説明

クロムを含有しない熱硬化性防蝕組成物

金属基材の初期被覆用のクロムを含有しない硬化性防蝕組成物であって、該組成物は1〜3の範囲のpHを有し、水、およびa)チタンおよび/またはジルコニウムのフルオロ錯イオン、b)少なくとも1つの防蝕顔料、c)特定のpH範囲で水溶性または水分散性であって、50重量%の濃度で水溶液中においてそれ自体として1〜3の範囲のpHを有する、少なくとも1つの有機ポリマーを含んでなる防蝕組成物、該組成物で金属片を処理するための方法およびこのように得ることができる処理された金属片。有機ポリマーc)は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選択される少なくとも1つのモノマーをラジカル重合可能なエチレン性不飽和モノマーとして含有し、エポキシ基、シラン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基およびリン酸エステル基の中から選択される官能基の少なくとも1つの型を有するように好ましく選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機/無機のクロムを含有しない防蝕組成物、ならびに亜鉛もしくは亜鉛合金で、またはアルミニウムもしくはアルミニウム合金で被覆された鋼表面、亜鉛または亜鉛合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面を処理するための防蝕方法に関する。これは、家庭および建築の分野ならびに自動車工業におけるこれらの基材の用途のためのコイル被覆における表面処理に特に適している。
【背景技術】
【0002】
WO99/29927には、亜鉛めっきまたは合金亜鉛めっきされた鋼表面ならびにアルミニウム表面の処理用のクロムを含有しない水性防蝕組成物が記載されている。該組成物はチタンおよび/またはジルコニウムのヘキサフルオロアニオン、バナジウムイオン、コバルトイオン、本質的成分としてのリン酸、ならびに好ましくは、特にポリアクリレートに基づく有機被膜形成剤を含んでなる。該防蝕組成物は、金属片の防蝕処理に特に適している。
【0003】
DE19923048(WO00/71629)には、水、および
a)チタン(IV)、シリコン(IV)および/またはジルコニウム(IV)のヘキサフルオロアニオン0.5〜100g/リットル、
b)リン酸0〜100g/リットル、
c)0〜100g/リットルの、コバルト、ニッケル、バナジウム、鉄、マンガン、モリブデンまたはタングステンの1以上の化合物、
d)0.5〜30重量%の、少なくとも1つの水溶性または水分散性の皮膜形成性有機ポリマーまたはコポリマー(活性物質に基づく)、
e)0.1〜10重量%の有機ホスホン酸、
f)必要に応じて、さらなる助剤および添加剤
を含んでなる、クロムを含有しない防蝕組成物が開示されている。
【0004】
前記文献のさらなる主題は、必要に応じて、亜鉛、アルミニウム、銅、ニッケルもしくは類似の金属またはアルミニウムもしくはその合金の金属被覆が付与された鋼の防蝕処理のための方法に関し、該方法は以下の本質的工程を含む:
a)基材の表面を0.5および60秒の時間、10および50℃、好ましくは15および35℃の間の処理温度で上記の先行技術由来の防蝕組成物と接触させ、該処理温度をワーク片または処理溶液による熱伝導によって調節することができる、工程、
b)過剰の防蝕組成物を必要に応じて、表面から除去する工程、および
c)ポリマー皮膜の架橋と同時に金属表面への付着が生じる、50℃および150℃の間のピーク金属温度を達成することを目的とする、1〜120秒の時間の加熱を適当な熱伝導によって行う工程。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第99/29927号パンフレット
【特許文献2】独国特許出願第19923048号明細書
【特許文献3】国際公開第00/71629号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は先行技術を発展させる。第一の態様においては、本発明は金属基材の初期被覆用のクロムを含有しない硬化性防蝕組成物に関し、該組成物は1〜3の範囲のpHを有し、水、および
a)チタンおよび/またはジルコニウムのフルオロ錯イオン、
b)少なくとも1つの防蝕顔料
c)該pH範囲において水溶性または水分散性を有し、50重量%の濃度で水溶液中においてそれ自体として1〜3の範囲のpHを示す、少なくとも1つの有機ポリマー
を含んでなる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
「初期被覆」とは、金属基材を、本発明による防蝕組成物と接触させる前に任意の他の防蝕処理を施さないことを意味する。実際には、本発明による防蝕組成物は、新たに製造されるか、あるいは新たに洗浄された金属表面上に塗布するべきである。該処理は、該金属基材用の主要な、または唯一の防蝕手段を示す。本発明による防蝕組成物の塗布後、さらなる装飾用および/または防蝕用の被覆物、例えば従来のディップ塗料、噴霧塗料または粉末塗料などを重ね合わせることは十分に可能である。
【0008】
チタンおよび/またはジルコニウムのフルオロ錯イオンは、ヘキサフルオロ錯イオンを好ましく表す。これらを、遊離酸の形態で、または防蝕組成物に可溶性であるその塩の形態で導入してよい。酸性pHを調節するために、該フルオロ錯イオンは、ヘキサフルオロ酸として有利に導入される。組成物中のフルオロ錯イオンはまた、錯体分子1個あたり6個未満のフッ素原子を有し得る。これは、例えば、ヘキサフルオロ錯イオンに加えて、フルオロ錯体を形成することができるチタンイオンおよび/またはジルコニウムイオンを有するさらなる化合物または塩を導入することによって達成することができる。例えば、オキシカーボネートまたはヒドロキシカーボネートを挙げ得る。この場合でも、防蝕組成物は、ヘキサフルオロ錯イオンの存在に加えて、例えばフッ化水素酸の形態で導入することができる過剰のフッ化物イオンを有してよい。
【0009】
