グラビア版とこれを用いた発光層、正孔注入層の形成方法および有機発光デバイス
【課題】 均一な厚膜の発光層や正孔注入層を所望のパターンで形成するためのグラビア版と、これを用いた発光層や正孔注入層の形成方法と、高品質な表示が可能で信頼性が高い有機発光デバイスを提供する。
【解決手段】 有機発光デバイスの発光層および/または正孔注入層の形成に用いるグラビア版を、セルがストライプ形状の場合に、各セルにおける印刷方向の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aが0.6以上であり、各セルのセル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが0.8〜100の範囲であり、前記セル部長Lが10〜500μmの範囲、前記非セル部長Sが2〜500μmの範囲であり、版深が20〜200μmの範囲とし、また、セルが複数に区画された形状の場合には、各セルにおける印刷方向の最大幅bと印刷方向に直交する方向での最大幅aの比b/aが0.6以上であり、成膜部位に占める総セル面積が55〜95%であり、前記非セル部長Sが2〜500μmの範囲であり、版深が20〜200μmの範囲とする。
【解決手段】 有機発光デバイスの発光層および/または正孔注入層の形成に用いるグラビア版を、セルがストライプ形状の場合に、各セルにおける印刷方向の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aが0.6以上であり、各セルのセル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが0.8〜100の範囲であり、前記セル部長Lが10〜500μmの範囲、前記非セル部長Sが2〜500μmの範囲であり、版深が20〜200μmの範囲とし、また、セルが複数に区画された形状の場合には、各セルにおける印刷方向の最大幅bと印刷方向に直交する方向での最大幅aの比b/aが0.6以上であり、成膜部位に占める総セル面積が55〜95%であり、前記非セル部長Sが2〜500μmの範囲であり、版深が20〜200μmの範囲とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光デバイスを構成する発光層や正孔注入層をグラビアオフセット印刷法で形成するためのグラビア版と、発光層や正孔注入層の形成方法と有機発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機のエレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機発光素子)は、自発光により視認性が高いこと、液晶ディスプレーと異なり全固体ディスプレーであること、温度変化の影響をあまり受けないこと、視野角が大きいこと等の利点をもっており、近年、フルカラー表示装置、エリアカラー表示装置、照明等の有機発光デバイスとして実用化が進んでいる。
有機発光素子には、発光層を構成する有機発光材料が低分子タイプのものと高分子タイプのものとがあり、例えば、高分子タイプの発光層は、有機発光材料を含有する発光層用インキを使用して種々の印刷方式、あるいはインクジェット方式により製造することができる。
【0003】
このような例として、粘度が100〜60000cPでチキソトロピー性の有機発光材料含有インキを用いて、凹版からシリコンブランケットに受理させ、その後、枚葉の基板に転移させるオフセット印刷方式により発光層を形成する方法がある(特許文献1)。
また、水分溶解度が5重量%以下の溶媒に有機発光材料を含有させたインキを用い、凹版からブランケットに受理させ、その後、基板に転移させるオフセット印刷方式により発光層を形成する方法がある(特許文献2)。
また、有機発光材料を含有するインキをグラビアロールを介してシリコンブランケット表面に供給して塗布膜を形成し、この塗布膜に凸版を押圧し、押圧部位の塗布膜を除去し、その後、シリコンブランケット表面に残った塗布膜を被形成面に転写して発光層を形成する方法がある(特許文献3)。
【0004】
さらに、有機発光材料を含有するインキと、このインキに用いる溶剤に浸漬したときの体積変化率が40%以下であるシリコーンエラストマーからなるブランケットとを使用し、インキを凹版の凹部からブランケットに転移させ、さらに、基板上に転写させる凹版オフセット印刷方式により発光層を形成する方法がある(特許文献4)。
このような発光層の形成方法は、正孔注入層の形成にも使用される。
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−291587号公報
【特許文献3】特開2004−178915号公報
【特許文献4】特開2003−308973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のようなグラビア版、凹版を用いた従来の発光層、正孔注入層の形成方法では、比較的高粘度のインキを使用するので、ドクターブレードによる凹版の凹部へのインキ充填に際し、掻き残しや厚みムラが生じやすく、均一な厚みの発光層形成が困難であった。このような問題を解消するためにインキを低粘度化すると、インキの低濃度化をきたし、しかもインキの転移量が低く、70nm以上の厚みの発光層や、50nm以上の厚みの正孔注入層の形成が困難であった。また、シリコンブランケットにインキが浸透し易く、このため形成された発光層、正孔注入層の表面が粗くなるとともに、シリコンブランケットの耐刷力が低下するという問題があった。
一方、有機発光材料や正孔注入材料を含有するインキをスピンコート法で基板上に塗布、乾燥することにより、均一な厚みの発光層、正孔注入層を形成することができる。しかし、スピンコート法を用いて所望のパターン形状の発光層や正孔注入層を形成するには、フォトリソグラフィー法との組み合わせが必要であり工程が複雑となり、また、インキの使用効率が低いという問題があった。これに対して、インクジェット方式では、パターン形状での発光層や正孔注入層の形成が容易であるが、吐出されたインキの流動性や表面張力等の制御が不十分であると、均一な厚みの発光層、正孔注入層を形成することが困難であった。
【0006】
さらに、従来のフルカラー、あるいはエリアカラーの表示装置としての有機発光デバイスは、上述のような発光層、正孔注入層の厚みムラ、厚み不足により、輝度、効率が不十分であり表示品質の向上に限界があり、信頼性も低いものであった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、均一な厚膜の発光層や正孔注入層を所望のパターンで形成するためのグラビア版と、これを用いた発光層や正孔注入層の形成方法と、高品質な表示が可能で信頼性が高い有機発光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明は、有機発光デバイスの発光層および/または正孔注入層の形成に用いるグラビア版において、セルがストライプ形状であり、各セルにおける印刷方向の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aが0.6以上であり、各セルのセル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが0.8〜100の範囲であり、前記セル部長Lが10〜500μmの範囲、前記非セル部長Sが2〜500μmの範囲であり、版深が20〜200μmの範囲であるような構成とした。
【0008】
本発明は、有機発光デバイスの発光層および/または正孔注入層の形成に用いるグラビア版において、セルが複数に区画された形状であり、各セルにおける印刷方向の最大幅bと印刷方向に直交する方向での最大幅aの比b/aが0.6以上であり、成膜部位に占める総セル面積が55〜95%であり、非セル部長Sが2〜500μmの範囲であり、版深が20〜200μmの範囲であるような構成とした。
【0009】
また、本発明は、対向する電極と、該電極間に配設され少なくとも発光層を有する発光素子層と、を備えた有機発光デバイスの発光層形成方法において、少なくとも有機発光材料を含有する発光層用インキをグラビア版のセルに充填させ、該セルからブランケットに発光層用インキを受理させた後、前記ブランケット上の発光層用インキを発光層被形成面に転移する工程を有し、前記グラビア版は上述の本発明のグラビア版であり、前記ブランケットは表面張力が35dyne/cm以上である樹脂フィルムを表面層として備えるものであり、前記発光層用インキはせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5〜200cPの範囲であり、前記発光層用インキに用いる溶媒は表面張力が40dyne/cm以下で、かつ、沸点が150〜250℃の範囲であるような構成とした。
【0010】
本発明の他の態様として、前記樹脂フィルムの厚みは、5〜200μmの範囲であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケットは、ブランケット胴の周面に前記樹脂フィルムを一体的に備えるものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケットは、グラビア版から発光層用インキを受理する位置と発光層用インキを発光層被形成面に転移する位置とを少なくとも含む範囲において、回転するブランケット胴に巻き付く状態で前記樹脂フィルムが搬送されるものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケット胴は、表面にクッション層を備えるような構成とした。
【0011】
本発明の他の態様として、前記発光層用インキにおける前記有機発光材料の含有量は、1.5〜4.0重量%の範囲であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記グラビア版は、複数のセルによって1つのエリアカラー用の絵柄が構成されるものであり、1つの絵柄幅を200μm以上とするような構成とした。
本発明の他の態様として、複数組のグラビア版とブランケットを用いて発光色が異なる複数の発光層を連続して形成するような構成とした。
本発明の他の態様として、グラビア版を軸方向に複数に区画し、各区画毎に任意の発光層用インキを供給して、発光色が異なる複数の発光層を同時に形成するような構成とした。
【0012】
また、本発明は、対向する電極と、該電極間に配設され少なくとも正孔注入層と発光層を有する発光素子層と、を備えた有機発光デバイスの正孔注入層形成方法において、少なくとも正孔注入材料を含有する正孔注入層用インキをグラビア版のセルに充填させ、該セルからブランケットに正孔注入層用インキを受理させた後、前記ブランケット上の正孔注入層用インキを正孔注入層被形成面に転移する工程を有し、前記グラビア版は上述の本発明のグラビア版であり、前記ブランケットは表面張力が35dyne/cm以上である樹脂フィルムを表面層として備えるものであり、前記正孔注入層用インキはせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が1〜100cPの範囲で、かつ、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)が40dyne/cm以下であり、前記正孔注入層用インキに用いる溶媒は水とアルコール系溶媒との混合溶媒であり、前記アルコール系溶媒は沸点が250℃以下であり、混合溶媒中の前記アルコール系溶媒含有量は5〜70重量%の範囲であるような構成とした。
【0013】
本発明の他の態様として、前記樹脂フィルムの厚みは、5〜200μmの範囲であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケットは、ブランケット胴の周面に前記樹脂フィルムを一体的に備えるものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケットは、グラビア版から正孔注入層用インキを受理する位置と正孔注入層用インキを正孔注入層被形成面に転移する位置とを少なくとも含む範囲において、回転するブランケット胴に巻き付く状態で前記樹脂フィルムが搬送されるものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケット胴は、表面にクッション層を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記正孔注入層用インキにおける前記正孔注入材料の含有量は、0.3〜10.0重量%の範囲であるような構成とした。
【0014】
