説明

クロスフロー型垂直軸風車

【課題】導風口を全方位に開設し、少なくとも2の位置に配設される羽根7に風を衝突させることで、吹き込んだ風を有効利用し回転軸6の回転効率を増大させる。
【解決手段】羽根7と導風板3は彎曲面を有する矩形状板よりなる。クロスフロー・タービン部1は、回転軸6を中心とし環状に同一周方向に彎曲面凹状側面を向けて羽根7を配設してなる。クロスフロー・タービン部1の外側に隙間2を介して環状に同一周方向に彎曲面凹状側面を向けて導風板3が配設されている。導風板3と羽根7の彎曲面凹状側面は互いに逆方向を向いて配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風をクロスフロー・タービン部の2箇所の羽根に作用させクロスフロー・タービン部の回転軸の回転効率を高めたクロスフロー型垂直軸風車に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直軸風車は回転軸が地面に対して垂直となるタイプの風車をいい、設置やメンテナンス等の扱いが容易で、どの方向からの風も利用可能であり季節や時間帯で風向きが変動する日本の風況に適した風力発電の風車であるといえる。
この種の垂直軸風車に関し、回転軸から放射状に延びるアームの先端に対称翼型ブレードを対称翼型ブレードの横断面の対称軸がアームと90度の角度を有して取り付けられ、翼型ブレードの外側に回転軸の軸心を通る直線に対して傾斜して任意の横断面形状を有する整流板を配設した整流式風車や、整流板を断面弧形にしたものや、整流板を回転軸方向、つまり半径内方向に沿って配設したものが提案されている(例えば、特許文献1、2、3、4、5又は6参照)。
羽根が翼型ブレードの場合、ブレードの肉厚部分から肉薄部分へ気流が流れるとブレードの対向側面側の圧力差により垂直方向へ揚力が生じブレードの肉厚部分が先頭となってブレードを周回するように回転軸が回転する。ところが、特許文献1、2、3、4又は6に開示の発明は整流板がブレードの肉厚部分正面側から肉薄部分方向へ風が流れるように傾斜して設けられ、特許文献5に開示の発明は回転軸の軸心方向、換言すれば半径内方向に沿って配設されているため、風が吹いて来る方向に位置するガイドベーンのみから風をブレードに送り込むことができる。しかしながら、同時に全てのブレードに回転方向である肉厚部分正面側に風を送り込むことはできないという欠点がある。
特許文献1の[0004]の段に整流板を弧形にする旨の記載があるが、彎曲面のうち凹状側面の向きが特定していない。図面の[図7]の矢印が翼型ブレードが運動する方向であると記載されていること、及び[図4]で整流板が半径内方向に沿って設けられていることより、特許文献1の発明者は翼型ブレードの形状を断面弧形にした場合の凹状側面の向きに関しては考慮していないといえる。仮に、傾斜した整流板が凹状側面が外側を、凸状側面が内側を向くように配設された場合は、風が翼型ブレードの肉薄部分方向に流れ、高速回転に寄与しないという問題点がある。
特許文献6には、回転翼の外側に傾斜角αに傾斜した整流板を設け、回転翼に渦状気流を与えて大出力を得ようとした垂直軸風車が開示されている。
特許文献6に開示の垂直軸風車であると、案内羽根や補助案内羽根の基部間に無単別路を懸回したり、スプリングを取り付けたりしているため構造が煩雑で、又、案内羽根が横断面が平坦な矩形状板よりなるので風をクロスフロー・タービン部を構成する羽根の凹状側面に的確に作用させることが困難であるという問題点があった。
横断面が彎曲した矩形状片よりなる羽根を同一彎曲形状側が周方向に沿って同一方向に向いて配設され、羽根の外側に案内羽根と補助案内羽根を同一方向に傾斜させて交互に配設し、補助案内羽根の基部には歯車を設け、該歯車間は無端チェーンで懸回し、補助案内羽根が連動するようにしたり、補助案内羽根の基部にスプリングを取り付けて台風等の強風の際の風車の過回転を防止するようにした風車が提案されている(例えば、特許文献7参照)。特許文献7に開示の風車であると、案内羽根は平坦板よりなるため一方向から吹く風を全ての羽根の彎曲凹状側面に作用させることはできず、又、部品点数が多く高コスト化し非経済的であるという問題点があった。
又、特許文献1〜7に開示の風車は案内板数が少なく、案内板で整流化した風と、整流化されなかった風とが乱気流となって回転軸の回転を妨げるという欠点があった。