防蝕顔料b)は、好ましくは、被覆によって水および/または他の腐食剤の拡散を妨げるか、あるいは防蝕的に働く分子またはイオンを放出することができる粒子状の有機または無機の化合物(バリア顔料)である。カチオン交換特性を有する化合物は、防蝕顔料として好ましく用いられる。アルカリ金属イオンの交換によって二価以上の金属のカチオンを含む化合物は特に好適である。好適な交換可能カチオンは、Ca、Ce、Zn、Sr、La、Y、AlおよびMgのカチオンである。このような型の交換可能カチオンを含む、層構造または空間的気泡構造を有するシリケートに基づく防蝕顔料は特に好適である。例えば、防蝕顔料は、少なくとも部分的に交換可能カルシウムイオンとの塩の形態で存在する合成の非晶質シリカであってよい。硬化防蝕組成物の目標とする層の厚み(以下を参照されたい)に対応するために、防蝕顔料の平均粒度(D50、例えば光散乱法によって決定)は、0.5〜10μmの範囲、特に1〜4μmの範囲である。成分c)として選択されるべき有機ポリマーは、約50重量%の濃度で水溶液中において1.5〜2.5の範囲、特に1.8〜2.2の範囲でpHの固有特性を有する。このために、該ポリマーが、さらなる酸の添加によってpHを調節することを必要とせずにポリマー溶液に上記の範囲でpHを付与する、水溶液中で酸と反応する基を有することが必要である。このことは、さらに以下においてより詳細に説明されるであろう。
【0010】
成分c)の存在は、防蝕組成物に「硬化性」を付与し、すなわち防蝕組成物がそれ自体を金属表面に付着させることを確実とする。該付着は、水および/または溶媒を蒸発させることによって単に物理的に生じさせることができる(これは「フィルムキャスト」と称することができる)。しかしながら、硬化は化学反応(「架橋」)を少なくとも部分的に含み、ポリマーc)の分子量が増加する。このような反応の例は、例えばC=C二重結合による重合反応、または縮合反応である。これらの反応は、熱によって、または高エネルギー放射線(例えば電子線、ガンマ線、紫外線または可視光線)の作用によって開始させることができる。本発明においては、熱硬化性ポリマー、および/または水および/または溶媒を蒸発させることによって硬化させることができるポリマーは、成分c)として好ましく用いられる。入熱は、熱移動媒体(例えば予備加熱基材または熱風など)から生じさせることができる。
【0011】
防蝕組成物は、さらなる成分d)としてリン酸イオンを好ましく含んでなる。これらは、リン酸の形態で、および/またはその塩の形態で添加してよい。リン酸を添加する際、基礎物質を添加することによって所要の範囲に防蝕組成物のpHを調節する必要があり得る。下記の金属の酸化物またはカーボネートは、相当する金属イオンの存在が望まれる限り、基礎物質として用い得る。導入されたリン酸イオンの形態とは無関係に、異なったプロトン化リン酸イオン種間での相当する平衡は、そのpHに従って処理組成物中においてそれ自体調節する。簡単にするために、防蝕組成物の好適な組成物用として以下に示される以下の定量的データのために、リン酸イオンはリン酸の形態で存在するとみなす。
【0012】
さらに、本発明による防蝕組成物は、さらなる成分e)としてマンガンイオンおよび/またはマグネシウムイオンを含んでよい。マンガンイオンの存在は好適である。この場合、マグネシウムイオンはマンガンイオンに加えて存在することができるが、これは好適である。これらの金属イオンは、これらの金属の酸化物、水酸化物またはカーボネートをリン酸で処理することによってリン酸塩として防蝕組成物に好ましく導入される。これらの酸化物、水酸化物またはカーボネートは、リン酸の存在下でpHを所望の範囲に調節するために基礎成分として働くこともできる。
【0013】
さらに、本発明による防蝕組成物は、キレート錯体を形成することができる成分f)として少なくとも1つの有機化合物を好ましく含んでなる。キレート錯体を形成することができる典型的な有機化合物(分子またはイオン)は、アミノアルキレンホスホン酸、特にアミノメチレンホスホノカルボン酸、ホスホノカルボン酸、ジェミナルジホスホン酸およびリン酸エステルならびにいずれの場合にもその塩である。選択された例は、ホスホノブタントリカルボン酸、アミノトリス−(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、(2−ヒドロキシエチル)アミノビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス−(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、(2−エチルヘキシル)−アミノビス(メチレンホスホン酸)、n−オクチルアミノビス−(メチレンホスホン酸)、シクロヘキサン−1,2−ジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ペンタエチレンヘキサミンオクタキス(メチレンホスホン酸)、N,N−ビス(3−アミノプロピル)アミノヘキサキス(メチレンホスホン酸)である。
【0014】
さらなる実用的な例は次のものである:
1−ヒドロキシ−1−フェニルメタン−1,1−ジホスホン酸、
p−ヒドロキシフェニル−1−アミノメタン−1,1−ジホスホン酸、
1−ヒドロキシ−1−フェニルメタン−1,1−ジホスホン酸、
1−アミノ−1−フェニルメタン−1,1−ジホスホン酸、
4−アミノフェニル−1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、
p−アミノフェニル−1−アミノメタン−1,1−ジホスホン酸、
p−クロロフェニルメタン−1,1−ジホスホン酸、
1−クロロ−1−フェニルメタン−1,1−ジホスホン酸、
p−クロロフェニル−1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、
1−クロロフェニルメタン−1,1−ジホスホン酸、
p−クロロフェニル−1−クロロメタン−1,1−ジホスホン酸、
4−クロロフェニル−1−クロロメタンジホスホン酸、
p−ヒドロキシフェニルアミノメチレンジホスホン酸、
3,4−ジメチルフェニル−1−クロロメタンジホスホン酸、
3,4−ジメチルフェニル−1−ヒドロキシメタンジホスホン酸、
3,4−ジメチルフェニルアミノメタンジホスホン酸、
3,4−ジメチルフェニル−1−クロロメタン−1,1−ジホスホン酸、
4−ジメチルアミノフェニル−1−ヒドロキシメタンジホスホン酸、
