説明

クロマトグラフィーナノカラム用ポリマー固体支持体

例えば、CECおよびナノLCに有用なナノカラムクロマトグラフィー装置を開示する。本発明の代表的なクロマトグラフィー装置は、微粒子固定相材料と固体支持体とで充填されたナノカラム、例えば、キャピラリーを含む。固体支持体、またはインサイチューフリットは、固定相材料に隣接し、およびこの固定相材料と一体化している。本発明のインサイチューフリットは、場合によっては焼結され得る、固定相材料と、架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)のポリマーネットワークとの混合物であり得る。本発明はまた、このような装置を作製する方法および使用する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
混合物成分の分析的分離に関して、現在、幾つかの方法が存在する。一般に、関心対象の化合物を含有する液体サンプルは、移動相と固定相との間で分配することにより分離され、個々の分離化合物が分析される。
【0002】
例えば、電気泳動、特にキャピラリー電気泳動(「CE」)は、電場の印加により混合物から個々の分子種を分離する方法である。分子の分離は、異なる速度の溶液中の移動、速度が溶液のpHにより影響を受けること、分子の質量および電荷、ならびに電場の強度および持続時間により生じる。例えば、分離は、典型的には導電性の電解質溶液で満たされ、両端が開いているキャピラリー管内で実施される。電場は、キャピラリーの末端に配列されている高電圧電極により印加される。分離分子の検出は、例えばポリイミドコーティングを除去することに生じた、キャピラリーの外面上のウィンドウを通して蛍光分子のレーザ照射によって、キャピラリー内で実施できる。例えば、米国特許第5,312,535号、米国特許第5,364,521号、および米国特許第5,310,462号を参照されたい。
【0003】
高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)は、高圧化での移動液相と、固定相、例えば、結合シリカを含むシリカベースカラム、ジビニルベンゼンなどの有機樹脂との間の分配を使用する他の方法である。これらの中で、逆相シリカベースカラムが、高い分離効率を有し、機械的に安定であり、種々のカラム選択性を得るために種々の官能基を容易に結合できることから、好ましい。最近、ミニチュアHPLCクロマトグラフィーシステムおよび技法が開発されている。これらの技法は、従来のHPLC分離に通常使用されているものよりも小さな内径のカラムを使用しており、約1μL未満のサンプルを必要とするだけである。これらの技法は、「ミクロ液体クロマトグラフィー」(または「MLC」)、「ミクロ高性能LC」または簡単に「ミクロLC」、「キャピラリーLC」または「ナノLC」(すなわち、本明細書で用いられる用語)など、数通りの名称で称される。米国特許第4,102,782号および米国特許第4,346,610号。
【0004】
より新しい方法は、電場が、微粒子により充填されたキャピラリーカラムを横切って印加され、生じた電気浸透フローがクロマトグラフィーのポンプとして働くキャピラリー電気クロマトグラフィー(「CEC」)である。この技法は、キャピラリー電気泳動分離で得られた高効率の利点と一般的なHPLCの適用性の利点を組み合わせている。CECは、電気浸透フローを用いる場合、クロマトグラフィー粒子、特に小粒子で充填されたカラムを通して移動相を駆動する能力を有している。例えば、Colonら、J.Chromatog.887、43頁(2000);Dadooら、LC−GC15、630頁(1997);Jorgensonら、J.Chromatog.218、209頁(1981);Pretoriusら、J.Chromatog.99、23頁(1974);および米国特許第6,395,183号、米国特許第5,378,334号、米国特許第5,342,492号、および米国特許第5,310,463号を参照されたい。一般に、キャピラリーは、動電的にまたはポンプを用いて、通常HPLCにおいて用いられる同じ固定相材料であり得る適切な固定相材料で充填される。クロマトグラフィーカラムは一般に、円形断面を有する石英キャピラリー管を含む。キャピラリーカラムの一部は、典型的にはカラムの上流端(入口)および下流端(出口)に配置された焼結シリカ粒子である多孔性フリットに正しく保持されている固定固相材料(例えば、直径が約1μmから3μmの結合シリカ粒子)により充填されている。移動相フロー、印加電場により誘導されたイオン性ドリフト、固定相の分配効果の組合せ効果のもとで、混合物が分離される。固定相の乱れを避けるために、混合物の種々の成分の検出および分析は、典型的には、下流端に隣接したキャピラリーカラムの充填されていないか、または開放されている部分で行われ、そこに混合物の個々の成分に対応するバンドが、充填されたキャピラリーカラムから出現する。
【0005】
CEC、HPLCに用いられるクロマトグラフィーカラムおよび関連分析法は、液体またはカラム内の固定相材料を保持するために、または粒子、例えば分析サンプル中の微粒子混入物をろ過するために、最適性能のために透過性収納装置を必要とする。通常の収納装置としては、典型的には「フリット」と称されるガラス繊維パッキング、スクリーン、および結合粒子が挙げられる。
【0006】
フリットを作製する多くの異なる方法があるが、大部分の技法は、知られたサイズの圧縮粒子と一緒に焼結または溶融することによる小粒子の強化を使用する。1つの典型的な方法においては、適切な材料を小片に粉砕し、粒子の選択サイズ範囲を選別する。次いで前記粒子を鋳型内で一緒に圧縮し、粒子を一緒に融解するために加熱するが、粒子を溶融、または分解させない。加熱後、この材料を、機械加工し、適切な基体へと溶接するか、または接着するかによってさらに加工する。他のアプローチは、無作為に配置され、圧縮され、一緒に融解された金属およびプラスチックのいずれかのフィラメントを使用する。このような糸状フリットは一般に、大型(すなわち、非キャピラリー)カラムにとってのみ適切である。さらに他のアプローチは、フリットに対する代替物として役立つ収納装置を提供するためのスクリーンを使用するが、このスクリーンは一般に、使用されるワイヤまたはフィラメントの大きさに基づいて性能限界がより低い。しかしながら、スクリーンはフリットと比較して低い逆圧を提供する。Colonら、J.Chromatog.887、43頁(2000)。
【0007】
フリットまたはスクリーンのいずれも、パッキング収納または小ホールまたは小ポアサイズを必要とする適用において粒子フィルタを提供するためには、特に液体クロマトグラフィー(「LC」)またはキャピラリー電気泳動(「CE」)のいずれかに用いられる充填キャピラリーカラムにとって、理想的な構造を提供しない。従来のフリットは、側方移動を含有する通路を含むポアの回旋状経路のため、高い逆圧を有する。スクリーンは、低い逆圧を有するが、スクリーンは、ポアサイズにより低い限界を有する。フリットはまた、特により小さなカラムにおいて、またサンプル容量に比してフリットの容量がかなりある小容量の分離において、クロマトグラフィーデータの質を減少させる空隙容量を生じる。
【0008】
「フリットレス」カラムは、特にCECカラムにおいてフリットおよびスクリーンの欠点に対する別法として探索されている。例えば、1つの報告は、フリーラジカル機構によって媒介されたインサイチューアクリレート重合化を開示している。Chiricaら、Anal.Chem.72、3605頁(2000)。他の報告は、シリケート類の焼結によるフリットのインサイチュー合成を例証している。Chiricaら、Electrophoresis20、50頁(1999);Chiricaら、Electrophoresis21、3093頁(2000);またZengら、Sensors and Actuators B79、107頁(2001)を参照されたい。これらのカラムは、機械的に安定ではあるが、安定なベースラインを達成することは困難である。他は、アクリレート類のインサイチュー光重合化によりフリットを作製する試みである。Chenら、Anal.Chem.72、1224頁(2000);Dulayら、Anal.Chem.73、3921頁(2001);Chenら、Anal.Chem.73、1987頁(2001);Katoら、J.Chromatog.A.924、187頁(2001)を参照されたい。ポリマーは、固定相材料の粒子を固定化することにより「ナノ接着剤」として働くと考えられている。このような光重合化法は、光学的に透明なカラムの製造に限定される。
【発明の開示】
【0009】
発明の要旨
本発明は、上記に参照した幾つかの欠点を克服し、例えばCECにおいて有用な、改良されたナノカラムクロマトグラフィー装置を提供する。本発明の代表的なクロマトグラフィー装置としては、ナノカラム、例えば、微粒子固定相材料で充填されたキャピラリーおよび固体支持体が挙げられる。「インサイチューフリット」と称され得る固体支持体は、固定相材料に隣接して一体化している。本発明の「インサイチューフリット」は、固定相材料と、架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)、例えば、場合によっては焼結され得るポリ(ジメチルシロキサン)のポリマーネットワークとの混合物であり得る。本発明はまた、このような装置を作成し、使用する方法を提供する。
【0010】
さらに本発明は、固定相材料の粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークとの均質混合物を含むクロマトグラフィーナノカラムにおいて前記固定相材料を固定化するためのインサイチューフリットに関し、ここにおいて前記粒子は前記ネットワークに懸濁されている。
【0011】
同様に、本発明は、微粒子固定相材料と、固定相材料に隣接し、固定相材料と一体化しているインサイチューフリットとを含む、分子分離のための媒体に関する。インサイチューフリットは、固定相材料の粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子が前記ネットワークに懸濁している。
【0012】
さらなる実施形態において、本発明は、固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラム、前記ナノカラム内に充填された微粒子固定相材料を含むカラムクロマトグラフィー装置に関する。インサイチューフリットは、固定相材料に隣接して一体化しているナノカラム内にある。インサイチューフリットは、固定相材料の粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は、前記ネットワークに懸濁している。
【0013】
本発明はまた、カラムクロマトグラフィー装置と、および検出手段、導入手段または受入れ手段から選択される少なくとも1つの構成部品とを含む分離機器に関する。カラムクロマトグラフィー装置は、固定相を受け入れるための円筒内部、ナノカラム内に充填された微粒子固定相材料を有するナノカラムを含み得る。インサイチューフリットは、ナノカラム内にあり、固定相材料に隣接して一体となっている。インサイチューフリットはまた、固定相材料の粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記固定相材料の粒子は、前記ネットワークに懸濁している。前記検出手段は、運転時に前記ナノカラムに接続され、物理化学的な性質(光吸収/発光、導電度等)を測定できる。前記導入手段は、運転時に前記ナノカラムに接続され、液体を前記ナノカラムに導通することができる。前記受入れ手段は、ナノカラムは、運転時に検出手段または導入手段のいずれかに接続される構成で前記ナノカラムを保持できる。
【0014】
さらに本発明は、固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラムを提供するステップと、前記ナノカラム内に固定相を形成するステップとにより製造されたクロマトグラフィー装置に関する。このような固定相は、微粒子固定相材料と、前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化しているインサイチューフリット(前記インサイチューフリットは、固定相材料の粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は前記ネットワークに懸濁している。)を含み得る。
【0015】
さらに本発明は、固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラムを提供するステップと、前記ナノカラム内に固定相を形成するステップを含むクロマトグラフィー装置を作製する方法に関する。この固定相は、微粒子固定相材料と、前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化しているインサイチューフリットとを含む。一般に前記インサイチューフリットは、固定相材料の粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は、前記ネットワークに懸濁している。
【0016】
一態様において、「固定相を形成する」ステップは、固定相材料、溶媒、および架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)の合成前駆体を調製するステップと;前記ナノカラムの末端にこの混合物を導入するステップと;前記溶媒を室温で蒸発させるステップと;乾燥混合物を硬化するステップと、を含み得る。硬化は、ナノカラムとその中の混合物とを、約70℃から約150℃の間の温度に、約0.5時間から約3時間の範囲の時間、加熱して乾燥混合物を硬化することにより達成でき、それによってインサイチューフリットを製造できる。場合によっては、インサイチューフリットは、ナノカラムとその中のインサイチューフリットとを、約250℃から約350℃の間の温度に、約5秒間から約30秒間の範囲の時間、加熱することにより焼結できる。
【0017】
同様に、本発明は、固定相材料、溶媒、および架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)の合成前駆体を調製するステップと;前記ナノカラムの末端にこの混合物を導入するステップと;前記溶媒を室温で蒸発させるステップと;乾燥混合物を硬化するステップと、を含むクロマトグラフィー装置を作製する方法を開示する。このような硬化ステップは、ナノカラムとその中の混合物とを、約70℃から約150℃の間の温度に、約0.5時間から約3時間の範囲の時間、加熱することを含むことができ、それによってインサイチューフリットを製造できる。また、この方法は、ナノカラムとその中のインサイチューフリットとを、約250℃から約350℃の間の温度に、約5秒間から約30秒間の範囲の時間、加熱することにより、インサイチューフリットを場合によっては焼結するステップを含むことができる。
【0018】
