていると考えるべきである。例えば、濃度範囲が1%から50%と記載されている場合には、例えば2%から40%、10%から30%、又は1%から3%などの値を本明細書で明瞭に列挙しようとしている。濃度範囲が“少なくとも5%”である場合には、100%を含む100%までの全ての百分率値が明瞭に列挙されている。上記は具体的に意図しようととするもののほんの例示である。
以下の実施例は本発明の更なる理解を助けるために提供される。用いられる具体的な材料、方法及び条件は本発明の例示であり、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0019】
実施例1:クロクマPTH1-84の配列決定
ゲノムDNAの抽出
捕獲したメスのクロクマから血液を採集し、4℃で保存した。GenomicPrep 血液DNA単離キット(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)を製造業者の指示にしたがって用い、ゲノムDNAを全血サンプルから2週間以内に抽出した。
PCRクローニング及び配列決定
GenBankで入手可能な哺乳動物の以下の8つの完全長PTH配列のアラインメントにより設計したコンセンサスプライマーを用い、クロクマのゲノムDNAをPTHのPCR増幅に用いた:ウシ(Bos Taurus, AAA30749)、ネコ(Felis catus, Q9GL67)、イヌ(Canis familiaris, P52212)、ヒト(Homo sapiens, NM_000306)、マカク(Macaca fascicularis, Q9XT35)、マウス(Mus musculus, NP_065648)、ブタ(Sus scrofa, NP_999566)、及びラット(Rattus norvegicus, NP_058740)。PCR増幅は以下を20μLの反応体積で用いて実施した:10−15ngのゲノムDNA、100μMのdNTP、0.2μMの各プライマー、及び1ユニットのREDTaq(Sigma, St. Louis, MO)。UltraClean GelSpiキット(Mobio Carlsbad, CA)を用いてPCR生成物をゲル精製し、さらにTAクローニングキット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いてpCRIIベクターでクローニングした。DNA配列決定は、製造業者の指示にしたがいDTCS Quick Startキット及びCEQ8000 Genetic Analysis System(Beckman Coulter, Fullerton, CA)を用いて実施した。
ヌクレオチドはBlastXを用いGenBankタンパク質データベースで検索し(Altschul et al. 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-402)、PTHとしてのそれらの推定的実体を確認した。マルチ配列アラインメントをClustalWヴァージョン1.82で実施した(Cenna et al. 2003, Nucleic Acids Res 31:3497-500)。Molecular Evolutionary Genetics Analysis(MEGA)パッケージヴァージョン3.0で実行されるネイバージョイニング(NJ)法(Kumar et al. 2004, Brief Bioinform 5:150-63)を使用し、アラインメントギャップの処理にはペアワイズディリションによる選択を用い、さらにディスタンスコンピュテーションにはポアソン修正モデルを用いて系統発生的分析を実施した。
PTHクローニング及び配列分析
クロクマのゲノムDNAからPTHをPCRによりクローニングするために種々のプライマーの組合せを用いた。一次クローンの配列決定の結果を基にして、開始コドンに対応する遺伝子特異的センスプライマーを設計し、ストップコドンを含む縮退アンチセンスプライマーとともに使用して、PTHの完全なコーディング領域を増幅した。ストップコドンを含む第二のアンチセンスプライマーを設計して、配列確認のためのクローンを作成した。
配列アッセンブリーによって、25アミノ酸のシグナルペプチド及び6アミノ酸ペプチドを含む、115アミノ酸の前駆体タンパク質が明らかにされた。演繹される成熟タンパク質は84アミノ酸であり、計算による分子量は9,471ダルトンであり、pIは8.1である。クロクマのPTHは他の哺乳動物のPTHと84−95%の配列類似性を共有し、イヌのPTHともっとも類似する(91%同一、95%類似性)(図5)。興味深いことには、成熟ホルモンの2つのアミノ酸残基41及び52がクロクマのPTHに固有である。
【0020】
実施例2:冬眠時の骨吸収及び骨形成マーカーのレベル
血清サンプル
血液サンプルは捕獲クマの研究施設で維持されている5頭のクロクマ(Ursus americanus)から採集された。ヴァージニア・ポリテクニック・インスティテュート(Virginia Polytechnic Institute)及び州立大学動物管理委員会は全てのクマの管理プロトコルを承認した(#98-069-F&WS)。ケタミン(100mg/mL):キシラジン(100mg/mL)の2:1混合物を用いクマを麻酔した。投薬は45.5kgの体重当たり1ccの混合物であった。体温は冬の採集時には4℃から6℃低く、クマは冬眠状態にあることが確認された。冬眠の巣穴には尿も糞も存在しなかった。いずれの管理操作の間にもストレスを示す行動は観察されなかった。血液サンプルは、クマを麻酔している間に大腿静脈から抜き取り、氷を詰めたクーラーで研究室へ輸送した。研究室に戻るや直ちに血液を遠心して血清を単離し、-20゜Fで凍結した。血液サンプルは、10月1日から5月の終わりまで10日毎に各クマから採集した。冬眠は1月初めに開始し4月の初めに終了した。したがって、採集日は、活動的な冬眠前期間、不使用冬眠期間、及び活動的な冬眠後再可動化期間を包含した。
クロクマのオステオカルシンの精製及びRIA手順
