説明

クロスメンバの製造方法

【課題】断面剛性が穏やかに変化するようにして、応力集中を防止してクロスメンバの耐久性向上と重量軽減を両立させたトラック用シャシフレームの軽量化クロスメンバの製造方法を提供する。
【解決手段】クロスメンバ5の車幅方向長さの幅N全幅にわたる切断線Q上の中央部に間隔を有して、円形切欠き部71を有した第1ブランク部B1を形成する第1工程と、第1ブランク部B1と同形状の第2ブランク部B2を板状材の長手方向に間隔を有して抜形素材76を形成する第2工程と、切欠き部間を略90度折曲げてコ字状断面を形成し、コ字状断面の車幅(W)方向端部をコ字状断面から平板状に滑らかに変化させる第3工程と、コ字状断面の中心線Mに沿って二分割する第四工程と、分割されたクロスメンバ5の両端部をサイドレールのウエブ面に沿って折り曲げる第5工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック用シャシフレームのクロスメンバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に図5にトラック用シャシフレームの一部を示すように、トラック用シャシフレーム1には車両の車幅方向(W)に間隔を有して、車両前後方向(R)に延在した左右一対の左サイドレール2及び右サイドレール3が配設されている。左右一対のサイドレール2、3の間には車幅方向(W)に延在して両端が左右のサイドレール2、3に固着された複数の中間クロスメンバ4及びリヤクロスメンバ5が車両前後方向に間隔を有して梯子状に配設されている。
【0003】
先行技術として、特開2000−25646号公報(特許文献1)が開示されている。
この特許文献1の場合、図8及び、図9(A)、(B)に示すように、図8(A)の長尺材070の幅方向両側部に延びる第1切断線072aと、中央部の山形状の第2切断線072bとを山形に連続させた切断線072を長尺材070のC方向に送りながら、図8(B)の抜形素材080を連続的に形成している。
【0004】
抜形素材080は折曲げ線081に沿って折曲げることにより、フランジ083に接続したウエブ084及び、フランジ083の車幅方向両端部の折曲げ線082に沿って折曲げることにより、フランジ083に接続した左右のサイドレール2,3(図4参照)への取付フランジ085が形成される。
図8のクロスメンバ040は第1部材050及び第2部材060から構成されている。第1部材050と第2部材060は、夫々は同じ抜形素材080から形成され、同じ形状をしている。
【0005】
第1部材050は車幅方向へ水平に延びる第1フランジ051と、第1フランジ051に接続して、略直角に屈曲した第1ウエブ052及び、第1フランジ051の両端部に左右一対のサイドレール2、3のウエブ部にクロスメンバ040を取付けるための第1取付フランジ053で構成されている。
【0006】
第2部材060は第1部材050と同じ形状をしており、第2フランジ061と、第2ウエブ062及び、第2取付フランジ063で構成されている。
第1部材050と第2部材060は同一部品を上下逆に配置して、第1ウエブ052と、第2ウエブ062とを左右一対のサイドレール2、3の高さに合わせてリベット、又は溶接等の固定部材にて固定し、全体の断面構造がコ字状に形成されたクロスメンバ040が技術開示されている。
【0007】
ところが、折曲げられた第1部材050と第2部材060とを上下逆に配置して、全体の断面構造がコ字状に形成されているので、重量が重くなり車両の仕様低下、走行燃費の悪化及び、使用する板材の材料費アップ等の不具合を有している。
更に、第1フランジ051と、第1フランジ051に接続して、略直角に屈曲した第1ウエブ052との車幅方向Bの端部Z部が角状に形成されており、第1フランジ051だけの部分と、第1フランジ051と第1ウエブ052とで構成されている部分との断面剛性の変化が大きくなっており、左右のサイドレール2,3からの捩れに対し、当該部分に高い応力が発生する可能性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−25646号公報公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は前記問題点に鑑み成されたもので、トラック用シャシフレームの捩れによる変形をクロスメンバの広い範囲で担うことができるようにして、応力集中を防止してクロスメンバの耐久性向上と重量軽減を両立させたトラック用シャシフレームのクロスメンバの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はかかる目的を達成するもので、第1の発明は、車両の車幅方向(W)に間隔を有して、車両前後方向(R)に延在する左右一対のサイドレール間に位置して、両端部が前記サイドレールに固着されるクロスメンバの製造方法において、