本発明はまた、本明細書に記載されたクロマトグラフィー装置と材料とを用いる方法に関する。例えば、本発明は、混合物を本発明のカラムクロマトグラフィー装置と接触させるステップを含む、混合物の成分を分離させる分析法に関する。同様に、本発明はまた、本発明のカラムクロマトグラフィー装置を含む分離機器を包含する。さらに、本発明は、このような混合物を本発明のカラムクロマトグラフィー装置と接触させるステップを含む、混合物の成分を分析する方法、ならびにこのような混合物を本発明のカラムクロマトグラフィー装置と接触させるステップを含む、混合物の成分を分離する方法を開示する。
【0019】
さらに、本出願は、CE、ナノLC、またはCEC機器などの本発明のカラムクロマトグラフィー装置を含む分離機器に関する。このような機器は、カラムクロマトグラフィー装置を通って液体を移動させるポンプ手段、およびカラムクロマトグラフィー装置の流出液を分析するための検出手段を含むことができる。
【0020】
発明の詳細な説明
利便性のために、本明細書に言及される幾つかの用語の定義を以下に記載する。
【0021】
用語の「固定相材料」または「充填材」とは、クロマトグラフィー使用に意図されたばらの微粒子材料を意味する。この材料が充填され、移動相と接触すると、これは典型的に、すなわちクロマトグラフィーの2相のうちの1相である「固定相」と称される。すなわち、固定相は、通常カラム内に「充填」されている特定の固定相材料から構成される。語句の「クロマトグラフィー層」、「充填層」または簡単に「層」は、固定相が用いられる任意の異なる形態を表示するための一般的な用語として使用できる。固定相は、移動相によりシステムを通して運ばれる検体保持を担うクロマトグラフィーシステムの一部である。「充填」は、活性な固体、固定相、プラスクロマトグラフィーカラムに含まれる任意の固体支持体である。「固体支持体」は、固定相を保持または維持する固体であるが、典型的には、分離過程に実質寄与しない。典型的な液体クロマトグラフィーカラムにおける入口フリットまたは出口フリットは、固体支持体の例である。したがって、本発明によるインサイチューフリットは、固体支持体、充填成分(固定相材料の一部であることから)、および固定相成分(少なくともフリット内の固定相材料が分離過程に寄与する範囲で)である。「固定化固定相」は、クロマトグラフィーカラムに充填された固定相材料が、例えば、物理的引力、化学結合、またはインサイチュー重合化により固定化されている固定相である。IUPAC、Pure and Applied Chemistry69、1475〜1480頁(1997)。
【0022】
「アルキル結合」固定相または材料は、表面に結合されている基が、アルキル鎖(通常CからC18の間)を含有する結合固定相(または材料)である。「フェニル結合」固定相(または材料)は、表面に結合されている基が、フェニル基を含有する結合固定相(または材料)である。「シアノ結合」固定相(または材料)は、表面に結合されている基が、シアノアルキル基(例えば、−(CH−CN)を含有する結合固定相である。「ジオール結合」固定相(または材料)は、表面に結合されている基が、近接ジヒドロキシアルキル基(例えば、−(CH−CHOH−CHOH)を含有する結合固定相である。「アミノ結合」固定相(または材料)は、表面に結合されている基が、アミノアルキル基(例えば、−(CH−NH)を含有する結合固定相である。「キャップド」固定相(または材料)(「末端キャップド」固定相または材料としても知られている)は、立体障害のために元の試薬により置換されなかった残っている官能基(例えば、シラノール)と反応させるように意図されている第2の(通常、かさ高さのより小さい)試薬で処理された結合固定相(または材料)である。
【0023】
本発明によれば、用語の「脂肪族基」としては、典型的には1個から22個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖を特徴とする有機部分が挙げられる。複合体構造において、前記鎖は、分枝状、架橋、または交差結合されていてもよい。脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、およびアルキニル基が挙げられる。
【0024】
アルキル基としては、直鎖アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなど)、環式アルキル基(またはシクロアルキル基または脂環式基)(例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなど)、分枝鎖アルキル基(例えば、イソプロピル、tert−ブチル、sec−ブチル、イソブチルなど)、およびアルキル置換アルキル基(例えば、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基)など、1つ以上の炭素原子を有する飽和炭化水素が挙げられる。
【0025】
ある一定の実施形態において、直鎖または分枝鎖アルキル基は、主鎖に30個またはそれ以下の炭素原子、例えば、直鎖に関してはC〜C30または分枝鎖に関してはC〜C30を有し得る。ある一定の実施形態において、直鎖または分枝鎖アルキル基は、主鎖に20個またはそれ以下の炭素原子、例えば、直鎖に関してはC〜C20または分枝鎖に関してはC〜C20を有し得、18個またはそれ以下がより好ましい。同様に、好ましい環式アルキル基は、環構造において4個から10個の炭素原子を有し、より好ましくは、環構造において4個から7個の炭素原子を有する。用語の「低級アルキル」とは、鎖において1個から6個の炭素を有するアルキル基を称し、環構造において3個から6個の炭素を有するシクロアルキル基を称す。
【0026】
炭素数が他に特記されない限り、本明細書に用いられる「低級脂肪族」、「低級アルキル」、「低級アルケニル」などの「低級」とは、その部分が、少なくとも1個および8個未満の炭素原子を有することを意味する。ある一定の実施形態において、直鎖または分枝鎖低級アルキル基は、その主鎖において6個またはそれ以下の炭素原子(例えば、直鎖に関してはC〜Cまたは分枝鎖に関してはC〜C)を有し、4個またはそれ以下がより好ましい。同様に、好ましいシクロアルキル基は、環構造において3個から8個の炭素原子を有し、環構造において5個または6個の炭素を有することがより好ましい。用語の「C〜C」としては、1個から6個の炭素原子を含有するアルキル基が挙げられる。
【0027】
さらに、他に特記されない限り、用語のアルキルは、「非置換アルキル類」および「置換アルキル類」を含み、後者は、炭化水素主鎖の1個以上の炭素上の1個以上の水素を置き換える置換基を有するアルキル部分を称す。このような置換基としては、例えば、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノなど)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドなど)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート類、アルキルスルフィニル、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族部分またはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。
【0028】
「アリールアルキル」部分は、アリール(例えば、フェニルメチル(すなわちベンジル))で置換されているアルキル基である。「アルキルアリール」部分は、アルキル基で置換されているアリール基(例えば、p−メチルフェニル(すなわちp−トリル))である。用語の「n−アルキル」とは、直鎖(すなわち非分枝状)非置換アルキル基を意味する。「アルキレン」基は、対応するアルキル基から誘導された二価部分である。用語の「アルケニル」および「アルキニル」とは、アルキル類に類似の不飽和脂肪族基を称するが、それぞれ少なくとも1つの二重炭素−炭素結合または三重炭素−炭素結合を含有する。好適なアルキニル基およびアルキニル基としては、2個から約12個の炭素原子、好ましくは1個から約6個の炭素原子を有する基が挙げられる。「ビニル」基は、エチレニル基(すなわち、−CH=CH)である。「スチリル」基は、ビニル置換フェニル基である。
【0029】
用語の「芳香族基」は、1つ以上の環を含有する不飽和環式炭化水素を含む。アリール基はまた、多環(例えば、テトラリン)を形成するような芳香族ではない脂環式環またはヘテロ環式環と縮合または架橋できる。用語の「芳香族基」は、1つ以上の環を含有する不飽和環式炭化水素を含む。一般に、用語の「アリール」としては、0個から4個のヘテロ原子を含み得る5員環または6員環単環芳香族基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジンなどの基が挙げられる。「アリーレン」基は、アリール基から誘導される二価部分である。用語の「ヘテロ環式基」としては、環内の1個以上の原子が、炭素以外の元素、例えば、窒素、硫黄、または酸素である閉環構造が挙げられる。ヘテロ環式基は、飽和またはピロールおよびフランが芳香族性を有することができるような不飽和およびヘテロ環式基であり得る。これらは、キノリンおよびイソキノリンなどの縮合環構造を含む。ヘテロ環式基の他の例としては、ピリジンおよびプリンが挙げられる。ヘテロ環式基は、1個以上の構成原子で置換することもできる。
【0030】
本明細書に用いられる用語の「アミノ」とは、非置換または式−NRの置換部分を称し、式中、RおよびRは、各々独立して水素、アルキル、アリール、ヘテロシクリルであり、またはRおよびRは、結合する窒素原子と一緒になって環内に3個から8個の原子を有する環式部分を形成する。したがって、用語の「アミノ」は、他に述べない限り、ピペリジニル基またはピロリジニル基などの環式アミノ部分を含む。本明細書に用いられる用語の「アルキルアミノ」とは、結合されたアミノ基を有する上記に定義されたアルキル基を意味する。好適なアルキルアミノ基としては1個から12個の炭素原子、好ましくは1個から約6個の炭素原子を有する基が挙げられる。用語の「アルキルチオ」とは、結合されたスルフヒドリル基を有する上記に定義されたアルキル基を称する。好適なアルキルチオ基としては、1個から約12個の炭素原子、好ましくは1個から約6個の炭素原子を有する基が挙げられる。本明細書に用いられる用語の「アルキルカルボキシル」とは、結合されたカルボキシル基を有する上記に定義されたアルキル基を意味する。本明細書に用いられる用語の「アルコキシ」とは、結合された酸素原子を有する上記に定義されたアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基としては、1個から約12個の炭素原子、好ましくは1個から約6個の炭素原子を有する基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシなどが挙げられる。用語の「ニトロ」とは、−NOを意味し;用語の「ハロゲン」または「ハロ」とは、−F、−Cl、−Brまたは−Iを示し;用語の「チオール」、「チオ」または「メルカプト」とは、SHを意味し;用語の「ヒドロキシル」または「ヒドロキシル」とは、−OHを意味する。
【0031】
他に特記しない限り、上記に検討されたこれらの基を含む本発明の化合物の化学部分は、「置換」されていても「非置換」であってもよい。幾つかの実施形態において、用語の「置換」とは、その部分が、水素以外の部分(大部分の場合、水素を置き換える)に置かれた分子がその意図された化学的機能を実行できる置換基を有することを意味する。置換基の例としては、直鎖アルキルまたは分枝鎖アルキル基(好ましくは、C〜C)、シクロアルキル基(好ましくは、C〜C)、アルコキシ基(好ましくは、C〜C)、チオアルキル基(好ましくは、C〜C)、アルケニル基(好ましくは、C〜C)、アルキニル基(好ましくは、C〜C)、ヘテロ環式基、カルボ環式基、アリール基(例えば、フェニル)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アラルキル基(例えば、ベンジル)、アリールオキシアルキル基(例えば、フェニルオキシアルキル)、アリールアセトアミドイル基、アルキルアリール基、ヘテロアラルキル基、アルキルカルボニル基およびアリールカルボニル基またはアシル基など、ヘテロアリールカルボニル基、またはヘテロアリール基、(CR’R”)0〜3NR’R”基(例えば、−NH)、(CR’R”)0〜3CN基(例えば、−CN)、NO基、ハロゲン基(例えば、F、Cl、Br、またはI)、(CR’R”)0〜3C(ハロゲン)基、(例えば−CF)(CR’R”)0〜3CH(ハロゲン)基、(CR’R”)0〜3CH基(ハロゲン)、(CR’R”)0〜3CONR’R”基、(CR’R”)0〜3(CNH)NR’R”基、(CR’R”)0〜3S(O)1〜2NR’R”基、(CR’R”)0〜3CHO基、(CR’R”)0〜3O(CR’R”)0〜3H基、(CR’R”)0〜3S(O)1〜3R’基(例えば、−SOH)、(CR’R”)0〜3O(CR’R”)0〜3H基(例えば、−CHOCHおよび−OCH)、(CR’R”)0〜3S(CR’R”)0〜3H基(例えば、−SHおよび−SCH)、(CR’R”)0〜3OH基(例えば、−OH)、(CR’R”)0〜3COR’基、(CR’R”)0〜3基(置換または非置換フェニル)、(CR’R”)0〜3基(C〜Cシクロアルキル)、(CR’R”)0〜3COR’基(例えば、−COH)、または(CR’R”)0〜3OR’基、または任意の天然アミノ酸側鎖から選択される部分が挙げられ;式中、R’およびR”は、各々独立して水素、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基、C〜Cアルキニル基、またはアリール基、またはR’とR”が一緒になって、ベンジリデン基または−(CHO(CH−基である。
【0032】
また、本明細書に用いられる「置換基」は、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノなど)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドなど)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、サルフェート類、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族部分またはヘテロ芳香族部分であり得る。
【0033】
本発明は、改良されたナノカラムクロマトグラフィー装置を提供する。「ナノカラム」は、CE、ナノLCおよびCECに使用される、当業界に知られたものなどのキャピラリーカラム(すなわち、<100μm、典型的には50〜75μm)であり得る。このようなキャピラリーカラムが好ましい。なぜならば、そこで形成される本発明のインサイチューフリットは、高いクロマトグラフィー圧(断面表面積が小さいことによる)に抵抗する能力がより高いからである。また、キャピラリーカラムが加熱される場合、例えば、その中の材料が焼結される場合、キャピラリーカラムは、熱を散逸させる能力がより高い。キャピラリークロマトグラフィーカラムは、断面が円形であり得、かつ他の材料、例えば、ポリイミドによって被覆され得る石英ガラスキャピラリー管を一般に含む。
