説明

クロマトグラフィー固定相として有用な組成物

本発明は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの種々のクロマトグラフィー適用のための固定相として有用な組成物を提供する。本組成物は、疎水性成分と親水性成分(好ましくは1,2-ジオール成分)を両方とも含む化合物と共有結合している基材(例えば、シリカゲル)を含む。疎水性成分は、該組成物が逆相特性を示すのに十分に疎水性であり、かつ典型的に少なくとも5個の連続した炭素原子を組み入れている。親水性と疎水性の両官能性を有することに基づき、この新固定相はユニークなクロマトグラフ特性を示す。例えば、移動相が高割合の有機溶媒を含むHILIC様式、又は移動相が高割合の水性溶媒を含む逆相様式のどちらでもこれらの媒体を使用することができる。本発明は、本発明の化合物及び組成物の製造方法並びに使用方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、組成物、特にクロマトグラフィー適用のための固定相として有用な組成物及び該組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
極性化合物のクロマトグラフ分離は種々の困難を伴う。逆相(RP)カラムは疎水性相互作用によって分子を分離するために広く使用されている。しかし、従来のアルキル結合逆相媒体(例えば、C18及びC8)は高極性分子を保持又は分離するためには適さないことが多い(Neue, “HPLC Columns - Theory, Technology, and Practice”, WILEY-VCH, New York, 1997, 183-203)。同様に、イオン対クロマトグラフィーは長い平衡時間及び質量分析(MS)との非適合性のため問題となることが多い。
順相クロマトグラフィーを用いて極性分子を分離することもできる。広範な溶媒を利用して特定の分離の選択性を調整することができる(Neue, “HPLC Columns - Theory, Technology, and Practice,” WILEY-VCH, New York, 1997, 164-182)。しかし、移動相中の低濃度の極性汚染物質の存在に対する順相媒体の感受性のため、一般的に平衡時間が非常に長く、かつ/又は再現性の問題が起こりうる。さらに、有機溶媒への高極性化合物の溶解性が不十分なため順相クロマトグラフィーを適用できないことが多い。
【0003】
HILIC(親水性相互作用クロマトグラフィー又は親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HydrophILic Interaction Chromatography or Hydrophilic Interaction LIquid Chromatography))は、順相液体クロマトグラフィーの一形態である。HILICは、逆相クロマトグラフィーと順相クロマトグラフィーの間のギャップを埋める。適切なHILIC相は、小割合(典型的に約5〜30%)の水又は水性緩衝液しか組み入れない有機移動相を使用しながら、極性化合物を保持することができる(Neue, “HPLC Columns - Theory, Technology, and Practice,” WILEY-VCH, New York, 1997, 217-223)。
HILICでは、分析物の極性と共に保持力が増加し、移動相の極性と共に保持力が減少する。1つの考えられる保持機構は、水に富んだ相と水に乏しい相に分析物を分配することである(A.J. Alpert, J. Chromatogr. 1990, 499, 117-196)。HILICのさらなる利点としては、逆相カラムへの相補的選択性、質量分析での感度の向上、及び簡単なサンプル調製手順が挙げられる。結果として、HILICは、広範な分析物、例えば炭水化物、アミノ酸、ペプチド、オリゴヌクレオチド及びリン脂質などのみならず、小分子薬物及びその代謝物の分離及び分析の機構を提供する。
【0004】
一般に、以下の5つカテゴリーに順相クロマトグラフィー及びHILIC用の充填材料を分類することができる。
(1)単純な非結合シリカ(例えば、B.A. Olsen, J. Chromatogr. 2001, A 913, 113-122参照);
(2)ジオール基を有する天然シリカベース充填材(H. Tanaka, X. Zhou, and O. Masayoshi, J. Chromatogr. 2003, A 987, 119-125);
(3)アミド官能性のあるシリカベース充填材(A.J. Alpert, J. Chromatogr. 1990, 499, 117-196);
(4)アニオン交換又はカチオン交換官能性を有するシリカベース充填材(Neue, “HPLC Columns - Theory, Technology, and Practice,” WILEY-VCH, New York, 1997, 217-223);及び
(5)双性イオン性シリカベース充填材、例えばSequantによって現在提供されている当該充填材。
非結合シリカは、容易に入手可能なので、最初かつ最も広範に利用されているクロマトグラフィー充填材料の一種だった。上述したように、この材料には、不十分な再現性及び長い平衡時間のみならず限定された作動pH範囲などのいくつかの欠点がある。これらの困難を克服するため、ジオール成分(ジオール相)によって共有結合的に修飾されたシリカゲルが開発された。これらのジオール相内では、シラノール基がヒドロキシアルキル基で官能化されている。結果として生じた固定相は、改良された再現性、より短い平衡時間及びより広い作動pH範囲を与える。さらに、ジオール相は多くの場合そのイオン性対応物に比べて低減した二次相互作用によって特徴づけられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これら及び他の従来のHILIC材料は疎水性が不十分であり、RP条件下で分子をを分離するには適さない。従って、HILICとRPの両特徴を併せ持つ固定相の開発が非常に要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの種々のクロマトグラフィー適用のための充填材料/固定相として有用な組成物を提供する。本組成物は、疎水性成分と親水性成分を両方とも含む分子と共有結合している基材(例えば、シリカゲル)を含む。親水性成分は好ましくは基材の表面から有意な距離のところにある(例えば、少なくとも5個の炭素原子離れている)。親水性と疎水性の両官能性を有することに基づき、この新充填材料はユニークなクロマトグラフ特性を示す。例えば、移動相が高割合の有機溶媒を含むHILIC様式、又は移動相が相当量の水性溶媒を含むRP様式のどちらでもこれらの媒体を使用することができる。結果として、新固定相は、分子自体が親水性成分と疎水性成分を含む分子、例えばエトキシル化界面活性剤の分析を含めた多くの応用で役に立つ。
【0007】
第一態様では、本発明は、基材と共有結合している化合物を含む組成物を提供する。この化合物は下記式(I)の構造を有し、式中、整数nは0及び1から選択される。
【0008】
【化1】

【0009】
式(I)中、R1、R2及びR3の少なくとも1つが基材と共有結合している。R1、R2及びR3は、ハロゲン、OR10、NR10R11、OC(O)R12、OS(O)2R12、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール、置換又は無置換ヘテロシクロアルキル及び前記基材との結合から独立に選択されるメンバーである。各R10及び各R11は、H、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール、置換又は無置換ヘテロシクロアルキル及び前記基材との結合から独立に選択されるメンバーである。各R12は、置換又は無置換アルキル(例えば、CH3、CF3)、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーである。
式(I)中、L1及びL2は、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるリンカー基である。nが1で、Yが存在する場合、L1及びL2の少なくとも1つは好ましくは連続した少なくとも5個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも7個の炭素原子又は少なくとも8個の炭素原子を有する炭素鎖を含む。nが0の場合、L2は好ましくは連続した少なくとも5個の炭素原子、少なくとも6個の炭素原子、少なくとも7個の炭素原子又は少なくとも8個の炭素原子を有する炭素鎖を含む。連続した炭素原子の少なくとも2個(L1、L2又はL1とL2の両方の)は、任意に5員又は6員環の一部であってよく、この環は、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール(例えば、チオフェン)及びシクロアルキル(例えば、シクロヘキシル又はシクロペンチル)から選択されるメンバーである。この環は、任意に非極性置換基、例えばC1-C4アルキル基(例えば、メチル)で置換されていてもよい。
【0010】
2つのリンカー基L1とL2は、エーテル又はチオエーテル結合、アミド、スルホンアミド、カルボナート又はカルバマート基及び尿素又はチオ尿素基から選択されるメンバーである基Yを介して連結されている。アミド、スルホンアミド、カルバマート、尿素又はチオ尿素基は、任意に置換されていてもよい。特に好ましい実施形態では、Yがアミド基であり、その窒素原子は任意に低級アルキル基、例えばメチル基で置換されていてもよい。
R4は、H、アシル、置換又は無置換C1-C4アルキル、置換又は無置換C1-C4ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、ここで、R4とL2の置換基とが、それらが結合している原子と共に任意に結合して3員〜7員環を形成していてもよい。一例では、環は置換又は無置換シクロヘキシル又はシクロペンチル環である。R20は、H、置換アルキル、置換ヘテロアルキル及び置換ヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである。但し、R20の少なくとも1つの置換基はOHである。一実施形態では、R20がポリエーテル成分を含む。
【0011】
第二態様では、本発明は、下記式(VI)の構造を有し、式中、nは0及び1から選択される整数である化合物を提供する。典型的実施形態では、式(VI)の化合物は、本発明の組成物の合成の試薬/前駆体として有用である。
【0012】
【化2】

【0013】
式(VI)中、R6、R7及びR8は、ハロゲン、OR14、NR14R15、OC(O)R16、OS(O)2R16、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーである。R6、R7及びR8の少なくとも1つは、活性シリル基置換基、例えばアルコキシ基、ハロゲン又は一級若しくは二級アミノ基である。各R14及び各R15は、H、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーである。各R16は、置換(例えば、ハロゲン置換、例えばCF3)又は無置換アルキル(例えば、CH3)、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーである。
式(VI)中、L1、L2、R4、R20及びYは、式(I)についての上記定義どおりである。
【0014】
第三態様では、本発明は、本発明の組成物の製造方法を提供する。本方法は、(i)反応性官能基(例えば、シラノール基)を有する基材(例えば、シリカゲル)を、エポキシド成分を有し、かつ下記式(VI):
【0015】
【化3】

