説明

クロスコルゲーテッドパッキング構造体

本発明は、プライマリサーフェスと称され、複数の平行な通路(11)を備えている第1の面(10)を有している、気相と液相との間の物質並びに/もしくは熱を移動する設備のためのクロスコルゲーテッドパッキング構造体に関する。本発明に係われば、この構造体は、複数の補助的なパッキング部材(21、31)からなる、セカンダリサーフェスと称される、第2の面(20)を有し、各補助的なパッキング部材は、プライマリサーフェス(10)の通路(11)の内側に位置し、上記の第1の面から別々に形成されている。本発明は、深冷分離で用いられるためのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスコルゲーテッドパッキング構造体(cross-corrugated packing structure)に関する。特に、本発明は、気相と液相との間で、物質並びに/もしくは熱を移動させるため、とりわけ、深冷分離のような蒸留のための設備のためのクロスコルゲーテッドパッキング構造体に関する。
【0002】
本発明は、特に空気ガスを分離するための、又は、水素と一酸化炭素とを含む混合物を分離するための深冷分離の領域で、特に有利に適用される。
【背景技術】
【0003】
このタイプの適用において、クロスコルゲーテッドパッキング構造体は、体系的なパッキングに関する基準をなしている。このクロスコルゲーテッドパッキング構造体は、各々が、交互にある方向と別の方向とに傾斜されたコルゲーションが設けられている複数の面、すなわちストリップを積み重ねたものから形成されている、複数のモジュール、すなわち「パック」、の集まりからなっている。
【0004】
フィンとも呼ばれる、各面の複数のコルゲーションは、一般には金属の、孔が穿たれているか又は穿たれていない、滑らかな、又は、折り目加工された複数のシートから形成される複数の平行な通路からなる。例えば、クロスコルゲーテッドパッキングのための面は、標準品質のアルミニウムのストリップから、折り曲げや穿孔のような簡単な機械操作により、経済的に製造されることができる。
【0005】
蒸留塔の場合には、コルゲーションが設けられている面は、ほぼ垂直な平面で収容されている。上記のモジュールは、通常、あるパックから次のパックへとこの塔の軸を中心として90°だけ回転されている。
【0006】
クロスコルゲーテッド構造体は、現在、小さなサイズで見られる、内在的な効率の減少がなく、全てのディメンジョンの塔を建設することを可能とする唯一の構造体として必須である。
【0007】
フィンの高さを変化させることにより、この構造体の、m/mで表される密度を、調整することができる。調整する際、2つの特性に反対方向の変化が見られ、この変化を最適化することも望ましい。これら2つの特性とは、すなわち、容量及び効率である。実際、高いm/mの値の密度の高い構造体により、高い効率のパッキングが与えられるが、容易に詰まり、低い容量が与えられる。逆に、密度の低い構造体により、大きな量を流すことができるが、効率は低い。
【0008】
この密度を調整することにより、様々なタイプのパッキング構造体を規定することができ、例えば、以下のような考えられる様々な場合に理想的に適合する。
直径が主要なパラメータではない、小さい塔に対して高い効率の構造体が維持される。
逆に、とても大きな装置に対して、構造並びに/もしくは輸送に対する制限により課される直径で、最大の処理量を得るために、高さが増加されなければならないかもしれなくても、容量が優先される。
【0009】
従来用いられているクロスコルゲーテッドパッキング構造体の容量を制限する上記の詰まりの効果を低減するために、WO 97/16247では、面のコルゲーションとして、モジュールの上端と下端とで垂直となるように、各々の端部で母線が曲がっているS字形状の複数の通路が提案されている。パックの間の界面でこれら通路を垂直まで立てるこの特有の形状の結果、一般的な通路の形状と密度とに関して同じ構造体に対して、詰まりの限界が、効率に実質的に影響を与えることなく、約30%だけ伸ばされたという意味で、「効率−容量」曲線を、最適化することが可能となった。
【0010】
しかしながら、クロスコルゲーテッドパッキングの分野で著しい前進を示したとしても、S字形状のクロスコルゲーテッドパッキング構造体では、相変わらず、その内在的な限界が残されている。すなわち、より高い効率を得るために通路の密度を増加させることにより、空間的な隙間の密度が高められ、容量が低減される。逆に、空間的な隙間を拡大することにより、容量は増加されるが、相関して、界面領域が減少し、したがって、気体―液体交換の効率が減少する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、本発明の目的により解決されるべき技術的な問題は、プライマリサーフェスと称され、複数の平行な通路を有し、WO 97/16247に記載されている限界を含めて、現在知られている構造体に内在する限界を決定的に伸ばす、第1の面を有している深冷分離用設備のためのクロスコルゲーテッドパッキング構造体を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係われば、上記の技術的な問題は、前記第1の面と分離させて複数の第2の部材を形成することにある。
この第2の部材は、取り外し可能であってもよい。
