説明

クロック供給方法およびクロック供給装置

【課題】本発明は、クロック基準信号が異常な場合においてもクロックパスの監視が可能であり、かつ、正常系のクロックパスへの切替を可能とすることを目的とする。
【解決手段】本願発明のクロック供給装置10は、3つ以上のクロック入力部14〜14と、クロック入力部14〜14から入力されたいずれかのクロック周波数で発振する発振部13と、クロック入力部14〜14からの各入力クロック信号の周波数と発振部13の発振周波数との各周波数差を計算する周波数差計算部11〜11と、周波数差計算部11〜11からの各周波数差が予め定められた閾値を超えたか否かを判定し、閾値を超えたクロックパスの個数と閾値を超えていないクロックパスの個数に関して多数決を用いて比べることにより各クロックパスが正常であるか、異常であるかを判定する監視切替部12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つ以上の入力クロック信号を受信し、受信した装置が動作するクロックと入力クロック信号との周波数差を検出し、それぞれの周波数差を比較することにより、受信した装置が従属するクロックパスを判定及び選択し、受信した装置の動作するクロック周波数を選択したクロックパスの入力クロック信号に同期させる機能を有するクロック供給方法及びクロック供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ネットワーク内の各ノードおよびノード内の各装置の動作クロックを一致させる網同期方式として、わが国の通信網は従属同期方式を採用している。従属同期方式では、図11に示すように最上位のマスタークロックを供給するノード91、91を起点とし、その下位のノードをサブマスターノード92、92、さらに下位のノードをスレーブノード93A〜93Hといった下位ノードへ伝送路(クロックパス)を介してクロック信号が分配される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図11の実線と破線で示すとおり、サブマスターノード92〜92及びスレーブノード93A〜93Hのクロック従属元は現用系(0系)/予備系(1系)冗長構成をとっている。通常は0系(現用系)のクロックパスから分配されている0系クロック信号に従属し、現用系に入力断が生じた場合、クロック供給装置は従属元を予備系(1系)のクロックパスから分配されている1系クロック信号に切り替える構造となっている。
【0004】
また、入力断以外のクロック異常として、クロック周波数精度の劣化に伴うような異常が0系クロックパスに生じた場合の切替では、より詳細な異常系の検出機能が必要となる。このような問題を解決する手段として、図12に示すようなGPS(Grobal Positioning System)受信器94からの信号をクロック基準信号として、0系入力クロック信号、1系入力クロック信号に対してクロック周波数精度計算部111、111を設置し、MTIE(Maximum Time Interval Error)を監視する方法がある。すなわち、クロック基準信号に対して、0系入力クロック信号および1系入力クロック信号の周波数差を0系入力クロック周波数精度計算部111、1系入力クロック周波数精度計算部111にてMTIEで計測し、周波数差が警報出力を行うために設定した閾値を越えるか否かを監視部112で監視し、現用系の0系クロック信号の周波数差が閾値を越えた場合には、監視部112より切替信号をスイッチ114に出力して、発振部113に入力される入力クロック信号をスイッチ114で切り替える。なお、図12に示すクロック供給装置110では入力断監視部は省略して示してある。
【0005】
図12の監視部112における具体的な入力従属元の異常状態と切替の遷移表を図13に示す。図13は0系クロック信号にクロック供給装置110が従属している場合の切替方法を示している。0系クロック信号と基準クロック信号の周波数差が閾値以上になった場合、0系クロックパス異常が有と判定される。前記状態で且つ1系クロックパスに関しても異常が有と判定された場合は両クロックパスが異常系であるため、クロック供給装置110はホールドオーバー状態となり、従属同期せずにクロック供給装置110内の発振部113が独立に動作する自走状態となる。また、1系クロックパスにクロック異常がない場合のみ1系クロックパスに入力従属元を切り替える。一方、0系クロックパスに異常がない場合には1系クロックパスの異常の有無に関わらず切替は行われない。
【0006】
