説明

クロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物及び、これを用いた表面処理鋼板

【課題】本発明は、クロムフリー金属表面処理組成物及びこれを用いた表面処理鋼板に関する。
【解決手段】本発明により提供されるクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物は、全体溶液100重量部を基準に、エポキシ基を有するシラン化合物及びアミノ基を有するシラン化合物またはこれらの加水分解縮合物5〜30重量部と、バナジウム化合物0.1〜5重量部と、マグネシウム化合物0.1〜5重量部と、有/無機酸1〜10重量部と、架橋促進及びカップリング剤0.05〜2重量部と、消泡剤0.01〜1重量部と、ウェッティング剤1〜2重量部と、残部の水とエタノールとからなり、このように提供されるクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物でコーティングされた鋼板は、低温硬化が可能でクロム成分を全く含まないため耐食性を確保することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロムフリー金属表面処理組成物及びこれを用いた表面処理鋼板に関するもので、特に低温硬化が可能で、クロム成分を全く含まなくても金属鋼板の耐食性を確保できる超薄膜型の金属表面処理組成物及びこれを用いた表面処理鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、世界的に環境問題に係る関心が高まる中、環境汚染物質、即ち、Cr、Pb、Cd、及びHgなどのような重金属、PBB(polybrominated biphenyl)、PBDE(polybrominated diphenyl ether)などに対する使用規制が強まりつつある実情である。特にEUで導入した有害物質使用制限指針(RoHS;Restriction of Hazardous Substances、‘06.7.1.施行)、廃家電処理指針(WEEE;Waste from Electrical and Electronic Equipment、2006.7.1.施行)、廃車処理指針(ELV;End−of−Life Vehicles、2007.1.1.施行)、新環境規制管理法(REACH;Registration、Evaluation and Authorization of Chemicals)などが代表的な例で、これにより環境に優しい製品の開発、工場内の廃棄物の削減、グリーン調達などの新しい環境管理政策に対する積極的な対応策が求められている。
【0003】
従来、自動車材料、家電製品、建築材料などの用途として使用される亜鉛メッキ鋼板及び亜鉛系合金メッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、アルミニウム系合金メッキ鋼板、冷延鋼板、熱延鋼板に耐食性及び塗装密着性などを与えるため表面にクロムを主成分とするクロメート被膜をコーティングする表面処理法が一般に施されていた。
【0004】
主なクロメート処理としては電解型クロメートと塗布型クロメートがあり、この中で電解型クロメート処理は6価クロムを主成分とし、他に硫酸、リン酸、ホウ酸及びハロゲンなどの各種の陰イオンを添加した処理液を用いて金属板を陰極電解する方法が一般に施されている。一方、塗布型クロメート処理は予め6価クロムの一部を3価に還元した溶液に無機コロイド、無機イオンを添加した処理液として、金属板をその中に浸漬、或いは処理液を金属板にスプレーする方法が一般に施されている。
【0005】
このような方法を使用する場合、クロメート処理液に含有された6価クロムの有毒性により作業環境及び排水処理などにおいて様々な対策を必要とし、上記表面処理金属を使用した自動車、家電、建材製品などのリサイクル及び廃棄処理においても人体有害性と環境汚染の問題を引き起こしている。
【0006】
従って、各鉄鋼会社は6価クロムを含有しないながらも耐食性、伝導性などを始めとする種々の要求特性を満たすことの出来るクロムを含有しない表面処理鋼板の開発に力を入れている。従来には鋼板の表面に主にリン酸塩を主成分として組成した金属塩被膜を1次コーティングさせた後、その上部に主にアクリル及びウレタン樹脂を主成分として組成した樹脂系被膜を2次コーティングさせて製造する方法、または上記1次被膜と2次被膜を樹脂系被膜に形成させる方法を通してクロムを含有しない表面処理金属鋼板が製造された。
【0007】
また、現在までクロムの含有されない耐食用金属コーティング剤などの表面処理剤の開発に対する数多くの方法が提案されているが、このような方法としては特許文献1に示されたように、水性樹脂にチオカルボニル基含有化合物とリン酸イオン、また水分散性シリカを含有するクロムフリー防錆処理剤が開示されている。この系はクロメート水準の耐食性を有するものの、貯蔵安定性が不十分で、かつ薄膜の耐食性能が劣るという短所がある。
【0008】
