説明

クロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体及びその製造方法

【課題】 −50℃以下のガラス転移温度を有するクロロスホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を得る。
【解決手段】 塩素含有量が0.5重量%以上20重量%以下であり、示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度が−50℃以下であり、かつ、結晶性であるクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体及びその製造方法に関するものである。詳しくは、塩素含有量が0.5重量%以上20重量%以下であり、ガラス転移温度が−50℃以下であり、かつ、結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高密度ポリエチレンを塩素化及びクロロスルホン化して得られるクロロスルホン化ポリエチレンは、耐オゾン性,耐候性,耐熱性,耐油性,耐薬品性に優れるため、電線,ホース,エスカレーターの手摺等に用いられる。しかし低温性に劣るため、自動車用ベルト及びブーツ等には使用されていない。これに対して特許文献(例えば、特許文献1参照)に例示されるクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体は、高密度ポリエチレンを原料とするクロロスルホン化ポリエチレンと比較して低温特性に優れることから、従来のクロロスルホン化ポリエチレンの適用が困難であった低温特性が要求される用途へ適応されている。
【0003】
低温特性が必要な用途への適応拡大のため、クロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の低温性改善に関する特許文献が報告されている(例えば、特許文献2,特許文献3,特許文献4参照)。
【0004】
しかしながら、低温性をさらに改善するような−50℃以下のガラス転移温度を有するクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の報告はない。
【0005】
【特許文献1】特公平5−17243号公報
【特許文献2】特開平9−176394号公報
【特許文献3】特開平8−67712号公報
【特許文献4】特開昭61−145204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は低温性をさらに改善したクロロスルホン化エチレン−α−共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、ガラス転移温度が−50℃以下のクロロスルホン化エチレン−α−共重合体を得ることに成功し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、塩素含有量が0.5重量%以上20重量%以下であり、示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度が−50℃以下であり、かつ、結晶性であることを特徴とするクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体である。
【0009】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の塩素含有量は、0.5重量%以上20重量%以下である。0.5重量%未満では、クロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体とはいえず、20重量%を超える場合は、ガラス転移温度が−50℃以下のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を得ることができない。好ましくは2重量%以上20重量%以下であり、更に好ましくは5重量%以上20重量%以下である。
【0011】
本発明のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の硫黄量は特に制限するものではないが、配合物の貯蔵安定性、加硫物の熱安定性等を維持するために3重量%以下が好ましい。
【0012】
本発明のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体のムーニー粘度(ML(1+4)100℃)については、特に制限するものではないが、加工性及び物性のバランスを考慮した場合、10〜200であることが好ましい。更に好ましくは20〜150である。
【0013】
本発明のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体におけるガラス転移温度は、クロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体がガラス状態からゴム弾性を有する状態へ変化する温度のことである。示差走査熱量測定(DSC)により分析できる。予め120℃で10分間熱プレスを行ない23℃で24時間放置した試料をDSC測定装置に室温で装着し、液体窒素で測定部を−120℃まで急冷し5分間保持した後、昇温速度10℃/分、−120から120℃の条件で測定し、得られたDSC曲線において、その温度以下のベースラインとガラス転移領域の直線部分をそれぞれ外挿した交点によりガラス転移温度を求めた。
【0014】
本発明のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体は結晶性である。ここに、結晶性とは、下記に説明する融解熱量Dが0より大きいことをいう。結晶性であることにより、低温性に優れたクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体となる。
【0015】
本発明のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体は、示差走査熱量測定(DSC)による融解熱量D(mJ/mg)と塩素含有量X(重量%)が以下の式を満足することがクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の柔軟性の点から好ましい。
【0016】
0<D≦−2.86X+61.2
融解熱量D(mJ/mg)と塩素含有量X(重量%)が以下の関係を満足することがクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の柔軟性のさらなる向上の点から更に好ましい。
【0017】
0<D≦−2.22X+45.7
ここに、融解熱量Dは、上記ガラス転移温度の測定と同条件でDSC測定を行ない、得られたDSC曲線において、融解吸熱ピークの開始点と終了点を結ぶ直線で囲まれた面積より熱量値を計算し、これを試料重量で割ってmJ/mg単位に換算した。開始点が不明確な場合は、融解吸熱ピークより高温側のベースラインを低温側に外挿し、囲まれた面積より熱量値を計算し、これを試料重量で割ってmJ/mg単位に換算した。
【0018】
