説明

クローラクレーンのロワーフレーム

【課題】ロワーフレームの基部の接続板の上下寸法が制約を受ける場合でも、接続板に沿う方向でかつ天板の厚み方向への曲げ荷重に対するロワーフレームの基部の十分な強度及び剛性を確保できるようにする。
【解決手段】クローラクレーン50のロワーフレーム2では、天板12と底板14とを繋ぐように上下方向に延びる接続板16は、車幅方向において天板12上の円環部4の両端部よりも内側に配置されているとともに、クローラフレーム62をスライドさせる駆動シリンダ64を挿嵌するための貫通孔16aを有し、天板12の上面のうち円環部4の内側でかつ接続板16の上側の位置には、補強板18がそれぞれ立設されており、補強板18の下端部は、天板12の上面に接合されているとともに、補強板18の水平方向における両端部は、円環部4の内面にそれぞれ接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラクレーンのロワーフレームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、クローラ式の下部走行体の上に上部旋回体が旋回自在に搭載されたクローラクレーンが知られている。このようなクローラクレーンの下部走行体の一例が、下記の特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示されたクローラクレーンの下部走行体は、上部旋回体を下から支持するとともに、車幅方向において両側に分かれて配置された一対のクローラフレームを支持するロワーフレームを備えている。このロワーフレームは、車長方向に間隔をあけて配置されるとともに車幅方向に直線的に延びる一対のアクスルと、それら一対のアクスル間でそれらのアクスル同士を繋ぐ基部とを有する。クローラフレームには、車幅方向に貫通する挿入孔が車長方向に離間して2つ設けられており、この各挿入孔に対応するアクスルの端部が挿嵌されている。そして、基部には、油圧シリンダが当該基部から車幅方向において両側にそれぞれ突出するように取り付けられており、その油圧シリンダのピストンロッドの先端部は、対応するクローラフレームに接続されている。この油圧シリンダが駆動することにより、各クローラフレームは、アクスルに沿って車幅方向にスライドするようになっている。
【0004】
そして、一般的に、前記基部の天板は、各アクスルの天板と一体の略平板状に形成されているとともに、前記基部の底板は、各アクスルの底板と一体の略平板状に形成されている。また、基部は、その天板と底板とを繋ぐとともに、一対のアクスルの互いに対向する面同士を繋ぐ一対の接続板を有している。この一対の接続板は、車幅方向に互いに離間して配置されているとともに、上下方向に延びるように配置されている。
【0005】
そして、各接続板には、前記油圧シリンダを挿嵌するための貫通孔がそれぞれ設けられている。また、基部の天板上には、円環部が設けられており、この円環部上に上部旋回体が旋回自在に搭載される。車幅方向における円環部の両側の部分は、それぞれ対応する接続板と一部重なって配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−173293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ロワーフレームの基部には、上部旋回体から円環部を介して様々な形態の荷重が付加される。この基部に付加される荷重の形態によっては、当該基部の接続板に沿う方向でかつ天板の厚み方向への曲げ荷重が天板及び接続板に作用する場合がある。このため、このような曲げ荷重に対抗して曲げ変形の発生を抑制できるような十分な強度及び剛性がロワーフレームの基部に求められる。しかしながら、上記のようなロワーフレームの構造では、基部の接続板に貫通孔が設けられていることに起因して当該接続板の強度及び剛性が低下しているため、前記曲げ荷重に対して十分に対抗することが困難である。
【0008】