クロクマの骨皮質を細片に砕き、ヘキサン3部及びイソプロパノール2部の混合物で脂肪を除去して凍結乾燥させた。この乾燥骨を液体窒素下で磨り潰して微細粉末とし、さらにオステオカルシンをHauschkaら(1989, Physiol Rev, 69:990-1074)の記載のように可溶化した。オステオカルシンは、生成されたEDTA抽出物からColomboらの方法(1993, J Bone Miner Res, 8:733-43)を改変することによって精製した。略記すれば、粗EDTA溶液を2倍に稀釈し、以前にメタノールで活性化し、0.1%のトリフルオロ酢酸水(0.1%TFA)で平衡化した10gのSepralyte C18粒子(Analytical International, Habor City, CA)を含むバルクカラムに通した。0.1%TFAで十分に洗浄し、続いて30%メタノール/0.1%TFAでUV吸収が基準線に低下するまで洗浄した。オステオカルシンは80%メタノール/0.1%TFAで溶出させた。メタノールを送風下で蒸発させ、残留溶液を凍結乾燥させた。得られた乾燥タンパク質を0.05Mのトリス緩衝液(pH8.0)に懸濁し、以前に同じ緩衝液で平衡化した5mLのBiorad Econo-Qカラムに適用した。このカラムを0.5Mのトリス(pH8.0)中の0.1から0.6MのNaClグラディエントで展開した。オステオカルシンは対称なピークで溶出し、最後にカラムから溶出した。このピークがオステオカルシンであることは、分画の部分をジアゾベンゼンスルホン酸と反応させ、オステオカルシンを含む分画でピークの高さに一致する強度で桃色が得られることによって定性的に立証された。C18及びEcono-Qカラムの両方とも新しいもので、他の種由来のタンパク質に暴露されたことはなかった。他の種を用いた以前の経験は、最後のオステオカルシンピークは99%を越える純度であることを示唆した。最後の溶出物中のクロクマのオステオカルシンの濃度はPierce Chemical(Rockford, IL)のBCA試薬を用いて決定した。
バイオケミカルアッセイ
RIA及びELISAを用いて、PTH、25-OH D、レプチン、IGF-I及び、オステオカルシン(骨形成マーカー)について血清をアッセイした。
高度に精製したクロクマのオステオカルシン及びクロクマの血清を放射能免疫アッセイによってアッセイした。抗体は、抗ラットオステオカルシンモルモット抗体であり、トレーサーは125I-標識ラットオステオカルシンであった。ラットオステオカルシン標準物(Biomedical Technologies, Inc., Stoughton, MA)及び精製クロクマオステオカルシンの両方の稀釈物をアッセイに含めた。各アッセイチューブ当たり10μLのクロクマ血清の部分標本をデュープリケートでアッセイし、全てのサンプルを同時にアッセイした。デュープリケートの値は5%未満で変動した。
骨形成マーカー及び吸収マーカーの不使用時の変化を観察するために、5頭のクロクマのオステオカルシンの平均値を冬眠期間の各時点について計算した。これらの値を冬眠期間のオステオカルシン最高値によって標準化した。同様な計算をPICP(骨形成マーカー)及びICPT(骨吸収マーカー)の測定について実施した。吸収及び形成カーカーの標準化値を同じグラフにプロットして、不使用時の骨吸収及び骨形成における時間的及び相対的規模の変化を査定した。上記に記載したように入手した冬眠クマ由来の血清サンプルを用い、イオン化カルシウム濃度をイオン選択電極(Bayer Rapidlab 865, Leverkusen, Germany)により測定した。
上記のようにして入手した血清サンプルを用い、Immunotopics International(San Clemente, CA)のELISAキットによりPTHをアッセイした。アッセイ内変動係数は4.7%であった。25-OH Dは、ALPCO Diagnostics(Windram, NH)のELISAキットを用いてアッセイした。アッセイ内変動係数は5%であった。レプチンはRIA(Linco, St. Charles, MO)によって測定し、IGF-Iは酸エタノール抽出RIA(Nichols Institute Diagnostics, San Juan Capistrano, CA)によって測定し、アッセイ内変動係数は4.3%であった。血清オステオカルシンは上記のようにRIAによって測定した。全ての血清代謝産物について、平均値(全てのクマ及び与えられたシーズン内の全ての時点について)を各シーズン(冬眠前、冬眠時及び冬眠後)について計算し、ANOVAによって比較した。ANOVAは多平均比較のためのフィッシャーPLSD検定で追跡した。自然log変換を用いて、オステオカルシン、PTH、25-OH D及びIGF-Iについての変動の非不変性を修正し、ANOVAを有効にした。直線回帰を用いてオステオカルシンとホルモンとの相関性を査定した。いくつかの血清サンプルの体積は全てのアッセイを実施するには不十分であった。各アッセイのサンプルサイズは結果とともに表示されている。
【0021】
結果
骨吸収マーカー(ICTP)は冬眠開始直後に増加し始めた(図3)。各データの点は5頭のクマの平均値である。10−20日後に、骨形成マーカー(オステオカルシン及びPICP)もまた増加し、冬眠期間の間の吸収の増加との連動を維持するように見える。このことは、吸収と形成との間の1−2週間の組織学的“復帰”期間と一致する。これらのリモデリングマーカーは、冬眠期間を通して吸収及び形成が増加する傾向を示し、形成は吸収との連動及び均衡を維持するように見えた。平均オステオカルシンレベルは、冬眠前と比較して冬眠期間及び冬眠後で高かった(表1)。冬眠から覚醒した後の再可動化中に、イオン化カルシウムレベルは、冬眠レベルと比較して顕著(p=0.37)には増加しなかったが、冬眠前のレベルよりも高い状態を維持した(p=0.015)。
