説明

グミキャンディ

【課題】糖アルコールを配合したグミキャンディにおいて、糖アルコールの結晶化を最小限に抑え、好ましい食感のグミキャンディを提供する。
【解決手段】糖アルコール及びショ糖脂肪酸エステルを含有するグミキャンディ。砂糖の代りに糖アルコールを用いたグミキャンディにさらにショ糖脂肪酸エステルを含有させることにより、糖アルコールの結晶化が抑制され、砂糖を使用した場合と同等に、好ましい食感が得られる。糖アルコールとしてはエリスリトールを用いることが好ましく、ショ糖脂肪酸エステルのHLBは3〜9であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグミキャンディに関し、より詳しくは糖アルコールを含有するグミキャンディに関する。
【背景技術】
【0002】
グミキャンディは、ゼラチン特有の弾力性を有し、比較的長時間、噛むことにより、食感を楽しむ菓子である。グミキャンディは一般に糖濃度が80%程度を占める高カロリーな菓子であり、長時間口腔内で咀嚼されるうちに、虫歯を発生しやすいという問題点があった。
【0003】
そのため、近年の健康ブームから、砂糖の代替として、マルチトール、ラクチトール、エリスリトール等の糖アルコールを配合してグミキャンディを製造する方法が行われている(特許文献1参照)。しかしながら、糖アルコールの種類によっては、それ自体が結晶化し易いものがあり、グミキャンディの原料として配合すると、グミキャンディ中で激しく結晶化し、グミキャンディとして好ましい弾力性のある食感が得られないという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−70704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、糖アルコールを配合しながらも、糖アルコールの結晶化を最小限に抑え、好ましい食感のグミキャンディを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、砂糖の代りに糖アルコールを用いたグミキャンディにさらにショ糖脂肪酸エステルを含有させることにより、糖アルコールの結晶化が抑制され、砂糖を使用した場合と同等に、弾力性のある好ましい食感が得られることが分かり本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、糖アルコール及びショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とするグミキャンディ、に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、糖アルコールを含有するグミキャンディにおいて、糖アルコールの結晶化を最小限に抑え、弾力があり、グミキャンディとして好ましい食感を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に特定はされるものではない。
【0010】
本発明のグミキャンディとは、煮詰めた後の固形分濃度が概ね75重量%以上90重量%以下の弾力のあるゼリー状キャンディを言う。グミキャンディには、通常、糖類の他、例えば、乳化剤、ゲル化剤、油脂、風味原料、香料、着色料、水などが含有されている。
【0011】
これらグミキャンディに含有されている材料を原材料として、グミキャンディが製造される。
【0012】
本発明のグミキャンディは、糖類として、糖アルコールを含有することを特徴とする。
糖アルコールとして具体的には、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、還元澱粉加水分解物、還元キシロオリゴ糖、パラチニット、還元分岐オリゴ糖などの糖アルコールが挙げられる。
中でも、特有の清涼感があり、カロリーゼロであり、更に非う蝕性であることから、本発明のグミキャンディには糖アルコールとして、エリスリトールを用いることが好ましい。
【0013】
糖アルコールは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、糖アルコールの1種または2種以上と砂糖、水あめなどのその他の糖類を混合して用いてもよい。
【0014】
糖アルコールの含有量は、グミキャンディ中、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、更に好ましくは30重量%以上、通常50重量%以下である。
【0015】
本発明のグミキャンディには、上記の通り、糖アルコールの他、砂糖、水あめなどのその他の糖類を含有していてもよく、この場合、糖アルコールも含めた糖類として、グミキャンディ中に、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、通常90重量%以下含有される。
【0016】
グミキャンディ中の糖アルコール、その他の糖類の含有量が上記下限以上であると甘味が良好となり、風味がよくなり、上記上限以下であると他の成分の含有量を確保して食感に優れたグミキャンディとすることができる。
【0017】