【0034】
本発明の装置においてナノカラム(またはキャピラリーカラム)の一部は、微粒子固定相材料(例えば、約1μmから3μmの直径を有する結合シリカ粒子)によって充填されている。本明細書に用いられる用語の「カラム」は、固体の円筒状容器、例えば、中空の石英ガラスキャピラリーを言うこともあり、前記用語は、円筒状容器内にある固定相材料の充填層を言うこともあり、また、前記用語は、双方の態様を言うこともある。ナノカラムは、石英ガラス、ガラス、ステンレス鋼、ポリマー、セラミックまたはそれらの混合物から作製できる。本発明の特定の一態様は、石英ガラスカラム、特にポリイミドによって被覆された石英ガラスカラムに適用される。また、本発明に用いられるナノカラムは、固定相を受け入れるための円筒状内部を有する。このようなナノカラムの内径は、約10μmから約1.0mmである。他の実施形態において、内径は約25μMから約320μmであるか、さらに約500μmである。本発明の充填カラムは、意図された適用によって種々の長さであり得るが、典型的な長さは凡そ20cmである。
【0035】
したがって、本発明の典型的なクロマトグラフィー装置は、ナノカラム、例えば、微粒子固定相材料で充填されたキャピラリーおよび固体支持体を含む。「インサイチューフリット」と呼ぶことのできる固体支持体は、固定相材料に隣接し、それと一体化している。
【0036】
多種多様な微粒子固定相材料を本発明に使用できる。したがって、本発明の固定相またはクロマトグラフィー装置の充填材は、「微粒子固定相材料」または「固定相材料の粒子」から作製される。さらに、前記固定相は、一体材料とは対比的に粒子性を保持している。一体材料は、例えば、国際PCT出願PCT/US第02/25,193号に記載されている。
【0037】
例えば、固定相材料の粒子は、約0.5μmから約10.0μm、またはより具体的に約3μmから約5.0μmの平均サイズ/直径を有し得る。ある一定の状況では、粒径分布は、平均の10%以内である必要がある。典型的には、固定相材料は多孔性であるが、非多孔性であってもよい。なお、固定相材料は、約70Åから約300Åの平均孔径;または約50m/gから約250m/gの比表面積;または約0.2cm/gから1.5cm/gの細孔容積を有し得る。しかし、吸着表面の化学的修飾が、固定相材料の表面積および孔隙量に影響を及ぼし得ることに注意する必要がある。例えば、オクタデシルシランとの結合後に表面積が、350m/gから170m/gに減少し得る結合シリカの場合、この効果は重要である。
【0038】
不規則形状の粒子よりも球状粒子を使用する方が一般に好ましい。不規則形状の材料は、球状材料よりもしばしば充填しにくいことが、当業界ではよく知られている。また、同じサイズの不規則形状の材料で充填したカラムよりも、球状材料は充填し易く、また、より大きな充填層安定性を示すことも知られている。
【0039】
一般に、HPLCカラムに使用するための当業界で知られた任意の微粒子固定相材料は、本発明のクロマトグラフィー装置にも使用できる。使用される好適な微粒子固定相材料の例としては、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、セラミック材料、有機ポリマー、またはそれらの混合物が挙げられる。好ましい固定相材料は、表面改質剤と結合されている。そのような表面改質剤は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ジオール基、ニトロ基、エステル基、または埋め込み極性官能基を含有するアルキル基またはアリール基があり得る。例えば、アルキル基表面改質剤基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、またはオクタデシル基であり得る。適切な微粒子固定相材料のさらなる例としては、アルキル結合シリカ、フェニル結合シリカ、シアノ結合シリカ、ジオール結合シリカ、アミノ結合シリカ、およびそれらの混合物が挙げられる。好適な材料はWaters Chromatography(米国マサチューセッツ州ミルフォード所在)、Alltech Associates社(米国イリノイ州ディアフィールド所在)、Beckman Instruments社(米国カリフォルニア州フラートン所在)、Gilson社(米国ウィスコンシン州ミドルトン所在)、EM Science(米国ニュージャージー州ギブスタウン所在)、Supelco社(米国ペンシルバニア州ベルフォンテ所在)などの種々の販売元から容易に入手できる。
【0040】
本発明の使用し得る固定相材料のさらなる例としては、例えば、国際PCT出願PCT/US第02/25,250号およびPCT/US第00/03,052号(WO第2000/45,951号)に記載されている多孔性無機/有機ハイブリッド粒子が挙げられる。「ハイブリッド」、すなわち「多孔性無機/有機ハイブリッド粒子」におけるようなハイブリッドは、有機官能基が無機構造の内部または「骨格」無機構造との両方と、ハイブリッド材料表面と同様、一体化している無機ベースの構造を含む。ハイブリッド材料の無機部分は、例えば、アルミナ、シリカ、酸化チタンもしくは酸化ジルコニウムまたはセラミック材料であり得る。好ましい実施形態において、ハイブリッド材料の無機部分は、シリカである。無機部分がシリカである好ましい実施形態において、「ハイブリッドシリカ」は、式SiO/(RSiOまたは式SiO/[R(RSiOを有する材料を言い、式中、RおよびRは、独立してC〜C18脂肪族基、スチリル基、ビニル基、プロパノール基または芳香族部分(アルキル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ヒドロキシル基、ジオール基、ニトロ基、エステル基、イオン交換基または埋め込み極性官能基でさらに置換されていてもよい)であり、Rは、2個以上のケイ素原子を架橋している置換または非置換C〜C18アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基またはアリーレン部分であり、pおよびqは0、1または2であり、但し、p+q=1または2であり、およびp+q=1である場合t=1.5であり、およびp+q=2である場合t=1であり、rは0または1であり、但しr=0である場合t=1.5であり、およびr=1である場合t=1であり、mは、2以上の整数であり、およびnは、0.03から1、より好ましくは、0.1から1、さらにより好ましくは、0.2から0.5の数値である。Rは、官能化基Rによって、さらに置換されていてもよい。用語の「官能化基」には、例えば、オクタデシル(C18)またはフェニルなど、クロマトグラフィーの固定相に、ある一定のクロマトグラフィー官能性を与える有機基が含まれる。このような官能化基は、例えば、誘導化またはコーティングおよび後期架橋によって基材に結合している、例えば、本明細書に開示されているような表面改質剤の中に存在し、表面改質剤の化学的特性を基材に与える。一実施形態において、このような表面改質剤は、式Z(R’)Si−Rを有し、式中、Z=Cl、Br、I、C〜Cアルコキシ、ジアルキルアミノ、例えば、ジメチルアミノであり、またはトリフルオロメタンスルホネートであり;aおよびbは、a+b=3という条件で、各々0から3の整数であり;R’は、C〜Cの直鎖、環式または分枝状アルキル基であり、Rは官能化基である。同様に、R’は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、またはシクロヘキシルであってもよく、好ましくはR’はメチルである。
【0041】
本発明の「インサイチューフリット」は、固定相材料と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)のポリマーネットワークとの混合物であり得る。一定の実施形態において、特に大きな直径のナノカラムが用いられる場合、インサイチューフリットは、場合によっては焼結されていてもよい。
【0042】
一般に、本発明のインサイチューフリットは、固定相材料、溶媒およびポリマー試薬をナノカラム(固定相を受けるための円筒状内部を有する)の一端に配置して作製できる。前記ポリマー試薬は、「硬化」後に架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)を生じさせる化合物である。蒸発により溶媒を除去するため、ナノカラム中の混合物を室温以上の温度で維持する。次に前記ナノカラムを、硬化を促進するためにさらに加熱できるか、またはより高い温度で焼結できる。
【0043】
得られたカラム内材料は、ポリマーネットワークの中に顕微鏡で肉視で確認できる個別的粒子の懸濁液である。ポリ(ジオルガノシロキサン)が硬化すると、それは、それ自体と反応し、他のポリマー試薬が架橋を形成し、それらが全て一緒になって微粒子固体相材料中にネットワークまたはマトリクスを形成する。したがって、このような混合物は、互いに相互作用のない2つの別個の成分の単純な混合物とは対比的に、「均質」な均一混合物である。このように、最初の生成物は一体物ではなく、固定化された固定相である。このようにして調製されたインサイチューフリットを、次に焼結でき、これによってフリットをさらに強化するさらなる構造的変化が生じる。
【0044】
本発明に用いられるポリ(ジオルガノシロキサン)ポリマー類としては、メチルクロロシラン類、エチルクロロシラン類およびフェニルクロロシラン類など、クロロシラン類などの前駆体から形成されるものが典型的に挙げられる。また、ポリ(ジオルガノシロキサン)ポリマー類は、ポリマー中に分枝状の重合可能なモノマーが含まれる場合は架橋もでき、引き続いて反応できる。本発明に用いられるポリマー試薬は、それら自体がポリマーであってもよい。特に好ましいポリマーは、ポリ(ジメチルシロキサン)(「PDMS」)である。例えば、米国特許第4,374,967号、米国特許第4,529,789号、米国特許第4,831,070号、米国特許第4,882,377号、米国特許第6,169,155号、および米国特許第5,571,853号を参照されたい。
【0045】
本明細書に記載されているポリマー類は、「ポリ(ジメチルシロキサン)」などと称されるが、当業者は、このようなポリマーが、例えば、モノメチルシロキサンおよび他のモノ−またはジオルガノシロキサン単位などの他の単位量を含有し得ることを認識するであろう。これらの単位は、実質的にポリマーの性質を変化させない限り、ポリマーの合成中に形成されことが多い。
【0046】
本発明のポリ(ジオルガノシロキサン)は、式−(−RSiO−)−の繰り返し単位を有するポリマー(式中、RおよびRは、独立して水素、C〜C18脂肪族基、芳香族基または架橋基である。)であり得る。あるいは、前記ポリ(ジオルガノシロキサン)は、式(−RSiO−)を有するポリマー(式中、RおよびRは、独立して水素、C〜C18脂肪族基、芳香族基または架橋基であり、nは繰り返し単位数を表す。例えば、RおよびRは、各々メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルを含むC〜Cアルキル基などの直鎖状、または分枝状アルキル基または環式アルキル基であり得る。)であり得る。
【0047】
架橋PDMS(または「シロキサン」)は、種々の「ポリマー試薬」、例えばオルガノ水素シロキサン架橋剤によって硬化されるポリジオルガノシロキサンから作製できる。本明細書に用いられる用語の「架橋」基は、重合可能なアルケニル基を含有する炭化水素基であるが、「架橋基」は、そのような基の重合化生成物もまた称し得る。架橋基の例としては、ビニル基またはスチリル基が挙げられる。例えば、好適な触媒(例えば、白金化合物)の存在下、架橋可能なポリマー試薬は、S−H結合を含有する他のポリマー試薬(例えば、オルガノ水素シロキサン)と反応させることによって、材料を架橋し得る。また、本発明に用いられるポリマー試薬としては、架橋可能な基を有さないポリ(ジメチルシロキサン)を挙げることができる。これらの「非官能性」ポリマーは、実質的に架橋反応を受けず、例としては、一般式HO[Si(CHO]Hのポリマーが挙げられ、式中、mは、約50から約1000の平均値を有する。
【0048】
一般に、本発明に用いられるポリマー試薬の1つは、ポリオルガノシロキサン上に、好適な架橋剤と反応するビニル基を含有する。好適な架橋剤は、Si−H結合を有するオルガノ水素シロキサンであり、一般に1分子当たり平均1つ以上のSi−H結合、1個のケイ素原子当たり1つ以下のSi−H結合を有する。ケイ素原子上の他の置換基は、例えば、低級アルキル基であり得る。本発明の実施に使用できるオルガノ水素シロキサン化合物の一例は、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン(またはテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン)である。他の架橋剤は、ジメチル水素シロキサン−末端ポリジメチルシロキサン、HMeSi(OMeSi)Hである。架橋ポリマー試薬のさらなる例は、ジメチルシロキサン単位、メチル水素シロキサン単位およびトリメチルシロキサン単位のポリマーを含む。
【0049】
したがって、本発明に用いられるポリマー試薬は、少なくとも4つの成分:(1)ケイ素結合アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、(2)非官能性オルガノポリシロキサン、(3)オルガノ水素ポリシロキサンおよび(4)触媒、を典型的に含む。
【0050】
本発明の一態様において、ポリ(ジオルガノシロキサン)は、ポリ(ジメチルシロキサン)ポリマー類から選択される。同様に、架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)は、架橋ポリ(ジメチルシロキサン)ポリマー類からなる群から選択される。
【0051】
例えば、架橋可能なポリマー試薬は、1分子当たり平均して少なくとも2つのケイ素結合アルケニル基を含有し得る。好適なアルケニル基は、ビニル基、アリル基、ブテニル(例えば、1−ブテニル)基およびヘキセニル(例えば、1−ヘキセニル)基など、2個から約6個の炭素原子を含有する。前記アルケニル基は、末端、ペンダント(非末端)、または末端とペンダントの双方の位置に位置し得る。残りのケイ素結合有機基は、脂肪族不飽和のない1価の炭化水素基および1価のハロゲン化炭化水素基(例えば、アルキル基、特にメチル、エチル、プロピルおよびブチルなどの低級アルキル基)ならびにフェニルなどのアリール基;および3,3,3−トリフルオロプロピルなどのハロゲン化アルキル基であり得る。架橋可能なポリマー試薬は、直鎖状であり得るか、または3官能性シロキサン単位に分枝状を含み得る。ポリ(ジオルガノシロキサン)試薬の例は、一般式RSiO(RSiO)SiR(式中、各Rは、独立してアルキル基、または脂肪族不飽和のないハロゲン化炭化水素基(例えば、アルキル基またはアリール基)であり;Rは、アルケニル基であり;nは、都合のよい粘度となる値を有する。)であり得る。典型的にnは、約200から約600である。好ましくは、Rはメチルであり、Rはビニルである。