オステオカルシンはPTHと正比例したが(図2)、25-OH D、レプチン又はIGF-Iとは正比例しなかった。PTHは、冬眠前(p=0.006)及び冬眠(p=0.014)シーズンよりも冬眠後のシーズンで有意に高かった。冬眠前と比較して冬眠中のPTHの増加は顕著ではなかった(p=0.35)。25-OHビタミンDはシーズン性変動を示さなかった(p=0.64)。
血清レプチンは、冬眠前と比較して冬眠中は変化しなかったが、冬眠後の再可動化時には有意に低かった(p<0.004)(表1)。IGF-1は冬眠前と比較して冬眠中は有意に(p<0.0001)低下し、再可動化中にその最高値に達した(表1)。
【0022】
【表1】

【0023】
平均値には太字が付され、標準偏差は丸括弧内に、サンプルサイズは角括弧内に与えられる。与えられた代謝物について、同じ上付き文字をもつ値は顕著には(p<0.05)相違しない。25−OH Dは顕著なシーズン性相違を示さなかった。
【0024】
実施例3:MC-3T3骨芽細胞によるPGE2放出はクマ血清におけるシーズン性変動によって影響を受ける
クマ血清におけるシーズン性変動の骨芽細胞代謝に対する影響を査定するために、MC-3T3細胞をクマ血清で処理し、プロスタグランジンE2(PGE2)放出を定量した。MC-3T3細胞は、10%ウシ胎児血清(Hyclone, Logan, UT)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン溶液を補充したアルファ最少必須培地(Invitrogen, Carlsbad, CA)にて37℃、5%CO2下で24時間増殖させた。培養液を吸引し、冬眠前、冬眠中又は冬眠後に採集した10%クマ血清を含む10mLの新しい培養液と交換した。細胞をさらに24時間増殖させ、続いて培養液を採集しPGE2分析のために-20℃で凍結した。EDTA中の0.25%トリプシンを用いて細胞を培養皿から取り出し、遠心によって沈殿させ、トリパンブルー及び血球計算盤を用いて定量した。
BiotrakTM PGE2競合酵素免疫アッセイ(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)を用いてPGE2レベルを決定した。全実験の培養液サンプルから50μLのサンプルを用い、デュープリケートでアッセイを実施した。反応は終末点決定前に1Mの硫酸を用いて停止させ、マイクロプレートリーダーを(VERSAmax, Molecular Devices Corporation, Sunnyvale, CA)を用いて450nmで読み取った。デュープリケートの光学密度値を非特異的結合について修正して平均し、標準曲線と比較して各ウェルのPGE2量を決定した。これらの値を総培養体積について修正し、サンプル中の細胞数により標準化した。ANOVAを用いて3つの血清間で標準化PGE2を比較した。in vitroでクマ血清を用いて処理した骨芽細胞によって放出されたPGE2の量は、冬眠前血清(p=0.058)及び冬眠中血清(p=0.014)と比較して冬眠後血清による処理で高かった(図4)。冬眠中血清で処理された細胞のPGE2放出は、冬眠前血清と比較して顕著には(p=0.48)相違しなかった。PGE2放出におけるシーズン性変化は、血清IGF-Iにおけるシーズン性変化と類似する傾向を示した。P-値は冬眠後の値との比較を目的とする。冬眠前及び冬眠中の値は互いに相違しなかった(p=0.48)。
【0025】
実施例4:クマ血清中での培養は冬眠時のBax対Bcl-2の遺伝子発現比を低下させる
2004年から2005年の間に上記に記載したように4頭の雌のクロクマから血液の血清サンプルを取り出した。サンプルの日付は冬眠前の活動期間、冬眠中の不使用期間及び冬眠後の再可動化期間を含む。10%クマ血清を含む培養液でMC-3T3骨芽細胞を24時間培養し、その後、全RNAをBioRad AquaPure RNA単離キット(#732-6370, BioRad Laboratories, Hercules, CA)を用いて単離した。cDNAを作成するために、グラディエントサーモサイクラー(Mastercycler gradient, Eppendorf, Westbury, NY)でSuperscript II逆転写酵素(Invitrogen, Carlsbad, CA)及び0.5μgのオリゴ(dT)12-18プライマーを42℃で20分、50℃で10分、及び42℃で1時間用いて逆転写を実施した。前アポトーシスタンパク質Bax及び抗アポトーシスタンパク質Bcl-2のためのプライマーは、PrimerQuestソフトウェア(Integrated DNA Technologies, Coralville, IA)及びNCBI遺伝子バンク配列を用いて設計した。半定量PCRをRedTaq及び以下から成るプロトコルを用いて実施した:94℃で2分;94℃で30秒、69.5℃で30秒及び72℃で1分のサイクル;及び72℃で5分の最終伸長。バンドの強度はImageJソフトウェアパッケージ(National Institutes of Health, Bethesda, MD)を用いて定量し、3つのハウスキーピング遺伝子(Gapdh、β-アクチン、シクロフィリン)の発現に対して標準化した。
フィッシャーのProtected Least Significant Difference(PLSD)post-hoc検定によるANOVAを用いて、3シーズン(冬眠前、冬眠中、冬眠後)についてのBax対Bcl-2の比を比較した。統計的有意は得られなかったが(p=0.300)、Bax/Bcl-2比は冬眠前と比較して冬眠中にはほぼ42%減少した。統計的有意の欠如はおそらくサンプルサイズが小さいことと関連がある(各シーズンについてn=2)。これらのデータは、冬眠中のクマから得られた血清は骨芽細胞のアポトーシスを低下させる生物学的分子を含んでいることを示唆している。内因性PTH及び骨形成マーカーオステオカルシンは両方とも冬眠中に増加するので(Donahue et al. 2006, J Exp Biol, 209:1603-8)、クマ内因性PTHは冬眠中に骨芽細胞のアポトーシスを引き起こし、前記は適宜骨形成を増加させる可能性がある。