4−(N−ベンジル−N,N−ジメチルアミノ)−フェニル−1−ヒドロキシメタンジホスホン酸、
4−トリメチルアミノフェニル−1−ヒドロキシメタンジホスホン酸、
3,4,5−トリメトキシフェニル−1−アミノメタン−1,1−ジホスホン酸、
1−ビス−(N−ヒドロキシメチル)−アミノ−1−フェニルメタン−1,1−ジホスホン酸、
3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル−ヒドロキシメタンジホスホン酸、
3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル−アミノメタンジホスホン酸、
1−アミノ−1−シクロヘキシルメタン−1,1−ジホスホン酸、
1−ヒドロキシ−1−シクロヘキシルメタン−1,1−ジホスホン酸、
[4−(アミノメチル)−シクロヘキシル]−1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、
N−(ヒドロキシメチル)−1−アミノエタン−1,1−ジホスホン酸、
1,3−ジアミノプロパン−1,1−ジホスホン酸、
3−ジメチルアミノ−1−アミノプロパン−1,1−ジホスホン酸、
3−モノメチルアミノ−1−アミノプロパン−1,1−ジホスホン酸、
3−(N−ドデシルアミノ)−1−アミノプロパン−1,1−ジホスホン酸、
3−(N,N−ドデシルメチルアミノ)−1−アミノプロパン−1,1−ジホスホン酸、
3−(N−ジメチルドデシルアミノ)−1−アミノプロパン−1,1−ジホスホン酸、
2−アミノ−2−メチル−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、
3−アミノ−1−ヒドロキシ−3−フェニルプロパン−1,1−ジホスホン酸、
3−アミノ−3−フェニル−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、
3−ジエチルアミノ−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、
3−N,N−ジメチルアミノ−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、
3−N−ビス−(ヒドロキシエチル)−アミノ−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、
3−(N−ドデシルアミノ)−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、
1,3−ジヒドロキシ−3−フェニルプロパン−1,1−ジホスホン酸、
3−ジメチルアミノ−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、
1,3−ジヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、
1−ヒドロキシ−3−ジエチルアミノプロパン−1,1−ジホスホン酸、
1,3−ジヒドロキシ−3−フェニルプロパン−1,1−ジホスホン酸、
1,3−ジアミノブタン−1,1−ジホスホン酸、
1−ヒドロキシ−3−アミノブタン−1,1−ジホスホン酸、
3−モノエチルアミノ−1−アミノブタン−1,1−ジホスホン酸、
4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸、
4−N,N−ジメチルアミノ−1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸、
6−アミノ−1−ヒドロキシヘキサン−1,1−ジホスホン酸、
1,6−ジヒドロキシヘキサン−1,1−ジホスホン酸、
1,11−ジヒドロキシウンデカン−1,1−ジホスホン酸、
11−アミノ−1−ヒドロキシウンデカン−1,1−ジホスホン酸、
1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラキス(メチレンホスホン酸)、
グルカミン−ビス(メチレンホスホン酸)、
1−ウレイドエタン−1,1−ジホスホン酸、
ピリミジル−2−アミノメタンジホスホン酸、
ピリミジル−2−アミノメチレンジホスホン酸、
N,N’−ジメチルウレイドメタンジホスホン酸、
N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−トリスメチレンホスホン酸、
アミノ酢酸−N,N−ジメチレンホスホン酸、
1,2−ジアミノプロパンテトラキス(メチレンホスホン酸)、
2−ヒドロキシプロパン−1,3−ジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、
5−ヒドロキシ−3−オキサ−1−アミノペンタン−ビス(メチレンホスホン酸)、
イミノビス(メチレンホスホン酸)、
γ,γ−ジホスホノ−N−メチルブチロラクタム、
アミジノメチレンジホスホン酸、
ホルミルアミノメタンジホスホン酸、
2−イミノピペリドン−6,6−ジホスホン酸、
2−イミノピロリドン−5,5−ジホスホン酸、
N,N’−ジメチルイミノピロリドン−5,5−ジホスホン酸、
1−メチル−2−ピロリドン−5,5−ジホスホン酸、
アミノ二酢酸−N−メチルホスホン酸、
1,3−ジヒドロキシ−2−メチルプロパン−N,N−ジメチレンホスホン酸、
1,2−ジヒドロキシプロパン−3−アミノ−ビス(メチレンホスホン酸)、
2−ヒドロキシプロパン−1,3−ジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、
3,6−ジオキサ−1,8−ジアミノオクタン−テトラキス(メチレンホスホン酸)、
1,5−ジアミノペンタンテトラキス(メチレンホスホン酸)、
メチルアミノジメチレンホスホン酸、
N−ヘキシルアミノジメチレンホスホン酸、
デシルアミノジメチレンホスホン酸、
3−ピコリルアミノジメチレンホスホン酸、
メタンジホスホン酸、
ジクロロメタンジホスホン酸、
ジクロロメタンジホスホン酸のテトライソプロピルエステル、
1,1−ジホスホノエタン−2−カルボン酸、
エタン−1,1−ジホスホン酸、
エタン−1,1,2−トリホスホン酸、
1,2−ジホスホノエタン−1,2−ジカルボン酸、
エタン−1,1,2,2−テトラホスホン酸、
1−ホスホノエタン−1,2,2−トリカルボン酸、
ホスホノ酢酸、
