クロリン誘導体
【課題】患者に対する負担を軽減した、PDT(Photodynamic Therapy:光物理化学的診断・治療法)を使用した、皮膚疾患治療剤、並びに抗菌剤の提供。
【解決手段】次式(I):
[式中、Xは、Oを表し、Yは、−(CH2)nを表し、Rは、−OH、−O(CH2)mCH3などを表し、n及びmは、0〜10の整数を表わす]で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【解決手段】次式(I):
[式中、Xは、Oを表し、Yは、−(CH2)nを表し、Rは、−OH、−O(CH2)mCH3などを表し、n及びmは、0〜10の整数を表わす]で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩、それらを有効成分とする光物理化学的診断・治療法(PDT:Photodynamic Therapy)用として使用する皮膚疾患治療剤、並びに抗菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の新しい治療法として、光物理化学的診断・治療法(以下、「光線力学療法」と記す:PDT:Photodynamic Therapy)が行われている。これはある種のポルフィリン誘導体を静脈内注射などの方法により投与して、癌(腫瘍)組織に選択的に集積させた後、レーザー光を照射することにより癌組織のみを選択的に破壊することにより癌細胞を消滅させる治療法であり、ポルフィリン誘導体が有する癌組織への選択的集積性と、光増感作用という2つの特性を利用した治療法である。
【0003】
本発明者らは、このPDTに使用することができるポルフィリン誘導体について鋭意研究を進めてきており、これまでにATX−S10と称するイミノクロリンアスパラギン酸誘導体を提供してきている。
このイミノクロリンアスパラギン酸誘導体またはその薬理学的に許容される塩のなかでも、特にナトリウム塩である化合物、すなわちATX−S10・Naと命名された化合物は、癌組織への集積性、ならびに新生血管への選択的集積性が著しく高い化合物である。したがって、その優れた特性を利用して、腫瘍の治療のためのPDT用治療剤として極めて効果的なものであることを確認している(特許文献1)。
【0004】
一方、新生血管に起因する炎症を症状とする炎症性角化症は、皮膚の真皮部分に存在する血管が広がり、リンパ球などの白血球が皮膚に侵入することによっておこる「炎症」と皮膚の表皮が分厚くなって角層も分厚くなる「角化症」が同時に起こる皮膚症状であり、治療法としては、ステロイドなどの抗炎症剤、レチノイドなどの表皮増殖抑制剤、紫外線療法(PUVA療法)が実施されているが、完治に至る決定的な治療法ではない。近年、5−アミノレブリン酸塩酸塩(5−ALA)を用いたPDTによる治療が有効であることが判ってきている。しかしながら、5−ALAはプロトポルフィリンIXの生合成前駆体であり、プロトポルフィリンIXの化合物特性、即ち、新生血管集積性が低いこと、最長波長吸収端が630nmであることから充分な治療効果が得られない。
【0005】
また、角化症の一つに日光角化症がある。この日光角化症は、老人性角化症ともいわれており、将来的に皮膚がんに進展する可能性のあることからがんの一歩手前、「がん前駆症状」といわれている。長年にわたり日光にさらされたことで皮膚細胞の核の遺伝子DNAが傷つけられ、その修復が加齢によって困難になることから生じる角化症である。症状としてはカサカサした、やや盛り上がった紅斑または灰色ないし褐色の色素斑が皮膚表面に生じ、一見、湿疹やイボに似ているために放置されがちであるが、がん前駆症状とも称されることから治療して切除することが好ましい。手術や炭酸ガスレーザーによる切除、凍結療法、抗ガン剤含有軟膏などによる治療が行われているが、PDTによる治療もまた効果的なものといえる。
【0006】
ところで、本発明者等の検討により、本発明者等が提案したATX−S10・Naは、癌や眼科領域以外における新生血管に起因する炎症細胞への集積性も優れており、PDTを応用した皮膚疾患治療薬として、炎症性角化症(乾癬などの皮膚炎)治療薬として有効なものであることが判明し、ATX−S10・Naを軟膏製剤とし、PDTを応用した皮膚疾患治療薬として提供し、その点を既に特許出願している(特許文献2)。
【0007】
しかしながら、ATX−S10・Naを含有する軟膏剤は、皮膚浸透性が低いものであり、患部にその有効治療量を到達させるためにはテープストリッピングによる角層除去を必要としていた。
そこで本発明者らは、テープストリッピングを必要としない、患者に対する負担を軽減したPDT用の皮膚疾患治療剤を開発するべく検討を加えた。すなわち、PDT療法に使用する皮膚疾患治療剤として効果的なものは、薬剤自体の皮膚浸透性が高いこと、且つ軟膏剤として基剤中に均一に溶解・分散できるよう脂溶性であることが要求される。かかる観点に立脚し、幾つかのアニオン性クロリン誘導体を合成し、それらについてその効果を検討した結果、これらの新規なアニオン性クロリン誘導体が極めて効果的なものであることを見出し、その点について特許出願を行っている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO98/14453号公報
【特許文献2】特開2004−026717号公報
【特許文献3】特開2009−263317号公報
【0009】
今回、先に提案したアニオン性クロリン誘導体についてその薬理効果を検討した結果、皮膚疾患のみならず、感染症に対しても有効であり、PDT用の抗菌剤として極めて効果的であること、さらに新規なカチオン性クロリン誘導体にあっては、軟膏剤のみならずローション剤等のPDT用の外用剤としても感染症の治療に有効であることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明は、PDT(Photodynamic Therapy:光物理化学的診断・治療法)に使用し得るクロリン誘導体、更にはそれらクロリン誘導体を有効成分とするPDT用の外用剤、特に皮膚疾患治療剤、並びに抗菌剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するための本発明は、その一つの基本的態様として、次式(I):
【0012】
【化1】
【0013】
[式中、
Xは、Oを表し、
Yは、−(CH2)nを表し、
Rは、−OH、−O(CH2)mCH3、−O(CH2)m−OH、又は−NHCH2−Z
(ここでZは、
【0014】
【化2】
【0015】
を表す)を表し、
n及びmは、0〜10の整数を表わす]
で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
[但し、A型誘導体において、Rが−OH、−O(CH2)mCH3及び−O(CH2)m−OHである化合物は除く]
【0016】
より具体的な一つの態様としては、本発明は、前記式(I)が、次式(I)−A型:
【0017】
【化3】
【0018】
[式中、
Xは、Oを表し、
Yは、−(CH2)nを表し、
Rは、−NHCH2−Z
(Zは、
【0019】
【化4】
【0020】
を表す)を表し、
nは、0〜10の整数を表わす]
であるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
【0021】
また具体的な別の態様としては、本発明は、前記式(I)が、次式(I)−B型:
【0022】
【化5】
【0023】
(式中、X、Y及びRは前記定義と同一である)
であるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
【0024】
さらに、本発明は別の態様として上記のクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)用の皮膚疾患治療用剤である。
【0025】
また、本発明は、更に別の態様として、次式(I):
【0026】
【化6】
【0027】
[式中、
Xは、Oを表し、
Yは、−(CH2)nを表し、
Rは、−OH、−O(CH2)mCH3、−O(CH2)m−OH、又は−NHCH2−Z
(ここでZは、
【0028】
【化7】
【0029】
を表す)を表し、
n及びmは、0〜10の整数を表わす]
で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)用の抗菌剤である。
【0030】
より具体的には、本発明は前記式(I)が、次式(I)−A型、及び式(I)−B型:
【0031】
【化8】
【0032】
【化9】
【0033】
(各式中、X、Y及びRは上記定義と同一である)
であるPDT用の抗菌剤である。
【0034】
より具体的には、本発明は軟膏剤、或いはローション剤の形態にある上記したPDT用の皮膚疾患治療用剤、または抗菌剤である。
【0035】
すなわち本発明は、その基本的な態様は、上記式(I)で示されるクロリン誘導体、特に(I)−A型、並びに(I)−B型のクロリン誘導体、又はその薬理学的に許容される塩を利用して、PDTによる皮膚疾患治療、感染症治療を行う点に特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明により提供されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩は、アニオン性、或いはカチオン性クロリン誘導体であり、これらのクロリン誘導体を含有する軟膏剤或いはローション剤等の外用剤は、テープストリッピングを必要としないで皮膚患部への浸透性が良好なものであり、したがって、皮膚疾患治療におけるPDT療法において、患者に負担を与えることがない。
また、テープストリッピングを必要としないことから、治療自体を簡便に行える利点を有しており、新しい治療システムを提供できるものである。
【0037】
さらに、感染症治療のためのPDT用抗菌剤として、効果的なものであり、特にカチオン性クロリン誘導体は水溶性が高いため、非水性外用剤のみならず、水性外用製剤として用いることも可能である。
