説明

クロック信号制御装置および画像形成装置

【課題】周波数拡散によって拡散調整された周波数スペクトラムのピークの重なりを防ぎ、複数の電子機器について周波数拡張変調を行う際のEMI低減効果を確保する。
【解決手段】クロック信号制御装置は、所定の周波数のクロック信号を生成するクロック信号生成部と、クロック信号生成部によって生成されたクロック信号を拡散変調する周波数拡散変調部と、周波数拡散変調部が行う拡散変調の変調タイプの設定を制御する変調タイプ設定制御部とを備える。周波数拡散変調部は、変調タイプ設定制御部の制御によって複数の変調タイプから変調タイプを選択して設定し、設定した変調タイプに基づいてクロック信号を拡散変調する。複数の周波数拡散変調部において異なる変調タイプで周波数拡散を行い、周波数拡散によって拡散調整された周波数スペクトラムの各ピークが重ならないようにし、ピーク値の上昇を抑制してEMIを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック信号制御装置および画像形成装置等の電子機器から放射される電磁波に起因する電磁波障害(EMI)を抑制する技術に関する。特に、周波数拡散されたクロック信号を電子機器の制御部(CPU等)に供給することにより電子機器から放射される電磁波を低減させ電磁波障害を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、情報処理装置や電気通信機器や電子事務用機器など(以下「電子機器」という)から放射される電磁波については、いわゆるEMI(電磁波障害)の抑制を図るべく、CISPR(国際無線障害特別委員会)やVCCI(情報処理装置等電波障害自主規制協議会)等においてその許容上限値が規制されている。
【0003】
一般的なEMI抑制の技術として、電子機器には電磁シールドやフェライトビーズやチョークコイル等を設けることが行われ、これらの素子によって電子機器から放射される電磁波の低減が図られている。
【0004】
また、電子機器から放射される電磁波を低減してEMIを抑制する対策として、スペクトラム拡散クロックジェネレータ(以下「SSCG」という)によりクロック信号の周波数を周波数拡散し、この周波数拡散してクロック信号を電子機器の制御部に供給することによって電子機器から放射される電磁波を許容上限値以下に抑制する手法が知られている(例えば,特許文献1、2参照)。
【0005】
このSSCGは、水晶振動子を有する水晶発振器などのクロック信号生成装置により生成したクロック信号の周波数を、予め定められた一定の拡散率に基づいて拡散して変調する装置である。周波数拡散したクロック信号の周波数スペクトルは、広い帯域幅に拡散すると共にスペクトル振幅が減少し、EMI成分が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−33858号公報
【特許文献2】特開2005−223770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SSCGは、周波数を拡散変調することによってEMIを抑制する技術であるが、この周波数変調は高い精度で制御することが難しく、そのため、正確な変調波(三角波)を生成することができないという問題がある。このため、拡散変調された周波数スペクトラムにピークが生じる。
【0008】
図11はSSCGによって拡散変調された周波数スペクトラムを示している。図11(a)は一つの拡散変調された周波数スペクトラムを示し、基準周波数の両側に帯域幅を有して拡散し、これによってピーク値が低下するものの、一部にピークが発生する。
【0009】
このような周波数スペクトラムの特性を有した回路を複数使用すると、ピークが重なり、重畳したピーク値が上昇し、EMI低減効果が十分に得られないという問題が発生する。図11(b)は、ピーク値が重なる状態を示している。
【0010】
また、従来のSSCGは一定の拡散タイプに設定されている。そのため、電子機器がどのような状態であるかに関わらず、常に一定の拡散タイプで周波数拡散されたクロック信号が電子機器に供給される。
【0011】
この周波数拡散されたクロック信号では周波数が揺れるために周波数が時間的に変動するという位相特性を有している。
【0012】
このような周波数が時間変動するという位相特性を有したクロック信号を電子機器に供給した場合には、クロック信号で駆動される電子機器の動作が変動する場合がある。
【0013】