該クロスメンバの車幅方向長さと、該クロスメンバを前記サイドレールに取付ける取付部の長さとを加算した長さ(N)に略等しい幅を有する板状の長尺材から、前記幅の全幅にわたる切断線(Q)上の中央部に間隔を有し、前記切断線(Q)を中心にした略円形状部を有した第1ブランク部を形成する第1工程と、
前記第1ブランク部と同形状の第2ブランク部を前記長尺材長手方向(R)に間隔(L)を有して形成し、前記第1ブランク部と、前記第2ブランク部との間に抜形素材を形成する第2工程と、
前記略円形状部によって形成される間を、前記抜形素材の車両前後方向中心線(M)に沿って略90度折曲げた切起し部にてコ字状断面を形成すると共に、前記切起し部の前記車幅方向(W)端部をコ字状断面から平板状に滑らかに変化させる第3工程と、
前記中心線(M)に沿って分割し、2個の前記クロスメンバにする第4工程と、
分割された前記クロスメンバの両端部を前記サイドレールのウエブ面に沿って折り曲げる第5工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本願発明の第2発明は、車両の車幅方向(W)に間隔を有して、車両前後方向(R)に延在する左右一対のサイドレール間に位置して、両端部が前記サイドレールに固着されるクロスメンバの製造方法において、
該クロスメンバの車幅方向長さと、該クロスメンバを前記サイドレールに取付ける取付部の長さを加算した長さ(N)に略等しい幅を有する板状の長尺材から矩形状の平板素材の材料取りを行う第1工程と、
前記平板素材の前記車両前後方向(R)の両端縁の中央部に間隔を有して円弧状切欠き部を有すると共に、前記平板素材の前記車両前後方向(R)の中心線(M)に対し外形形状が対称の抜形素材を形成する第2工程と、
前記円弧状切欠き部間を前記中心線(M)に沿って略90度折曲げた切起し部にてコ字状断面を形成すると共に、前記切起し部の前記車幅方向(W)端部をコ字状断面から平板状に滑らかに変化させる第3工程と、
前記中心線(M)に沿って分割し、2個の前記クロスメンバにする第4工程と、
分割された前記クロスメンバの前記幅(N)方向両端部を前記サイドレールのウエブ面に沿って折り曲げる第5工程とを含むことを特徴とする。
【0012】
かかる発明において、切起し部を中心線(M)に沿ってコ字状断面を形成すると共に、切起し部の車幅方向(W)端部をコ字状断面から平板状に滑らかに変化させる成形が容易に可能となり、このような形状にすることにより、折曲げ部の剛性変化を滑らかにするので、当該部におけるサイドレールからの捩れ変形により発生する応力集中を防止したクロスメンバが容易に製造できる効果を有す。
更に、クロスメンバを背中合わせに成形するので、中心線(M)に沿って切断することにより2個のクロスメンバが同時に出来ることになり、作業工数の減少に伴うコスト低減が可能となる。
【0013】
本願発明において好ましくは、
前記第1又は前記第2工程のいずれかにおいて、前記切欠き部より前記中心線(M)側で且つ、前記切欠き部より前記車幅方向(W)内側近傍に前記切起し部のコ字状断面成形時における前記抜形素材の位置決め用ノックピン孔を穿設するとよい。
【0014】
このような構成にすることにより、切起こし端部の円弧状部分でコ字状断面から平板状に滑らかに変化させる成形を行う場合、円弧状部分の面が伸ばされ、周囲の素材を円弧状部分に引き込むため、位置決め用ノックピンにて素材の移動を阻止して、寸法精度の高いクロスメンバを得ることが出来る効果を有している。
【0015】
また、本願発明において好ましくは、前記第2工程において、前記位置決め用ノックピン孔と同時に前記サイドレールに取付ける取付部の取付孔を穿設するとよい。
