説明

グアイアズレンスルホン酸塩含有液剤

【課題】 グアイアズレンスルホン酸塩が高いレベルで安定化された液剤を提供する。
【解決手段】 液剤において、
(1)該液剤の全容量に対して0.001w/v%以上〜1w/v%未満のグアイアズレンスルホン酸塩、
(2)四級アンモニウム塩、
(3)HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤、
(4)溶媒、及び、
(5)炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも2種類の緩衝剤
を配合させ、かつ、pHを7.5以上〜9.5以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性に優れたグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤、特に苛酷試験及び加速試験において優れたグアイアズレンスルホン酸塩の安定性を有するグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム等のグアイアズレンスルホン酸塩は、従来から、効果が緩和で副作用の少ない抗炎症液剤や、刺激や副作用のない安全な口腔内抗炎症用液剤として広く利用されている。
しかしながら、グアイアズレンスルホン酸塩は、溶液中において、光、熱及び酸素に対して不安定である。そのため、グアイアズレンスルホン酸塩含有液剤を長期間保存した場合、液剤中のグアイアズレンスルホン酸塩が徐々に分解し、その消炎作用、組織修復作用及び抗アレルギー作用が減少してしまい、その結果、液剤が十分な薬効を発揮できないという問題が生ずる。
【0003】
このような問題を解決すべく、以下に示す様なグアイアズレンスルホン酸塩を安定化する種々の技術が存在する。
(1)グアイアズレンスルホン酸塩へ、アミノ酸単独又はアミノ酸及び弱塩基性アルカリ塩(炭酸水素ナトリウム)を配合する技術(特許文献1)。
(2)グアイアズレンスルホン酸の水溶性塩と四級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム)とを反応させて、グアイアズレンスルホン酸の四級アンモニウム塩とする技術(特許文献2)。
(3)グアイアズレンスルホン酸塩へ、プロピレングリコール単独又はプロピレングリコール及び炭酸水素ナトリウムを配合する技術(特許文献3)。
(4)グアイアズレンスルホン酸塩へ、緩衝液の存在下、縮合リン酸塩を配合する技術(特許文献4)。
(5)アズレンに、クロルヘキシジン塩、エタノール及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油1〜2質量%を配合する技術(特許文献5)。
(6)グアイアズレンスルホン酸塩へ、カチオン界面活性剤(塩化ベンザルコニウム)もしくはクロルヘキシジンと、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)とを配合する技術(特許文献6)。
(7)グアイアズレンスルホン酸塩へ、四級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム)、HLBが8〜13.5である非イオン性界面活性剤及び炭素数2〜22の脂肪族一価アルコール(エタノール)を配合する技術(特許文献7)。
(8)アズレン類へ、炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム)、四級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム)及びアルコール類(エタノール)30〜100質量%を配合する技術(特許文献8)。
(9)グアイアズレンスルホン酸塩へ、アルキルポリアミノエチルグリシン及び非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60))を配合する技術(特許文献9)。
(10)グアイアズレンスルホン酸塩へ、両性界面活性剤を配合する技術(特許文献10)。
(11)アズレンスルホン酸塩へ、グリセリン、ソルビトール及びキシリトールから選ばれる多価アルコール20〜80w/v%を配合する技術(特許文献11)。
(12)グアイアズレンスルホン酸塩へ、塩化デカリニウム(カチオン系界面活性剤)及びグリセリンを配合する技術(特許文献12)。
(13)アズレンスルホン酸塩へ、ジブチルヒドロキシトルエンを配合する技術(特許文献13)。
(14)グアイアズレンスルホン酸塩へ、四級アンモニウム塩(塩化セチルピリジニウム及び/又は塩化ベンザルコニウム)を配合し、かつ、溶液の酸性域(pH3.0〜6.5)とする技術(特許文献14)。
(15)グアイアズレンスルホン酸塩へ、キサンチン類を配合する技術(特許文献15)。
(16)グアイアズレンスルホン酸塩へ、ジブチルヒドロキシトルエン、チオ硫酸塩及び非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80)を配合する技術(特許文献16)
(17)アズレンスルホン酸塩へ、多価アルコール(プロピレングリコール及び/又はグリセリン)を配合する技術(特許文献17)
【0004】
しかしながら、これらの技術は、苛酷試験(例えば、60℃で3週間)及び加速試験(例えば、40℃で6ヶ月)に付したときに、液剤中のグアイアズレンスルホン酸塩を十分に安定化することができないという課題がある。
【0005】
【特許文献1】特公昭49−11219号公報
【特許文献2】特公昭52−31337号公報
【特許文献3】特公平2−42811号公報
【特許文献4】特開昭58−144365号公報
【特許文献5】特公昭59−27324号公報
【特許文献6】特公平1−27060号公報
【特許文献7】特公平8−32626号公報
【特許文献8】特公平7−35342号公報
【特許文献9】特公平8−25874号公報
【特許文献10】第2505513号公報
【特許文献11】第2724943号公報
【特許文献12】特開平11−79984号公報
【特許文献13】特開平11−302196号公報
【特許文献14】特開2003−81822号公報
【特許文献15】特開2003−128537号公報
【特許文献16】特開2004−196671号公報