本発明のグミキャンディは、上記糖アルコールと共にショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とする。ショ糖脂肪酸エステルを含有することにより、糖アルコールの結晶化を抑制し、糖アルコールを含有するグミキャンディであっても弾力があり、グミキャンディとして好ましい食感を得ることができる。
【0018】
ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の炭素数としては、特に限定されず、通常10以上、好ましくは12以上、通常22以下、好ましくは18以下である。ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、原材料への分散性、糖アルコールの結晶化抑制効果の点から、3以上のものが好ましく、5以上のものが更に好ましく、9以下のものが好ましい。
【0019】
ショ糖脂肪酸エステルとして具体的には、「リョートーシュガーエステルS−1670」、「リョートーシュガーエステルS−1570」、「リョートーシュガーエステルS−1170」、「リョートーシュガーエステルP−1670」、「リョートーシュガーエステルP−1570」、「リョートーシュガーエステルM−1695」、「リョートーシュガーエステルO−1570」、「リョートーシュガーエステルL−1695」、「リョートーシュガーエステルLWA−1570」、「リョートーシュガーエステルS−970」、「リョートーシュガーエステルS−770」、「リョートーシュガーエステルS−570」、「リョートーシュガーエステルS−370」、「リョートーシュガーエステルS−270」、「リョートーシュガーエステルS−170」、「リョートーシュガーエステルP−170」、「リョートーシュガーエステル0−170」、「リョートーシュガーエステルL−595」、「リョートーシュガーエステルL−195」、「リョートーシュガーエステルB−370」、「リョートーシュガーエステルER−290」、「リョートーシュガーエステルER−190」、「リョートーシュガーエステルPOS−135」(以上、三菱化学フーズ社製、商品名);「DKエステルF−90」、「DKエステルF−70」、「DKエステルF−50」「DKエステルSS」「DKエステルF−160」、「DKエステルF−140」、「DKエステルF−110」(以上、第一工業製薬社製、商品名)等が挙げられる。
【0020】
ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、グミキャンディ中、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、通常5重量%以下、好ましくは3重量%、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。また、ショ糖脂肪酸エステルの含有量は、グミキャンディ中の糖アルコールの含有量に対して、好ましくは1.0重量%以上で、好ましくは5.0重量%以下である。ショ糖脂肪酸エステルの含有量が上記上限を超えるとグミキャンディ自体が白濁する恐れがあり、下限を下回ると十分な結晶化抑制ができない恐れがある。
【0021】
本発明のグミキャンディには、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステルなどのショ糖脂肪酸エステル以外の脂肪酸エステルおよびレシチンなどの乳化剤の1種または2種以上を含有していてもよい。
【0022】
ゲル化剤としては、ゲル形成能を有する素材であればよく、ゼラチン、ペクチン、カラギーナン、寒天、タマリンド、アラビアガム、ヒドロキシメチルセルロース、プルラン、ローカストビーンガム、グアガム、カラヤガム、ジェランガム、カードラン、トラガントガム、アラビノガラクランなどが挙げられる。これらのゲル化剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。ゲル化剤は、グミキャンディ中の含有量で通常10重量%以下、例えば5重量%以上8重量%以下用いられる。グミキャンディ中のゲル化剤の含有量が上記下限以上で上記上限以下であることにより、グミキャンディとして良好な食感を得ることができる。
【0023】
油脂としては、カカオ脂やパーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サンフラワー油等の植物油脂、ラード、牛脂、鰯油、乳脂肪等の動物油脂、またはこれらの精製加工油脂などが挙げられる。これらの油脂は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。本発明のグミキャンディが油脂を含む場合、グミキャンディ中の油脂の含有量は、通常10重量%以下である。油脂を配合することにより、口当たりの滑らかさが良好となるが、保形性や味覚、風味を良好とするために、油脂の含有量は上記上限以下であることが好ましい。
【0024】
風味原料としては、果汁、野菜汁、乳製品(加糖全脂練乳などの練乳、バター、バターファット、生クリーム、濃縮クリーム、チーズ、ヨーグルトなど)、クエン酸等の酸味料などが挙げられる。本発明のグミキャンディ中の風味原料の含有量は、通常0.5重量%以上、好ましくは2%重量以上、通常10重量%以下、好ましくは5%重量以下である。
【0025】