なお、前記曲げ荷重に対する基部の強度及び剛性を確保するために、接続板の上下寸法を大きくして貫通孔の上下に大きな板幅を確保する(すなわち接続板の断面係数を高める)ことにより、前記曲げ荷重に対抗する当該接続板の強度及び剛性を強化することも考えられる。しかしながら、接続板の上下寸法はクローラフレームの上下寸法によって制約を受けるため、当該接続板の上下寸法を大きくすることは困難となる。すなわち、基部の上下寸法は、アクスルの上下寸法と略等しくなっている。そして、アクスルは、クローラフレームの挿入孔に挿入されるため、当該アクスルの上下寸法は、クローラフレームの上下寸法以下に制限される。従って、基部の上下寸法もクローラフレームの上下寸法以下に制限され、それに伴って、接続板の上下寸法を大きくすることは困難になる。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ロワーフレームの基部の接続板の上下寸法が制約を受ける場合でも、接続板に沿う方向でかつ天板の厚み方向への曲げ荷重に対するロワーフレームの基部の十分な強度及び剛性を確保できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、車幅方向に分かれて配置された一対のクローラフレームを有するクローラクレーンに設けられ、このクローラクレーンの上部旋回体を下から支持するとともに、前記両クローラフレーム同士の間に配置されてこれらのクローラフレームを車幅方向にスライド可能に支持するクローラクレーンのロワーフレームであって、車長方向に間隔をあけて設けられるとともに車幅方向に延びる一対のアクスルと、前記一対のアクスル間においてそれらのアクスル同士を繋ぐ基部と、前記基部上に設けられ、前記上部旋回体を搭載可能な円環部とを備え、前記基部は、前記円環部が上面に設けられる天板と、その天板から下方に離間して配設された底板と、車幅方向において互いに離間して配置され、前記天板と前記底板とを繋ぐように上下方向に延びる一対の接続板とを有し、前記各接続板は、車幅方向において前記円環部の両端部よりも内側に配置されているとともに、前記クローラフレームをスライドさせる駆動シリンダを挿嵌するための貫通孔を有し、前記天板の上面のうち前記円環部の内側でかつ前記各接続板の上側の位置には、補強板がそれぞれ立設されており、前記補強板の下端部は、前記天板の上面に接合されているとともに、前記補強板の水平方向における両端部は、前記円環部の内面にそれぞれ接合されていることを特徴とするものである。
【0011】
この請求項1に記載の発明では、天板の上面のうち円環部の内側でかつ各接続板の上側の位置に補強板がそれぞれ立設されており、その補強板の下端部が天板の上面に接合されているとともに、その補強板の水平方向における両端部が円環部の内面にそれぞれ接合されている。このため、接続板に沿う方向でかつ天板の厚み方向への曲げ荷重が天板及び接続板に作用する場合に、補強板は、その両端がそれぞれ接合された円環部の内面に対して突っ張る作用を及ぼすとともに、貫通孔が設けられることによって減少した接続板の上下方向の断面強度を補うことができる。さらに、補強板は、その下端部が天板の上面に接合されているため、前記曲げ荷重が当該補強板に掛かった場合でも当該補強板と天板は一体となって当該補強板の座屈が抑制される。従って、接続板に駆動シリンダを挿嵌するための貫通孔が設けられていることによって接続板の強度及び剛性が低下していても、前記曲げ荷重に対する基部の十分な強度及び剛性を確保することができる。また、この請求項1に記載の発明では、天板上に設ける補強板によって接続板の強度及び剛性の低下を補うことができるので、接続板の上下寸法を大きくしなくても前記曲げ荷重に対する基部の強度及び剛性を確保することができる。従って、この請求項1に記載の発明では、ロワーフレームの基部の接続板の上下寸法が制約を受ける場合でも、接続板に沿う方向でかつ天板の厚み方向への曲げ荷重に対するロワーフレームの基部の十分な強度及び剛性を確保することができる。
【0012】
なお、接続板に貫通孔が設けられていることによる接続板の強度及び剛性の低下を補うために、接続板の厚みを大幅に増大させて接続板の強度及び剛性を確保することも考えられる。しかし、この場合には、ロワーフレームの重量が大幅に増加するという問題が生じる。これに対して、この請求項1の発明では、補強板の下端部が天板の上面に接合されているとともに補強板の水平方向の両端部がそれぞれ円環部の内面に接合されているため、補強板と天板と円環部が一体となった立体的な構造で前記曲げ荷重に対抗することができる。このため、厚みが小さくて軽量の補強板でも補強効果を十分に得ることができる。その結果、上記した接続板の厚みを大幅に増大させて接続板の強度及び剛性を確保する場合のようにロワーフレームの重量が大幅に増加するのを防ぎつつ、前記曲げ荷重に対するロワーフレームの基部の強度及び剛性を確保することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクローラクレーンのロワーフレームにおいて、前記補強板は、前記接続板の直上においてその接続板と平行に配置されていることを特徴とするものである。