【特許文献17】特開2005−154334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、苛酷試験及び加速試験に付した後でも高いアズレン残存率を有する、グアイアズレンスルホン酸塩が高いレベルで安定化された液剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、グアイアズレンスルホン酸塩含有液剤におけるグアイアズレンスルホン酸塩の安定性の向上について鋭意検討した結果、(1)該液剤の全容量に対して0.001w/v%以上〜1w/v%未満のグアイアズレンスルホン酸塩、(2)四級アンモニウム塩、(3)HLBが13.5より大きく20以下の非イオン性界面活性剤及び(4)溶媒を含む液剤において、(5)炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも2種類の緩衝剤を配合して液剤のpHを7.5〜9.5に保持することにより、苛酷試験条件下(例えば、60℃で3週間)及び加速試験条件下(例えば、40℃で6ヶ月)であってもグアイアズレンスルホン酸塩の安定性を高レベルで維持できることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、グアイアズレンスルホン酸塩含有液剤であって、
(1)該液剤の全容量に対して0.001w/v%以上〜1w/v%未満のグアイアズレンスルホン酸塩、
(2)四級アンモニウム塩、
(3)HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤、
(4)溶媒、及び、
(5)炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも2種類の緩衝剤、
を含み、
pHが7.5以上〜9.5以下である
ことを特徴とする液剤に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤は、後述する実施例で示されるように、苛酷試験条件下及び加速試験条件下でも優れたグアイアズレンスルホン酸塩安定性を有するので、長期間の保存が可能になる。したがって、本発明の液剤は、市場流通過程において、従来のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤にはない長期間の品質及び薬効の安定性を保証することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤は、
(1)該液剤の全容量に対して0.001w/v%以上〜1w/v%未満のグアイアズレンスルホン酸塩、
(2)四級アンモニウム塩、
(3)HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤、
(4)溶媒、及び、
(5)炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも2種類の緩衝剤
を含み、
pHが7.5以上〜9.5以下である
ことを特徴とする。
【0011】
本発明に用いる「グアイアズレンスルホン酸塩」とは、7−イソプロピル−1,4−ジメチル−アズレンの3位にスルホン酸基が導入されたグアイアズレンスルホン酸の薬理学上許容される塩及びその水和物をいう。グアイアズレンスルホン酸塩は、抗炎症作用、抗アレルギー作用、肉芽新生及び上皮形成促進作用を有することが知られている
薬理学上許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
グアイアズレンスルホン酸塩の具体例としては、例えば、ユソウ木やユーカリの油から得られるグアイアズレンの3位にスルホン酸基を導入して得たグアイアズレンスルホン酸のナトリウム塩であるグアイアズレンスルホン酸ナトリウム(通常、アズレンスルホン酸ナトリウムと称される)及びグアイアズレンスルホン酸カリウム等が挙げられる。これらの中では、グアイアズレンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
また、グアイアズレンスルホン酸塩は、単独で又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
グアイアズレンスルホン酸塩は公知物質であり、市場において容易に入手することができる。
グアイアズレンスルホン酸塩の配合量は、液剤の全容量に対して、0.001w/v%以上〜1w/v%未満、好ましくは0.005w/v%以上〜0.5w/v%以下、特に好ましくは0.01w/v%以上〜0.1w/v%以下である。
尚、配合量の単位「w/v%」とは、質量対容量百分率(液剤(100mL)中の成分含量(g))をいう(以下、他の成分についても同様)。
グアイアズレンスルホン酸塩の配合量が、液剤の全容量に対して0.001w/v%以上〜1w/v%未満であると、液剤の有効性及び安定性を維持することができる。
【0012】
本発明に用いる「四級アンモニウム塩」とは、第四級アンモニウムと対イオンとしての陰イオンからなる化合物をいう。四級アンモニウム塩は、液剤の防腐やグアイアズレンスルホン酸塩の安定化のために配合される。
具体例としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム及び塩化メチルベンゼトニウム等が挙げられる。これらのなかでは、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンザルコニウムが好ましい。
また、四級アンモニウム塩は、単独で又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
四級アンモニウム塩は公知物質であり、市場において容易に入手することができる。
四級アンモニウム塩の配合量は、液剤の全容量に対して、0.001w/v%以上〜0.5w/v%以下、好ましくは0.005w/v%以上〜0.4w/v%以下、特に好ましくは0.01w/v%〜0.3w/v%である。
四級アンモニウム塩の配合量が、液剤の全容量に対して0.001w/v%以上〜0.5w/v%以下であると、液剤としての有効性及び安全性を保持することができる。
【0013】
本発明に用いる「HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤」とは、親水基として非イオン性基を有する界面活性物質であって、HLB(hydrophile-lipophile balance、親水親油バランス)が13.5より大きく20以下であるものをいう。
HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤は、グアイアズレンスルホン酸塩の可溶化のために配合される。
HLBが13.5より大きく20以下であると、液剤中においてグアイアズレンスルホン酸塩を十分に可溶化して安定化させることができる。更に、液剤中で界面活性剤自体が白濁化することも抑制できる。
尚、HLBは、例えばグリフィンの計算式にしたがい求めることができる。
HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤の具体例としては、下記のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。

ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
ポリソルベート40(HLB15.6)
ポリソルベート60(HLB14.9)
ポリソルベート80(HLB15.0)

ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油(HLB14.0)
ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油(HLB15.0)
ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油(HLB16.5)

ポリオキシエチレンアルキルエーテル
ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル(HLB14.5)
ポリオキシエチレン(21)ラウリルエーテル(HLB19.0)
ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル(HLB19.5)
ポリオキシエチレン(15)セチルエーテル(HLB15.5)
ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル(HLB17.0)
ポリオキシエチレン(23)セチルエーテル(HLB18.0)
ポリオキシエチレン(25)セチルエーテル(HLB18.5)
ポリオキシエチレン(30)セチルエーテル(HLB19.5)
ポリオキシエチレン(40)セチルエーテル(HLB20.0)
ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル(HLB18.0)
ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(HLB14.5)
ポリオキシエチレン(15)オレイルエーテル(HLB16.0)
ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(HLB17.0)
ポリオキシエチレン(50)オレイルエーテル(HLB18.0)
ポリオキシエチレン(20)ベヘニルエーテル(HLB16.5)
ポリオキシエチレン(30)ベヘニルエーテル(HLB18.0)

ポリエチレングリコール脂肪酸エステル
モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25E.O.)(HLB15.0)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)(HLB17.5)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール(44E.O.)(HLB18.0)
モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)(HLB18.0)

これらの中では、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)、ポリソルベート80及びポリオキシエチレン(25)セチルエーテルが好ましい。
非イオン性界面活性剤は、単独で又は2種以上の組み合わせ(例えば、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテルとポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油との組み合わせ)で使用することができる。
上記の非イオン性界面活性剤は公知物質であり、市場において容易に入手することができる。
HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤の配合量は、液剤の全容量に対して、0.05w/v%以上〜2w/v%以下、好ましくは0.1w/v%以上〜1w/v%以下、特に好ましくは0.2w/v%以上〜0.5w/v%以下である。
HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤の配合量が、液剤の全容量に対して0.05w/v%以上〜2w/v%以下であると、液剤を澄明に可溶化できる。
【0014】
本発明に用いる「緩衝剤」とは、液剤のpHを7.5以上〜9.5以下に維持することができる炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩をいう。
炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩の具体例としては、下記の物質が挙げられる。

