説明

クロスフロー膜モジュール

液−液抽出要素について説明する。ある液−液抽出要素が、第1の層対と、その第1の層対に隣接して配置されて積層体を形成する第2の層対とを有している。第1の層対は、第1の高分子微多孔質膜と、第1の流路層とを有しており、その第1の流路層は、第1の流れ方向に方向付けられており、抽出要素の第1の対向側部上に設けられた流体入口及び流体出口を有している。第2の層対は、第2の高分子微多孔質膜と、第2の流路層とを有しており、その第2の流路層は、第1の流れ方向とは異なる第2の流れ方向に方向付けられており、抽出要素の第2の対向側部上に設けられた流体入口及び流体出口を有している。第1の微多孔質膜は、第1の流路と第2の流路との間に設けられている。又、溶解した溶質を第1の液体から第2の液体へと抽出する方法について説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分離した溶質を第1の液体から第2の液体の中に抽出するためのクロスフロー膜モジュール及びそのクロスフロー膜モジュールを使用したシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
液−液抽出は、第1の液体中に溶解された溶質をその第1の液体と本質的に不混和性である第2の液体に移動させるための広く用いられている技法である。第1の液体中に溶質を入れた溶液は一般に「供給溶液」と称され、第2の液体は一般に「抽出溶媒」又は「液体抽出剤」と称されている。供給溶液が液体抽出剤と接触されると、溶質はそれ自体で、2つの液体中における溶質の相互溶解性に従って2つの液体間で分散する。
【0003】
液−液抽出を達成する一つの従来手法は、供給液を液体抽出剤と直接混合することである。不都合にも、この技法では多くの場合、混合物内に永続的な散乱又は乳濁液の形成が生じ、抽出プロセスが、時間と最終結果の双方の面で非常に非効率的となる。
【0004】
上記で確認した散乱の問題に対処するために、微多孔質膜による抽出方法が開発されてきた。具体的には、微多孔質膜の一方の側部は通常、供給溶液と接触され、微多孔質膜の対向する側部は液体抽出剤と接触される。従って、溶液がその向こうに移動する液−液界面が、微多孔質膜の微細孔内で供給溶液と液体抽出剤との間に形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微多孔質膜によって供給溶液と液体抽出剤との間に総体的な分離をもたらすという構想は、実現性のあるものであることが証明されている。しかしながら、工業的環境における微多孔質膜による液−液抽出の実行可能性は通常、抽出の速度(微多孔質膜によってもたらされる液−液境界面の表面積の関数である)、及び、膜が損傷したり汚れたりした場合にその膜を交換する容易性に依存する。従来の微多孔質膜による液−液抽出の装置及び方法は、限られた液−液境界面の表面積を有する設計を利用しており、それらの設計は膜交換を容易にするものではない。これらの特有の非効率性が、微多孔質膜による抽出を大規模且つ工業的に実現する妨げとなっている。
【0006】
例えばエタノールを発酵飼料ブロスから得るなど、多数の工業の用途では、微多孔質膜による液−液抽出技法を使用することにより利益を得ることができる。従って、費用効果を基準として保持するように適応された微多孔質膜を組み込んだ高生産性の液−液抽出システムに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、溶解した溶質を第1の液体から第2の液体の中に抽出するためのクロスフロー膜モジュール及びそのクロスフロー膜モジュールを使用したシステムを提供する。いくつかの実施形態において、これらの膜モジュールは、エタノールなどの溶解した溶質を、水などの第1の液体から、優先的に第2の液体の中に抽出するのに有用である。
【0008】
本発明の一態様は、第1の層対と、その第1の層対に隣接して設けられて積層体を形成する第2の層対とを有する液−液抽出要素に関する。第1の層対は、第1の高分子微多孔質膜と、第1の流路層とを有しており、その第1の流路層は、第1の流れ方向に方向付けられており、抽出要素の第1の対向側部上に設けられた流体入口及び流体出口を有している。第2の層対は、第2の高分子微多孔質膜と、第2の流路層とを有しており、その第2の流路層は、第1の流れ方向とは異なる第2の流れ方向に方向付けられており、抽出要素の第2の対向側部上に設けられた流体入口及び流体出口を有している。第1の微多孔質膜は、第1の流路と第2の流路との間に設けられている。
【0009】
本発明の別の態様は、溶解した溶質を第1の液体から第2の液体の中に抽出する方法に関する。この方法は、液−液抽出要素を用意するステップと、第1の流路層の中に、溶解した溶質を有する第1の液体を流すステップと、第2の流路層の中に第2の液体を流すステップと、第1の液体から第2の液体の中へと、第1及び第2の微多孔質膜の向こう側に溶質を移動させるステップとを含んでいる。この抽出要素は、複数の第1の層対と、複数の第2の層対とを有しており、各第2の層対は、第1の層対との間で交互に並び積層体を形成している。第1の層対は、第1の高分子微多孔質膜と、第1の流路層とを有しており、その第1の流路層は、第1の流れ方向に方向付けられており、抽出要素の第1の対向側部上に設けられた流体入口及び流体出口を有している。第2の層対は、第2の高分子微多孔質膜と、第2の流路層とを有しており、その第2の流路層は、第1の流れ方向とは異なる第2の流れ方向に方向付けられており、抽出要素の第2の対向側部上に設けられた流体入口及び流体出口を有している。第1の微多孔質膜は、第1の流路と第2の流路との間に設けられている。
【0010】
上記の概要は、本発明の開示した各々の実施形態又は全ての実現形態を説明することを意図したものではない。以下の図、発明を実施するための最良の形態、及び実施例によって、これらの実施形態をより具体的に例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本開示は、溶解した溶質を第1の液体から第2の液体の中に抽出するためのクロスフロー膜モジュール及びそのクロスフロー膜モジュールを使用したシステムを提供する。
【0012】
定義する以下の用語に関し、これらの定義は、特許請求の範囲又は本明細書のいずれかの箇所において異なる定義が与えられていない限り、適用されるものとする。
【0013】
数値の範囲を端点によって列挙したものは、その範囲に包含される全ての数値を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、その内容に別段の明確な指示がない限り、「ある(a、an)」及び「その(the)」という単数形には、複数の指示物が含まれる。従って、例えば、「ある層(a layer)」を具備する構成への言及は、2つ以上の層の構成が含まれる。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用するとき、その内容に別段の明確な指示がない限り、「又は」という用語は概して、「及び/又は」を含めた意味で用いられている。