従来技術の構造体におけるように1つの面ではなく、2つの面を有するこのタイプの構造体のデザインは、既知のクロスコルゲーテッドパッキングの限界が、本発明の背景においてプライマリサーフェスとして知られている、単一の面が、同時に2つの機能を実行しているためであることを理解したという本出願人の功績の結果である。これら2つの機能とはすなわち、一方で、「巨視的な」スケールで、対向する複数の通路の間での交換を可能にしている、交わるようにすれ違う膨大な数の通路を組織化することであり、他方では、「微視的な」スケールで、気相と液相との間での物質交換を行なうことである。
【0013】
反対に、本発明は、これら2つの機能を分離する。従って、本発明は、特に大きな塔で流れの処理量と一様性とのために必要で十分な、主要な広い隙間のクロスコルゲーテッド構造体と、この主要な構造体の中へと加えられ、空間的な組織化を追求することなく、気液の交換を特に改良する補助的な構造体とに分離されている。
【0014】
より正確には、hが通路の高さである場合、クロスコルゲーテッドパッキングの密度は、1/hで変化するため、本発明は、従来の単一の面構造に対して高さhで得られる目標密度に対して、同じ最終的な密度を、プライマリサーフェス、すなわちクロスコルゲーテッドサーフェスと、このプライマリサーフェスの複数の通路の中に収容されているセカンダリサーフェスとの間の表面積の分配を行なって得ることを可能にしている。
【0015】
この結果、高さ2hのコルゲーションが設けられている構造で、目標とされる全面積の半分を提供するプライマリサーフェスと、他方の半分を提供するセカンダリサーフェスとを想像することができ、もしくは、より一般的に、本発明が与えるように、プライマリサーフェスの(1−x)と、セカンダリサーフェスのxとの間で分配を想像することができる(0<x<1)。
【0016】
以下の説明により、非限定的な例として与えられている添付されている図面を参照して、本発明は明確にされ、どのように本発明を実施することができるかが示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、特に、気体混合物を分離するための、深冷分離用設備のためにデザインされているクロスコルゲーテッドパッキング構造体の一部を斜視図で示している。
【0018】
この構造体は、図1の例において、図2に示されているような正三角形の断面を有する平行な複数の通路11からなるコルゲーションを備えている第1の面10、すなわちプライマリサーフェスを有している。
【0019】
図1の構造体は、また、複数の補助的な充填部材21からなる第2の面20、すなわちセカンダリサーフェスを有し、これら補助的な部材21の各々は、プライマリサーフェス10の通路11の内側に配置されている。
【0020】
図3aと図3bの変形例とに示されているように、補助的な充填部材21は、プライマリサーフェス10の通路11に沿って周期的な構造を有している。
【0021】
一般に、図3aと図3bとに示されている補助的な部材21は、第1の面とは別の平坦な金属のストリップから、切断、穿孔、並びに/もしくは折り曲げにより形成されることができる。より正確には、図3aと図3bとにおける実施形態において、補助的な部材21は、高さ2rのストリップからこのストリップの半分の高さに沿って規則的な間隔で分割され、脚部211、211’を残して得られる。これらの分割された複数の部分は、交互に左右に向かって同じ長さだけ折り曲げられ、フィン212’、212’’を形成している。図3bの場合には、脚部211’は、複数の等間隔の孔213を有している。
【0022】
この結果得られる補助的な部材21は、図2に示されている配置で通路11の内側に収容される。
この実施形態において、この構造の主要なメッシュは、通路11を形成している正三角形の2辺により構成されている。この通路の各辺が2つの通路に属するので、プライマリサーフェスの通路11ごとの断面積は、r√3に比例する。ここで、rは、図2の正三角形に外接した円の半径である。さらに、補助的な部材21の断面積は、2rに比例する。プライマリサーフェス10とセカンダリサーフェス20との間の断面積の配分は、この結果、0.5に近いxで、xに対して(1−x)となる。ここでは、x=0.464である。
図3bの変形例では、比(1−x)/xは、より小さくなる。しかし、1の近くに留まる。
【0023】
図5の実施形態に係われば、コルゲーションが設けられた基礎のプライマリサーフェス10は、正三角形の基礎的な通路11を有する図1のプライマリサーフェスと同一である。
それに反して、パッキング構造体のセカンダリサーフェス30の基礎的な部材31は、図7aの平面に沿ってストリップから切り取られ、それから図7bに示されているように複数のコルゲーションを形成するように折られている。これらのコルゲーションは、それから通路11の中に収容される。
【0024】
セカンダリサーフェス20の配分は、この場合、前の場合より低い。気体に与えられる断面積は、より大きな限定を受ける(第1の例では、セカンダリサーフェスは、気体の流れに全く平行である)。交換用部材が、複数の通路の間に同様に導入される。障害物を形成する傾斜した面により偏向される気体は、対向する通路へ向きを変えられる。
【0025】
図4と図8とに示されているように、補助部材21、31’は、これら補助部材21、31’に設けられているタブ40、40’により通路11にはめ込み式に固定され、通路11の壁に設けられている複数の開口部41に挿入されている。
【0026】