【0026】
実施例5:骨細胞株中のcAMPに対するクロクマとヒトPTH1-84又はそのサブフラグメントの影響の比較
完全長の組換えクロクマPTH(残基1−84)を生成し、骨細胞株(MC-3T3骨芽細胞及びMLO-Y4骨細胞)中の環状アデノシンモノホスフェート(cAMP)濃度レベルに対するその影響を調べ、組換えヒトPTH1-84を用いて得られた結果と比較する。クロクマ及びヒトPTHのサブフラグメントを用いて等価の実験を実施する(サブフラグメントには完全長(1−84)成熟タンパク質のアミノ酸残基1−34、1−36、7−84、11−84及び41−52が含まれる)。いくつかの実験については、クロクマ及びヒトPTHポリペプチドは固相法で合成される。
骨形成細胞のcAMPレベルに対する組換えクロクマ及びヒトPTHポリペプチドの種々の形態の影響を決定するために、ヒト又はクロクマPTH完全長(すなわちアミノ酸残基1−84)ポリペプチドまたは上記に列挙したサブフラグメントの1つと培養した骨細胞(MC-3T3及びMLO-Y4)を10又は30分接触させる。細胞をPTHポリペプチドと接触させた後、細胞中のcAMP濃度を下記でさらに説明する競合結合アッセイを用いて測定する。
組換えポリペプチドを用いる全ての実験について、凍結乾燥ペプチドは1mM酢酸中で100μMのストック濃度に再構成され、使用前に10μMの作業用ストック濃度に稀釈される。
細胞培養
MC-3T3サブクローン14細胞(ATCC, CRL-2594)及びMLO-Y4細胞(L.F. Bonewald, University of Missouri, Kansas City, MO)は、アルファ-最少必須培地、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び10%血清(MC3T3:10%ウシ胎児血清(FBS)、MLO-Y4:5%FBS及び5%仔牛血清)中で37℃にて5%CO2下で維持される。本明細書に記載の全ての方法が、各アッセイの全ての処置の組合せについてn=6となるように独立した細胞培養で繰り返される。
細胞内cAMP活性に対するPTH処理の影響
MC-3T3及びMLO-Y4細胞を適切な密度で(MC-3T3:50,000細胞/cm2、MLO-Y4:15,000細胞/cm2)6ウェルプレートに播種する。細胞を一晩培養して最適なコンフルエンスに到達させる。続いて培養液を吸引して、10%血清+賦形剤(1mM酢酸)又は10%血清+100nMのPTH(ヒト又はクマ1-84又はそのサブフラグメント)のどちらかを含む培養液と交換する。細胞をこれらの条件下で10又は30分培養する(P.H. Carter et al. 1999, J Biol Chem 274(45):31955-60;X. Chen et al. 2002, Am J Physiol Cell Physiol 283(5):C1432-40;P.C. Schiller et al. 1999, J Bone Miner Res, 14(9):1504-12)。培養に続いて、細胞をトリプシンで処理して遠心し、さらに溶解緩衝液に再懸濁する。この懸濁物を10分間インキュベートし、遠心して細胞屑を分離する。前記細胞溶解物の上清(2倍稀釈後)を競合結合アッセイ(環状AMPアッセイ#KGE002、R&D Systems, Minneapolis, MN)を用いてcAMP濃度についてアッセイする。
調べたポリペプチドの各々について、クロクマPTH系ポリペプチドに応答して細胞性cAMPが増加した。
【0027】
実施例6:骨細胞株におけるアポトーシスに対するクロクマとヒトPTH1-84又はそのサブフラグメントの影響の比較
完全長の組換えクロクマPTH(残基1−84)を生成し、骨細胞株(MC-3T3骨芽細胞及びMLO-Y4骨細胞)のアポトーシスに対するその影響を調べ、組換えヒトPTH1-84を用いて得られた結果と比較する。クロクマ及びヒトPTHのサブフラグメントを用いて等価の実験を実施する(サブフラグメントには完全長(1−84)成熟タンパク質のアミノ酸残基1−34、1−36、7−84、11−84及び41−52が含まれる)。いくつかの実験については、クロクマ及びヒトPTHポリペプチドは固相法で合成される。
骨芽細胞及び骨細胞(前アポトーシス条件下にある)のアポトーシスを防止するクロクマ及びヒトPTHの相対的能力を決定するために、細胞をヒト又はクロクマPTH1-84又は上記に列挙したサブフラグメントの1つと1時間インキュベートする。その後、細胞をデキサメタゾンで6時間処理してアポトーシスを誘発する。アポトーシスは下記でさらに説明するようにELISAで定量される。
組換えポリペプチドを用いる全ての実験について、凍結乾燥ペプチドは1mM酢酸中で100μMのストック濃度に再構成され、使用前に10μMの作業用ストック濃度に稀釈される。
さらに別の実験を0.1%又は10%FBSを用いてMC-3T3細胞で実施する。正常量(10%)未満(0.1%)のFBSを用いた追加の実験を実施し、その結果を分析して、正常で実施した実験とより低い血清レベルで実施した実験との間で顕著に相違する応答が存在するか否かを決定する。この実施例で報告する実験では、使用したFBSの量によって結果は影響を受けない。アポトーシス保護実験は、調べたポリペプチドの各々がMC-3T3細胞のアポトーシスを低下させ又は妨げることを示した。
細胞培養
MC-3T3サブクローン14細胞(ATCC, CRL-2594)及びMLO-Y4細胞(L.F. Bonewald, University of Missouri, Kansas City, MO)は、アルファ-最少必須培地、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び10%血清(MC3T3:10%ウシ胎児血清(FBS)、MLO-Y4:5%FBS及び5%仔牛血清)中で37℃にて5%CO2下で維持される。本明細書に記載の全ての方法が、各アッセイの全ての処置の組合せについてn=6となるように独立した細胞培養で繰り返される。