【0015】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用する、数量、特性の測定値などを表す全ての数値は、いかなる場合においても、「約」という語で修飾されるものとして理解されるべきである。従って、そうでない旨の指示がない限り、上記の明細書及び添付の特許請求の範囲において記載された数値パラメータは、本発明の教示を利用する当業者が得ようと求める望ましい特性に応じて変化しうる概算値である。最低限でも、又、均等論を特許請求の範囲の範疇に適用することを制限しようとする試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、記録された有効数字の桁数を考慮して、又通常の丸め法を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広範な範疇を示す数値の範囲及びパラメータは概算値であるにも関わらず、具体例において記載する数値は可能な限り正確に記録されている。いかなる数値も、しかしながら、個々の試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じるある程度の誤差を本質的に含んでいる。
【0016】
多数の実施形態において、液−液抽出モジュールは、波形フィルムのシートと交互に層状化されて積層体を形成する多孔質膜のシートを有している。スペーサ層内の波形は、多孔質膜のいずれかの側部を通過する流体のための流路として機能することができ、又積層体の外側に対して開いている。いくつかの実施形態において、各波形層は、その波形層のすぐ上方及び下方にある波形層に対して90度に方向付けられている。一方の層の多孔質膜とその下の波形層との間に(波形溝の方向に且つ対向側部に沿って)形成された側部シールが、溝方向の流れを導き、横方向の流れを妨げる。いくつかの実施形態において、層の間の縁部シールは、接着剤のビードであってもよく、又、ソニックシール又はヒートシールされていてもよい。従って、二方向の液−液抽出フローモジュールを作製することができ、このモジュールにおいて、第1の流体は、モジュールの中を第1の方向に流れて、一つおきの層の波形スペーサ及び多孔質膜の中を通り、一方の側部で多孔質膜層と均一に接し、第2の流体は、液体抽出モジュールの中を第1の方向に対する(多くの場合、直角な)第2の方向に流れるように送られて、層の波形スペーサの中を第1の流体と互い違いに通り、他方の側部で膜層と均一に接する。
【0017】
多数の実施形態において、液体抽出モジュールは、液体抽出モジュールの4つの側部(縁部)面上のマニホールドを有する正方形のフレーム及び/又はハウジングに嵌合するように設計され構成されている。2つの直角な側部上でハウジングに入る流体は、入口マニホールドで全ての層にわたって分散し、液体抽出モジュールの中を通り、出口マニホールドにおいて収集することができる。2つの流体が迂回し互いに直接接触するのを防止するために、シールが液体抽出モジュールとハウジングとの間の角部に沿って形成されていてもよい。シールは、例えば、注入された発泡体又は軟質ゴムであってもよい。従って、2つの流体は、多孔質膜の細孔を通じてのみ互いに接触することになる。
【0018】
多数の実施形態において、供給溶液及び抽出溶媒の流路は、液体抽出モジュールの横断面全体にわたって一様である。いくつかの実施形態において、ハウジングは硬質であり、モジュールは、流体圧力がモジュールに加えられたときにモジュールの最小限の膨張が存在するように、ハウジング内に嵌め込まれている。各流体に対して2つの異なる圧力を維持することができる。不混和液を用いた膜抽出の場合、多孔質膜を湿潤させない流体に対して、より高い圧力が維持される。
【0019】
上述のように設計された抽出モジュールを用いると、非常に大きな多孔質膜の表面積が最小限のコストで使用可能となり、供給段階と抽出段階との間の溶質の最大の物質移動が可能となる。これらの抽出モジュールは又、ハウジングとの取付け及びハウジングからの取外しに好都合である。プロセスにおける生産能力は、モジュールを追加するか又は取り去ることによって調整することができる。
【0020】
抽出モジュールの構造は、自動組立てに向いたものとなっている。層は、以下で説明する様々な技法によって組み立てることができる。多数の実施形態において、組立ての間、壊れやすい多孔質膜は、積み重ねられ縁部をシールされるときにのみ操作され、従って、抽出モジュール内の多孔質膜に生じうる損傷が減じられる。
【0021】
この抽出モジュールと共に使用しうる例示的な流体の一部を挙げると、デシルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、ドデカン、又はそれらの組み合わせなどの溶媒と、エタノール/水、水性アミン又は発酵ブロスなどの水性流体とがある。一実施形態において、抽出モジュールは、エタノールを優先的に水相から溶媒相に移動させる。
【0022】
クロスフロー膜モジュールの一実施形態を図1に示す。このクロスフロー膜モジュール又は液−液抽出要素100は、第1の層対110と第2の層対120とを有している。第2の層対120は第1の層対110に隣接して設けられて、積層体150を形成している。この積層体150は、図1に示すように、x軸、y軸、及びz軸を有している。z軸は、積層体150の厚さ方向である。x軸及びy軸は共に、積層体150の面内の軸であり、互いに対して直角である。
【0023】
第1の層対110は、第1の高分子微多孔質膜112と第1の流路層114とを有しており、この第1の流路層114は、第1の流れ方向Fに(図1のx軸に沿って)方向付けられており、抽出要素100の第1の対向側部上に(図1のy軸に沿って)設けられた流体入口116及び流体出口118を有している。従って、図1に示す例示の実施形態において、第1の流れ方向Fは、液−液抽出要素100の第1の対向側部に対して直角である。
【0024】
第2の層対120は、第2の高分子微多孔質膜122と第2の流路層124とを有しており、この第2の流路層124は、第1の流れ方向Fとは異なる第2の流れ方向Fに(図1のy軸に沿って)向けられており、抽出要素100の第2の対向側部に(図1のx軸に沿って)設けられた流体入口126及び流体出口128を有している。従って、図1に示す例示の実施形態において、第2の流れ方向Fは、液−液抽出要素100の第2の対向側部に対して直角である。第1の流路層114と第2の流路層124との間に設けられた第1の微多孔質膜112が示されている。一実施形態において、第1の流れ方向Fは第2の流れ方向Fに対して直角であるが、これは必須ではない。
【0025】
多数の実施形態において、液−液抽出要素100は、複数(2つ以上)の交互に並ぶ第1の層対110と第2の層対120とを有している。いくつかの実施形態において、液−液抽出要素100は、垂直方向の重ね合わせで(z軸に沿って)積み重ねられた10枚から2000枚、又は25枚から1000枚、又は50枚から500枚の交互に並ぶ第1の層対110と第2の層対120とを有しており、ここで第1の流れ方向F(x軸沿い)は第2の流れ方向F(y軸沿い)に対して直角である。