【0052】
例えば、架橋可能なポリマー試薬、特に本発明に有用なポリ(ジオルガノシロキサン)化合物としては、以下のもの:
【0053】
【化1】

(式中、x+y=nであり、nは、約100から約1000である。)などが挙げられる。好ましいポリ(ジオルガノシロキサン)ポリマー試薬としては、ジメチルビニルシロキシ−末端ポリジメチルシロキサン類が挙げられる。
【0054】
オルガノ水素シロキサンポリマー試薬の例としては、式RSi(OSiRH)を有するもの(式中、Rは、1個から18個の炭素原子を有する分枝状または非分枝状アルキル基またはアリール基であり、Rは、1個から4個の炭素原子を有する分枝状または非分枝状アルキル基である。)が挙げられる。好適なR基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、2−メチルプロピル、ペンチル、2−メチルブチル、2,2−ジメチルプロピル、ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、ヘプチル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、2,4−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルペンチル、3−エチルペンチル、2,2,3−トリメチルブチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルおよびオクタデシル、フェニル、トリルおよびベンジルが挙げられる。Rは、n−プロピルであることが好ましい。好適なR基の例としては、メチル、エチル、プロピル、n−ブチルおよび2−メチルプロピルが挙げられる。
【0055】
一般に、ジメチルシロキサンまたはメチル水素シロキサンは、約10Daから約10,000Daの平均分子量、より具体的には、約100Daから約1,000Daの平均分子量を有し得る。同様に、ビニル置換ジメチルシロキサンは、約500Daから約100,000Daの平均分子量、より具体的には、約10,000Daから約40,000Daの平均分子量を有し得る。
【0056】
前記ポリマー試薬を反応させる、すなわち、架橋させるか、加熱によるインサイチューで「硬化」させる。このようにして生成させたインサイチューフリットを、焼結によってさらに固定化できる。一実施形態において、硬化ステップは、前記混合物を約1時間から約48時間の範囲の時間、約25℃と約150℃との間の温度に加熱することを含む。
【0057】
前記硬化ステップは、少量の白金ヒドロシリル化触媒、例えば、ケイ素結合水素とビニル基との間の反応を触媒する白金触媒の添加により促進できる。より一般的に、ヒドロシリル化触媒は、当業界に知られた任意の活性遷移金属触媒、特に白金以外にロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、またはイリジウムを含むものであり得る。好適な触媒としては、クロロ白金酸触媒、米国特許第2,823,218号およびクロロ白金酸と有機ケイ素化合物との反応生成物が挙げられる。例えば、米国特許第3,419,593号を参照されたい。また、米国特許第3,159,601号および米国特許第3,159,662号に記載された白金炭化水素複合体および米国特許第3,723,497号に示された白金アセチルアセトネートならびに米国特許第3,220,972号に記載された白金アルコレート触媒も適用できる。選択されたいずれの具体的白金触媒に関しても、実践者は、硬化を促進するために最適な触媒有効量を決定することができるであろう。白金触媒は、製剤全体の100万重量部当たり約0.1重量部から40重量部の白金を提供する上で十分な量で有効に使用されてきた。
【0058】
触媒は、アルケニル基とSi−H基との間の付加反応を促進することのできる任意の触媒であり得る。白金族金属触媒としては、例えば、クロロ白金酸、アルコール修飾クロロ白金酸、クロロ白金酸とオレフィンとの配位化合物、ビニルシロキサンまたはアセチレン化合物、テトラキス−(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムなどが挙げられ、その中で特に白金化合物が好ましい。
【0059】
本発明の組成物中、触媒は、他の成分の総量を基準にして通常、0.1ppmから100ppmの量で存在するが、具体的な状況に関する適切な量の決定は、技術実践者によって典型的に行われるルーチン実験の範囲内にある。
【0060】
本発明に用いられるポリ(ジオルガノシロキサン)ポリマーは、メチルクロロシラン類、エチルクロロシラン類およびフェニルクロロシラン類などのクロロシラン類を含む前駆体から形成されるものが典型的に挙げられる。ポリ(ジオルガノシロキサン)ポリマーは、分枝状重合可能モノマーが、そのポリマー中に含まれる場合は、架橋することもでき、引き続いて反応させることができる。
【0061】
種々の知られた添加剤を、ポリマー試薬に含めることができる。例えば、ヒュームドシリカ、シリカエアロゲル、沈降シリカ、粉砕シリカなどの無機充填材を、硬度、機械的強度など、ポリマーネットワークの物理的性質を調整するために添加できる。環状ポリメチルビニルシロキサン化合物、アセチレン化合物、有機リン化合物などの一定の制御剤を、前記組成物に添加することができ、それによって、硬化反応の速度を制御する。このような添加剤は、望ましい特徴をさらに与えるために添加できるが、添加剤は、クロマトグラフィー効率または生じる材料の有用性を実質的に減じないことが好ましい。
【0062】
したがって、さらに他の実施例において、本発明の架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)ポリマー類は、以下の実験単位を与えるポリマー試薬から作製できる:1つの単位は、主にジメチルシロキサン(MeSiO)繰り返し単位を含むことができ、これはポリマー中、合計シロキサン単位の80モル%から96.5モル%であり得る。ポリオルガノシロキサンの第2の単位は、モノメチルシロキサン(MeSiO1.5)であり得、これはポリマー中、合計シロキサン単位の2モル%から10.0モル%であり得る。MeSiO1.5基は、モノメチルシロキサン単位がない場合よりも高い溶融温度を与える(ジメチルシロキサン単位のみのポリマー鎖は、凡そ−40℃で結晶化するが、モノメチルシロキサン単位をシロキサンポリマー鎖に沿ってランダムに配置すると結晶相が避けられる)。第3の単位は、トリメチルシロキサン単位(MeSiO0.5)で、これは、ポリマー鎖に対して末端ブロッカーとして働き、合計シロキサン単位の1.25モル%から6.0モル%であり得る。シロキサンポリマーにおける最後の単位は、ビニル含有シロキサン単位、例えば、ジメチルビニルシロキサン(Me(HC=CH)SiO0.5)であり得、そのビニル基は末端位にある(末端ビニル基は、間にあるビニル基(すなわち、Me(HC=CH)SiO)よりも迅速に硬化する)。末端ビニル単位は、トリメチルシロキサン単位と関連して、末端ブロッカーとしても働き、ポリマー中、合計オルガノシロキサン単位の0.25モル%から4モル%であり得る。
【0063】
他の実施形態において、架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)は、ジメチルビニル−末端ジメチルシロキサンなどのビニル置換ジメチルシロキサンを含むポリマー試薬の反応により生じる。ポリマー試薬の他の特定例としては、ジメチルシロキサン、メチル水素シロキサン、ジメチルビニル化シリカ、トリメチル化シリカ、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、およびテトラ(トリメチルシロキシ)シランが挙げられる。
【0064】
ポリ(ジメチルシロキサン)ポリマー類の例としては、the Dow Corning社(米国ミシガン州ミッドランド所在)により、商標Sylgardで販売されているものが挙げられる。PDMSポリマーは、商品として入手できるSylgardキットの前駆体と触媒とを適切な比率で混合した後、硬化することにより容易に生成できる。Sylgardポリ(ジメチルシロキサン)ポリマー類は、成分Aと成分Bとの混合物を硬化することによって容易に合成でき、ここでAは、例えば、ジメチルビニル−末端ポリジメチルシロキサンであり、Bは、例えば部分的に水素置換されたメチル測基を有するトリメチル−末端シロキサンである。種々の特性を有するポリマー類は、単にA対Bの重量比およびAとBのキット成分の分子量と官能基を変えることによって合成できる。例えば、商標Dow Sylgard 527として知られている製品において、成分A、成分B双方の平均分子量分布は幅広く、20,000グラム/モル付近が中心であり、成分Bの官能価は約102である。
【0065】
一般に、Sylgardキットは、PDMSポリマーの容易な合成を可能にする。Sylgardポリ(ジメチルシロキサン)ポリマー類は、成分Aと成分Bとの混合物を硬化することによって容易に合成でき、ここでAは、例えば、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンであり、Bは、例えば部分的に水素置換されたメチル測基を有するトリメチル−末端シロキサンである。種々の特性を有するポリマー類は、単にA対Bの重量比およびAとBのキット成分の分子量と官能基を変えることによって合成できる。
【0066】
より一般的に、本発明のポリ(ジオルガノシロキサン)ポリマー類は、ビニル末端ブロックポリ(ジオルガノシロキサン)、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン)、成分「A」および他のオルガノシロキサン、成分「B」から、場合によっては触媒を用いて調製できる。種々のポリマーが、AとBの組成ならびに成分Aと成分Bの相対量を変えることによって、同様に合成できる。トリオルガノシロキシ末端ブロックポリ(ジメチルシロキサン)は、「A」と称される。トリオルガノシロキシ基は、1つのビニル基およびケイ素に結合した2つのメチル基、またはケイ素に結合した1つのビニル基、フェニル基またはメチル基を含有し得る。例えば、Aは以下の化学構造を有し得る:
(CH=CH)(CHSi−(OSi(CHO−Si(CH(CH=CH)。
【0067】
成分Aは、クロマトグラフィーカラムにおいて、また、本発明の方法において、好適なクロマトグラフィー特性を示す任意のトリオルガノシロキシ末端ブロックポリ(ジメチルシロキサン)であり得る。分散度指標値は、Aに存在する全てのポリマー種の濃度を考慮に入れ、所与のポリマーの重量平均分子量を、数平均分子量で割ることによって得られる。異なる分散度指標および分子量分布を得るために、2種以上の異なる分子量のポリ(ジメチルシロキサン)ポリマーを混合できる。Aの好ましい実施形態を調製する他の方法は、例えば、米国特許第3,445,426号に記載されている。Aのトリオルガノシロキシ末端ブロック基は、ジメチルビニルシロキシ基であることが好ましい。
【0068】
オルガノシロキサンコポリマー「B」は、部分的に水素置換されたメチル側基を有するトリメチル末端シロキサンであり得る。これらのポリマー類は式(CH(CH=CH)SiO1/2、(CHSiO1/2、およびSiOの単位を含有し得る。米国特許第2,676,182号。これらのコポリマー類は、ヒドロキシ基の一定の重量パーセンテージを含有するが、これらは、トリオルガノシロキサンキャッピング剤の濃度を変えることにより変化させることができる。例えば、シリカヒドロゾルは酸性条件下、ヘキサメチルジシロキサンまたはトリメチルクロロシランと反応でき、続いて1つのビニル基およびケイ素に結合した2つのメチル基を含有するシラザン、シロキサンまたはシランと反応できる。
【0069】
成分AおよびBは、好適な触媒存在下、反応して弾性ゲルを生じる。好ましいクラスの触媒としては、ケイ素結合水素原子およびオレフィン二重結合、特にケイ素結合ビニル基との間の反応を触媒することが知られており、Aに可溶性である白金組成物が挙げられる。特に好適なクラスの白金含有触媒は、クロロ白金酸と一定の不飽和有機ケイ素化合物から調製された米国特許第3,419,593号に記載されている複合体である。前記白金触媒は、100万重量部のA当たり、少なくとも1重量部の白金を提供する上で十分な量において存在し得るが、できるだけ少量の触媒を用いることが好ましい。成分AおよびBを白金触媒と共に含有する混合物は、室温で混合すると直ちに硬化を開始できる。したがって、アセチレンアルコール類、特に2−メチル−3−ブチン−2−オールなどの阻害剤を含む、米国特許第3,445,420号に記載されている阻害剤などの触媒阻害剤を用いることが好ましいであろう。しかし、一旦、硬化反応が開始すると、反応は、あたかも阻害剤が存在しないかのように、同じ速度で進行する。阻害された組成物は、典型的に約70℃以上の温度で、この組成物を加熱することによって硬化される。触媒、特に極めて低濃度で活性な白金触媒などの触媒が用いられる場合は、最終的クロマトグラフィーカラムから、触媒の全痕跡を完全に除去するように注意しなければならない。残った触媒は、分析化合物がクロマトグラフィーカラム内の汚染された固定相材料を通過する際に、それらとの反応の触媒作用を引き起し、したがって、前記材料の有用性を損なう恐れがある。Sylgard 184の場合、23℃で24時間、または65℃で4時間、または100℃で1時間または150℃で15分を用いて硬化させることが、製造元により推奨されているが、大量であれば、硬化温度に到達するためにより長い時間を要するであろう。23℃では、前記材料は24時間のうちに硬化していて扱えるようになるが、完全な機械的および電気的特性は7日後になってから十分に達成されるであろう。
【0070】
したがって、本発明は、固定相材料の粒子と、架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークとの均質混合物を含むクロマトグラフィーナノカラムにおいて固定相材料を固定化するためのインサイチューフリットに関し、ここにおいて、前記粒子は前記ネットワーク中に懸濁している。
【0071】
同様に、本発明は、微粒子固定相材料および前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化しているインサイチューフリットを含む分子分離用手段に関する。前記インサイチューフリットは、固定相材料の粒子と、架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は、前記ネットワーク中に懸濁している。
【0072】
さらなる一実施形態において、本発明は、固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラム、前記ナノカラム内に充填された微粒子固定相材料、および前記ナノカラム内にあって前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化しているインサイチューフリットを含むカラムクロマトグラフィー装置に関する。前記インサイチューフリットは、固定相材料の粒子と、架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は、前記ネットワーク中に懸濁している。