(式中、n、R6、R7、R8、L1、L2、R4及びYは、式(VI)についての上記定義どおり)の構造を有する化合物と、基材の反応性官能基とR6、R7及びR8の少なくとも1つとの間の反応によって該化合物と基材との間に共有結合を形成するのに十分な条件下で接触させる工程を含む。本方法はさらに、(ii)エポキシド成分を、例えば、酸触媒加水分解によるか又は求核試薬を用いてエポキシド環を開環することによって、1,2-ジオール成分に変換する工程を含んでよい。好ましい実施形態では、R6、R7及びR8の少なくとも1つがハロゲン又はアルコキシ(例えば、メトキシ又はエトキシ)である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ジオール相15の調製を示す合成スキームである。
【図2】ジオール相20の調製を示す合成スキームである。
【図3】ジオール相21の調製を示す合成スキームである。
【図4】アルキルフェノールエトキシル化界面活性剤(IGPAL CA-630)の分析中にジオール相15及び市販のジオール充填材の分解能特性を比較する2つのクロマトグラムのセットである。
【図5】逆相及び順相様式におけるジオール相15の選択性を比較する2つのクロマトグラムのセットであり、2つの分析物はシトシン(1)及びナフタレン(2)である。
【図6】アセトニトリル/緩衝液の比を変えて移動相を使用した場合のアルキルフェノールエトキシル化界面活性剤(IGPAL CA-630)の分析中にジオール相15の分解能特性を比較する9つのクロマトグラムのセットである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔発明の詳細な説明〕
I. 定義
置換基群が左から右に書かれたその通常の化学式で特定される場合、それらはその構造を右から左に書くことによって生じるであろう化学的に同一の置換基を同様に包含する。例えば、-CH2O-は、-OCH2-をも表すことを意図する。
用語「アルキル」(単独で又は別の置換基の一部として)は、特に断らない限り、指定数の炭素原子を有する(すなわち、C1-C10は1〜10個の炭素を意味する)直鎖若しくは分岐鎖、又は環式炭化水素基、又はその組合せを意味し、完全飽和又はモノ若しくはポリ不飽和であってよく、かつ二価及び多価基を包含しうる。飽和炭化水素基の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル(例えば、-CH2-CH2-CH3、-CH2-CH2-CH2-)、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル等の同族体及び異性体が挙げられる。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合又は三重結合を有する基である。不飽和アルキル基の例として、限定するものではないが、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-及び3-プロピニル、3-ブチニル、並びにさらに高級の同族体及び異性体が挙げられる。用語「アルキル」は、特に断らない限り、以下に詳細に定義するアルキルの当該誘導体、例えば「ヘテロアルキル」をも含むことを意味する。炭化水素基に限定されるアルキル基を「ホモアルキル」と称する。用語「アルキル」は、アルキル基が二価基の場合の「アルキレン」又は「アルキルジイル」及びアルキリデンをも意味しうる。
【0018】
用語「アルキレン」又は「アルキルジイル」(単独で又は別の置換基の一部として)は、限定するものではないが、-CH2CH2CH2-(プロピレン又はプロパン-1,3-ジイル)等の、アルキル基から導かれる二価基を意味し、さらに「ヘテロアルキレン」のような後述する当該基が挙げられる。典型的に、アルキル(又はアルキレン)基は1〜約30個の炭素原子、好ましくは1〜約25個の炭素原子、さらに好ましくは1〜約20個の炭素原子、なおさらに好ましくは1〜約15個の炭素原子、最も好ましくは1〜約10個の炭素原子を有する。「低級アルキル」、「低級アルキレン」又は「低級アルキルジイル」は、より短い鎖のアルキル、アルキレン又はアルキルジイル基であり、一般的に約10個以下の炭素原子、約8個以下の炭素原子、約6個以下の炭素原子又は約4個以下の炭素原子を有する。
用語「アルキリデン」(単独で又は別の置換基の一部として)は、限定するものではないが、CH3CH2CH2=(プロピリデン)等の、アルキル基から導かれる二価基である。典型的に、アルキリデン基は1〜約30個の炭素原子、好ましくは1〜約25個の炭素原子、さらに好ましくは1〜約20個の炭素原子、なおさらに好ましくは1〜約15個の炭素原子、最も好ましくは1〜約10個の炭素原子を有する。「低級アルキル」又は「低級アルキリデン」は、より短い鎖のアルキル又はアルキリデン基であり、一般的に約10個以下の炭素原子、約8個以下の炭素原子、約6個以下の炭素原子又は約4個以下の炭素原子を有する。
【0019】
用語「アルコキシ」、「アルキルアミノ」及び「アルキルチオ」(又はチオアルコキシ)は、それらの通常の意味で使用され、該分子の残部に、それぞれ酸素原子、アミノ基、又はイオウ原子によって結合している当該アルキル基を表す。
用語「ヘテロアルキル」(単独で又は別の用語と組み合わせて)は、特に断らない限り、指定数の炭素原子と、O、N、B、S及びSiから成る群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子とからなる安定した直鎖若しくは分岐鎖、又は環式炭化水素基、又はその組合せを意味する。ここで、窒素及びイオウ原子は、任意に酸化されていてもよく、かつ窒素ヘテロ原子は、任意に四級化されていてもよい。ヘテロ原子は該ヘテロアルキル基の内部のいずれの位置にあってもよく、又は該分子の残部に該アルキル基が結合している位置にあってもよい。例として、限定するものではないが、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2,-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、及び-CH=CH-N(CH3)-CH3が挙げられる。例えば、-CH2-NH-OCH3及び-CH2-O-Si(CH3)3のように、2個までのヘテロ原子が連続しうる。同様に、用語「ヘテロアルキレン」(単独で又は別の置換基の一部として)は、限定するものではないが、-CH2-CH2-S-CH2-CH2-及び-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-等の、ヘテロアルキルから導かれる二価基を意味する。ヘテロアルキレン基では、ヘテロ原子が鎖末端の一方又は両方を占めてもよい(例えば、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ等)。なおさらに、アルキレン及びヘテロアルキレン連結基では、該連結基の式が書かれている方向は、該連結基の配向を意味しない。例えば、式-CO2R'-は、-C(O)OR'と-OC(O)R'の両者を表す。
【0020】
用語「シクロアルキル」及び「ヘテロシクロアルキル」(単独で又は他の用語と組み合わせて)は、特に断らない限り、それぞれ「アルキル」及び「ヘテロアルキル」の環式変形を表す。さらに、ヘテロシクロアルキルでは、ヘテロ原子は該ヘテロ環が該分子の残部に結合している位置を占めうる。シクロアルキルの例としては、限定するものではないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチル等が挙げられる。ヘテロシクロアルキルとしては、限定するものではないが、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルフォリニル、3-モルフォリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル等が挙げられる。
用語「ハロ」又は「ハロゲン」(単独で又は別の置換基の一部として)は、特に断らない限り、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子を意味する。さらに、「ハロアルキル」等の用語は、モノハロアルキル及びポリハロアルキルを包含することを意味する。例えば、用語「ハロ(C1-C4)アルキル」は、限定するものではないが、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピル等を包含する意である。
【0021】
用語「アリール」は、特に断らない限り、ポリ不飽和の芳香族置換基を意味し、単環又は共に縮合しているか若しくは共有結合している多環(好ましくは1〜3個の環)でありうる。用語「ヘテロアリール」は、N、O、S、Si及びBから選択される1〜4個のヘテロ原子を含むアリール基(又は環)を表す。ここで、窒素及びイオウ原子は、任意に酸化されていてもよく、窒素原子は、任意に四級化されていてもよい。ヘテロアリール基が、ヘテロ原子を介して該分子の残部に結合していてもよい。アリール及びヘテロアリール基の非限定例として、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンゾイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリニル、5-イソキノリニル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、及び6-キノリルが挙げられる。上記各アリール及びヘテロアリール環系の置換基は、後述する許容しうる置換基の群から選択される。
簡潔さのため、他の用語と組み合わせて使用するときの用語「アリール」(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)は、上記定義どおりのアリール及びヘテロアリール環の両方を包含する。従って、用語「アリールアルキル」は、アリール基が、炭素原子(例えば、メチレン基)が例えば、酸素原子と置き換わっている当該アルキル基(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピル等)を含めたアルキル基に結合している当該基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチル等)を含むことを意味する。
【0022】
上記各用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「アリール」及び「ヘテロアリール」)は、示された基の置換及び無置換の両形態を含むことを意味する。各タイプの基の好ましい置換基を以下に提供する。
アルキル及びヘテロアルキル基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル、及びヘテロシクロアルケニルと称することが多い当該基を包含する)の置換基は、総称的に「アルキル基置換基」と呼ばれ、それらは、限定するものではないが、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール、置換又は無置換ヘテロシクロアルキル、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R”、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R”R”'、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R”、-OC(O)NR'R”、-NR”C(O)R'、-NR'-C(O)NR”R”'、-NR”C(O)2R'、-NR-C(NR'R”R'”)=NR””、-NR-C(NR'R”)=NR'”、-S(O)R'、-S(O)2R'、-OS(O)2R'、-S(O)2NR'R”、-NRSO2R'、-CN及び-NO2から選択される種々の基の1つ以上であってよい(0〜(2m'+1)の範囲の数、ここでm'は、該基中の炭素原子の総数である)。R'、R”、R”'及びR””は、それぞれ好ましくは独立に水素、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、例えば、1〜3個のハロゲンで置換されているアリール、置換又は無置換アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、又はアリールアルキル基を表す。本発明の化合物が1つより多くのR基を含む場合、例えば、各R基は、これらの1つより多くの基が存在する場合に各R'、R”、R'”及びR””基が独立に選択されるように独立に選択される。R'及びR”が同一窒素原子に結合している場合、それらが該窒素原子と共に結合して5員、6員、又は7員環を形成しうる。例えば、-NR'R”は、限定するものではないが、1-ピロリジニル及び4-モルフォリニルを包含する。置換基の上記論考から、当業者には、用語「アルキル」が水素基以外の基に結合している炭素原子を含む基、例えばハロアルキル(例えば、-CF3及び-CH2CF3)及びアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3等)を包含することを意味することが分かるだろう。
【0023】