【0026】
流路層114、124及び微多孔質膜層112、122は、任意の有用な値の層厚さ(z軸沿い)を有している。多数の実施形態において、第1の流路層114と第2の流路層124はそれぞれ、10マイクロメートルから250マイクロメートル、又は25マイクロメートルから150マイクロメートルの範囲の厚さを有している。多数の実施形態において、第1の高分子微多孔質膜112と第2の高分子微多孔質膜122はそれぞれ、1マイクロメートルから200マイクロメートル、又は10マイクロメートルから100マイクロメートルの範囲の厚さを有している。液−液抽出要素100は、任意の有効な値の全厚(z軸沿い)を有している。いくつかの実施形態において、液−液抽出要素100は、5センチメートルから100センチメートル、又は10センチメートルから50センチメートルの範囲の全厚(z軸沿い)を有している。
【0027】
液−液抽出要素100は、任意の有用な形状を有することができる。多数の実施形態において、液−液抽出要素100は、直線に囲まれた形状を有している。液−液抽出要素100は、任意の有用な値の幅(y軸沿い)と長さ(x軸沿い)を有している。いくつかの実施形態において、液−液抽出要素100は、10センチメートルから300センチメートル、又は50センチメートルから250センチメートルの範囲の全幅(y軸沿い)を有している。いくつかの実施形態において、液−液抽出要素100は、10センチメートルから300センチメートル、又は50センチメートルから250センチメートルの範囲の全幅(x軸沿い)を有している。一実施形態において、液−液抽出要素100の長さは、幅に等しいか又は実質的に等しい。
【0028】
第1及び第2の流路層114、124は、所望により、同じ材料又は異なる材料で形成することができ、又同じ形又は異なる形をとることができる。第1及び第2の流路層114、124は、第1の微多孔質膜112と第2の微多孔質膜122との間に液体を流れさせることができる。多数の実施形態において、第1及び第2の流路層114、124は、第1及び第2の流路層114、124が微多孔質膜112と122との間に流路を形成するように構造化することができる。いくつかの実施形態において、第1及び第2の流路層114、124は非多孔質であり、例えばポリオレフィンなどの高分子材料で形成されている。
【0029】
いくつかの実施形態において、第1及び第2の流路層114、124は、微多孔質膜112と122との間に流路を設けるために波形となっている(平行する交互に並ぶ頂部及び谷部を有する)。多数の実施形態において、この波形により、流れ方向に平行な流路が設けられる。これらの波形は、任意の有用なピッチ(隣接する頂部と谷部との距離)を有することができる。いくつかの実施形態において、波形は、0.05センチメートルから1センチメートル、又は0.1センチメートルから0.7センチメートルの範囲のピッチを有している。波形は、例えば型押し、成形などのような任意の有用な方法によって形成することができる。
【0030】
図1に示すように、液−液抽出要素100のある例示的な構成が、第1の平面的な高分子微多孔質膜112と第1の波形流路層114とを有する第1の層対110を有しており、この第1の波形流路層114は、第1の流れ方向Fに(図1のx軸に沿って)方向付けられている。従って、図1に示す例示の実施形態において、第1の流れ方向Fは、第1の波形流路層114の波形に対して平行である。第2の層対120は、第2の平面的な高分子微多孔質膜122と第2の波形流路層124とを有しており、この第2の波形流路層124は、第1の流れ方向Fに対して直角で且つ第2の波形流路層124の波形に対して平行な第2の流れ方向Fに(図1のy軸に沿って)方向付けられている。従って、図示した例示の実施形態において、第1の流れ方向Fは第2の流れ方向Fに対して直角であり、第1の波形流路層114の波形は、第2の波形流路層124の波形に対して直角である。
【0031】
液−液抽出要素100は、所望により、液−液抽出要素100のうちの選択した縁部に沿って設けられた層シール130、140を有することができる。第1の層シール130は、液−液抽出要素100の対向側部に沿って、ある層の多孔質膜と、その多孔質膜の下の流路層との間に(その流路層の流れ方向に)形成することができる。第2の層シール140は、液−液抽出要素100の対向側部に沿って、ある層の多孔質膜と、その多孔質膜の下の流路層との間に(その流路層の流れ方向に)形成することができる。多数の実施形態において、第1及び第2の層シール130、140は、図1に示すように、対向側部上で交互に並んでいる。
【0032】
いくつかの実施形態において、層の間の層シール130、140は、接着剤のビードであってもよく、又ソニックシール又はヒートシールであってもよい。従って、二方向の液−液抽出流モジュール100を作製することができ、このモジュールにおいて、第1の流体は、モジュールの中を第1の方向に流れて、一つおきの層の波形スペーサ及び多孔質膜の中を通り、一方の側部で多孔質膜層と均一に接し、第2の流体は、液体抽出モジュールの中を第1の方向に対する(多くの場合、直角な)第2の方向に流れるように送られて、層の波形スペーサの中を第1の流体と互い違いに通り、他方の側部で膜層と均一に接する。
【0033】
いくつかの実施形態において、第1の多孔質不織布層(図示せず)が第1の高分子微多孔質膜112と第1の流路層114との間に設けられており、又、第2の多孔質不織布層(図示せず)が第2の高分子微多孔質膜122と第2の流路層124との間に設けられている。この多孔質不織布層は、微多孔質膜及び/又は流路層を補強するのを補助することができる。多孔質不織布層は、例えばスパンボンド層など、任意の有用な材料であってよい。この多孔質不織布層は、高分子微多孔質膜及び/又は流路層に所望により取り付ける(接着剤、超音波シール、ヒートシールなど)ことができる。
【0034】
微多孔質膜に使用される材料は、多種多様な形が想定される。微多孔質膜材料は通常、膜の主要面間に延びるマイクロメートル又はサブマイクロメートルの寸法の細孔(即ち微細孔)を有している。微細孔は、例えば分離していても相互連結していてもよい。微多孔質膜材料は、それを貫く微細孔を有する任意の材料、例えば微多孔質の熱可塑性高分子から形成されていてもよい。微多孔質膜材料は、軟質であっても硬質であってもよい。
【0035】
液体抽出膜として利用する場合、微多孔質膜の微細孔寸法、厚さ、及び組成によって、抽出速度を決定することができる。微多孔質膜の微細孔の寸法は、供給溶液と液体抽出剤とが微細孔内で接触できるように十分に大きくなければならないが、供給溶液が微多孔質膜を通じて抽出溶媒の中へと流れ込むほど大きくてはならない。
【0036】