PTH処理のアポトーシスに対する影響
6ウェルプレートにMC-3T3を50,000細胞/cm2で播種し、MLO-Y4細胞を15,000細胞/cm2で播種し、細胞を一晩培養して最適なコンフルエンスに到達させる。培養液を吸引して、10%血清+賦形剤(1mM酢酸)又は10%血清+100nMのPTH(ヒト又はクマ1-84又はそのサブフラグメント)のどちらかを含む培養液と交換する。1時間インキュベートした後(Jilka et al. 1999, J Clin Invest, 104:439-46)、10μMのデキサメタゾン又はその賦形剤(DMSO)を各ウェルに添加し、細胞を6時間培養する(T. Bellido et al. 2003, J Biol Chem 278(50):50259-72;Jilka et al. 1999, J Clin Invest, 104:439-46)。PTHポリペプチドはアポトーシス誘発の間その場に放置する。なぜならば、PTHによるアポトーシスの抑制は自己限定的であるからである(Bellido et al. 2003)。6時間後、細胞をトリプシンで処理し、遠心して再懸濁し、血球計算盤を用いて数える。50,000細胞を懸濁液から取り出し、溶解緩衝液に入れる。この細胞溶解物の上清(遠心後)を分析のために取り出し、-20℃で保存する。
アポトーシスはELISA(Cell Death Detection ELISA, #1544675, Roche Applied Science, Indianapolis, IN)を用いて溶解物の上清で定量する。このアッセイは、細胞溶解物の細胞質分画中のフラグメント化された細胞DNAのモノ-及びオリゴヌクレオソームを検出し、したがって初期及び中期のアポトーシスの良好な測定を提供する。略記すれば、サンプルを緩衝液で稀釈し、抗ヒストンマウスモノクローナル(クローンH11-4)抗体で被覆したマイクロプレートのウェルに添加する。賦形剤処理細胞由来の溶解物上清は陰性コントロールとして供される。ペルオキシダーゼ結合抗DNAマウスモノクローナル(クローンMCA-33)抗体を添加した後、405nmで光学密度を測定し、各サンプル中のアポトーシスの量は、その対応する陰性コントロールに対して決定する。全てのサンプルはデュープリケートでアッセイされる。
調べたポリペプチドの各々が細胞(前アポトーシス条件下にある)のアポトーシスを低下させた。
【0028】
実施例7:骨細胞株における遺伝子発現に対するクロクマとヒトPTH1-84又はそのサブフラグメントの影響の比較
完全長の組換えクロクマPTH(残基1−84)を生成し、骨細胞株(MC-3T3骨芽細胞及びMLO-Y4骨細胞)における遺伝子発現レベルに対するその影響を調べ、組換えヒトPTH1-84を用いて得られた結果と比較する。クロクマ及びヒトPTHのサブフラグメントを用いて等価の実験を実施する(サブフラグメントには完全長(1−84)成熟タンパク質のアミノ酸残基1−34、1−36、7−84、11−84及び41−52が含まれる)。いくつかの実験については、クロクマ及びヒトPTHポリペプチドは固相法で合成される。
骨マトリックス、転写調節、抗アポトーシス(Bcl-2)遺伝子、及び前アポトーシス遺伝子Baxの調節に対するクロクマ及びヒトPTHの影響を決定するために、細胞をヒト又はクマPTH1-84若しくはそのサブフラグメントとともに1又は3時間培養する。遺伝子発現はリアルタイムPCRで定量する。
組換えポリペプチドを用いる全ての実験について、凍結乾燥ペプチドは1mM酢酸中で100μMのストック濃度に再構成され、使用前に10μMの作業用ストック濃度に稀釈される。
さらに別の実験を0.1%又は10%FBSを用いてMC-3T3細胞で実施する。正常量(10%)未満(0.1%)のFBSを用いた追加の実験を実施し、その結果を分析して、正常レベルの血清又はより低い血清レベルで実施した実験との間で顕著に相違する応答が存在するか否かを決定する。この実施例で報告する実験では、結果は使用したFBSの量によって影響を受けない。ポリペプチドの添加後1時間及び3時間の時点での遺伝子発現レベルを判定するためにリアルタイムPCRを用い、特にクロクマのPTH1-34はMC-3T3で遺伝子発現をアップレギュレートすることが示された。
細胞培養
MC-3T3サブクローン14細胞(ATCC, CRL-2594)及びMLO-Y4細胞(L.F. Bonewald, University of Missouri, Kansas City, MO)は、アルファ-最少必須培地、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、及び10%血清(MC3T3:10%ウシ胎児血清(FBS)、MLO-Y4:5%FBS及び5%仔牛血清)中で37℃にて5%CO2下で維持される。本明細書に記載の全ての方法が、各アッセイの全ての処置の組合せについてn=6となるように独立した細胞培養で繰り返される。
遺伝子発現に対するPTH処理の影響
6ウェルプレートにMC-3T3を50,000細胞/cm2の密度で播種し、MLO-Y4細胞を15,000細胞/cm2の密度で播種し、細胞を一晩培養して最適なコンフルエンスに到達させる。培養液を吸引して、10%血清+賦形剤(1mM酢酸)又は10%血清+100nMのPTH(ヒト又はクマ1-84若しくは上記記載のそのサブフラグメント)のどちらかを含む培養液と交換する。これらの条件下で1時間又は3時間細胞をインキュベートする(これらの時間は、c-fos及びオステオカルシンのPTH誘発アップレギュレーションと一致する(Jiang et al. 2004, J Biol Chem 279:5329-37;Chen et al. 2002)。全RNAをSV全RNA単離システム(Promega, Madison, WI)を用いて単離する。