本発明の有機発光デバイスは、透明基材と、該透明基材上に所望のパターンで形成された透明電極層と、前記透明基材上に形成され前記電極層の所望の部位が露出する複数の開口部を有する絶縁層と、前記開口部内の前記透明電極層を被覆するように形成され少なくとも発光層と正孔注入層を有する発光素子層と、所望の前記開口部内に位置する前記発光素子層と接続するように形成された電極層と、を備え、前記発光素子層の発光層は、上述の本発明の発光層形成方法により形成されたものであり、前記発光素子層の正孔注入層は、上述の本発明の正孔注入層形成方法により形成されたものであるような構成とした。
【0015】
また、本発明の有機発光デバイスは、基材と、該基材上に所望のパターンで形成された電極層と、前記基材上に形成され前記電極層の所望の部位が露出する複数の開口部を有する絶縁層と、前記開口部内の前記電極層を被覆するように形成され少なくとも発光層と正孔注入層を有する発光素子層と、所望の前記開口部内に位置する前記発光素子層と接続するように形成された透明電極層と、を備え、前記発光素子層の発光層は、上述の本発明の発光層形成方法により形成されたものであり、前記発光素子層の正孔注入層は、上述の本発明の正孔注入層形成方法により形成されたものであるような構成とした。
【0016】
本発明の他の態様として、前記発光素子層を構成する前記発光層の厚みが70nm以上であり、前記正孔注入層の厚みが50nm以上であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記発光素子層は、少なくとも正孔注入層/発光層/電子注入層がこの順に積層されたものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、パッシブマトリックス型であるような構成とした。
本発明の他の態様として、アクティブマトリックス型であるような構成とした。
本発明の他の態様として、最大開口幅が10mm以上の前記開口部を前記絶縁層に備えた有機発光ポスターであるような構成とした。
本発明の他の態様として、カラーフィルタ層を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記カラーフィルタ層と前記透明電極との間に色変換蛍光体層を備えるような構成とした。
【0017】
本発明の他の態様として、前記発光素子層は、白色を含む所望の色の発光であるか、あるいは所望の複数の色の発光が所定のパターンで組み合わされたものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記発光素子層は、青色発光であり、前記色変換蛍光体層は青色光を緑色蛍光に変換して発光する緑色変換層と、青色光を赤色蛍光に変換して発光する赤色変換層とを備えているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記正孔注入層用の塗膜を形成した後1分以内に前記発光層用の塗膜を形成し、これら2層を100〜200℃の範囲で同時に一括乾燥して形成した正孔注入層と発光層とを備えるような構成とした。
【発明の効果】
【0018】
本発明のグラビア版は、発光層や正孔注入層を均一な厚みで、かつ、所望の厚みで形成することができる。
また、本発明の発光層の形成方法は、発光層を均一な厚みで、かつ、70nm以上の厚膜として形成することができ、また、各発光色毎の発光層を所望のパターンで形成することができる。また、本発明の正孔注入層の形成方法は、正孔注入層を均一な厚みで、かつ、50nm以上の厚膜として所望のパターンで形成することができる。そして、樹脂フィルム基材のような可撓性を有する基材への発光層や正孔注入層の形成も可能であるとともに、ブランケットの耐刷力が極めて高く、有機発光デバイスの製造コスト低減も可能である。
また、本発明の有機発光デバイスは、発光素子層の発光層と正孔注入層が本発明の方法で製造されているので、発光層や正孔注入層が均一な厚膜であり、発光素子層の発光時の輝度、効率が高く、高品質の表示が可能であるとともに、信頼性の高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
[グラビア版]
本発明のグラビア版は、有機発光デバイスの発光層および/または正孔注入層の形成に用いるグラビア版である。
図1は、本発明のグラビア版の一実施形態を説明するための図である。本発明のグラビア版1は、セル2がストライプ形状であり、各セル2の間には非セル部3が存在する。そして、各セル2(斜線を付した部位)の幅(セル部長L)と、非セル部3の幅(非セル部長S)との比L/Sが0.8〜100、好ましくは1〜60の範囲であり、セル2の幅(セル部長L)が10〜500μm、好ましくは30〜300μmの範囲、非セル部3の幅(非セル部長S)が2〜500μm、好ましくは5〜200μmの範囲であり、セル2の深さ(版深)が20〜200μm、好ましくは30〜100μmの範囲である。
【0020】
また、本発明のグラビア版1は、図2(A)〜図2(C)に示されるように、各セル2(斜線を付した部位)における印刷方向(図の矢印Pが示す方向)の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aが0.6以上、好ましくは0.8以上であり上限には特に制限はない。尚、本発明において印刷方向とは、グラビア版の回転方向と同義である。
上記のセル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが0.8未満であると、厚膜形成が困難となり、100を超えると、グラビア版のセル形成が困難となり、また膜厚のバラツキが大きくなり好ましくない。また、セル2の幅(セル部長L)が10μm未満であると、厚膜形成が困難であり、500μmを超えると、膜厚のバラツキが大きくなり好ましくない。また、非セル部3の幅(非セル部長S)が2μm未満であると、グラビア版のセル形成が困難であり、500μmを超えると、膜厚のバラツキが大きく、また厚膜形成が困難となり好ましくない。
【0021】
また、セル2の深さ(版深)が20μm未満であると、厚膜形成が困難となり、200μmを超えるような版深としても、形成する塗膜の厚みは増加しない。さらに、比b/aが0.6未満であると、厚膜形成が困難となり、後述する発光層の形成において70nm以上の厚みの発光層の形成が困難となり、また、正孔注入層の形成において50nm以上の厚みの正孔注入層の形成が困難となり好ましくない。
【0022】
図3は、本発明のグラビア版の他の実施形態を説明するための図である。図3に示されるグラビア版11は、セル12が複数に区画された形状(図示例では、各セル12は正方形)であり、各セル12の間には非セル部13が存在する。また、図4は、本発明のグラビア版の他の実施形態を説明するための図である。図4に示されるグラビア版11は、セル12が複数に区画された形状であり、各セル12は菱形であり、各セル12の間には非セル部13が存在する。さらに、図5は、本発明のグラビア版の他の実施形態を説明するための図である。図5に示されるグラビア版11は、セル12が複数に区画された形状であり、各セル12は楕円形であり、各セル12の間には非セル部13が存在する。
【0023】
上記の図3〜図5に示されるグラビア版11は、各セル12(斜線を付した部位)における印刷方向(図の矢印Pが示す方向)の最大幅bと印刷方向に直交する方向での最大幅aの比b/aが0.6以上、好ましくは0.8以上であり上限には特に制限はない。また、成膜部位に占める総セル面積が55〜95%、好ましくは60〜90%であり、非セル部13の幅(非セル部長S1,S2)が2〜500μm、好ましくは10〜200μmの範囲であり、セル12の深さ(版深)が20〜200μm、好ましくは30〜100μmの範囲である。
【0024】
上記の比b/aが0.6未満であると、厚膜形成が困難となり、後述する発光層の形成において70nm以上の厚みの発光層の形成が困難となり、また、正孔注入層の形成において50nm以上の厚みの正孔注入層の形成が困難となり好ましくない。また、成膜部位に占める総セル面積が55%未満であると、厚膜形成が困難となり、95%を超えると、膜厚のバラツキが大きくなり好ましくない。また、非セル部13の幅(非セル部長S1,S2)が2μm未満であると、グラビア版のセル形成が困難であり、500μmを超えると、膜厚のバラツキが大きくなり、かつ厚膜形成が困難となり好ましくない。また、セル12の深さ(版深)が20μm未満であると、厚膜形成が困難となり、200μmを超えるような版深としても、形成する塗膜の厚みは増加しない。
尚、上述のグラビア版のセル形状は例示であり、これらの限定されるものではない。
【0025】
[発光層、正孔注入層の形成方法]
図6は、本発明の発光層、正孔注入層の形成方法を説明するための図である。図6において、印刷ユニット21を構成するインキパン27内の発光層用インキ30、あるいは正孔注入層用インキ30′は、回転するグラビア版1(11)の表面に供給され、ドクターブレード28で不要なインキ30,30′が掻き取られ、セル2(12)内にのみインキ30,30′が供給される。このセル2(12)内のインキ30,30′は、ブランケット22に受理され、その後、圧胴26上を搬送されている基材41の発光層あるいは正孔注入層の被形成面41Aに転移される。この基材41は、乾燥ゾーン29に送られ、インキ30,30′が乾燥されて発光層31、あるいは正孔注入層31′が形成される。
【0026】
このような本発明では、グラビア版1(11)として、上述の本発明のグラビア版を使用する。尚、ここでのグラビア版の説明は省略する。
また、本発明では、ブランケット22として、表面張力が35dyne/cm以上、好ましくは35〜65dyne/cmの範囲である樹脂フィルム23を、ブランケット胴24の表面に表面層として備えるものを使用する。
本発明で使用する発光層用インキ30は、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5〜200cP、好ましくは20〜150cPの範囲であり、使用している溶媒の表面張力が40dyne/cm以下、好ましくは20〜37dyne/cmの範囲であり、かつ、沸点が150〜250℃、好ましくは170〜230℃の範囲のものである。
【0027】
さらに、本発明で使用する正孔注入層用インキ30′は、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が1〜100cP、好ましくは3〜30cPの範囲で、かつ、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)が40dyne/cm以下、好ましくは35dyne/cm以下であり下限には特に制限はない。また、正孔注入層用インキ30′に用いる溶媒は水とアルコール系溶媒との混合溶媒であり、アルコール系溶媒は沸点が60〜250℃の範囲であり、混合溶媒中のアルコール系溶媒含有量は5〜70重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲のものである。
【0028】
(樹脂フィルム)
上述のブランケット22の表面層を構成する樹脂フィルム23の表面張力が35dyne/cm未満であると、グラビア版1(11)からのインキ受理性が低下し、厚みが均一な発光層31、正孔注入層31′の形成が困難となる。尚、樹脂フィルム23の表面張力(固体の表面張力[γs])の測定は、2種以上の表面張力が判っている液体(標準物質)を使用して、自動接触角計(協和界面科学(株)製 DropMaster 700型)にて接触角θを測定し、γs(固体の表面張力)=γL(液体の表面張力)cosθ+γSL(固体の液体の表面張力)の式に基づいて求める。
【0029】
使用する樹脂フィルム23としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、易接着タイプのポリエチレンテレフタレートフィルム、コロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、コロナ処理を施したポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、易接着タイプのポリエチレンナフタレートフィルム、ポリノルボルネンフィルム、メラミン焼付けポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂フィルムを挙げることができる。樹脂フィルム23の厚みは、例えば、5〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲とすることができる。樹脂フィルム23の厚みが5μm未満であると、フィルム加工性、ブランケット胴24への装着性が低下して好ましくない。また、樹脂フィルム23の厚みが200μmを超えると、硬度が高くなりすぎ、柔軟性が低下して好ましくない。
【0030】
尚、図示例では、ブランケット胴24は、表面層である樹脂フィルム23の下層としてクッション層24aを備えている。このクッション層24aの硬度は、例えば、20〜80°の範囲とすることができ、厚みは、例えば、0.1〜30mmの範囲とすることができる。尚、上記の硬度は、JIS(K6253)デュロメータ硬さ試験によるTypeA硬度である。