有用な微多孔質膜材料には、例えば親水性又は疎水性の材料が挙げられる。微多孔質膜は、例えば米国特許第3,801,404号(ドルイン(Druin)ら)、第3,839,516号(ウィリアムス(Williams)ら)、第3,843,761号(ビーレンバウム(Bierenbaum)ら)、第4,255,376号(スーゲン(Soehngen)ら)、第4,257,997号(スーゲン(Soehngen))、第4,276,179号(スーゲン(Soehngen))、第4,973,434号(ジルカー(Sirkar)ら)に記載されている方法によって調製することができ、且つ/又は、例えばセルガード社(Celgard, Inc.)(ノースカロライナ州シャーロット(Charlotte))、テトラテック社(Tetratec Inc.)(ペンシルバニア州アイビーランド(Ivyland))、ナディアフィルトレーション社(Nadir Filtration GmbH)(ドイツ国ヴィースバーデン(Wiesbaden))、又はメンブラナ社(Membrana, GmbH)(ドイツ国ウッペルタール(Wuppertal))などの供給業者から広く商業的に入手可能である。例示的な親水性膜には、多孔質のポリアミド(例えば多孔質のナイロン)、多孔質のポリカーボネート、多孔質のエチレンビニルアルコール共重合体、及び多孔質の親水性ポリプロピレンの膜が挙げられる。例示的な疎水性膜には、多孔質のポリエチレン、多孔質のポリプロピレン(例えば、熱誘起相分離による多孔質のポリプロピレン)、及び多孔質のポリテトラフルオロエチレンの膜が挙げられる。
【0037】
有用な微多孔質膜材料の平均孔径(例えば、ASTM E1294−89(1999)「自動液体ポロシメータを使用した膜フィルターの孔径特性の標準試験法(Standard Test Method for Pore Size Characteristics of Membrane Filters Using Automated Liquid Porosimeter)」)は、約0.07マイクロメートル超過(例えば、約0.1マイクロメートル超過又は約0.25マイクロメートル超過)であってもよく、又、約1.4マイクロメートル未満(例えば、約0.4マイクロメートル未満又は約0.3マイクロメートル未満)であってもよいが、より大きな又はより小さな平均孔径を有する微多孔質膜も又使用することができる。エマルジョンの形成及び/又は膜の向こうへの流れ込みを減じるために、微多孔質膜は、細孔、裂け目、又は直径が約100マイクロメートルを超える他の穴が実質的にないものであってもよい。
【0038】
多数の実施形態において、微多孔質膜材料は、微多孔質膜材料の体積を基準として少なくとも約20パーセント(例えば少なくとも約30パーセント若しくは少なくとも約40パーセント)から最大で約80パーセント、約87パーセント、又は更に約95パーセントまでの範囲の多孔度を有している。
【0039】
上述のように、いかなる厚さの微多孔質膜材料を使用してもよいが、多数の実施形態において、微多孔質膜は、少なくとも約10マイクロメートル(例えば、少なくとも約25マイクロメートル若しくは少なくとも約35マイクロメートル若しくは少なくとも約40マイクロメートル)の厚さを有しており、且つ/又は、約120マイクロメートル未満(例えば、約80マイクロメートル未満若しくは更には約60マイクロメートル未満)の厚さを有している。微多孔質膜は、意図する運用条件下で微多孔質膜全体にわたって強いられうるいかなる差圧にも耐えるように、単独で又は所望による多孔質支持部材と組み合わせて十分に機械的に強固なものにすることができる。
【0040】
多数の実施形態において、微多孔質膜は、少なくとも1つの疎水性の(即ち、自然に水に湿潤されない)材料を有している。例示的な疎水性の材料には、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、上記のうちのいずれかのコポリマー、及び所望によりエチレン性不飽和モノマー)、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。微多孔質膜材料が疎水性である場合、含められた供給溶液に、液体抽出剤に対する正圧を加えて、微多孔質膜を湿潤させるのを補助することができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、微多孔質膜は親水性であり、例えば、0.2マイクロメートルから0.45マイクロメートルの範囲の公称平均孔径を有する親水性の多孔質ポリプロピレン膜材料(例えば、ミシガン州アナーバー(Ann Arbor)のポールライフサイエンス社(Pall Life Sciences, Inc.)によって「GH POLYPROMEMBRANE」の商標表記で市販されている)である。微多孔質膜材料が親水性である場合、含められた液体抽出剤に、含められた供給溶液に対する正圧を加えて、微多孔質膜内における液−液抽出界面の固定化を支援してもよい。いくつかの実施形態において、有用な微多孔質膜には、開示内容を参照によって本願に援用する米国特許第3,801,404号(ドルイン(Druin)ら)、第3,839,516号(ウィリアムス(Williams)ら)、第3,843,761号(ビーレンバウム(Bierenbaum)ら)、第4,255,376号(スーゲン(Soehngen))、第4,257,997号(スーゲン(Soehngen)ら)、第4,276,179号(スーゲン(Soehngen))、第4,726,989号(ムロジンスキ(Mrozinski))、第5,120,594号(ムロジンスキ(Mrozinski))、及び第5,238,623号(ムロジンスキ(Mrozinski))に記載されている微多孔質膜が挙げられる。
【0042】
図2は、フレーム255内に設けられた例示のクロスフロー膜モジュール100の概略斜視図である。クロスフロー膜モジュール100については、先に説明した。多数の実施形態において、フレーム255は、液−液抽出モジュール100の取扱い及び保護の改善をもたらす一方で、依然として、液−液抽出モジュール100の側部を通じて液体が妨げられずに流れることを可能にしている。いくつかの実施形態において、フレーム255は、ハウジングモジュール(以下で説明する)と協働して、「鍵と鍵穴」の嵌合型形式の構造を形成し、クロスフロー膜モジュール100の運用中に液−液抽出相(F及びF)を互いに分離する。
【0043】
フレーム255は、液−液抽出モジュール100の周りに設けられた複数のフレーム部材260を有している。図2に示すように、複数のフレーム部材260は、液−液抽出モジュール100の8つの側縁部に沿って設けることができ、液−液抽出モジュール100の周りに一体型フレーム255を形成するように互いに取り付けられている。多数の実施形態において、第1の側部シール201が、フレーム255の第1の対向側部に設けられており、この第1の対向側部は、第1の流れ方向Fに対応し、第1の流れ方向Fの流体流れを分離するのを補助する。多数の実施形態において、第2の側部シール202が、フレーム255の第2の対向側部に設けられており、この第2の対向側部は、第2の流れ方向Fに対応し、第2の流れ方向Fの流体流れを分離するのを補助する。