炭酸水素塩
炭酸水素ナトリウム
炭酸水素カリウム

クエン酸塩
クエン酸ナトリウム
クエン酸カリウム

リン酸塩
リン酸水素ナトリウム
リン酸三ナトリウム
リン酸二水素ナトリウム
リン酸二カリウム
リン酸二水素カリウム
上記の炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩は公知物質であり、市場において容易に入手することができる。
【0015】
本発明の液剤では、炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも2種類の緩衝剤を組み合わせて使用する。
組み合わせの態様は、
(1)酸部分において異なる塩の組み合わせ、例えば、炭酸水素塩とクエン酸塩との組み合わせ(例:炭酸水素ナトリウムとクエン酸ナトリウム)、炭酸水素塩とリン酸塩との組み合わせ、クエン酸塩とリン酸塩との組み合わせ(例:クエン酸ナトリウムとリン酸水素ナトリウム)、及び、炭酸水素塩とクエン酸塩とリン酸塩との組み合わせ(例:炭酸水素ナトリウムとクエン酸ナトリウムとリン酸水素ナトリウム)であってもよく、
(2)酸部分が同一である塩の組み合わせ、例えば、炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムとの組み合わせ、クエン酸ナトリウムとクエン酸カリウムとの組み合わせ、及び、リン酸水素ナトリウムとリン酸三ナトリウムとリン酸二水素ナトリウムとの組み合わせであってもよく、
(3)前記(1)と(2)との組み合わせ、例えば、炭酸水素ナトリウムと炭酸水素カリウムとクエン酸ナトリウムとの組み合わせ、クエン酸ナトリウムとクエン酸カリウムとリン酸水素ナトリウムとの組み合わせ、及び、リン酸水素ナトリウムとリン酸三ナトリウムと炭酸水素ナトリウムとの組み合わせであってもよい。
組み合わせとしては、炭酸水素ナトリウムとクエン酸ナトリウムとの組み合わせ、炭酸水素ナトリウムとクエン酸ナトリウムとリン酸水素ナトリウムとの組み合わせ、及び、クエン酸ナトリウムとリン酸水素ナトリウムとの組み合わせが好ましい。
炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも2種類の緩衝剤を組み合わせて用いると、緩衝剤の単独使用では困難であった、液剤のpHを7.5以上〜9.5以下に長期間保持することが可能になる。
少なくとも2種類の緩衝剤の組み合わせからなる緩衝剤は、液剤のpHを7.5以上〜9.5以下に保持することができる量であれば特に制限なく配合することができる。例えば、少なくとも2種類の緩衝剤の組み合わせからなる緩衝剤の総配合量は、液剤の全容量に対して0.005w/v%以上〜1w/v%以下、好ましくは0.01w/v%以上〜0.5w/v%以下である。
緩衝剤の組み合わせにおける各緩衝剤の配合比は、液剤のpHを7.5以上〜9.5以下に保持することができる範囲内であれば特に制限されない。例えば、緩衝剤として炭酸水素塩とクエン酸塩とリン酸塩との組み合わせを用いる場合、炭酸水素塩:クエン酸塩:リン酸塩の配合比は0.015〜0.1:0.035〜0.3:0.05〜0.16(質量比)であることが好ましい。
【0016】
本発明に用いる「溶媒」とは、前述の「グアイアズレンスルホン酸塩」、「四級アンモニウム塩」、「HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤」及び「緩衝剤」を溶解して液剤とすることができる物質をいう。溶媒の具体例としては、水、アルコール及びエーテル等が挙げられる。
水としては、例えば精製水、滅菌精製水等が挙げられる。
アルコールとしては、一価アルコール(例:エタノール及びプロピルアルコール)、並びに、多価アルコール(例:プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール及びマンニトール)が挙げられる。アルコールは単独で又は2種以上の組み合わせ(例:グリセリンとソルビトール)で使用することができる。
エーテルとしては、分子量200〜20000のポリエチレングリコール、分子量2000のポリプロピレングリコール等が挙げられる。エーテルは単独で又は2種以上の組み合わせで使用することができる。
これらの溶媒の中では、精製水、グリセリン、ソルビトール及び分子量400のポリエチレングリコールが好ましい。
また、水、アルコール及びエーテルは、水単独で、又は、水とアルコール及びエーテルの1種以上との組み合わせ(例:水とアルコールとの組み合わせ、及び、水とアルコールとエーテルとの組み合わせ)で使用することができる。溶媒は含水溶媒であることが好ましい。
前記の溶媒物質はいずれも公知物質であり、市場において容易に入手することができる。