【0031】
また、図6に示される例では、樹脂フィルム23は、ブランケット胴24に一体的に装着されたものであるが、図7に示されるように、ブランケット胴24に巻き付くように樹脂フィルム23がブランケット胴24の回転とともに搬送されるようにしてもよい。この場合、グラビア版1(11)からインキ30、30′を受理する位置(矢印aで示される位置)と、インキ30、30′を被形成面41Aに転移する位置(矢印bで示される位置)と、を少なくとも含む範囲において、ブランケット胴24に樹脂フィルム23を巻き付かせる必要がある。このような樹脂フィルム23は、図示しない供給ロールからブランケット胴24上に搬送供給され、図示しない巻上げローラに巻き上げられるようにすることができる。また、樹脂フィルム23をエンドレスフィルムの形状とし、図示していないローラとブランケット胴24との間の無限軌道上を搬送するようにしてもよい。
【0032】
また、本発明では、グラビア版を板状としてもよく、図8は、このような実施形態の例を示す図である。図8に示される例では、まず、板状のグラビア版1′(11′)の表面にインキ30、30′を供給し、図示しないドクターブレードで不要なインキ30、30′を掻き取ることによりセル2′(12′)内にのみインキ30、30′を供給する。次いで、このセル2′(12′)内のインキ30、30′は、ブランケット22に受理され、その後、板状の基材41の被形成面41Aに転移され、乾燥されて発光層、あるいは正孔注入層が形成される。また、圧胴26上を搬送されている基材41の被形成面41Aにインキ30、30′を転移し乾燥して発光層、あるいは正孔注入層を形成してもよい。
【0033】
(発光層用インキ)
本発明で使用する発光層用インキ30のせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5cP未満であると、インキダレが生じたり、所望の厚みの発光層の形成が困難となる。一方、200cPを超えると、グラビア版1(11)のセル目による凹凸大きくなり、均一な厚みの発光層の形成が困難となる。尚、上記の粘度測定は、Physica社製の粘弾性測定装置MCR301型により、測定温度23℃で定常流測定モードにより行うものとする。また、発光層用インキ30は、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)V1と、せん断速度1000/秒における粘度(インキ温度23℃)V2との比(V1/V2)が0.9〜1.5程度となり、ほぼニュートン流動を示すことが好ましい。
【0034】
また、発光層用インキ30に使用している溶媒の表面張力が40dyne/cmを超えると、グラビア版1(11)からの発光層用インキ30の受理性が低下して好ましくない。さらに、発光層用インキ30の溶媒の沸点が150℃未満であると、ブランケット22を構成する樹脂フィルム23から基材41の発光層被形成面41Aに転移された発光層用インキ30が直ちに乾燥して、発光層31にスジが発生し易くなる。また、250℃を超えると、乾燥が困難となり、乾燥ゾーン29での乾燥による基材41等への影響が生じたり、溶剤の残留を生じることがあり好ましくない。尚、溶媒の表面張力の測定は、協和界面科学(株)製の表面張力計CBVP−Z型により、液温20℃で行うものとする。
【0035】
発光層用インキ30に用いる有機発光材料としては、例えば、下記のような色素系、金属錯体系、高分子系のものを挙げることができる。
(1)色素系発光材料
シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等が挙げられる。
【0036】
(2)金属錯体系発光材料
アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポリフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属にAl、Zn、Be等、または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体が挙げられる。
【0037】
(3)高分子系発光材料
ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。
発光層用インキ30における上述のような有機発光材料の含有量は、例えば、1.5〜4.0重量%の範囲で設定することができる。
【0038】
また、発光層用インキ30に用いる溶媒としては、表面張力が上記の範囲(40dyne/cm以下)を満足し、かつ、沸点が上記の範囲(150〜250℃)を満足するもの、例えば、クメン、アニソール、n−プロピルベンゼン、メシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、リモネン、p−シメン、o−ジクロロベンゼン、ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、安息香酸メチル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、アミルベンゼン、テトラリン、安息香酸エチル、フェニルヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸ブチル等を単独で使用することができる。また、混合溶媒を使用する場合には、混合比に応じた割合で計算した表面張力と沸点が上記の範囲を満足するものを使用する。例えば、表面張力がAdyne/cm、沸点がB℃の溶媒1と、表面張力がCdyne/cm、沸点がD℃の溶媒2とを3:7の重量比で混合した混合溶媒の場合、混合比に応じた割合で計算した表面張力[(A×3/10)+(C×7/10)]が上記の範囲(40dyne/cm以下)を満足し、かつ、混合比に応じた割合で計算した沸点[(B×3/10)+(D×7/10)]が上記の範囲(150〜250℃)を満足することが必要となる。したがって、混合溶媒を構成する個々の溶媒は、表面張力と沸点が上記の範囲から外れるものであってもよい。
【0039】
(正孔注入層用インキ)
本発明で使用する正孔注入層用インキ30′のせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が1cP未満であると、インキダレが生じたり、所望の厚みの正孔注入層の形成が困難となる。一方、100cPを超えると、グラビア版1(11)のセル目による凹凸大きくなり、均一な厚みの正孔注入層の形成が困難となる。尚、上記の粘度測定は、上述の発光層用インキの粘度測定と同様である。また、正孔注入層用インキ30′の2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)が40dyne/cmを超えると、グラビア版1(11)のセル目による凹凸大きくなり、均一な厚みの正孔注入層の形成が困難となる。上記の動的表面張力の測定は、液中に気泡を発生させ、液体からその気泡にかかる圧力から表面張力を測定する方法(最大泡圧法)により行うものであり、SITA t60/2(SITA Messtechnik GmbH社製)を用い、測定温度23℃で気泡を2Hz周期にて発生させたときの動的表面張力値を読み取るものとする。
【0040】
尚、正孔注入層用インキ30′は、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)V1と、せん断速度1000/秒における粘度(インキ温度23℃)V2との比(V1/V2)が0.9〜1.3程度となり、さらに、正孔注入層用インキ30′は、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)を10Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)で除した値が0.8〜1.1程度となり、ほぼニュートン流動を示すことが好ましい。
正孔注入層用インキ30′に用いる水とアルコール系溶媒との混合溶媒において、使用するアルコール系溶媒は沸点が250℃以下、例えば、60〜250℃のものである。沸点が250℃を超えると、乾燥が困難となり、乾燥ゾーン29での乾燥による基材41等への影響が生じたり、溶剤の残留を生じることがあり好ましくない。また、混合溶媒中のアルコール系溶媒の含有量が5重量%未満であると、セル目による凹凸やはじきが生じて均一な膜厚を得ることが困難であり、70重量%を超えると、インキ中に凝集物が生じやすくなり好ましくない。
【0041】
正孔注入層用インキ30′に用いる正孔注入材料としては、例えば、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー等の誘電性高分子オリゴマー等、を挙げることができる。
【0042】
さらに、正孔注入材料として、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物を挙げることもできる。上記のポリフィリン化合物としては、ポリフィン、1,10,15,20−テトラフェニル−21H、23H−ポリフィン銅(II)、アルミニウムフタロシアニンクロリド、銅オクタメチルフタロシアニン等を挙げることができる。また、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−[4(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、4,4′,4″−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン等を挙げることができる。
正孔注入層用インキ30′における上述のような正孔注入材料の含有量は、例えば、0.3〜10.0重量%の範囲で設定することができる。
【0043】
また、正孔注入層用インキ30′の混合溶媒に用いるアルコール系溶媒としては、沸点が上記の範囲(250℃以下、例えば、60〜250℃)を満足するものであり、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブタノール、n−プロパノール、sec−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,3−ブチレングリコール、1−ブトキシエトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタジオール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート等を例示することができ、これらを単独で使用することができる。また、2種以上のアルコール系溶媒を使用する場合には、混合比に応じた割合で計算した沸点が上記の範囲を満足するものを使用する。例えば、沸点がA℃の溶媒1と、沸点がB℃の溶媒2とを3:7の重量比で混合した混合溶媒の場合、混合比に応じた割合で計算した沸点[(A×3/10)+(B×7/10)]が上記の範囲(250℃以下、例えば、60〜250℃)を満足することが必要となる。したがって、混合溶媒を構成する個々のアルコール系溶媒は、沸点が上記の範囲から外れるものであってもよい。
【0044】
また、本発明の発光層の形成方法では、グラビア版1(11)に形成するセル2(12)を、複数のセルによって1つのエリアカラー用の絵柄が構成されるようにしてもよい。図9は、上述のグラビア版11を例として示すものであり、複数(図示例では15個)のセル12により絵柄(鎖線で示す形状)が構成される。この場合、1つの絵柄幅Wは200μm以上、好ましくは300μm以上とすることができる。尚、絵柄幅Wは、グラビア版11の回転方向(図9に矢印aで示した方向)に直交する方向の最小幅である。絵柄幅Wが200μm未満であると、絵柄のエッジ付近の厚み変動が10%以上となり好ましくない。また、上述のグラビア版1を使用しても、同様に、エリアカラー用の絵柄で発光層を形成することができる。
【0045】
また、本発明の発光層の形成方法では、複数組のグラビア版とブランケットを用いて発光色が異なる複数の発光層を連続して形成してもよい。図10は、このような例を示すものであり、赤発光層形成用のグラビア版1R(11R)と、ブランケット22、圧胴26を備えたユニット21R、緑発光層形成用のグラビア版1G(11G)と、ブランケット22、圧胴26を備えたユニット21G、青発光層形成用のグラビア版1B(11B)と、ブランケット22、圧胴26を備えたユニット21Bとを備えている。各ユニット21R,21G,21Bは、上述の印刷ユニット21と同様であり、各ユニット21R,21G,21Bのインキパン27には、対応する赤色発光層用インキ30R、緑色発光層用インキ30G、青色発光層用インキ30Bが供給されている。そして、基材41の発光層被形成面41A側に対して、ユニット21R,21G,21Bの順で連続して赤色発光層用インキ30R、緑色発光層用インキ30G、青色発光層用インキ30Bを転移させ、その後、乾燥することにより、赤色発光層31R、緑色発光層31G、青色発光層31Bを形成することができる。尚、各発光層の形成パターン等は任意に設定することができ、形成順序は上記の順に限定されるものではない。