【0044】
第1の側部シール201は、硬質材料若しくは整合性材料、又は硬質材料と整合性材料の組み合わせなど、任意の有用な材料から形成することができる。一実施形態において、第1の側部シール201は、0.5cmから1.5cmの範囲の高さ及び幅を有する材料のネオプレン隆起部である。別の実施形態において、第1の側部シール201は、0.5cmから1.5cmの範囲の高さ及び幅を有する材料の硬質プラスチック(例えばABS)隆起部である。更なる実施形態において、第1の側部シール201は、0.5cmから1.5cmの範囲の全高及び全幅を有する整合性材料(例えばネオプレン)から形成された外層を有するプラスチック隆起部である。
【0045】
第2の側部シール202は、硬質材料若しくは整合性材料、又は硬質材料と整合性材料の組み合わせなど、任意の有用な材料から形成することができる。一実施形態において、第2の側部シール202は、0.5cmから1.5cmの範囲の高さ及び幅を有する材料のネオプレン隆起部である。別の実施形態において、第2の側部シール202は、0.5cmから1.5cmの範囲の高さ及び幅を有する材料の硬質プラスチック(例えばABS)隆起部である。更なる実施形態において、第2の側部シール202は、0.5cmから1.5cmの範囲の全高及び全幅を有する整合性材料(例えばネオプレン)から形成された外層を有するプラスチック隆起部である。いくつかの実施形態において、第2の側部シール202は、モジュールハウジング(以下で説明する)内におけるモジュール100の配置及び取外し並びに/又は位置合わせを補助するように、ガイドレール又はトラックとして機能することもできる。
【0046】
フレーム255は、任意の有用な材料から形成することができる。いくつかの実施形態において、フレーム255は、例えばABSなど、硬質な高分子材料から形成されている。各フレーム部材260は、任意の有用な寸法を独立して有することができる。いくつかの実施形態において、各フレーム部材260は、1センチメートルから15センチメートルの範囲の厚さと、1センチメートルから15センチメートルの範囲の幅と、液−液抽出モジュール100の対応する隣接した側縁部に沿って延びるのに十分な長さとを有している。
【0047】
図3Aは、例示のクロスフロー膜モジュールハウジング300の概略横断面図である。このモジュールハウジング300は、クロスフロー膜モジュール100がモジュールハウジング300内に嵌るように寸法決めされ且つ構成されている。このモジュールハウジング300は、高分子材料又は金属材料など、任意の有用な材料から形成することができる。多数の実施形態において、モジュールハウジング300は、液−液抽出モジュール100をモジュールハウジング300内から取り外すことを可能にするための取外し可能な部分又はドア301を有している。モジュールハウジング300は、第1の液体流れ出口318と流体連通した第1の液体流れ入口316を有している。モジュールハウジング300は、第2の液体流れ出口328と流体連通した第2の液体流れ入口326を有している。多数の実施形態において、モジュールハウジング300は、液−液抽出モジュール100をモジュールハウジング300内で挿入し、取り外し、且つ/又は交換することを可能にする取外し可能部分303を有している。
【0048】
多数の実施形態において、第1の流れ方向Fに対応し、第1の流れ方向Fの流体流れを分離するのを補助するモジュールハウジング300の第1の対向側部上に、第1の側部シール301が設けられている。多数の実施形態において、第2の流れ方向Fに対応し、第2の流れ方向Fの流体流れを分離するのを補助するモジュールハウジング300の第2の対向側部上に、第2の側部シール302が設けられている。
【0049】
第1の側部シール301は、硬質材料若しくは整合性材料、又は硬質材料と整合性材料の組み合わせなど、任意の有用な材料から形成することができる。一実施形態において、第1の側部シール301は、0.5cmから1.5cmの範囲の高さ及び幅を有する材料のネオプレン隆起部である。別の実施形態において、第1の側部シール301は、0.5cmから1.5cmの範囲の高さ及び幅を有する材料の硬質プラスチック(例えばABS)隆起部である。更なる実施形態において、第1の側部シール301は、0.5cmから1.5cmの範囲の全高及び全幅を有する整合性材料(例えばネオプレン)から形成された外層を有するプラスチック隆起部である。第1の側部シール301は、膜モジュール200の第1の側部シール201とかみ合う(例えば、鍵と鍵穴のはめ合い)ように寸法決めし構成することができる。
【0050】
第2の側部シール302は、硬質材料若しくは整合性材料、又は硬質材料と整合性材料の組み合わせなど、任意の有用な材料から形成することができる。一実施形態において、第2の側部シール302は、0.5cmから1.5cmの範囲の高さ及び幅を有する材料のネオプレン隆起部である。別の実施形態において、第2の側部シール302は、0.5cmから1.5cmの範囲の高さ及び幅を有する材料の硬質プラスチック(例えばABS)隆起部である。更なる実施形態において、第2の側部シール302は、0.5cmから1.5cmの範囲の全高及び全幅を有する整合性材料(例えばネオプレン)から形成された外層を有するプラスチック隆起部である。いくつかの実施形態において、第2の側部シール302は、モジュールハウジング(以下で説明する)内におけるモジュール100の配置及び取外し並びに/又は位置合わせを補助するように、ガイドレール又はトラックとして機能することもできる。第2の側部シール302は、膜モジュール200の第2の側部シール202とかみ合うように寸法決めし構成することができる。
【0051】
図3Bは、モジュールハウジング300内に設けられた例示のクロスフロー膜モジュール100の概略横断面図である。液−液抽出モジュール100がモジュールハウジング300内に設けられると、第1の液体流れ入口316は第1の流路層の入口116と流体連通し、この入口116は第1の流路層の出口118と流体連通し、この出口118は第1の液体流れ出口318と流体連通する。液−液抽出モジュール100がモジュールハウジング300内に設けられると、第2の液体流れ入口326は第2の流路層の入口126と流体連通し、この入口126は第2の流路層の出口128と流体連通し、この出口128は第2の液体流れ出口328と流体連通する。多数の実施形態において、膜モジュール200は、上述のように、モジュールハウジング300の内部とかみ合うフレーム255を有している。
【0052】
使用する際、上述した液−液抽出モジュール100はモジュールハウジング300の中に取り付けることができ、又、溶解した溶質を有する第1の液体を第1の流路層の中に流し、第2の液体を第2の流路層の中に流し、溶質を第1の液体から第2の液体中へと、第1及び第2の微多孔質膜の向こう側に移動させることによって、溶解質を第1の液体から第2の液体に抽出するのに利用することができる。液−液抽出モジュール100は、取外し可能な部分303を外側ハウジング300から取り外し、液−液抽出モジュール100を第2の液−液抽出モジュール100と交換し、外側ハウジング300上の取外し可能な部分303を交換することによって、別の液−液抽出モジュール100と交換することができる。