アルキル基について述べた置換基と同様に、アリール及びヘテロアリール基の置換基を、総称的に「アリール基置換基」と称する。この置換基は、例えば、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール、置換又は無置換ヘテロシクロアルキル、-OR'、=O、=NR'、=N-OR'、-NR'R”、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R”R”'、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R”、-OC(O)NR'R”、-NR”C(O)R'、-NR'-C(O)NR”R”'、-NR”C(O)2R'、-NR-C(NR'R”R'”)=NR””、-NR-C(NR'R”)=NR'”、-S(O)R'、-S(O)2R'、-S(O)2NR'R”、-NRSO2R'、-CN及び-NO2、-R'、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキシ、及びフルオロ(C1-C4)アルキル(0から芳香環系上の開原子価の総数の範囲の数)から選択され;かつR'、R”、R”'及びR””は、好ましくは水素、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール及び置換又は無置換ヘテロアリールから独立に選択される。本発明の化合物が1つより多くのR基を含む場合、例えば、各R基は、これらの1つより多くの基が存在する場合に各R'、R”、R'”及びR””基が独立に選択されるように独立に選択される。
アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の2つの置換基は、任意に式-T-C(O)-(CRR')q-U-の置換基(式中、T及びUは、独立に-NR-、-O-、-CRR'-又は単結合であり、qは、0〜3の整数である)と置き換わってもよい。或いは、アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の2つの置換基は、任意に式-A-(CH2)r-B-の置換基(式中、A及びBは、独立に-CRR'-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR'-又は単結合であり、rは1〜4の整数である)と置き換わってもよい。そのようにして形成された新しい環の単結合の1つは、任意に二重結合と置き換わってもよい。或いは、アリール又はヘテロアリール環の隣接原子上の2つの置換基は、任意に式-(CRR')s-X-(CR”R'”)d-の置換基(s及びdは、独立に0〜3の整数であり、Xは、-O-、-NR'-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、又は-S(O)2NR'-である)と置き換わってもよい。置換基R、R'、R”及びR'”は、好ましくは水素又は置換若しくは無置換(C1-C6)アルキルから独立に選択される。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「シリル基置換基」は、限定するものではないが、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール、置換又は無置換ヘテロシクロアルキル、アシル、-OR'、-NR'R”、-SR'、-ハロゲン、-SiR'R”R”'、-OC(O)R'、-C(O)R'、-CO2R'、-CONR'R”、-OC(O)NR'R”、-NR”C(O)R'、-NR'-C(O)NR”R”'、-NR”C(O)2R'、-NR-C(NR'R”R'”)=NR””、-NR-C(NR'R”)=NR'”、-S(O)R'、-S(O)2R'、-OS(O)2R'、-S(O)2NR'R”、-NRSO2R'、-CN及び-NO2から選択される種々の基の1つ以上であってよく、R'、R”、R”'及びR””は、それぞれ好ましくは独立に水素、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、例えば、1〜3個のハロゲンで置換されているアリール、置換又は無置換アルキル、アルコキシ若しくはチオアルコキシ基、又はアリールアルキル基を表す。本発明の化合物が1つより多くのR基を含む場合、例えば、各R基は、これらの1つより多くの基が存在する場合に各R'、R”、R'”及びR””基が独立に選択されるように独立に選択される。R'及びR”が同一窒素原子に結合している場合、それらが該窒素原子と結合して5員、6員、又は7員環を形成しうる。例えば、-NR'R”は、限定するものではないが、1-ピロリジニル及び4-モルフォリニルを包含する。置換基の上記論考から、当業者には、用語「アルキル」が水素基以外の基に結合している炭素原子を含む基、例えばハロアルキル(例えば、-CF3及び-CH2CF3)及びアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3等)を包含することを意味することが分かるだろう。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「非反応性シリル基置換基」は、該シリル基置換基と本発明の基材との間に共有結合を形成するように本発明の基材と反応しない「シリル基置換基」を意味する。典型的な「非反応性シリル基置換基」としては、アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル及び他の低級アルキル基)又はアリール基(例えば、フェニル及びチオフェニル)が挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「反応性シリル基置換基」は、該シリル基置換基と本発明の基材との間に共有結合を形成するように本発明の基材と反応しうる「シリル基置換基」を意味する。典型的な「反応性シリル基置換基」としては、一般的に脱離基と定義される当該基、例えばハロゲン(例えば、Cl及びBr)が挙げられる。他の典型的な「反応性シリル基置換基」として、アルコキシ基(例えば、メトキシ又はエトキシ)並びに一級及び二級アミノ基が挙げられる。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「アシル」は、カルボニル残基、C(O)Rを含む置換基を表す。Rについての典型的な種類としては、H、ハロゲン、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール、及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルが挙げられる。
本明細書で使用する場合、用語「縮合環系」は、各環が別の環と少なくとも2個の原子を共有する少なくとも2つの環を意味する。「縮合環系」は、芳香環のみならず非芳香環をも包含しうる。「縮合環系」の例は、ナフタレン、インドール、キノリン、クロメン等である。
本明細書で使用する場合、用語「ヘテロ原子」として、酸素(O)、窒素(N)、イオウ(S)、ケイ素(Si)及びホウ素(B)が挙げられる。
記号「R」は、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール、及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキル基から選択される置換基群を表す総括的略号である。
【0027】
本発明の化合物が相対的に塩基性又は酸性の官能性を含む場合、該化合物の塩が本発明の範囲に包含される。該化合物の中性形を十分な量の所望酸又は塩基と、溶媒なし又は適切な不活性溶媒中で接触させることによって塩を得ることができる。本発明の相対的酸性化合物の塩の例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ、若しくはマグネシウム塩、又は同様の塩が挙げられる。本発明の化合物が相対的に塩基性の官能性を含む場合、該化合物の中性形を十分な量の所望酸と、溶媒なし又は適切な不活性溶媒中で接触させることによって酸付加塩を得ることができる。酸付加塩の例として、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸、又は亜リン酸などのような無機酸から誘導される当該塩、並びに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸などのような有機酸から誘導される塩が挙げられる。アルギナート等のアミノ酸の塩、及びグルクロン酸又はガラクツロン酸(galactunoric acid)等の有機酸の塩も挙げられる(例えば、Berge et al., Journal of Pharmaceutical Science 1977, 66: 1-19参照)。本発明の一定の特有化合物は、塩基性と酸性の両官能性を含み、該化合物を塩基塩又は酸付加塩のどちらにも変換しうる。
残基が「O-」(COO-)と定義される場合、この式は、任意にH又はカチオン性対イオンを含むことを意味する。好ましくは、本化合物の塩形は医薬的に許容性である。
【0028】
本化合物の中性形は、好ましくは該塩を塩基又は酸と接触させ、かつ常法で親化合物を単離することによって再生される。この化合物の親形は、一定の物理的性質、例えば極性溶媒中の溶解度が種々の塩形と異なるが、他の点では本発明の目的のための化合物の親形と等価である。
本発明の特定化合物は、非溶媒和形及び溶媒和形、例えば水和形で存在しうる。一般的に、溶媒和形は非溶媒和形と等価であり、本発明の範囲内に包含される。一般的に、全ての物理的形は本発明が想定する用途では等価であり、本発明の範囲内であるものとする。「化合物又は化合物の医薬的に許容しうる塩若しくは溶媒和物」は、塩と溶媒和物の両方である物質が包含されるという点で、「又は」の包括的意味を意図する。
本発明の特定化合物は、不斉炭素原子(光学中心)又は二重結合を有し、ラセミ体、ジアステレオマー、幾何異性体及び個々の異性体は、本発明の範囲に包含される。キラル合成素子若しくはキラル試薬を用いて光学活性な(R)-異性体と(S)-異性体を調製するか又は従来技術を用いて光学活性な(R)-異性体と(S)-異性体に分割することができる。本明細書に記載の化合物がオレフィン二重結合又は幾何的非対称の他の中心を含む場合、特に断らない限り、本化合物はE及びZの両幾何異性体を包含するものとする。同様に、全ての互変異性形も含まれるものとする。
【0029】
本明細書で使用するラセミ化合物、アンビスケールミック(ambiscalemic)化合物及びスケールミック(scalemic)化合物又は鏡像異性的に純粋な化合物の図式的表現はMaehr, J. Chem. Ed., 62: 114-120 (1985)から引き出され:くさび形の実線及び破線は、キラル元素の絶対配置を示すために使用し;波状の線は、その結合が生じさせうる如何なる立体化学を包含することをも否認することを示し;実線及び破線の太線は、図示されている相対配置を示すが、いずれの絶対配置をも暗示しない幾何学的記述子であり;くさび形の輪郭線及び点線又は破線は、不定の絶対配置の鏡像異性的に純粋な化合物を示す。
本明細書では、用語「エナンチオマー過剰及びジアステレオマー過剰」を相互交換可能に使用する。単一の立体中心のある化合物を「エナンチオマー過剰」で存在していると称し、少なくとも2つの立体中心のある化合物を「ジアステレオマー過剰」で存在していると称する。
本発明の化合物が、該化合物を構成する1つ以上の原子について原子同位体の人造の性質を含んでもよい。例えば、化合物を放射性同位元素、例えばトリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)又は炭素-14(14C)等で放射標識してよい。本発明の化合物の全ての同位元素の変形は、放射性であってもなくても、本発明の範囲に包含されるものとする。
【0030】
II. 序論
本発明は、基材と共有結合している化合物を含む組成物に関し、前記化合物は少なくとも1つの疎水性リンカー及び極性頭部基、例えば1,2-ジオールを含む。本発明の組成物は、クロマトグラフィー、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分野の固定相又は充填材料として有用である。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、極性(親水性)及び無極性(疎水性)分子の両方のクロマトグラフ分離に有用である。基材と結合している化合物の親水性成分と疎水性成分の間の最適なバランスが新しい充填材料にとってユニークなクロマトグラフィー特性をもたらし、界面活性剤の分析を含めた種々の応用で役に立つ(例えば、エトキシル化非イオン性界面活性剤の疎水性物質の分配)。さらに、本発明は、エポキシ基を組み入れた新規シランの合成及びそれらをシリカゲル等の基材上に固定化するための方法に関する。
【0031】
好ましい実施形態では、移動相が高濃度の有機溶媒を有するHILIC様式でも、移動相が水性溶媒を含む逆相(RP)様式でも新規充填材料を使用できる。クロマトグラフィーの固定相/充填材料として、本発明の組成物は、下記利点を含め、多くの利点を提供する。1.新材料は、従来の逆相クロマトグラフィーによっては保持されない高極性分子を保持することができる。
2.新充填材料の選択性は、逆相カラムに相補的である。
3.非結合シリカ(すなわち、順相カラム)に比し、新しい相はより速い平衡時間及びより良い再現性によって特徴づけられる。
4.三炭素結合のある従来のジオール相に比し、新しい相は改良された疎水性及び化学的安定性によって特徴づけられる。
5.新材料は、高含量(例えば、80%超え)の有機溶媒を含む移動相と共に使用できるので、質量分析での感度を増強する(例えば、ESI-MS応答の増強)。
6.新材料は、逆相及び順相の両様式で使用できる。
7.新材料を用いて、従来のクロマトグラフィー媒体を用いて分析するのが困難な分子を分析することができる。例えば、効率的に分析できる化合物として、非イオン性エトキシル化界面活性剤及び他の高極性分子(例えば、尿素)並びにペプチド及び脂質が挙げられる。
【0032】
III. 組成物
固定相
本発明は、種々のクロマトグラフィー応用で固定相又は充填材料として有用な組成物を提供する。或いは、膜、フィルター及びマイクロ流体デバイス等の化合物の分離、検出及び分析に有用な他の製品で本発明の組成物を使用しうる。
本組成物は基材(例えば、シリカゲル)と、シリル基によって該基材と共有結合している化合物とを含む。本化合物は、少なくとも1つの疎水性基及び極性頭部基を含む。本発明の組成物を一般的に下記構造で示すことができる。ここで、nは0又は1のどちらかである。
【0033】
【化4】