例えば、クロック信号を供給する電子機器が画像形成装置である場合には、プリンタ本体に複数のオプションカセットを設置した場合に、用紙の搬送に支障が生じる場合がある。図12は、画像形成装置の構成例を説明するための図である。図12に示す構成では、画像形成装置はプリンタ本体である画像形成部10に複数のオプションカセット11,12をカスケード接続し、オプションカセット11,12からプリンタ本体10に用紙を供給する。オプションカセット11,12はそれぞれ用紙を搬送する給紙部を備えている。
【0014】
複数の同一のオプションカセットの給紙動作を、SSCGで周波数拡散したクロック信号で制御すると、それぞれのオプションカセット間で用紙の受け渡しを行う際に、各オプションカセットにおける拡散周期の位相が異なるため、それぞれの搬送速度に差が生じる場合がある。このように、搬送速度に差が生じると、ローラ間で用紙の引き合いが生じ、搬送負荷が増大するという問題が生じる。
【0015】
そこで、本発明は上記した問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の第1の目的は、周波数拡散によって拡散調整された周波数スペクトラムのピークの重なりを防ぐことを目的とし、これによって、複数の電子機器について周波数拡張変調を行う際に、EMI低減効果が十分得られることを目的とする。
【0016】
また、本発明の第2の目的は、周波数拡散によって拡散調整された周波数の時間的変動の位相特性による電子機器の動作変動を低減することを目的とし、より詳細には、画像形成装置において、複数の給紙部間において用紙の搬送速度差によって生じる搬送の支障を低減し、不要な負荷の増大を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明のクロック信号制御装置は、所定の周波数のクロック信号を生成するクロック信号生成部と、クロック信号生成部によって生成されたクロック信号を拡散変調する周波数拡散変調部と、周波数拡散変調部が行う拡散変調の変調タイプの設定を制御する変調タイプ設定制御部とを備える。周波数拡散変調部は、変調タイプ設定制御部の制御によって複数の変調タイプから変調タイプを選択して設定し、設定した変調タイプに基づいてクロック信号を拡散変調する。
【0018】
周波数拡散変調部は、複数の変調タイプから選択した変調タイプに基づいてクロック信号を拡散変調する。これによって、複数の周波数拡散変調部において異なる変調タイプで周波数拡散を行い、周波数拡散によって拡散調整された周波数スペクトラムの各ピークが重ならないようにする。ピークの重なりを防ぐことで、ピーク値の上昇を抑制してEMIを低減する。
【0019】
また、周波数拡散によって拡散調整された周波数の時間的変動の位相特性による電子機器の動作の不具合を低減する。
【0020】
本発明の周波数拡散変調部は、周波数スペクトラムの中心周波数と帯域幅の少なくとも何れか一方をパラメータとして拡散変調を行う。変調タイプは、中心周波数と帯域幅の少なくとも何れか一方のパラメータを異にする複数の組み合わせによって定めることができる。例えば、周波数拡散変調部によって拡散変調する複数のクロック信号について、これらの周波数スペクトラムの中心周波数又は帯域幅の何れか一方を異ならせる。これによって、拡散調整された周波数スペクトラムの各ピークの周波数がずれ、ピークの重なりを抑制することができる。
【0021】
また、周波数拡散変調部によって拡散変調する複数のクロック信号について、これらの周波数スペクトラムの中心周波数と帯域幅の組み合わせを異ならせても良い。これによっても、同様に、拡散調整された周波数スペクトラムの各ピークの周波数がずれ、ピークの重なりを抑制することができる。
【0022】
本発明の変調タイプ設定制御部は、複数の形態とすることができる。
変調タイプ設定制御部の第1の形態は、周波数拡散変調部に異なる電位から成る制御信号を出力するものである。この制御信号は、外部端子の接続状態に基づいて出力することができる。例えば、外部端子の接続状態が接地状態あるいは開放状態かによって、制御信号の電位を定め、周波数拡散変調部は、この制御信号の電位に基づいて変調タイプの設定制御を行う。
【0023】
変調タイプ設定制御部の第2の形態は、クロック信号制御装置に変調タイプを設定する設定データを格納する変調タイプ記憶部を備えておく。変調タイプ設定制御部は、この変調タイプ記憶部から設定データを読み出し、周波数拡散変調部は、変調タイプ設定制御部が読み出した設定データに基づいて変調タイプを設定し、設定した変調タイプに基づいて拡散変調する。
【0024】
この第2の形態によれば、変調タイプ記憶部に複数の設定データを格納することができるため、複数の変調タイプを設定することができる。
【0025】
本発明は、本発明クロック信号制御装置を有した画像形成装置を含む。本発明の画像形成装置は、画像形成を行う画像形成部と、画像形成部に画像形成用の用紙を搬送する給紙部とを備える。画像形成部は、一又は複数の給紙部をカスケード接続自在である。また、給紙部は、前記した本発明のクロック信号制御装置を備える。
