説明

クロロスルホニル安息香酸化合物の製造方法

【課題】クロロスルホニル安息香酸化合物を容易に高収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】式(1);


(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ニトロ基またはカルボキシル基を示す。)で表されるクロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物を、相間移動触媒および無機塩の存在下、酸性条件下でクロロカルボニル基を選択的に効率よく加水分解してクロロスルホニル安息香酸化合物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品原料等の製造用中間体として有用なクロロスルホニル安息香酸化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロロスルホニル安息香酸化合物は、医薬品等の重要な中間原料であるメルカプト安息香酸化合物の製造用中間体として有用である。
【0003】
クロロスルホニル安息香酸化合物の製造方法としては、例えば、下記式に示すように、入手が容易なクロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物を用いてこれを加水分解する方法(非特許文献1および非特許文献2参照)が知られている。
【0004】
【化1】

しかしながら、これらの製造方法には、反応に長時間を必要とし、かつ収率が不十分であるという問題点がある。例えば、非特許文献1には、5−クロロスルホニル−3−メトキシ安息香酸の製造方法として、相当する酸塩化物と水とを16日間混合する方法が開示され、収率は27%である。また、非特許文献2には、3−クロロスルホニル−4−メトキシ安息香酸の製造方法として、相当する酸塩化物と水とを室温にて8日間混合する方法が開示され、収率は43%である。
【非特許文献1】ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティー(Journal of Chemical Society),1933年,p.1373−1375
【非特許文献2】ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティー(Journal of Chemical Society),1933年,p.1375−1381
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、クロロスルホニル安息香酸化合物を容易に高収率で製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
非特許文献1および非特許文献2に記載されたクロロスルホニル安息香酸化合物の製造方法において収率が低い理由は、加水分解反応が目的のクロロカルボニル基についてだけではなく、クロロスルホニル基についても進行するためであると考えられる。なお、反応時間を短縮する方法として、一般に、触媒を用いる方法や、あるいは適当な反応溶媒を用いて均一系で加水分解させる方法が考えられるが、それらの方法においても上記と同様の理由から、収率が改善される見込みは少ないものと考えられる。
【0007】
そこで、本発明者らは、上記の考察にさらに検討を重ねた結果、クロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物を、特定の条件下において、不均一系で加水分解させることにより、クロロカルボニル基を選択的に効率よく加水分解することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、下記に示すとおりのクロロスルホニル安息香酸化合物の製造方法を提供するものである。
項1. 式(1);
【0009】
【化2】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ニトロ基またはカルボキシル基を示す。)で表されるクロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物を、相間移動触媒および無機塩の存在下、酸性条件下で加水分解することを特徴とする式(2);
【0010】
【化3】

(式中、Rは前記と同様である。)で表されるクロロスルホニル安息香酸化合物の製造方法。
項2. クロロスルホニル安息香酸化合物が3−クロロスルホニル安息香酸化合物である項1に記載のクロロスルホニル安息香酸化合物の製造方法。
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明に用いられるクロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物は、下記式(1)で表される化合物である。
【0013】
【化4】