また、今日の感染症治療用いられている抗菌剤、抗生物質等は、薬剤耐性が容易に生じ易いものであるが、本発明のPDT治療システムにおいては、そのような薬剤耐性の問題が発生しない点で、その利点は、極めて特異的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】試験例4における結果を示したグラフである。
【図2】試験例5における照射前の症状を示す写真である。
【図3】試験例5における照射後の症状を示す写真である。
【0039】
【図4】試験例7における、TONS 501B型含有軟膏剤によるレーザー照射(150J/cm2)前の写真である。
【図5】試験例7における、TONS 501B型含有軟膏剤によるレーザー照射(150J/cm2)48時間後の写真である。
【図6】試験例7における、TONS 501B型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)前の写真である。
【図7】試験例7における、TONS 501B型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)24時間後の写真である。
【0040】
【図8】試験例7における、TONS 501B型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)48時間後の前の写真である。
【図9】試験例7における、TONS 501B型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)96時間後の写真である。
【0041】
【図10】試験例7における、TONS 504A型含有軟膏剤によるレーザー照射前の写真である。
【図11】試験例7における、TONS 504A型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)24時間後の写真である。
【図12】試験例7における、TONS 504A型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)48時間後の写真である。
【図13】試験例7における、TONS 504A型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)96時間後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明が提供する、式(I)で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩、具体的には式(I)−A型、或いは式(I)−B型のクロリン誘導体(以下、これらを併せて、単に「クロリン誘導体」という場合もある)である。
このクロリン誘導体は、これまで本発明者等が提供してきたイミノクロリンアスパラギン酸誘導体であるATX−S10とは異なり、皮膚浸透性が高く、また脂溶性或いは水溶性を持たせたことから例えば各種軟膏基剤中に均一に溶解・分散し、軟膏製剤自体の安定性も極めて良好なものであり、また水溶性ローション剤として製剤中に均一に溶解・分散し、製剤自体の安定性も極めて良好なものである。
【0043】
そのような式(I)で示されるクロリン誘導体の中でも、特に以下の式(I−a)で示されるA型、及びB型:
【0044】
【化10】
【0045】
更には、以下の式(I−b)で示されるA型及びB型:
【0046】
【化11】
【0047】
で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩であって、具体的には、以下の略号で示される化合物である。
【0048】
TONS 501B型:式(I−a)B型において、XがOであり、Yが−CH2−であるクロリン誘導体。
【0049】
TONS 502A型:式(I−a)A型において、XがOであり、Yが−CH2−であるクロリン誘導体。
【0050】
TONS 503B型:式(I−b)B型において、XがOであり、Yが−CH2−であるクロリン誘導体。
【0051】
TONS 504A型:式(I−b)A型において、XがOであり、Yが−CH2−であるクロリン誘導体。
【0052】
これらのクロリン誘導体は、例えば、以下のようにして得ることができる。
すなわち、対応するフォトプロトポルフィリン誘導体を適当な有機溶媒中に溶解し、そこに1,3−プロパンジオール、エチレングリコール等のジオール化合物を反応させることにより、調製することができる。
【0053】
反応に使用する有機溶媒は特に限定されず、反応に直接の影響を与えないものであれば、任意に選択することができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒を挙げることができ、なかでもテトラヒドロフランが好ましく使用される。
【0054】
反応温度、反応時間も特に限定されるものではなく、0〜60℃、好ましくは室温下に0.5〜10時間程度攪拌処理をすることがよい。
反応には、マイルドな酸触媒を存在させることが必要であり、そのような酸触媒としては、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等をあげることができ、なかでもp−トルエンスルホン酸を使用することにより、高収率で目的とするクロリン誘導体を得ることができる。
【0055】
その幾つかの調製方法の具体的なものを以下に示す。
【0056】
製造例1:式(I−a)B型において、XがOであり、Yが−CH2−であるアニオン性クロリン誘導体の調製(TONS 501B型の調製)
フォトプロトポルフィリン ジメチルエステル(P−Me B型)1.0gをテトラヒドロフラン50mLに溶解し、この溶液中に1,3−プロパンジオール5.0mL及びp−トルエンスルホン酸一水和物300mgを加え、1時間撹拌した。攪拌終了後、1%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて析出した沈殿を濾取後、酢酸エチルより再結晶し、新規アニオン性クロリン誘導体(TONS 501B型)を0.9g得た。
得られた誘導体についてUV−VISスペクトル分析を行ったところ、最長波長吸収端662.5nmを示し、LC−MS(エレクトロスプレー、ESI)により質量分析を実施したところ、m/z:681を示し、目的とするアニオン性クロリン誘導体であることが確認された。
これは、NMRスペクトル分析によってもその構造が支持された。
【0057】
製造例2:式(I−a)A型において、XがOであり、Yが−CH2−であるアニオン性クロリン誘導体の調製(TONS 502A型の調製)
フォトプロトポルフィリン ジメチルエステル(P−Me A型)1.0gをテトラヒドロフラン50mLに溶解し、この溶液中に1,3−プロパンジオール4.8mL及びp−トルエンスルホン酸一水和物150mgを加え、2時間撹拌した。攪拌終了後、1%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて析出した沈殿を濾取後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、新規アニオン性クロリン誘導体(TONS 502A型)を0.9g得た。
得られた誘導体についてUV−VISスペクトル分析を行ったところ、最長波長吸収端662nmを示し、LC−MS(エレクトロスプレー、ESI)により質量分析を実施したところ、m/z:681を示し、目的とするアニオン性クロリン誘導体であることが確認された。
これは、NMRスペクトル分析によってもその構造が支持された。
【0058】
製造例3:式(I−a)B型において、XがOであり、Yが−CH2−であるアニオン性クロリン誘導体の遊離体(エステルフリー体)の調製(TONS−H 501B型の調製)
製造例1で得た新規アニオン性クロリン誘導体(TONS 501B型)1.0gをジメチルホルムアミド20mLに溶解し、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液10mLを冷却しながら加え、1時間攪拌を行った。反応終了後、エタノール100mL、次いで酢酸エチル30mLを加え、沈殿化し、濾集後、沈殿物を得た。
得られた沈殿物を水1mL及びアセトニトリル50mLにて再沈殿化を行い精製し、沈殿物を濾集し、乾燥することで、遊離体(エステルフリー体)のナトリウム塩(TONS−Na 501B型)0.9gを得た。
得られたナトリウム塩に水1mLを加えて溶解させ、10%クエン酸水溶液200mLを加え再沈殿化を行い、濾集後水洗し、乾燥後にピリジン5mLに溶解し、酢酸エチル30mL及びn−ヘキサン50mLにて再沈殿を行い、これらを濾集し、乾燥を行い、目的とする遊離クロリン誘導体(TONS−H 501B型)を0.8g得た。
【0059】
製造例4:式(I−a)A型において、XがOであり、Yが−CH2−であるアニオン性クロリン誘導体の遊離体(エステルフリー体)の調製(TONS−H 502A型の調製)
製造例3の方法に準じ、製造例2で得た新規アニオン性クロリン誘導体(TONS 502A型)1.0gをピリジン50mLに溶解し、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液10mLを冷却しながら加え、室温にて1時間攪拌を行った。反応終了後、10%クエン酸水溶液200mLを加え沈殿化し、濾集後水洗し、乾燥後にピリジン5mLに溶解し、酢酸エチル30mL及びn−ヘキサン50mLにて再沈殿を行い、これらを濾集し、乾燥後後に、目的とする遊離クロリン誘導体(TONS−H 502A型)を0.8g得た。
【0060】
製造例5:式(I−b)B型において、XがOであり、Yが−CH2−であるカチオン性クロリン誘導体の調製(TONS 503B型の調製)
製造例3で得た遊離クロリン誘導体(TONS−H 501B型)1.0gをジメチルアセトン50mLに溶解し、3−(アミノメチル)ピリジン0.7mLを加え、さらにWSC・HCl(N,N−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)2.0gを添加し、室温で3時間攪拌反応させた。反応終了後、冷水200mLにて沈殿を濾集し、得られた沈殿物を水洗、乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ジクロルメタン/メタノール)に付し精製し、ピリジン担持のアミドクロリン誘導体(TONS−Py 501B型)0.4gを得た。