溶媒の配合量は、前述の「グアイアズレンスルホン酸塩」、「四級アンモニウム塩」、「HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤」及び「緩衝剤」を配合した際に、各成分の所定の配合量を達成できる量であれば特に制限されない。
アルコール及び/又はエーテルを用いる場合、その配合量に特に制限はないが、好ましくは液剤の全容量に対して、1w/v%以上〜20w/v%未満、好ましくは5w/v%以上〜19w/v%以下である。
【0017】
本発明の液剤のpHは、前述の緩衝剤の存在によって、7.5以上〜9.5以下、好ましくは7.8以上〜9.2以下、特に好ましくは8.0以上〜9.0以下に保持されている。液剤のpHが7.5以上〜9.5以下であると、液剤中のグアイアズレンスルホン酸の分解を抑制し、安定に維持することができる。
【0018】
本発明は特定の理論に限定されるものではないが、前述の組成を有することにより起こる、(1)グアイアズレンスルホン酸塩と4級アンモニウム塩との相互作用と、(2)非イオン性界面活性剤によるアズレンスルホン酸塩の可溶化と、(3)2種類以上の緩衝剤を使用することによる液剤pHの保持とが相まって、加速試験及び苛酷試験におけるグアイアズレンスルホン酸塩の高い安定性が得られると考えられる。
【0019】
本発明の液剤は、口腔内粘膜における保留性を高めるために、カルボキシメチルセルロースナトリウム(カルメロースナトリウム)を更に配合することができる。
カルボキシメチルセルロースナトリウムとして、例えば、ダイセル化学工業(株)製造の品番1105(5%粘度50〜100mPa/s)、品番1110(2%粘度100〜200mPa/s)、品番1120(1%粘度20〜50mPa/s)等を用いることができる。
カルボキシメチルセルロースナトリウムは公知物質であり、市場において容易に入手することができる。
カルボキシメチルセルロースナトリウムの配合量は、液剤の全容量に対して、0.01w/v%以上〜5w/v%以下、好ましくは0.1w/v%以上〜3w/v%以下、特に好ましくは0.2w/v%以上〜2w/v%以下である。
カルボキシメチルセルロースナトリウムの配合量が、液剤の全容量に対して0.01w/v%以上〜5w/v%以下であると、口腔内粘膜における液剤の保留性を高めることができる。
【0020】
更に、本発明の液剤は、液剤で通常使用される添加剤を適宜配合することができる。添加剤としては、抗酸化剤、増粘剤、等張化剤、香料及び矯味剤等が挙げられる。
抗酸化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びエデト酸ナトリウム等が挙げられる。
増粘剤としては、ポビドン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
等張化剤としては、塩化ナトリウム及び塩化カリウム等が挙げられる。
香料としては、l−メントール、カンフル、ボルネオール、チョウジ油、ウイキョウ油、ユーカリ油等が挙げられる。好ましくはl−メントール、ユーカリ油及びウイキョウ油が使用できる。
矯味剤としては、サッカリンナトリウム、カンゾウエキス、グリチルリチン酸塩及びアスパルテーム等が挙げられる。
pH調節剤としては、塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、乳酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン及びトリエタノールアミン等が挙げられる。
【0021】
本発明のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤は、溶媒中へ所定量のグアイアズレンスルホン酸塩、四級アンモニウム塩、HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤、及び、炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも2種類の緩衝剤を溶解することにより製造することができる。
【0022】
本発明のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤は、その使用態様に応じて、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、酒精剤、シロップ剤、チンキ剤、点眼剤、点鼻剤、うがい剤及び口腔剤等の種々の剤形へ製剤することができる。
任意成分としてのカルボキシメチルセルロースナトリウムを配合した場合、得られた液剤は口腔内粘膜上に長期間保留することができる。したがって、この場合の液剤は、液剤を患部へ直接塗布する口腔スプレー剤として好適に使用することができる。
【実施例】
【0023】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例で使用した試薬の商品名及び製造者名は下記の通りである。