【0046】
また、本発明の発光層の形成方法では、グラビア版1(11)を軸方向に複数に区画し、各区画毎に任意の発光層用インキを供給して、発光色が異なる複数の発光層を同時に形成してもよい。図11は、このような例を、上述のグラビア版11を例として説明するための図面であり、グラビア版11を軸方向(矢印b方向)に3つ(11G,11R,11B)に区画し、各区画にはエリアカラー用の絵柄を形成するための複数のセル12が形成されている。そして、緑色発光層用インキ、赤色発光層用インキ、青色発光層用インキを、それぞれ、区画11G,11R,11Bに供給(例えば、ディスペンサー方式)し、上述のように、基材41の発光層被形成面41A側に対して、赤色発光層用インキ、緑色発光層用インキ、青色発光層用インキを同時に転移させ、その後、乾燥することにより、エリアカラー絵柄である赤色発光層31R、緑色発光層31G、青色発光層31Bを形成することができる。尚、絵柄のパターン、寸法、位置関係等は任意に設定することができる。また、上述のグラビア版1を使用しても、同様に、エリアカラー絵柄である赤色発光層31R、緑色発光層31G、青色発光層31Bを形成することができる。
【0047】
尚、上述の実施形態におけるブランケット22は、グラビア版1(11)と圧胴26の回転方向に対し順方向回転であるが、形成する発光層、正孔注入層のパターンに応じて、逆方向回転としてもよい。また、基材41は枚葉であってもよく、グラビア版1(11)への発光層用インキ30、正孔注入層用インキ30′の供給は、インキパン27を使用せずにディスペンサー等を用いてもよい。
【0048】
[有機発光デバイス]
図12は、本発明の有機発光デバイスの一実施形態を示す部分断面斜視図である。図12において、有機発光デバイス51は、透明基材52と、この透明基材52上に矢印a方向に延設さられた帯状パターンの複数の透明電極層53と、ストライプ形状の開口部55を有する絶縁層54と、各透明電極層53上に位置するストライプ形状の開口部55内の透明電極層53を被覆するように配設された発光素子層56と、この発光素子層56上に透明電極層53と直交するように矢印b方向に延設された帯状パターンの複数の電極層60とを備えている。
上記の絶縁層54の開口部55は、矢印a方向に沿ったストライプ形状の開口部であり、各透明電極層53上に位置している。
【0049】
また、発光素子層56は、各開口部55内の透明電極層53を被覆するように配設された正孔注入層57と発光層58と電子注入層59とからなる。図示例では、発光層58は、帯状パターンの赤色発光層58R、緑色発光層58G、青色発光層58Bが、この順で矢印b方向に繰り返し配列されている。尚、正孔注入層57と発光層58、電子注入層59が、開口部55の周縁の絶縁層54に乗り上げるように形成されたものであってもよい。
このような有機発光デバイス51は、帯状パターンの透明電極層53と電極層60とが交差する部位が発光領域となるパッシブマトリックス型であり、発光素子層56の正孔注入層57と発光層58は、本発明の正孔注入層、発光層の形成方法により形成されたものである。このため、正孔注入層57の厚みが50nm以上であり、また、発光層58の厚みが70nm以上であり、発光素子層56の発光時の輝度、効率が高く、高品質の表示が可能である。また、開口部55の周縁の絶縁層54に乗り上げるように発光素子層56を形成した場合には、発光素子層56を挟持する位置に存在する透明電極層53と電極層60との短絡を生じることがなく、信頼性が更に高いものである。
【0050】
次に、本発明の有機発光デバイス51の各構成部材について説明する。
有機発光デバイス51を構成する透明基材52は、通常、観察者側の表面に設けられ、発光層58からの光を観察者が容易に視認することができる程度の透明性を有するものである。尚、後述するように、発光層58からの光を取り出す方向を反対方向とする場合には、透明基板52に替えて不透明な基板を使用してもよい。
透明基板52(これに替わる不透明な基板も含む)としては、ガラス材料、樹脂材料、または、これらの複合材料からなるもの、例えば、ガラス板に保護プラスチックフィルムもしくは保護プラスチック層を設けたもの等が用いられる。
【0051】
上記の樹脂材料、保護プラスチック材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。この他の樹脂材料であっても、有機発光デバイス用として使用できる高分子材料であれば、使用可能である。
透明基板52の厚さは、通常、50μm〜1.1mm程度である。
【0052】
このような透明基板52においては、その用途にもよるが、水蒸気や酸素等のガスバリアー性の良好なものであれば更に好ましい。また、透明基板52に、水蒸気や酸素等のガスバリアー層を形成してもよい。このようなガスバリアー層としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機酸化物をスパッタリング法や真空蒸着法等の物理蒸着法により形成したものであってよい。
また、有機発光デバイス51を構成する透明電極層53は、図示例では陽極であり、発光層58に正電荷(正孔)を注入するために、正孔注入層57に隣接して配設されている。尚、透明電極層53は陰極であってもよく、この場合、発光素子層56を構成する正孔注入層57と電子注入層59とが入れ替わって配設される。
【0053】
透明電極層53は、通常の有機発光デバイスに使用されるものであれば特に限定されず、金属、合金、これらの混合物等を使用することができ、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛、酸化第二錫、または金等の薄膜電極材料を挙げることができる。中でも、正孔が注入し易いように、仕事関数の大きい(4eV以上)透明、または半透明材料であるITO、IZO、酸化インジウム、金が好ましい。
透明電極層53は、シート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、材質にもよるが、透明電極層53の厚みは、例えば、0.005〜1μm程度とすることができる。
この透明電極層53は、周辺の端子部から中央の画素領域まで所望のパターン形状で配設されている。このようなパターン形状の透明電極層53は、スパッタリング法や真空蒸着法等によりメタルマスクを用いてパターン形状、または、全面に成膜した後、感光性レジストをマスクとしてエッチングすることにより形成される。
【0054】
有機発光デバイス51を構成する絶縁層54は、各透明電極層53上に位置するストライプ形状の開口部55を有している。この絶縁層54は、例えば、透明電極層53を覆うように全面に感光性樹脂材料を塗布し、パターン露光、現像を行って形成したり、熱硬化性樹脂材料を用いて形成することができ、この絶縁層54が形成された部分は非発光部となる。絶縁層54の厚みは、絶縁層54を構成する樹脂固有の絶縁抵抗に応じて適宜設定できるが、例えば、0.05〜5.0μm程度とすることができる。また、上述の樹脂材料にカーボンブラックや、チタン窒化物、チタン酸化物、チタン酸窒化物等のチタン系黒色顔料の1種、あるいは2種以上の遮光性微粒子を混合することにより、ブラックマトリックスを形成して絶縁層54としてもよい。
尚、このような絶縁層54の形状は、上述の形状に限定されるものではない。
【0055】
有機発光デバイス51を構成する発光素子層56は、図示例では、透明電極層53側から正孔注入層57、発光層58、および電子注入層59が積層された構造であるが、正孔注入層57と発光層58とからなる構造、発光層58と電子注入層59からなる構造、さらに、正孔注入層57と発光層58との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層58と電子注入層59との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
また、発光波長を調整したり、発光効率を向上させる等の目的で、上記の各層に適当な材料をドーピングすることもできる。
【0056】
発光素子層56の発光層58は、図示例では、赤色発光層58R、緑色発光層58G、青色発光層58Bからなっているが、有機発光デバイスの使用目的等に応じて、所望の発光色(例えば、黄色、水色、オレンジ色)である発光層を単独で、また、赤色発光、緑色発光、青色発光以外の他の複数の発光色の所望の組み合わせ等、いずれであってもよい。
発光素子層56の正孔注入層57に用いる正孔注入材料、および、発光層58に用いる有機発光材料は、上述の本発明の正孔注入層、発光層の形成方法で挙げた正孔注入材料、有機発光材料を使用することができる。
発光素子層56の各層に用いるドーピング材料、正孔輸送材料、電子注入材料等は、下記に例示するような無機材料、有機材料いずれでもよい。発光素子層56の各層の厚みは特に制限はなく、例えば、10〜1000nm程度とすることができる。
【0057】
(ドーピング材料)
ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポリフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等が挙げられる。
【0058】
(正孔輸送材料)
オキサジアゾール系、オキサゾール系、トリアゾール系、チアゾール系、トリフェニルメタン系、スチリル系、ピラゾリン系、ヒドラゾン系、芳香族アミン系、カルバゾール系、ポリビニルカルバゾール系、スチルベン系、エナミン系、アジン系、トリフェニルアミン系、ブタジエン系、多環芳香族化合物系、スチルベン二量体等が挙げられる。
また、π共役系高分子として、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(P−フェニレン)、ポリ(P−フェニレンスルフィド)、ポリ(P−フェニレンオキシド)、ポリ(1,6−ヘプタジエン)、ポリ(P−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレン)、ポリ(2,5−ピロール)、ポリ(m−フェニレンスルフィド)、ポリ(4,4′−ビフェニレン)等が挙げられる。
また、電荷移動高分子錯体として、ポリスチレン・AgC104、ポリビニルナフタレン・TCNE、ポリビニルナフタレン・P−CA、ポリビニルナフタレン・DDQ、ポリビニルメシチレン・TCNE、ポリナフタアセチレン・TCNE、ポリビニルアントラセン・Br2、ポリビニルアントラセン・I2、ポリビニルアントラセン・TNB、ポリジメチルアミノスチレン・CA、ポリビニルイミダゾール・CQ、ポリ−P−フェニレン・I2、ポリ−1−ビニルピリジン・I2、ポリ−4−ビニルピリジン・I2、ポリ−P−1−フェニレン・I2、ポリビニルピリジウム・TCNQ等が挙げられ、さらに、電荷移動低分子錯体として、TCNQ−TTF等が、高分子金属錯体としては、ポリ銅フタロシアニン等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、イオン化ポテンシャルの小さい材料が好ましく、特に、ブタジエン系、エナミン系、ヒドラゾン系、トリフェニルアミン系が好ましい。
【0059】
(電子注入材料)
カルシウム、バリウム、アルミリチウム、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ニトロ置換フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、上記のオキサジアゾール環の酸素原子をイオウ原子に置換したチアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有したキノキサリン誘導体、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−キノリノール誘導体の金属錯体、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ジスチリルピラジン誘導体等を挙げることができる。
【0060】
発光素子層56を構成する各層の形成は、正孔注入層57、発光層58については、上述の本発明の形成方法により形成する。また、正孔注入層57と発光層58の形成を、正孔注入層用の塗膜を形成した後1分以内に発光層用の塗膜を形成し、これら2層を100〜200℃の範囲で同時に一括乾燥して形成することにより行うこともできる。
また、電子注入層59は、画像表示領域に相当する開口部を備えたマスク(周辺部の透明電極層53からなる電極端子への成膜を防止するためのマスク)を介して真空蒸着法等により成膜して形成することができる。また、スクリーン印刷法等の印刷方法により電子注入層59を形成することもできる。