また、特許文献2には、水系エマルジョンと反応する特定の官能基をもちながらシランカップリング剤を含有する鋼構造物用の表面処理剤が開示されているが、この場合に求められる耐食性は湿潤試験のように比較的に緩い試験に対するもので、本発明のように薄膜において塩水噴霧試験のような厳しい条件に耐える本発明の耐食性とは比べに成らない。
【0009】
また、従来の6価クロムを全く含まないながらも伝導性を考慮したコーティング処理法として、ポリアニリンを金属板上にコーティングする方法が特許文献3、特許文献4に開示されている。しかし、剛直性が高くて密着性の低いポリアニリンが金属と樹脂被膜との間に存在するため、ポリアニリンと金属の界面及びポリアニリンと樹脂の界面から被膜が剥離されやすくなることがある。このため、鋼板に意匠性、さらに耐食性及びその他の機能を与えるために上部に塗装する場合には問題が生じる。密着性の低い被膜は一般的に耐食性が低いものと知られている。また、溶液安定性が低いため、沈殿物の発生が多く、酷い匂いが発生して全体的に作業環境の阻害などの作業性が落ちるという問題点もある。そして、このような溶液組成は高温での乾燥及び硬化条件を必要とする。
【0010】
【特許文献1】日本国特開平11−29724号
【特許文献2】日本国特開平10−60315号
【特許文献3】日本特許公開平8−92479号
【特許文献4】日本特許公開平8−500770号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような問題点を解決すべく、本発明の目的はクロムを含有しない組成物で、後処理された金属鋼板において、耐食性及び電気伝導度を確保し、低温硬化が可能な無機系水性の金属の表面処理組成物を提供することである。本発明の他の目的は上記金属表面処理組成物をコーティングし、表面処理された金属鋼板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に従い、全体溶液100重量部を基準に、エポキシ基を有するシラン化合物及びアミノ基を有するシラン化合物またはこれらの加水分解縮合物5〜30重量部と、バナジウム化合物0.1〜5重量部と、マグネシウム化合物0.1〜5重量部と、有/無機酸1〜10重量部と、架橋促進及びカップリング剤0.05〜2重量部と、消泡剤0.01〜1重量部と、ウェッティング剤1〜2重量部と、残部の水とエタノールからなるクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物が提供される。
【0013】
また、本発明に従い、上記クロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物がコーティングされた鋼板が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により提供されるクロム未含有金属表面処理組成物は、従来のクロム処理設備(spray)をそのまま使用できるもので、コーティング溶液を塗装した後、金属鋼板の耐食性及び密着性に優れ、低温で硬化され、クロム成分を含まないため環境にやさしい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のクロムフリー金属表面処理組成物の製造において、シラン化合物及び/またはその加水分解縮合物が使用され、ここで、シラン化合物の加水分解縮合物とは、シラン化合物を原料として加水分解重合させたシラン化合物のオリゴマーを言う。
【0016】
本発明の組成物に使用されるシラン化合物の量は、全体溶液100重量部に対して5乃至30重量部、好ましくは5乃至20重量部の濃度で使用される。この際、シラン化合物が5重量部未満になると、耐食性、密着性の向上効果が足りなく、30重量部を超えると貯蔵安定性が低下して好ましくない。
【0017】
特に(a):アミノ基を有するシラン化合物、そして(b):一つ以上のエポキシ基を有するシラン化合物を併合使用し、この際(a):(b)の混合比率は5〜10:15〜20が好ましく、より好ましくは7:13である。
【0018】
本発明のクロムフリー金属表面処理組成物に使用されるシラン化合物は特に制限はされないが、例えばビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、3−アミノプロピルトリエポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエポキシシラン)−1−プロパンアミン、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシトリメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−[2−(ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが好ましい。
【0019】
本発明の組成物に添加されるバナジウム化合物及びマグネシウム化合物の量はそれぞれ0.1〜5.0重量部であることが好ましい。それぞれの金属化合物が0.1重量部未満で添加される場合、金属キレート化合物の形成が困難で、5.0重量部を超えて添加される場合には、未反応金属化合物が残存して溶液の物性が低下する。この際、バナジウム化合物は0.5重量部、マグネシウム化合物は2.0重量部が好ましい。