*)POE:ポリオキシエチレンの略
*)PEG:ポリエチレングリコールの略
【0024】
[実施例1]
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.02g、塩化ベンゼトニウム0.02g、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル0.065g、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油0.16g、炭酸水素ナトリウム0.035g、クエン酸ナトリウム0.035g、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.25g、グリセリン18g及びl−メントール0.05gを精製水に溶解して、全容量を100mLとした。得られた液剤のpHは8.25であった。その後、ろ過を行い、プラスチックボトルへ充填した。
【0025】
[実施例2]
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.02g、塩化ベンゼトニウム0.02g、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル0.2g、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油0.2g、炭酸水素ナトリウム0.035g、クエン酸ナトリウム0.035g、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.5g及びl−メントール0.07gを精製水に溶解して、全容量を100mLとした。得られた液剤のpHは8.12であった。その後、ろ過を行い、プラスチックボトルへ充填した。
【0026】
[実施例3]
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.02g、塩化ベンゼトニウム0.02g、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル0.2g、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油0.2g、炭酸水素ナトリウム0.06g及びクエン酸ナトリウム0.06gを精製水に溶解して、全容量を100mLとした。得られた液剤のpHは8.37であった。その後、ろ過を行い、プラスチックボトルへ充填した。
【0027】
[実施例4]
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.02g、塩化ベンゼトニウム0.02g、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル0.2g、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油0.2g、炭酸水素ナトリウム0.015g、クエン酸ナトリウム0.07g、リン酸水素ナトリウム0.16g、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.25g、グリセリン18g、l−メントール0.06g、ウイキョウ油0.02g及びユーカリ油0.01gを精製水に溶解して、全容量を100mLとした。得られた液剤のpHは8.23であった。その後、ろ過を行い、プラスチックボトルへ充填した。
【0028】
[実施例5]
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.02g、塩化セチルピリジニウム0.02g、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル0.2g、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油0.2g、炭酸水素ナトリウム0.06g及びクエン酸ナトリウム0.06gを精製水に溶解して、全容量を100mLとした。得られた液剤のpHは8.54であった。その後、ろ過を行い、プラスチックボトルへ充填した。
【0029】
[実施例6]
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.02g、塩化ベンザルコニウム0.02g、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル0.2g、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油0.2g、炭酸水素ナトリウム0.06g及びクエン酸ナトリウム0.06gを精製水に溶解して、全容量100mLとした。得られた液剤のpHは8.60であった。その後、ろ過を行い、プラスチックボトルへ充填した。
【0030】
[実施例7]
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.02g、塩化ベンゼトニウム0.02g、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル0.3g、炭酸水素ナトリウム0.1g、クエン酸ナトリウム0.15g、グリセリン15g及びソルビトール3gを精製水に溶解して、全容量を100mLとした。得られた液剤のpHは8.25であった。その後、ろ過を行い、プラスチックボトルへ充填した。
【0031】
[実施例8]
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.02g、塩化ベンゼトニウム0.02g、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)0.3g、クエン酸ナトリウム0.15g、リン酸水素ナトリウム0.05g、グリセリン15g及びポリエチレングリコール400 3gを精製水に溶解して、全容量100mLとした。得られた液剤のpHは8.26であった。その後、ろ過を行い、プラスチックボトルへ充填した。
【0032】
[実施例9]
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.02g、塩化ベンゼトニウム0.02g、ポリソルベート80 0.3g、炭酸水素ナトリウム0.1g、クエン酸ナトリウム0.3g、グリセリン15g及びソルビトール3gを精製水に溶解して、全容量を100mLとした。得られた液剤のpHは8.80であった。その後、ろ過を行い、プラスチックボトルへ充填した。
【0033】
[実施例10]
カルボキシメチルセルロースナトリウムを含まないことを除いて、実施例2と同様の組成の液剤(全容量を100mL)を調製し、ろ過し、プラスチックボトルに充填した。pHは8.11であった。
【0034】
実施例1〜実施例10の各液剤の組成を表1に示す。









