【0073】
本発明のカラムクロマトグラフィー装置の有用性を最大化するために、固体相材料に対するポリマー成分の相対量は、固定相を満足のいくように固定化する上で十分高いことが必要である。他方、ポリマー成分の相対量は、固体相材料それ自体のクロマトグラフィー分割特性を実質的に変化させないように十分低いことが必要である。事実、ポリマー成分の相対量が高すぎると、生じる逆圧は実行不可能な高さになり得る。固体相材料に対するポリマー成分の最適な相対量は、正確な状況に依存するが、当業者は、本発明の目的に従って、ルーチン実験だけで適切な組成を確かめることができるであろう。例えば、本明細書に記載されている粒子(固定相材料の)とポリマーネットワーク(架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)の)との均質混合物は、凡そ10:1(w/w)の組成、または15:1(w/w)の組成、またはさらに20:1(w/w)の組成、またはさらに25:1(w/w)の組成であり得る。幾つかの場合において、前記均質混合物はさらに、凡そ50:1(w/w)の粒子:ポリマーネットワーク組成、またはさらに70:1(w/w)の組成、または100:1(w/w)の組成、またはさらに1000:1(w/w)の組成であり得る。このような相対量は、前記材料の製造に含まれることになる各試薬または成分の化学量論的等価性を算出または予測することによって得ることができる。同様に、このような比率は、得られた生成物の遡及的実験分析、例えば、燃焼分析、または他のこのような方法によって決定できる。
【0074】
また、本発明は、カラムクロマトグラフィー装置と、および検出手段、導入手段または受入れ手段から選択される少なくとも1つの成分とを含む分離機器に関する。種々の検出手段、導入手段および受入れ手段が、例えば、HPLCおよび他の一般的な分析クロマトグラフィー法において等価の、またはさらに同一の機器が使用されるのと類似の様式で、本発明により使用し得ることを当業者は認識するであろう。前記前記カラムクロマトグラフィー装置は、固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラム、前記ナノカラム内に充填された微粒子固定相材料、および前記ナノカラム内にあって、前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化しているインサイチューフリットを含み得る。前記インサイチューフリットは、固定相材料の粒子と、架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は、前記ネットワーク中に懸濁している。前記受入れ手段は、前記ナノカラムが、検出手段または導入手段のいずれかに、操作可能に連結している配置にナノカラムを保持することができる。
【0075】
前記検出手段は、前記ナノカラムに操作可能に連結しており物理化学的性質(光吸収/発光、導電性など)を測定することができる。例としては、HPLC検出器として一般的に使用されているものなどの検出器が挙げられる。このような検出器は、例えば、屈折率、UV/Vis吸収または発光(一定の波長または変化する波長における)、蛍光(例えば、レーザ源と共に)、導電性、分子質量(質量分析計により)および蒸発光散乱を測定する。光検出器は、液体クロマトグラフィーシステムに使用されることが多い。これらのシステムにおいて、前記検出器は、低容量フローセルを通過する際の光ビームを流動するカラム流出液に通す。前記セルを通過するサンプル成分のUV吸収、蛍光発光または屈折率の変化(使用される検出器のタイプに依存する)によって生じる光強度の変化が、出力電圧の変化としてモニターされる。これらの電圧変化は、ストリップチャート記録計上に記録され、保持時間およびピーク面積のデータを提供するために、積分計またはコンピュータに入れられることが多い。使用される一般的な検出器は、紫外線吸収検出器である。このタイプの波長変化検出器は、約190nmから約460nm(または、さらに約600nm)で操作される。
【0076】
前記導入手段は、前記ナノカラムに操作可能に連結しており、液体をナノカラム内へ導くことができる。液体クロマトグラフィーにおいてインジェクタとポンプは最も一般的な導入手段である。サンプル導入の最も単純な方法は、注入バルブを使用することであるが、サンプル導入がオートサンプラーとマイクロプロセッサの補助で行われる自動サンプリング装置を組み込んでもよい。液体クロマトグラフィーにおいて、液体サンプルは直接導入でき、固体サンプルは、適切な溶媒に溶解させるだけでよい。溶媒は、移動相である必要はないが、検出器、カラムまたは成分の干渉を避けるように選択されることが多い。液体クロマトグラフィーシステム用のインジェクタは、高い再現性で高圧下、少量の液体サンプルを注入する可能性を提供する必要がある。それらはまた、バンド広幅化を最小とし、可能性のある流動妨害を最小化する必要がある。サンプリング装置の一例は、マイクロサンプリングインジェクタバルブである。それらの優れた特性のため、Rheodyneインジェクタなどのバルブは、極めて一般的である。なぜならば、これらの装置は高温においても、有意な流動妨害なしで加圧カラム内へ再現性よくサンプル導入を可能にしており、また、注入容量は60nLと少量であるからである。
【0077】
ポンプ手段の例としては、溶媒を充填固定相層に推し進めることのできる高圧ポンプが挙げられる。層粒子が小さくなるほど、担持カラムはより狭くなり、より高い圧力が必要となる。このようなポンプは、電気的フィードバックシステムおよびポンプに一定の圧力を維持させる多ヘッド構造を有することが理想的である。ヘリウム掃流またはより良好な真空脱気の、一体化した脱気システムを有することが好ましい。
【0078】
さらに、本発明は、固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラムを提供するステップ、および前記ナノカラム内に固定相を形成するステップによって製造するクロマトグラフィー装置に関する。このような固定相は、微粒子固定相材料および前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化しているインサイチューフリットを含み得、前記インサイチューフリットは、固定相材料の粒子と、架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は、前記ネットワーク中に懸濁している。
【0079】
フリット性能の最も具体的な試験の1つは、HPLC分離において遭遇する典型的圧力(凡そ2700psi)に耐える能力である。本発明のインサイチューフリットは、ナノカラムにおける高圧に耐えることができる。上記のとおり、インサイチューフリットの強度は、焼結によって強化でき、したがって、より高い圧力を可能にする。本発明のインサイチューフリットは、通常固定相を通って流動する液体に印加される少なくとも約1,000psiの圧力に物理的に耐える能力がある。他の実施例において、インサイチューフリットは、固定相を通って流動する液体に印加される少なくとも約10,000psiのクロマトグラフィー圧に物理的に耐える能力がある。さらに他の実施例において、本発明のインサイチューフリットは、固定相を通って流動する液体に印加される少なくとも約20,000psiのクロマトグラフィー圧に物理的に耐える能力がある。
【0080】
典型的に、インサイチューフリットは、約0.25mmから約2.5mmの長さであり、約0.5mmから約1.0mmの長さであり得る。
【0081】
また、インサイチューフリットは、通常ナノカラム内の充填層の一端に、クロマトグラフィー装置の出口フリットまたは入口フリットとして配置されている。
【0082】
下記に例示されるように、本発明のインサイチューフリットは、2.3未満かそれに等しいテーリング係数を有し得る。
【0083】
カラム充填法は、一般に当業界に知られており、例えば、Colonら、J.Chromatog.887、43頁(2000)を参照されたいが、主に充填の機械的強さ、その粒径および粒径分布および充填されるカラムの直径に依存する。直径が約20μm超の粒子に典型的に用いられる乾燥充填などの従来のカラム充填法は、典型的に数十ミクロンの範囲の直径を有する小型のキャピラリーカラムにとって有用ではない。直径が1μmと20μmとの間の粒子には、スラリー法が使用できる。スラリー充填においては、層を形成している粒子は、適切な液体または液体混合物中に、スラリーとして懸濁される。スラリーの調製には多くの液体または液体混合物が使用できるが、その主な要件は、液体が充填粒子を完全に濡らして充填材の十分な分散を提供することである。次に前記スラリーを高圧下、場合によっては機械的攪拌、例えば、音波処理を用いて、カラム内へポンプで注入する。
【0084】
したがって、本発明は、
a)固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラムを提供するステップと;
b)固定相を前記ナノカラム内に形成するステップと[前記固定相は、
i)微粒子固定相材料と;および
ii)前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化しているインサイチューフリット(前記インサイチューフリットは、固定相材料を含む粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)を含むポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は前記ネットワークに懸濁している。)とを含む。]を含むクロマトグラフィー装置を作製する方法に関する。「固定相を形成する」ステップは、
a)前記固定相材料、溶媒、および架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)の合成前駆体の混合物を調製するステップと;
b)前記ナノカラムの末端にステップ(a)で調製された前記混合物を導入するステップと;
c)前記溶媒を室温で蒸発させるステップと;
d)ナノカラムとその中の混合物とを、約70℃から約150℃の間の温度に、約0.5時間から約3時間の範囲の時間、加熱して乾燥混合物を硬化することによりインサイチューフリットを製造するステップと;および
e)ナノカラムとその中のインサイチューフリットとを、約250℃から約350℃の間の温度に、約5秒間から約30秒間の範囲の時間加熱することによりインサイチューフリットを場合によっては焼結するステップと、を含み得る。
【0085】
同様に、本発明は、
a)固定相材料、溶媒、および架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)を生成するポリマー試薬の混合物を調製するステップと;
b)前記ナノカラムの末端にステップ(a)で調製された前記混合物を導入するステップと;
c)前記溶媒を室温で蒸発させるステップと;
d)ナノカラムとその中の混合物とを、約70℃から約150℃の間の温度に、約0.5時間から約3時間の範囲の時間加熱して乾燥混合物を硬化することによりインサイチューフリットを製造するステップと;および
e)ナノカラムとその中のインサイチューフリットとを、約250℃から約350℃の間の温度に、約5秒間から約30秒間の範囲の時間、加熱することによりインサイチューフリットを場合によっては焼結するステップと、を含むクロマトグラフィー装置を作製する方法を開示する。
【0086】
前記ポリマーは、さらなる介入なしに架橋、すなわち「硬化」し得るが、前記硬化ステップは、前記混合物を約20℃から約40℃の間の温度に、約5時間から約35時間の範囲の時間加熱した後、直ちに前記混合物を約70℃から約150℃の間の温度に、約0.5時間から約3時間の範囲の時間加熱するさらなるステップを含み得る。あるいは、前記硬化ステップは、前記混合物を室温に約1日間加熱し、次いで前記混合物を約110℃の温度に約2時間加熱することを含み得る。同様に焼結ステップは、特に前記インサイチューフリットの直径が30μm超である場合、前記混合物を約250℃から約350℃の間の温度に、約5秒間から約30秒間の範囲の時間加熱することを含み得る。さらに前記焼結ステップは、特に前記インサイチューフリットの直径が30μm超である場合、混合物を約300℃の温度に約15秒の時間加熱することを含み得る。他のプロトコルは、前記最初の混合物を、25℃に24時間放置するか、または前記混合物を40℃から150℃に加熱することを含む。
【0087】
また、本発明は、本明細書に記載されたクロマトグラフィー装置および材料を使用する方法に関する。例えば、本発明は、混合物を、本発明のカラムクロマトグラフィー装置と接触させるステップを含む、混合物の成分を分離する分析法に関する。同様に、本発明はまた、本発明のカラムクロマトグラフィー装置を有する分離機器を含む。さらに本発明は、混合物を、本発明のカラムクロマトグラフィー装置と接触させるステップを含む、混合物の成分を分析する方法、ならびに、混合物を、本発明のカラムクロマトグラフィー装置と接触させるステップを含む、混合物の成分を分離する方法を開示する。
【0088】
さらに、本出願は、CE、ナノLCまたはCEC機器などの本発明のカラムクロマトグラフィー装置を含む分離機器に関する。このような機器は、液体をカラムクロマトグラフィー装置を通して移動させるためのポンプ手段およびカラムクロマトグラフィー装置の流出液を分析するための検出手段を含み得る。
【実施例】
【0089】
当業者は、本明細書に記載された具体的な手法、実施形態、請求項、および実施例に対する多数の等価物を、ルーチン実験のみを用いて認識し、確認できるであろう。このような等価物は、本発明の範囲内にあると考えられ、本明細書に添付された請求項により包含されている。本出願を通して引用された全ての引用文献、発行された特許、公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明を、以下の実施例によりさらに説明するが、これらをさらなる限定として解釈してはいけない。
【0090】
(実施例1)−カラムの合成
3.5μmの対称性C18固定相材料の層を、粒子を共に保持するための「ナノグルー」としてポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)を用いて化学的に固定化した。New Objective Integraフリットカラム(75μm石英ガラスキャピラリー、New Objective社、米国マサチューセッツ州ウォーバーン所在)を、アセトン中、5mg/mlの3.5μm対称性C18粒子(Waters社、米国マサチューセッツ州ミルフォード所在)を用いて充填した。12cmの長さの層に充填後、カラムを取り出し、周囲条件下で乾燥させた。次にカラムを、注意深く長さが4cmの3本に充填キャピラリーを切断し、Integraフリット(New Objective社、米国マサチューセッツ州ウォーバーン所在)を、最後の区分の末端から外した。10:1モノマーA:モノマーBの比率の成分PDMS Sylgand 184キット(Dow Corning社、米国ミシガン州ミッドランド所在)のモノマーを連続的に添加することにより、1,4−ジオキサン中1%、5%、および10%の3種のPDMS溶液を、調製した。次に充填キャピラリーの3本の区分を、前述のPDMS混合液の1つに10秒間浸漬し、両端を拭き取り、浸漬端点を外に向けて1mLサンプルバイアルのセプタを通して挿入した。サンプルを110℃のオーブン中に1.5時間入れて硬化させた。硬化時間後、サンプルを室温まで冷却してから操作した。