【0061】
有機発光デバイス51を構成する電極層60は、図示例では陰極であり、発光層58に負電荷(電子)を注入するために、電子注入層59に隣接して配設されている。尚、電極層60は陽極であってもよく、この場合、発光素子層56を構成する正孔注入層57と電子注入層59とが入れ替わって配設される。
このような電極層60の材料としては、通常の有機発光デバイスに使用されるものであれば特に限定されず、上述の透明電極層53と同様に、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛、酸化第二錫、または金等の薄膜電極材料、さらに、マグネシウム合金(例えば、MgAg等)、アルミニウムまたはその合金(AlLi、AlCa、AlMg等)、銀等を挙げることができる。中でも、電子が注入し易いように仕事関数の小さい(4eV以下)マグネシウム合金、アルミニウム、銀等が好ましい。このような電極層60はシート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、このため、電極層60の厚みは、例えば、0.005〜0.5μm程度とすることができる。
上記の電極層60は、上述の電極材料を用いてマスクを介したスパッタリング法や真空蒸着法等の方法によりパターン形状に成膜して形成することができる。
【0062】
本発明の有機発光デバイスは、例えば、上述の有機発光デバイス51において、電極層60を透明な電極層とすることにより、光を取り出す方向を反対方向とした有機発光デバイスが可能である。この場合、基材52は透明でなくてもよく、また、透明電極層53は不透明な電極層であってもよい。
【0063】
また、本発明の有機発光デバイスは、アクティブマトリックス型であってもよい。図13および図14は、アクティブマトリックス型の本発明の有機発光デバイスの一例を説明するための図である。図13は電極配線パターンを示す図であり、透明基材(図示せず)上に形成された電極配線パターン73は、信号線73A、走査線73B、TFT(薄膜トランジスタ)73C、透明電極(画素電極)層73Dからなる。また、これらの電極配線パターン73を被覆するように絶縁層74(図13で斜線を付した部位)が形成されており、この絶縁層74は、各透明電極層73D上に位置する開口部75を備えている。また、絶縁層74には、各開口部75内の透明電極層73Dを被覆するように発光素子層(図示せず)が形成され、この発光素子層上に電極(共通電極)層(図示せず)が配設される。
【0064】
上記の発光素子層は、絶縁層74と各開口部75内の透明電極層73Dとを被覆するように配設された正孔注入層と、開口部75内の透明電極層73D(正孔注入層)を被覆するように各開口部75毎に配設された複数の発光層と、これらを被覆するように配設された電子注入層と、から構成することができる。図14は、絶縁層74の開口部75と発光層との関係を示す図である。図14では、発光層は、開口部75よりも大きい所望のパターン形状の赤色発光層78R、緑色発光層78G、青色発光層78Bからなっている。
【0065】
このようなアクティブマトリックス型の本発明の有機発光デバイスも、正孔注入層と発光層(赤色発光層78R、緑色発光層78G、青色発光層78B)は、本発明の形成方法により形成されたものである。このため、正孔注入層の厚みが50nm以上であり、また、発光層(赤色発光層78R、緑色発光層78G、青色発光層78B)の厚みが70nm以上であり、発光素子層の発光時の輝度、効率が高く、高品質の表示が可能である。また、開口部75の周縁の絶縁層74に乗り上げるように発光素子層を形成した場合、発光素子層を挟持する位置に存在する透明電極層73Dと電極層(図示せず)との短絡を生じることがなく、信頼性が更に高いものとなる。
尚、上記の発光素子層は、上述の実施形態と同様に、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層とからなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0066】
図15は、本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分斜視図であり、図16は図15に示される有機発光デバイスのA−A線における断面図である。図15および図16において、有機発光デバイス81は、透明基材82と、この透明基材82上に長方形状に形成された透明電極層83と、ひし形開口部85aと長方形状開口部85bとを有する絶縁層84と、各開口部85a、85b内の透明電極層83を被覆するように配設された発光素子層86と、この発光素子層86を被覆するように形成された電極層90とを備えている。
上記の発光素子層86は、積層配設された正孔注入層87、発光層88、電子注入層89からなっている。尚、発光素子層86が各開口部85a、85bの周縁の絶縁層84に乗り上げるように形成されたものであってもよい。
【0067】
このような有機発光デバイス81は、各開口部85a、85bが存在する部位が表示領域となるエリアカラー表示であり、例えば、各開口部85a、85bの最大開口幅を10mm以上に設定して有機発光ポスターとしての使用が可能である。有機発光デバイス81を構成する正孔注入層87と発光層88は、本発明の形成方法により形成されたものである。このため、正孔注入層87の厚みが50nm以上であり、また、発光層88の厚みが70nm以上であり、発光素子層86の発光時の輝度、効率が高く、高品質の表示が可能である。また、開口部85a、85bの周縁の絶縁層84に乗り上げるように発光素子層86を形成した場合、発光素子層86を挟持する位置に存在する透明電極層83と電極層90との短絡を生じることがなく、信頼性が更に高いものとなる。
【0068】
尚、各開口部85a、85bに位置する各発光層の発光色が異なるものであってもよく、さらに、各開口部85a、85b上に配設される電極層90を電気的に独立したものとして、各発光層毎に発光できるようにしてもよい。
また、上記の発光素子層86は、上述の実施形態と同様に、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層からなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0069】
図17は、本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分断面図である。図17に示される有機発光デバイス91は、透明基材92と、この透明基材92上に設けられた帯状パターンの赤色着色層93R、緑色着色層93G、青色着色層93Bからなるカラーフィルタ層93と、このようなカラーフィルタ層93を覆うように配設された透明平滑化層95と、この透明平滑化層95上に、上述の実施形態の有機発光デバイス51と同様に形成された帯状パターンの複数の透明電極層53と、各透明電極層53上にストライプ形状の開口部55が位置するように配設された絶縁層54と、各開口部55内の透明電極層53を被覆するように配設された発光素子層56と、この発光素子層56上に透明電極層53と直交するように延設された帯状パターンの複数の電極層60とを備えている。
【0070】
上記の帯状パターンの複数の透明電極層53は、帯状パターンの赤色着色層93R、緑色着色層93G、青色着色層93B上に位置するものである。また、発光素子層56は、各開口部55内の透明電極層53を被覆するように配設された正孔注入層57と、開口部55内の透明電極層53(正孔注入層57)を被覆するように各開口部55毎に配設された複数の発光層58と、これらを被覆するように配設された電子注入層59と、からなる。図示例では、発光層58は、帯状パターンの白色発光層である。尚、発光素子層56を開口部55の周縁の絶縁層54に乗り上げるように形成したものであってもよい。
【0071】
このような有機発光デバイス91は、カラーフィルタ層93と透明平滑化層95とを備え、発光層58が白色発光層である点を除いて、上述の有機発光デバイス51と同様である。したがって、同様の部材には、同じ部材番号を付し、ここでの説明は省略する。尚、上記の発光素子層56は、上述の実施形態と同様に、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層とからなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0072】
上記のカラーフィルタ層93は、発光素子層56からの光を色補正したり、色純度を高めるものである。カラーフィルタ層93を構成する赤色着色層93R、緑色着色層93G、青色着色層93Bは、発光素子層56の発光特性に応じて適宜材料を選択することができ、例えば、顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂、反応性化合物および溶媒を含有する顔料分散組成物で形成することができる。このようなカラーフィルタ層93の厚みは、各着色層の材料、有機EL素子層の発光特性等に応じて適宜設定することができ、例えば、1〜3μm程度の範囲で設定することができる。
【0073】
また、透明平滑化層95は、カラーフィルタ層93以下の構成により段差(表面凹凸)が存在する場合に、この段差を解消して平坦化を図り、発光素子層56の厚みムラ発生を防止する平坦化作用をなす。このような透明平滑化層95は、透明(可視光透過率50%以上)樹脂により形成することができる。具体的には、アクリレート系、メタクリレート系の反応性ビニル基を有する光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂を使用することができる。また、透明樹脂として、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等を使用することができる。
このような透明平滑化層95の厚みは、使用する材料を考慮し、平坦化作用が発現できる範囲で設定することができ、例えば、1〜5μm程度の範囲で適宜設定することができる。
【0074】
また、図18は、本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分断面図である。図18に示される有機発光デバイス101は、透明基材102と、この透明基材102上に設けられた帯状パターンの赤色着色層103R、緑色着色層103R、青色着色層103Bからなるカラーフィルタ層103と、このようなカラーフィルタ層103の赤色着色層103R、緑色着色層103R、青色着色層103Bを覆うように帯状パターンの赤色変換蛍光体層104R(青色光を赤色蛍光に変換する層)、緑色変換蛍光体層104G(青色光を緑色蛍光に変換する層)、青色変換ダミー層104B(青色光をそのまま透過する層)からなる色変換蛍光体層104が設けられ、さらに、これらを覆うように配設された透明平滑化層105と、この透明平滑化層105上に、上述の実施形態の有機発光デバイス51と同様に形成された帯状パターンの複数の透明電極層53と、各透明電極層53上にストライプ形状の開口部55が位置するように配設された絶縁層54と、各開口部55内の透明電極層53を被覆するように配設された発光素子層56と、この発光素子層56上に透明電極層53と直交するように延設された帯状パターンの複数の電極層60とを備えている。
【0075】
上記の帯状パターンの複数の透明電極層53は、帯状パターンの赤色変換蛍光体層104R、緑色変換蛍光体層104G、青色変換ダミー層104B上に位置するものである。また、発光素子層56は、各開口部55内の透明電極層53を被覆するように配設された正孔注入層57、発光層58、電子注入層59とからなる。図示例では、発光層58は、帯状パターンの青色発光層である。尚、発光素子層56は、開口部55の周縁の絶縁層54に乗り上げるようなものであってもよい。
【0076】
このような有機発光デバイス101は、カラーフィルタ層103と色変換蛍光体層104と透明平滑化層105とを備え、発光層58が青色発光層である点を除いて、上述の有機発光デバイス51と同様である。したがって、同様の部材には、同じ部材番号を付し、ここでの説明は省略する。また、カラーフィルタ層103、透明平滑化層105は、上述のカラーフィルタ層93、透明平滑化層95と同様であり、ここでの説明は省略する。尚、上記の発光素子層56は、上述の実施形態と同様に、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層とからなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0077】