【0016】
このような構成にすることにより、ノックピンの穿設作業と同時にサイドレールへの取付孔を穿設することで、作業工程の減少が図られ、コスト低減効果が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、切起し部を中心線(M)に沿って略90度折曲げコ字状断面を形成することにより、切起し部の車幅方向(W)端部をコ字状断面から平板状に滑らかに変化させる成形が容易に可能となり、このような形状にすることにより、折曲げ部の剛性変化を滑らかにするので、当該部におけるサイドレールからの捩れ変形により発生する応力集中を防止したクロスメンバが容易に製造できる効果を有す。
更に、クロスメンバを背中合わせに成形するので、中心線(M)に沿って切断することにより2個のクロスメンバが同時に出来ることになり、作業工数の低減に伴うコスト低減効果を有する。
【0018】
また、円形状(円弧状)の切欠き凹部より中心線(M)側で且つ、切欠き凹部より車幅方向(W)内側近傍に抜形素材加工時の位置決め用ノックピン孔を穿設することにより、切起こし端部の円弧状部分の面で90度変化させる際に、円弧状部分の面が伸ばされ、周囲の素材を円弧状部分に素材が引込まれ移動するのを防止して、寸法精度の高いクロスメンバを得ることが出来る効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる各工程毎に形成されるクロスメンバの概略図を示す。
【図2】第1ブランク部の他の実施形状図を示す。
【図3】本発明の第2実施形態にかかる各工程毎に形成されるクロスメンバの概略図を示す。
【図4】図1の第3工程にかかるX−X矢視図を示す。
【図5】本発明によって製造されたクロスメンバが使用されるシャシフレームの平面概略図を示す。
【図6】本発明によって製造されたクロスメンバの斜視図を示す。
【図7】図6の断面X−X矢視図を示す。
【図8】従来技術によるクロスメンバの斜視図を示す。
【図9】(A)は従来技術による平板状の長尺材における材料取の形状図、(B)は長尺材から形成された抜形素材形状図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0021】
(第1実施形態)
本願発明によって、製造されるリヤクロスメンバ5について説明する。
図5は本発明の実施形態にかかるトラック用のシャシフレーム1後部の概略平面図を示し、シャシフレーム1は車幅方向(W)に間隔を有し、車両前後方向(R)に延在した左サイドレール2及び、右サイドレール3の間に車幅方向(W)へ延在して、両端部を左右のサイドレール2,3に固定された複数の中間クロスメンバ4とリヤクロスメンバ5が車両前後方向(R)に間隔を有して梯子状に形成されている。
【0022】
図6は本願発明の実施形態により製造されるリヤクロスメンバ5の斜視図を示し、図7は図6の断面X−X矢視図を示す。
リヤクロスメンバ5の縦壁51の車幅方向(W)の両端部には、左右のサイドレール2,3のウエブ面21、31に取付けられる取付フランジ52が配設されている。取付フランジ52は左右のサイドレール2、3のウエブ面21、31に沿って車両後方へ折曲している。縦壁51の上縁には切起し部である補強フランジ54の先端部541が車両後方へ向け略水平状態に折曲されている。本実施形態では折曲されている部分の縦壁513の高さhは縦壁だけの部分の縦壁512の高さHより低くなっている。(図7参照)
補強フランジ54の車幅方向端縁542と縦壁51の端縁である上縁511との接続部E(円弧状切欠き部542)は、縦壁51の上縁511が上向き(縦方向)から補強フランジ54の先端部541の水平方向まで滑らかに変化すると共に、補強フランジ54の車幅方向(W)端縁542に沿うように湾曲した形状に形成されている。(図7E部参照)
尚、本実施形態では補強フランジ54を縦壁51の上縁511側に設けたが、補強フランジ54を縦壁51の下縁側に設けても同様の効果を得ることは容易である。
【0023】