本発明のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を得る方法は、エチレン−α−オレフィン共重合体を塩素化及びクロロスルホン化するものであり、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体をクロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、モノクロロベンゼン、クロロフルオロベンゼン等のハロゲン化反応に不活性な溶媒に溶解させて均一系で行う溶液法,エチレン−α−オレフィン共重合体を溶媒に懸濁させて反応させる懸濁法、エチレン−α−オレフィン共重合体を気相に浮遊させて反応を行なう気相法などが挙げられる。これらのうち、ゴムの柔軟性を考慮した場合、溶液法が好ましい。用いられる塩素化剤ならびにクロロスホン化剤としては、塩素と亜硫酸ガスの併用、塩素と塩化スルフリルとの併用、塩化スルフリル単独などが挙げられる。
【0019】
本発明のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法で使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンに炭素数4以上の炭化水素からなるα−オレフィンを共重合したものである。ここに、炭素数4以上の炭化水素からなるα−オレフィンとしては、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等が挙げられる。エチレンに炭素数3以下の炭化水素からなるα−オレフィンを共重合したエチレン−α−オレフィン共重合体を原料としたクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体では、−50℃以下のガラス転移温度を有することができない。炭素数3以下の炭化水素からなるα−オレフィンとしては、プロピレンが挙げられる。
【0020】
本発明で使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体は、結晶性である。ここに、結晶性とは、示差走査熱量測定(DSC)によって、結晶の融点が観測されることをいう。結晶性のエチレン−α−オレフィン共重合体を使用することにより、結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を得ることが可能となる。
【0021】
本発明のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法で使用されるエチレン−α−オレフィン共重合体の密度が890kg/m以下のものが好適に使用される。好ましくはその密度が880kg/m以下のものであり、更に好ましくはその密度が870kg/m以下のものである。その密度が890kg/mを超えると得られるクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の柔軟性が損なわれ好ましくない。
【0022】
本発明のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法では、上記したエチレン−α−オレフィン共重合体を0.5重量%以上20重量%以下で塩素化し、さらにクロロスルホン化するものである。0.5重量%未満で行う場合には、得られるものはクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体とはいえず、一方、20重量%を超えて行う場合には、20重量%を超える場合は、ガラス転移温度が−50℃以下のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を得ることができない。好ましくは2重量%以上20重量%以下で塩素化するものであり、更に好ましくは5重量%以上18重量%以下で塩素化するものである。
【0023】
本発明のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法は、上記した条件が必要である。一方、それ以外については、溶液法によるクロロスホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の一般的な製造方法を以下に示す。
【0024】
エチレン−α−オレフィン共重合体を溶媒に溶解、均一溶液とした後、ラジカル発生剤と塩化スルフリルを反応溶液へ添加することから反応を行う。反応温度は特に制限するものではないが、30℃〜180℃であり、反応の圧力は特に制限するものではないが、常圧〜1.0メガパスカルが適当である。反応中は発生する塩化水素および亜硫酸ガスを連続的に反応系外へパージする。ラジカル発生剤としては、α、α’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2、2’−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系ラジカル発生剤や過酸化ベンゾイル、過酸化t−ブチル、過酸化アセチル等の有機過酸化物系ラジカル発生剤がある。また、ラジカル発生剤を用いる代わりに紫外線を照射してもよい。塩化スルフリルを用いて反応を行う場合には、クロロスホン基を付加させるために、必要に応じてピリジン、キノリン、ジメチルアニリン、ニコチン、ピペリジン等のアミン化合物を助触媒として用いる。
【0025】
溶解するエチレン−α−オレフィン共重合体の量については特に制限するものではないが、反応時の粘度を適切に維持するため5〜30重量%であることが望ましい。反応の終了後、溶液中に溶存している塩化水素および亜硫酸ガスを溶媒の還流下、窒素等の不活性ガスを吹き込むことによって反応系外に除く。必要に応じて安定剤としてエポキシ化合物を添加する。得られたクロロスホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の溶液は、水蒸気蒸留、ドラム乾燥、押し出し乾燥等によってポリマーと溶媒が分離される。
【0026】
本発明のクロロスホン化エチレン−α−オレフィン共重合体は、加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、補強剤、充填剤、可塑剤、加工助剤、老化防止剤などとともに加硫されて加硫物として使用される。これらはロール又はバンバリーミキサーなどで配合、混練された後、プレス加硫、蒸気加硫、UHF加硫あるいは電子線加硫などが行われる。
【0027】
本発明のクロロスホン化エチレン−α−オレフィン共重合体は、加硫することにより、自動車用ゴム部品又は工業用ゴム部品として使用できる。自動車用ゴム部品としては、例えば、ウェザーストリップ類、防振ゴム類、ホース類、ブーツ類、ベルト類、空気ばね類等があげられ、工業用ゴム部品としては、防振ゴム類、ホース類、ブーツ類、ベルト類、軌道パッド、バラストマット、ゴム支承、制振材、パッキン類、靴底、ケーブル・電線及びその被覆材、貯水池ライニングシート、シーリング材、ルーフィングシート類、エスカレーター手摺、ガスケット類、ロール類、ライニング類、レジャーボート、雨具類、耐薬品用グローブ等があげられる。また、その他本クロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体は、接着剤、コーティング材、塗料、プライマー等にも使用可能である。
【0028】