上記の赤色変換蛍光体層104Rおよび緑色変換蛍光体層104Gは、蛍光色素単体からなる層、あるいは、樹脂中に蛍光色素を含有した層である。青色発光を赤色蛍光に変換する赤色変換蛍光体層104Rに使用する蛍光色素としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン等のシアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル]−ピリジウム−パークロレート等のピリジン色素、ローダミンB、ローダミン6G等のローダミン系色素、オキサジン系色素等が挙げられる。また、青色発光を緑色蛍光に変換する緑色変換蛍光体層104Gに使用する蛍光色素としては、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジノ(9,9a,1−gh)クマリン、3−(2′−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2′−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン等のクマリン色素、ベーシックイエロー51等のクマリン色素系染料、ソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116等のナフタルイミド色素等が挙げられる。さらに、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料等の各種染料も蛍光性があれば使用することができる。上述のような蛍光色素は単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。赤色変換蛍光体層104Rおよび緑色変換蛍光体層104Gが樹脂中に蛍光色素を含有したものである場合、蛍光色素の含有量は、使用する蛍光色素、色変換蛍光体層の厚み等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、使用する樹脂100重量部に対し0.1〜1重量部程度とすることができる。
【0078】
また、青色変換ダミー層104Bは、発光素子層56で発光された青色光をそのまま透過してカラーフィルタ層103に送るものであり、赤色変換蛍光体層104R、緑色変換蛍光体層104Gとほぼ同じ厚みの透明樹脂層とすることができる。
赤色変換蛍光体層104Rおよび緑色変換蛍光体層104Gが樹脂中に蛍光色素を含有したものである場合、樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等の透明(可視光透過率50%以上)樹脂を使用することができる。また、色変換蛍光体層104のパターン形成をフォトリソグラフィー法により行う場合、例えば、アクリル酸系、メタクリル酸系、ポリケイ皮酸ビニル系、環ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト樹脂を使用することができる。さらに、これらの樹脂は、上述の青色変換ダミー層104Bに使用することができる。
【0079】
色変換蛍光体層104を構成する赤色変換蛍光体層104Rと緑色変換蛍光体層104Gは、蛍光色素単体で形成する場合、例えば、所望のパターンマスクを介して真空蒸着法、スパッタリング法により帯状に形成することができる。また、樹脂中に蛍光色素を含有した層として形成する場合、例えば、蛍光色素と樹脂とを分散、または可溶化させた塗布液をスピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布して成膜し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングする方法、上記の塗布液をスクリーン印刷法等でパターン印刷する方法等により赤色変換蛍光体層104Rや緑色変換蛍光体層104Gを形成することができる。また、青色変換ダミー層104Bは、所望の感光性樹脂塗料をスピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布して成膜し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングする方法、所望の樹脂塗布液をスクリーン印刷法等でパターン印刷する方法等により形成することができる。
【0080】
このような色変換蛍光体層104の厚みは、赤色変換蛍光体層104Rおよび緑色変換蛍光体層104Gが発光素子層56で発光された青色光を十分に吸収し蛍光を発生する機能が発現できるものとする必要があり、使用する蛍光色素、蛍光色素濃度等を考慮して適宜設定することができ、例えば、10〜20μm程度とすることができ、赤色変換蛍光体層104Rと緑色変換蛍光体層104Gとの厚みが異なる場合があってもよい。
青色発光である有機発光材料としては、例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、芳香族ジメチリディン系化合物等を挙げることができる。
【0081】
具体的には、2−2′−(p−フェニレンジビニレン)−ビスヘンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系; 2−[2−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾイミダゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニル]ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系; 2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4′−ビス(5,7−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、2−[2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト[1,2−d]オキサゾール等のベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤を挙げることができる。
また、上記の金属キレート化オキシノイド化合物としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ[f]−8−キノリノール)亜鉛等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピントリジオン等を挙げることができる。
【0082】
また、上記のスチリルベンゼン系化合物としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−エチルベンゼン等を挙げることができる。
また、上記のジスチリルピラジン誘導体としては、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ナフチル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(4−ビフェニル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ピレニル)ビニル]ピラジン等を挙げることができる。
【0083】
また、上記の芳香族ジメチリディン系化合物としては、1,4−フェニレンジメチリディン、4,4−フェニレンジメチリディン、2,5−キシレンジメチリディン、2,6−ナフチレンジメチリディン、1,4−ビフェニレンジメチリディン、1,4−p−テレフェニレンジメチリディン、9,10−アントラセンジイルジルメチリディン、4,4′−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、4,4′−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等、およびその誘導体を挙げることができる。
【0084】
さらに、発光層の材料として、一般式(Rs−Q)2−AL−O−Lで表される化合物も挙げることができる(上記式中、ALはベンゼン環を含む炭素原子6〜24個の炭化水素であり、O−Lはフェニラート配位子であり、Qは置換8−キノリノラート配位子であり、Rsはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個以上結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート置換基を表す)。具体的には、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラーフェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
尚、上述の実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、カラーフィルタ層93,103の非形成部位にブラックマトリックスを備えるものであってもよい。
【実施例】
【0085】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
セル部長Lを10〜500μm、非セル部長Sを2〜500μmの範囲で変更することにより、セル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが下記表1の範囲となるようにして、ストライプ状のセル(セルの深さ35μm)が印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)に沿って形成された10種の板状のグラビア版(G1−A〜G1−J)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであった。
【0086】
また、下記組成の赤色発光層用のインキA1を調製した。このインキA1のせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を、Physica社製の粘弾性測定装置MCR301型により定常流測定モードで測定した結果、80cPであった。また、溶媒として使用するメシチレンとテトラリンの表面張力を、協和界面科学(株)製の表面張力計CBVP−Z型により、液温20℃で測定した。
(赤色発光層用のインキA1の組成)
・ポリフルオレン誘導体系の赤色発光材料 … 2.5重量%
(分子量:300,000)
・溶媒(メシチレン:テトラリン=50:50の混合溶媒)… 97.5重量%
(混合溶媒の表面張力=32dyne/cm、沸点=186℃)
(メシチレンの表面張力=28dyne/cm、沸点=165℃)
(テトラリンの表面張力=35.5dyne/cm、沸点=207℃)
【0087】
また、下記組成の正孔注入層用のインキB1を調製した。このインキB1のせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を上記のインキA1と同様に測定した結果、15cPであった。また、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)をSITA t60/2(SITA Messtechnik GmbH社製)を用いて測定した結果、30dyne/cmであった。
(正孔注入層用のインキB1の組成)
・PEDOT(ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン)/PSS
(ポリスチレンスルフォネート)(混合比=1/20) … 70重量%
(バイエル社製 Baytron PCH8000)
・混合溶媒 … 30重量%
(水:イソプロピルアルコール(沸点82.4℃)=70:30)
【0088】
また、樹脂フィルムとして、易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を準備した。尚、このフィルムの表面張力は、2種以上の表面張力が判っている液体(標準物質)を使用して、自動接触角計(協和界面科学(株)製 DropMaster 700型)にて接触角θを測定し、γs(樹脂フィルムの表面張力)=γL(液体の表面張力)cosθ+γSL(樹脂フィルムと液体の表面張力)の式に基づいて求めた。
次いで、直径12cm、胴幅30cmのブランケット胴(表面にクッション層(硬度70°)を備える)の周面に、上記の樹脂フィルムを装着してブランケットを作製した。尚、クッション層の硬度はJIS(K6253)デュロメータ硬さ試験によるTypeA硬度である。
【0089】
次に、上記の各グラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、グラビア版に上記の赤色発光層用のインキA1、正孔注入層用のインキB1をそれぞれ供給し、ブレードを用いて不要なインキを除去して、セル内にインキを充填した。次いで、基材として、洗浄処理と紫外線プラズマ洗浄を施したガラス基板を準備し、グラビア版からブランケットにインキを受理させ、その後、ブランケットからガラス基板上にインキを転移させることによって、赤色発光層の形成、および正孔注入層の形成を行った。尚、印刷速度は1000mm/秒であり、乾燥は120℃に設定したホットプレート上で1時間とした。