α−クロロ−α−ホスホノ酢酸、
1−ホスホノプロパン−2,3−ジカルボン酸、
1−ホスホノプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、
プロパン−1,1,3,3−テトラホスホン酸、
アミノメタンジホスホン酸、
ジメチルアミノメタンジホスホン酸、
N−デシルアミノメタン−1,1−ジホスホン酸、
N−デシルアミノメタンジホスホン酸、
N,N−ジメチルアミノメタンジホスホン酸、
ジメチルアミノメタンジホスホン酸、
1−アミノエタン−1,1−ジホスホン酸、
1−アミノ−2−クロロエタン−1,1−ジホスホン酸、
1−アミノ−2−フェニルエタン−1,1−ジホスホン酸、
1−モノメチルアミノエタン−1,1−ジホスホン酸、
N−モノヒドロキシメチルアミノエタン−1,1−ジホスホン酸、
1−アミノプロパン−1,1−ジホスホン酸、
1−アミノプロパン−1,1,3−トリホスホン酸、
1−アミノブタン−1,1−ジホスホン酸、
1−アミノヘキサン−1,1−ジホスホン酸、
1−アミノデカン−1,1−ジホスホン酸、
1−アミノヘキサデカン−1,1−ジホスホン酸、
1−ヒドロキシ−3,6,9−トリオキサデカン−1,1−ジホスホン酸、
ココアルキルアミノビス(メチレンホスホン酸)、
4−エチル−4−メチル−3−オキソ−1−アミノヘキサン−1,1−ジホスホン酸、
1−ヒドロキシ−3−オキソ−4−エチル−4−メチルヘキサン−1,1−ジホスホン酸、
1−アミノ−4−エチル−4−メチル−3−オキソヘキサン−1,1−ジホスホン酸、
1−ヒドロキシ−3−オキソ−4−エチル−4−メチルヘキサン−1,1−ジホスホン酸、
4−エチル−4−メチル−3−オキソヘクス−1−エン−1,1−ジホスホン酸、
4−メチル−4−エチル−3−オキソヘクス−1−エン−1,1−ジホスホン酸、
1−アミノ−3−オキソ−4,4−ジメチルヘプタン−1,1−ジホスホン酸、
1−ヒドロキシ−3−オキソ−4,4−ジメチルヘプタン−1,1−ジホスホン酸、
4,4−ジメチル−3−オキソ−ヘプト−1−エン−1,1−ジホスホン酸、
4,4−ジメチル−3−オキソ−ヘプト−1−エン−1,1−ジホスホン酸、
1−アミノ−3−オキソ−4,4−ジメチルデカン−1,1−ジホスホン酸、
N−エチルアミノ(フェニルメタンジホスホン酸)、
1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、
2−[ベンズイミダゾリル−(2,2)−]−エタンジホスホン酸、
2−[ベンズイミダゾリル−(2,2)−]−エタンジホスホン酸、
N−カルボキシメタン−1−アミノエタン−1,1−ジホスホン酸、
1,5−ジアミノペンタン−1,1,5,5−テトラホスホン酸、
α−オクタデシル−ホスホノコハク酸、
α−N−ドデシルアミノベンジルホスホン酸、
β−トリフルオロメチル−β−ホスホノ酪酸、
1−デシルピロリドン−2,2−ジホスホン酸ピロリドン−5,5−ジホスホン酸、
2,2−ジホスホノ−N−デシルピロリドン、
γ,γ−ジホスホノ−N−メチルブチロラクタム、
ベンゼン亜ホスホン酸、
1,4−チアジンジオキシド−N−メタンジホスホン酸、
p−(1,4−チアジンジオキシド)−N−フェニレン−ヒドロキシメタンジホスホン酸、
α−(1,4−チアジンジオキシド)−N−エタン−α,α−ジホスホン酸、
3−(1,4−チアジンジオキシド)−N−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、
6−(1,4−チアジンジオキシド)−N−1−ヒドロキシヘキサン−1,1−ジホスホン酸、
11−(1,4−チアジンジオキシド)−N−1−ヒドロキシウンデカン−1,1−ジホスホン酸、
アザシクロペンタン−2,2−ジホスホン酸、
N−メチルアザシクロペンタン−2,2−ジホスホン酸、
N−デシルアザシクロペンタン−2,2−ジホスホン酸、
N−テトラデシルアザシクロペンタン−2,2−ジホスホン酸、
アザシクロヘキサン−2,2−ジホスホン酸、
1−(4,5−ジヒドロ−3H−ピロール−2−イル)−ピロリジニリデン−2,2−ジホスホン酸、
ヒドロキシメタンジホスホン酸、
1−オキサエタン−1,2−ジホスホン酸、
1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、
1−ヒドロキシブタン−1,1−ジホスホン酸、
1−ヒドロキシペンタン−1,1−ジホスホン酸、
1−ヒドロキシオクタン−1,1−ジホスホン酸。
【0015】
防蝕組成物が成分g)としてモリブデン酸イオンおよび/またはタングステン酸イオンをさらに含むことはさらに好適である。これらはアンモニウム塩またはアルカリ金属塩として好ましく組み込まれる。
【0016】
さらに、防蝕組成物が、成分h)として、亜鉛イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、バナジウムイオンおよび鉄イオンから選択される少なくとも1つのカチオンをさらに含むことは好適である。これは防蝕組成物中においては溶解イオンを意味するが、該イオンは交換カチオンとして防蝕顔料b)に結合しているイオンではない。上記のマンガンイオンおよび/またはマグネシウムイオンのようなこれらのカチオンはまた、リン酸塩として好ましく導入される。これは再び、これらのイオンの酸化物、水酸化物またはカーボネートをリン酸で処理することによって生じさせてよい。とりわけ、防蝕組成物は亜鉛イオンを好ましく含んでなる。
【0017】
さらに、防蝕組成物は、鉄(II)イオンおよびヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアンモニウム塩もしくはヒドロキシルアミン放出化合物から選択される成分i)としての少なくとも1つの還元剤をさらに含んでなる。これは、特に、防蝕組成物がマンガン(II)イオンを含む場合に効果的である。
【0018】