得られたピリジン担持のアミドクロリン誘導体(TONS−Py 501B型)1.0gをジクロルメタン10mLに溶解し、沃化メチル0.2gを加えて室温にて一夜攪拌した。得られた反応液を40℃以下で加温濃縮し、カチオン性クロリン誘導体(TONS 503B型)0.4gを得た。
本誘導体についてUV−VISスペクトル分析を行ったところ、最長波長吸収端666nmを示し、LC−MS(エレクトロスプレー、ESI)により質量分析を実施したところ、m/z:1370.7を示し、目的とするカチオン性クロリン誘導体であることが確認された。
【0061】
製造例6:式(I−b)A型において、XがOであり、Yが−CH2−であるカチオン性クロリン誘導体の調製(TONS 504A型の調製)
製造例4で得た遊離クロリン誘導体(TONS−H 502A型)1.0gをアセトニトリル50mLに懸濁溶解し、WSC・HCl(N,N−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)2.0gを添加し、室温で3時間攪拌反応させた。反応終、3−(アミノメチル)ピリジン0.7mLを加え、反応生成物(TLCにて確認)を得た。得られた生成物に水200mLを加え析出した沈殿を濾集後、水60mL、次いで1%クエン酸水溶液20mL、水100mLで順次洗浄し、乾燥し、ピリジン担持のアミドクロリン誘導体(TONS−Py 502A型)0.9gを得た。
得られたピリジン担持のアミドクロリン誘導体(TONS−Py 502A型)をクロロホルム20mL、アセトニトリル10mL混液に溶解し、次いで沃化メチル0.7gを加えて室温にて一夜攪拌した。反応後(TLCにて確認)、ロータリーエバポレータにて30℃で蒸発乾固した。これを自然乾燥し、カチオン性クロリン誘導体(TONS 504A型)1.0gを得た。
本誘導体についてUV−VISスペクトル分析を行ったところ、最長波長吸収端666nmを示し、LC−MS(エレクトロスプレー、ESI)により質量分析を実施したところ、m/z:1370.7を示し、目的とするカチオン性クロリン誘導体であることが確認された。
これは、NMRスペクトル分析によってもその構造が支持された。
【0062】
本発明においては、これらのクロリン誘導体は、PDT用の皮膚疾患治療剤、或いは抗菌剤等の外用剤として処方される。
皮膚疾患治療剤、或いは抗菌剤としての外用剤は、非水性軟膏剤、水性軟膏剤、ローション剤等の剤型で処方される。軟膏基剤としては種々の基剤を挙げることができ、経時的な製剤の安定性を確保しうる軟膏製剤の処方について検討したところ、非水性軟膏基剤が良好な軟膏剤となり得ること判明した。
このような非水性軟膏基剤としては、具体的には、FAPG(H)軟膏基剤、FAPG(K)軟膏基剤、PEG軟膏基剤(マクロゴール軟膏基剤)、PEG−PG軟膏基剤、ワセリン軟膏基剤、SRワセリン軟膏基剤、SRワセリン−IPM軟膏基剤、プラスチベース軟膏基剤を挙げることができる。
なお、本発明のクロリン誘導体はアニオン性並びにカチオン性クロリン誘導体の両者を包含することから、非水性軟膏基剤のみならず、水性軟膏剤としても良いことはいうまでもない。
【0063】
具体的には、FAPG(H)軟膏基剤とはステアリルアルコール、ステアリン酸ならびにプロピレングリコールからなる軟膏基剤である。また、FAPG(K)軟膏基剤とはステアリルアルコール、ステアリン酸およびポリエチレングリコール400からなる軟膏基剤である。PEG軟膏基剤(マクロゴール軟膏基剤)とはポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール4000からなる軟膏基剤であり、PEG−PG軟膏基剤とはプロピレングリコールおよびポリエチレングリコール4000からなる軟膏基剤である。
【0064】
また、ワセリン軟膏基剤とはワセリンおよび流動パラフィンからなる軟膏基剤であり、SRワセリン軟膏基剤とはSRワセリン(5%サリチル酸−ワセリン)および流動パラフィンからなる軟膏基剤であり、SRワセリン−IPM軟膏基剤とはSRワセリンおよびミリスチン酸イソプロピルからなる軟膏基剤である。さらに、プラスチベース軟膏基剤とはプラスチベース(95%の流動パラフィンと5%のポリエチレン樹脂)からなる軟膏基剤である。
【0065】
なお、本発明で使用する軟膏基剤としては上記のものに限定されず、製剤学的に一般的に使用されている軟膏基剤を使用し得ることはいうまでもない。また、薬剤学的もしくは製剤学的に他の安定剤やl−メントールのような経皮吸収促進剤を加えることも許容される。
本発明者等の検討によれば、上記した軟膏基剤の中でもマクロゴール軟膏基剤が特に好ましいものであることが判明した。
【0066】
またローション剤としては、一般的なローション剤として処方することができ、なかでもマクロゴール含有ローション剤が特に好ましいことが判明した。
【0067】
本発明において、これらの製剤に含有させる式(I)で示されるクロリン誘導体の配合量は、配合された有効成分であるクロリン誘導体が経皮吸収され、疾患部位に蓄積され、レーザー光線の照射により標的細胞、或いは細菌を死滅させるのに十分な量が配合されればよい。本発明者らの検討によれば、その配合量は、製剤重量をベースとして0.1〜20重量%であれば、十分な効果が得られることが判明した。
【0068】
配合量が0.1重量%未満であると目的とする治療効果を上げることができず、また20.0重量%以上配合させてもそれ以上の効果は得られなかった。
なお、配合量は含有させる有効成分の種類により一概に特定することはできず、また、含有させる有効成分の安定性は有効成分の濃度、用いる基剤に大きく影響されないため、上記の含有量の範囲内で、用途に合わせ種々変更させることが可能である。
【0069】
本発明の軟膏製剤等の外用剤を製造するには、汎用されている一般的な外用剤の調製法が用いられ、製剤基剤中に有効成分であるクロリン誘導体を均一に混練すればよい。
また、必要に応じて、多の成分を均一に混練すればよい。
【0070】
以上のようにして得られた本発明の製剤をPDTに使用する場合には、日光角化症、炎症性角化症、表皮癌、感染症等の皮膚疾患部位に直接塗布することにより効果的にクロリン誘導体が集積され、その後、その部位をレーザー光線等による光照射により、当該疾患を効果的に治療することができる。
この軟膏剤、ローション剤等の外用剤の適用において、本発明が提供するクロリン誘導体は、テープストリッピングを必要としないで皮膚患部への浸透性が良好なものであり、したがって、皮膚疾患治療におけるPDTにおいて、患者に負担を与えることがなく、治療自体を簡便に行える利点を有している。
なお、軟膏剤、ローション剤等の外用剤の塗布にあたっては、ODT効果(密封包帯効果:occlusive dressing technique)を得るために、塗布部位を密閉状態に保つこともより効果的である。
【0071】
また、本発明のクロリン誘導体は、PDT用の抗菌剤として、各種の感染症に対して有効であることが判明した。そのような感染症としては、ヒトのみならず各種動物における感染症を含み、酵母様真菌に起因する犬、猫等におけるマラセチア性外耳炎、爪感染症、水虫等の真菌による感染症、MRSA、緑膿菌、大腸菌等を原因菌とする各種感染症、歯周病菌による歯槽膿漏等の歯科系感染症、その他結核菌、或いはウイルスによる感染症や疣へのPDT用の診断・治療に使用することができる。
【0072】
本発明が提供するクロリン誘導体を含有する製剤を塗布した後の疾患部位における光照射に際しては、種々のレーザー光やランプを使用することができる。例えば、チタンサファイヤレーザー、半導体レーザー、OPO−YAGレーザー、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード等を使用することができる。そのなかでも、660から670nm付近に吸収波長を持つクロリン誘導体には半導体レーザーを用いることがより効果的である。
【0073】
かくして、本発明の軟膏製剤、ローション製剤等を疾患部位に塗布し、有効成分を経皮吸収させた後、当該疾患部位を光照射することにより、当該皮膚疾患、或いは感染症を効果的に治療することができる。
【実施例】
【0074】
以下に本発明を、具体的処方例、試験例等により詳細に説明するが、本発明はこれらのものに限定されるものではない。
【0075】
試験例1:アニオン性クロリン誘導体(TONS 501B型、及びTONS 502A型)の熱安定性試験
<高圧蒸気(オートクレーブ)処理に対する安定性>
本発明のクロリン誘導体は、製剤化にあたって、無菌化処理のためオートクレーブ処理等が行われる。
そのため、高圧蒸気(オートクレーブ)処理に対する安定性を検討した。
アニオン性クロリン誘導体(TONS 501B型、及びTONS 502A型)のそれぞれ20mgを121℃/20分間の高圧蒸気(オートクレーブ)処理を行った。
高圧蒸気処理後のサンプルについて、TLC分析、及びHPLC分析を行ったところ、分解物は確認されず、いずれも高圧蒸気(オートクレーブ)処理下では分解せず、安定であることが確認された。
【0076】
本発明が提供する式(I)のクロリン誘導体を含有する軟膏剤、ローション剤の具体的処方例を、以下に記載する。
【0077】
処方例1:PEG軟膏基(マクロゴール軟膏)
ポリエチレングリコール4000(PEG4000、平均分子量約3,000;和光純薬工業社製)3.0g、ポリエチレングリコール400(PEG400、平均分子量約360〜440;和光純薬工業社製)7.0g及びl−メントール0.1gを加熱して溶解混合し、そこに上記製造例で得たアニオン性クロリン誘導体(TONS 501B型、及びTONS 502A型)の各1.0gを添加し混合した。攪拌しながら放冷し、それぞれのマクロゴール軟膏剤を得た。
同様にしてカチオン性クロリン誘導体(TONS 503B型、及びTONS 504A型)についても、マクロゴール軟膏剤を得た。
【0078】
処方例2:ローション剤(マクロゴール含有)