【0090】
上記のように、セル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを測定して、結果を下記の表1に示した。尚、赤色発光層や正孔注入層の厚みは、セイコーインスツルメンツ(株)製のNanopics 1000を使用し、この装置標準のコンタクトモード用カンチレバーを用いて、測定エリア100μm、スキャンスピード90sec/frameで測定した。
【0091】
【表1】
表1に示されるように、セル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが0.8〜100の範囲であるグラビア版G1−B〜G1−Iを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0092】
[実施例2]
セル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが1〜10の範囲となるように、セル部長Lと非セル部長Sを、下記表2に示される数値に設定して、ストライプ状のセル(セルの深さ35μm)が印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)に沿って形成された9種の板状のグラビア版(G2−A〜G2−I)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであった。
このグラビア版を使用した他は、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、セル部長Lと非セル部長Sが異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表2に示した。
【0093】
【表2】
表2に示されるように、セル部長Lが10〜500μmの範囲で、かつ、非セル部長Sが2〜500μmの範囲であるグラビア版G2−A〜G2−C、G2−F、G2−Gを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0094】
[実施例3]
セル部長Lが120μm、非セル部長Sが30μmで、比L/Sが4であるストライプ状のセルが印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)に沿って形成され、版深が下記の表3に示されるものである7種の板状のグラビア版(G3−A〜G3−G)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであった。
このグラビア版を使用した他は、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、版深が異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表3に示した。
【0095】
【表3】
表3に示されるように、版深が20〜200μmの範囲であるグラビア版G3−B〜G3−Fを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0096】
[実施例4]
セル部長Lが120μm、非セル部長Sが30μmで、比L/Sが4であるストライプ状のセル(セルの深さ35μm)を、各セルにおける印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aが下記の表4に示される値となるように作製した6種の板状のグラビア版(G4−A〜G4−F)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであった。
このグラビア版を使用した他は、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、比b/aが異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表4に示した。
【0097】
【表4】
表4に示されるように、比b/aが0.6以上であるグラビア版G4−B〜G4−Fを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0098】
[実施例5]
セル部長Lを100μm、非セル部長Sを25μmとし、各セルの長辺が印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)に対する角度を適宜設定して、格子形状に配列された長方形の複数のセル(深さ35μm)を備え、各セルにおける印刷方向の最大幅bと印刷方向に直交する方向での最大幅aの比b/aが下記の表5に示される値となるように作製した6種の板状のグラビア版(G5−A〜G5−F)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであり、成膜部位に占める総セル面積は68〜72%であった。
このグラビア版を使用した他は、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、比b/aが異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表5に示した。
【0099】
【表5】
表5に示されるように、比b/aが0.6以上であるグラビア版G5−B〜G5−Fを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0100】
[実施例6]
格子形状に配列された長方形(200μm×100μm)のセル(深さ35μm)を、非セル部長Sを10〜500μmの範囲で変化させることにより、成膜部位に占める総セル面積率が下記の表6に示される値となるように作製した6種の板状のグラビア版(G6−A〜G6−F)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであった。また、各セルの長辺は印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)に対して0°の方向であり、各セルの印刷方向の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aは2であった。
このグラビア版を使用した他は、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、総セル面積率が異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表6に示した。
【0101】
【表6】
表6に示されるように、総セル面積率が55〜95%の範囲であるグラビア版G6−B〜G6−Eを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0102】
[実施例7]
非セル部長Sが25μmとなるように格子形状に配列された長方形(200μm×100μm)のセルが、各セルの長辺が印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)と平行(各セルの印刷方向の最大幅bと印刷方向に直交する方向での最大幅aの比b/aは2)となるように形成され、版深が下記の表7に示されるものである6種の板状のグラビア版(G7−A〜G7−F)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであり、成膜部位に占める総セル面積は64%であった。
このグラビア版を使用した他は、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、版深が異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表7に示した。
【0103】
【表7】
表7に示されるように、版深が20〜200μmの範囲であるグラビア版G7−B〜G7−Eを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0104】
[実施例8]
セル部長Lが120μm、非セル部長Sが30μmで、比L/Sが4であるストライプ状のセル(深さ35μm)が印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)に沿って形成された板状のグラビア版(G8)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであった。
また、樹脂フィルムとして、表面張力が異なる下記の5種の樹脂フィルム(F1〜F5)を準備した。
(樹脂フィルム)
・F1 :ポリプロピレンフィルム(東レ(株)製 トレファンBOタイプ2500)、
厚み50μm、表面張力30dyne/cm
・F2 :メラミン焼付けポリエチレンテレフタレートフィルム(パナック(株)製
PET100SG−1)、厚み100μm、表面張力35dyne/cm
・F3 :ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 T60)、
厚み75μm、表面張力38dyne/cm
・F4 :ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人(株)製 Q51)、
厚み75μm、表面張力45dyne/cm
・F5 :易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 U10)、
厚み100μm、表面張力60dyne/cm
【0105】
次いで、実施例1と同様のブランケット胴の周面に、上記の各樹脂フィルム(F1〜F5)を装着して5種のブランケットを作製した。
次に、上記のグラビア版と各ブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、表面張力が異なる樹脂フィルムを装着したブランケットを使用した赤色発光層の形成時、および正孔注入層の形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表8に示した。
【0106】
【表8】
表8に示されるように、樹脂フィルムの表面張力が35dyne/cm以上であるブランケットF2〜F5を使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0107】
[実施例9]
実施例1で使用した赤色発光層用のインキA1をもとに、下記の表9に示される沸点の混合溶媒を使用した8種の赤色発光層用のインキ(A1−1〜A1−8)を調製した。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。尚、混合溶媒の表面張力は40dyne/cm以下であり、せん断速度100/秒におけるインキ粘度(インキ温度23℃)は5〜200cPの範囲内であった。
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
【0108】
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各赤色発光層用のインキ(A1−1〜A1−8)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に赤色発光層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、沸点が異なる溶媒を用いた赤色発光層用のインキ(8種)を使用しての赤色発光層形成時の印刷適性を観察し、また、赤色発光層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表9に示した。
【0109】
【表9】
表9に示されるように、沸点が150〜250℃の範囲の溶媒を用いたインキ(A1−3〜A1−7)を使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層を形成できることが確認された。
【0110】
[実施例10]
実施例1で使用した赤色発光層用のインキA1をもとに、下記の表10に示される表面張力の混合溶媒を使用した8種の赤色発光層用のインキ(A2−1〜A2−8)を調製した。尚、混合溶媒の沸点は150〜250℃の範囲内であり、せん断速度100/秒におけるインキ粘度(インキ温度23℃)は5〜200cPの範囲内であった。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
【0111】