羽根の外側にガイドレールに沿って周方向に移動可能なカバーを設け、該カバーの移動で吹き込む風を各羽根の凹状彎曲面で受けるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献8参照)。特許文献8に開示の発明であると、風向き情報によりカバーを適切な位置に移動させる必要性があり、カバー移動用モーター等を必要とし、構造が煩雑になるという問題点があった。
【特許文献1】特開2006−22798号公報
【特許文献2】特開2003−120501号公報
【特許文献3】特開2010−185389号公報
【特許文献4】特開2004−124921号公報
【特許文献5】特開2010−196600号公報
【特許文献6】WO2003−098035号公報
【特許文献7】特開2000−161196号公報
【特許文献8】特開2005−201232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みて創案されたものであって、吹き込んだ風をクロスフロー・タービン部の1箇所の羽根に作用させた後に、クロスフロー・タービン部の羽根で囲まれた中空部を回転軸を回避しながら通過し、別の位置に配置された羽根に作用させ、風を少なくとも合計2箇所の羽根に回転方向に作用させることで風力を有効利用し、クロスフロー・タービン部の回転軸の回転力を増大させるようにしたクロスフロー型垂直軸風車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために本願発明のうち請求項1に記載の発明は、地面に対して略垂直に設置された回転軸と、横断面弧状の彎曲面を有する矩形状板よりなる複数の羽根が、該羽根の彎曲面凹状側面が前記回転軸を中心として同一周方向を向き環状に配設され前記回転軸の軸方向に平行に延び全体として円筒状に羽根が配設されたクロスフロー・タービン部と、クロスフロー・タービン部の外側に上下方向に長い矩形状の導風板を回転軸と平行に上下方向に延設すると共に、回転軸を中心として環状に配設されてなるクロスフロー型垂直軸風車において、導風板はクロスフロー・タービン部の外側に隙間を介して配設され、外部から吹き込む風が、クロスフロー・タービン部の1枚の羽根の彎曲面凹状側面に当たった後に、クロスフロー・タービン部の内側中空部を前記回転軸を回避しながら進み、別の位置に配置された羽根の彎曲面凹状側面に当たり、風が複数個所の羽根に作用することで前記クロスフロー・タービン部の高回転効率が可能に、前記導風板は横断面が弧状の彎曲面を有し、且つ彎曲面凹状側面が同一周方向を向いて配設され、隣り合う導風板間に開口される導風口が全方位的に配設されるように、隣り合う導風板の外端を結んで得られる仮想円筒面の接線に対して前記導風板の外側縁部が略90度の角度を有して上側導風板取付板と下側導風板取付板に取り付けられ、前記導風板の彎曲面凹状側面の向きは、前記羽根の彎曲面凹状側面の向きとは反対方向に設けられていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、羽根の横断面形状が、直径Rの仮想円の劣弧に形成され、導風板の横断面形状が直径rの仮想円の劣弧に形成され、直径Rと直径rはR:r=1:1.5〜2.5に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本願発明は羽根と導風板の彎曲面凹状側面が互いに逆方向を向いて配設されているため、風車に吹き込んだ風のうち導風板の彎曲面凸状側面側を通る風は直接羽根の彎曲面凹状側面に衝突して作用し羽根を回転方向に回転させると共に風は進路を変更し、導風板の彎曲面凹状側面を通る風は、導風板の彎曲面凹状側面より羽根の彎曲面凹状側面に向けて進み羽根の彎曲面凹状側面に衝突して作用し、次にクロスフロー・タービン部の中空部を回転軸を回避して通り先に衝突した羽根とは離れた位置の羽根の彎曲面凹状側面に作用し、風を少なくとも2箇所の羽根の彎曲面凹状側面に作用させることで、クロスフロー・タービン部に吹き込んだ風を有効利用可能であるという効果を有し、ひいては回転軸の回転力を増大させるという効果がある。
本願発明は、クロスフロー・タービン部の外側にクロスフロー・タービン部の羽根とは彎曲面凹状側面が逆方向を向いて導風板を配設する構造であるため、部品点数が少なく低コスト化可能であり、且つメンテナンス作業も簡便であるという効果がある。