本発明により−50℃以下のガラス転移温度を有するクロロスホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を得ることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上のように本発明によりガラス転移温度が−50℃以下のクロロスルホン化エチレン−α−共重合体が得られることは明らかである。
【実施例】
【0030】
以下に実施例にもとづき本発明をさらに詳しく説明するが、これら実施例は本発明の理解を助けるための例であって、本発明はこれらにより何等制限を受けるものではない。
【0031】
なおこれらの実施例で用いた値は以下の測定法に準拠したものである。
【0032】
<密度の測定>
エチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、JISーKー6992−1に準拠し測定した。
【0033】
<メルトインデックスの測定>
エチレン−α−オレフィン共重合体のメルトインデックスは、測定温度190℃でJIS−K−6992−1に準拠し測定した。
【0034】
<塩素量、硫黄量の測定>
クロロスルホン化ポリオレフィンの塩素及び硫黄量は、燃焼フラスコ法にて測定した。塩素量の測定は、クロロスルホン化ポリオレフィン30mgを1.7重量%硫酸ヒドラジニウム水溶液15mlを吸収液として用い、酸素フラスコ燃焼法に従い燃焼させた後30分静置した。この操作後の吸収液を、純水100mlで洗い出した後、濃度0.05Nの硝酸銀水溶液で電位差滴定法により塩素イオンを定量し、塩素量を測定した。
【0035】
クロロスルホン化ポリオレフィンの硫黄量の測定は、1.7重量%硫酸ヒドラジニウム水溶液15mlの変わりに、3重量%の過酸化水素水10mlを吸収液として用い、純水40mlで洗い出した後、酢酸1ml、2ープロパノール100ml、アルセナゾIII0.47mlを加えた。これを濃度0.01Nの酢酸バリウム溶液で光度滴定法により硫酸イオンを測定した。
【0036】
<ガラス転移温度、融解熱量、融点の測定>
予め120℃で10分間熱プレスを行ない23℃で24時間放置した測定試料から10mgを計りとり、示差走査熱量計(セイコー電子工業株式会社 DSC200)に室温で装着し、液体窒素で測定部を−120℃まで急冷し5分間保持した後、昇温速度10℃/分、−120から120℃の条件で測定した。得られたDSC曲線において、ガラス転移領域の直線部分とその温度以下のベースラインをそれぞれ外挿した交点によりガラス転移温度を求め、融解吸熱ピークの開始点と終了点を結ぶ直線で囲まれた面積より熱量値を計算し、これを試料重量で割ってmJ/mg単位に換算することにより融解熱量を求めた。融解吸熱ピーク開始点が不明確な場合は、融解吸熱ピークより高温側のベースラインを低温側に外装し、囲まれた面積より熱量値を計算し、これを試料重量で割ってmJ/mg単位に換算することにより融解熱量を求めた。得られたDSC曲線の融解吸熱ピークの頂点、複数吸熱ピークが観察される場合は、吸熱ピークの頂点温度の内最も高い温度を融点とした。
【0037】
実施例1
30リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを28kgと、メルトインデックス1.6g/10分、密度890kg/m、融点85.7℃のエチレン−ヘキセン−1共重合体を3.4kg仕込んだ。クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.5g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、120℃で2時間保持することによってポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に15リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。10重量%まで塩素化するために、ラジカル開始剤として2.2gのα,α’−アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン640gに溶解した溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、1.7kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することから反応を行なった。この間3時間を要したが、反応器の圧力を0.2メガパスカルに保った。反応の終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃まで低下させて、70℃に保ちながら窒素を導入して反応液に残存する亜硫酸ガスと塩化水素ガスを除く脱酸を行った。脱酸工程が終了した反応溶液を165℃に加熱したドラムドライヤーにフィードして、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0038】
生成物を分析したところ、塩素含有量10.8重量%、硫黄含有量0.30重量%を含むクロロスルホン化エチレン−ヘキセン−1共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−ヘキセン−1共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−51.3℃、融解熱量42.6mJ/mgであり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体が得られた。結果を表1にまとめた。
【0039】
【表1】

実施例2
30リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを28kgと、メルトインデックス1.2g/10分、密度862kg/m、融点38.6℃のエチレン−ブテン−1共重合体を3.4kg仕込んだ。クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.5g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、120℃で2時間保持することによってポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に15リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。15重量%まで塩素化するために、ラジカル開始剤として3gのα,α’−アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン900gに溶解した溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、2.4kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することから反応を行なった。この間3時間30分を要したが、反応器の圧力を0.2メガパスカルに保った。反応の終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃まで低下させて、70℃に保ちながら窒素を導入して反応液に残存する亜硫酸ガスと塩化水素ガスを除く脱酸を行った。脱酸工程が終了した反応溶液を165℃に加熱したドラムドライヤーにフィードして、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0040】