【0014】
この請求項2に記載の発明のように、補強板が接続板の直上においてその接続板と平行に配置されていれば、補強板が接続板に対して斜めに配置されていたり、補強板が接続板上からずれた位置に配置されていたりする場合に比べて、前記曲げ荷重に対してより有効に対抗可能な補強構造が構成される。このため、前記曲げ荷重に対するロワーフレームの基部の強度及び剛性を向上することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のクローラクレーンのロワーフレームにおいて、前記円環部の車幅方向における両端部には、前記クローラフレームの車幅方向内側への可動域を広げるように上下方向の一部に切欠き部がそれぞれ形成されており、前記補強板の水平方向における両端部は、前記円環部のうち周方向において前記切欠き部の両側に位置する箇所に接合されていることを特徴とするものである。
【0016】
この請求項3に記載の発明では、円環部の車幅方向における両端部に、クローラフレームの車幅方向内側への可動域を広げるように上下方向の一部に切欠き部がそれぞれ形成されているため、クローラフレームを車幅方向内側へ寄せたときにその切欠き部においてクローラフレームと円環部との干渉を回避することができ、その結果、円環部にこのような切欠き部が形成されていない場合に比べて、クローラフレームをより車幅方向の内側へ寄せることが可能となる。これにより、クローラフレームを車幅方向内側に格納したときのクローラクレーンの車幅の縮小化を図ることができる。また、円環部に切欠き部を設けることによって、ロワーフレームの重量の削減を図ることができる。なお、円環部に切欠き部を設けると円環部の強度及び剛性が低下するが、この請求項3に記載の発明では、補強板の水平方向における両端部が、円環部のうち周方向において切欠き部の両側に位置する箇所に接合されているため、補強板と円環部のうち切欠き部の周辺部分と天板とが一体となって切欠き部を設けることによる円環部の強度及び剛性の低下を補うための補強構造を構成することができる。このため、上部旋回体から円環部に付加される荷重によって円環部に生じる変形を抑制することができる。従って、この請求項3に記載の発明では、クローラフレームを車幅方向内側に格納したときのクローラクレーンの車幅の縮小化と、ロワーフレームの重量の削減とを図りつつ、円環部に生じる変形を抑制することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクローラクレーンのロワーフレームにおいて、前記円環部には、前記補強板の上側に位置するとともに当該円環部の径方向内側に突出する突出部が設けられており、前記補強板の上端部は、前記突出部の下面に接合されていることを特徴とするものである。
【0018】
この請求項4に記載の発明によれば、基部の天板と、補強板と、円環部のうち補強板の水平方向における両端部が接合された箇所の間に位置する部分と、突出部とによって閉断面を形成するボックス構造を構成することができるため、基部の強度及び剛性をより高めることができる。また、この発明によれば、突出部が補強板によって下から支持されるため、上部旋回体の重量が突出部に掛かる場合でもその重量を良好に支えることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、ロワーフレームの基部の接続板の上下寸法が制約を受ける場合でも、接続板に沿う方向でかつ天板の厚み方向への曲げ荷重に対するロワーフレームの基部の十分な強度及び剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態によるロワーフレームを適用するクローラクレーンの概略的な側面図である。
【図2】図1に示したロワーフレームを適用したクローラクレーンの下部走行体の概略的な平面図である。