式(1)において、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ニトロ基またはカルボキシル基を示す。
【0014】
Rで示されるハロゲン原子としては、例えば、塩素原子および臭素原子等を挙げることができる。
【0015】
炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基等を挙げることができる。
【0016】
炭素数1〜4のアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基およびブトキシ基等を挙げることができる。
【0017】
これらの中で、Rの好ましい例としては、水素原子、塩素原子、メチル基およびメトキシ基を挙げることができる。
【0018】
式(1)で表されるクロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物の具体例としては、例えば、3−クロロスルホニルベンゾイルクロライド、4−クロロスルホニルベンゾイルクロライド、2−クロロスルホニル−4−メチルベンゾイルクロライド、3−クロロスルホニル−6−メチルベンゾイルクロライド、3−クロロスルホニル−4−メチルベンゾイルクロライド、4−クロロスルホニル−2−メチルベンゾイルクロライド、3−クロロスルホニル−4−エチルベンゾイルクロライド、3−クロロスルホニル−4−メトキシベンゾイルクロライド、3−クロロスルホニル−6−メトキシベンゾイルクロライド、4−クロロスルホニル−2−メトキシベンゾイルクロライド、4−クロロスルホニル−3−メトキシベンゾイルクロライド、4−クロロ−3−クロロスルホニルベンゾイルクロライド、5−クロロ−3−クロロスルホニルベンゾイルクロライド、6−クロロ−3−クロロスルホニルベンゾイルクロライドおよび4−ブロモ−3−クロロスルホニルベンゾイルクロライド等を挙げることができる。
【0019】
本発明において、上記クロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物は市販のものを使用することができる。
【0020】
本発明に用いられる相間移動触媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリエチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクチルトリエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライドおよびトリオクチルメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、ヘキサデシルトリエチルホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロライド、トリオクチルエチルホスホニウムブロマイドおよびテトラフェニルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩、並びに、18−クラウン−6、ジベンゾ−18−クラウン−6およびジシクロヘキシル−18−クラウン−6等のクラウンエーテル等を挙げることができる。これらの中でも、経済的見地からテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイドおよびテトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が好ましく用いられる。なお、これらの相間移動触媒は、1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
相間移動触媒の使用量は、特に制限されるものではないが、クロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物100重量部に対して、0.5〜50重量部であることが好ましく、1〜20重量部であることがより好ましい。相間移動触媒の使用量が、0.5重量部未満の場合には、触媒効果が不十分となるおそれがあり、一方、50重量部を超えて用いた場合には、それに見合う効果が得られず経済的に不利となり好ましくない。
【0022】
本発明において、上記クロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物を加水分解するための水の使用量は、特に制限されるものではないが、経済性の観点および排水量削減の観点から、クロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物100重量部に対して、100〜10000重量部であることが好ましく、200〜5000重量部であることがより好ましい。
【0023】
本発明において上記クロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物は、無機塩の存在下、不均一系で加水分解される。通常の不均一系での反応においては、加水分解により生成したクロロスルホニル安息香酸化合物は親水性を有することから、当該化合物が少なからず水相に溶解すると思われる。そのため、残存する上記クロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物のクロロカルボニル基と共に、水相中に存在するクロロスルホニル安息香酸化合物のクロロスルホニル基についても加水分解が比較的容易に進行することとなり、その結果、クロロスルホニル安息香酸化合物の収率が低くなると考えられる。ところが、無機塩の存在下において加水分解させることにより、生成したクロロスルホニル安息香酸化合物の水相への溶解量を低減させることができ、当該クロロスルホニル基についての加水分解を抑制することができる。
【0024】
本発明に使用される無機塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム等のアルカリ金属塩、並びに、硫酸マグネシウム等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。これらの中でも、塩化ナトリウムが好ましく用いられる。なお、これらの無機塩は、1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
無機塩の使用量は、特に制限されるものではないが、加水分解に使用する上記水100重量部に対して、1重量部以上で飽和溶解量以下であることが好ましく、2〜20重量部であることがより好ましい。
【0026】
本発明において、上記クロロスルホニル安息香酸化合物は、クロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物を相間移動触媒および無機塩の存在下、酸性条件下で加水分解することにより製造することができる。したがって、本発明に使用する上記無機塩が中性塩である場合は、酸を当該反応溶液に加える必要がある。また、上記無機塩が、当該反応溶液に溶解してそれだけで反応溶液が酸性となる無機塩である場合は、必ずしも反応溶液に酸を加える必要はないが、当該加水分解反応をより円滑にするためにさらに酸を加えてもよい。上記酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩酸、硫酸、燐酸および硝酸等の鉱酸、並びに、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸等の有機酸等が挙げられる。これらの中でも、経済性の観点から、塩酸が好ましく用いられる。なお、これらの酸は、1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
上記反応溶液のpHは、7以下であれば特に制限されるものではないが、3以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。反応溶液に酸を加える場合の酸の使用量は、上記反応溶液が酸性になれば特に制限されるものではなく、例えば、加水分解に使用する上記水100重量部に対して、1〜50重量部であることが好ましく、2〜20重量部であることがより好ましい。
【0028】
本発明において、上記水以外に必ずしも溶媒を用いる必要はないが、当該加水分解反応を容易にする観点および反応後の生成物の分離を容易にする観点から、非水溶性有機溶媒を更に用いてもよい。非水溶性有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、モノクロロベンゼン等の芳香族炭化水素、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、モノクロロベンゼン等の芳香族炭化水素が好ましく用いられる。
【0029】
非水溶性有機溶媒の使用量は、特に制限されるものではないが、経済性の観点から、クロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物100重量部に対して、10〜10000重量部であることが好ましい。
【0030】
反応温度は、−20℃〜120℃が好ましく、0℃〜80℃がより好ましい。反応温度が、120℃を超えると副反応が問題となり、一方、−20℃未満であると反応速度が実用上遅すぎるので好ましくない。
【0031】
反応時間は、反応温度により異なるために一概には言えないが、1〜20時間が好ましい。
【0032】
上記のようにして得られるクロロスルホニル安息香酸化合物は、常法通り、当該クロロスルホニル安息香酸化合物が液体の場合は、減圧蒸留する方法等により、また固体の場合は、そのまま晶析させるか抽出して再結晶させる方法等により、単離および精製することができる。
【0033】
かくして得られるクロロスルホニル安息香酸化合物は、下記式(2)で表される。
【0034】
【化5】