【0053】
図4は、例示の液−液抽出プロセス400の概略フローチャートである。例示の発酵ブロスからのエタノール抽出について以下で説明するが、本明細書において説明する液−液抽出モジュールは、いかなる液−液抽出プロセスにも応用可能である。
【0054】
供給原料410(例えば、水、微生物、及び発酵性材料)が発酵槽420の中に置かれ、発酵ブロス422を形成することが可能となる。発酵ブロス422は、例えば、水、及びエタノールなどの溶質を含有することができる。発酵ブロス中の不溶性材料423は、純化ユニット430で所望により(例えば、沈殿及び/又は濾過によって)除去することができ、又、結果として生じた供給溶液440は液−液抽出モジュール450に移動される。液−液抽出モジュール450において、供給溶液440及び抽出溶媒(又は溶媒)460は、エタノールが供給溶液440と抽出溶媒460との間で分離するように、互いに密接に接触される。この特定の実施形態に好適な溶媒又は抽出溶媒470が、US2004/0181101に開示されており、このUS2004/0181101は、本開示と抵触しない程度で、参照によって本願に援用される。次いで、抽出溶媒460及びエタノールを含有する抽出物470が、回収ユニット480に移動され、この回収ユニット480において、所望により水と混合したエタノール495が抽出物470から(例えば真空蒸留によって)除去され、従って、抽出溶媒460が再生され、液−液抽出モジュール450の中に再循環される。同様に、抽出された供給溶液490が発酵槽420に戻されるが、この発酵槽420は、プロセスの間に除去された成分を交換するために、必要に応じて更なる供給原料410を周期的に補充される。
【0055】
この例示の実施形態に対する供給溶液440は、水及びエタノールを有することができ、又、溶液、懸濁液、ディスパージョンなどの形であってもよい。エタノール及び水に加えて、供給溶液は、可溶性又は不可溶性の成分(例えば、発酵性糖、単糖類、又は多糖類、微生物、バイオマス)を所望により含有してもよい。発酵プロセスに好適なバイオマスの例には、糖系材料(例えば、糖蜜、サトウキビ、及びテンサイ)、並びにデンプン系材料(例えば、トウモロコシ、小麦、キャッサバ、大麦、ライ麦、及びオート麦)が挙げられる。主要なセルロース、ヘミセルロース、及びリグニンに加えて様々な量の他の材料を含有するセルロース質バイオマスも同様に使用してもよい。同様に、例示の実施形態と共に採用される発酵微生物は、多様な種類のアルコール生産菌として知られる酵母菌、高温細菌、及び多様な菌種のザイモモナス菌を含めて、発酵プロセスにおいて使用される任意の既知の微生物であってよい。
【0056】
この例示の実施形態において、有用な発酵ブロスは、発酵ブロスの全量を基準として少なくとも0.5重量パーセント、2重量パーセント、又は4重量パーセントから少なくとも10重量パーセントまでの量のエタノールを含有することができるが、より高い又はより低い濃度のエタノールも又使用してよい。
【0057】
発酵ブロスを調製するプロセスは周知である。発酵ブロスは、水と、発酵性糖(又はその前駆体)と、例えばビール酵母などの微生物とを容器(例えば発酵槽、大桶)中で組み合わせ、その混合物を、発酵が生じうる温度(例えば、約摂氏15度から約摂氏45度の範囲内)に維持することによって調製することができる。発酵槽は広く商業的に入手可能であり、例えば米国特許第4,298,693号に記載されている。
【0058】
本発明は、本明細書において説明した特定の実施例に限定されるとみなされるべきではなく、むしろ、添付の特許請求の範囲において明確に記載された本発明の全ての態様を包含するものと理解されるべきである。様々な修正、等価なプロセス、並びに本発明が適用されうる多数の構造が、本発明の対象とされる当業者には、本明細書を検討すれば容易に明らかとなろう。
【実施例】
【0059】
(実施例1)
ホットメルト接着剤シール層を有する膜積層体の作製
0.076ミリメートル(0.003インチ)の呼び厚さを有するポリプロピレンフィルムを型押しして、深さ1.27ミリメートル(0.05インチ)の通路を3.56ミリメートル(0.14インチ)の通路間隔で有する波形フィルムにした。ノースカロライナ州コノーバー(Conover)のヘインズカンパニーズ社(Hanes Companies, Inc)から入手可能なスパンボンドポリプロピレンのウェブ(16.96グラム毎平方メートル(0.5オンス毎平方ヤード))を、波形フィルムの片側の隆起部に1.59ミリメートル(0.063インチ)の間隔で音波によってシールした。この音波によってシールした対のスパンボンド側を、ホットメルトウェブ接着剤(ウィスコンシン州ウォーワトサ(Wauwatosa)のボスティック社(Bostik, Inc.)によって製造されているPE−85−20)を使用して、約0.35マイクロメートルの平均孔径を有する(米国特許第4,726,989号及び第5,120,594号に記載されているように作製された)微多孔質ポリプロピレン膜に積層して層対を形成した。この層対の、縦0.686メートル、横0.686メートル(縦27インチ、横27インチ)の正方形シートをナイフで切断した。ホットメルト接着剤(メリーランド州エルクトン(Elkton)のベイセルノースアメリカ社(Basell North America Inc.)から入手可能なPolybutene−1 DP 8910 PC)の単一ビードを、第1の層対の波形層の2つの対向縁部の各々に沿って、各縁部から約38ミリメートル(1.5インチ)、波形フィルムの通路の方向に塗布した。波形フィルム内の通路が第1の層対の通路に対して直角となり、且つ層対の第2のシートが層対の第1のシートに押し付けられて二層対の積層体が形成されるように、この層対の、縦0.686メートル、横0.686メートル(縦27インチ、横27インチ)の第2の正方形シートを方向付けた。層対の更なるシートの波形フィルム内の通路が、層対の先のシートの波形フィルムの通路に対して直角となる状態で、積層体が約149.4ミリメートル(5.88インチ)厚となるまで、このプロセスを、更なるホットメルト接着剤及び更なる層対のシートを用いて繰り返した。
【0060】
アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂から機械加工したフレームの各部品を積層体の周りに嵌め、積層体の各縁部に沿ってSILASTIC 732 RTV Adhesive/Sealant(ミシガン州ミッドランド(Midland)のダウコーニング社(Dow Corning Corp.)から入手可能)を使用して、積層体の各縁部に接着した。フレームは、2つの向かい合う側部と、隣接する各側部と、2つの向かい合う端部とを有していた。ハウジングの各側部内の対応するトラックに嵌めるための突出ガイドを有するように、フレームの2つの向かい合う側部を機械加工した。フレームの各端部とハウジングの各端部との間にゴムシールを嵌めるための連続的な突出フランジを有するように、フレームの2つの向い合う端部を機械加工した。