【図3】本発明の一実施形態によるクローラクレーンのロワーフレームの斜視図である。
【図4】図3中のIV−IV線に沿ったロワーフレームの部分的な断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の変形例によるクローラクレーンのロワーフレームの斜視図である。
【図6】図5中のVI−VI線に沿ったロワーフレームの部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0022】
まず、図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態によるロワーフレーム2が適用されるクローラクレーン50の構成について説明する。
【0023】
本実施形態によるロワーフレーム2は、例えば図1に示すようなクローラクレーン50に設けられる。このクローラクレーン50は、クローラ式の下部走行体52と、その下部走行体52上に旋回自在に搭載された上部旋回体54とを備えている。上部旋回体54には、ブーム56が起伏自在に設けられており、このブーム56の先端からはロープ58によって吊荷用のフック60が吊り下げられている。そして、このクローラクレーン50では、ブーム56の起伏、上部旋回体54の旋回動作に伴うブーム56の旋回、フック60の昇降によってクレーン作業が行われる。
【0024】
下部走行体52は、図2に示すように、ロワーフレーム2と、一対のクローラフレーム62と、一対の駆動シリンダ64と、クローラ66とを有する。
【0025】
ロワーフレーム2は、下部走行体52のベースとなるフレームであり、前記上部旋回体54を下から支持している。一対のクローラフレーム62は、車幅方向に分かれて配置されており、車長方向に延びている。ロワーフレーム2は、一対のクローラフレーム62同士の間に配置されてこれらのクローラフレーム62を車幅方向にスライド可能に支持している。
【0026】
具体的には、各クローラフレーム62には、車幅方向に貫通する2つの挿入孔62aが車長方向に離間して設けられている。この各挿入孔62aには、ロワーフレーム2のうち車幅方向に延びる後述のアクスル6の端部がそれぞれ挿嵌されており、クローラフレーム62は、アクスル6に沿って車幅方向にスライド可能となっている。すなわち、ロワーフレーム2は、そのアクスル6によって各クローラフレーム62を車幅方向にスライド可能に支持している。
【0027】
一対の駆動シリンダ64は、ロワーフレーム2から車幅方向両側へ延びるようにロワーフレーム2に取り付けられている。各駆動シリンダ64のピストンロッド64aの先端部は、対応するクローラフレーム62に接続されており、この各駆動シリンダ64が駆動することにより、各クローラフレーム62が車幅方向にスライドするようになっている。
【0028】
クローラ66は、各クローラフレーム62の周囲にそれぞれ装着されている。この各クローラ66が周回運動することによって、クローラクレーン50の走行が行われるようになっている。
【0029】
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態によるロワーフレーム2の詳細な構成について説明する。
【0030】
本実施形態のロワーフレーム2は、図3に示すように、円環部4と、一対のアクスル6と、基部8とを有する。
【0031】
円環部4は、基部8上に設けられており、上部旋回体54が旋回自在に搭載されるものである。この円環部4は、基部8上に立設される円筒状の本体部4aと、その本体部4a上に本体部4aと同軸となるように設けられた円環状の上縁部4bとを有する。上縁部4bの径方向の厚みは、本体部4aの径方向の厚みよりも大きくなっており、上縁部4bの内縁は、本体部4aの径方向内側へ突出している一方、上縁部4bの外縁は、本体部4aの径方向外側へ突出している。
【0032】
一対のアクスル6は、車長方向に間隔をあけて配設されているとともに、車幅方向に直線的に延びている。各アクスル6は、細長い箱状に形成されている。このアクスル6は、上記したようにクローラフレーム62の挿入孔62aに挿嵌されることにより、クローラフレーム62を支持するとともに、そのクローラフレーム62の車幅方向への移動をガイドする。
【0033】