これは、補強フランジ54を配設した部分の縦壁513の高さhを縦壁51だけの部分の縦壁512の高さHより小さくすることにより双方の断面剛性の差を少なくすると共に、縦壁51から補強フランジ54の先端部541までの接続部Eの端縁は縦から水平方向に滑らかに変化するように形成したので、接続部Eの断面剛性変化が穏やかになり、左右のサイドレール2、3の捩れに対する変形の吸収範囲が大きくなり、局部的な応力集中の発生を防止する効果を有している。
【0024】
更に、従来のコ字状断面のクロスメンバに対し、車両前後方向へ折曲させた補強フランジ54が上辺又は下辺のいずれか一方側に配置した構造でよく、重量及び材料費の軽減ができる。
【0025】
また、リヤクロスメンバ5の両端部に配設された取付フランジ52は図6及び図7に示すように外径形状が略L字形を成し、左右のサイドレール2,3のウエブ面に取付ける取付孔521が底辺側に2個、上側に1個が穿設されている。
左側の取付フランジ52は左サイドレール2の内側ウエブ面へ締結部材61(図5参照)であるボルト、ワッシャ及びナットによって締結される。
また、右側の取付フランジ52は底辺側に穿設された2個の取付孔521を介して、右サイドレール3の内側ウエブ面へ牽引フック6の取付座61に挟持された状態で、締結材61によって締結されている。(図5参照)上側に穿設された1個の取付孔521はサイドレール3内側のウエブ面へ締結材にて直接締結されている。
尚、本実施形態では取付フランジ52の外径形状を略L字形にしたのは、余分な部分を削除して重量軽減を図ったものである。
【0026】
図1を参照して図6のクロスメンバ5の製造方法について説明する。
図1はクロスメンバ5の材料となる平板状の長尺材7を示し、長尺材7の幅はクロスメバ5の車幅方向(W)の長さと、クロスメンバ5を左右のサイドレール2,3に取付ける取付フランジ52とを加算した長さ(N)となっている。長尺材7は一般的にはコイル状に巻かれているものが用いられている。
そして、長尺材7の車幅方向(W)全域にわたる切断線(Q)の中央部に間隔を有し、該切断線(Q)を中心にして対称形状の略円形状部71を有し、更に、略円形状部71と間隔を有した外側端部に切断線(Q)を中心にして対称形状の矩形状部72を切断線(Q)両端部に配設した第1ブランク部B1をプレス装置にて打抜き加工する第1工程。
尚、第1ブランク部B1は切断線(Q)と、略円形状部71及び、矩形状部72とを含む総称である。そして、矩形状部72は本実施形態において、重量軽減のために削除したものであり、矩形状部72部分が残っていても、機能上は問題ない。
また、図2に示すように、切断線(Q)の車幅方向(W)中間部を長尺材7の長手方向(R)へ切断線(Q)に幅(H)を有するようにして、クロスメンバ5の重量軽減を図ることも可能である。
【0027】
次に、長尺材7を、長尺材7の長手方向(R)へ送りピッチ(L)だけ送り出した位置に、第1ブランク部B1と同じ形状の第2ブランク部B2を形成することにより、抜形素材76が形成される第2工程。
尚、長尺材6の長手方向(R)への送りピッチ(L)はクロスメンバ5をシャシフレーム1に取付けた状態で、車両前後方向(R)に展開した最も長い部分の長さの2倍になっている。
更に、第1ブランク部B1の中央部に間隔を有した略円形状部71間によって、クロスメンバ5の補強フランジ54になる部分が形成される。
また、第1又は第2工程の何れかの工程において、後工程で抜形素材76の成形時に、抜形素材76が移動しないようにする位置決め用のノックピン孔73と、クロスメンバ5を左右のサイドレール2,3に取付ける取付孔521を取付フランジ52に穿設している。
ノックピン孔73は上述の間隔を有した略円形状部71の一部である円弧状切欠き部542(第1ブランク部B1の略円形状部71がプレス装置で打抜かれ、分割され円弧状になっているので、以後、円弧状切欠き部542と称す。)(図1の第2工程参照)の車幅方向(W)内側で且つ、円弧状切欠き部542から送りピッチ(L)間の中心線(M)側に寄った位置で、中心線(M)を対称にして4箇所設けてある。
【0028】
次に、図示省略の成型用金型のノックピンに抜形素材76の4箇所のノックピン孔73を嵌入させて抜形素材76の位置決めを行う。抜形素材76の長手方向(R)の両端縁に形成されている円弧状切欠き部542間において、円弧状切欠き部542とノックピン孔73との間で、中心線(M)に沿った切起し折曲線Y(第2工程の2点鎖線Y)部分を、略90度折曲げた切起し部(補強フランジ部)54にてコ字状断面を形成する。