【0034】
一実施形態では、極性頭部基がジオール成分である。従って、第一態様では、本発明は、基材と共有結合している化合物を含み、該化合物が下記式(I)を有し、式中、nが0及び1から選択される整数である組成物を提供する。
【0035】
【化5】

【0036】
シリル基置換基
式(I)中、R1、R2及びR3はシリル基置換基である。R1、R2及びR3の少なくとも1つが本発明の基材に共有結合している。典型的実施形態では、R1、R2及びR3の1つが基材と共有結合している。別の典型的実施形態では、R1、R2及びR3の2つが基材と共有結合している。さらに別の実施形態では、R1、R2及びR3がそれぞれ基材と共有結合している。
一例では、R1、R2及びR3は、ハロゲン、OR10、NR10R11、アシル、OC(O)R12、OS(O)2R12、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、このとき各R10及び各R11は、H、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール、置換又は無置換ヘテロシクロアルキル及び本発明の基材(例えば、シリカゲル)との結合から独立に選択されるメンバーである。各R12は、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール、置換又は無置換ヘテロシクロアルキルメンバーから独立に選択されるメンバーである。
別の例では、R1、R2及びR3の少なくとも1つが非反応性シリル基置換基である。この文脈では、「非反応性シリル基置換基」は、該シリル基置換基と基材との間に共有結合を形成するように基材と反応しない。典型的な非反応性シリル基置換基としては、アルキル 基又はアリール基が挙げられる。好ましい実施形態では、R1、R2及びR3の少なくとも1つが、置換又は無置換C1-C6アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル等)から選択されるメンバーである。さらに別の例では、R1、R2及びR3の2つが非反応性シリル基置換基である。例えば、R1、R2及びR3の2つが、置換又は無置換アルキル、例えば置換又は無置換C1-C6アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル等)から独立に選択されるメンバーである。特に好ましい実施形態では、R1、R2及びR3の1つ又は2つがメチルである。
【0037】
リンカー
式(I)中、式(I)のL1及びL2はリンカー基であり、一実施形態では、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択される。
好ましい実施形態では、本発明の化合物は、少なくとも1つの疎水性リンカーを含む。nが1の場合、式(I)中のL1及びL2の少なくとも1つが疎水性成分を含む。nが0の場合、L2が疎水性成分を含む。この文脈では、「疎水性成分」は、好ましい数の連続した炭素原子を有する炭素鎖を含み、この数は下限と上限によって定義される。下限については、疎水性成分は好ましくは少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、又は少なくとも12個の連続した炭素原子を含む。特に好ましい実施形態では、疎水性成分が少なくとも7個の連続した炭素原子を含む。上限については、疎水性成分は好ましくは約50個以下の連続した炭素原子、連続した約30個以下の炭素原子、約25個以下の炭素原子、約20個以下の炭素原子、約15個以下の炭素原子を含む。連続した炭素原子数の典型的範囲は、上述した上限と下限との間で形成されうる。さらに別の実施形態では、疎水性成分は50個超えの連続した炭素原子を含む。
疎水性成分内において、連続した炭素原子の少なくとも2個が任意に環の一部であってよく(例えば、5員又は6員環)、このとき該環はアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル及び縮合環系(アリール、ヘテロアリール及びシクロアルキル環を含みうる)から選択されるメンバーである。この環は、任意に非極性(疎水性)置換基、例えば無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル又はプロピル基)で置換されていてもよい。好ましい実施形態では、疎水性成分は、該組成物が逆相特性を示すのに十分に疎水性である。
【0038】
極性基Y
式(I)中、nが1の場合、本発明の化合物は極性基Yを含む。この基は、2つのリンカー基L1及びL2を連結するのに役立ついずれの適切な基であってもよい。一実施形態では、L1及びL2は、エーテル結合、チオエーテル結合、アミド又はスルホンアミド基を介してか、或いはカルボナート、カルバマート、尿素又はチオ尿素基を介して連結されている。特に好ましい実施形態では、Yがアミド基:-C(O)NR13-又はNR13C(O)-であり、このときR13は、H、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである。好ましい実施形態では、R13が水素又は低級アルキル、例えばメチルである。
【0039】
極性頭部基
極性頭部基は、少なくとも1つ、好ましくは2つのヒドロキシル基を含むいずれの成分であってもよい。一実施形態では、極性頭部基が上記式(I)に示されるように置換又は無置換1,2-ジオール成分である。R4はアルキル基置換基である。一例では、R4がH、アシル、置換又は無置換アルキル(例えば、C1-C4アルキル)及び置換又は無置換ヘテロアルキル(例えば、C1-C4ヘテロアルキル)から選択されるメンバーである。好ましい実施形態では、R4がHである。この実施形態の典型的構造を以下に示す。
【0040】
【化6】

【0041】
別の好ましい実施形態では、R4とL2の置換基とが、それらが結合している原子と共に任意に結合して、置換又は無置換シクロアルキル及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから選択される3員〜7員環を形成していてもよい。環は、好ましくはシクロアルキルであり、任意に非極性(疎水性)置換基、例えば無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル又はプロピル基)で置換されていてもよい。この実施形態の典型的構造を以下に示す。
【0042】
【化7】