【0091】
(実施例2)−カラムの合成
実施例1に対する別法は、キャピラリーに吸い込まれた5%PDMS溶液中の対称性C18粒子スラリーの即時焼結ステップを含む。長さ20cm、75μmの同じ石英ガラスキャピラリーを、酢酸エチル中の5%PDMS中、3.5μmの対称性C18材料の100mg/mLスラリーに3秒間浸漬した。この時間、キャピラリーの1cmがスラリー溶液で充填された。次いでこの充填キャピラリーの1cm区分を、約350℃にこの領域を加熱するために使用されるInnovatechフリット作製装置(InnovaTech、英国ハーフォードシャー州、Stevenage所在)の抵抗加熱コイル内に入れた。加熱ワイヤカッターまたはさらに点火キャンドルによっても、同様の結果を得ることができる。
【0092】
(実施例3)−カラムの合成
さらに他の実施例において、スラリーをキャピラリーに吸い込ませ、PDMを硬化させてから焼結できる。長さ20cm、75μmの同じ石英ガラスキャピラリーを、酢酸エチル中の5%PDMS中、3.5μm対称性C18材料の100mg/mLに浸漬した。キャピラリーを周囲条件下で3時間乾燥させ、次いで110℃オーブン内に一晩入れた。翌朝、カラムフリットを、実施例2で検討されたInnovatechフリット作製装置を用いて適切に焼結した。図2は、本実施例により製造された焼結PDMSフリットの(A)500倍率および(B)2500倍率の2枚のSEM画像を示している。
【0093】
(実施例4)−フリットの圧力試験
2000:1のインジェクタ後スプリット比を用いることによりナノフローを操作するように構成されたAlliance HT(Waters社、米国マサチューセッツ州ミルフォード所在)への接続により製作されたフリット全ての圧力試験を行った。フリット破損の証拠は肉視でモニターされ、この結果は、下記に考察されている。流速は、2700psi近辺の圧で100%水を用いて約280nL/分であった。
【0094】
(実施例5)−フリット化カラムの充填
PDMSフリット付カラムを、Integraフリットカラムと同様に充填した。全ての場合にアセトン中、対称性C18材料の3〜5mg/mL5mg/mLスラリーを、1,000〜10,000psiの充填圧で用いた。
【0095】
(実施例6)−フリットのSEM分析
実施例1により3本のPDMSフリット一組を製造した後、サンプルを分割して固定化層の新鮮な領域に曝露させ、フリット形態に及ぼすPDMS溶液濃度の効果を決定するためにSEM分析に供した。図1は、1,4−ジオキサン中1%、5%、および10%のPDMS溶液で形成されたフリットの3枚のSEM画像を示している。
【0096】
図1は、シリカ粒子の互いの接着を例示している。これは、10%PDMS溶液の場合、特に明らかであり、個々の粒子が鮮明に見られなくなっている。5%PDMS試験の粒子が粒子自体の鮮明さを失うことなく十分良好に接着されているように見えたことから、この溶液濃度が、その後の焼結プロトコルに用いられた。
【0097】
粒子の結合度は、未焼結フリットのSEM画像では見られなかった粒子を共に保持するPDMSの薄いグレーの「スレッド」を見ることができるように、図2Bから容易に認められる。
【0098】
(実施例7)−フリット上の圧の効果
実施例1により製作されたフリットは、1200psiで破損したが、実施例2および3により製造されたフリットは、本試験に用いられた最大圧(約2700psi)で破損しなかった。引き続く試験において、10本のフリットが同様に製造され、試験された。平均破損圧は、16,000psiであった。カラムが充填された場合、破裂圧は、42,000psiであった。
【0099】
(実施例8)−カラムのクロマトグラフィー性能
4種の小分子の標準的混合物を用いて実施例2および3により製造されたPDMSフリットを評価し、等価のIntegraフリット充填キャピラリーカラムにおける同様な分離を比較した。全てのカラムの層長は約10cmであった。移動相は、60:40 ACN:HOであった。図3は、各々実施例2および3により製造されたPDMSフリットの比較クロマトグラムのセットを示している。
【0100】
実施例2により製造されたフリットの場合、Integraフリットカラムに較べて、より大きなピークテーリングが見られる。しかし、実施例3を用いて製造されたカラムの性能は極めて良好で、Integraフリットカラムよりもさらに良好なUSPテーリング係数を有した。実施例3を用いて製造されたフリットは、圧力下で頑丈であるだけでなく、市販のフリットに匹敵する性能も有する。
【0101】
(実施例9)−カラムのクロマトグラフィー性能
New Objective Integra Frit(商標)75μmの同じ石英ガラスキャピラリーを、アセトン中5mg/mL対称性C18(粒径3.5μm;孔径100Å)により、1000psiでスラリー充填した。PDMS出口フリットは、5%PDMS酢酸エチル溶液中100mg/mL3.5μm対称性C18材料からなるスラリーの1cmプラグを、20cmの長さの75μmシリカキャピラリー内に引き込むことにより製造した。周囲条件下で3時間酢酸エチルを蒸発させてから、前記キャピラリーを110℃のオーブンに8時間入れた。次いで前記フリットを約300℃で焼結して確実にした。Integra Frit(商標)と、このようにして製造されたPDMSフリットナノカラム双方のクロマトグラフィー性能を、以下の成分を含む混合物の分離において比較した:
ウラシル 16μg/mL
プロパノロール 400μg/mL
ブチルパラベン 20μg/mL
フタル酸ジプロピル 340μg/mL
ナフタレン 60μg/mL
アセナフテン 200μg/mL
アミトリプチリン 100μg/mL
【0102】
バッチ試験を含む全ての分離において、移動相は、65:35 メタノール:20mM KHPO/KHPO(pH=7.00)からなり、流速は分析カラムでは、250μL/分であり、ナノカラムでは、458mL/分であった。被検体は、254nmでの蛍光により検出した。そのクロマトグラムは、図3および図4に示されている。
【0103】
PDMSフリットを用いて製造されたナノカラムは、アミトリプチリンに関して、2.09の許容できるテーリング係数を有したが、Integra Frit(商標)ナノカラムは、2.38のテーリング係数を有した(アミトリプチリンのテーリング係数は、固定相に存在する残ったシラノール基量の指標である)。このフリットは、ピーク位置とピーク形状に対しては影響を与えていないことが認められた。クロマトグラフィーの評価後、入口フリットの安定性を確かめるためにナノカラムの流れを逆転させた。約2900psiの逆圧を働かせた際に、入口フリットは破損せず、カラムの逆洗浄が可能であることが示された。
【0104】
(実施例10)−PDMSの使用、不使用で製造されたインサイチューフリットのクロマトグラフィー性能
ポリ(ジメチルシロキサン)の不在下、本明細書の方法によりXterra(登録商標)固定相材料(Waters社、米国マサチューセッツ州ミルフォード所在)を焼結させると、シリカ表面に結合した有機基が除去され、それによって裸のシラノール基が露になって残される結果になった。このようなシラノール基は、ピークテーリングの一因となることが知られており、この効果は、測定されたテーリング係数が2.0付近であったことから明らかにされた。実施例9と同じ条件を用いたアミトリプチリンを含有する試験溶液のクロマトグラフィー分析により、固定相材料の焼結により、残りのシラノール基が生じることが示された。しかし、本明細書に記載されたPDMS法を用いて、XterraまたはSunfire材料により、同一のインサイチューフリットを製造した場合、焼結の際にテーリングの増大は認められなかった。
【0105】
参照による組み込み
本明細書に引用された全ての特許、公開特許出願および他の引用文献は、参照によりそれらの全体を本明細書に明示して組み込まれる。
【0106】
等価物
当業者は、本明細書に記載された特定の操作に対する多数の等価物を、ルーチン実験のみを用いて認識し、確認できるであろう。このような等価物は、本発明の範囲内にあると考えられ、以下の請求項により包含されている。本出願を通して引用された全ての引用文献、発行された特許、公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1A】1,4−ジオキサン中、(A)1%PDMS、(B)5%PDMS、および(C)10%PDMSにより形成された実施例1によるフリットのSEM画像を示す図である。
【図1B】1,4−ジオキサン中、(A)1%PDMS、(B)5%PDMS、および(C)10%PDMSにより形成された実施例1によるフリットのSEM画像を示す図である。
【図1C】1,4−ジオキサン中、(A)1%PDMS、(B)5%PDMS、および(C)10%PDMSにより形成された実施例1によるフリットのSEM画像を示す図である。
【図2A】実施例3により製造された焼結PDMSフリットの(A)500倍率および(B)2500倍率の2枚のSEM画像を示す図である。
【図2B】実施例3により製造された焼結PDMSフリットの(A)500倍率および(B)2500倍率の2枚のSEM画像を示す図である。
【図3】(左パネル)は、(A)Integraフリットカラムおよび(B)実施例2により製造されたPDMSフリットカラム上のアセトン(1)、エチルパラベン(2)、ブチルパラベン(3)、およびナフタレン(4)の分離を示す図であり;(右パネル)は、(A)Integraフリットカラムおよび(B)実施例3により製造されたPDMSフリットカラム上のアセトン(1)、エチルパラベン(2)、ブチルパラベン(3)、およびナフタレン(4)の分離を示す図である。
【図4】(A)PDMSフリットを備えたナノカラム(75μm×100mm)、(B)IntegraFrit(商標)を備えたナノカラム(75μm×100mm)、および(C)分析カラム(2.1mm×100mm)上のバッチ試験混合物の分離を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定相材料を含む粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)を含むポリマーネットワークとの均質混合物を含むクロマトグラフィーナノカラムにおいて固定相材料を固定化するためのインサイチューフリットであって、前記粒子が前記ネットワークに懸濁している、前記インサイチューフリット。
【請求項2】
a)微粒子固定相材料と;および
b)前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化しているインサイチューフリット(前記インサイチューフリットは固定相材料を含む粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)を含むポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は前記ネットワークに懸濁している。)と
を含む分子分離用媒体。
【請求項3】
a)固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラムと;
b)前記ナノカラム内に充填された微粒子固定相材料と;および
c)前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化している前記ナノカラム内のインサイチューフリット(前記インサイチューフリットは固定相材料を含む粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)を含むポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は前記ネットワークに懸濁している。)と
を含むカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項4】
固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラムを提供するステップ、および前記ナノカラム内の固定相を形成するステップにより調製されたクロマトグラフィー装置であって、
前記固定相は、
a)微粒子固定相材料と;および
b)前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化しているインサイチューフリット(前記インサイチューフリットは固定相材料を含む粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)を含むポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は前記ネットワークに懸濁している。)と
を含む、前記クロマトグラフィー装置。
【請求項5】
前記ポリ(ジオルガノシロキサン)が、式−(−RSiO−)−(RおよびRは独立して水素、C〜C18脂肪族基、芳香族基または架橋基である。)の繰り返し単位を有するポリマーである請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項6】
前記ポリ(ジオルガノシロキサン)が、式(−RSiO−)(RおよびRは独立して水素、C〜C18脂肪族基、芳香族基または架橋基であり、nは繰り返し単位数を表す。)を有するポリマーである請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項7】
前記架橋基が、重合可能なアルケニル基を含有する炭化水素基またはその重合生成物である請求項6に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項8】
前記架橋基が、ビニル基もしくはスチリル基またはその重合生成物である請求項7に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項9】
前記脂肪族基が、直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはシクロアルキル基である請求項6に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項10】
前記脂肪族基が、C〜Cアルキル基である請求項9に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項11】