そして、補強フランジ部54の車幅(W)方向両端部は円弧状切欠き542の部分においてコ字状断面から平板状に滑らかに変化させた第1素形材77を成形する第3工程。(図4参照)
尚、本実施形態の場合、対向する両辺の切起し部54は同じ形状に且つ、同時に折曲げる。これは、切起し部54の両端部をコ字状断面から平板状に滑らかに変化させる形状に成形する際に、中心線(M)に対して直角方向、及び中心線(M)に沿った方向に素材が部分的に引かれるため、4箇所を同時に切起し成形することにより、対向する部分が素材に作用する引きを打消し合うと共に、ノックピンの位置決めと共働して、素材の移動を防ぎ、精度の高い成形を可能としている。
【0029】
次に、中心線(M)に沿って分割し、第2素形材78である同一形状のクロスメンバ5(未完成品)を2個成形する第4工程。
次に、分割されたクロスメンバ5(未完成品)の位置決め用ノックピン孔73(2箇所)に成型用金型のノックピンを嵌入させクロスメンバ5(未完成品)の位置決めを行い、クロスメンバ5(未完成品)の車幅方向(W)両端部を左右のサイドレール2,3のウエブ面に沿って折曲げ、取付フランジ52を成形して第五工程にて完成したクロスメンバ5が製造される。
【0030】
抜形素材76は補強フランジ部54を切起して、コ字状の断面形状に形成してから、中心線(M)に沿って分割するようにしたので、切起し部54(補強フランジ部54)の車幅方向(W)両端部は円弧状切欠き部542の部分においてコ字状断面から平板状に滑らかに変化させる成形が容易に可能となる。
また、接続部E(図6参照)の断面剛性変化が穏やかになり、左右のサイドレール2,3の捩れに対する変形の吸収範囲が大きくなり、局部的な応力集中発生を防止する軽量のクロスメンバ5を容易に得ることが出来る。
更に、従来のコ字状断面のクロスメンバに対し、車両前後方向(R)へ折曲させた補強フランジ54が縦壁51の上辺又は下辺のいずれか一方側に配置した構造でよく、重量及び材料費の軽減ができる。
コ字状断面を中心線(M)に沿って分割することにより、クロスメンバ5(未完成品)が同時に2個製造することが出来るので、製作工数減によるコスト低減が可能となる。
当該部の断面剛性の変化が穏やかになり、左右のサイドレール2,3からの変形による
【0031】
(第2実施形態)
本、第2実施形態は、クロスメンバ5の展開形状を含む長方形の素材から製作する場合について説明する。
また、第1実施形態と同じ部材は説明の煩雑を防ぐため、同一符号を付すことにする。
図3に示すように、クロスメンバ5の車幅方向(W)の長さと、クロスメンバ5を左右のサイドレール2,3に取付ける取付フランジ52とを加算した長さ(N)と、クロスメンバ5をシャシフレーム1に取付けた体勢で車両前後方向(R)に展開した状態の長さの2倍になっている縦方向長さ(L)とを有する矩形状の平板素材80の材料取りを行う第1工程。
【0032】
次に、平板素材80の縦方向(R)の両端縁夫々の中央部に間隔を有して配設された円弧状切欠き部542と、円弧状切欠き部542夫々の外側に間隔を有して配設された矩形状切欠き部81とを、平板素材80の縦方向長さ(L)の中間位置で、車幅方向に延在する中心線(M)を中心として対称に抜形素材76を成形する。
また、この成形と同時に、後工程で抜形素材76の成形時に、抜形素材76が移動しないようにする位置決め用ノックピン孔73と、クロスメンバ5を左右のサイドレール2,3に取付ける取付孔521を取付フランジ52に穿設している。
ノックピン孔73は上述の間隔を有した円弧状切欠き部542の車幅方向(W)内側で且つ、円弧状切欠き部542と中心線(M)側との中間位置で、中心線(M)を対称にして4箇所設ける第2工程。
【0033】
第3工程のコ字状断面に形成された第1素形材77、第4工程の中心線(M)に沿って分割された第2素形材78、第5工程のフランジ52を折曲げてクロスメンバ5を完成させる工程は第1実施形態と同じなので省略する。
【0034】
上述のようにすることにより、第1実施形態の効果に加え、大きくて重いコイル状の長尺材を送りだす装置が不要となり、規模の大きい設備を使用しないので、製造コストの上昇を抑制でき、精度のよいクロスメンバ5の製造が容易に可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