表1

合計及びpHを除く単位:g/100mL
*)POE:ポリオキシエチレンの略
*)PEG:ポリエチレングリコールの略
【0035】
前記表1の各成分について、
グアイアズレンスルホン酸ナトリウムは「グアイアズレンスルホン酸塩」に該当し、
塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム及び塩化ベンザルコニウムは「四級アンモニウム塩」に該当し、
POE(25)ラウリルエーテル、POE(60)硬化ヒマシ油、POE(9)ラウリルエーテル、モノステアリン酸PEG(40E.O.)及びポリソルベート80は「HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤」に該当し、
炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム及びリン酸水素ナトリウムは「炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる緩衝剤」に該当し、
精製水、グリセリン、ソルビトール及びPEG400は「溶媒」に該当し、
カルボキシメチルセルロースナトリウムは、「カルボキシメチルセルロースナトリウム」に該当し、
l−メントール、ウイキョウ油及びユーカリ油は、「香料」に該当する。
【0036】
[比較例1]
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.02g、塩化ベンゼトニウム0.02g、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル0.2g、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油0.2g、リン酸水素ナトリウム0.18g、カルボキシメチルセルロースナトリウム0.25g、グリセリン18g及びl−メントール0.07g、を精製水に溶解して、全容量100mLとした。得られた液剤のpHは8.10であった。その後、ろ過を行い、プラスチックボトルへ充填した。
【0037】
[比較例2]
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.02g、塩化ベンゼトニウム0.02g、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル0.2g、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油0.2g及びカルボキシメチルセルロースナトリウム0.25gを精製水に溶解し、1mol/L水酸化ナトリウムでpH8.4に調整した後、精製水で全容量100mLとした。得られた液剤のpHは8.41であった。その後、ろ過を行い、プラスチックボトルへ充填した。
【0038】
[比較例3]
グアイアズレンスルホン酸ナトリウム0.02g、塩化ベンゼトニウム0.02g、ラウリル硫酸ナトリウム(イオン性界面活性剤として使用)0.3g、炭酸水素ナトリウム0.1g及びクエン酸ナトリウム0.2gを精製水に溶解し、全容量を100mLとした。得られた液剤のpHは8.24であった。その後、ろ過を行い、プラスチックボトルへ充填した。
【0039】
比較例1〜比較例3の各液剤の組成を表2に示す。













表2

合計及びpHを除く単位:g/100mL
【0040】
[試験例1]苛酷試験による液剤中のグアイアズレンスルホン酸ナトリウムの安定性の評価
本発明の実施例1〜4及び比較例1〜3の各液剤を、苛酷試験(60℃で1週間、60℃で2週間,60℃で3週間、50℃で1ヶ月間及び50℃で2ヶ月間)に付し、液剤中のグアイアズレンスルホン酸ナトリウムの残存率及び液剤のpHの保持について比較評価した。
試験は、プラスチック製スプレー容器(15mL用)に充填した各液剤(15mL)を、60℃恒温槽(DF62:Yamato株式会社)及び50℃恒温槽(LHL−110:TABAI株式会社)中で、所定の試験期間加熱することにより行った。試験期間前後に、各液剤のグアイアズレンスルホン酸ナトリウムの吸光度及びpHを測定し、グアイアズレンスルホン酸ナトリウムはその残存率を算出した。
グアイアズレンスルホン酸ナトリウムの残存率は、分光光度計(UV−2400PC:株式会社島津製作所)を用いて、各液剤の570nm(グアイアズレンスルホン酸ナトリウムの吸収スペクトル)における吸光度を試験前後において測定し、得られた測定値を用いて下記の計算式にしたがい算出した。
残存率(%)=試験後液剤の570nm吸光度/試験前液剤の570nm吸光度×100
液剤のpHは、pHメーター(株式会社堀場製作所)を用いて測定した。
結果を表3に示す。










【0041】
表3

*表中、グアイアズレンスルホン酸ナトリウムの残存率が100%をこえているのは、試験中の加熱によりプラスチック製スプレー容器から水分が蒸散した結果、液剤中でグアイアズレンスルホン酸ナトリウムが濃縮されたためである。
実施例1〜4の液剤は、何れの苛酷試験でも95%以上という高いグアイアズレンスルホン酸ナトリウムの残存率を示した。
一方、「炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも2種類の緩衝剤」を含んでいない比較例1(1種類のリン酸塩緩衝剤のみ配合)及び比較例2(本発明の緩衝剤を含まない)の液剤では、試験開始時のpHこそ本発明の要件「pH7.5以上〜9.5以下」を満たしていたものの、試験後にはpH低下により、グアイアズレンスルホン酸ナトリウムの残存率は実施例の液剤よりも著しく低くなった。
このことから、液剤中のグアイアズレンスルホン酸ナトリウムの残存率を高く維持する(安定性を高める)ためには、液剤のpHを「炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも2種類の緩衝剤」により7.5以上〜9.5以下の範囲に保持する必要があることが理解される。
また、「HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤」を含んでいない比較例3の薬剤では、グアイアズレンスルホン酸ナトリウムの残存率が実施例の液剤よりも低くなった。
【0042】
[試験例2]加速試験による液剤中のグアイアズレンスルホン酸ナトリウムの安定性の評価
本発明の実施例1〜4の各液剤を、加速試験(40℃で3ヶ月間及び40℃で6ヶ月間)に付し、液剤中のグアイアズレンスルホン酸ナトリウムの残存率及び液剤のpHの保持について比較評価した。
試験は、プラスチック製スプレー容器(15mL用)に充填した各液剤(15mL)を、40℃恒温槽(商品名PR−3ST:製造者名TABAI株式会社)中で、所定の試験期間加熱することにより行った。試験期間前後に、各液剤のグアイアズレンスルホン酸ナトリウム残存率及びpHを試験例1と同様にして測定・算出した。結果を表4に示す。