前記脂肪族基が、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基である請求項10に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項12】
前記ポリ(ジオルガノシロキサン)が、ポリ(ジメチルシロキサン)ポリマー類から選択される請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項13】
前記架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)が、架橋ポリ(ジメチルシロキサン)ポリマー類からなる群から選択される請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項14】
前記架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)が、ビニル置換ジメチルシロキサンを含むポリマー試薬の反応によって生成される請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項15】
前記ビニル置換ジメチルシロキサンが、ジメチルビニル末端ジメチルシロキサンである請求項14に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項16】
前記反応が、ジメチルシロキサン、メチル水素シロキサン、ジメチルビニル化シリカ、トリメチル化シリカ、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンおよびテトラ(トリメチルシロキシ)シランからなる群から選択されるポリマー試薬をさらに含む請求項14に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項17】
前記ジメチルシロキサンまたはメチル水素シロキサンが、約10Daから約10,000Daの平均分子量を有する請求項16に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項18】
前記ジメチルシロキサンまたはメチル水素シロキサンが、約100Daから約1,000Daの平均分子量を有する請求項17に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項19】
前記ビニル置換ジメチルシロキサンが、約500Daから約100,000Daの平均分子量を有する請求項14に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項20】
前記ビニル置換ジメチルシロキサンが、約10,000Daから約40,000Daの平均分子量を有する請求項19に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項21】
前記混合物が、加熱によりインサイチューで硬化されている請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項22】
前記混合物が、焼結によりさらに固定化されている請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項23】
前記硬化ステップが、前記混合物を、約25℃から約150℃の間の温度に、約1時間から約48時間の範囲の時間加熱することを含む請求項21に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項24】
前記固定相材料の粒子が、約0.5μmから約10μmの平均サイズ/直径を有する請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項25】
前記固定相材料が、多孔性である請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項26】
前記固定相材料が、非多孔性である請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項27】
前記固定相材料が、約70Åから約300Åの平均孔径を有する請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項28】
前記固定相材料が、約170m/gから約250m/gの比表面積を有する請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項29】
前記固定相材料が、約0.2m/gから約1.5m/gの細孔容積を有する請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項30】
前記微粒子固定相材料が、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、セラミック材料、有機ポリマーまたはこれらの混合物である請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項31】
前記固定相材料が、表面改質剤と結合している請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項32】
前記表面改質剤が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ジオール基、ニトロ基、エステル基または埋め込み極性官能基を含有するアルキル基もしくはアリール基からなる群から選択される請求項31に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項33】
前記アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基およびオクタデシル基からなる群から選択される請求項32に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項34】
前記固定相材料が、アルキル結合シリカ、フェニル結合シリカ、シアノ結合シリカ、ジオール結合シリカもしくはアミノ結合シリカまたはこれらの混合物である請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項35】
前記固定相材料が、多孔性無機/有機ハイブリッド粒子を含む請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項36】
前記固定相材料が、式SiO/(RSiOまたはSiO/[R(RSiO(RおよびRは、独立してC〜C18脂肪族基、スチリル基、ビニル基、プロパノール基または芳香族基であり、Rは2個以上のシリコン原子を架橋する置換または非置換C〜C18アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基またはアリーレン基であり、pおよびqは0、1または2であり、但しp+q=1または2であり、およびp+q=1である場合t=1.5であり、およびp+q=2である場合t=1であり、rは0または1であり、但しr=0である場合t=1.5であり、およびr=1である場合t=1であり、mは2以上の整数であり、nは0.03から1までの数である。)を有する多孔性無機/有機ハイブリッド粒子を含む請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項37】
前記ナノカラムが、キャピラリーである請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項38】
前記ナノカラムの内径が、約10μmから約1.0mmである請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項39】
前記内径が、約25μMから約320μmである請求項38に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項40】
前記ナノカラムが、石英ガラス、ガラス、ステンレス鋼、ポリマー、セラミックまたはこれらの混合物から作成される請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項41】
前記インサイチューフリットが、約0.25mmから約2.5mmの長さである請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項42】
前記インサイチューフリットが、約0.5mmから約1.0mmの長さである請求項41に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項43】
前記インサイチューフリットが、前記ナノカラム内充填層の末端に配置されている請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項44】
前記インサイチューフリットが、クロマトグラフィー装置の出口フリットである請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項45】
前記インサイチューフリットが、クロマトグラフィー装置の入口フリットである請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項46】
前記インサイチューフリットが、固定相を貫流する液体に印加される少なくとも約1,000psiの圧に物理的に耐えることができる請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項47】
前記インサイチューフリットが、固定相を貫流する液体に印加される少なくとも約10,000psiのクロマトグラフィー圧に物理的に耐えることができる請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項48】
前記インサイチューフリットが、固定相を貫流する液体に印加される少なくとも約20,000psiのクロマトグラフィー圧に物理的に耐えることができる請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項49】
前記インサイチューフリットが、2.3未満か等しいテーリング係数を有する請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項50】
a)固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラムを提供するステップと;
b)固定相を前記ナノカラム内に形成するステップと[前記固定相は、
i)微粒子固定相材料と;および
ii)前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化している前記ナノカラム内のインサイチューフリット(前記インサイチューフリットは、固定相材料を含む粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)を含むポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は前記ネットワークに懸濁している。)とを含む。];
c)前記ナノカラム内の固定相を硬化するステップと;および
d)前記ナノカラム内の固定相を場合によっては焼結するステップと
を含むクロマトグラフィー装置を作製する方法。
【請求項51】
a)固定相材料、溶媒、および架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)を生成するポリマー試薬の混合物を調製するステップと;
b)前記ナノカラムの末端にステップ(a)で調製された前記混合物を導入するステップと;
c)前記溶媒を室温で蒸発させるステップと;
d)ナノカラムとその中の混合物とを、約70℃から約150℃の間の温度に、約0.5時間から約3時間の範囲の時間加熱して乾燥混合物を硬化することによりインサイチューフリットを製造するステップと;および
e)ナノカラムとその中のインサイチューフリットとを、約250℃から約350℃の間の温度に、約5秒間から約30秒間の範囲の時間加熱することによりインサイチューフリットを場合によっては焼結するステップと
を含むクロマトグラフィー装置を作製する方法。
【請求項52】
固定相を形成する前記ステップが、
a)前記固定相材料、溶媒および架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)の合成前駆体の混合物を調製するステップと;
b)前記ナノカラムの末端にステップ(a)で調製された前記混合物を導入するステップと;
c)前記溶媒を室温で蒸発させるステップと;
d)ナノカラムとその中の混合物とを、約70℃から約150℃の間の温度に、約0.5時間から約3時間の範囲の時間加熱して乾燥混合物を硬化することによりインサイチューフリットを製造するステップと;および
e)ナノカラムとその中のインサイチューフリットとを、約250℃から約350℃の間の温度に、約5秒間から約30秒間の範囲の時間加熱することによりインサイチューフリットを場合によっては焼結するステップと
を含む請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記硬化ステップが、前記混合物を約20℃から約40℃の間の温度に、約5時間から約35時間の範囲の時間加熱した後、直ちに前記混合物を約70℃から約150℃の間の温度に、約0.5時間から約3時間の範囲の時間加熱することを含む請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記硬化ステップが、前記混合物を室温に約1日間加熱し、次いで前記混合物を約110℃の温度に約2時間加熱することを含む請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記焼結ステップが、前記混合物を約250℃から約350℃の間の温度に、約5秒間から約30秒間の範囲の時間加熱することを含む請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記インサイチューフリットの直径が、約30μm超である請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記焼結ステップが、混合物を約300℃の温度に、約15秒の時間加熱することを含む請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記インサイチューフリットの直径が、約30μm超である請求項55に記載の方法。
【請求項59】
前記ポリ(ジオルガノシロキサン)が、式−(−RSiO−)−(RおよびRは独立して水素、C〜C18脂肪族基、芳香族基または架橋基である。)の繰り返し単位を有するポリマーである請求項50に記載の方法。
【請求項60】
前記ポリ(ジオルガノシロキサン)が、式(−RSiO−)(RおよびRは独立して水素、C〜C18脂肪族基、芳香族基または架橋基であり、nが繰り返し単位数を表す。)を有するポリマーである請求項50に記載の方法。
【請求項61】