基部8は、一対のアクスル6間においてそれらのアクスル6同士を繋いでいる。この基部8は、両アクスル6の長手方向(車幅方向)における中央部同士を繋いでいる。すなわち、各アクスル6は、車幅方向において基部8の両側に均等に突出している。そして、基部8は、天板12と、底板14と、一対の接続板16と、2つの補強板18とを有する。
【0034】
天板12は、基部8の上面を構成しており、当該天板12の上面に円環部4が設けられている。天板12は、各アクスル6の天板6aと一体に形成されており、それらの天板12,6aは平板状に形成されている。すなわち、基部8の天板12の上面と各アクスル6の天板6aの上面とは、面一となっている。
【0035】
この天板12は、矩形状の外形を有する天板本体部12aと、その天板本体部12aから車幅方向外側へそれぞれ突出する一対の張り出し部12bとを有する。
【0036】
天板本体部12aは、両アクスル6の天板6a同士をそれらの間で繋いでいる。この天板本体部12aの幅は、円環部4の本体部4aの直径よりも小さくなっている。また、天板本体部12aの中央には、大きな孔部12dが形成されている。
【0037】
各張り出し部12bは、円環部4の本体部4aが天板本体部12aからはみ出した部分に相当する形状に形成されている。各張り出し部12bは、天板本体部12aの車幅方向における両端部のうち車長方向における中央部分から車幅方向外側へそれぞれ突出している。
【0038】
円環部4の本体部4aの内径は、孔部12dの径よりも大きくなっており、円環部4の本体部4aの下端部は、孔部12dから所定距離だけ径方向外側で孔部12dの周りを囲むように天板12の上面に接合されている。そして、この円環部4の本体部4aの下端部の大部分は、天板本体部12aの上面に接合されており、その本体部4aの下端部のうち天板本体部12aから車幅方向両側にはみ出した部分のみが、対応する張り出し部12bの上面に接合されている。このように本体部4aの下端部が天板12に接合されることによって、円環部4は、その軸心が天板12に対して垂直となるように天板12上に立設されている。
【0039】
底板14は、天板12の下方に離間し、かつ、天板12に対して平行に配置されている。この底板14は、各アクスル6の底板6bと一体に形成されており、それらの底板14,6bは平板状に形成されている。底板14のうち天板12の孔部12dの範囲内に対応する部分には、駆動シリンダ64の端部を取り付けて固定するための取付部15が設けられている。
【0040】
一対の接続板16は、車幅方向に互いに離間して配設されており、基部8の車幅方向における側面を構成している。各接続板16は、天板12と底板14の車幅方向における対応する端部同士を繋ぐとともに、一対のアクスル6のうち互いに対向する面同士を繋いでいる。そして、各接続板16は、上下方向に延びるとともに車長方向に延びている。また、各接続板16は、車幅方向において円環部4の両端部よりも内側に配置されている。換言すれば、各接続板16は、車幅方向において円環部4と一部重なるように配置されている。また、各接続板16は、駆動シリンダ64を挿嵌するための貫通孔16aを有している。駆動シリンダ64は、その基端部が底板14上の取付部15に取り付けられているとともに、接続板16の貫通孔16aを通って車幅方向外側へ延びている。そして、貫通孔16aは、接続板16のうち円環部4の本体部4aと交差する部分及びその部分の近傍の領域に形成されている。
【0041】
補強板18は、図4に示すように、天板本体部12aの上面のうち円環部4の内側でかつ各接続板16の上側の位置にそれぞれ天板本体部12aに対して垂直に立設されている。この補強板18は、各接続板16の直上において各接続板16と平行に配置されている。すなわち、補強板18は、上から見て接続板16と完全に重なるように配置されている。そして、接続板16の貫通孔16aは、車長方向において補強板18が設けられた範囲内に設けられている。補強板18の下端部は、天板12の上面に接合されており、補強板18の水平方向における両端部は、円環部4の本体部4aの内面のうち周方向に離間した箇所にそれぞれ接合されている。なお、補強板18の水平方向における両端部は、車幅方向に延びる円環部4の中心線に対して対称となる位置で円環部4の本体部4aの内面に接合されている。
【0042】