【0020】
本発明の金属表面処理組成物に含まれるバナジウム化合物としては、バナジウムの酸化数が2〜5価であるバナジウム化合物、例えば、5酸化バナジウム、3酸化バナジウム、2酸化バナジウム、バナジウムオキシアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、3塩化バナジウム、一酸化バナジウム、メタバナド酸アンモニウムなどが好ましく、マグネシウム含有化合物としては例えば、これらの酸化物、水酸化物、錯化合物、或いは塩化合物のような、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酸化マグネシウムなどが好ましい。
【0021】
また、本発明の金属表面処理組成物に使用される有/無機酸は被膜の密着性の向上に寄与することが出来る。好ましい酸としてはリン酸のような無機酸及び蟻酸、エチレンジアミンテトラアセト酸のような有機酸を使用することが出来る。有/無機酸の含量は1〜10重量部が好ましく、有/無機酸が1重量部未満に添加される場合、金属素材のエッチングに弱く、10重量部を超えて添加される場合、溶液の安定性と塗膜物性には好ましくない。
【0022】
さらに、シラン縮合反応物の架橋促進及びカップリング剤としてチタン及びジルコニウム化合物を添加することで硬化を促進させ塗膜の堅固性を保つことが出来る。本発明に使用されるチタン化合物としては、ジイソプロピルジトリエタノールアミノチタネート、乳酸チタニウムキレート、及びチタニウムアセチルアセトネートで構成されるグループから選択される少なくとも1種以上の化合物が好ましい。また、本発明に使用されるジルコニウム化合物としては、硝酸ジルコニル、アセト酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、ジルコニウムアセチルアセトネートが好ましい。この際、使用される架橋促進及びカップリング剤の量は0.05〜2.00重量部に制限されるが、0.05重量部未満で添加される場合は塗膜の耐食性の確保が難しく、2.00重量部を超えて使用する場合は貯蔵安定性及び塗膜の物性低下が発生する場合がある。
【0023】
そして、溶液の気泡除去のため、消泡剤として、N−メチルエタノールアミンを0.01〜1重量部添加する。この際、消泡剤の含量が0.01重量部未満で添加される場合は消泡の機能を果たすことが出来ず、1重量部を超えて添加される場合は耐食性低下の原因となる。
【0024】
また、溶液のウェッティング性の向上のためにウェッティング剤としてイソプロピルアルコールが添加されるが、その含量は1〜2重量部に制限される。1重量部未満で添加される場合、ウェッティング性の向上が無く、2重量部を超えて添加される場合、物性の低下は無いが、ウェッティング性の向上も無いため経済的に好ましくない。
【0025】
そして、残りは水60〜80重量部と速い乾燥のためにエタノール10〜20重量部を添加することが出来る。純水とエタノールの含量を制限する必要は無く、必要とされる固形分に応じて通常の水準で使用する。
【0026】
次に、本発明によるクロムフリー金属表面処理組成物がコーティングされた鋼板について説明する。
【0027】
本発明によるクロムフリー金属表面処理組成物のコーティングは、乾燥塗膜が0.05〜1.0g/m、さらに、好ましくは0.1〜0.5g/mになるよう、処理液を金属素材の表面に塗布した後、0.1〜30秒間乾燥する。
【0028】
本発明においてコーティング層に対する水性組成物のpH値は、上記のように有/無機酸を使用して3.0〜7.0の間に調整することが好ましい。また、pHを3.5〜5.0の間に調整することが、より好ましい。この際、pH値が3.0未満であると処理剤液による素材表面の過エッチング反応により耐食性が不十分となる。また、pH値が7.0を超えると処理剤液の安定性が減少し、ゲル化及び沈殿が発生することがある。
【0029】
本発明において、素材表面に処理液をコーティングした後、加熱温度はPMT(Peak Metal Temperature)が30〜250℃であることが好ましく、塗布方法は特に制限しなくても良い。通常の方法としては素材表面にコーティング液をロール転写するロールコータ法、或いはスプレーなどによりスプレーした後、ロールで処理剤を延ばす方法、処理液中に素材を浸漬する方法などの方法が使用され得る。
【0030】
そして、予備処理工程についても特に定められてはいないが、通常、コーティングを適用する前に素材に付着した油分、汚れなどを除去するためにアルカリまたは酸性脱脂剤で洗浄するか、お湯または溶剤洗浄などを行う。その後、必要に応じて、酸及びアルカリなどによる表面調整を行う。素材表面の洗浄の際には洗浄剤が素材の表面になるべく残留しないよう洗浄後に水洗いすることが好ましい。素材の金属表面を洗浄した後、本発明の処理液を直接適用することが出来るが、リン酸塩系の化成処理を行った後、適用することも出来る。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を次の実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