生成物を分析したところ、塩素含有量15.1重量%、硫黄含有量0.62重量%を含むクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−51.3℃、融解熱量6.8mJ/mgであり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体が得られた。結果を表1にまとめた。
【0041】
実施例3
メルトインデックス1.2g/10分、密度862kg/m、融点38.6℃のエチレン−ブテン−1共重合体を、メルトインデックス0.5g/10分、密度861kg/m、融点35.4℃のエチレン−ブテン−1共重合体に替えた以外は、実施例2と同様に行ない、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0042】
生成物を分析したところ、塩素含有量15.0重量%、硫黄含有量0.59重量%を含むクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−51.4℃、融解熱量7.3mJ/mgであり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体が得られた。結果を表1にまとめた。
【0043】
実施例4
メルトインデックス1.2g/10分、密度862kg/m、融点38.6℃のエチレン−ブテン−1共重合体を、メルトインデックス4.4g/10分、密度880kg/m、融点76.3℃のエチレン−ブテン−1共重合体に替えた以外は、実施例2と同様に行ない、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0044】
生成物を分析したところ、塩素含有量14.3重量%、硫黄含有量0.51重量%を含むクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−51.6℃、融解熱量18.3mJ/mgであり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体が得られた。結果を表1にまとめた。
【0045】
実施例5
30リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを28kgと、メルトインデックス1.2g/10分、密度862kg/m、融点38.6℃のエチレン−ブテン−1共重合体を3.4kg仕込んだ。クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.5g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、120℃で2時間保持することによってポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に15リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。10重量%まで塩素化するために、ラジカル開始剤として2.2gのα,α’−アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン640gに溶解した溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、1.7kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することから反応を行なった。この間3時間を要したが、反応器の圧力を0.2メガパスカルに保った。反応の終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃まで低下させて、70℃に保ちながら窒素を導入して反応液に残存する亜硫酸ガスと塩化水素ガスを除く脱酸を行った。脱酸工程が終了した反応溶液を165℃に加熱したドラムドライヤーにフィードして、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0046】
生成物を分析したところ、塩素含有量10.5重量%、硫黄含有量0.37重量%を含むクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−55.3℃、融解熱量12.9mJ/mgであり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体が得られた。結果を表1にまとめた。
【0047】
実施例6
メルトインデックス1.2g/10分、密度862kg/m、融点38.6℃のエチレン−ブテン−1共重合体を、メルトインデックス0.5g/10分、密度861kg/m、融点35.4℃のエチレン−ブテン−1共重合体に替えた以外は、実施例5と同様に行ない、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0048】
生成物を分析したところ、塩素含有量9.8重量%、硫黄含有量0.35重量%を含むクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−55.8℃、融解熱量8.1mJ/mgであり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体が得られた。結果を表1にまとめた。
【0049】
実施例7
メルトインデックス1.2g/10分、密度862kg/m、融点38.6℃のエチレン−ブテン−1共重合体をメルトインデックス1.0g/10分、密度870kg/m、融点64.0℃のエチレン−オクテン−1共重合体に替えた以外は、実施例2と同様に行ない、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0050】
生成物を分析したところ、塩素含有量14.5重量%、硫黄含有量0.50重量%を含むクロロスルホン化エチレン−オクテン−1共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−オクテン−1共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−52.1℃、融解熱量12.3mJ/mgであり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体が得られた。結果を表1にまとめた。
【0051】
比較例1
30リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを28kgと、メルトインデックス1.2g/10分、密度885kg/m、融点74.9℃のエチレン−ブテン−1共重合体を3.4kg仕込んだ。クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.5g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、120℃で2時間保持することによってポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に15リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。22重量%まで塩素化するために、ラジカル開始剤として4.6gのα,α’−アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン1320gに溶解した溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、3.75kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することから反応を行なった。この間3時間30分を要したが、反応器の圧力を0.2メガパスカルに保った。反応の終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃まで低下させて、70℃に保ちながら窒素を導入して反応液に残存する亜硫酸ガスと塩化水素ガスを除く脱酸を行った。脱酸工程が終了した反応溶液を165℃に加熱したドラムドライヤーにフィードして、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0052】
生成物を分析したところ、塩素含有量21.7重量%、硫黄含有量0.58重量%を含むクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−39.9℃、融解熱量4.5mJ/mgであり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を得ることができなかった。結果を表2にまとめた。
【0053】
【表2】

比較例2
30リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを28kgと、メルトインデックス2.0g/10分、密度898kg/m、融点105.3℃のエチレン−ブテン−1共重合体を3.4kg仕込んだ。クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.5g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、120℃で2時間保持することによってポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に15リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。17重量%まで塩素化するために、ラジカル開始剤として3.6gのα,α’−アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン1030gに溶解した溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、2.93kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することから反応を行なった。この間2時間40分を要したが、反応器の圧力を0.2メガパスカルに保った。反応の終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃まで低下させて、70℃に保ちながら窒素を導入して反応液に残存する亜硫酸ガスと塩化水素ガスを除く脱酸を行った。脱酸工程が終了した反応溶液を165℃に加熱したドラムドライヤーにフィードして、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0054】
生成物を分析したところ、塩素含有量17.0重量%、硫黄含有量0.30重量%を含むクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−48.4℃、融解熱量28.9mJ/mgであり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を得ることができなかった。結果を表2にまとめた。
【0055】
比較例3
30リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを28kgと、メルトインデックス2.2g/10分、密度919kg/m、融点122℃のエチレン−ブテン−1共重合体を3.4kg仕込んだ。クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.5g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、120℃で2時間保持することによってポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に15リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。16重量%まで塩素化するために、ラジカル開始剤として3.4gのα,α’−アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン970gに溶解した溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、2.76kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することから反応を行なった。この間2時間30分を要したが、反応器の圧力を0.2メガパスカルに保った。反応の終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃まで低下させて、70℃に保ちながら窒素を導入して反応液に残存する亜硫酸ガスと塩化水素ガスを除く脱酸を行った。脱酸工程が終了した反応溶液を165℃に加熱したドラムドライヤーにフィードして、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0056】
生成物を分析したところ、塩素含有量16.0重量%、硫黄含有量0.97重量%を含むクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−40.3℃、融解熱量39.4mJ/mgであり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を得ることができなかった。結果を表2にまとめた。
【0057】
比較例4
30リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを28kgと、メルトインデックス3.6g/10分、密度893kg/m、融点85.2℃のエチレン−ブテン−1共重合体を3.4kg仕込んだ。クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.5g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、120℃で2時間保持することによってポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に15リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。30重量%まで塩素化するために、ラジカル開始剤として6gのα,α’−アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン1800gに溶解した溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、5.8kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することから反応を行なった。この間7時間を要したが、反応器の圧力を0.2メガパスカルに保った。反応の終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃まで低下させて、70℃に保ちながら窒素を導入して反応液に残存する亜硫酸ガスと塩化水素ガスを除く脱酸を行った。脱酸工程が終了した反応溶液を165℃に加熱したドラムドライヤーにフィードして、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0058】