さらに、上記クロック異常監視方法に対して、入力クロック信号の周波数がジッタやワンダなどにより時間的に変動する場合においても入力クロック信号の不具合の状態を的確に判定できるようにMTIE計算部前段にジッタ・ワンダ除去フィルタを付与するクロック異常監視方法についても提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3370258号公報
【特許文献2】特開2010−288085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に示したように、クロック周波数精度の劣化に伴うような異常がクロックパスに生じた場合、外部の基準クロックを用いて周波数を比較し、異常を検出していた。このとき、クロック基準信号は外部のGPSにロックした入力クロック信号を別途設置して用いられてきた。そのため、火山灰、黄砂、天候の悪化にともない、GPS信号が劣化しGPSにクロック基準信号がロックできない場合には、クロック基準信号自体が異常となり、結果として、0系1系クロックパスにおいて本来はクロック周波数の異常がないにも関わらず、クロック供給装置において異常警報が検出され、図12における入力従属元が自走モードとなってしまうことが懸念されてきた。
【0009】
そこで、本発明は、クロック基準信号が異常な場合においてもクロックパスの監視が可能であり、かつ、正常系のクロックパスへの切替を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本願発明のクロック供給方法は、クロックパスの異なる3つ以上の入力クロック信号の周波数と発振部の発振周波数との各周波数差を計算する周波数差計算手順と、前記周波数差計算手順で計算した各周波数差が予め定められた閾値を超えたクロックパスの数と前記閾値を超えないクロックパスの数を比較し、個数の多いクロックパスを正常なクロックパスと判定し、個数の少ないクロックパスを異常なクロックパスと判定する監視切替手順と、を順に有する。
【0011】
本願発明のクロック供給方法は、周波数差計算手順と、監視切替手順と、を順に有するため、クロック基準信号が異常な場合においてもクロックパスを監視し、異常なクロックパスを判定することができる。これにより、本願発明のクロック供給方法は、正常系のクロックパスへの切替を行うことができる。
【0012】
本願発明のクロック供給方法では、前記監視切替手順において、前記発振部と周波数同期しているクロックパスが異常であると判定した場合、前記発振部を正常なクロックパスの入力クロック信号に周波数同期させてもよい。
【0013】
本願発明のクロック供給方法では、前記周波数差計算手順において、少なくとも2つの入力クロック信号はマスタークロックを供給するノードに近い上位ノードからのクロックパスを有し、少なくとも1つの入力クロック信号は同位のスレーブノードからのクロックパスを有してもよい。
【0014】
本願発明のクロック供給方法では前記周波数差計算手順において、少なくとも2つの入力クロック信号はマスタークロックを供給するノードに近い上位ノードからのクロックパスを有し、少なくとも1つの入力クロック信号はGPS受信器からのクロックパスを有してもよい。
【0015】
上記目的を達成するために、本願発明のクロック供給装置は、クロックパスの異なる3つ以上の入力クロック信号が入力されるクロック入力部と、前記クロック入力部から入力されたいずれかの入力クロック信号と周波数同期して発振する発振部と、前記クロック入力部からの各入力クロック信号の周波数と前記発振部の発振周波数との各周波数差を計算する周波数差計算部と、前記周波数差計算部からの各周波数差が予め定められた閾値を超えたクロックパスの数と前記閾値を超えないクロックパスの数を比較し、個数の多い入力クロックパスを正常なクロックパスと判定し、個数の少ないクロックパスを異常なクロックパスと判定する監視切替部と、を備える。
【0016】
本願発明のクロック供給装置は、発振部と、周波数差計算部と、監視切替部と、を備えるため、クロック基準信号が異常な場合においてもクロックパスを監視し、異常なクロックパスを判定することができる。これにより、本願発明のクロック供給装置は、正常系のクロックパスへの切替を行うことができる。
【0017】
本願発明のクロック供給装置では、前記監視切替部は、前記発振部と周波数同期しているクロックパスが異常であると判定した場合、前記発振部を正常なクロックパスの入力クロック信号に周波数同期させてもよい。
【0018】