ポリエチレングリコール400(PEG400、平均分子量約360〜440;和光純薬工業社製)10.0g及びl−メントール0.1gを加熱して溶解混合し、そこに上記製造例で得たアニオン性クロリン誘導体(TONS 501B型、及びTONS 502A型)の各1.0gを添加し混合した。攪拌しながら放冷し、それぞれのマクロゴール含有のローション剤を得た。
同様にしてカチオン性クロリン誘導体(TONS 503B型、及びTONS 504A型)についても、マクロゴール含有のローション剤を得た。
【0079】
試験例2:安定性試験
上記で得られた本発明のクロリン誘導体を含有するマクロゴール軟膏剤、或いはローション剤を、ポリプロピレン製容器内にて、冷蔵庫に3ヶ月間保存し、有効成分の純度をHPLCにより測定し、その安定性を評価した。保存開始前の純度と、3ヶ月保存後の純度をHPLCによる面積百分率により求めた。
その結果、含有された有効成分(アニオン性クロリン誘導体及びカチオン性クロリン誘導体)の純度の低下が認められず、安定なものであることが判明した。
【0080】
次に、本発明が提供する新規クロリン誘導体を含有する製剤について、PDTによる治療効果の実際を記載する。
【0081】
試験例3:黄色ブドウ球菌(グラム陰性菌)を用いたin vitro試験
<方法>
黄色ブドウ球菌を増菌後、滅菌蒸留水で菌数を1×106cfu/mLに調整し、標準寒天培地シャーレに500μLずつ分注した。それに被検液(TONS 504A型)を0、0.1、1、及び10μL(無菌蒸留水に溶解)となるように調製した。
次いで、このシャーレに光照射(Super Lyzer−PDT−D1;波長:600−700nm、2.3W、東京医研製:総照射量:5、10及び20J/cm2)をした。照射後、10倍希釈菌液を寒天培地に塗布し、24時間37℃で培養後、コロニー数を計測した。
<結果>
薬剤濃度0.1μ/mL以上にあっては、5、10及び20J/cm2の全てにおいてコロニー数の著しい減少が観察され、抗菌効果を示していた。
その結果を下記表1に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
試験例4:マラセチア性外耳炎(犬)用いたin vivo薬効試験
<症状>
ビーグル犬(10歳齢、体重9.4kg)。両耳で酵母様真菌(耳垢スメアにて)を確認し、両耳の掻痒感を認めた。
<方法>
対照(薬剤の塗布無し)として、左耳にはSuper Lyzer−PDT−D1(波長:600−700nm、2.3W、東京医研製)を用い、出力20%、2秒に1秒の間隔で10分間照射した。
他方、右耳には、処方2で得た1% TONS 501B型のローション剤を、外耳道全体に薬剤塗布し、直後にSuper Lyzer−PDT−D1を用い、出力20%、2秒に1秒の間隔で10分間照射した。
処置後、耳道内を洗浄する等の処置は一切行わなかった。両耳共に、処置前、処置後2日及び処置後7日目に、耳垢スメアを採り、1視野あたりのマラセチア数をそれぞれ10視野ずつ計測し、菌の減少率で効果を確認した。
【0084】
<結果>
1% TONS 501B型のローション剤はマラセチア性外耳炎に対して有効であることが判明した。
同様にして、他のマラセチア性外耳炎に被患した犬を用いてTONS 504A型の1%ローション剤を用いて試験したところ、同様に有効であることが判明した。
これらの結果を図1に示した。
【0085】
試験例5:マラセチア性外耳炎(犬)用いたin vivo薬効試験(16症例)
<症状>
犬種、菌種を確認後、試験を行った。
<方法>
先の試験例4と同様にして、被患した犬の耳に処方2で得た1% TONS 501A型のローション剤を塗布し、直後に、Super Lyzer−PDT−D1を用い、1.8W、2秒に1秒の間隔で7分間照射した。
その後の経過観察を行ったところ、各犬で良好な結果を示していた。
その結果を下記表2にまとめて示した。
また、その1例についての具体的症状治癒状況を図2及び図3に示した。図2は照射前の症状であり、図3は照射後の症状を示した犬の耳の写真である。
【0086】
【表2】
【0087】
試験例6:パピローマ(乳頭腫)モデルマウスの作成
12週齢の雌性ヘアレスマウス(HOS:Hr Shizuoka Laboratory Center)の背部に0.2μMの7,12−ジメチルベンズアントラセン(DMBA)を1回塗布した後、2週間後に、0.02μMの12−O−テトラデカノイルフォルボール−13−アセテート(TPA)を週2回の頻度で塗布した。
その結果、2ヶ月後に径1〜2mmのパピローマが多数出現した。
【0088】
試験例7:パピローマモデルマウスを用いた軟膏剤のPDT療法による治療効果
<方法>
上記試験例6で作成したパピローマモデルマウスのパピローマ部分に、処方例1で調製した本発明のクロリン誘導体(TONS 501B型、TONS 502A型、TONS 503B型、及びTONS 504A型)を有効成分としたマクロゴール軟膏剤を小豆大程度塗布し、塗布部位を3時間密閉状態に保った後、軟膏を拭き取った。
軟膏を除去したパピローマ部分に、半導体レーザーを用いてレーザー照射(150mW/cm2、670nm、LD670−05;浜松ホトニクス社製)した。
照射後、適宜肉眼観察した。
【0089】
<結果>
アニオン性のクロリン誘導体(TONS 501B型、及びTONS 502A型)については、光照射100J/cm2並びに150J/cm2のいずれにおいても、4日目にはパピローマが脱落、消失した。
また、光照射50J/cm2においてもパピローマの縮小が認められた。
一方、カチオン性クロリン誘導体(TONS 503B型、及びTONS 504A型)の場合、及び対照として光照射のみ(200J/cm2)にあっては、全く効果を示さなかった。
その結果を図4〜図13に示した。
【0090】
いずれの図も、パピローマモデルマウスのパピローマ(乳頭腫)部分の写真である。
図4及び図6は、本発明の軟膏を塗布しないでレーザー照射(100J/cm2、及び150J/cm2)を行ったコントロールの結果を示した写真である。
図5はレーザー照射(150J/cm2)48時間後の写真であり、図7〜図9はレーザー照射(100J/cm2)した24、48及び96時間後の写真であるが、本発明の皮膚疾患治療用軟膏剤(アニオン性クロリン誘導体:TONS 501B型含有)を適用し、PDT療法を行うことにより、照射48時間後でもパピローマの縮小が認められ、照射96時間後にはパピローマは完全に消失していた。
【0091】
一方、図10〜13は、本発明のカチオン性クロリン誘導体(TONS 504A型)含有軟膏剤を用いた結果であるが、レーザー照射(100J/cm2)前(図10)及び照射後24時間後(図11)、48時間後(図12)並びに96時間後(図13)においてもパピローマの消失は確認されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上記載のように、本発明は光線力学的療法(PDT)として使用するアニオン性クロリン誘導体、並びにカチオン性クロリン誘導体を提供するものであり、本発明が提供するクロリン誘導体は、皮膚適用軟膏製剤とすることにより、皮膚透過性(経皮吸収性)が極めて良好なものである。したがって、日光角化症、炎症性角化症、表皮癌、感染症等の皮膚疾患、例えば乳頭腫等の疾患部位に塗布することにより、疾患部位に効果的にクロリン誘導体が集積され、レーザー照射により効果的に皮膚疾患治療を行うことができる。
また、PDT用の抗菌剤として、各種細菌に対して抗菌活性を示すものであり、今日の感染症治療用いられている抗生物質等は、薬剤耐性が容易に生じやすいものであるが、本発明のPDT診断・治療システムにおいては、そのような薬剤耐性の問題が発生しない点で、その利点は、極めて特異的なものであり、その医療上の価値は多大なものである
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩、それらを有効成分とする光物理化学的診断・治療法(PDT:Photodynamic Therapy)用として使用する皮膚疾患治療剤、並びに抗菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の新しい治療法として、光物理化学的診断・治療法(以下、「光線力学療法」と記す:PDT:Photodynamic Therapy)が行われている。これはある種のポルフィリン誘導体を静脈内注射などの方法により投与して、癌(腫瘍)組織に選択的に集積させた後、レーザー光を照射することにより癌組織のみを選択的に破壊することにより癌細胞を消滅させる治療法であり、ポルフィリン誘導体が有する癌組織への選択的集積性と、光増感作用という2つの特性を利用した治療法である。
【0003】
本発明者らは、このPDTに使用することができるポルフィリン誘導体について鋭意研究を進めてきており、これまでにATX−S10と称するイミノクロリンアスパラギン酸誘導体を提供してきている。
このイミノクロリンアスパラギン酸誘導体またはその薬理学的に許容される塩のなかでも、特にナトリウム塩である化合物、すなわちATX−S10・Naと命名された化合物は、癌組織への集積性、ならびに新生血管への選択的集積性が著しく高い化合物である。したがって、その優れた特性を利用して、腫瘍の治療のためのPDT用治療剤として極めて効果的なものであることを確認している(特許文献1)。
【0004】
一方、新生血管に起因する炎症を症状とする炎症性角化症は、皮膚の真皮部分に存在する血管が広がり、リンパ球などの白血球が皮膚に侵入することによっておこる「炎症」と皮膚の表皮が分厚くなって角層も分厚くなる「角化症」が同時に起こる皮膚症状であり、治療法としては、ステロイドなどの抗炎症剤、レチノイドなどの表皮増殖抑制剤、紫外線療法(PUVA療法)が実施されているが、完治に至る決定的な治療法ではない。近年、5−アミノレブリン酸塩酸塩(5−ALA)を用いたPDTによる治療が有効であることが判ってきている。しかしながら、5−ALAはプロトポルフィリンIXの生合成前駆体であり、プロトポルフィリンIXの化合物特性、即ち、新生血管集積性が低いこと、最長波長吸収端が630nmであることから充分な治療効果が得られない。
【0005】