式(2)において、Rは、上記式(1)におけるRと同様である。
【0035】
式(2)で表されるクロロスルホニル安息香酸化合物の具体例としては、例えば、3−クロロスルホニル安息香酸、4−クロロスルホニル安息香酸、2−クロロスルホニル−4−メチル安息香酸、3−クロロスルホニル−6−メチル安息香酸、3−クロロスルホニル−4−メチル安息香酸、4−クロロスルホニル−2−メチル安息香酸、3−クロロスルホニル−4−エチル安息香酸、3−クロロスルホニル−4−メトキシ安息香酸、3−クロロスルホニル−6−メトキシ安息香酸、4−クロロスルホニル−2−メトキシ安息香酸、4−クロロスルホニル−3−メトキシ安息香酸、4−クロロ−3−クロロスルホニル安息香酸、5−クロロ−3−クロロスルホニル安息香酸、6−クロロ−3−クロロスルホニル安息香酸および4−ブロモ−3−クロロスルホニル安息香酸等を挙げることができる。
【0036】
式(2)で表されるクロロスルホニル安息香酸化合物は、医薬品等の重要な中間原料であるメルカプト安息香酸化合物を製造するための製造用中間体として用いることができる。例えば、上記クロロスルホニル安息香酸化合物を、塩酸や硫酸等の鉱酸を含む酸性水と亜鉛末とを用いて還元することにより、式(3);
【0037】
【化6】