定義によって、防蝕組成物は少なくとも成分a)、b)およびc)を含んでなる。単独のさらなる任意の成分d)〜i)はそれぞれ、本発明による防蝕組成物の特性プロファイルにおける特定の特性を向上させる。従って、防蝕組成物が任意の成分d)〜i)の少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、特に少なくとも3つを含むことは特に好適である。例えば、防蝕組成物がリン酸イオンならびにマンガンイオンおよび/またはマグネシウムイオンを含むことは特に好適である。さらに、防蝕組成物がホスホン酸イオンとキレート錯体を形成することができる少なくとも1つの有機化合物を同時に含むことは好適である。さらに好適な実施態様においては、防蝕組成物は、マンガンイオンおよび/またはマグネシウムイオンおよびさらに、亜鉛イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、バナジウムイオンおよび鉄イオンから選択される少なくとも1つのカチオンを含んでなる。マンガン(II)イオンが存在する限り、その場合、防蝕組成物は還元剤i)を好適にさらに含んでなる。
【0019】
さらに好適な実施態様においては、防蝕組成物は、成分d)、e)、f)およびh)の少なくとも1つをモリブデン酸イオンおよび/またはタングステン酸イオンと共に含んでなる。
【0020】
特に好適な防蝕組成物は、成分d)、e)、f)、g)およびh)のそれぞれの少なくとも1つの典型を含んでなる。
【0021】
有機ポリマーc)は、容易にラジカル重合することができるエチレン性不飽和モノマーを含んでなる。
【0022】
例えば、次のエチレン性不飽和モノマーを用いることができる:ビニル芳香族モノマー、例えばスチレンおよびα−メチルスチレンなど、好ましくはα,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸および3〜6個の炭素原子を含有するジカルボン酸、例えば特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸などと、一般に、1〜12個、好ましくは1〜8個の炭素原子を含有するアルカノールとのエステル、例えば特に、アクリル酸およびメタクリル酸の、メチル−、エチル−、n−ブチル−、イソブチル−、ペンチル−、ヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、ノニル−、デシル−および2−エチルヘキシルエステル、またはフマル酸およびマレイン酸のジメチル−またはジ−n−ブチルエステルなど。
【0023】
さらに、複数のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを用いることができる。その例は、アルキレングリコールジアクリレートおよび−ジメタクリレート、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,2−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−プロピレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレートおよびエチレングリコールジメタクリレート、1,2−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレートならびにジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリレート、トリアリルシアヌレートまたはトリアリルイソシアヌレートなどである。
【0024】
有機ポリマーc)は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選択される少なくとも1つのモノマーを好ましく含み、エポキシ基、シラン基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、リン酸基およびリン酸エステル基から選択される少なくとも1つの型の官能基を有する。
【0025】
これは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選択される少なくとも2つのモノマーを含むように特に好適に構成され、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選択される少なくとも1つのモノマーを含有し、該ポリマーはエポキシ基、シラン基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、リン酸基およびリン酸エステル基から選択される少なくとも1つの型の官能基を有する。
【0026】
これに関して、リン酸基またはリン酸エステル基を有するポリマーは好適である。本発明において、リン酸基またはリン酸エステル基を有するモノマー分率が0.5〜4モル%の範囲、好ましくは1〜2モル%の範囲であることは好適である。好ましくは、リン酸基またはリン酸エステル基に加えて、エポキシ基、シラン基、カルボキシル基およびヒドロキシル基から選択される少なくとも1つのさらなる基が本発明においてはポリマー中に存在し、ポリマー中のヒドロキシル基含量は0.5〜3.5g/kgポリマーであってよい。特に好適なポリマーは、リン酸基またはリン酸エステル基、カルボキシル基およびヒドロキシル基を含んでなる。
【0027】
さらに、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基またはリン酸エステル基の他に、ポリマーはカルボン酸アミド基をさらに有し、少なくとも1つのヒドロキシアルキル基、好ましくは少なくとも1つのヒドロキシメチル基はカルボン酸アミド基の窒素原子に結合している。特に、リン酸基またはリン酸エステル基、およびさらにヒドロキシル基だけでなくカルボキシル基ならびに上記のカルボン酸アミド基を有するポリマーは好適である。
【0028】
このようなモノマーの例は、例えばn−ヒドロキシエチル、n−ヒドロキシプロピルまたはn−ヒドロキシブチルアクリレートおよびメタクリレートのようなメタクリル酸およびアクリル酸のC1〜C8ヒドロキシアルキルエステル、ならびにn−メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、およびヒドロキシアクリレートおよびヒドロキシメタクリレートのリン酸エステルのような化合物である。
【0029】
次に、キレート錯体を形成することができる有機化合物f)の添加は、ポリマーc)が任意のシラン基を有さない場合に原則として望ましい。
【0030】