本願発明のクロック供給装置では、前記クロック入力部に入力される少なくとも2つの入力クロック信号は、マスタークロックを供給するノードに近い上位ノードからのクロックパスを有し、前記クロック入力部に入力される少なくとも1つの入力クロック信号は、同位のスレーブノードからのクロックパスを有してもよい。
【0019】
本願発明のクロック供給装置では、前記クロック入力部に入力される少なくとも2つの入力クロック信号は、マスタークロックを供給するノードに近い上位ノードからのクロックパスを有し、前記クロック入力部に入力される少なくとも1つの入力クロック信号は、GPS受信器からのクロックパスを有してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、クロック基準信号の周波数が異常となった場合においてもクロック基準信号の異常を検出し、なおかつクロック基準信号が異常な場合においてもクロックパスの監視、および正常系のクロックパスへの切替が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1に係るクロック供給装置の一例を示す。
【図2】0系クロックパスに従属している場合の切替処理フローの一例を示す。
【図3】実施形態2に係るクロック供給装置のクロック供給網の一例を示す。
【図4】実施形態2に係るクロック供給装置が0系クロックに従属している場合の切替遷移の一例を示す。
【図5】従属元のクロックパスの周波数が急激に変化するときの周波数差の変動の一例を示す。
【図6】図5の周波数変動が生じたときの監視切替部の状態遷移の一例を示す。
【図7】従属元のクロックパスの周波数が徐々に変化するときの周波数差の変動の一例を示す。
【図8】図7の周波数変動が生じたときの監視切替部の状態遷移の一例を示す。
【図9】実施形態3に係るクロック供給装置の一例を示す。
【図10】実施形態3に係るクロック供給装置が0系クロックに従属している場合の切替遷移の一例を示す。
【図11】従来のクロック供給方式をあらわした図である。
【図12】従来のクロック供給装置の詳細な構成を表した図である。
【図13】従来のクロック供給装置が0系クロックに従属している場合の切替遷移の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0023】
(実施形態1)
本実施形態では、GPS信号にロックしたクロック基準信号が異常時の場合でも、0系1系クロックパスにおいてクロック異常がない場合、正常なクロックパスを選択可能となるような切替方式として、GPSを用いたクロック基準信号といった周波数の絶対値が既知であるクロック基準信号を用いずに、クロック供給装置に0系、1系、2系・・・といった3系以上のクロック入力があるクロック供給装置においてクロックパスの切替方式を提案する。
【0024】
図1に、本実施形態に係るクロック供給装置の一例を示す。図1ではN個のクロックパスからのクロック入力がある場合の説明を行う。本実施形態に係るクロック供給装置10は、3つ以上のクロック入力部14〜14と、周波数差計算部11〜11と、監視切替部12と、発振部13と、を備える。
【0025】
クロック入力部14〜14に、クロックパスの異なる3つ以上の入力クロック信号が入力される。例えば、クロック入力部14に0系クロックパスの入力クロック信号が入力され、クロック入力部14に1系クロックパスの入力クロック信号が入力され、クロック入力部14に2系クロックパスの入力クロック信号が入力され、・・・クロック入力部14にN系クロックパスの入力クロック信号が入力される。
【0026】
0系入力周波数差計算部11、1系入力周波数差計算部11、2系入力周波数差計算部11、・・・N系入力周波数差計算部11は、0系クロックパス、1系クロックパス、2系クロックパス・・・N系クロックパスのそれぞれの入力クロック信号とクロック供給装置10内の発振部13からの出力クロック信号との周波数差を計算する。監視切替部12は、それぞれの周波数差計算部11〜11の相対的な周波数差より各クロックパスの異常状態を監視し、従属元のクロックパスを選択する。発振部13は、監視切替部12にて選択されたクロックパスの周波数差の情報を基に、監視切替部12にて選択されたクロックパスの入力クロック信号に周波数を調整し、当該クロックパスのクロック入力部に接続されている前ノードに同期したクロック信号を出力する。
【0027】