この補強板18は、接続板16に貫通孔16aが設けられていることによる接続板16の強度及び剛性の低下を補うために設けられている。具体的には、天板12及びそれを支える接続板16には、上部旋回体54から円環部4を介して様々な形態の荷重が付加されるが、その付加される荷重によって図3中の矢印で示すような接続板16に沿う方向で天板12の厚み方向への曲げ荷重が天板12及び接続板16に作用する場合がある。補強板18は、このような曲げ荷重が作用したときに、円環部4の本体部4aの内面に対して突っ張る作用を及ぼすとともに、貫通孔16aを設けることによって減少した接続板16の上下方向の断面強度を補うことができる。さらに、この補強板18は、下端部が天板12の上面に接合されているため、前記曲げ荷重が補強板18に掛かった場合でも当該補強板18と天板12は一体となって当該補強板18の座屈を抑制する。従って、この補強板18は、前記曲げ荷重に対する有効な補強効果を発揮する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態では、天板12の上面のうち円環部4の内側でかつ各接続板16の上側の位置に補強板18がそれぞれ立設されており、その補強板18の下端部が天板12の上面に接合されているとともに、その補強板18の水平方向における両端部が円環部4の内面にそれぞれ接合されている。このため、接続板16に沿う方向でかつ天板12の厚み方向への曲げ荷重が天板12及び接続板16に作用する場合に、補強板18は、その両端がそれぞれ接合された円環部4の内面に対して突っ張る作用を及ぼすとともに、貫通孔16aが設けられることによって減少した接続板16の上下方向の断面強度を補うことができる。さらに、補強板18は、下端部が天板12の上面に接合されているため、前記曲げ荷重が補強板18に掛かった場合でも当該補強板18と天板12は一体となって当該補強板18の座屈を抑制する。従って、接続板16に駆動シリンダ64を挿嵌するための貫通孔16aが設けられていることによって接続板16の強度及び剛性が低下していても、前記曲げ荷重に対する基部8の十分な強度及び剛性を確保することができる。
【0044】
また、本実施形態では、天板12上に設ける補強板18によって接続板16の強度及び剛性の低下を補うことができるので、接続板16の上下寸法を大きくしなくても前記曲げ荷重に対する基部8の強度及び剛性を確保することができる。従って、本実施形態では、ロワーフレーム2の基部8の接続板16の上下寸法が制約を受ける場合でも、接続板16に沿う方向でかつ天板12の厚み方向への曲げ荷重に対するロワーフレーム2の基部8の十分な強度及び剛性を確保することができる。
【0045】
なお、接続板16に貫通孔16aが設けられていることによる接続板16の強度及び剛性の低下を補うために、接続板16の厚みを大幅に増大させて接続板16の強度及び剛性を確保することも考えられる。しかし、この場合には、ロワーフレーム2の重量が大幅に増加するという問題が生じる。これに対して、本実施形態では、補強板18の下端部が天板12の上面に接合されているとともに補強板18の水平方向の両端部がそれぞれ円環部4の内面に接合されているため、補強板18と天板12と円環部4が一体となった立体的な構造で前記曲げ荷重に対抗することができる。このため、厚みが小さくて軽量の補強板18でも補強効果を十分に得ることができる。その結果、上記した接続板16の厚みを大幅に増大させて接続板16の強度及び剛性を確保する場合のようにロワーフレーム2の重量が大幅に増加するのを防ぎつつ、前記曲げ荷重に対するロワーフレーム2の基部8の強度及び剛性を確保することができる。
【0046】
また、本実施形態では、補強板18が、接続板16の直上においてその接続板と平行に配置されているため、補強板が接続板16に対して斜めに配置されていたり、補強板が接続板16上からずれた位置に配置されていたりする場合に比べて、前記曲げ荷重に対してより有効に対抗可能な補強構造が構成される。このため、前記曲げ荷重に対するロワーフレーム2の基部8の強度及び剛性を向上することができる。
【0047】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0048】