cDNAを生成するために、Superscript II逆転写酵素(Invitrogen, Carlsbad, CA)及び0.5μgのオリゴ(dT)12-18プライマーを、グラディエントサーモサイクラー(Mastercycler gradient, Eppendorf, Westbury, NY)で以下のように用い逆転写を実施する:42℃で20分、50℃で10分及び42℃で1時間。問題の全ての遺伝子(オステオカルシン、オステオポンチン、I型コラーゲン、c-fos、Runx2、Bax、Bcl-2、SOST)及びハウスキーピング遺伝子(Gapdh、β-アクチン、シクロフィリン)のためのプライマーは、PrimerQuestソフトウェア(Integrated DNA Technologies, Coralville, IA)及びNCBI遺伝子バンク配列を用いて設計され、PCR条件は、MC-3T3及びMLO-Y4細胞由来のRNAを用いて最適化される。リアルタイムPCRはMx3000PリアルタイムPCRシステム(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて実施される。プロトコルは以下を含む:95℃で10分のホットスタート、続いて95℃で30秒(変性)、69℃で1分(アニーリング)及び72℃で1分(伸長)の40サイクル。このプロトコルの例外はc-fosに対するものであり、前記は66℃のアニーリング温度を有する。25μLの反応物は各々以下を含む:1xのAbsoluteTM qPCR SYBR(商標)グリーンミックス(ABgene, Rochester, NY)、0.1μMのフォワード及びリバースプライマー、並びに2.5ngの全RNAと等価のcDNA鋳型。遺伝子発現は、3つのハウスキーピング遺伝子の幾何学平均に対して標準化される相対的標準曲線法を用いて決定される。全てのサンプルはデュープリケートで測定し、10%を超える変動係数(CV)を有する全てのサンプルは再度分析する。
ポリペプチドは、骨マトリックス、転写調節、及び転写活性化因子遺伝子のアップレギュレーション、及びBax/Bcl-21の発現比率の低下をもたらす。
【0029】
実施例8:異なるシーズンのクロクマ血清の骨細胞アポトーシス及び遺伝子発現に対する影響の比較並びにPTH及びオステオカルシンの血清レベルとの相関性
2004年から2005年の間に研究施設(Virginia Tech Center for Bear Research)に収容されていた少なくとも3頭の別個の雌のクロクマ(Ursus americanus pallas)から血液サンプルを採集する。さらに別のクロクマの血清がその後の年に採集される。ヴァージニア・ポリテクニック・インスティチュート及び州立大学動物管理委員会は全てのクマの管理プロトコル(#98-069-F&WS)を承認した。クマをケタミン(100mg/mL):キシラジン(100mg/mL)の2:1混合物で麻酔する。投与量はクマの重量の45.5kg当たり1ccの混合物である。血液サンプルはクマを麻酔している間に大腿静脈から抜き取り、サンプルは氷を詰めたクーラーで研究室へ輸送される。研究室に戻ったら直ちに血液を遠心して血清を単離し、続いて-20℃で凍結する。血液サンプルは、10月の初めから5月の終わりまで10日毎に各クマから採集する。冬眠は1月初めに開始し4月の初めに終了する。したがって、採集日は、活動的な冬眠前期間、不使用冬眠期間、及び活動的な冬眠後再可動化期間を含む。
クマ血清の10μL部分をオステオカルシン濃度について放射性免疫アッセイにより分析する(Patterson-Allen et al. 1982, Anal Biochem, 120:1-7)。このアッセイはクマについて以前に立証されている(Donahue et al. 2006, J Exp Biol 209:1630-8)。抗体は、抗ラットオステオカルシンモルモット抗体であり、トレーサーは125I-標識ラットオステオカルシンである。クマ血清の100μLアリコットは、ELISA(ブタ完全PTH ELISAキット#60-3305, Immutopics, Inc., San Clemente, CA)を用い、PTH濃度についてデュープリケートでアッセイする(Donahue et al. 2006, J Exp Biol 209:1630-8)。このアッセイは、PTHの39−84領域と結合し、比色反応によりPTH濃度を示すためにはPTHの13−34領域を必要とする。したがって、前記は、完全な(1−84)PTHの濃度とともに7−84及び11−84のC-末端サブフラグメントの良好な測定値を提供する。このELISAは、クマのPTHと交差反応し(Donahue et al. 2006, J Exp Biol 209:1630-8)、ヒトPTHとは100%の交差反応性を有することが示された。クロクマについてこのアッセイを実証するために、10nMの組換えクロクマ又はヒトPTH1-84を含む培養液サンプルをデュープリケートでアッセイする。このPTHサンプルの既知濃度が、アッセイ標準曲線から決定された測定濃度と比較される。これらのサンプルから決定される交差反応性における一切の潜在的な相違は、クロクマの血清サンプル中の内因性クロクマPTH濃度のための修正として用いられる。
組換えクロクマPTHによるアポトーシス及び遺伝子発現細胞培養実験について培養骨系細胞を用いた上記に記載の方法を、100nMの組換えPTH含有培養液を10%のクロクマ血清(冬眠前、冬眠中、又は冬眠後期間から得た血清)を含む培養液と置き換えて繰り返す。血清の体積は上記に記載したPTH ELISAの後で算出する。
PTHは、冬眠前血清よりも冬眠中及び冬眠後に高いので、冬眠中及び冬眠後シーズン由来の血清は冬眠前の血清と比較してアポトーシスのより強い阻止を引き起こす。内因性血清PTH濃度は、より高い血清PTHレベルがより低いレベルのアポトーシスに対応するという点でアポトーシスレベルと逆比例する。すなわち、血清PTH濃度はアポトーシスレベルと負の相関性を有する。
【0030】
実施例9:クマPTHのin vitro検査