また、角化症の一つに日光角化症がある。この日光角化症は、老人性角化症ともいわれており、将来的に皮膚がんに進展する可能性のあることからがんの一歩手前、「がん前駆症状」といわれている。長年にわたり日光にさらされたことで皮膚細胞の核の遺伝子DNAが傷つけられ、その修復が加齢によって困難になることから生じる角化症である。症状としてはカサカサした、やや盛り上がった紅斑または灰色ないし褐色の色素斑が皮膚表面に生じ、一見、湿疹やイボに似ているために放置されがちであるが、がん前駆症状とも称されることから治療して切除することが好ましい。手術や炭酸ガスレーザーによる切除、凍結療法、抗ガン剤含有軟膏などによる治療が行われているが、PDTによる治療もまた効果的なものといえる。
【0006】
ところで、本発明者等の検討により、本発明者等が提案したATX−S10・Naは、癌や眼科領域以外における新生血管に起因する炎症細胞への集積性も優れており、PDTを応用した皮膚疾患治療薬として、炎症性角化症(乾癬などの皮膚炎)治療薬として有効なものであることが判明し、ATX−S10・Naを軟膏製剤とし、PDTを応用した皮膚疾患治療薬として提供し、その点を既に特許出願している(特許文献2)。
【0007】
しかしながら、ATX−S10・Naを含有する軟膏剤は、皮膚浸透性が低いものであり、患部にその有効治療量を到達させるためにはテープストリッピングによる角層除去を必要としていた。
そこで本発明者らは、テープストリッピングを必要としない、患者に対する負担を軽減したPDT用の皮膚疾患治療剤を開発するべく検討を加えた。すなわち、PDT療法に使用する皮膚疾患治療剤として効果的なものは、薬剤自体の皮膚浸透性が高いこと、且つ軟膏剤として基剤中に均一に溶解・分散できるよう脂溶性であることが要求される。かかる観点に立脚し、幾つかのアニオン性クロリン誘導体を合成し、それらについてその効果を検討した結果、これらの新規なアニオン性クロリン誘導体が極めて効果的なものであることを見出し、その点について特許出願を行っている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO98/14453号公報
【特許文献2】特開2004−026717号公報
【特許文献3】特開2009−263317号公報
【0009】
今回、先に提案したアニオン性クロリン誘導体についてその薬理効果を検討した結果、皮膚疾患のみならず、感染症に対しても有効であり、PDT用の抗菌剤として極めて効果的であること、さらに新規なカチオン性クロリン誘導体にあっては、軟膏剤のみならずローション剤等のPDT用の外用剤としても感染症の治療に有効であることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明は、PDT(Photodynamic Therapy:光物理化学的診断・治療法)に使用し得るクロリン誘導体、更にはそれらクロリン誘導体を有効成分とするPDT用の外用剤、特に皮膚疾患治療剤、並びに抗菌剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するための本発明は、その一つの基本的態様として、次式(I):
【0012】
【化1】
【0013】
[式中、
Xは、Oを表し、
Yは、−(CH2)nを表し、
Rは、−OH、−O(CH2)mCH3、−O(CH2)m−OH、又は−NHCH2−Z
(ここでZは、
【0014】
【化2】
【0015】
を表す)を表し、
n及びmは、0〜10の整数を表わす]
で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
[但し、A型誘導体において、Rが−OH、−O(CH2)mCH3及び−O(CH2)m−OHである化合物は除く]
【0016】
より具体的な一つの態様としては、本発明は、前記式(I)が、次式(I)−A型:
【0017】
【化3】
【0018】
[式中、
Xは、Oを表し、
Yは、−(CH2)nを表し、
Rは、−NHCH2−Z
(Zは、
【0019】
【化4】
【0020】
を表す)を表し、
nは、0〜10の整数を表わす]
であるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
【0021】
また具体的な別の態様としては、本発明は、前記式(I)が、次式(I)−B型:
【0022】
【化5】
【0023】
(式中、X、Y及びRは前記定義と同一である)
であるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩である。
【0024】
さらに、本発明は別の態様として上記のクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)用の皮膚疾患治療用剤である。
【0025】
また、本発明は、更に別の態様として、次式(I):
【0026】
【化6】
【0027】
[式中、
Xは、Oを表し、
Yは、−(CH2)nを表し、
Rは、−OH、−O(CH2)mCH3、−O(CH2)m−OH、又は−NHCH2−Z
(ここでZは、
【0028】
【化7】
【0029】
を表す)を表し、
n及びmは、0〜10の整数を表わす]
で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)用の抗菌剤である。
【0030】
より具体的には、本発明は前記式(I)が、次式(I)−A型、及び式(I)−B型:
【0031】
【化8】
【0032】
【化9】
【0033】
(各式中、X、Y及びRは上記定義と同一である)
であるPDT用の抗菌剤である。
【0034】
より具体的には、本発明は軟膏剤、或いはローション剤の形態にある上記したPDT用の皮膚疾患治療用剤、または抗菌剤である。
【0035】
すなわち本発明は、その基本的な態様は、上記式(I)で示されるクロリン誘導体、特に(I)−A型、並びに(I)−B型のクロリン誘導体、又はその薬理学的に許容される塩を利用して、PDTによる皮膚疾患治療、感染症治療を行う点に特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0036】
本発明により提供されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩は、アニオン性、或いはカチオン性クロリン誘導体であり、これらのクロリン誘導体を含有する軟膏剤或いはローション剤等の外用剤は、テープストリッピングを必要としないで皮膚患部への浸透性が良好なものであり、したがって、皮膚疾患治療におけるPDT療法において、患者に負担を与えることがない。
また、テープストリッピングを必要としないことから、治療自体を簡便に行える利点を有しており、新しい治療システムを提供できるものである。
【0037】
さらに、感染症治療のためのPDT用抗菌剤として、効果的なものであり、特にカチオン性クロリン誘導体は水溶性が高いため、非水性外用剤のみならず、水性外用製剤として用いることも可能である。
また、今日の感染症治療用いられている抗菌剤、抗生物質等は、薬剤耐性が容易に生じ易いものであるが、本発明のPDT治療システムにおいては、そのような薬剤耐性の問題が発生しない点で、その利点は、極めて特異的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】試験例4における結果を示したグラフである。
【図2】試験例5における照射前の症状を示す写真である。
【図3】試験例5における照射後の症状を示す写真である。
【0039】
【図4】試験例7における、TONS 501B型含有軟膏剤によるレーザー照射(150J/cm2)前の写真である。
【図5】試験例7における、TONS 501B型含有軟膏剤によるレーザー照射(150J/cm2)48時間後の写真である。
【図6】試験例7における、TONS 501B型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)前の写真である。
【図7】試験例7における、TONS 501B型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)24時間後の写真である。
【0040】
【図8】試験例7における、TONS 501B型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)48時間後の前の写真である。
【図9】試験例7における、TONS 501B型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)96時間後の写真である。
【0041】
【図10】試験例7における、TONS 504A型含有軟膏剤によるレーザー照射前の写真である。
【図11】試験例7における、TONS 504A型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)24時間後の写真である。
【図12】試験例7における、TONS 504A型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)48時間後の写真である。
【図13】試験例7における、TONS 504A型含有軟膏剤によるレーザー照射(100J/cm2)96時間後の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明が提供する、式(I)で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩、具体的には式(I)−A型、或いは式(I)−B型のクロリン誘導体(以下、これらを併せて、単に「クロリン誘導体」という場合もある)である。
このクロリン誘導体は、これまで本発明者等が提供してきたイミノクロリンアスパラギン酸誘導体であるATX−S10とは異なり、皮膚浸透性が高く、また脂溶性或いは水溶性を持たせたことから例えば各種軟膏基剤中に均一に溶解・分散し、軟膏製剤自体の安定性も極めて良好なものであり、また水溶性ローション剤として製剤中に均一に溶解・分散し、製剤自体の安定性も極めて良好なものである。
【0043】
そのような式(I)で示されるクロリン誘導体の中でも、特に以下の式(I−a)で示されるA型、及びB型:
【0044】
【化10】
【0045】
更には、以下の式(I−b)で示されるA型及びB型:
【0046】
【化11】
【0047】
で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩であって、具体的には、以下の略号で示される化合物である。
【0048】
TONS 501B型:式(I−a)B型において、XがOであり、Yが−CH2−であるクロリン誘導体。
【0049】
TONS 502A型:式(I−a)A型において、XがOであり、Yが−CH2−であるクロリン誘導体。
【0050】
TONS 503B型:式(I−b)B型において、XがOであり、Yが−CH2−であるクロリン誘導体。
【0051】
TONS 504A型:式(I−b)A型において、XがOであり、Yが−CH2−であるクロリン誘導体。
【0052】
これらのクロリン誘導体は、例えば、以下のようにして得ることができる。
すなわち、対応するフォトプロトポルフィリン誘導体を適当な有機溶媒中に溶解し、そこに1,3−プロパンジオール、エチレングリコール等のジオール化合物を反応させることにより、調製することができる。
【0053】
反応に使用する有機溶媒は特に限定されず、反応に直接の影響を与えないものであれば、任意に選択することができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、エーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒を挙げることができ、なかでもテトラヒドロフランが好ましく使用される。
【0054】
反応温度、反応時間も特に限定されるものではなく、0〜60℃、好ましくは室温下に0.5〜10時間程度攪拌処理をすることがよい。
反応には、マイルドな酸触媒を存在させることが必要であり、そのような酸触媒としては、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等をあげることができ、なかでもp−トルエンスルホン酸を使用することにより、高収率で目的とするクロリン誘導体を得ることができる。
【0055】
その幾つかの調製方法の具体的なものを以下に示す。
【0056】
製造例1:式(I−a)B型において、XがOであり、Yが−CH2−であるアニオン性クロリン誘導体の調製(TONS 501B型の調製)
フォトプロトポルフィリン ジメチルエステル(P−Me B型)1.0gをテトラヒドロフラン50mLに溶解し、この溶液中に1,3−プロパンジオール5.0mL及びp−トルエンスルホン酸一水和物300mgを加え、1時間撹拌した。攪拌終了後、1%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて析出した沈殿を濾取後、酢酸エチルより再結晶し、新規アニオン性クロリン誘導体(TONS 501B型)を0.9g得た。
得られた誘導体についてUV−VISスペクトル分析を行ったところ、最長波長吸収端662.5nmを示し、LC−MS(エレクトロスプレー、ESI)により質量分析を実施したところ、m/z:681を示し、目的とするアニオン性クロリン誘導体であることが確認された。
これは、NMRスペクトル分析によってもその構造が支持された。
【0057】
製造例2:式(I−a)A型において、XがOであり、Yが−CH2−であるアニオン性クロリン誘導体の調製(TONS 502A型の調製)
フォトプロトポルフィリン ジメチルエステル(P−Me A型)1.0gをテトラヒドロフラン50mLに溶解し、この溶液中に1,3−プロパンジオール4.8mL及びp−トルエンスルホン酸一水和物150mgを加え、2時間撹拌した。攪拌終了後、1%炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて析出した沈殿を濾取後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、新規アニオン性クロリン誘導体(TONS 502A型)を0.9g得た。
得られた誘導体についてUV−VISスペクトル分析を行ったところ、最長波長吸収端662nmを示し、LC−MS(エレクトロスプレー、ESI)により質量分析を実施したところ、m/z:681を示し、目的とするアニオン性クロリン誘導体であることが確認された。
これは、NMRスペクトル分析によってもその構造が支持された。
【0058】
製造例3:式(I−a)B型において、XがOであり、Yが−CH2−であるアニオン性クロリン誘導体の遊離体(エステルフリー体)の調製(TONS−H 501B型の調製)
製造例1で得た新規アニオン性クロリン誘導体(TONS 501B型)1.0gをジメチルホルムアミド20mLに溶解し、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液10mLを冷却しながら加え、1時間攪拌を行った。反応終了後、エタノール100mL、次いで酢酸エチル30mLを加え、沈殿化し、濾集後、沈殿物を得た。
得られた沈殿物を水1mL及びアセトニトリル50mLにて再沈殿化を行い精製し、沈殿物を濾集し、乾燥することで、遊離体(エステルフリー体)のナトリウム塩(TONS−Na 501B型)0.9gを得た。
得られたナトリウム塩に水1mLを加えて溶解させ、10%クエン酸水溶液200mLを加え再沈殿化を行い、濾集後水洗し、乾燥後にピリジン5mLに溶解し、酢酸エチル30mL及びn−ヘキサン50mLにて再沈殿を行い、これらを濾集し、乾燥を行い、目的とする遊離クロリン誘導体(TONS−H 501B型)を0.8g得た。
【0059】
製造例4:式(I−a)A型において、XがOであり、Yが−CH2−であるアニオン性クロリン誘導体の遊離体(エステルフリー体)の調製(TONS−H 502A型の調製)
製造例3の方法に準じ、製造例2で得た新規アニオン性クロリン誘導体(TONS 502A型)1.0gをピリジン50mLに溶解し、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液10mLを冷却しながら加え、室温にて1時間攪拌を行った。反応終了後、10%クエン酸水溶液200mLを加え沈殿化し、濾集後水洗し、乾燥後にピリジン5mLに溶解し、酢酸エチル30mL及びn−ヘキサン50mLにて再沈殿を行い、これらを濾集し、乾燥後後に、目的とする遊離クロリン誘導体(TONS−H 502A型)を0.8g得た。
【0060】
製造例5:式(I−b)B型において、XがOであり、Yが−CH2−であるカチオン性クロリン誘導体の調製(TONS 503B型の調製)
製造例3で得た遊離クロリン誘導体(TONS−H 501B型)1.0gをジメチルアセトン50mLに溶解し、3−(アミノメチル)ピリジン0.7mLを加え、さらにWSC・HCl(N,N−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)2.0gを添加し、室温で3時間攪拌反応させた。反応終了後、冷水200mLにて沈殿を濾集し、得られた沈殿物を水洗、乾燥後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:ジクロルメタン/メタノール)に付し精製し、ピリジン担持のアミドクロリン誘導体(TONS−Py 501B型)0.4gを得た。
得られたピリジン担持のアミドクロリン誘導体(TONS−Py 501B型)1.0gをジクロルメタン10mLに溶解し、沃化メチル0.2gを加えて室温にて一夜攪拌した。得られた反応液を40℃以下で加温濃縮し、カチオン性クロリン誘導体(TONS 503B型)0.4gを得た。
本誘導体についてUV−VISスペクトル分析を行ったところ、最長波長吸収端666nmを示し、LC−MS(エレクトロスプレー、ESI)により質量分析を実施したところ、m/z:1370.7を示し、目的とするカチオン性クロリン誘導体であることが確認された。
【0061】
製造例6:式(I−b)A型において、XがOであり、Yが−CH2−であるカチオン性クロリン誘導体の調製(TONS 504A型の調製)
製造例4で得た遊離クロリン誘導体(TONS−H 502A型)1.0gをアセトニトリル50mLに懸濁溶解し、WSC・HCl(N,N−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩)2.0gを添加し、室温で3時間攪拌反応させた。反応終、3−(アミノメチル)ピリジン0.7mLを加え、反応生成物(TLCにて確認)を得た。得られた生成物に水200mLを加え析出した沈殿を濾集後、水60mL、次いで1%クエン酸水溶液20mL、水100mLで順次洗浄し、乾燥し、ピリジン担持のアミドクロリン誘導体(TONS−Py 502A型)0.9gを得た。
得られたピリジン担持のアミドクロリン誘導体(TONS−Py 502A型)をクロロホルム20mL、アセトニトリル10mL混液に溶解し、次いで沃化メチル0.7gを加えて室温にて一夜攪拌した。反応後(TLCにて確認)、ロータリーエバポレータにて30℃で蒸発乾固した。これを自然乾燥し、カチオン性クロリン誘導体(TONS 504A型)1.0gを得た。
本誘導体についてUV−VISスペクトル分析を行ったところ、最長波長吸収端666nmを示し、LC−MS(エレクトロスプレー、ESI)により質量分析を実施したところ、m/z:1370.7を示し、目的とするカチオン性クロリン誘導体であることが確認された。
これは、NMRスペクトル分析によってもその構造が支持された。
【0062】
本発明においては、これらのクロリン誘導体は、PDT用の皮膚疾患治療剤、或いは抗菌剤等の外用剤として処方される。
皮膚疾患治療剤、或いは抗菌剤としての外用剤は、非水性軟膏剤、水性軟膏剤、ローション剤等の剤型で処方される。軟膏基剤としては種々の基剤を挙げることができ、経時的な製剤の安定性を確保しうる軟膏製剤の処方について検討したところ、非水性軟膏基剤が良好な軟膏剤となり得ること判明した。
このような非水性軟膏基剤としては、具体的には、FAPG(H)軟膏基剤、FAPG(K)軟膏基剤、PEG軟膏基剤(マクロゴール軟膏基剤)、PEG−PG軟膏基剤、ワセリン軟膏基剤、SRワセリン軟膏基剤、SRワセリン−IPM軟膏基剤、プラスチベース軟膏基剤を挙げることができる。