例えば、円環部4の本体部4aの車幅方向における両端部には、クローラフレーム62の車幅方向内側への可動域を広げるように上下方向の一部に切欠き部4cがそれぞれ形成されており、補強板18の水平方向における両端部が、円環部4の本体部4aのうち周方向において切欠き部4cの両側に位置する箇所に接合されていてもよい。このような上記実施形態の変形例の構成は、図5及び図6に示されている。なお、図5の斜視図では、円環部4の一方側の切欠き部4cのみが表されており、もう一方の切欠き部4cは、補強板18で隠れて表されていない。
【0049】
具体的には、この変形例では、円環部4の本体部4aの車幅方向における両端部の下端部から上下方向の中間部辺りの部分が切り欠かれることによって切欠き部4cが形成されている。この切欠き部4cは、円環部4の本体部4aのうち各接続板16よりも車幅方向外側に突出した部分にそれぞれ設けられており、この切欠き部4cと接続板16の貫通孔16aとは車長方向において一部重なって配置されている。そして、この切欠き部4cが設けられることによって円環部4の本体部4aの下端部の車幅方向への突出量が小さくなる分、天板12の張り出し部12bの突出量も少なくなっており、この張り出し部12bの車幅方向における端縁は、車長方向に直線的に延びている。
【0050】
そして、各補強板18の水平方向における両端部は、円環部4の本体部4aのうち周方向において対応する切欠き部4cの両側に位置する箇所に接合されている。換言すれば、切欠き部4cは、円環部4の本体部4aのうち補強板18の水平方向における両端部がそれぞれ接合された箇所の間の部分に形成されている。
【0051】
上記のような切欠き部4cが円環部4の本体部4aに形成されることによって、クローラフレーム62を車幅方向内側へ寄せたときに切欠き部4cにおいて円環部4の本体部4aとクローラフレーム62との干渉が回避される。このため、クローラフレーム62の車幅方向内側への可動域が広げられる。
【0052】
また、この変形例では、各補強板18の上側の位置において、円環部4の上縁部4bから径方向内側に突出する突出部4eがそれぞれ設けられている。この突出部4eは、補強板18の車長方向における全範囲をカバーするように設けられている。そして、補強板18の上端部は、突出部4eの下面に接合されている。すなわち、この変形例では、補強板18の上下寸法は、上記実施形態による補強板18の上下寸法よりも大きく、その補強板18の上端面の上下位置は、円環部4の上縁部4b及び突出部4eの下端面の上下位置に等しくなっている。
【0053】
この変形例の構成では、円環部4の本体部4aの車幅方向における両端部に、クローラフレーム62の車幅方向内側への可動域を広げるように切欠き部4cがそれぞれ形成されているため、クローラフレーム62を車幅方向内側へ寄せたときに切欠き部4cにおいてクローラフレーム62と円環部4の本体部4aとの干渉を回避することができる。その結果、円環部4にこのような切欠き部4cが形成されていない場合に比べて、クローラフレーム62をより車幅方向の内側へ寄せることが可能となる。これにより、クローラフレーム62を車幅方向内側に格納したときのクローラクレーン50の車幅の縮小化を図ることができる。また、この変形例では、円環部4の本体部4aに切欠き部4cを設けることによって、ロワーフレーム2の重量の削減を図ることができる。
【0054】
なお、円環部4に切欠き部4cを設けると円環部4の強度及び剛性が低下するが、この変形例では、補強板18の水平方向における両端部が、円環部4の本体部4aのうち周方向において切欠き部4cの両側に位置する箇所に接合されているため、補強板18と円環部4の本体部4aのうち切欠き部4cの周辺部分と天板12とが一体となって、切欠き部4cを設けることによる円環部4の強度及び剛性の低下を補うための補強構造が構成される。このため、上部旋回体54から円環部4に付加される荷重によって円環部4に生じる変形を抑制することができる。従って、この変形例では、クローラフレーム62を車幅方向内側に格納したときのクローラクレーン50の車幅の縮小化と、ロワーフレーム2の重量の削減とを図りつつ、円環部4に生じる変形を抑制することができる。
【0055】
また、この変形例では、補強板18の上端部が、円環部4の上縁部4bから径方向内側に突出する突出部4eの下面に接合されているため、基部8の天板12と、補強板18と、円環部4の本体部4aうち補強板18の水平方向における両端部が接合された箇所の間に位置する部分と、円環部4の上縁部4bと、突出部4eとによって閉断面を形成するボックス構造を構成することができる。このため、基部8の強度及び剛性をより高めることができる。