ここで、周波数差計算部11〜11は特許文献2と同様に有限の時間間隔で計測されるため、監視切替部12での切替、および発振部13での周波数調整は時間的に連続的ではなく断続的に行われる。このため、各周波数差計算部11〜11で各入力クロック信号と比較される発振部13のクロック周波数は、前回のクロック計算で調整され、監視切替部12にて採用された系の周波数であり、採用された系における入力周波数差計算の値は前回計算されたときの入力クロック信号の周波数と今回計算されるときの入力クロック信号の周波数の差となり、必ずしも0とはならない。
【0028】
周波数差計算部11〜11で計算された周波数差が、クロックパス異常であると設定した周波数差の閾値Δfth以上となっていた場合、本実施形態のクロック供給装置10ではそのクロックパスが異常と監視切替部12で判定する。
【0029】
本実施形態に係るクロック供給方法は、周波数差計算手順と、監視切替手順と、を順に有する。周波数差計算手順では、周波数差計算部11〜11が、クロック入力部14〜14からの各入力クロック信号の周波数と発振部13からのクロック信号の出力周波数との各周波数差を計算する。監視切替手順では、監視切替部12が、周波数差計算部11〜11からの各周波数差が予め定められた閾値Δfthを超えたクロックパスの数と閾値Δfthを超えないクロックパスの数を比較し、個数の多いクロックパスを正常なクロックパスと判定し、個数の少ないクロックパスを異常なクロックパスと判定する。
【0030】
クロック供給装置が図1の場合の、監視切替手順における監視切替部12での切替フローを図2に示す。図2ではクロック供給装置10が0系クロックに従属している場合の異常状況を示している。
【0031】
まず、0系クロックパスに異常がある場合(S101においてYes)、0系クロックパスの入力クロック信号において前回の切替時の周波数に対して周波数がクロックパス異常であると設定した周波数差の閾値以上に変化してしまったと考えられる。
【0032】
そのため、他の系に切り替える必要がある。他の系クロックパスの半分以上が正常な場合、それら系のクロックパスは正常であると多数決で判定し(S102においてYes)、その中の一つの系へクロックパスの切替を行う(S103)。
【0033】
一方、他の系クロックパスの半分以上が正常でない場合、系における正常なクロックパスがないと判定し(S102においてNo)、発振部13のクロックを自走で動作させる(S104)。
【0034】
次に0系クロックパスが正常と監視切替部12で判定した場合に関して説明する。
0系クロックパスが正常と監視切替部12で判定する場合に関して、以下の2つの場合が考えられる。
【0035】
・0系クロックパスの入力クロック信号の周波数が理想状態のクロックの周波数からクロックパス異常であると設定した周波数差までの範囲の値にある場合(case 1)
・0系クロックパスの入力クロック信号の周波数が理想状態のクロック周波数からクロックパス異常であると設定した周波数差までの範囲の値の外にあるが、前回0系入力周波数差計算部で計算した時刻からの周波数の変化量はクロックパス異常であると設定した周波数の閾値以内となっている場合(case 2)
【0036】
Case 1は切替の必要がなく、Case 2は切替の必要があるため、以下に説明する監視切替部12では両者を切り分けるフローを本実施形態では有する。
0系クロックパスが正常と監視切替部12で判定し(S101においてNo)、過半数のクロックパスにおいて異常と判定した場合(S105においてYes)、0系クロックパスがcase 1であるため正常となっているクロックパスの数に比べて、0系クロックパスが、case 2の状態、つまり、0系入力クロック信号に同期した発振部13の出力も異常となることにより、実際はクロックパス異常であると設定した閾値以内の周波数差となっているクロックパスが監視切替部12で異常と判定されてしまった、つまり監視切替部12で異常と判定した系が実際は正常の系と考えた場合の正常なクロックパス数が多いと多数決で判定する。その結果、監視切替部12では、0系クロックパスはCase 2であると判定し、前記異常と判定した系の一つにクロックパスを切り替える(S106)。
【0037】
一方、0系クロックパスが正常と監視切替部で判定し(S101においてNo)、他系クロックパスの過半数が異常ではないと判定した場合(S105においてNo)、多数決により0系クロックパスが正常であると監視切替部12では判定し、切替を行わない(S107)。
【0038】
以上のフローを行うことにより、発振部13が従属しているクロックパスに異常があった場合の切替および発振部13に異常があった場合の切替が可能となる。
【0039】
(実施形態2)