【0043】
表4


実施例1〜4の液剤は、何れの加速試験でも95%以上という高いグアイアズレンスルホン酸ナトリウムの残存率を示した。したがって、本発明のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤では、グアイアズレンスルホン酸ナトリウムが安定であるので、長期間の保存が可能であることが理解される。
【0044】
[試験例3]カルボキシメチルセルロースナトリウム配合による液剤の粘膜保留性の向上
カルボキシメチルセルロースナトリウムを配合することによる液剤の粘膜保留性の向上を、液剤中に含まれる清涼化剤に起因する「清涼感」を指標としたパネル試験により評価した。
カルボキシメチルセルロースナトリウムを配合した実施例2の液剤及び実施例10の液剤(実施例2の液剤からカルボキシメチルセルロースナトリウムを除いたものに該当)の2種類の液剤を口腔スプレー剤へと製剤化し、「清涼感の持続」について5名のパネラー(A〜E)により評価した。結果を表5に示す。
【0045】
表5

○:清涼感の持続
△:一過性の清涼感

カルボキシメチルセルロースナトリウムを配合した実施例2の液剤は、各パネラーへ持続した清涼感をもたらした。これは、カルボキシメチルセルロースナトリウムの配合により口腔内粘膜保留性が高まった液剤が口腔内粘膜上に持続的に保持されたためである。この場合、清涼化剤と共に液剤中に含まれるグアイアズレンスルホン酸ナトリウムも、清涼化剤と同様に口腔内粘膜上に持続的に保持されると考えられる。
以上より、カルボキシメチルセルロースナトリウムを本発明の液剤へ配合することにより、当該液剤の口腔内粘膜保留性を向上させ、患部において、グアイアズレンスルホン酸ナトリウムに持続的に薬効を発揮させることができることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、抗炎症剤、抗アレルギー剤、胃腸薬として利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グアイアズレンスルホン酸塩含有液剤であって、
(1)該液剤の全容量に対して0.001w/v%以上〜1w/v%未満のグアイアズレンスルホン酸塩、
(2)四級アンモニウム塩、
(3)HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤、
(4)溶媒、及び、
(5)炭酸水素塩、クエン酸塩及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも2種類の緩衝剤、
を含み、
pHが7.5以上〜9.5以下である
ことを特徴とする液剤。
【請求項2】
グアイアズレンスルホン酸塩がアズレンスルホン酸ナトリウムである、請求項1に記載のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤。
【請求項3】
四級アンモニウム塩が、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム及び塩化ベンザルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤。
【請求項4】
HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリエチレングリコール脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤。
【請求項5】
HLBが13.5より大きく20以下である非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレン(25)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40E.O.)、ポリソルベート80及びポリオキシエチレン(25)セチルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項4に記載のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤。
【請求項6】
緩衝剤が、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二水素カリウムから選ばれる少なくとも2種である、請求項1〜5のいずれかに記載のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤。
【請求項7】
緩衝剤が、
炭酸水素ナトリウムとクエン酸ナトリウムとの組み合わせ、
炭酸水素ナトリウムとクエン酸ナトリウムとリン酸水素ナトリウムとの組み合わせ、又は、
クエン酸ナトリウムとリン酸水素ナトリウムとの組み合わせ
である、請求項6に記載のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤。
【請求項8】
溶媒が、精製水、グリセリン、ソルビトール及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれかに記載のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤。
【請求項9】
pHが7.5以上〜9.5以下である、請求項1〜8のいずれかに記載のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤。
【請求項10】
更に、カルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、請求項1〜9のいずれかに記載のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤。
【請求項11】
口腔スプレー剤である、請求項10に記載のグアイアズレンスルホン酸塩含有液剤。

【公開番号】特開2007−1884(P2007−1884A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181012(P2005−181012)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(594105224)東亜薬品株式会社 (15)
【Fターム(参考)】