【0056】
また、この変形例では、突出部4eが補強板18によって下から支持されるため、切欠き部4cが設けられることによって円環部4の強度及び剛性が低下していても、当該円環部4に掛かる上部旋回体54の重量(垂直下方への荷重)を良好に支えることができる。このため、切欠き部4cが設けられることによって円環部4の強度及び剛性が低下していても、上部旋回体54の重量が掛かることによる円環部4の変形を有効に抑制することができる。
【0057】
また、補強板18は、接続板16の直上において接続板16と平行に配置されていることに限定されない。すなわち、補強板は、接続板16に対して斜めに配置されていてもよい。また、補強板は、車幅方向において接続板16の直上からずれた位置に配置されていてもよい。
【0058】
また、上記変形例で示した円環部4の上縁部4bに突出部4eを設けて、その突出部4eの下面に補強板18の上端部を接合させる構成を、上記実施形態の円環部4に切欠き部が設けられていない構成に適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
2 ロワーフレーム
4 円環部
4c 切欠き部
4e 突出部
6 アクスル
8 基部
12 天板
14 底板
16 接続板
16a 貫通孔
18 補強板
50 クローラクレーン
54 上部旋回体
62 クローラフレーム
64 駆動シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に分かれて配置された一対のクローラフレームを有するクローラクレーンに設けられ、このクローラクレーンの上部旋回体を下から支持するとともに、前記両クローラフレーム同士の間に配置されてこれらのクローラフレームを車幅方向にスライド可能に支持するクローラクレーンのロワーフレームであって、
車長方向に間隔をあけて設けられるとともに車幅方向に延びる一対のアクスルと、
前記一対のアクスル間においてそれらのアクスル同士を繋ぐ基部と、
前記基部上に設けられ、前記上部旋回体を搭載可能な円環部とを備え、
前記基部は、前記円環部が上面に設けられる天板と、その天板から下方に離間して配設された底板と、車幅方向において互いに離間して配置され、前記天板と前記底板とを繋ぐように上下方向に延びる一対の接続板とを有し、
前記各接続板は、車幅方向において前記円環部の両端部よりも内側に配置されているとともに、前記クローラフレームをスライドさせる駆動シリンダを挿嵌するための貫通孔を有し、
前記天板の上面のうち前記円環部の内側でかつ前記各接続板の上側の位置には、補強板がそれぞれ立設されており、
前記補強板の下端部は、前記天板の上面に接合されているとともに、前記補強板の水平方向における両端部は、前記円環部の内面にそれぞれ接合されていることを特徴とする、クローラクレーンのロワーフレーム。
【請求項2】
前記補強板は、前記接続板の直上においてその接続板と平行に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のクローラクレーンのロワーフレーム。
【請求項3】
前記円環部の車幅方向における両端部には、前記クローラフレームの車幅方向内側への可動域を広げるように上下方向の一部に切欠き部がそれぞれ形成されており、
前記補強板の水平方向における両端部は、前記円環部のうち周方向において前記切欠き部の両側に位置する箇所に接合されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のクローラクレーンのロワーフレーム。
【請求項4】
前記円環部には、前記補強板の上側に位置するとともに当該円環部の径方向内側に突出する突出部が設けられており、
前記補強板の上端部は、前記突出部の下面に接合されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のクローラクレーンのロワーフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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