本形態では、GPSを用いずにインラインのクロックパスのみでクロック供給を行うクロック供給網に関するクロックパスの切替、監視方式を説明する。
本形態では、周波数差計算手順において、図1に示すクロック入力部14〜14に入力される少なくとも2つの入力クロック信号はマスタークロックを供給するノード91に近い上位ノードからのクロックパスを有し、少なくとも1つの入力クロック信号は同位のスレーブノードからのクロックパスを有する。
【0040】
本形態に関して、クロック供給装置10は3つ以上のクロック入力ポートを必要とするが、図11のような従来のクロック供給網の場合、クロック入力ポートは2つとなっている。そこで、各クロック供給装置10において、クロック入力部14〜14は3つとなり、それぞれのクロックパスが従属同期されている各ノードからのパスであるクロック供給網を図3に示す。
【0041】
このクロック供給網では、注目するクロック供給装置が存在するスレーブノード93A〜93Hにおいて、スレーブノード93A〜93Dが上位のサブマスターノード92及び92からの2つのクロックパスと同位のスレーブノード93A〜93Dからの1つのクロックパスにより3つの入力クロック信号が供給され、スレーブノード93E〜93Hが上位のスレーブノード93A〜93Dからの2つのクロックパスと同位のスレーブノード93E〜93Hからの1つのクロックパスにより3つの入力クロック信号が供給される。
【0042】
このクロック供給網内の任意のクロック供給装置10において、0系クロックパスにクロック供給装置10が同期している場合の監視切替部12の異常状態と切替の遷移図を図4に示す。
状態1は0系クロックパスに異常があり、他系クロックパスの半分以上が正常となっていないため、図2のフローより入力従属元切替は自走となる。
【0043】
状態2、状態3及び状態4は0系クロックパスに異常があり、且つ他系クロックパスの半分(1つ)以上が正常(図では異常無)となっているため、図2のフローより正常の系へ切替が行われる。
【0044】
状態5は、0系クロックパスに異常がなく、且つ、他系クロックパスの過半数(2つ)以上が異常となっているため、図2のフローより、異常と監視切替部12で判定された系へ切替が行われる。
【0045】
状態6、状態7及び状態8は0系クロックパスに異常がなく、且つ、他系クロックパスの過半数(2つ)以上が異常となっていないため、図2のフローより切替が行われない。
【0046】
ここで、クロックの状態遷移に関してさらに詳細に説明する。
まず、従属元のクロックパスが急激に閾値以上に変化した場合の周波数の監視及び切替に関して説明する。
【0047】
クロック供給装置10に3つのクロックパス(0系、1系、2系)から入力があり、それらのクロック周波数が図5のように遷移している場合のクロック監視に関して説明する。初期状態として発振部13からの出力クロック信号の従属元が0系クロックパスとなっている。時刻t、t、t、tではクロック供給装置10における周波数差計算部11〜11において各入力クロック信号と発振部13からの出力クロック信号の周波数とが比較され周波数差が計算される。
【0048】
ここで、監視切替部12においてクロックパスが異常と判定する周波数差は閾値Δfthとなっている。
各周波数差計算部11〜11で計算された周波数差と監視切替部12の状態を図6に示す。時刻tまでは各周波数差計算部11〜11で計算された周波数差は閾値Δfth以内であるため、図4に示される異常状態は状態8の状態となり、クロックパスの切替は起こらず、入力従属元は0系クロックパスとなっている。
【0049】
しかし時刻tにおいて、0系入力周波数差計算部11より計算された周波数差が閾値を越えたΔfが検出される。そのため、監視切替部12では図4の状態において状態4と判定され、入力従属元は1系クロックパスに切り替えられる。時刻tでは1系クロックパスが従属元となるので、1系クロックパスの状態が図4における0系クロックパス異常、0系クロックパスの状態が図4における1系クロックパス異常と置き換わった表となる。このとき、0系クロックパスは発振部13の周波数との周波数差がΔfとなるため、図4の状態において状態6となり、従属元のクロックパスは切り替わらない。
【0050】
この状態遷移におけるクロック供給装置10内の発振部13が出力するクロック周波数の遷移は図5に示している。従属元のクロックパスが急激に閾値Δfth以上に変化した場合において、発振部13はそのクロックパスに追従せず、他のクロックパスに切り替わり出力クロック信号が出力されていることがわかる。