本願発明は、平面から視て隣り合う導風板の外端縁を結んで得られる仮想円筒面に対して前記導風板の外側縁部を接点とする接線に対して略90度の角度を有して導風板の上下両端縁が上側導風板取付板と下側導風板取付板に取り付けられているので、隣り合う導風板間によって開設される導風口の入り口近傍の導風板が上下側導風板取付板の半径内方向に沿って配設され吹き込む風を導風板が抵抗となることなく大風量の風を円滑に取り込み可能であるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本願発明は彎曲された矩形状板よりなる多数の羽根を同一彎曲面が同一周方向を向いて配設して構成されたクロスフロー・タービン部の外側に、彎曲された矩形状板よりなる多数の導風板を同一彎曲面が羽根とは逆向きに周方向に沿って配設させることで、吹き込む風が2箇所の羽根の彎曲面凹状側面に当たるようにし、羽根の回転駆動力を増大させることを実現した。又、導風板の外側縁部を結ぶ仮想円筒面に対して導風板の外端縁部が略直交するように配設することで、風車の外側に大きな導風口を外方に向けて開設し、導風板が風車方向に吹く風の抵抗となることがなく風がスムーズに風車内へと入り込み、多量の風を逃がすことなく風車内へ案内し導入することを実現した。
【実施例1】
【0007】
図1〜図5に示されるクロスフロー型垂直軸風車の実施例について説明する。
図1は実施例1を説明するためのクロスフロー型垂直軸風車の平面図、図2は正面図、図3は風の流れを示す図1のA−A線断面図、図4は羽根の彎曲状態を示す拡大平面説明図、図5は導風板の彎曲状態を示す拡大平面説明図である。
これらの図において、クロスフロー・タービン部1の外側には隙間2を介して多数枚の導風板3をクロスフロー・タービン部1を囲むように環状に配設している。
【0008】
クロスフロー・タービン部1について説明する。上側円形板4と下側円形板5は同径の円形板よりなり、上下方向に所定距離を有して平行な位置関係となるように離隔している。地面に対して垂直に立設された回転軸6は下側円形板5と上側円形板4の中心に貫通して一体的に取り付けられている。図3に示すように、下側円形板5と上側円形板4には周縁を大径円とし上下側円形板4、5の半径より小径の小径円との間に設けられる環状範囲に於いて、羽根7の上下両端を取り付けている。羽根7は、一方向に著しく長い矩形状板を平視及び底面視が円弧状に彎曲された劣弧の矩形状片よりなる。羽根7は、回転軸6の軸心を中心として同一周方向に同一彎曲面が向き、同一羽根角をもって配設されている。上下側円形板4、5の外周縁に於ける羽根7の外端縁配設位置を接点とする接線と、羽根7の延長線とのなす羽根角は限定するものではないが、10°〜40°程度が好適である。羽根7は、ゴム成分を含有した耐衝撃性合成樹脂組成物で構成されているものを用いても良い。
【0009】
上側円形板4の上方には隙間を介して上側導風板取付板8が、下側円形板5の下方には隙間を介して下側導風板取付板9が互いに平行な位置関係に配設されている。上側導風板取付板8と下側導風板取付板9は、上側円形板4と下側円形板5よりも大径で且つ同一径の円形板よりなる。上側円形板4の中心を貫通して上方へ突出した回転軸6の上端部はベアリング10により上側導風板取付板8の中心に回転自在に取り付けられている。下側円形板5の中心を貫通して下方へ突出した回転軸6の下端部はベアリング11により下側導風板取付板9の中心に回転自在に取り付けられている。導風板3は平面視及び底面視が円弧状に彎曲した矩形状板よりなる。図4に示すように羽根7の横断面形状が直径Rの仮想円の劣弧に形成され、図5に示すように導風板3の横断面形状が直径rの仮想円の劣弧に形成されているとすると、R:r=1:1.5〜2.5に設定されていることが好ましいが、R:rの割合は、上記比率に限定するものではない。具体例として、上下側円形板4、5の直径が1000mmである場合、羽根7の仮想円の直径Rが250mmで、導風板3の仮想円の直径rが400mmに設定することが考えられる。図1及び図3に示すように、上側導風板取付板8と下側導風板取付板9の外周縁と、上下側円形板4、5の径より僅かばかり大径円との間の環状範囲に於いて、導風板3の上下両端が上側導風板取付板8と下側導風板取付板9に夫々取り付けられている。導風板3は同一彎曲面が同一周方向を向き、且つ彎曲面凹状側面が羽根7の彎曲面凹状側面とは反対方向を向いて周方向に所定間隔離隔して配設されている。導風板3の外側縁近傍部分は、上側導風板取付板8と下側導風板取付板9の外周取付端を接点とする接線12に対して略90°の角度を有して上側導風板取付板8と下側導風板取付板9に取り付けられ、隣り合う導風板間に開設される導風口が周方向に定間隔を有して全方位的に開口するようにしている。導風板3、3間に開口する導風通路が吹き込む風の進路と略直線状になり導風板が抵抗となることなくスムーズに、しかも大量に吹き込むことができるためである。中空支柱13は下側導風板取付板9の下面に取り付けられている。14は発電機である。