車両の捩れ変形に対し柔軟に変形して、高応力の発生を防止すると共に、重量及びコスト削減を図る梯子型シャシフレームの製造に適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 シャシフレーム
5 リヤクロスメンバ
7 長尺材
21 ウエブ面
51 縦壁
52 取付フランジ
54 補強フランジ(切起し部)
71 円形状部
72、81 矩形切欠き部
73 位置決用ノックピン孔
76 抜形素材
77 第1素形材
78 第2素形材
80 平板素材
81 矩形状切欠き部
511 上縁
541 先端部
542 円弧状切欠き部
E 接続部
L 送りピッチ
M 中心線
Q 切断線
R 車両前後方向
W 車幅方向
Y 切起し折曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車幅方向に間隔を有して、車両前後方向に延在する左右一対のサイドレール間に位置して、両端部が前記サイドレールに固着されるクロスメンバの製造方法において、
該クロスメンバの車幅方向長さと、該クロスメンバを前記サイドレールに取付ける取付部の長さとを加算した長さに略等しい幅を有する板状の長尺材から、前記幅の全幅にわたる切断線上の中央部に間隔を有し、前記切断線を中心にした略円形状部を有した第1ブランク部を形成する第1工程と、
前記第1ブランク部と同形状の第2ブランク部を前記長尺材長手方向に間隔を有して形成し、前記第1ブランク部と、前記第2ブランク部との間に抜形素材を形成する第2工程と、
前記略円形状部によって形成される間を、前記抜形素材の車両前後方向中心線に沿って略90度折曲げた切起し部にてコ字状断面を形成すると共に、前記切起し部の前記車幅方向端部をコ字状断面から平板状に滑らかに変化させる第3工程と、
前記中心線(M)に沿って分割し、2個の前記クロスメンバにする第4工程と、
分割された前記クロスメンバの両端部を前記サイドレールのウエブ面に沿って折り曲げる第5工程とを含むことを特徴とするクロスメンバの製造方法。
【請求項2】
車両の車幅方向に間隔を有して、車両前後方向に延在する左右一対のサイドレール間に位置して、両端部が前記サイドレールに固着されるクロスメンバの製造方法において、
該クロスメンバの車幅方向長さと、該クロスメンバを前記サイドレールに取付ける取付部の長さを加算した長さに略等しい幅を有する板状の長尺材から矩形状の平板素材の材料取りを行う第1工程と、
前記平板素材の前記車両前後方向の両端縁の中央部に間隔を有して円弧状切欠き部を有すると共に、前記平板素材の前記車両前後方向の中心線に対し外形形状が対称の抜形素材を形成する第2工程と、
前記円弧状切欠き部間を前記中心線に沿って略90度折曲げた切起し部にてコ字状断面を形成すると共に、前記切起し部の前記車幅方向端部をコ字状断面から平板状に滑らかに変化させる第3工程と、
前記中心線(M)に沿って分割し、2個の前記クロスメンバにする第4工程と、
分割された前記クロスメンバの前記幅(N)方向両端部を前記サイドレールのウエブ面に沿って折り曲げる第5工程とを含むことを特徴とするクロスメンバの製造方法。
【請求項3】
前記第1又は前記第2工程のいずれかにおいて、前記切欠き部より前記中心線側で且つ、前記切欠き部より前記車幅方向内側近傍に前記切起し部のコ字状断面成形時における前記抜形素材の位置決め用ノックピン孔を穿設することを特徴とする請求項1又は2記載のクロスメンバの製造方法。
【請求項4】
前記第2工程において、前記位置決め用ノックピン孔と同時に前記サイドレールに取付ける取付部に取付孔を穿設するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のクロスメンバの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−81878(P2012−81878A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230010(P2010−230010)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】