式中、sは0及び1から選択される整数であり、rは2〜30から、好ましくは2〜30から、さらに好ましくは2〜10から、最も好ましくは2〜6から選択される整数である。
式(I)中、R20は、H、置換アルキル、置換ヘテロアルキル及び置換ヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである。但し、R20の少なくとも1つの置換基はOHである。一実施形態では、R20は、求核性酸素を有する求核試薬を用いたエポキシド環の求核開環から誘導される成分である。一例では、R20はポリエーテル成分を含む。別の例では、R20がHである。
【0043】
基材
本発明の基材は、多孔性及び非多孔性固体などのクロマトグラフィー用固定相/充填材料として有用ないずれの材料(例えば、粒子)であってもよい。
典型的基材としては、シリカベース(例えば、二酸化ケイ素)、チタンベース(例えば、酸化チタン)、ゲルマニウムベース(例えば酸化ゲルマニウム)、ジルコニウムベース(例えば、酸化ジルコニウム)及びアルミニウムベース(例えば、酸化アルミニウム)材料が挙げられる。他の基材として、架橋及び非架橋ポリマー、炭化材料及び金属が挙げられる。本発明の化合物をポリマーネットワーク、ゾル-ゲルネットワーク又はそのハイブリッド形に組み入れることもできる。一実施形態では、基材はシリカベース基材である。典型的なシリカベース基材として、シリカゲル、ガラス、ゾル-ゲル、ポリマー/ゾル-ゲルハイブリッド及びシリカモノリス(monolithic)材料が挙げられる。
一例では、基材は、本発明の化合物、例えば式(VIa)及び(VIb)の化合物の活性化シリル基と反応して、基材と該化合物との間に共有結合を形成できる反応性官能基を含む。基材の反応性官能基としては、シラノール基並びにアルコキシシラン、ハロシラン及びアミノシラン成分が挙げられる。他の典型的な反応性基としては、金属水酸化物、例えば水酸化チタン及び水酸化ジルコニウムが挙げられる。
特に好ましい実施形態では、基材がシリカゲルである。適切なシリカゲルには、種々の細孔径、好ましくは20Å〜3000Å、さらに好ましくは60Å〜2000Å;かつ種々の粒径、好ましくは、0.2um〜1000um、さらに好ましくは、2um〜50umの非多孔性及び/又は多孔性シリカ粒子が包含される。
【0044】
本発明の典型的な組成物
一実施形態では、式(I)中の整数nが0であり、かつリンカーL2が芳香環、例えばフェニル環を含む。この実施形態の一例では、本化合物は下記式(II)の構造を有する。
【0045】
【化8】

式中、mは0〜4より選択される整数である。L3は、置換又は無置換アルキルから選択されるメンバーであるリンカー基である。一例では、L3が直鎖又は分岐鎖アルキル(例えば、C2-C20アルキル)である。L4は、単結合、置換又は無置換アルキル及び置換又は無置換ヘテロアルキルから選択されるメンバーであるリンカー基である。一例では、L4が、任意に1つ以上のエーテル又はチオエーテル基で中断されていてもよい直鎖又は分岐鎖アルキルである。
各R5はアリール基置換基である。典型的実施形態では、各R5が、H、置換又は無置換アルキル及び置換又は無置換ヘテロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、このとき2つの隣接するR5が、それらが結合している原子と共に任意に結合して5員〜7員環を形成していてもよく、該環は芳香環又は非芳香環であってよい。一実施形態では、環がフェニル環であって、ナフチル成分を形成している。特に好ましい実施形態では、各R5がH及び非極性置換基、例えば無置換アルキルから独立に選択されるメンバーである。一例では、各R5がH及び無置換C1-C4アルキル(例えば、メチル、又はエチル)から独立に選択されるメンバーである。
別の典型的実施形態では、式(II)の化合物は下記式(III)の構造を有する。
【0046】
【化9】

【0047】
式(III)中、pは2〜20、好ましくは2〜15、さらに好ましくは2〜10より選択される整数であり、qは0〜10、好ましくは0〜5より選択される整数である。この実施形態の典型的構造を以下に提供する。
【0048】
【化10】

【0049】
さらに別の典型的実施形態では、式(I)中、nが0であり、かつL2が直鎖又は分岐鎖アルキルである。この実施形態の一例では、L2がアルキル置換又は無置換C5-C30アルキル、好ましくは無置換C6-C25アルキル、さらに好ましくは無置換C6-C20アルキルである。特に好ましい実施形態では、L2がC6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14又はC15無置換アルキルである。この実施形態の典型的構造を以下に提供する。
【0050】
【化11】

【0051】
さらなる典型的実施形態では、式(I)中、nが1であり、かつL2が直鎖又は分岐鎖アルキルである。この実施形態の一例では、L2がアルキル置換又は無置換C5-C30アルキル、好ましくは無置換C6-C25アルキル、さらに好ましくは無置換C6-C20アルキルである。特に好ましい実施形態では、L2がC6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14又はC15無置換アルキルである。この実施形態の典型的構造を以下に提供する。
【0052】
【化12】

【0053】
特に好ましい実施形態では、式(I)中のR1、R2及びR3の少なくとも1つがOR10(ここで、R10は、基材(例えば、シリカゲル)との結合を表す)である。本発明の典型的組成物は、下記式(V)の構造を有する。
【0054】
【化13】

式中、nは0及び1から選択される整数であり、R1、R3、R4、R20、L1、L2及びY並びに基材は、式(I)について上で定義したとおりである。
一実施形態では、式(V)中のR1とR3の少なくとも1つが非反応性シリル基置換基である。典型的実施形態では、R1とR3の少なくとも1つが置換又は無置換アルキルから選択されるメンバーである。一例では、R1とR3の少なくとも1つが無置換C1-C6アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル等)である。別の例では、R1とR3が両方とも置換又は無置換アルキル、例えば無置換C1-C6アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル等)から独立に選択されるメンバーである。好ましい実施形態では、R1とR3の少なくとも1つがメチルである。別の好ましい実施形態では、R1とR3が両方ともメチルである。
式(V)の典型的組成物として以下のものが挙げられる。
【0055】
【化14】

【0056】
ジオール相15をクロマトグラフィーで評価した(実施例8〜10参照)。この材料は、従来のジオール相のクロマトグラフ特性と異なるクロマトグラフ特性を有することが分かった。増強した疎水性の導入により、新規ジオール相の逆相条件への作動範囲が拡大する(図5及び図6参照)。さらに、疎水性官能性と親水性官能性の組合せがエトキシル化分子、例えばアルキルフェノエトキシラート(alkylphenoethoxylate)(IGEPAL CA-630)中のオリゴマーの分解を促進する(例えば図4及び図6参照)。
本発明は、本発明の組成物が容器に包含される実施形態を提供する。容器は、好ましくはクロマトグラフィーカラムである。典型的クロマトグラフィーカラムとして、金属カラム、ガラスカラム及び例えばプラスチック等のポリマー材料製カラムが挙げられる。金属カラムは、高圧を利用するクロマトグラフィー(例えば、HPLC)で一般的に使用されるものであってよい。プラスチックカラムは、分取用クロマトグラフィーシステムで一般的に利用されるものであってよい。該ポリマーカラムは多くの場合使い捨て式であり、カートリッジと呼ばれることが多い。
【0057】
出発原料
第二態様では、本発明は、反応性シリル基及び前駆体成分(極性頭部基に変換できる)を組み入れた化合物を提供する。該化合物は、下記一般式を有する。
【0058】
【化15】

【0059】
一実施形態では、本化合物は、エポキシド成分又は保護されたジオール成分を組み入れる。本化合物は、下記式(VIa)及び(VIb)(式中、nは0及び1から選択される整数である)の構造を有する。
【0060】
【化16】

【0061】
式(VIa)及び(VIb)中、L1、L2、R4、R20及びYは、式(I)について上で定義したとおりである。式(VIb)中、Zは保護基であり、R21は、保護基、置換アルキル、置換ヘテロアルキル及び置換ヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである。但し、R21の少なくとも1つの置換基は保護されたヒドロキシル基である。一実施形態では、R21が、求核性酸素を有する求核試薬を用いたエポキシド環の求核開環から誘導される成分である。一例では、R21がポリエーテル成分を含む。任意にZとR21が結合して環を形成し、環式1,2-ジオール保護基、例えばケタールを生じさせうる。式(VIb)のヒドロキシル基及び1,2-ジオール基の保護用の典型的保護基には、Greene W.及びWuts P. G. M.、「有機化学の保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)」(Wiley、第3版、1999)、例えば17〜245ページに記載されている当該保護基が含まれる。一例では、式(VIb)中のZが置換メチル基であり、置換メチルエーテル、例えばメトキシメチル(MOM)エーテルを形成する。
【0062】
nが1の場合、式(VIa)及び(VIb)中のL1とL2の少なくとも1つが疎水性成分を含む。nが0の場合、L2が疎水性成分を含む。この文脈では、「疎水性成分」が好ましい数の連続した炭素原子を有する炭素鎖を含み、この数は下限と上限によって定義される。下限については、「疎水性成分」が好ましくは少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12個の連続した炭素原子を含む。特に好ましい実施形態では、疎水性成分が少なくとも7個の連続した炭素原子を含む。上限については、「疎水性成分」が好ましくは約50個以下の連続した炭素原子、連続した約30個以下の炭素原子、約25個以下の炭素原子、約20個以下の炭素原子、約15個以下の炭素原子を含む。連続した炭素原子数の典型的範囲は、上述した下限と上限の間で形成されうる。さらに別の実施形態では、疎水性成分は50個より多い連続した炭素原子を含む。疎水性成分内では、少なくとも2個の連続した炭素原子が任意に環(例えば、5員又は6員環)の一部であってよく、このとき環は、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル並びにアリール、ヘテロアリール及びシクロアルキル環を含みうる縮合環系から選択されるメンバーである。環は、任意に非極性(疎水性)置換基、例えば無置換アルキル基(例えば、メチル、エチル又はプロピル基)で置換されていてもよい。
【0063】
典型的実施形態では、式(VIa)及び(VIb)の化合物は、本発明の組成物の合成の出発原料として有用である。
式(VI)中、R6、R7及びR8はシリル基置換基であり、Si原子と共に活性化シリル基を形成する。活性化シリル基は、少なくとも1つの反応性シリル基置換基を含む。反応性シリル基置換基は、本発明の基材と反応して、該化合物と基材との間に共有結合を形成することができる。従って、R6、R7及びR8の少なくとも1つが反応性シリル基置換基である。典型的な反応性シリル基置換基として、アルコキシ基、ハロゲン及び一級又は二級アミノ基が挙げられる。
一実施形態では、R6、R7及びR8は、ハロゲン、OR14、NR14R15、OC(O)R16、OS(O)2R16、アシル、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーである。各R14及び各R15は、H、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーである。各R16は、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーである。好ましい実施形態では、R6、R7及びR8の少なくとも1つがOH、無置換アルキル、無置換アリール、無置換ヘテロアリール及び無置換ヘテロシクロアルキル以外である。
一例では、R6、R7及びR8の1つが非反応性シリル基置換基である。別の例では、R6、R7 及びR8の2つが非反応性シリル基置換基である。典型的な非反応性シリル基置換基としては、アルキル基又はアリール基が挙げられる。好ましい実施形態では、R6、R7及びR8の1又は2つが、無置換C1-C6アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル等)から選択されるメンバーである。さらに別の例では、R6、R7及びR8の2つが非反応性シリル基置換基である。例えば、R6、R7及びR8の2つが、置換又は無置換アルキル、例えば置換又は無置換C1-C6アルキル(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル等)から独立に選択されるメンバーである。特に好ましい実施形態では、R6、R7及びR8の1又は2つがメチルである。
式(VIa)及び(VIb)の典型的化合物として以下のものが挙げられる。
【0064】
【化17】