なお、本発明のクロリン誘導体はアニオン性並びにカチオン性クロリン誘導体の両者を包含することから、非水性軟膏基剤のみならず、水性軟膏剤としても良いことはいうまでもない。
【0063】
具体的には、FAPG(H)軟膏基剤とはステアリルアルコール、ステアリン酸ならびにプロピレングリコールからなる軟膏基剤である。また、FAPG(K)軟膏基剤とはステアリルアルコール、ステアリン酸およびポリエチレングリコール400からなる軟膏基剤である。PEG軟膏基剤(マクロゴール軟膏基剤)とはポリエチレングリコール400およびポリエチレングリコール4000からなる軟膏基剤であり、PEG−PG軟膏基剤とはプロピレングリコールおよびポリエチレングリコール4000からなる軟膏基剤である。
【0064】
また、ワセリン軟膏基剤とはワセリンおよび流動パラフィンからなる軟膏基剤であり、SRワセリン軟膏基剤とはSRワセリン(5%サリチル酸−ワセリン)および流動パラフィンからなる軟膏基剤であり、SRワセリン−IPM軟膏基剤とはSRワセリンおよびミリスチン酸イソプロピルからなる軟膏基剤である。さらに、プラスチベース軟膏基剤とはプラスチベース(95%の流動パラフィンと5%のポリエチレン樹脂)からなる軟膏基剤である。
【0065】
なお、本発明で使用する軟膏基剤としては上記のものに限定されず、製剤学的に一般的に使用されている軟膏基剤を使用し得ることはいうまでもない。また、薬剤学的もしくは製剤学的に他の安定剤やl−メントールのような経皮吸収促進剤を加えることも許容される。
本発明者等の検討によれば、上記した軟膏基剤の中でもマクロゴール軟膏基剤が特に好ましいものであることが判明した。
【0066】
またローション剤としては、一般的なローション剤として処方することができ、なかでもマクロゴール含有ローション剤が特に好ましいことが判明した。
【0067】
本発明において、これらの製剤に含有させる式(I)で示されるクロリン誘導体の配合量は、配合された有効成分であるクロリン誘導体が経皮吸収され、疾患部位に蓄積され、レーザー光線の照射により標的細胞、或いは細菌を死滅させるのに十分な量が配合されればよい。本発明者らの検討によれば、その配合量は、製剤重量をベースとして0.1〜20重量%であれば、十分な効果が得られることが判明した。
【0068】
配合量が0.1重量%未満であると目的とする治療効果を上げることができず、また20.0重量%以上配合させてもそれ以上の効果は得られなかった。
なお、配合量は含有させる有効成分の種類により一概に特定することはできず、また、含有させる有効成分の安定性は有効成分の濃度、用いる基剤に大きく影響されないため、上記の含有量の範囲内で、用途に合わせ種々変更させることが可能である。
【0069】
本発明の軟膏製剤等の外用剤を製造するには、汎用されている一般的な外用剤の調製法が用いられ、製剤基剤中に有効成分であるクロリン誘導体を均一に混練すればよい。
また、必要に応じて、多の成分を均一に混練すればよい。
【0070】
以上のようにして得られた本発明の製剤をPDTに使用する場合には、日光角化症、炎症性角化症、表皮癌、感染症等の皮膚疾患部位に直接塗布することにより効果的にクロリン誘導体が集積され、その後、その部位をレーザー光線等による光照射により、当該疾患を効果的に治療することができる。
この軟膏剤、ローション剤等の外用剤の適用において、本発明が提供するクロリン誘導体は、テープストリッピングを必要としないで皮膚患部への浸透性が良好なものであり、したがって、皮膚疾患治療におけるPDTにおいて、患者に負担を与えることがなく、治療自体を簡便に行える利点を有している。
なお、軟膏剤、ローション剤等の外用剤の塗布にあたっては、ODT効果(密封包帯効果:occlusive dressing technique)を得るために、塗布部位を密閉状態に保つこともより効果的である。
【0071】
また、本発明のクロリン誘導体は、PDT用の抗菌剤として、各種の感染症に対して有効であることが判明した。そのような感染症としては、ヒトのみならず各種動物における感染症を含み、酵母様真菌に起因する犬、猫等におけるマラセチア性外耳炎、爪感染症、水虫等の真菌による感染症、MRSA、緑膿菌、大腸菌等を原因菌とする各種感染症、歯周病菌による歯槽膿漏等の歯科系感染症、その他結核菌、或いはウイルスによる感染症や疣へのPDT用の診断・治療に使用することができる。
【0072】
本発明が提供するクロリン誘導体を含有する製剤を塗布した後の疾患部位における光照射に際しては、種々のレーザー光やランプを使用することができる。例えば、チタンサファイヤレーザー、半導体レーザー、OPO−YAGレーザー、キセノンランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、発光ダイオード等を使用することができる。そのなかでも、660から670nm付近に吸収波長を持つクロリン誘導体には半導体レーザーを用いることがより効果的である。
【0073】
かくして、本発明の軟膏製剤、ローション製剤等を疾患部位に塗布し、有効成分を経皮吸収させた後、当該疾患部位を光照射することにより、当該皮膚疾患、或いは感染症を効果的に治療することができる。
【実施例】
【0074】
以下に本発明を、具体的処方例、試験例等により詳細に説明するが、本発明はこれらのものに限定されるものではない。
【0075】
試験例1:アニオン性クロリン誘導体(TONS 501B型、及びTONS 502A型)の熱安定性試験
<高圧蒸気(オートクレーブ)処理に対する安定性>
本発明のクロリン誘導体は、製剤化にあたって、無菌化処理のためオートクレーブ処理等が行われる。
そのため、高圧蒸気(オートクレーブ)処理に対する安定性を検討した。
アニオン性クロリン誘導体(TONS 501B型、及びTONS 502A型)のそれぞれ20mgを121℃/20分間の高圧蒸気(オートクレーブ)処理を行った。
高圧蒸気処理後のサンプルについて、TLC分析、及びHPLC分析を行ったところ、分解物は確認されず、いずれも高圧蒸気(オートクレーブ)処理下では分解せず、安定であることが確認された。
【0076】
本発明が提供する式(I)のクロリン誘導体を含有する軟膏剤、ローション剤の具体的処方例を、以下に記載する。
【0077】
処方例1:PEG軟膏基(マクロゴール軟膏)
ポリエチレングリコール4000(PEG4000、平均分子量約3,000;和光純薬工業社製)3.0g、ポリエチレングリコール400(PEG400、平均分子量約360〜440;和光純薬工業社製)7.0g及びl−メントール0.1gを加熱して溶解混合し、そこに上記製造例で得たアニオン性クロリン誘導体(TONS 501B型、及びTONS 502A型)の各1.0gを添加し混合した。攪拌しながら放冷し、それぞれのマクロゴール軟膏剤を得た。
同様にしてカチオン性クロリン誘導体(TONS 503B型、及びTONS 504A型)についても、マクロゴール軟膏剤を得た。
【0078】
処方例2:ローション剤(マクロゴール含有)
ポリエチレングリコール400(PEG400、平均分子量約360〜440;和光純薬工業社製)10.0g及びl−メントール0.1gを加熱して溶解混合し、そこに上記製造例で得たアニオン性クロリン誘導体(TONS 501B型、及びTONS 502A型)の各1.0gを添加し混合した。攪拌しながら放冷し、それぞれのマクロゴール含有のローション剤を得た。
同様にしてカチオン性クロリン誘導体(TONS 503B型、及びTONS 504A型)についても、マクロゴール含有のローション剤を得た。
【0079】
試験例2:安定性試験
上記で得られた本発明のクロリン誘導体を含有するマクロゴール軟膏剤、或いはローション剤を、ポリプロピレン製容器内にて、冷蔵庫に3ヶ月間保存し、有効成分の純度をHPLCにより測定し、その安定性を評価した。保存開始前の純度と、3ヶ月保存後の純度をHPLCによる面積百分率により求めた。
その結果、含有された有効成分(アニオン性クロリン誘導体及びカチオン性クロリン誘導体)の純度の低下が認められず、安定なものであることが判明した。
【0080】
次に、本発明が提供する新規クロリン誘導体を含有する製剤について、PDTによる治療効果の実際を記載する。
【0081】
試験例3:黄色ブドウ球菌(グラム陰性菌)を用いたin vitro試験
<方法>
黄色ブドウ球菌を増菌後、滅菌蒸留水で菌数を1×106cfu/mLに調整し、標準寒天培地シャーレに500μLずつ分注した。それに被検液(TONS 504A型)を0、0.1、1、及び10μL(無菌蒸留水に溶解)となるように調製した。
次いで、このシャーレに光照射(Super Lyzer−PDT−D1;波長:600−700nm、2.3W、東京医研製:総照射量:5、10及び20J/cm2)をした。照射後、10倍希釈菌液を寒天培地に塗布し、24時間37℃で培養後、コロニー数を計測した。
<結果>
薬剤濃度0.1μ/mL以上にあっては、5、10及び20J/cm2の全てにおいてコロニー数の著しい減少が観察され、抗菌効果を示していた。
その結果を下記表1に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
試験例4:マラセチア性外耳炎(犬)用いたin vivo薬効試験
<症状>
ビーグル犬(10歳齢、体重9.4kg)。両耳で酵母様真菌(耳垢スメアにて)を確認し、両耳の掻痒感を認めた。
<方法>
対照(薬剤の塗布無し)として、左耳にはSuper Lyzer−PDT−D1(波長:600−700nm、2.3W、東京医研製)を用い、出力20%、2秒に1秒の間隔で10分間照射した。
他方、右耳には、処方2で得た1% TONS 501B型のローション剤を、外耳道全体に薬剤塗布し、直後にSuper Lyzer−PDT−D1を用い、出力20%、2秒に1秒の間隔で10分間照射した。
処置後、耳道内を洗浄する等の処置は一切行わなかった。両耳共に、処置前、処置後2日及び処置後7日目に、耳垢スメアを採り、1視野あたりのマラセチア数をそれぞれ10視野ずつ計測し、菌の減少率で効果を確認した。
【0084】
<結果>
1% TONS 501B型のローション剤はマラセチア性外耳炎に対して有効であることが判明した。
同様にして、他のマラセチア性外耳炎に被患した犬を用いてTONS 504A型の1%ローション剤を用いて試験したところ、同様に有効であることが判明した。