【0026】
本発明の画像形成装置は、クロック信号制御装置で拡散変調したクロック信号に基づいて用紙を搬送する。クロック信号制御装置で拡散変調して得られる変調クロック信号は、ピーク値の重なりが抑制されているため、複数の給紙部からの電磁波障害を低減する。
【0027】
また、複数のクロック信号駆動装置において、各クロック信号制御装置で拡散変調して得られる変調クロック信号の周波数帯や中心周波数を所定の関係となるようにずらす。これによって、変調クロック信号で駆動される複数の給紙部間において、搬送される用紙の搬送速度差が生じた場合であっても、搬送に支障がないように速度がずれるようにし、不要な負荷の増大を防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、周波数拡散によって拡散調整された周波数スペクトラムのピークの重なりを防ぐことができる。さらに、これによって、複数の電子機器について周波数拡張変調を行う際に、EMI低減効果が十分得られることができる。
【0029】
また、本発明によれば、周波数拡散によって拡散調整された周波数の時間的変動の位相特性による電子機器の動作の不具合を低減することができる。
【0030】
さらに、本発明によれば、画像形成装置において、複数のオプションカセット間において用紙の搬送速度差によって生じる搬送の支障を低減し、不要な負荷の増大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明によるクロック信号制御の概要を説明するための図である。
【図2】本発明の変調タイプを説明するための図である。
【図3】本発明の画像形成装置の構成を説明するための概略図である。
【図4】本発明のクロック信号制御装置の概略構成を説明するための構成図である。
【図5】本発明のクロック信号制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明のクロック信号制御装置の第1の形態を説明するための概略構成図である。
【図7】本発明のクロック信号制御装置の第1の形態を説明するための動作説明図である。
【図8】本発明のクロック信号制御装置の第2の形態を説明するための概略構成図である。
【図9】本発明のクロック信号制御装置の第2の形態を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明のクロック信号制御装置の第2の形態を説明するための動作説明図である。
【図11】拡散調整された周波数スペクトラムを示す図である。
【図12】画像形成装置の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明を実施する最良の形態について、以下に図を用いて詳細に説明する。
【0033】
はじめに、本発明によるクロック信号制御の概要について図1を用いて説明する。図1において、複数の電子機器1〜3はそれぞれ内部において、クロック信号を生成し、生成したクロック信号のスペクトルを拡散させる周波数拡散変調を行って変調クロック信号を生成し、この変調クロック信号に基づいて動作する。
【0034】
ここで、各電子機器1〜3が生成する変調クロック信号は、それぞれ周波数拡散変調する変調タイプを異ならせる。
【0035】
変調タイプは、周波数スペクトラムの中心周波数と帯域幅の少なくとも何れか一方をパラメータとし、何れか一方のパラメータの値を異ならせることによって、あるいは両パラメータの組み合わせ値を異ならせることによって設定することができる。この変調パラメータの設定を異ならせることで、複数の変調クロック信号が生成され、そのEMI成分が放射された場合であっても、各変調クロック信号のピーク値を周波数上でずらすことができる。各変調クロック信号のピーク値を周波数上でずらすことによって、ピーク値が重なることによるピーク値の上昇を避けることができる。
【0036】
図2は、変調タイプを説明するための図である。図2(a)は、変調クロック信号の中心周波数をずらすことによる変調タイプの例を示している。図2(a)中の実線で示す周波数スペクトラムAは、周波数拡散した変調クロック信号の中心周波数が基準周波数となる変調タイプを示している。この変調タイプを、周波数が基準周波数のままで中央に止まることからセンタースプレッドと称する。
【0037】
また、図2(a)中の破線で示す周波数スペクトラムBは、周波数拡散した変調クロック信号の中心周波数が基準周波数から低周波数方向にずれる変調タイプを示している。この変調タイプを、周波数が低周波数に移動することからダウンスプレッドと称する。
【0038】