【0061】
(実施例2)
ヒートシール層を有する膜積層体の作製
約0.35マイクロメートルの平均孔径を有する微多孔質ポリプロピレン膜(米国特許第4,726,989号及び第5,120,594号に記載されているように作製した)の、縦222.3ミリメートル、横222.3ミリメートル(縦8.75インチ、横8.75インチ)の1枚のシートを、同じ大きさを有する膜の別のシートの上に置き、2つの向い合う縁部の双方の約25ミリメートル(1インチ)内で、ミネソタ州セントポール(St. Paul)のグレーンジャー社(Grainger, Inc.)から入手可能なModel MP−16 Midwest Pacificヒートシーラーを使用して、2枚のシートを互いにヒートシールして側部シールを形成した。膜のシートの更なる13対を用いてこのプロセスを繰返し、14対の膜を得た。シールした縁部が整列するように、ある対の膜を別の対の上に置き、次いで、頂部の対の底部シートのシールされていない各縁部を、底部の対の頂部シートのシールされていない縁部にヒートシールした。残りの12対のシートを用いてこのプロセスを繰返し、14対の積層体(28枚のシート)を得たが、ここで、交互に並ぶ(即ち直角な)連続的流路が、積層体内の相次ぐシートの間に存在した。積層体の各角部を切断して25ミリメートル(1インチ)四方の切欠きを形成し、以下で説明するポリカーボネートハウジング内への嵌め合いを得た。
【0062】
0.075ミリメートル(0.003インチ)の呼び厚さを有するポリエチレンフィルムを型押しして、深さ1.27ミリメートル(0.05インチ)の通路を3.56ミリメートル(0.14インチ)の通路間隔で有する波形フィルムにした。型押ししたフィルムを切断して、縦222.3ミリメートル(8.75インチ)、横約165ミリメートル(6.5インチ)の大きさを有するストリップにし、又、型押ししたフィルム内の通路が側部シールに対して平行となる状態で、これらのストリップを積層体内のシートの間の連続的流路内に挿入した。波形のポリエチレン層を含めて、層の各々の間に接着剤を注入することによって、この積層体の各角部を二液型エポキシ接着剤(ミネソタ州セントポール(St, Paul)のスリーエム社(3M)から入手可能なDP−100)でシールした。
【0063】
二液型エポキシ接着剤をハウジングの角部に置き、微多孔質膜と波形ポリエチレンの積層体をハウジング内に置き、次いでエポキシ接着剤を4つの角部の各々において硬化させることによって、微多孔質膜と波形ポリエチレンの積層体を長方形のポリカーボネートハウジングの一部品の中にシールした。SILASTIC 732 RTV Adhesive/Sealant(ミシガン州ミッドランド(Midland)のダウコーニング社(Dow Corning Corp.)から入手可能)を、ハウジング内の硬化したエポキシ接着剤の各縁部に沿って塗布することによって、これらの角部を更にシールした。ネオプレンガスケットを使用して、長方形のポリカーボネートハウジングの第2の部品を第1の部品とシールし、2つの部品をボルトで互いに保持してクロスフロー膜モジュールを形成した。ハウジングの各側部は、約12.7ミリメートル(0.5インチ)の直径を有するネジ付きポートを有し、弁が各ポートに嵌められ、向い合う側部上の弁は、積層体内のシートの間の連続的流路を介して接続されていた。
【0064】
10重量パーセントの水性エタノール溶液を、モジュールの一方の側部上の弁(入口弁)を通じてポンプ圧送し、モジュールの中に、又向かいの側部上の弁(出口弁)の中に送った。デシルアルコール(ミズーリ州セントルイス(St. Louis)のシグマアルドリッチ社(Sigma-Aldrich, Inc.)から入手可能)を、エタノール溶液が圧送される弁を支える側部に隣接する側部上の弁(入口弁)を通じてポンプ圧送した。デシルアルコールを、モジュールの中に、又向かいの側部上の弁(出口弁)の中に送った。約40センチメートルの水圧を水性エタノール通路において維持したのに対して、約30センチメートルの水圧をデシルアルコール通路において維持し、出口弁を使用して圧力を制御した。約5分間の後、ガスクロマトグラフィーによってデシルアルコールを分析すると、デシルアルコールがエタノールを含有していることが示唆された。
【0065】
本発明について、そのいくつかの実施形態に関連して説明した。上記の詳細な説明および実施例は、理解を明確にするためにのみ示されたものであり、不必要な限定がそれらから解釈されるべきではない。本発明の趣旨及び範疇から逸脱することなく、多数の変更が、説明した実施形態に対してなされうることが、当業者には明らかとなろう。従って、本発明の範疇は、本明細書において説明した構成および構造の厳密な詳細に限定されるべきではなく、むしろ、特許請求の範囲の文言によって限定されるべきである。本明細書で引用した特許、特許文書、及び刊行物の全ての開示内容は、それぞれが個々に援用された場合と同様に、その全内容が参照によって援用される。何らかの不一致がある場合、定義を含めた本明細書を優先するものとする。
【0066】
本開示については、添付の図面と共に、種々の実施形態に関する詳細な説明を考慮すれば、より完全に理解されよう。
【0067】
本発明は種々の修正及び代替の形態に容易に応じるが、その細部は、一例として図面に示してあり、又詳しく説明することにする。しかしながら、その意図は、説明した特定の実施形態に本発明を限定することではないことを理解されたい。逆に、その意図は、本発明の趣旨と範疇に含まれる全ての修正物、等価物、並びに代替物を網羅することである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】例示のクロスフロー膜モジュールの概略斜視図。
【図2】フレーム内に設けられた例示のクロスフロー膜モジュールの概略斜視図。
【図3A】例示のクロスフロー膜モジュールハウジングの概略横断面図。
【図3B】モジュールハウジング内に設けられた例示のクロスフロー膜モジュールの概略横断面図。
【図4】例示の液−液抽出プロセスの概略フローチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の層対であって、
第1の高分子微多孔質膜と、
第1の流れ方向に方向付けられ、抽出要素の第1の対向側部上に設けられた流体入口及び流体出口を有する第1の流路層と、を有する第1の層対と、
前記第1の層対に隣接して設けられて積層体を形成する第2の層対であって、
第2の高分子微多孔質膜と、
前記第1の流れ方向とは異なる第2の流れ方向に方向付けられており、抽出要素の第2の対向側部上に設けられた流体入口及び流体出口を有する第2の流路層と、を備える第2の層対と、を備え、
前記第1の微多孔質膜は、前記第1の流路と前記第2の流路との間に設けられている、液−液抽出要素。
【請求項2】