1.実施例に使用される金属材料
商業的に購入可能な溶融亜鉛メッキ鋼鉄板(HGI:Hot−dip Galvanized Steel)を用いた。
【0033】
2.溶液の製造
本発明の溶液の製造は、全体溶液100重量部を基準に純水60重量部とエタノール10重量部の混合物に、エポキシ系シラン化合物として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとアミノ系シラン化合物として3−アミノプロピルトリエトキシシランを5〜20重量部添加して加水分解する。そして、有機酸及びリン酸1〜10重量部に金属化合物としてバナジウムアセチルアセトネートと酸化マグネシウムをそれぞれ0.1〜5.0重量部溶解させた後、この溶液をシラン化合物溶液に添加して30分間攪拌する。最後に、ジイソプロピルトリエタノールアミノチタネート0.05〜2重量部と、その他の添加剤である消泡剤としてN−メチルエタノールアミンを0.01〜1重量部、ウェッティング剤としてイソプロピルアルコールを1〜2重量部添加した後、30分間常温で1000rpmの速度で攪拌して製造する。
【0034】
下記の表1及び表2に発明例と比較例を表した。次の表1の組成は全体溶液100重量部を基準に表した。添加物を除いた残りは純水とエタノールである。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
3.物性の評価
下記の条件で発明例及び比較例の金属表面処理組成物の性能を評価し、その結果を表3に表した。
【0038】
1)耐食性
ASTM B117に規定した方法により、塗装鋼板の時間経過に伴う白錆の発生率を確認後、耐食性を測定し、次の基準により評価を行った。
【0039】
優秀:24時間後の白錆の発生面積0%
良好:24時間後の白錆の発生面積5%未満
不良:24時間後の白錆の発生面積5%以上
【0040】
2)密着性
ASTM D3359に規定した方法により塗膜を1mmの間隔で横と縦を11ラインずつ引いて100間を作った後、セロハンテープを用いて密着性を測定し、次の基準により評価を行った。
【0041】
優秀:塗膜の残存率100%
良好:塗膜の残存率95%以上
不良:塗膜の残存率95%未満
【0042】
3)貯蔵安定性
防錆コーティング用水性無機系金属表面処理剤の組成物を40℃の恒温装置内に2ヶ月間貯蔵した後の組成物の粘度上昇、ゲル化及び沈殿の状態を観察し、次の基準により評価を行った。
【0043】
○:組成物の粘度上昇、ゲル化及び沈殿などの変化が認められない。
×:組成物の粘度上昇、ゲル化及び沈殿などの変化が認められる。
【0044】
4)Cr反応性
製造された溶液とCr溶液を1:1に混合し、24時間放置した後、溶液の状態を肉眼で調査した。
【0045】
○:組成物の粘度上昇、ゲル化及び沈殿などの変化が認められない。
×:組成物の粘度上昇、ゲル化及び沈殿などの変化が認められる。
【0046】
【表3】

【0047】
発明例と比較例の物性の評価結果を上記の表3に示した。
上記表3のように発明例1乃至8の組成物は全体的に優れた物性を確保し、比較例の場合耐食性が何れも不良という結果を示した。比較例4乃至7の場合、耐食性の確保のためには実際の塗膜の厚さを0.5μm以上に塗布しなければならないが、発明例の場合、0.1μm以上から安定した耐食性を得ることが出来る。そして、現在、クロムを含有しない設備においてクロムを含有する表面処理鋼板と共に生産が行われるべきであるため、Crとの反応性があってはならないという特徴を有する。ところが、比較例の場合Cr溶液の混入時にゲル化が発生して設備の故障を引き起こすことがある。
【0048】
そして、比較例1では過量のシラン化合物を使用したため、耐食性を確保することが困難で、比較例2の場合には金属エッチング剤として蓚酸を使用したため耐食性の確保に失敗した。また、比較例3の場合、架橋促進剤であるチタン化合物が添加されなかったため耐食性の確保が困難である。
【0049】
そして発明例1乃至6及び比較例1乃至3の場合、低温(60℃)で乾燥及び硬化が行われ所望とした値が得られたが、比較例4乃至7の場合は150℃以上の高温で作業が行われないと硬化及び乾燥されない。もし、塗膜の未乾燥及び硬化が行われない場合、塗膜の物性を確保することが困難である。従って、本発明による発明例1乃至6の場合には、低温硬化型の耐食性の高い金属表面処理組成物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体溶液100重量部を基準に、エポキシ基を有するシラン化合物及びアミノ基を有するシラン化合物またはこれらの加水分解縮合物5〜30重量部と、バナジウム化合物0.1〜5重量部と、マグネシウム化合物0.1〜5重量部と、有/無機酸1〜10重量部と、架橋促進及びカップリング剤0.05〜2重量部と、消泡剤0.01〜1重量部と、ウェッティング剤1〜2重量部と、残りは水とエタノールからなるクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物。