一方、図2(b)は、変調クロック信号の周波数幅を変えることによる変調タイプの例を示している。図2(b)中の実線は、周波数拡散した変調クロック信号の周波数幅が基準周波数のままで変化しない変調タイプを示している。また、図2(b)中の破線は、周波数拡散した変調クロック信号の周波数幅が基準周波数よりも拡大する変調タイプを示している。
【0039】
なお、図2では、中心周波数又は周波数幅の何れか一方が変化する変調タイプに示しているが、中心周波数および周波数幅の両方が変化する変調タイプとしてもよい。
【0040】
なお、これらの変調タイプにおいて、生成された変調クロック信号の周波数スペクトラムのピーク位置が重なる場合には、変調タイプを変更してピーク位置が重ならないようにずらす調整を行う。本発明における電子機器の台数は3台である必要はなく、少なくとも2台あれば足りる。
【0041】
ここで行う変調タイプの変更によるピーク位置ずらし調整は、変調タイプを設定した後に周波数スペクトルのピーク位置を確認し、ピーク位置に重なりが生じたときに行う。このピーク位置のずらし調整機能は、図示しないピーク位置検出手段の検出結果に基づいて変調タイプ設定制御部で行う構成とする他、変調タイプ設定制御部内にピーク位置検出機能を持たせる構成としてもよい。
【0042】
図1に示す第1電子機器1〜第3電子機器3では、中心周波数を互いにずらすことによって、ピーク位置が重なることを抑制する。ここで、第3電子機器3は中心周波数が基準周波数に一致させるセンタースプレッドの変調タイプによって周波数拡散し、第2電子機器2および第1電子機器1は、中心周波数が基準周波数から低周波数方向にずれるダウンスプレッドの変調タイプによって周波数拡散する。第1電子機器1の中心周波数の低周波数方向のずれは、第2電子機器2の中心周波数の低周波数方向のずれよりも大きくなるようにし、ピーク位置が重ならないように設定している。
【0043】
また、第1電子機器1〜第3電子機器3が画像形成装置の給紙部である場合には、給紙部間において用紙搬送速度にずれが生じた場合であっても、用紙搬送の負荷が増大しないように設定される必要がある。
【0044】
この用紙搬送において、搬送機構(図示していない)を駆動するモータの回転速度を変調クロック信号に基づいて設定する構成では、画像形成部(図示していない)に近い位置に設置される給紙部の搬送速度を低速とし、画像形成部(図示していない)から遠い位置に設置される給紙部の搬送速度を高速となるように設定する。これによって、隣接する給紙部間において、送り込まれる用紙は搬送速度差によってたるむため、速度関係が逆の場合の引っ張りによる負荷の増大は発生しない。
【0045】
本発明の画像形成装置の構成例を、図3を用いて説明する。図3は本発明の画像形成装置の構成を説明するための概略図である。図3では、レーザビームプリンタの例を用いて示している。レーザビームプリンタは、レーザビームを走査することによって転写材に画像を形成する画像形成装置であるが、本発明はレーザビームに限られるものではなく、搬送される用紙上に画像を形成する任意の形式の画像形成装置に適用することができる。
【0046】
レーザビームプリンタ等の画像形成装置4は、図3に示すように、静電記録方式によって画像を転写紙5に形成する画像形成部10と給紙部11,12を備える。
【0047】
画像形成部10は、イメージ展開部からレーザビームのオン/オフ信号を受け取り、このオン/オフ信号に基づいてレーザビームを駆動することによって転写紙5に画像を形成し、主電源(図示していない)によって電力供給を受ける。
【0048】
イメージ展開部は、画像形成装置4の外部に備えたホストコンピュータ(図示していない)にあるCPUとシリアルインタフェースあるいはパラレルインタフェースを介して接続され、ホストコンピュータから受け取った画像情報をビットマップに展開する。
【0049】
画像形成部10は、ドラム状の感光体10i,現像装置10h,定着装置10jが転写紙5の搬送路に沿って配置され、感光体10i上にはレーザスキャナ10kが設けられている。
【0050】
レーザスキャナ10kは、例えば、半導体レーザ、回転多面鏡、光学レンズなどから構成され、ビットマップの画像情報に基づくオン/オフ信号によりレーザ光を変調し、変調したレーザビームを感光体10i上に走査する。これによって、感光体10i上には出射されたレーザビームによって静電潜像が形成される。感光体10i上に形成された静電潜像は、現像装置10hによって現像され、感光体10i上に現像剤像が形成される。
【0051】