【0051】
次に、従属元のクロックパスの周波差数が閾値Δfth以上へ徐々に変化した場合の周波数の監視及び切替に関して説明する。
クロック供給装置10に3つのクロックパス(0系、1系、2系)から入力があり、それらのクロック周波数が図7のように遷移している場合のクロック監視に関して説明する。初期状態としてクロック従属元が0系クロックパスとなっている。時刻t、t、t、tではクロック供給装置10における周波数差計算部11〜11において各入力クロック信号の周波数と発振部13からの出力クロック信号の周波数とが比較され周波数差が計算される。
【0052】
ここで、監視切替部12においてクロックパスが異常と判定する周波数差は閾値Δfthとなっている。
各周波数差計算部11〜11で計算された周波数差と監視切替部12の状態を図8に示す。時刻tまでは各周波数差計算部11〜11で計算された周波数差は閾値Δfth以内であるため、図4に示される異常状態は状態8の状態となり、クロックパスの切替は起こらず、入力従属元は0系クロックパスのままとなっている。
【0053】
しかし時刻tにおいて、時刻tで調整した発振部13のクロック周波数差と1系クロックパス、2系クロックパスそれぞれの周波数差が閾値Δfth以上の値となり、監視切替部12において1系クロックパスと2系クロックパスが異常であると判別される。このとき、0系以外のクロックパスにおいて過半数のクロックパスが異常であると判別されるため、状態5と判別する。このため、時刻tでは従属元のクロックパスが0系から1系へと切替が生じる。時刻tでは1系クロックパスが従属元となるので、1系クロックパスの状態が図4における0系クロックパス異常となり、0系クロックパスの状態が図4における1系クロックパスの異常と置き換わった表となる。このとき、0系クロックパスは発振部13の出力クロック周波数との周波数差が閾値Δfth以上となるため、図4の状態において状態6となり、従属元のクロックパスは切り替わらない。
【0054】
この状態遷移におけるクロック供給装置10内の発振部13が出力するクロック周波数の遷移は図7に示している。従属元のクロックパスが徐々に閾値Δfth以上に変化した場合において、発振部13はそのクロックパスに追従せず、他のクロックパスに切り替わりクロック信号が出力されていることがわかる。
【0055】
(実施形態3)
本形態では、図11で示される従来のクロック供給方式において、各ノードに提案したクロック供給装置が配置されている場合に関して説明する。
本形態では、周波数差計算手順において、図1に示すクロック入力部14〜14に入力される少なくとも2つの入力クロック信号はマスタークロックを供給するノード91、91に近い上位ノードからのクロックパスを有し、図1に示すクロック入力部14〜14に入力される少なくとも1つの入力クロック信号はGPS受信器からのクロックパスを有する。
【0056】
図9に各ノードに配置するクロック供給装置の詳細な構成を示す。入力クロック信号は3つあり、上位ノードからのクロックパス2つと各クロック供給装置に配置されているGPS受信器からのクロックパスから構成されている。
【0057】
図10に、本実施形態に係る0系クロックパスに従属している場合の異常状態と切替遷移の一例を示す。
状態1では0系クロックパスが異常であり、且つ、他系クロックパスの入力クロック信号において半分(1つ)以上が正常となっていないため、図2の切替フローより入力従属元切替は自走となる。
【0058】
状態2では0系クロックパスが異常であり、且つ、他系クロックパスの入力クロック信号において半数(1つ)以上が正常となっているため、図2の切替フローによると正常と判定されたクロックパスに切替を行うべきだが、正常と判定されたクロックパスがGPS受信器からの信号であり従属同期させるクロックの主信号ではないため、本実施形態では切替を行うクロックパスがないと判定し、入力従属基切替は自走とした。
【0059】
状態3及び状態4では0系クロックパスが異常であり、且つ他系クロックパスの入力クロック信号において半数(1つ)以上が正常となっているため、図2の切替フロー従い、正常なクロックパスの系へ切替が生じる。
【0060】
状態5では0系クロックパスが正常であり、且つ、他系クロックパスの過半数(2つ)が異常となっているため、図2の切替フローに従い正常なクロックパスの系へ切替が生じる。
【0061】
状態6、状態7及び状態8では、0系クロックパスが正常であり、且つ、他系クロックパスの過半数(2つ)が異常となっていないため、図2の切替フローに従い、クロックパスの切替が行われない。