(式中、Rは、上記式(2)におけるRと同様である。)で表されるメルカプト安息香酸化合物を製造することができる。
【0038】
式(3)で表されるメルカプト安息香酸化合物の具体例としては、例えば、3−メルカプト安息香酸、4−メルカプト安息香酸、2−メルカプト−4−メチル安息香酸、3−メルカプト−6−メチル安息香酸、3−メルカプト−4−メチル安息香酸、4−メルカプト−2−メチル安息香酸、3−メルカプト−4−エチル安息香酸、3−メルカプト−4−メトキシ安息香酸、3−メルカプト−6−メトキシ安息香酸、4−メルカプト−2−メトキシ安息香酸、4−メルカプト−3−メトキシ安息香酸、4−クロロ−3−メルカプト安息香酸、5−クロロ−3−メルカプト安息香酸、6−クロロ−3−メルカプト安息香酸および4−ブロモ−3−メルカプト安息香酸等を挙げることができる。
【0039】
上記クロロスルホニル安息香酸化合物の還元に使用される亜鉛末の使用割合は、クロロスルホニル安息香酸化合物1モルに対して、2〜15モルの割合であることが好ましく、3〜10モルの割合であることがより好ましい。鉱酸の使用割合は、亜鉛末1モルに対して、1〜10モルの割合であることが好ましく、2〜5モルの割合であることがより好ましい。また、鉱酸を含む酸性水の鉱酸の濃度は、1〜50重量%であることが好ましく、5〜35重量%であることがより好ましい。
【0040】
上記還元反応において、さらに有機溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、トルエン、モノクロロベンゼン等の芳香族炭化水素、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。これらの中でも、トルエン、モノクロロベンゼン等の芳香族炭化水素が好ましく用いられる。上記還元反応の反応温度は、−20℃〜150℃が好ましく、0℃〜100℃がより好ましい。反応時間は、反応温度により異なるために一概には言えないが、例えば1〜20時間である。
【0041】
かくして得られるメルカプト安息香酸化合物は、常法通り、必要に応じて分液した後、当該メルカプト安息香酸化合物が液体の場合は、減圧蒸留する方法等により、また固体の場合は、そのまま晶析させるか抽出して再結晶させる方法等により、単離および精製することができる。
【0042】
なお、上記メルカプト安息香酸化合物を製造する方法としては、本発明の製造方法によりクロロスルホニル安息香酸化合物を得て、これを単離および精製することなく、当該反応液のままで亜鉛末等を用いて還元することにより、メルカプト安息香酸化合物を得るまでの工程を連続的に行うことができる。この方法によると、きわめて効率的にメルカプト安息香酸化合物を製造することができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、医薬品原料等の製造用中間体として有用なクロロスルホニル安息香酸化合物を容易に高収率で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0045】
実施例1
撹拌機、温度計および冷却管を備えた2L容の四つ口フラスコに、3−クロロスルホニルベンゾイルクロライド119.5g(0.5モル)、トルエン500g、5重量%塩酸500g、塩化ナトリウム50gおよびテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド8.0gを仕込み、窒素雰囲気下、60℃にて5時間撹拌した。反応終了後、同温度にて反応液を分液し、得られた油層を室温まで冷却した。冷却後、ノルマルヘプタン300gを滴下し、析出した結晶を濾別し、得られた結晶をノルマルヘプタンで洗浄した後、乾燥して3−クロロスルホニル安息香酸(融点:136〜137℃)100.4gを得た。得られた3−クロロスルホニル安息香酸の収率は、3−クロロスルホニルベンゾイルクロライドに対して91%であった。
【0046】
実施例2
撹拌機、温度計および冷却管を備えた2L容の四つ口フラスコに、3−クロロスルホニル−4−メトキシベンゾイルクロライド134.6g(0.5モル)、トルエン500g、5重量%塩酸500g、塩化ナトリウム50gおよびテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド8.0gを仕込み、窒素雰囲気下、60℃にて8時間撹拌した。反応終了後、同温度にて反応液を分液し、得られた油層を室温まで冷却した。冷却後、ノルマルヘプタン300gを滴下し、析出した結晶を濾別し、得られた結晶をノルマルヘプタンで洗浄した後、乾燥して3−クロロスルホニル−4−メトキシ安息香酸(融点:145〜147℃)111.5gを得た。得られた3−クロロスルホニル−4−メトキシ安息香酸の収率は、3−クロロスルホニル−4−メトキシベンゾイルクロライドに対して89%であった。
【0047】
なお、非特許文献2には、3−クロロスルホニル−4−メトキシ安息香酸の製造方法として、相当する酸塩化物と水とを室温にて8日間混合する方法が記載されているが、収率は43%である。
【0048】
実施例3〜5
実施例1において、3−クロロスルホニルベンゾイルクロライド119.5g(0.5モル)に代えて、表1に示すクロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物(各0.5モル)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、それぞれ表1に示すクロロスルホニル安息香酸化合物を得た。表1には、クロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物に対するクロロスルホニル安息香酸化合物の収率も示した。
【0049】
【表1】

参考例1(メルカプト安息香酸化合物の製造)
撹拌機、温度計および冷却管を備えた3L容の四つ口フラスコに、3−クロロスルホニルベンゾイルクロライド119.5g(0.5モル)、トルエン1000g、5重量%塩酸500g、塩化ナトリウム50gおよびテトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド8.0gを仕込み、窒素雰囲気下、60℃にて5時間撹拌した。続いて、35重量%塩酸450gを添加した後、亜鉛末130.8g(2.0モル)を少量ずつ添加し、添加終了後、窒素雰囲気下、50℃にて5時間撹拌した。反応終了後、未反応の亜鉛末を濾別してから分液し、得られた油層を水洗した後、0℃まで冷却した。冷却後、析出した結晶を濾別し、得られた結晶をトルエンで洗浄した後、乾燥して3−メルカプト安息香酸(融点:145〜147℃)64.0gを得た。得られた3−メルカプト安息香酸の収率は、3−クロロスルホニルベンゾイルクロライドに対して83%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1);
【化1】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシル基、ニトロ基またはカルボキシル基を示す。)で表されるクロロスルホニルベンゾイルクロライド化合物を、相間移動触媒および無機塩の存在下、酸性条件下で加水分解することを特徴とする式(2);
【化2】

(式中、Rは前記と同様である。)で表されるクロロスルホニル安息香酸化合物の製造方法。
【請求項2】
クロロスルホニル安息香酸化合物が3−クロロスルホニル安息香酸化合物である請求項1に記載のクロロスルホニル安息香酸化合物の製造方法。

【公開番号】特開2009−167142(P2009−167142A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9512(P2008−9512)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】