クロクマPTH(完全長(1−84)又は前記のいくつかの機能的フラグメント(1−34、1−36、7−84、11−84、41−52))を、骨細胞の合成性刺激について等価のヒトPTH又はそのサブフラグメントと比較してin vivoで調べる。PTHポリペプチドの各々を合成し、皮下注射のために医薬的に許容される担体に懸濁する。クロクマ又はヒトに由来する完全長PTH又はその機能的フラグメントをマウスに1日40μg/kg/体重の用量で7日間投与する。クロクマPTH又はその機能的フラグメントは、等価のヒトPTHポリペプチドよりも骨強度、質量、及び鉱物含有量のより大きな増加を引き起こす。
【0031】
実施例10:骨減少の低下又は防止のための予防薬としてのクマPTHの使用
後肢吊り下げ(不使用骨粗しょう症のモデル)によって、又は卵巣摘出によって(閉経後骨粗しょう症のモデル)マウスで骨粗しょう症を誘発する。後肢吊り下げの開始後、又は卵巣摘出の完了後、マウスはクロクマPTH又はその機能的フラグメントの一定用量を投与される。クロクマPTH又はその機能的フラグメントで治療されたマウスは、未治療マウスよりも骨減少が少ない。
【0032】
実施例11:クマ及びヒトPTH1-34はともにオステオカルシンの遺伝子発現をアップレギュレートするが、クマPTH1-34のみがBax/Bcl-2の発現比を低下させる
MC-3T3細胞を賦形剤又は100nMの合成クマ又はヒトPTH1-34中で3又は6時間インキュベートした(n=2又は4)。全RNAを単離し、逆転写を用いてcDNAを生成した。骨マトリックスタンパク質I型コラーゲン及びオステオカルシン、前アポトーシスタンパク質Bax、抗アポトーシスタンパク質Bcl-2、及びハウスキーピング遺伝子Gapdh、β-アクチンおよびシクロフィリンのためのプライマーをPrimerQuestソフトウェア(Integrated DNA Technologies, Coralville, IA)を用いて設計した。リアルタイムPCRはMx3000PリアルタイムPCRシステム(Stratagene, La Jolla, CA)を用いて実施した。全てのサンプルはデュープリケート測定した。遺伝子発現は、3つのハウスキーピング遺伝子(Gapdh、β-アクチンおよびシクロフィリン)の幾何学平均に対して標準化した相対的標準曲線法を用いて決定した。アポトーシス関連遺伝子は、Bax/Bcl-2の発現比の低下はin vitroでアポトーシスの低下と連携するのでBax/Bcl-2の発現比として分析した。
ヒト又はクマPTH1-34中での6時間の培養はI型コラーゲンの発現に影響を与えなかったが、賦形剤と比較して実質的にオステオカルシンの発現をアップレギュレートした(図6)。ヒトとクマPTHとの間に顕著な相違は存在しなかった(p>0.09)。
クマPTH1-34中での3時間の培養はBax/Bcl-2の発現比を低下させてアポトーシスの低下を示唆したが、ヒトPTH1-34中での3時間の培養はこの比率を増加させ、アポトーシスの増加を示唆した(図7)。クマPTHとヒトPTHとの間の相違は統計的に有意であった(p=0.047)。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】究極応力(骨強度の測定値)及び灰分分画(骨の鉱物含有量の測定値)を示す。前記は、両者ともにクロクマで年齢とともに増加する。
【図2】冬眠前、冬眠時及び冬眠後のプールしたサンプルについて、クロクマで血清のオステオカルシンレベルは血清の副甲状腺ホルモン(PTH)レベルと正比例することを示す(p=0.0007、n=27)。
【図3】3ヶ月の不使用期間中の標準化した血清の吸収マーカー(ICTP)及び形成マーカー(PIPC及びオステオカルシン)の濃度を示す。
【図4】骨芽細胞によって放出されるPGE2の量は、冬眠後期間に採集した血清で細胞を処理したときに最大であったことを示す。
【図5】他の公知のPTH配列と比較したクロクマの成熟PTHタンパク質配列を示す。
【図6】ヒト及びクロクマのPTH 1-34の両者はオステオカルシンをアップレギュレートすることを示す(n=2)。
【図7】アポトーシス関連遺伝子発現に対するヒト及びクロクマのPTH 1-34の作用を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:2の連続する少なくとも10アミノ酸残基を含む単離されたポリペプチドであって、前記ポリペプチドが配列番号:2のアミノ酸残基41及び52の少なくとも1つを含む、前記単離ポリペプチド。
【請求項2】
前記ポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸残基11−84を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸残基7−84を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記ポリペプチドが、配列番号:2を含む、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1に記載のポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸残基11−84を含む、請求項5に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸残基7−84を含む、請求項6に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記ポリペプチドが配列番号:2を含む、請求項7に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドが配列番号:1を含む、請求項8に記載の単離ポリヌクレオチド。
【請求項10】
配列番号:2のアミノ酸残基1−34を含むポリペプチドの有効量と骨形成細胞を接触させることを含む、骨形成細胞でcAMPレベルを増加させる方法であって、骨形成細胞と前記ポリペプチドとの接触が骨形成細胞でcAMPレベルを増加させる、前記方法。