さらに、この本質的なポリマーc)の他に、特定のトップコートとの相溶性を改良する特定の役割を有するさらなるポリマーを存在させてよい。その例は、OH基を含有するさらなるポリマーならびにポリウレタン型、ポリエステル型およびエポキシ型のポリマーである。防蝕組成物の全ポリマー含量に対するこれらのさらなるポリマーの割合は1〜20重量%の範囲であってよい。
【0031】
さらに、防蝕組成物は、分散添加剤、例えば塗料の製造のための顔料ペーストの練磨用に知られているものなどを含んでよい。
【0032】
防蝕組成物は、すぐに使用できる状態において、全防蝕組成物を基準として次の重量%での割合で成分を含んでなる:水:25〜69.7重量%、
a)ヘキサフルオロチタン酸またはヘキサフルオロジルコン酸として計算されるチタンおよび/またはジルコニウムのフルオロ錯イオン:0.3〜3重量%、好ましくは0.5〜2重量%、
b)防蝕顔料:全部で5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%、
c)上記のpH範囲で水溶性または水分散性であって、50重量%の濃度で水溶液中においてそれ自体として1〜3の範囲のpHを示す有機ポリマー:25〜50重量%、好ましくは30〜40重量%、
d)リン酸として計算されるリン酸イオン:0〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%、
e)マンガンイオンおよび/またはマグネシウムイオン:全部で0〜2重量%、好ましくは0.1〜1重量%、
f)キレート錯体を形成することができる有機化合物:全部で0〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%、
g)アンモニウム塩として計算されるモリブデン酸イオンおよび/またはタングステン酸イオン:全部で0〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、
h)亜鉛、コバルト、ニッケル、バナジウムおよび鉄から選択されるカチオン:全部で0〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%、
i)鉄(II)イオンおよびヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアンモニウム塩もしくはヒドロキシルアミン分離性化合物から選択される還元剤:全部で0〜0.1重量%、好ましくは0.005〜0.05重量%。
【0033】
さらなる補助剤または添加剤、例えば上記のさらなるポリマーおよび/または分散添加剤をこれらの成分に加えて存在させてよい。当然ながら、個々の成分の割合は、これらが合計100%になるように選択されるべきである。これは、上記の成分a)〜i)に加えてさらなる成分が存在する場合にもあてはまる。好適な実施態様においては、防蝕組成物はもっぱら、水ならびに成分a)〜c)および1以上の成分d)〜i)を含むだけであり、必要に応じて、上記のさらなるポリマーおよび添加剤を補充する。上記のイオン成分に対して相当する対イオンを存在させなければならないことを考慮すべきである。例えば、モリブデン酸イオンおよび/またはタングステン酸イオンをアンモニウム塩またはアルカリ金属塩として好ましく用いる。しかしながら、概して、防蝕組成物が、アニオンとして存在するフルオロ錯体a)のアニオン、防蝕顔料b)中およびポリマーc)中のアニオン性基、リン酸イオンd)ならびにキレート錯体を形成することができる任意の有機化合物f)のアニオン以外にさらなるアニオンを含まないことは好適である。これらの条件は、防蝕組成物を付与および硬化した後、水に容易に溶解することができ、および防蝕効果を減少させる塩が被覆物中に残存しないことを確実とする。
【0034】
とりわけ、本発明による防蝕組成物は、少なくとも可能な有機化合物、例えば焼成の条件下で揮発性を有し、「揮発性有機炭素」VOCとして周囲空気に達する有機溶媒などを含むべきである。従って、防蝕組成物が5重量%以下、好ましくは2重量%以下、特に0.5重量%以下の、大気圧で150℃以下の沸点を有する有機化合物を含むことは好適である。
【0035】
広範な適用性、生産速度およびエネルギー消費の理由から、適用された防蝕組成物を有する金属基材を150℃を越えない温度で硬化させることは望ましい。従って、有機ポリマーc)は、150℃以下、好ましくは100℃以下の温度で、60秒以内、好ましくは30秒以内に硬化可能である特性を好ましく有する。上記の温度は、付与された防蝕組成物を有する金属基材の基材温度である。
【0036】
上記の組成物は、金属基材と接触させることができる、すぐに使用できる形態での防蝕組成物を例示する。該形態においては、実際の組成物によっては、制限された貯蔵安定性を示すことがあり、すなわち、時間とともに沈殿物またはゲルの形成が生じることがある。しかしながら、概して、使用できる状態にある防蝕組成物は、製造工程に用いるのに十分に長い安定性を有する。「ポットライフ」とは、使用できる状態にある防蝕組成物を操作する時間、すなわち、金属基材上に付与しなければならない時間のことであり、該時間は、概して少なくとも12時間、好ましくは少なくとも24時間、特に少なくとも7日間である。該安定性への顕著な貢献は、上記のポリマーc)の特定の選択に起因する。分散添加剤は好ましい効果を生みだすこともできる。
【0037】
しかしながら、防蝕組成物は概して、何週間も、または何ヶ月も貯蔵することができない。その結果として、これは、少なくともとも2つの別々の溶液または分散体の形態で好ましく供給され、および貯蔵され、次いでまず、上記のポットライフ内で用いられることが意図される場合に一緒に混合される。第一の溶液または分散体が、水、好ましくは、例えば、塗料の製造のための顔料ペーストの練磨用に知られているような少なくとも1つの分散添加剤と共に分散された防蝕顔料b)を含むことは特に好適である。この場合、好適には、これらの溶液または分散体はポリマーc)を含まない。第二の溶液または分散体はポリマーc)を含んでなる。成分a)および必要に応じて成分d)〜i)の1種以上を第一または第二の溶液または分散体中に存在させてよい。この場合、これらの成分がポリマーを含有する第二の溶液または分散体に見出される場合に好適である。
【0038】