【請求項2】
前記シラン化合物としてはビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエポキシシラン、ビニルトリエポキシシラン、3−アミノプロピルトリエポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエポキシシラン)−1−プロパンアミン、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシトリメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、及びN−[2−(ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシランで構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載のクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物。
【請求項3】
前記有/無機酸は、蟻酸、エチレンジアミンテトラアセト酸またはリン酸であることを特徴とする請求項1に記載のクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物。
【請求項4】
前記バナジウム化合物は、バナジウムの酸化数が2〜5価であるバナジウム化合物で、前記マグネシウム化合物は硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム及び酸化マグネシウムで構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載のクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物。
【請求項5】
前記バナジウム化合物は、5酸化バナジウム、3酸化バナジウム、2酸化バナジウム、バナジウムオキシアセチルアセトネート、バナジウムアセチルアセトネート、3塩化バナジウム、一酸化バナジウム及びメタバナド酸アンモニウムで構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項4に記載のクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物。
【請求項6】
前記架橋促進及びカップリング剤としては、ジルコニウムまたはチタン化合物が使用されることを特徴とする請求項1に記載のクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物。
【請求項7】
前記チタン化合物は、ジイソプロピルジトリエタノールアミノチタネート、乳酸チタニウムキレート、及びチタニウムアセチルアセトネートで構成されるグループから選択される少なくとも1種以上のチタン化合物であることを特徴とする請求項6に記載のクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物。
【請求項8】
前記消泡剤は、N−メチルエタノールアミンであることを特徴とする請求項1に記載のクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物。
【請求項9】
前記ウェッティング剤は、イソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載のクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物。
【請求項10】
前記金属表面処理組成物のpHは3〜7であることを特徴とする請求項1に記載のクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項によるクロムフリー低温硬化型金属表面処理組成物がコーティングされた鋼板。
【請求項12】
前記金属表面処理組成物のコーティング温度は30〜250℃であることを特徴とする請求項11に記載の鋼板。
【請求項13】
前記金属表面処理組成物のコーティング乾燥塗膜は0.05〜1.0g/mであることを特徴とする請求項11に記載の鋼板。

【公表番号】特表2008−544088(P2008−544088A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518024(P2008−518024)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【国際出願番号】PCT/KR2006/002346
【国際公開番号】WO2006/137663
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(502258417)ポスコ (73)
【出願人】(507414683)テハン パーカライジング シーオー.エルティディ. (1)
【Fターム(参考)】