転写紙5の搬送路は、カセット桶10a,給紙ローラ10b,搬送ローラ10c,10d,10e,10f,10g等により形成され、カセット桶10aから給紙ローラ10bで取り出され、搬送ローラ10d〜10gで搬送された転写紙5は、画像が形成された後、排紙口から排出される。給紙ローラ10bおよび搬送ローラ10c〜10gは、マスターCPU(図示していない)で制御されるモータ(図示していない)によって駆動される。なお、搬送ローラ10cは、接続された給紙部11から搬送された転写紙を取り込むためのローラである。
【0052】
感光体10i上に形成された現像剤像は、給紙ローラ10bから搬送路に沿って送り出された転写紙5に転写ローラで転写され、現像剤像が転写された転写紙5は定着装置10jに送られる。
【0053】
定着装置10jは、転写紙5を加熱、加圧することによって転写紙5に現像剤像を定着させる。画像が定着された転写紙5は、排紙口から外部に搬出される。
【0054】
画像形成部10の制御は、マスターCPU(図示していない)で行われる。マスターCPUは、ROM(図示していない)を内蔵あるいは外装し、このROMに格納されている制御プログラムに基づいて画像形成部10の画像形成動作および転写紙の搬送動作を制御する。
【0055】
給紙部11は、オプションカセット13内に設けられ、カセット桶11aから転写紙を取り出して画像形成部10に供給する。給紙部11は、所定のサイズを有する転写紙をカセット桶11aに収納する。カセット桶11aに収納する転写紙は、画像形成部10のカセット桶10aに収納された転写紙と同サイズに限らず、任意のサイズとすることができる。給紙部11は、オプションピックアップローラ11bとオプションカセット給紙搬送ローラ11dをモータ11eで駆動し、転写紙を画像形成部10に送り出す動作を行う。破線は、モータ11eからの駆動伝達状況を模式的に表している。
【0056】
モータ11eはステッピングモータが使用されることが多く、制御基板11fによって制御される。制御基板11fはCPUを有し、内蔵あるいは外装されたROMに格納されている制御プログラムに基づいて、給紙部の転写紙の搬送動作を制御する。また、クロック信号生成部および周波数拡散変調部を備え、クロック信号生成部で生成し、周波数拡散変調で拡散変調して得られた変調クロック信号に基づいて、CPUや駆動機構を駆動する。
【0057】
給紙部12は、前記したオプションカセット13の下段に設けられたオプションカセット14内に設けられ、カセット桶12aから転写紙を取り出してオプションカセット14の給紙部11に供給する。給紙部12は、所定のサイズを有する転写紙をカセット桶12aに収納する。カセット桶12aに収納する転写紙は、画像形成部10のカセット桶10aに収納された転写紙と同サイズに限らず、任意のサイズとすることができる。給紙部12は、オプションピックアップローラ12bとオプションカセット給紙搬送ローラ12dをモータ12eで駆動し、転写紙を画像形成部10に送り出す動作を行う。破線は、モータ12eからの駆動伝達状況を模式的に表している。
【0058】
モータ12eはステッピングモータが使用されることが多く、制御基板12fによって制御される。制御基板12fはCPUを有し、内蔵あるいは外装されたROMに格納されている制御プログラムに基づいて、給紙部の転写紙の搬送動作を制御する。また、クロック信号生成部および周波数拡散変調部を備え、クロック信号生成部で生成し、周波数拡散変調で拡散変調して得られた変調クロック信号に基づいて、CPUや駆動機構を駆動する。
【0059】
画像形成部10側の制御部(図示していない)と制御基板11fとの間、および制御基板11fとの制御基板12fと間のデータ送受信は、クロック同期式シリアル通信、調歩同期またはこれに類するシリアル通信で行うことができる。
【0060】
次に、本発明のクロック信号制御装置について、図4,図5を用いて説明する。図4は本発明のクロック信号制御装置の概略構成を説明するための構成図であり、図5は本発明のクロック信号制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0061】
図4において、クロック信号制御装置100は、基準となるクロック信号を生成するクロック信号生成部102、クロック信号生成部102で生成したクロック信号を周波数拡散変調する周波数拡散変調部103、周波数拡散変調部103で行う周波数拡散変調の変調タイプの設定を制御する変調タイプ設定制御部104を備える。また、制御部101を備える。制御部101はCPUを備え、ROM等に格納されたプログラムにしたがってクロック信号制御装置100の制御動作を行う。
【0062】