【0065】
方法
当技術分野で既知の方法及び本明細書に記載の方法を用いて本発明の組成物及び化合物を合成することができる。典型的方法について下記スキーム1〜3、及び実施例1〜6で概要を述べる。一定の実施形態の化合物を合成するためには当該方法の変更が必要なこともある。当業者には、当該代替方法が明白であろう。本発明の組成物及び化合物を調製するために有用な出発原料及び試薬は商業的に入手可能であるか又は技術上認知されている方法論を用いて調製されうる。
【0066】
式(VI)の化合物の合成(出発原料)
一実施形態では、下記スキーム1(整数tは、0〜30、好ましくは2〜20、最も好ましくは2〜15から選択される整数である)で概要を示す手順を用いて式(VIa)の化合物を調製する。スキーム1中、白金(0)触媒などの触媒の存在下でシランを用いて化合物30の末端二重結合をヒドロシリル化して化合物31を得る。
【0067】
スキーム1
【化18】

【0068】
別の例では、スキーム2(整数tは、0〜30、好ましくは4〜約30、さらに好ましくは4〜約20から選択され;整数uは、0〜約30、好ましくは1〜約20から選択される)で概要を示す手順を用いて式(VIa)の化合物(式中、nは1である)を合成する。スキーム2中、活性カルボン酸基(例えば、酸塩化物成分)を有する化合物32を塩基(例えば、トリエチルアミン)の存在下でアミン33と反応させてアミド34を形成する。引き続き、34の末端二重結合を酸化させてエポキシド成分を形成する。エポキシ化試薬は技術上周知であり、過安息香酸、例えばメタ-クロロ過安息香酸(m-CPBA)が挙げられる。エポキシ化反応を立体選択的に行ってキラル生成物をもたらすことができる。本発明のキラルエポキシドを用いて、キラルクロマトグラフィーに有用な本発明の組成物のキラル変形を合成することができる。
【0069】
スキーム2
【化19】

【0070】
スキーム2中、R13は、H、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーである。好ましい実施形態では、R13がH又は低級アルキル、例えばメチルである。
或いは、化合物34をまず本明細書に記載の本発明の基材に連結し、引き続き二重結合を酸化させてエポキシド成分を形成してから1,2-ジオール成分に変換してよい。この実施形態の典型的な合成戦略を図3に示し、組成物21への合成経路の概略を示す。
さらに別の例では、スキーム3(式中、整数tは、0〜30、好ましくは2〜20、最も好ましくは2〜15から選択される整数である)に概略を示した手順に従って式(VIb)の化合物を合成する。
【0071】
スキーム3
【化20】

【0072】
スキーム3では、求核試薬を用いて化合物30のエポキシド環を開く。ヒドロキシル基含有出発原料と適切な塩基、例えばNaHとの反応によって求核試薬を形成しうる。結果として生じた化合物35のOH基を保護して化合物36(式中、Zは保護基である)を形成しうる。この工程中、残基R20のさらなるヒドロキシル基を保護してもよい。適切な保護基、例えば置換メチルエーテル(例えば、MOMエーテル)については、式(VIb)を説明する文脈で本明細書に上述している。完全に保護された類似体36を次に、スキーム1で上述したようにヒドロシリル化して化合物37を形成する。
【0073】
式(I)の化合物の合成
式(VIa)及び(VIb)の化合物を基材(例えば、シリカゲル)に共有結合させて本発明の組成物を形成することができる。一実施形態では、基材と、化合物の少なくとも1つの反応性シリル基置換基との反応によって、基材と化合物との間に共有結合を形成する。典型的実施形態では、基材は、反応性シリル基置換基と反応して共有結合を形成する反応性官能基を含む。基材の典型的な反応性官能基として、シラノール及びアルコキシシラン基並びにハロシラン及びアミノシラン成分が挙げられる。
典型的に、シリカ基材と本発明の化合物との間の反応は、化合物及びシリカ基材のスラリーの混合物を不活性溶媒(例えば、トルエン)中で加熱することによって達成される。例えば、混合物を加熱して約2〜約100時間、好ましくは約10〜約80時間、さらに好ましくは約10〜約60時間還流させる。必要に応じて、カップリング触媒を添加して、基材の表面上で結合される基の密度及び結果として生じる相の形態を制御する。典型的なカップリング触媒としては、水並びに有機及び無機酸(例えば、HCl)及び塩基(NaOH、アミン)が挙げられる。
上記カップリング手順により、極性頭部基前駆体成分、例えばエポキシド又は保護された1,2-ジオール成分を組み入れた中間組成物が生じる。一実施形態では、この中間組成物は、下記式(VIIa)又は(VIIb)の構造を有する。
【0074】
【化21】

【0075】
【化22】

【0076】
一例では、中間組成物は、下記式(VIIIa)及び(VIIIb)の構造を有する。
【0077】
【化23】

【0078】
式(VIIa)、(VIIb)、(VIIIa)及び(VIIIb)の上記組成物は、クロマトグラフィーの固定相として役立つと予想され、かつ本発明の範囲内である。
本発明の中間組成物を極性頭部基前駆体の極性頭部基、例えば1,2-ジオール成分への変換によって、本発明の組成物、例えば、式(I)の当該組成物に変換することができる。一実施形態では、式(VIIa)又は式(VIIIa)のエポキシド成分を1,2-ジオール成分に変換する。該加水分解を行うことは、十分に当業者の能力範囲内である。例えば、中間組成物を有機酸(例えば、ギ酸)又は無機酸を含む水溶液で処理することによって、酸触媒加水分解を行い得る。
別の実施形態では、式(VIIb)及び(VIIIb)の保護されたジオール成分を脱保護して1,2-ジオール成分を形成する。保護基の除去も、十分に当業者の能力範囲内である。反応条件は、使用する保護基のタイプによって決まる。典型的脱保護手順として、Greene W.及びWuts P. G. M.、「有機化学の保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)、(Wiley、 第3版、1999)、例えば17〜245ページに記載の当該手順が挙げられる。一例では、式(VIIb)及び(VIIIb)中のZが置換メチル基であり、置換メチルエーテル、例えばメトキシメチル(MOM)エーテルを形成する。酸触媒加水分解によって該エーテルを対応するヒドロキシル基に変換することができる。
従って、本発明は、本発明の組成物の製造方法を提供する。一実施形態では、本方法は下記工程:(i)反応性官能基(例えば、シラノール基)を有する基材(例えば、シリカゲル)を、エポキシド成分を有し、かつ下記式(VIa):
【0079】
【化24】

(式中、R6、R7、R8、L1、L2、R4及びYは、式(VIa)について本明細書で定義される)の構造を有する化合物と、該基材の反応性官能基と、R6、R7及びR8の少なくとも1つとの間の反応によって、該化合物と該基材との間に共有結合を形成するのに十分な条件下で接触させる工程を含む。本方法は、さらに(ii)例えば、上述したように酸触媒加水分解によってか又は求核試薬を用いたエポキシド環の開環によって、該エポキシド成分を1,2-ジオール成分に変換する工程を含んでよい。好ましい実施形態では、R6、R7及びR8の少なくとも1つがハロゲン又はアルコキシ(例えば、メトキシ又はエトキシ)である。
【0080】
別の実施形態では、本方法は下記工程:(i)反応性官能基(例えば、シラノール基)を有する基材(例えば、シリカゲル)を、保護された1,2-ジオール成分を有し、かつ下記式(VIb):
【0081】
【化25】