【請求項11】
前記ポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸残基1−36を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリペプチドが配列番号:2を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記骨形成細胞が対象者中に存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
配列番号:2のアミノ酸残基1−34を含むポリペプチドの有効量と骨形成細胞を接触させることを含む、骨形成細胞でアポトーシスを減少させる方法であって、骨形成細胞と前記ポリペプチドとの接触が骨形成細胞でアポトーシスを減少させる、前記方法。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸残基1−36を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリペプチドが配列番号:2を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記骨形成細胞が対象者中に存在する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
配列番号:2のアミノ酸残基1−34を含むポリペプチドの有効量と骨形成細胞を接触させることを含む、Baxタンパク質対Bcl-2タンパク質の発現レベルの比率を骨形成細胞で減少させる方法であって、骨形成細胞と前記ポリペプチドとの接触が、Baxタンパク質対Bcl-2タンパク質の発現レベルの比率を骨形成細胞で減少させる、前記方法。
【請求項19】
前記ポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸残基1−36を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリペプチドが配列番号:2を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記骨形成細胞が対象者中に存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
配列番号:2のアミノ酸残基1−34を含むポリペプチドの有効量と骨形成細胞を接触させることを含む、骨マトリックスタンパク質、転写活性化因子、又は転写調節因子の1つ以上の発現レベルを骨形成細胞で増加させる方法であって、骨形成細胞と前記ポリペプチドとの接触が、骨マトリックスタンパク質、転写活性化因子、又は転写調節因子の発現レベルを骨形成細胞で増加させる、前記方法。
【請求項23】
ポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸残基1−36を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリペプチドが配列番号:2を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記骨形成細胞が対象者中に存在する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
配列番号:2のアミノ酸残基1−34を含むポリペプチドの有効量と骨形成細胞を対象者中で接触させることを含む、対象者で骨の鉱物濃度を高め、骨質量を増加させ、骨減少を低下させ、若しくは骨折発生率を低下させ、又は前記のいずれかの組合せを生じる方法であって、骨形成細胞と前記ポリペプチドとの接触が、対象者で骨の鉱物濃度を高め、骨質量を増加させ、骨減少を低下させ、又は骨折発生率を低下させる、前記方法。
【請求項27】
前記対象者が骨粗しょう症に罹患した閉経後のヒト女性である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
さらに前記対象者にビタミンD及びカルシウムを投与することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸残基1−36を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリペプチドが配列番号:2を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
クマの副甲状腺ホルモン又はその機能的フラグメントを含むポリペプチドの有効量と骨形成細胞を対象者中で接触させることを含む、対象者で骨の鉱物濃度を高め、骨質量を増加させ、骨減少を低下させ、若しくは骨折発生率を低下させ、又は前記のいずれかの組合せを生じる方法であって、骨形成細胞と前記ポリペプチドとの接触が、対象者で骨の鉱物濃度を高め、骨質量を増加させ、骨減少を低下させ、又は骨折発生率を低下させる、前記方法。
【請求項32】
請求項1に記載のポリペプチドに対して生成された抗体。
【請求項33】
本質的に配列番号:2のアミノ酸残基1−34から成る単離されたポリペプチド。
【請求項34】
本質的に配列番号:2のアミノ酸残基1−36から成る単離されたポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−515535(P2009−515535A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540369(P2008−540369)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/060844
【国際公開番号】WO2007/059470
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(501452713)ボード オブ コントロール オブ ミシガン テクノロジカル ユニヴァーシティー (1)
【Fターム(参考)】