周波数拡散変調部103は、周波数拡散変調の変調タイプを設定する機能を有し、変調タイプ設定制御部104からの制御信号に基づいて変調タイプを設定する。周波数拡散変調部103は、周波数スペクトラムの中心周波数と帯域幅の少なくとも何れか一方をパラメータとして拡散変調を行う。変調タイプは、中心周波数と帯域幅の少なくとも何れか一方のパラメータを異にする複数の組み合わせによって定める。また、周波数拡散変調部によって拡散変調する複数のクロック信号について、これらの周波数スペクトラムの中心周波数又は帯域幅の何れか一方を異ならせる。これによって、拡散調整された周波数スペクトラムの各ピークの周波数がずれ、ピークの重なりを抑制する。
【0063】
変調タイプ設定制御部104は、外部信号等に基づいて変調タイプの設定を制御する制御信号を生成し、周波数拡散変調部103に送る。周波数拡散変調部103は、この制御信号に基づいて複数の変調タイプから選択し、選択した変調タイプを設定し、設定した変調タイプに基づいて周波数拡散変調を行う。
【0064】
図5のフローチャートは、二段のオプションカセット(給紙部)を備える構成について示し、各制御基板が備えるCPUによる動作例を示している。
【0065】
はじめに、各オプションカセットの制御基板11f,12fは、他のオプションカセットとの制御状態に関する情報を取得する。オプションカセットとの制御状態は、各制御基板11f,12fの制御端子間の接続状態によって得られる電位あるいは制御信号によって取得される(S1)。
【0066】
ここで、1段目のオプションカセットと2段目のオプションカセットが装着されている場合について説明する。オプションカセットが1段目のオプションカセットであるか、あるいは2段目のオプションカセットであるかは、2段目のオプションカセットとの接続状態に係る情報の有無によって識別することができる(S2,4)。
【0067】
オプションカセットが1段目のオプションカセットである場合には、制御基板11fは2段目のオプションカセットとの接続状態に係る情報を取得することによって検出することができる。この場合には、3段目のオプションカセットと接続されていないため、制御基板11fの変調タイプ設定制御部104は、接続状態に係る情報に基づいて、周波数拡散変調部103に対して1段目のオプションカセットに対応する変調タイプを設定するように制御する。周波数拡散変調部103は、この制御に基づいて変調タイプを設定し、周波数拡散変調を行う。ここでは、ダウンスプレッドに設定する (S3)。
【0068】
一方、オプションカセットが2段目のオプションカセットである場合には(S4)、制御基板12fは3段目のオプションカセットとの接続状態に係る情報を取得することによって検出することができる。この場合には、3段目のオプションカセットと接続されていないため、制御基板12fの変調タイプ設定制御部104は、接続状態に係る情報に基づいて、周波数拡散変調部103に対して2段目のオプションカセットに対応する変調タイプを設定するように制御する。周波数拡散変調部103は、この制御に基づいて変調タイプを設定し、周波数拡散変調を行う。ここでは、センタースプレッドに設定する (S5)。
【0069】
設定した変調タイプに基づいて、クロック信号生成部102で生成されたクロック信号を周波数拡散変調し(S6)、変調クロック信号を制御基板のCPUや他の素子に供給する(S7)。
【0070】
以下、本発明のクロック信号制御装置の第1の形態と第2の形態について説明する。
【0071】
[クロック信号制御装置の第1の形態]
本発明のクロック信号制御装置の第1の形態において、変調タイプ設定制御部は、周波数拡散変調部に異なる電位から成る制御信号を出力する。この制御信号は、外部端子の接続状態に基づいて出力することができる。例えば、外部端子の接続状態が接地状態あるいは開放状態かによって、制御信号の電位を定め、周波数拡散変調部は、この制御信号の電位に基づいて変調タイプの設定制御を行う。
【0072】
以下、図6,図7を用いて第1の形態を説明する。
図6は、本発明のクロック信号制御装置の第1の形態を説明するための概略構成図であり、図7は本発明のクロック信号制御装置の第1の形態を説明するための動作説明図である。図6において、クロック信号制御装置100Aは、基準となるクロック信号を生成するクロック信号生成部102A,クロック信号生成部102Aで生成したクロック信号を周波数拡散変調する周波数拡散変調部103A、周波数拡散変調部103Aで行う周波数拡散変調の変調タイプの設定を制御する変調タイプ設定制御部104Aを備える。また、制御部101AはCPUを備え、ROM等に格納されたプログラムにしたがってクロック信号制御装置100Aの制御動作を行う。
【0073】
第1の形態の変調タイプ設定制御部104Aは、一端を周波数拡散変調部103Aに接続し、他端を外部接続端子に接続し、接続点の電位を+Vとする構成である。
【0074】