【0010】
図3中の矢印を参照にして作用について説明する。導風板3、3間に開設される導風口から風が入ると、風は導風板3の彎曲面凹状側面と隣り合う導風板3の彎曲面凸状側面に案内されて進み、隙間2に於いてはクロスフロー・タービン部1の半径に対して斜め方向に入り込む。風は羽根7の彎曲面凹状側面に当たり第1回目の衝突をする。第1回目の衝突後、風はクロスフロー・タービン部1の内側中空部へと進む。風は、クロスフロー・タービン部1の回転による遠心力により回転軸6を回避しながら進み、第1回目の衝突した羽根の位置から離れた位置の羽根7の彎曲面凹状側面に当たり第2回目の衝突をする。第2回目の衝突後、風は反射して隙間2をクロスフロー・タービン部1の半径に対して斜め外方向に進み、導風板3、3間を通って外部へ逃げる。風は第1回目の衝突で羽根7に彎曲面凹状側面側から彎曲面凸状側面側へと作用し、第2回目の衝突でも羽根7に彎曲面凹状側面側から彎曲面凸状側面側へと作用させる。その結果、吹き込む風を2度羽根に作用させることができ、クロスフロー・タービン部1の回転力が増大する。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本願発明は、水を導風板3、3間に導入することで水力発電にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】クロスフロー型垂直軸風車の平面図である。(実施例1)
【図2】クロスフロー型垂直軸風車の正面図である。(実施例1)
【図3】風の流れを示す図1のA−A線断面図である。(実施例1)
【図4】羽根の彎曲状態を示す拡大平面説明図である。(実施例1)
【図5】導風板の彎曲状態を示す拡大平面説明図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0013】
1 クロスフロー・タービン部
2 隙間
3 導風板
6 回転軸
7 羽根
8 上側導風板取付板
9 下側導風板取付板
12 接線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に対して略垂直に設置された回転軸と、
横断面弧状の彎曲面を有する矩形状板よりなる複数の羽根が、該羽根の彎曲面凹状側面が前記回転軸を中心として同一周方向を向き環状に配設され前記回転軸の軸方向に平行に延び全体として円筒状に羽根が配設されたクロスフロー・タービン部と、
該クロスフロー・タービン部の外側に上下方向に長い矩形状の導風板を前記回転軸と平行に上下方向に延設すると共に、前記回転軸を中心として環状に配設されてなるクロスフロー型垂直軸風車において、
前記導風板は前記クロスフロー・タービン部の外側に隙間を介して配設され、
外部から吹き込む風が、クロスフロー・タービン部の1枚の羽根の彎曲面凹状側面に当たった後に、クロスフロー・タービン部の内側中空部を前記回転軸を回避しながら進み、別の位置に配置された羽根の彎曲面凹状側面に当たり、風が複数個所の羽根に作用することで前記クロスフロー・タービン部の高回転効率が可能に、前記導風板は横断面が弧状の彎曲面を有し、且つ彎曲面凹状側面が同一周方向を向いて配設され、
隣り合う導風板間に開口される導風口が全方位的に配設されるように、隣り合う導風板の外端を結んで得られる仮想円筒面の接線に対して前記導風板の外側縁部が略90度の角度を有して上側導風板取付板と下側導風板取付板に取り付けられ、
前記導風板の彎曲面凹状側面の向きは、前記羽根の彎曲面凹状側面の向きとは反対方向に設けられていることを特徴とするクロスフロー型垂直軸風車。
【請求項2】
上記羽根の横断面形状が、直径Rの仮想円の劣弧に形成され、
上記導風板の横断面形状が直径rの仮想円の劣弧に形成され、
直径Rと直径rはR:r=1:1.5〜2.5に設定されていることを特徴とする請求項1に記載のクロスフロー型垂直軸風車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−241709(P2012−241709A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130668(P2011−130668)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(508365919)有限会社久万重機サービス (1)
【Fターム(参考)】