【0062】
上記で説明した監視切替部12で判定する異常状態と切替方法により、0系クロックパス、1系クロックパス、さらにはGPS受信器からのクロックパスに異常があるときを判定し、クロックパスの切替が行われていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10:クロック供給装置
11〜11:周波数差計算部
12:監視切替部
13:発振部
14〜14:クロック入力部
91、91:マスタークロックを供給するノード
92、92:サブマスターノード
93A、93B、93C、93D、93E、93F、93G、93H:スレーブノード
94:GPS受信器
110:クロック供給装置
111、111:クロック周波数精度計算部
112:監視部
113:発振部
114:スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロックパスの異なる3つ以上の入力クロック信号の周波数と発振部の発振周波数との各周波数差を計算する周波数差計算手順と、
前記周波数差計算手順で計算した各周波数差が予め定められた閾値を超えたクロックパスの数と前記閾値を超えないクロックパスの数を比較し、個数の多いクロックパスを正常なクロックパスと判定し、個数の少ないクロックパスを異常なクロックパスと判定する監視切替手順と、
を順に有するクロック供給方法。
【請求項2】
前記監視切替手順において、前記発振部と周波数同期しているクロックパスが異常であると判定した場合、前記発振部を正常なクロックパスの入力クロック信号に周波数同期させることを特徴とする請求項1に記載のクロック供給方法。
【請求項3】
前記周波数差計算手順において、少なくとも2つの入力クロック信号はマスタークロックを供給するノードに近い上位ノードからのクロックパスを有し、少なくとも1つの入力クロック信号は同位のスレーブノードからのクロックパスを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のクロック供給方法。
【請求項4】
前記周波数差計算手順において、少なくとも2つの入力クロック信号はマスタークロックを供給するノードに近い上位ノードからのクロックパスを有し、少なくとも1つの入力クロック信号はGPS受信器からのクロックパスを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のクロック供給方法。
【請求項5】
クロックパスの異なる3つ以上の入力クロック信号が入力されるクロック入力部と、
前記クロック入力部から入力されたいずれかの入力クロック信号と周波数同期して発振する発振部と、
前記クロック入力部からの各入力クロック信号の周波数と前記発振部の発振周波数との各周波数差を計算する周波数差計算部と、
前記周波数差計算部からの各周波数差が予め定められた閾値を超えたクロックパスの数と前記閾値を超えないクロックパスの数を比較し、個数の多いクロックパスを正常なクロックパスと判定し、個数の少ないクロックパスを異常なクロックパスと判定する監視切替部と、
を備えるクロック供給装置。
【請求項6】
前記監視切替部は、前記発振部と周波数同期しているクロックパスが異常であると判定した場合、前記発振部を正常なクロックパスの入力クロック信号に周波数同期させることを特徴とする請求項5に記載のクロック供給装置。
【請求項7】
前記クロック入力部に入力される少なくとも2つの入力クロック信号は、マスタークロックを供給するノードに近い上位ノードからのクロックパスを有し、
前記クロック入力部に入力される少なくとも1つの入力クロック信号は、同位のスレーブノードからのクロックパスを有することを特徴とする請求項5又は6に記載のクロック供給装置。
【請求項8】
前記クロック入力部に入力される少なくとも2つの入力クロック信号は、マスタークロックを供給するノードに近い上位ノードからのクロックパスを有し、
前記クロック入力部に入力される少なくとも1つの入力クロック信号は、GPS受信器からのクロックパスを有することを特徴とする請求項5又は6に記載のクロック供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−110523(P2013−110523A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253019(P2011−253019)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】