この構成において、下段側にオプションカセットが接続されていない場合には、外部接続端子は開放状態となる。この外部接続端子が開放状態であることによって、外部接続端子は+Vの電位となり、周波数拡散変調部103Aの端子は+Vの電位となる。周波数拡散変調部103Aはこの+V電位を制御信号として入力し、この+V電位に対応して定められた変調タイプを選択し設定する。
【0075】
図7(a)はこの下段側にオプションカセットが接続されていない状態を示している。ここで、+V電位に対応して定められた変調タイプとしてセンタースプレッドの変調タイプを設定しておくことによって、クロック信号生成部102Aで生成されたクロック信号は、周波数拡散変調部103Aによってセンタースプレッドに拡散変調される。
【0076】
一方、この構成において、下段側にオプションカセットが接続されると、外部接続端子は下段側のオプションカセットの接地端子に接続される。この接地端子との接続によって、外部接続端子はグラウンドに接地され、周波数拡散変調部103Aの端子は零電位となる。周波数拡散変調部103Aはこの零電位を制御信号として入力し、この零電位に対応して定められた変調タイプを選択し設定する。
【0077】
図7(b)はこの下段側にオプションカセットが接続された状態を示している。ここで、第1のオプションカセットでは、接地電位に対応して定められた変調タイプとしてダウンスプレッドの変調タイプを設定しておくことによって、クロック信号生成部102Aで生成されたクロック信号は、周波数拡散変調部103Aによってダウンスプレッドに拡散変調される。
【0078】
一方、第2のオプションカセットでは、下段側にオプションカセットが接続されていないため、外部接続端子は開放状態となる。この外部接続端子が開放状態であることによって、外部接続端子は+Vの電位となり、周波数拡散変調部103A´の端子は+Vの電位となる。周波数拡散変調部103A´はこの+V電位を制御信号として入力し、この+V電位に対応して定められた変調タイプを選択し設定する。
【0079】
+V電位に対応して定められた変調タイプとしてセンタースプレッドの変調タイプを設定しておくことによって、クロック信号生成部102A´で生成されたクロック信号は、周波数拡散変調部103Bによってセンタースプレッドに拡散変調される。
【0080】
[クロック信号制御装置の第2の形態]
本発明の変調タイプ設定制御部の第2の形態において、クロック信号制御装置に変調タイプを設定する設定データを格納する変調タイプ記憶部を備えておく。変調タイプ設定制御部は、この変調タイプ記憶部から設定データを読み出し、周波数拡散変調部は、変調タイプ設定制御部が読み出した設定データに基づいて変調タイプを設定し、設定した変調タイプに基づいて拡散変調する。
【0081】
以下、図8〜図10を用いて第2の形態を説明する。
図8は、本発明のクロック信号制御装置の第2の形態を説明するための概略構成図である。図8において、クロック信号制御装置100Bは、基準となるクロック信号を生成するクロック信号生成部102B,クロック信号生成部102Bで生成したクロック信号を周波数拡散変調する周波数拡散変調部103B、周波数拡散変調部103Bで行う周波数拡散変調の変調タイプの設定を制御する変調タイプ設定制御部104B、変調タイプのデータを格納する変調タイプ記憶部105B、外部装置との間でデータの送受信を行う送受信部106Bを備える。また、制御部101BはCPUを備え、ROM等に格納されたプログラムにしたがってクロック信号制御装置100Bの制御動作を行う。
【0082】
第2の形態の変調タイプ設定制御部104Bは、一端を周波数拡散変調部103Bに接続し、他端を送受信部に接続して、外部から送信された制御信号に基づいて、変調タイプ記憶部105Bから変調タイプを読み出し、周波数拡散変調部103Bに対して変調タイプの設定を制御する。
【0083】
送受信部106Bは、そのクロック信号制御装置100Bが他のクロック信号制御装置100Bに対して如何なる位置関係にあるかを識別するデータを順に送受信する。このデータは、例えば、カウンタ値cによって構成することができる。カウンタ値cの値に基づいて変調タイプを設定し、値を変更したカウンタ値cを次のクロック信号制御装置100Bに送信することで、各クロック信号制御装置100Bに対して異なる変調タイプを設定する。
【0084】
図9のフローチャートおよび図10の動作図において、設定データを取得する(S11)。設定データは、例えば、画像形成装置等の最上流側からカウンタ値c=1を含むデータによって送信する。クロック信号制御装置100Bは、カウンタ値c=1のデータを受けると、変調タイプ設定制御部104Bは、受信したデータ中のカウンタ値c=1に基づいて、このカウンタ値c=1に対応して定められた変調タイプを変調タイプ記憶部105Bから読み出し(S12)、このカウンタ値c=1に“1”を加算してc=2として次のクロック信号制御装置100Bに送信する(S13)。