(式中、n、R6、R7、R8、L1、L2、R4、R21、Z及びYは、式(VIb)について本明細書で定義した)の構造を有する化合物と、該基材の反応性官能基と、R6、R7及びR8の少なくとも1つとの間の反応によって、該化合物と該基材との間に共有結合を形成するのに十分な条件下で接触させる工程を含む。本方法は、さらに(ii)例えば、上述したように酸触媒加水分解によって、保護基を除去して1,2-ジオール成分を形成する工程を含んでよい。好ましい実施形態では、R6、R7及びR8の少なくとも1つがハロゲン又はアルコキシ(例えば、メトキシ又はエトキシ)である。
【0082】
クロマトグラフ法
別の実施形態では、本発明は、本発明の組成物、例えば式(I)の当該組成物を含む固定相に通して移動相を流す工程を含むクロマトグラフ法を提供する。一例では、移動相が液体である。典型的実施形態では、移動相が水を含む。移動相の含水量は好ましくは約0.1%v/v〜60%v/v、さらに好ましくは約1%〜約20%v/v、なおさらに好ましくは約1%〜約10%v/v、最も好ましくは約1%〜約5%v/vである。
別の実施形態では、本発明は、液体サンプル中の分析物を分離する方法であって、本発明の組成物を含む固定相に通して液体サンプルを流す工程を含む方法を提供する。典型的実施形態では、液体サンプルが水を含む。液体サンプルの含水量は好ましくは約0.1%v/v〜60%v/v、さらに好ましくは約1%〜約20%v/v、なおさらに好ましくは約1%〜約10%v/v、最も好ましくは約1%〜約5%v/vである。
【実施例】
【0083】
実施例1:シリルリガンド1の合成
1Lの丸底フラスコ内30mLのトルエン中50gの1,2-エポキシ-9-デセン(例えば、Aldrich)、100gの(EtO)Me2SiH(例えば、Gelest)の撹拌溶液に周囲温度で慎重に0.5gのPt(0)触媒(0.1%wt)(例えば、Gelest)を加えた。時折、触媒を添加すると発熱反応が観察される。フラスコに冷却管を取り付けて反応混合物を50℃に8時間加熱した。ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニターした。
GCで60%より高い変換が見出されたら、真空中で全揮発分を除去した。Kugelrohr蒸留(120℃/0.05トル)で残存揮発分を除去した。
【0084】
実施例2:シリルリガンド2の合成
1Lの丸底フラスコ内30mLのトルエン中50gの1,2-エポキシ-9-デセン(例えば、Aldrich)、100gの(EtO)2MeSiH(例えば、Gelest)の撹拌溶液に周囲温度で慎重に0.5gのPt(0)触媒(0.1%wt)(例えば、Gelest)を加えた。時折、触媒を添加すると発熱反応が観察される。フラスコに冷却管を取り付けて反応混合物を50℃に8時間加熱した。ガスクロマトグラフィーを用いて反応をモニターした。
GCで60%より高い変換が見出されたら、真空中で全揮発分を除去した。Kugelrohr蒸留(140℃/0.11トル)で残存揮発分を除去した。
【0085】
実施例3:シリルリガンド6の合成
機械式撹拌機、還流冷却管、添加漏斗、内部温度計及び窒素入口を備えたオーブン乾燥した1Lの四つ口フラスコ内の5.89g(0.24mol,1.2当量)の水素化ナトリウムに600mLの無水N,N-ジメチルホルムアミドを加えた。127.82g(1.2mol,6当量)のジエチレングリコールを1時間で滴下した。混合物を75℃で4時間撹拌した後、30.3gの1, 2-エポキシ-9-デセン(0.2mol,1当量)を30分にわたって滴下した。反応混合物を75℃で一晩撹拌してから室温に冷ました。真空中で揮発分を除去した。残留物に300mLの水を加えた。次にpHが2〜3になるまで濃HClを加えた。生成物を塩化メチレン(3×250mL)で抽出した。有機相を水(3×250mL)と食塩水(2×250mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。真空中で揮発分を除去した。残留物をKugelrohr蒸留(145℃/0.03mmHg)に供して42.90gの中間体Bを83%の収率で得た(GCで100%の純度)。
漏斗と窒素入口を備えた250mLの三つ口フラスコ内の60mLの1,2-ジメトキシエタン中5.20gの中間体B(20mmol,1当量)の溶液に8.9mLのジイソプロピルエチルアミンを加えた。混合物を0℃に冷却し、10mLの1,2-ジメトキシエタン中の3.65gのメトキシルメチル(MOM)クロリドを30分にわたって加えた。混合物を室温に戻して2日間撹拌した。次に混合物を200mLのエーテルで希釈し、水(3×75mL)と食塩水(3×75mL)で洗浄した。それを硫酸マグネシウム上で乾燥させ、真空中で揮発分を除去した。粗製残留物をKugelrohr蒸留(150℃/0.03mmHg)で精製して6.79gの中間体Cを98%の収率で得た(GCで96.45%の純度)。
冷却管を備えた100mLのフラスコ内の6.79gの中間体C(19.5mmol,1当量)と8.0mLのジメチルエトキシルシラン(58.1mmol,3当量)の撹拌混合物に慎重に2mLのトルエン中0.08gのPt(0)触媒の溶液(0.1%wt)を加えた(発熱反応が時々観察される)。混合物を52℃で一晩還流させた。真空中で揮発分を除去し、残留物をKugelrohr蒸留(185℃/0.03mmHg)で精製して7.56gのシリルリガンド6を85%の収率及びGCによる85.6%の純度で得た。
【0086】
実施例4:シリルリガンド7の合成
5℃以下(氷水浴)で窒素にてパージした5Lの三つ口丸底フラスコ内の無水CH2Cl2(1000mL)中のN-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン(180g,95%)とトリエチルアミン(140mL)の撹拌溶液に無水CH2Cl2(500mL)中の10-ウンデセノイルクロリド(220g,95%)の溶液をゆっくり加えた。反応混合物を周囲温度で16〜24時間撹拌した。GCを用いて反応をモニターした。反応が完了したら、混合物をろ過し、有機相をD.I.水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させた。真空中で揮発分を除去して中間体Aを橙色の油性液体として得た(290g)。
文献手順を利用して上記中間体Aを3-クロロ過安息香酸で酸化して[Tetrahedron Letter, 849 (1965)]シリルリガンド7を形成した。
【0087】
実施例5:典型的中間相8〜14を調製するための一般手順
典型的にトルエン等の不活性溶媒中のシリカゲルのスラリー内で高温にてシリカ基材と反応性シリル基を有する本発明の化合物との間のカップリング反応を行った。必要に応じて、水及び/又は酸若しくは塩基触媒を添加して、結果として生じる相の表面適用範囲及び形態を制御した(種々の応用に依る)。反応混合物を12〜72時間還流させた。この官能化シリカを次にろ別し(例えば、ガラスフリットフィルターを用いて)、有機溶媒で徹底的に洗浄した。固体を乾燥(例えば、フィルター上で空気乾燥)させて、エポキシド成分又は保護されたジオール成分で官能化された結合シリカを得た(式(VIIa及びVIIb)の中間相)。典型的中間相8、13及び14の調製の概要をそれぞれ図1、2及び3に示す。
【0088】
実施例6:ジオール相15〜21を調製するための一般手順
加速溶媒抽出(accelerated solvent extraction)(ASE)セル(100mLセル)内で50℃にて4時間、25gの上記式(VII)の結合シリカを0.2%ギ酸で処理した。次にシリカをアセトニトリルで徹底的にすすいで真空オーブン内で3時間乾燥させて式(I)のジオール相を得た。ジオール相15、20及び21の調製の概要をそれぞれ図1、2及び3に示す。
【0089】
実施例7:ジオール相21を調製するための代替手順
250mLの乾燥フラスコ内75mLの無水m-キシレン中の25gの生シリカ(5ミクロン,120Å,真空中200℃で20時間乾燥させた)のスラリーに25gのシリル中間体Aの溶液を加え、結果として生じた混合物をよく混ぜた(例えば、振とう及び/又は超音波処理)。反応混合物を120時間還流させてからシリカをろ別し、ジクロロメタンで洗浄した。
上記シリカをジクロロメタン中の3-クロロ過安息香酸の溶液で5℃にて処理し、反応混合物を4時間撹拌した。次にシリカをろ別し、ジクロロメタンで徹底的に洗浄してからアセトンで洗浄してジオール相21を得た。
【0090】
実施例8:ジオール相15と市販のジオール充填材の比較
ジオール相15と市販のジオール充填材料を、アルキルフェノールエトキシ界面活性剤(IGEPAL CA-630)の分析中のそれらの性能について比較した。結果として生じたクロマトグラムを図4に示す。同一クロマトグラフィー条件下で、15で充填したカラムは、市販対応物に比べてオリゴマーの良い分解能を示す。試験条件は以下のとおりだった。
カラム寸法:4.6×150mm、5μmの粒径
移動相:99/1v/vのアセトニトリル/100mMの酢酸アンモニウム、pH 5.2
温度:30℃
流速:1mL/分
注入体積:10μL
検出波長:225nm
サンプル:IGEPAL CA-630(0.1%)
【0091】
実施例9:逆相及び順相様式におけるジオール相15の選択性の比較
極性(シトシン)及び無極性(ナフタレン)試験分析物を用いて逆相様式と順相様式の両方でジオール相15の選択性を決定した。結果を図5に示す。逆相様式(52%アセトニトリルを含む移動相)では、疎水性分子(ナフタレン)の前に極性分子(シトシン)が溶出する。移動相が92%アセトニトリルを含む場合、ジオール相15は順相挙動を示し、化合物の極性とともに保持時間が増える。これらの結果は、ジオール相15が逆相及び順相の両適用で使用できることを示唆している。試験条件は以下のとおりだった。
カラム寸法:4.6×150mm、5μmの粒径
移動相:52/48(逆相)又は92/8(順相)v/vのアセトニトリル/100mMの酢酸アンモニウム、pH 5.2
温度:30℃
流速:1mL/分
注入体積:10μL
検出波長:254nm
サンプル:シトシン(100ppm)及びナフタレン(100ppm)
【0092】
実施例10:充填材料15を用いたアルキルフェニルエトキシル化界面活性剤(IGPAL CA-630)の分析
ジオール相15で充填したカラム及び種々の量のアセトニトリルを含む移動相を用いて界面活性剤IGEPAL CA-630を分析した。結果を図6に要約する。水に富んだ移動相では、新充填材料は逆相材料と同じように作用し、移動相の含水量が多いと、分析物の保持力が増す。有機に富んだ移動相では、ジオール相15は順相と同じように作用し、移動相の有機含量が多いと、保持力が増す。さらに、オリゴマー分解能は順相条件下で向上し、逆相条件下では低減する。試験条件は以下のとおりだった。
カラム寸法:4.6×150mm、5μmの粒径
移動相:40/60〜99/1v/vのアセトニトリル/100mMの酢酸アンモニウム、pH 5.2
温度:30℃
流速:1mL/分
注入体積:10μL
検出波長:225nm
サンプル:IGEPAL CA-630(0.1%)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と共有結合している化合物を含む組成物であって、前記化合物が下記式(I):
【化1】