当業者には、上記の成分、特に無機化合物を互い反応させてよいことが知られているので、従って、これらは上記のpH条件下で安定性である形態で処理溶液中に存在する。例えば、フルオロ錯体は遊離酸形態で部分的に存在する。
【0039】
さらなる態様においては、本発明は金属片を被覆するための方法に関し、上記の防蝕組成物を、硬化後に層が0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmの範囲の厚さで得られるような厚さで、移動している金属片(laufende Metallband)上に塗布し、最大150℃、好ましくは最大100℃の温度まで、最大60秒間、好ましくは最大30秒間、加熱することによって硬化する。
【0040】
特に金属片表面上で使用するために、塗布溶液を金属片上でロール塗布(Chem−Coating)、ストリッピング(Abstreifen)、浸漬/絞り出し(Abquetschen)、または噴霧/絞り出しすることによって既知の方法で塗布する。塗布は、10および50℃の間、特に15および35℃の間の温度で好ましく行われる。該温度は、ワーク片または処理溶液による熱伝導によって調節することができる。最後に、適当な熱移動が皮膜の形成、その架橋および金属表面上での固定を生じさせる。このために、50〜150℃、好ましくは60および100℃の間のピーク金属温度(PMT)は、1および60秒の間、好ましくは1および30秒の間に達成されるべきである。
【0041】
本発明による防蝕組成物を用いた被覆は最初の防蝕手段を表す。これは、任意の他の腐食防止手段が施されていない、新たに製造されるか、あるいは新たに洗浄された金属表面を、本発明による防蝕組成物と接触させ、防蝕組成物を硬化させることを意味する。かくして、被覆物に基づく防蝕性を有する金属表面が得られる。金属片は該形態で貯蔵され、および/または輸送されてよい。さらに、これをいくつかのピースに裁断し、必要に応じて成形し、および構造単位にさらなるピースと共に結合してよい。本発明による防蝕組成物で被覆された金属表面は、さらなる被覆物を防蝕組成物上に付与することなく商品化し、さらに加工することもできる。最終用途に応じて、さらなる装飾被覆物または防蝕被覆物を最終金属物が製造されると塗布してよい。
【0042】
あるいは、本発明による防蝕組成物で被覆された金属片またはこれから裁断された金属シートは、これらの金属片または金属シートが商品化され、および/またはサブアセンブリーにさらに加工される前に、少なくとも1つのさらなる装飾被覆物または防蝕被覆物で、例えば塗料で、上塗りされてよい。この場合、本発明による防蝕組成物は「プライマー」として働く。
【0043】
本発明による方法は、亜鉛片または亜鉛合金片、アルミニウム片またはアルミニウム合金片、ならびに亜鉛もしくは亜鉛合金でまたはアルミニウムもしくはアルミニウム合金で被覆された鋼片から選択される金属片を被覆するのに特に適している。本発明において、「亜鉛合金」または「アルミニウム合金」は50atom%を越える亜鉛またはアルミニウムからなる合金を意味すると理解される。亜鉛または亜鉛合金で被覆された鋼片は、亜鉛または亜鉛合金を用いて、電解で、あるいは溶融浸漬被覆法によって被覆されていてよい。本発明においては、鋼片上に付与された亜鉛合金はアルミニウムが多くてもよいが、あるいは付与されたアルミニウム合金は亜鉛が多くてもよい。こうした被覆鋼片は、Galfan(登録商標)またはGalvalume(登録商標)の商品名で知られている。
【0044】
最後に、第三の態様においては、本発明は、本発明の方法に従って得られた被覆物を有する、必要に応じて成形することができる被覆金属片または該金属片から裁断された金属シートに関連する。この場合も同様に、上記の材料から作られた金属片または該金属片から裁断された金属シートが好適である。本発明の方法に対する実施態様に従えば、被覆金属片または該金属片から裁断された金属シートは、必要に応じ、構造中に成形することができ、本発明の方法に従って得られた被覆物を唯一の防蝕被覆物として有することができる。従って、この場合には、本発明の被覆物はさらなる装飾用または防蝕性のさらなる層で上塗りされていない。しかしながら、本発明はまた、必要に応じてサブアセンブリーに成形することができ、本発明の方法に従って得られた被覆物上に被覆する少なくとも1つの装飾被覆物または防蝕被覆物を有する、被覆金属片または該金属片から裁断された金属シートに関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材の初期被覆用のクロムを含有しない硬化性防蝕組成物であって、該組成物は1〜3の範囲のpHを有し、水、および
a)チタンおよび/またはジルコニウムのフルオロ錯体、
b)少なくとも1つの防蝕顔料、
c)該pH範囲で水溶性または水分散性を有し、50重量%の濃度で水溶液中においてそれ自体として1〜3の範囲のpHを示す、少なくとも1つの有機ポリマー
を含んでなる、防蝕組成物。
【請求項2】
リン酸イオンd)をさらに含む、請求項1に記載の防蝕組成物。
【請求項3】
マンガンイオンおよび/またはマグネシウムイオンe)をさらに含む、請求項1または2に記載の防蝕組成物。
【請求項4】
キレート錯体を形成することができる少なくとも1つの有機化合物f)をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の防蝕組成物。
【請求項5】
モリブデン酸イオンおよび/またはタングステン酸イオンg)をさらに含む、請求項1〜4のいずれかに記載の防蝕組成物。
【請求項6】
亜鉛イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、バナジウムイオンおよび鉄イオンから選択される少なくとも1つのカチオンh)をさらに含む、請求項1〜5のいずれかに記載の防蝕組成物。
【請求項7】
鉄(II)イオンおよびヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアンモニウム塩もしくはヒドロキシルアミン分離性化合物から選択される少なくとも1つの還元剤i)をさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の防蝕組成物。
【請求項8】