香料としては、ソーダ香料、グレープフルーツ香料などが挙げられる。香料を用いる場合、本発明のグミキャンディ中の香料の含有量は、通常10重量%以下である。
【0026】
着色料としては、カロチン色素、アナトー色素、パプリカ色素、コチニール色素、クチナシ色素、ベニバナ色素、ベニコウジ色素、ビートレッド、アカネ色素、スピルリナ色素、アントシアニン色素、カラメル、銅クロロフィル等の天然色素の他、食用タール色素などの1種または2種以上が挙げられる。着色料を用いる場合、本発明のグミキャンディ中の着色料の含有量は、通常10重量%以下である。
【0027】
次に、本発明のグミキャンディの製造方法について具体的に説明する。
本発明のグミキャンディの製造方法は、原材料として糖類として糖アルコール、および、ショ糖脂肪酸エステルを配合すればよく、その他は通常のグミキャンディの製造方法と同様である。
【0028】
一例を挙げるならば、糖アルコール、及び、水あめなどの糖類、水を混合し、常圧下または減圧下にて加熱する。例えば、常圧下の場合には110〜120℃程度に加熱する。その後、80〜100℃、例えば100℃まで放冷後、ここに予め水で膨潤させ、加温溶解させたゼラチンなどのゲル化剤、及び、クエン酸等の風味原料、ショ糖脂肪酸エステルなどのその他の原材料を加える。クエン酸を用いる場合、クエン酸は50重量%程度の水溶液にして加えることが望ましい。また、ショ糖脂肪酸エステルも20〜50重量倍程度の水に溶解分散させてから加えることが望ましい。
【0029】
上記のようにして得られた均一な混合液を、更に加熱することにより所定の糖濃度まで煮詰める。このグミキャンディ液をモルドに流し入れ、グミキャンディが十分固まったことを確認後、モルドから抜き取ることで、グミキャンディを得る。
【0030】
なお、本発明のグミキャンディの糖度については特に制限はないが、通常Brix計で測定される糖度として75〜85%程度であることが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0032】
以下において、「部」とは「重量部」を表す。
【0033】
[実施例1]
糖類として、糖アルコールであるエリスリトール(商品名:エリスリトール、三菱化学フーズ社製)27部、水あめ(明治屋製、糖度82%)36部、及び、水16部を混合し、撹拌しつつ110℃程度まで加熱した。その後、これを80℃まで放冷した。これに、予めゲル化剤としてゼラチン(商品名:APH−250、新田ゼラチン社製)5.7部に水8部を加え膨潤させ、更に80℃で溶解させたものを添加した。そして、50%クエン酸水溶液1.3部、濃縮果汁(商品名:ストロベリー濃縮果汁BX51、湘南香料社製)5部、HLBが5であるショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルS−570、ショ糖ステアリン酸エステル、三菱化学フーズ社製)0.5部を水20部に溶解分散させたものをさらに添加した。これを更に加熱し、糖度80%、水分含有量20重量%(固形分濃度80重量%)に調整した。
【0034】
得られたグミキャンディ液をガラス容器に入れ、更に80℃の恒温水槽に入れることにより、脱泡し、その後、モルドに充填した。1日後、モルドから抜き出し、目視観察、および、その味覚について官能試験を行った。
得られたグミキャンディには、結晶が見られず、弾力があり、好ましい食感であった。
【0035】
[実施例2]
HLBが5であるショ糖脂肪酸エステルに代えて、HLBが3であるショ糖脂肪酸エステル(商品名:リョートーシュガーエステルS−370、ショ糖ステアリン酸エステル、三菱化学フーズ社製)を配合した以外は実施例1と同様にしてグミキャンディを製造し、目視観察および官能試験を行った。
得られたグミキャンディには、多少の結晶が析出しており、実施例1で得られたグミキャンディよりは弾力が多少小さかったが、グミキャンディとしては十分に好ましい食感であった。
【0036】
[比較例1]
ショ糖脂肪酸エステルを配合しない以外は実施例1と同様にしてグミキャンディを製造し、目視観察および官能試験を行った。
その結果、グミキャンディ液をモルドに入れてしばらくした後、グミキャンディ表面に白いエリスリトール結晶が析出していることが観察された。
得られたグミキャンディは、弾力がなく折り曲げることができなかった。また、食感はサクサクしておりグミキャンディとしては好ましくなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖アルコール及びショ糖脂肪酸エステルを含有することを特徴とする、グミキャンディ。
【請求項2】
該糖アルコールが、エリスリトールであることを特徴とする、請求項1に記載のグミキャンディ。
【請求項3】
該ショ糖脂肪酸エステルのHLBが、3〜9であることを特徴とする、請求項1または2に記載のグミキャンディ。

【公開番号】特開2012−105603(P2012−105603A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258038(P2010−258038)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(593204214)三菱化学フーズ株式会社 (45)
【Fターム(参考)】