これらの結果を図1に示した。
【0085】
試験例5:マラセチア性外耳炎(犬)用いたin vivo薬効試験(16症例)
<症状>
犬種、菌種を確認後、試験を行った。
<方法>
先の試験例4と同様にして、被患した犬の耳に処方2で得た1% TONS 501A型のローション剤を塗布し、直後に、Super Lyzer−PDT−D1を用い、1.8W、2秒に1秒の間隔で7分間照射した。
その後の経過観察を行ったところ、各犬で良好な結果を示していた。
その結果を下記表2にまとめて示した。
また、その1例についての具体的症状治癒状況を図2及び図3に示した。図2は照射前の症状であり、図3は照射後の症状を示した犬の耳の写真である。
【0086】
【表2】
【0087】
試験例6:パピローマ(乳頭腫)モデルマウスの作成
12週齢の雌性ヘアレスマウス(HOS:Hr Shizuoka Laboratory Center)の背部に0.2μMの7,12−ジメチルベンズアントラセン(DMBA)を1回塗布した後、2週間後に、0.02μMの12−O−テトラデカノイルフォルボール−13−アセテート(TPA)を週2回の頻度で塗布した。
その結果、2ヶ月後に径1〜2mmのパピローマが多数出現した。
【0088】
試験例7:パピローマモデルマウスを用いた軟膏剤のPDT療法による治療効果
<方法>
上記試験例6で作成したパピローマモデルマウスのパピローマ部分に、処方例1で調製した本発明のクロリン誘導体(TONS 501B型、TONS 502A型、TONS 503B型、及びTONS 504A型)を有効成分としたマクロゴール軟膏剤を小豆大程度塗布し、塗布部位を3時間密閉状態に保った後、軟膏を拭き取った。
軟膏を除去したパピローマ部分に、半導体レーザーを用いてレーザー照射(150mW/cm2、670nm、LD670−05;浜松ホトニクス社製)した。
照射後、適宜肉眼観察した。
【0089】
<結果>
アニオン性のクロリン誘導体(TONS 501B型、及びTONS 502A型)については、光照射100J/cm2並びに150J/cm2のいずれにおいても、4日目にはパピローマが脱落、消失した。
また、光照射50J/cm2においてもパピローマの縮小が認められた。
一方、カチオン性クロリン誘導体(TONS 503B型、及びTONS 504A型)の場合、及び対照として光照射のみ(200J/cm2)にあっては、全く効果を示さなかった。
その結果を図4〜図13に示した。
【0090】
いずれの図も、パピローマモデルマウスのパピローマ(乳頭腫)部分の写真である。
図4及び図6は、本発明の軟膏を塗布しないでレーザー照射(100J/cm2、及び150J/cm2)を行ったコントロールの結果を示した写真である。
図5はレーザー照射(150J/cm2)48時間後の写真であり、図7〜図9はレーザー照射(100J/cm2)した24、48及び96時間後の写真であるが、本発明の皮膚疾患治療用軟膏剤(アニオン性クロリン誘導体:TONS 501B型含有)を適用し、PDT療法を行うことにより、照射48時間後でもパピローマの縮小が認められ、照射96時間後にはパピローマは完全に消失していた。
【0091】
一方、図10〜13は、本発明のカチオン性クロリン誘導体(TONS 504A型)含有軟膏剤を用いた結果であるが、レーザー照射(100J/cm2)前(図10)及び照射後24時間後(図11)、48時間後(図12)並びに96時間後(図13)においてもパピローマの消失は確認されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上記載のように、本発明は光線力学的療法(PDT)として使用するアニオン性クロリン誘導体、並びにカチオン性クロリン誘導体を提供するものであり、本発明が提供するクロリン誘導体は、皮膚適用軟膏製剤とすることにより、皮膚透過性(経皮吸収性)が極めて良好なものである。したがって、日光角化症、炎症性角化症、表皮癌、感染症等の皮膚疾患、例えば乳頭腫等の疾患部位に塗布することにより、疾患部位に効果的にクロリン誘導体が集積され、レーザー照射により効果的に皮膚疾患治療を行うことができる。
また、PDT用の抗菌剤として、各種細菌に対して抗菌活性を示すものであり、今日の感染症治療用いられている抗生物質等は、薬剤耐性が容易に生じやすいものであるが、本発明のPDT診断・治療システムにおいては、そのような薬剤耐性の問題が発生しない点で、その利点は、極めて特異的なものであり、その医療上の価値は多大なものである
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式(I):
【化1】
[式中、
Xは、Oを表し、
Yは、−(CH2)nを表し、
Rは、−OH、−O(CH2)mCH3、−O(CH2)m−OH、又は−NHCH2−Z
(ここでZは、
【化2】
を表す)を表し、
n及びmは、0〜10の整数を表わす]
で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[但し、A型誘導体において、Rが−OH、−O(CH2)mCH3及び−O(CH2)m−OHである化合物は除く]
【請求項2】
式(I)が、次式(I)−A型:
【化3】
[式中、
Xは、Oを表し、
Yは、−(CH2)nを表し、
Rは、−NHCH2−Z
(Zは、
【化4】
を表す)を表し、
nは、0〜10の整数を表わす]
である請求項1に記載のクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
式(I)が、次式(I)−B型:
【化5】
(式中、X、Y及びRは請求項1に記載の定義と同一である)
である請求項1に記載のクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)用の皮膚疾患治療用剤。
【請求項5】
次式(I):
【化6】
[式中、
Xは、Oを表し、
Yは、−(CH2)nを表し、
Rは、−OH、−O(CH2)mCH3、−O(CH2)m−OH、又は−NHCH2−Z
(ここでZは、
【化7】
を表す)を表し、
n及びmは、0〜10の整数を表わす]
で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)用の抗菌剤。
【請求項6】
式(I)が、次式(I)−A型:
【化8】
(式中、X、Y及びRは請求項5に記載の定義と同一である)
である請求項5に記載抗菌剤。
【請求項7】
式(I)が、次式(I)−B型:
【化9】
(式中、X、Y及びRは請求項5に記載の定義と同一である)
である請求項5に記載抗菌剤。
【請求項8】
軟膏剤の形態にある請求項4ないし7に記載の光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)用の皮膚疾患治療用剤、または抗菌剤。
【請求項9】
ローション剤の形態にある請求項4ないし7に記載の光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)用の皮膚疾患治療用剤、または抗菌剤。
【請求項1】
次式(I):
【化1】
[式中、
Xは、Oを表し、
Yは、−(CH2)nを表し、
Rは、−OH、−O(CH2)mCH3、−O(CH2)m−OH、又は−NHCH2−Z
(ここでZは、
【化2】
を表す)を表し、
n及びmは、0〜10の整数を表わす]
で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
[但し、A型誘導体において、Rが−OH、−O(CH2)mCH3及び−O(CH2)m−OHである化合物は除く]
【請求項2】
式(I)が、次式(I)−A型:
【化3】
[式中、
Xは、Oを表し、
Yは、−(CH2)nを表し、
Rは、−NHCH2−Z
(Zは、
【化4】
を表す)を表し、
nは、0〜10の整数を表わす]
である請求項1に記載のクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
式(I)が、次式(I)−B型:
【化5】
(式中、X、Y及びRは請求項1に記載の定義と同一である)
である請求項1に記載のクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)用の皮膚疾患治療用剤。
【請求項5】
次式(I):
【化6】
[式中、
Xは、Oを表し、
Yは、−(CH2)nを表し、
Rは、−OH、−O(CH2)mCH3、−O(CH2)m−OH、又は−NHCH2−Z
(ここでZは、
【化7】
を表す)を表し、
n及びmは、0〜10の整数を表わす]
で示されるクロリン誘導体又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)用の抗菌剤。
【請求項6】
式(I)が、次式(I)−A型:
【化8】
(式中、X、Y及びRは請求項5に記載の定義と同一である)
である請求項5に記載抗菌剤。
【請求項7】
式(I)が、次式(I)−B型:
【化9】
(式中、X、Y及びRは請求項5に記載の定義と同一である)
である請求項5に記載抗菌剤。
【請求項8】
軟膏剤の形態にある請求項4ないし7に記載の光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)用の皮膚疾患治療用剤、または抗菌剤。
【請求項9】
ローション剤の形態にある請求項4ないし7に記載の光線力学療法(PDT:Photodynamic Therapy)用の皮膚疾患治療用剤、または抗菌剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−92024(P2012−92024A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238359(P2010−238359)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(509290784)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(509290784)
【Fターム(参考)】
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