(式中、
nは、0及び1から選択される数であり;
R1、R2及びR3は、ハロゲン、OR10、NR10R11、OC(O)R12、OS(O)2R12、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール、置換又は無置換ヘテロシクロアルキル及び前記基材との結合から独立に選択されるメンバーであり、
ここで、
各R10及び各R11は、H、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール、置換又は無置換ヘテロシクロアルキル及び前記基材との結合から独立に選択されるメンバーであり;かつ
各R12は、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、
但し、R1、R2及びR3の少なくとも1つは、前記基材と共有結合しており;
L1及びL2は、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるリンカー基であり
但し、nが1の場合、L1及びL2の少なくとも1つは、少なくとも5個の連続した炭素原子を有する炭素鎖を含み、nが0の場合、L2は、少なくとも5個の連続した炭素原子を有する炭素鎖を含み、
ここで、前記連続した炭素原子の少なくとも2個は、任意に5員又は6員環の一部であり、このとき前記環は、アリール、ヘテロアリール及びシクロアルキルから選択されるメンバーであり、かつ前記環は、任意に非極性置換基で置換され;
R4は、H、アシル、置換又は無置換C1-C4アルキル、置換又は無置換C1-C4ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、ここで、R4とL2の置換基とが、それらが結合している原子と共に任意に結合して3員〜7員環を形成し;
R20は、H、置換アルキル、置換ヘテロアルキル及び置換ヘテロシクロアルキルから選択されるメンバーであり、但し、R20の少なくとも1つの置換基はOHであり;かつ
Yは、エーテル、チオエーテル、アミド、スルホンアミド、カルボナート、カルバマート、尿素及びチオ尿素から選択されるメンバーである)
の構造を有する、前記組成物。
【請求項2】
R1、R2及びR3の少なくとも1つが、置換又は無置換C1-C6アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R1、R2及びR3のうちの2つが、置換又は無置換C1-C6アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
R1、R2及びR3のうちの2つがメチルである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
R4がHである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
式(I)中、nが0であり、かつ前記化合物が下記式(II):
【化2】

(式中、
mは、0〜4より選択される数であり;
L3は、置換又は無置換アルキルから選択されるメンバーであり;
L4は、単結合、置換又は無置換アルキル及び置換又は無置換ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり;かつ
各R5は、H、置換又は無置換アルキル及び置換又は無置換ヘテロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、このとき2つの隣接するR5が、それらが結合している原子と共に任意に結合して5員〜7員環を形成する)
の構造を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
式(II)中、
R5が、H及び置換又は無置換アルキルから選択されるメンバーであり;
L3が、無置換アルキルであり;かつ
L4が、任意に1つ以上のエーテル又はチオエーテル基で中断される直鎖又は分岐鎖アルキルである、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物が、下記式(III):
【化3】

(式中、
pは、2〜10より選択される整数であり;かつ
qは、0〜10より選択される整数である)
の構造を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
nが0であり、R4がHであり、かつL2が置換又は無置換C5-C20アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
L2が無置換C6-C20アルキルである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
L2が無置換C8アルキルである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
nが1であり、Yがアミド基であり、R4がHであり、かつL2が置換又は無置換C5-C20アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
L2が無置換C6-C20アルキルである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記化合物が、下記式(IV):
【化4】

(式中、
rが2〜6より選択される整数であり、かつsが0及び1から選択される整数であり、但し、rが2の場合、sが1である)
の構造を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
クロマトグラフィーカラム内に含有される、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記クロマトグラフィーカラムが、金属カラム及びプラスチックカラムから選択されるメンバーである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
R20がHである、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
下記式(V)の構造を有する、請求項1に記載の組成物。
【化5】

【請求項19】
R1及びR3の少なくとも1つが、置換又は無置換C1-C6アルキルである、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
R1及びR3の少なくとも1つがメチルである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記基材がシリカベース基材である、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記基材が、シリカゲル、ゾル-ゲル、ポリマー、ポリマー/ゾル-ゲルハイブリッド、ガラス及びシリカモノリス材料から選択されるメンバーである、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
下記式(VIa):
【化6】

(式中、
nは、0及び1から選択される数であり;
R6、R7及びR8は、ハロゲン、OR14、NR14R15、OC(O)R16、OS(O)2R16、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、ここで、
各R14及び各R15は、H、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり;かつ
各R16は、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、
但し、R6、R7及びR8の少なくとも1つは、OH、無置換アルキル、無置換アリール、無置換ヘテロアリール及び無置換ヘテロシクロアルキル以外であり;
L1及びL2は、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるリンカー基であり、
但し、nが1の場合、L1及びL2の少なくとも1つは、少なくとも5個の連続した炭素原子を有する炭素鎖を含み、nが0の場合、L2は、少なくとも5個の連続した炭素原子を有する炭素鎖を含み、
ここで、前記連続した炭素原子の少なくとも2個は、任意に5員又は6員環の一部であり、このとき前記環は、アリール、ヘテロアリール及びシクロアルキルから選択されるメンバーであり;かつ前記環は、任意に非極性置換基で置換され;
R4は、H、アシル、置換又は無置換C1-C4アルキル、置換又は無置換C1-C4ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、ここで、R4とL2の置換基とが、それらが結合している原子と共に任意に結合して3員〜7員環を形成し;かつ
Yは、エーテル、チオエーテル、アミド、スルホンアミド、カルボナート、カルバマート、尿素及びチオ尿素から選択されるメンバーである)
の構造を有する化合物。
【請求項24】
請求項1に記載の化合物の製造方法であって、以下の工程:
(i)反応性官能基を有する基材を、エポキシド成分を有し、かつ下記式(VIa):
【化7】

(式中、
nは、0及び1から選択される数であり;
R6、R7及びR8は、ハロゲン、OR14、NR14R15、OC(O)R16、OS(O)2R16、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、ここで、
各R14及び各R15は、H、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり;かつ
各R16は、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるメンバーであり、
但し、R6、R7及びR8の少なくとも1つは、OH、無置換アルキル、無置換アリール、無置換ヘテロアリール及び無置換ヘテロシクロアルキル以外であり;
L1及びL2は、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換ヘテロアルキル、置換又は無置換アリール、置換又は無置換ヘテロアリール及び置換又は無置換ヘテロシクロアルキルから独立に選択されるリンカー基であり、
但し、nが1の場合、L1及びL2の少なくとも1つは、少なくとも5個の連続した炭素原子を有する炭素鎖を含み、nが0の場合、L2は、少なくとも5個の連続した炭素原子を有する炭素鎖を含み、
ここで、前記連続した炭素原子の少なくとも2個は、任意に5員又は6員環の一部であり、このとき前記環は、アリール、ヘテロアリール及びシクロアルキルから選択されるメンバーであり;かつ前記環は、任意に非極性置換基で置換され;
R4は、H、アシル、置換又は無置換C1-C4アルキル、置換又は無置換C1-C4ヘテロアルキルから選択されるメンバーであり、ここで、R4とL2の置換基とが、それらが結合している原子と共に任意に結合して3員〜7員環を形成し;かつ
Yは、エーテル、チオエーテル、アミド、スルホンアミド、カルボナート、カルバマート、尿素及びチオ尿素から選択されるメンバーである)
の構造を有する化合物と、前記反応性官能基とR6、R7及びR8の少なくとも1つとの間の反応によって前記化合物と前記基材との間に共有結合を形成するのに十分な条件下で接触させる工程を含む、前記方法。
【請求項25】
さらに以下の工程:
(ii)前記エポキシド成分を1,2-ジオール成分に変換する工程を含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
酸触媒加水分解によって前記変換工程(ii)を達成する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
R4がHであり、かつ工程(i)の生成物と求核性酸素原子を含む試薬とを接触させることによって前記変換工程(ii)を達成する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記基材が、シリカベース基材である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記基材が、シリカゲル及びシリカモノリス材料から選択されるメンバーである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記基材の前記反応性官能基が、シラノール、アルコキシシラン、ハロシラン及びアミノシランから選択されるメンバーである、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
R1、R2及びR3の少なくとも1つがアルコキシである、請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−529431(P2010−529431A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510409(P2010−510409)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/063772
【国際公開番号】WO2008/147717
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(591025358)ダイオネックス コーポレイション (38)
【Fターム(参考)】