【0085】
カウンタ値c=1を受けたクロック信号制御装置100Bは、変調タイプ記憶部105Bから読み出し変調タイプを周波数拡散変調部103Bに設定する(S14)。
【0086】
設定した変調タイプに基づいて、クロック信号生成部102Bで生成されたクロック信号を周波数拡散変調し(S15)、変調クロック信号を制御基板のCPUや他の素子に供給する(S16)。
【0087】
図10の構成では、第1のクロック信号制御装置および第2のクロック信号制御装置はダウンスプレッドを設定し、第1のクロック信号制御装置はセンタースプレッドを設定する例を示している。
【0088】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、上記で言及した以外にも種々の変形、変更を行うことが可能である。例えば、画像形成装置は、プリンタの他、複写機、ファクシミリ機等も含み得る。
【符号の説明】
【0089】
1-3 電子機器
4 画像形成装置
5 転写紙
10 画像形成部
10a カセット桶
10c-10g 搬送ローラ
10h, 現像装置
10i 感光体
10j 定着装置
10k レーザスキャナ
11 給紙部
11a カセット桶
11b オプションピックアップローラ
11d オプションカセット給紙搬送ローラ
11e モータ
11f 制御基板
12 給紙部
12a カセット桶
12b オプションピックアップローラ
12d オプションカセット給紙搬送ローラ
12e モータ
12f 制御基板
13 オプションカセット
14 オプションカセット
100 クロック信号制御装置
100A クロック信号制御装置
100B クロック信号制御装置
101 制御部
101A 制御部
101B 制御部
102 クロック信号生成部
102A クロック信号生成部
102B クロック信号生成部
103 周波数拡散変調部
103A 周波数拡散変調部
103B 周波数拡散変調部
104 変調タイプ設定制御部
104A 変調タイプ設定制御部
104B 変調タイプ設定制御部
105B 変調タイプ記憶部
106B 送受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数のクロック信号を生成するクロック信号生成部と、
前記クロック信号生成部によって生成されたクロック信号を拡散変調する周波数拡散変調部と、
前記周波数拡散変調部が行う拡散変調の変調タイプの設定を制御する変調タイプ設定制御部とを備え、
前記周波数拡散変調部は、前記変調タイプ設定制御部の制御によって複数の変調タイプから変調タイプを選択して設定し、当該設定した変調タイプに基づいてクロック信号を拡散変調する、クロック信号制御装置。
【請求項2】
前記周波数拡散変調部は、周波数スペクトラムの中心周波数と帯域幅の少なくとも何れか一方をパラメータとして拡散変調を行い、
前記変調タイプは、前記中心周波数と帯域幅の少なくとも何れか一方のパラメータを異にする複数の組み合わせを含む、請求項1に記載のクロック信号制御装置。
【請求項3】
前記変調タイプ設定制御部は、前記周波数拡散変調部に異なる電位から成る制御信号を出力し、
前記周波数拡散変調部は、前記制御信号の電位に基づいて変調タイプの設定制御を行う、請求項1又は2に記載のクロック信号制御装置。
【請求項4】
前記変調タイプ設定制御部は、外部端子の接続状態に基づいて前記制御信号を出力する請求項3に記載のクロック信号制御装置。
【請求項5】
前記変調タイプを設定する設定データを格納する変調タイプ記憶部を備え、
前記変調タイプ設定制御部は、前記変調タイプ記憶部から設定データを読み出し、
前記周波数拡散変調部は、前記変調タイプ設定制御部が読み出した設定データに基づいて変調タイプを設定し、設定した変調タイプに基づいて拡散変調する、請求項2に記載のクロック信号制御装置。
【請求項6】
画像形成を行う画像形成部と、
前記画像形成部に画像形成用の用紙を搬送する給紙部とを備え、
前記画像形成部は、一又は複数の給紙部をカスケード接続自在であり、
前記給紙部は、前記請求項1から5の何れかに記載のクロック信号制御装置を備え、当該クロック信号制御装置で拡散変調したクロック信号に基づいて用紙を搬送する、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−135262(P2011−135262A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292097(P2009−292097)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】