もちろん、折り曲げの間隔と角度とを変化させるか、補助構造に偏向部を形成する追加的な折り曲げを加えることによる、添付されている図面を参照して上で説明された基礎的な形状に対しての多くの変形例が存在する。
他の解決法のグループは、エンドレスのねじ構造で補助部材を形成する、ねじられた複数のストリップを位置させることからなる。
形状には関係なく、このように、セカンダリサーフェスは、各通路に収容される別個の部材である。
【0027】
国際出願番号 WO 97/1624に記載されているような新規のパッキングのS字形状により、複数の通路は、それらの端部で適切に閉じられている(fermeture)。一度、パッキングモジュールが構成されると、セカンダリサーフェスの部材は、これらの通路に物理的に取り付けられていなくても、これら通路に閉じ込められる。
【0028】
一旦、補助的な部材がパッキングストリップの通路の中に位置されると、2つのうち1つのストリップは、以前のストリップと交差させるために、反転されなければならない。反転されるストリップは、平面で一時的にカバーされてもよい。全てのストリップが、コルゲーションが形成されている他のストリップに反転されると、この平面は、引かれて滑り出される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のクロスコルゲーテッドパッキング構造体の第1実施形態の斜視図である。
【図2】図1における構造体の側面図である。
【図3a】図1における構造体の補助的なパッキング部材の斜視図である。
【図3b】図3aにおけるパッキング部材の変形例である。
【図4】複数の固定用タブを有する、図1の構造体の変形例の断面図である。
【図5】本発明のクロスコルゲーテッドパッキング構造の第2実施形態の斜視図である。
【図6】図5の構造体の側面図である。
【図7a】図5の構造体の補助的なパッキング部材の平面図である。
【図7b】図7aの補助的なパッキング部材の斜視図である。
【図8】複数の固定用タブを有する、図5の構造体の変形例の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の平行な通路(11)を備えている、プライマリサーフェスと称される第1の面(10)と、複数のパッキングの補助的な部材(21;31)からなり、セカンダリサーフェスと称される第2の面(20)とを具備し、各パッキングの補助的な部材は、前記プライマリサーフェス(10)の通路(11)の内側に配置され、これら補助的な部材は、前記第1の面から独立して形成されていることを特徴とする、気相と液相との間で物質並びに/もしくは熱を移動するための設備のためのクロスコルゲーテッドパッキング構造体。
【請求項2】
前記パッキングの補助的な部材(21;31)は、前記プライマリサーフェス(10)の複数の通路(11)に沿って周期的な構造を有していることを特徴とする請求項1に記載のパッキング構造体。
【請求項3】
前記パッキングの補助的な部材(21;31)は、平坦な金属のストリップから形成されることを特徴とする請求項2に記載のパッキング構造体。
【請求項4】
前記平坦な金属のストリップは、切断され、並びに/もしくは、穿孔され、並びに/もしくは、折り曲げられることを特徴とする請求項3に記載のパッキング構造体。
【請求項5】
前記金属のストリップは、Y字形状に交互に左向きと右向きとに折り曲げられることを特徴とする請求項4に記載のパッキング構造体。
【請求項6】
前記Y字形状の脚部は、複数の周期的な孔(213)を有することを特徴とする請求項5に記載のパッキング構造体。
【請求項7】
平坦な前記金属のストリップは、複数のコルゲーションを形成するように切断され、折り曲げられることを特徴とする請求項4に記載のパッキング構造体。
【請求項8】
前記平坦な金属のストリップは、ねじられることを特徴とする請求項3に記載のパッキング構造体。
【請求項9】
前記パッキングの補助的な部材(21、31’)は、前記プライマリサーフェスの通路(11)にはめ込み式に固定されるための複数のタブ(40、40’)を有していることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1に記載のパッキング構造体。
【請求項10】
前記プライマリサーフェスの通路は、S字形状を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載のパッキング構造体。
【請求項11】
0.5に近いxを用いて、プライマリサーフェスとセカンダリサーフェスとの間の断面積の配分(1−x)/xにより特徴付けられる請求項1乃至10のいずれか1に記載のパッキング構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−529306(P2007−529306A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503384(P2007−503384)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050154
【国際公開番号】WO2005/092491
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・ア・ディレクトワール・エ・コンセイユ・ドゥ・スールベイランス・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】