防蝕顔料b)はカチオン交換特性を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の防蝕組成物。
【請求項9】
有機ポリマーc)はラジカル重合可能なエチレン性不飽和モノマーを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の防蝕組成物。
【請求項10】
有機ポリマーc)は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選択される少なくとも1つのモノマーをラジカル重合可能なエチレン性不飽和モノマーとして含み、およびエポキシ基、シラン基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、リン酸基およびリン酸エステル基から選択される少なくとも1つの型の官能基を有する、請求項9に記載の防蝕組成物。
【請求項11】
有機ポリマーc)は、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選択される少なくとも2つの異なったモノマーをラジカル重合可能なエチレン性不飽和モノマーとして含み、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルから選択される少なくとも1つのモノマーが組み込まれている、請求項10に記載の防蝕組成物。
【請求項12】
前記ポリマーにおけるリン酸基またはリン酸エステル基を有するモノマーの分率は0.5〜4モル%の範囲、好ましくは1〜2モル%の範囲である、請求項10または11に記載の防蝕組成物。
【請求項13】
有機ポリマーc)は、リン酸基またはリン酸エステル基に加えて、エポキシ基、シラン基、カルボキシル基およびヒドロキシル基から選択される少なくとも1つのさらなる基を示す、請求項10〜12のいずれかに記載の防蝕組成物。
【請求項14】
前記ポリマーはカルボン酸アミド基をさらに示し、少なくとも1つのヒドロキシアルキル基、好ましくは少なくとも1つのヒドロキシメチル基がカルボン酸アミド基の窒素原子に結合している、請求項10〜13のいずれかに記載の防蝕組成物。
【請求項15】
使用可能な状態において、全防蝕組成物を基準として次の重量%での割合で成分を含んでなる、請求項1〜14のいずれかに記載の防蝕組成物:
水:25〜69.7重量%、
a)ヘキサフルオロチタン酸またはヘキサフルオロジルコン酸として計算されるチタンおよび/またはジルコニウムのフルオロ錯イオン:全部で0.3〜3重量%、好ましくは全部で0.5〜2重量%、
b)防蝕顔料:全部で5〜25重量%、好ましくは10〜20重量%、
c)前記pH範囲で水溶性または水分散性を有し、50重量%の濃度で水溶液中においてそれ自体として1〜3の範囲のpHを示す有機ポリマー:25〜50重量%、好ましくは30〜40重量%、
d)リン酸として計算されるリン酸イオン:0〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%、
e)マンガンイオンおよび/またはマグネシウムイオン:全部で0〜2重量%、好ましくは0.1〜1重量%、
f)キレート錯体を形成することができる有機化合物:全部で0〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%、
g)アンモニウム塩として計算されるモリブデン酸イオンおよび/またはタングステン酸イオン:全部で0〜1重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%、
h)亜鉛、コバルト、ニッケル、バナジウムおよび鉄から選択されるカチオン:全部で0〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%、
i)鉄(II)イオンおよびヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアンモニウム塩もしくはヒドロキシルアミン分離性化合物から選択される還元剤:全部で0〜0.1重量%、好ましくは0.005〜0.05重量%。
【請求項16】
5重量%以下、好ましくは2重量%以下、特に0.5重量%以下の、大気圧で最大150℃の沸点を有する有機化合物を含む、請求項1〜15のいずれかに記載の防蝕組成物。
【請求項17】
水が蒸発した後、有機ポリマーc)は、150℃以下、好ましくは100℃以下の温度で60秒以内、好ましくは30秒以内に硬化可能である、請求項1〜16のいずれかに記載の防蝕組成物。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の防蝕組成物を、硬化後に層が0.5〜10μm、好ましくは1〜5μmの範囲の厚さで得られるような厚さで、移動している金属片上に塗布し、および最大150℃、好ましくは最大100℃の温度まで、最大60秒間、好ましくは最大30秒間、加熱することによって硬化させる、金属片の被覆方法。
【請求項19】
請求項1〜17のいずれかに記載の防蝕組成物の塗布前に金属片の表面には、任意の他の防蝕を施さない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
金属片は、亜鉛片または亜鉛合金片、アルミニウム片またはアルミニウム合金片ならびに亜鉛もしくは亜鉛合金で、またはアルミニウムもしくはアルミニウム合金で被覆された鋼片から選択される、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
必要に応じ成形することができる被覆された金属片または該金属片由来の金属シートであって、該金属片または金属シートは請求項18〜20のいずれかに記載の方法に従って得られる被覆物を有する、金属片または金属シート。

【公表番号】特表2010−501724(P2010−501724A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524970(P2009−524970)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/055214
【国際公開番号】WO2008/022819
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】