生成物を分析したところ、塩素含有量30.1重量%、硫黄含有量0.30重量%を含むクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−31.4℃、融解熱量0mJ/mgであり、非晶質のクロロスルホン化エチレン−ブテン−1共重合体であり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を得ることができなかった。結果を表2にまとめた。
【0059】
比較例5
30リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを28kgと、メルトインデックス3.9g/10分、密度870kg/m、融点50.5℃のエチレン−プロピレン共重合体を3.4kg仕込んだ。クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.5g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、120℃で2時間保持することによってポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に15リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。10重量%まで塩素化するために、ラジカル開始剤として2.2gのα,α’−アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン640gに溶解した溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、1.7kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することから反応を行なった。この間3時間を要したが、反応器の圧力を0.2メガパスカルに保った。反応の終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃まで低下させて、70℃に保ちながら窒素を導入して反応液に残存する亜硫酸ガスと塩化水素ガスを除く脱酸を行った。脱酸工程が終了した反応溶液を165℃に加熱したドラムドライヤーにフィードして、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0060】
生成物を分析したところ、塩素含有量10.0重量%、硫黄含有量0.70重量%を含むクロロスルホン化エチレン−プロピレン共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−プロピレン共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−47.9℃、融解熱量18.6mJ/mgであり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を得ることができなかった。結果を表2にまとめた。
【0061】
比較例6
30リッターのグラスライニング製オートクレーブに1,1,2−トリクロロエタンを28kgと、メルトインデックス3.2g/10分、密度860kg/m、融点41.3℃のエチレン−プロピレン共重合体を3.4kg仕込んだ。クロロスルホン化反応の助触媒としてピリジンを0.5g添加した後、反応器のジャケットに蒸気を通し、120℃で2時間保持することによってポリエチレンを均一に溶解した。またこの間、反応器に15リッター/分の流速で窒素ガスを導入し、反応器に混入した空気を排除した。10重量%まで塩素化するために、ラジカル開始剤として2.2gのα,α’−アゾビスイソブチロニトリルを1,1,2−トリクロロエタン640gに溶解した溶液を連続的に反応器へと添加しつつ、1.7kgの塩化スルフリルを別の投入口より反応器へ添加することから反応を行なった。この間3時間を要したが、反応器の圧力を0.2メガパスカルに保った。反応の終了後、圧力を常圧に戻し反応器の温度を70℃まで低下させて、70℃に保ちながら窒素を導入して反応液に残存する亜硫酸ガスと塩化水素ガスを除く脱酸を行った。脱酸工程が終了した反応溶液を165℃に加熱したドラムドライヤーにフィードして、生成物としてのクロロスルホン化ポリオレフィンを溶剤から分離した。
【0062】
生成物を分析したところ、塩素含有量9.8重量%、硫黄含有量0.70重量%を含むクロロスルホン化エチレン−プロピレン共重合体であった。このクロロスルホン化エチレン−プロピレン共重合体のDSC測定を行なったところ、ガラス転移温度が−48.9℃、融解熱量14.3mJ/mgであり、−50℃以下のガラス転移温度を有する結晶性のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を得ることができなかった。結果を表2にまとめた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素含有量が0.5重量%以上20重量%以下であり、示差走査熱量測定(DSC)におけるガラス転移温度が−50℃以下であり、かつ、結晶性であることを特徴とするクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体。
【請求項2】
示差走査熱量測定(DSC)の融解熱量D(mJ/mg)と塩素含有量X(wt%)が以下の式を満足することを特徴とする請求項1記載のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体。
0<D≦−2.86X+61.2
【請求項3】
エチレンに炭素数4以上の炭化水素からなるα−オレフィンを共重合した結晶性エチレン−α−オレフィン共重合体で該密度が890kg/m以下であるものを、0.5重量%以上20重量%以下で塩素化し、さらにクロロスルホン化することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体を加硫してなることを特徴とする自動車用ゴム部品又は工業用ゴム部品。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のクロロスルホン化エチレン−α−オレフィン共重合体からなることを特徴とする接着剤、コーティング材、塗料又はプライマー。

【公開番号】特開2006−37077(P2006−37077A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−180458(P2005−180458)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】