前記第1の流れ方向は、前記第2の流れ方向に対して直角である、請求項1に記載の液−液抽出要素。
【請求項3】
複数の交互に並ぶ第1の層対と第2の層対とを更に備える、請求項1に記載の液−液抽出要素。
【請求項4】
25枚から250枚の交互に並ぶ第1の層対と第2の層対とを更に備える、請求項1に記載の液−液抽出要素。
【請求項5】
前記第1の流路層及び前記第2の流路層は波形構造を有し、前記第1の高分子微多孔質膜及び前記第2の高分子微多孔質膜は平面的構造を有する、請求項1に記載の液−液抽出要素。
【請求項6】
前記第1の高分子微多孔質膜と前記第1の流路層との間に設けられた接着剤を更に備える、請求項1に記載の液−液抽出要素。
【請求項7】
前記第2の対向側部に隣接し且つ沿って前記第1の流路層内に設けられ、前記第1の対向側部に隣接し且つ沿って前記第2の流路層内に設けられた接着剤を更に備える、請求項1に記載の液−液抽出要素。
【請求項8】
前記第1の流路層は、前記第2の対向側部に隣接し且つ沿ってシールされており、前記第2の流路層は、前記第1の対向側部に隣接し且つ沿ってシールされている、請求項1に記載の液−液抽出要素。
【請求項9】
前記第1の流路層及び前記第2の流路層は、25マイクロメートルから150マイクロメートルの範囲の厚さを有し、前記第1の高分子微多孔質膜及び前記第2の高分子微多孔質膜は、1マイクロメートルから100マイクロメートルの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の液−液抽出要素。
【請求項10】
前記第1の高分子微多孔質膜と前記第1の流路層との間に設けられた第1の多孔質不織布層と、前記第2の高分子微多孔質膜と前記第2の流路層との間に設けられた第2の多孔質不織布層とを更に備える、請求項1に記載の液−液抽出要素。
【請求項11】
前記積層体の周りに設けられた硬質なフレームを更に備える、請求項1に記載の液−液抽出要素。
【請求項12】
前記積層体の周りに設けられた硬質なフレームと、前記硬質なフレームの周りに設けられた硬質な外側ハウジングとを更に備え、前記硬質な外側ハウジングは、前記硬質なフレーム及び積層体を前記外側ハウジングから取り外すことを可能にするための取外し可能な部分を有する、請求項1に記載の液−液抽出要素。
【請求項13】
溶解した溶質を第1の液体から第2の液体へと抽出する方法であって、
液−液抽出要素であって、
複数の第1の層対であって、それぞれが、
第1の高分子微多孔質膜と、
第1の流れ方向に方向付けられており、前記抽出要素の第1の対向側部上に設けられた流体入口及び流体出口を有する第1の流路層と、を備える第1の層対と、
それぞれが第1の層対との間で交互に並び積層体を形成する複数の第2の層対であって、
第2の高分子微多孔質膜と、
前記第1の流れ方向とは異なる第2の流れ方向に方向付けられており、前記抽出要素の第2の対向側部上に設けられた流体入口及び流体出口を有する第2の流路層と、を備える第2の層対と、を備える液−液抽出要素を用意するステップであって、
前記第1の微多孔質膜は、前記第1の流路と前記第2の流路との間に設けられている、ステップと、
前記第1の流路層の中に、溶解した溶質を有する第1の液体を流すステップと、
前記第2の流路層の中に第2の液体を流すステップと、
前記第1の液体から前記第2の液体の中へと、前記第1及び第2の微多孔質膜の向こう側に、前記溶質を移動させるステップと、含む方法。
【請求項14】
前記第1の液体を流すステップは、前記第2の流路層の中に第2の液体を流すステップの方向に対して直角な方向に、溶解した溶質を有する第1の液体を、前記第1の流路層の中に流すことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記用意するステップは、波形の第1の流路層及び波形の第2の流路層と、平面的な第1の微多孔質膜及び平面的な第2の微多孔質膜とを備える液−液抽出要素を用意することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記用意するステップは、前記第2の対向側部に隣接し且つ沿ってシールされた第1の流路層と、前記第1の対向側部に隣接し且つ沿ってシールされた第2の流路層とを備える液−液抽出要素を用意することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記用意するステップは、前記積層体の周りに設けられたフレームを更に備える液−液抽出要素を用意することと、前記フレーム及び積層体を外側ハウジング内に置くこととを含み、前記外側ハウジングは、第1の液体入口と、第1の液体出口と、第2の液体入口と、第2の液体出口と、前記硬質なフレーム及び積層体を前記外側ハウジングから取り外すことを可能にするための取外し可能部分とを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記取外し可能部分を前記外側ハウジングから取り外すステップと、前記積層体を第2の積層体と交換するステップと、前記外側ハウジング上の前記取外し可能部分を交換するステップとを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
溶解した溶質を有する第1の液体を備えるある体積の供給溶液を収容する供給溶液容器と、
ある体積の溶媒を収容する溶媒容器と、
液−液抽出要素であって、
前記供給溶液容器と流体連通した複数の第1の層対であって、それぞれが、
第1の高分子微多孔質膜と、
第1の流れ方向に方向付けられており、前記抽出要素の第1の対向側部上に設けられた流体入口及び流体出口を有する第1の流路層と、を備える第1の層対と、
前記溶媒容器と流体連通した複数の第2の層対であって、それぞれが第1の層対との間で交互に並び積層体を形成し、
第2の高分子微多孔質膜と、
前記第1の流れ方向とは異なる第2の流れ方向に方向付けられており、前記抽出要素の第2の対向側部上に設けられた流体入口及び流体出口を有する第2の流路層と、を備える第2の層対と、を備え、
前記第1の微多孔質膜は、前記第1の流路と前記第2の流路との間に設けられている、液−液抽出要素と、を備え、
前記供給溶液からの溶質は、前記第1及び第2の微多孔質膜の向こう側に、前記溶媒の中へと移動しうる、液−液抽出システム。
【請求項20】
前記第1の流れ方向は、前記第2の流れ方向に対して直角である、請求項19に記載の液−液抽出システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−517212(P2009−517212A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543340(P2008−543340)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/044952
【国際公開番号】WO2007/064522
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】