前記架橋基が、重合可能なアルケニル基を含有する炭化水素基またはその重合生成物である請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記架橋基が、ビニル基もしくはスチリル基またはその重合生成物である請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記脂肪族基が、直鎖もしくは分枝鎖アルキルまたはシクロアルキル基である請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記脂肪族基が、C〜Cアルキル基である請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記脂肪族基が、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基またはtert−ブチル基である請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ポリ(ジオルガノシロキサン)が、ポリ(ジメチルシロキサン)ポリマー類から選択される請求項50に記載の方法。
【請求項67】
前記架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)が、架橋ポリ(ジメチルシロキサン)ポリマー類からなる群から選択される請求項50に記載の方法。
【請求項68】
前記架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)が、ビニル置換ジメチルシロキサンを含むポリマー試薬の反応によって生成される請求項50に記載の方法。
【請求項69】
前記ビニル置換ジメチルシロキサンが、ジメチルビニル末端ジメチルシロキサンである請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記反応が、ジメチルシロキサン、メチル水素シロキサン、ジメチルビニル化シリカ、トリメチル化シリカ、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンおよびテトラ(トリメチルシロキシ)シランからなる群から選択されるポリマー試薬をさらに含む請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記ジメチルシロキサンまたはメチル水素シロキサンが、約10Daから約10,000Daの平均分子量を有する請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記ジメチルシロキサンまたはメチル水素シロキサンが、約100Daから約1,000Daの平均分子量を有する請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記ビニル置換ジメチルシロキサンが、約500Daから約100,000Daの平均分子量を有する請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記ビニル置換ジメチルシロキサンが、約10,000Daから約40,000Daの平均分子量を有する請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記混合物が、加熱によりインサイチューで硬化されている請求項50に記載の方法。
【請求項76】
前記混合物が、焼結することによりさらに固定化されている請求項50に記載の方法。
【請求項77】
前記硬化ステップが、前記混合物を、約25℃から約150℃の間の温度に、約1時間から約48時間の範囲の加熱することを含む請求項50に記載の方法。
【請求項78】
前記固定相材料の粒子が、約0.5μmから約10μmの平均サイズ/直径を有する請求項50に記載の方法。
【請求項79】
前記固定相材料が、多孔性である請求項50に記載の方法。
【請求項80】
前記固定相材料が、非多孔性である請求項50に記載の方法。
【請求項81】
前記固定相材料が、約70Åから約300Åの平均孔径を有する請求項50に記載の方法。
【請求項82】
前記固定相材料が、約170m/gから約250m/gの比表面積を有する請求項50に記載の方法。
【請求項83】
前記固定相材料が、約0.2m/gから約1.5m/gの細孔容積を有する請求項50に記載の方法。
【請求項84】
前記微粒子固定相材料が、アルミナ、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、セラミック材料、有機ポリマーまたはこれらの混合物である請求項50に記載の方法。
【請求項85】
前記固定相材料が、表面改質剤と結合している請求項50に記載の方法。
【請求項86】
前記表面改質剤が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ジオール基、ニトロ基、エステル基または埋め込み極性官能基を含有するアルキル基もしくはアリール基からなる群から選択される請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基およびオクタデシル基からなる群から選択される請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記固定相材料が、アルキル結合シリカ、フェニル結合シリカ、シアノ結合シリカ、ジオール結合シリカもしくはアミノ結合シリカまたはこれらの混合物である請求項50に記載の方法。
【請求項89】
前記固定相材料が、多孔性無機/有機ハイブリッド粒子を含む請求項50に記載の方法。
【請求項90】
前記固定相材料が、式SiO/(RSiOまたはSiO/[(R(RSiO(RおよびRは独立してC〜C18脂肪族基、スチリル基、ビニル基、プロパノール基または芳香族基であり、Rは2個以上のシリコン原子を架橋する置換または非置換C〜C18アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基またはアリーレン基であり、pおよびqは0、1または2であり、但しp+q=1または2であり、およびp+q=1である場合t=1.5であり、およびp+q=2である場合t=1であり、rは0または1であり、但しr=0である場合t=1.5であり、およびr=1である場合t=1であり、mは2以上の整数であり、nは0.03から1の数である。)を有する多孔性無機/有機ハイブリッド粒子を含む請求項50に記載の方法。
【請求項91】
前記ナノカラムが、キャピラリーである請求項50に記載の方法。
【請求項92】
前記ナノカラムの内径が、約10μmから約1.0mmである請求項50に記載の方法。
【請求項93】
前記内径が、約25μMから約320μmである請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記ナノカラムが、石英ガラス、ガラス、ステンレス鋼、ポリマー、セラミックまたはそれらの混合物から作製される請求項50に記載の方法。
【請求項95】
前記インサイチューフリットが、約0.25mmから約2.5mmの長さである請求項50に記載の方法。
【請求項96】
前記インサイチューフリットが、約0.5mmから約1.0mmの長さである請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記インサイチューフリットが、前記ナノカラム内の充填層の末端に配置されている請求項50に記載の方法。
【請求項98】
前記インサイチューフリットが、クロマトグラフィー装置の出口フリットである請求項50に記載の方法。
【請求項99】
前記インサイチューフリットが、クロマトグラフィー装置の入口フリットである請求項50に記載の方法。
【請求項100】
前記インサイチューフリットが、固定相を貫流する液体に印加される少なくとも約1,000psiの圧に物理的に耐えることができる請求項50に記載の方法。
【請求項101】
前記インサイチューフリットが、固定相を貫流する液体に印加される少なくとも約10,000psiのクロマトグラフィー圧に物理的に耐えることができる請求項50に記載の方法。
【請求項102】
前記インサイチューフリットが、固定相を貫流する液体に印加される少なくとも約20,000psiのクロマトグラフィー圧に物理的に耐えることができる請求項50に記載の方法。
【請求項103】
前記インサイチューフリットが、2.3以下のテーリング係数を有する請求項50に記載の方法。
【請求項104】
(i)カラムクロマトグラフィー装置と、および(ii)検出手段、(iii)導入手段または(iv)受入れ手段から選択される少なくとも1つの構成部品とを含む分離機器であって、
(i)前記カラムクロマトグラフィー装置は、
a)固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラムと;
b)前記ナノカラム内に充填された微粒子固定相材料と;および
c)前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化している前記ナノカラム内のインサイチューフリットと(前記インサイチューフリットは固定相材料を含む粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)を含むポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は前記ネットワークに懸濁している。)を含み、
(ii)前記検出手段は、運転時に前記ナノカラムに接続され、物理化学的な性質を測定することができ;
(iii)前記導入手段は、運転時に前記ナノカラムに接続され、液体を前記ナノカラムに導通することができ;および
(iv)前記受入れ手段は、ナノカラムが運転時に検出手段または導入手段のいずれかに接続されるような構成で前記ナノカラムを保持できる、
前記分離装置。
【請求項105】
a)固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラムと;
b)前記ナノカラム内に充填された微粒子固定相材料と;および
c)前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化している前記ナノカラム内のインサイチューフリットと(前記インサイチューフリットは固定相材料を含む粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)を含むポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子が前記ネットワークに懸濁している。)
を含むカラムクロマトグラフィー装置を含む分離機器。
【請求項106】
請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置を含む分離機器。
【請求項107】
前記機器が、CE機器、ナノLC機器またはCEC機器である請求項106に記載の機器。
【請求項108】
前記機器が、前記カラムクロマトグラフィー装置を通って液体を移動させるポンプ手段、およびカラムクロマトグラフィー装置の流出液を分析するための検出手段を含む請求項106に記載の機器。
【請求項109】
混合物の成分を分離する分析法であって、前記混合物を、
a)固定相を受け入れるための円筒状内部を有するナノカラムと;
b)前記ナノカラム内に充填された微粒子固定相材料と;および
c)前記固定相材料に隣接し、前記固定相材料と一体化している前記ナノカラム内のインサイチューフリットと(前記インサイチューフリットは固定相材料を含む粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)を含むポリマーネットワークとの均質混合物を含み、前記粒子は前記ネットワークに懸濁している。)
を含むカラムクロマトグラフィー装置に接触させるステップを含む、前記分析法。
【請求項110】
混合物の成分の分析方法であって、前記混合物を、請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置と接触させるステップを含む、前記分析法。
【請求項111】
混合物の成分の分離方法であって、前記混合物を、請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置と接触させるステップを含む、前記分離方法。
【請求項112】
前記均質混合物が、ポリマーに対する固定相材料の重量比が約10:1から約1000:1である、固定相材料の粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークの10:1(w/w)組成物である請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項113】
前記比が、ポリマーに対する固定相材料の重量比約10:1から約100:1である請求項112に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項114】
前記固定相材料の粒子が、ほぼ球状である請求項3に記載のカラムクロマトグラフィー装置。
【請求項115】
前記均質混合物が、ポリマーに対する固定相材料の重量比が約10:1から約1000:1である、固定相材料の粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークの10:1(w/w)組成物である請求項50に記載の方法。
【請求項116】
前記比が、ポリマーに対する固定相材料の重量比約10:1から約100:1である請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記固定相材料の粒子が、ほぼ球状である請求項50に記載の方法。
【請求項118】
ステップ(a)で調製された前記混合物が、十分な量の固定相材料、溶媒、およびポリマー試薬を含有して、ステップ(d)における硬化後、ポリマーに対する固定相材料の重量比が約10:1から約1000:1である、固定相材料の粒子と架橋ポリ(ジオルガノシロキサン)のポリマーネットワークの10:1(w/w)組成物を生成する請求項51に記載の方法。
【請求項119】
前記比が、ポリマーに対する固定相材料の重量比約10:1から約100:1である請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記固定相材料の粒子が、ほぼ球状である請求項51に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−517300(P2006−517300A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503383(P2006−503383)
【出願日】平成16年2月6日(2004.2.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/003484
【国際公開番号】WO2004/071615
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)
【Fターム(参考)】