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各赤色発光層用のインキ(A2−1〜A2−8)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に赤色発光層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、表面張力が異なる溶媒を用いた赤色発光層用のインキ(8種)を使用しての赤色発光層形成時の印刷適性を観察し、また、赤色発光層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表10に示した。
【0112】
【表10】
表10に示されるように、表面張力が40dyne/cm以下の溶媒を用いたインキ(A2−1〜A2−7)を使用することにより、実用レベルの赤色発光層(厚み70nm以上)を形成できることが確認された。
【0113】
[実施例11]
実施例1で使用した赤色発光層用のインキA1をもとに、赤色発光材料の含有量を2〜3重量%の範囲で適宜変更し、また、混合溶媒のメシチレンとテトラリンの混合比を変えることにより表面張力を25〜40dyne/cmの範囲で、沸点を150〜250℃の範囲で適宜変更して、下記表11に示されるように、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を3cP〜250cPまで振った12種の赤色発光層用のインキA3−1〜A3−12を調製した。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。
【0114】
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各赤色発光層用のインキ(A3−1〜A3−12)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に赤色発光層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、粘度が異なる赤色発光層用のインキ(12種)を使用した赤色発光層の形成時の印刷適性を観察し、また、赤色発光層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表11に示した。
【0115】
【表11】
表11に示されるように、インキ粘度が5〜200cPであるインキ(A3−2〜A3−11)を使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層を形成できることが確認された。
【0116】
[実施例12]
実施例1で使用した正孔注入層用のインキB1をもとに、沸点が下記の表12に示すようなアルコール系溶媒を用いて、7種の正孔注入層用のインキB1−1〜B1−7を調製した。尚、これらのインキのせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)は1〜100cPの範囲であり、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)は40dyne/cm以下であった。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。
【0117】
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各正孔注入層用のインキ(B1−1〜B1−7)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に正孔注入層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、アルコール系溶媒の沸点が異なる正孔注入層用のインキ(7種)を使用した正孔注入層の形成時の印刷適性を観察し、また、正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表12に示した。
【0118】
【表12】
表12に示されるように、使用するアルコール系溶媒の沸点が250℃以下であるインキ(B1−2〜B1−6)を使用することにより、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0119】
[実施例13]
実施例1で使用した正孔注入層用のインキB1をもとに、PEDOTとPSSの配合比は変えずに、これらの含有量を0.3〜10重量%の範囲で適宜変更し、また、混合溶媒の水とイソプロピルアルコール(IPA)の混合比を95:5〜30:70の範囲(IPA含有量5〜70重量%)で適宜変更して、下記表13に示されるように、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)を25〜70dyne/cmの範囲で振った6種の正孔注入層用のインキB2−1〜B2−6を調製した。尚、これらのインキのせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)は1〜100cPの範囲であった。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。
【0120】
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各正孔注入層用のインキ(B2−1〜B2−6)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に正孔注入層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、2Hzにおける動的表面張力が異なる正孔注入層用のインキ(6種)を使用した正孔注入層の形成時の印刷適性を観察し、また、正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表13に示した。
【0121】
【表13】
表13に示されるように、2Hzにおける動的表面張力が40dyne/cm以下であるインキ(B2−1〜B2−4)を使用することにより、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0122】
[実施例14]
実施例1で使用した正孔注入層用のインキB1をもとに、PEDOTとポリスチレンスルフォネートの配合比は変えずに、これらの含有量を0.3〜10重量%の範囲で適宜変更し、また、混合溶媒の水とイソプロピルアルコールの混合比を95:5〜30:70の範囲で適宜変更して、下記表14に示されるように、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を0.5cP〜120cPまで振った9種の正孔注入層用のインキB3−1〜B3−9を調製した。尚、これらのインキの2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)は20〜40dyne/cmの範囲であった。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。
【0123】
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各正孔注入層用のインキ(B3−1〜B3−9)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に正孔注入層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、粘度が異なる正孔注入層用のインキ(9種)を使用した正孔注入層の形成時の印刷適性を観察し、また、正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表14に示した。
【0124】
【表14】
表14に示されるように、インキ粘度が1〜100cPであるインキ(B3−2〜B3−8)を使用することにより、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0125】
[実施例15]
実施例1で使用した正孔注入層用のインキB1をもとに、イソプロピルアルコール(IPA)の含有量が下記の表15に示すような7種の水−IPA混合溶媒を用いて、7種の正孔注入層用のインキB4−1〜B4−7を調製した。尚、これらのインキのせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)は1〜100cPの範囲であり、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)は40dyne/cm以下であった。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。
【0126】
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各正孔注入層用のインキ(B4−1〜B4−7)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に正孔注入層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、IPAの含有量が異なる正孔注入層用のインキ(7種)を使用した正孔注入層の形成時の印刷適性を観察し、また、正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表15に示した。
【0127】
【表15】
表15に示されるように、混合溶媒のIPAの含有量が5〜70重量%の範囲であるインキ(B4−2〜B4−6)を使用することにより、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0128】
[実施例16]
(透明電極層の形成)
まず、ガラス基板(厚み0.7mm)に対して、イオンプレーティング法により膜厚200nmの酸化インジウムスズ(ITO)電極膜を形成し、このITO電極膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、ITO電極膜のエッチングを行って、幅2.2mmのストライプ形状の透明電極層を4mmピッチで10本形成した。
(絶縁層の形成)
次に、上記のガラス基板(厚み0.7mm)に、洗浄処理と紫外線プラズマ洗浄を施し、その後、ネガ型感光性樹脂をスピンコート法で塗布し、フォトリソグラフィープロセスでパターニングして、各透明電極層上に2mm×2mmの発光エリア(開口部)が4mmピッチで存在するような絶縁層(厚み1μm)を形成した。
【0129】
(正孔注入層の形成)
グラビア版として、実施例8と同じグラビア版を準備した。
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、実施例8の樹脂フィルムF5(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、実施例1の正孔注入層用のインキB1(せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が15cP、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)が30dyne/cm、水−IPA(沸点=82.4℃)混合溶媒中のIPA含有量が30重量%)を用いて、実施例1と同様にして、正孔注入層(厚み約70nm)を形成した。
【0130】
(赤色発光層の形成)
グラビア版として、実施例8と同じグラビア版を準備した。
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、実施例8の樹脂フィルムF5(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、実施例1の赤色発光層用のインキA1(せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が80cP、混合溶媒の表面張力32dyne/cm、沸点=186℃)を用いて、実施例1と同様にして、正孔注入層上に赤色発光層(厚み約100nm)の形成を行った。
【0131】
(電子注入層の形成)
赤色発光層を形成した面側に、2.2mm幅のストライプ状の開口部を4mmピッチで備えたメタルマスクを、この開口部が上記のストライプ形状の透明電極層と直交し、かつ、上記の絶縁層の発光エリア(開口部)上に位置するように配置した。次に、このマスクを介して真空蒸着法によりカルシウムを蒸着(蒸着速度=0.1nm/秒)して成膜して電子注入層(厚み10nm)を4mmピッチで10本形成した。
(電極層の形成)
次に、電子注入層の形成に用いたメタルマスクをそのまま使用して、真空蒸着法によりアルミニウムを蒸着(蒸着速度=0.4nm/秒)して成膜した。これにより、電子注入層上に、アルミニウムからなる幅2.2mmのストライプ形状の電極層(厚み300nm)を形成した。
最後に、電極層を形成した面側に、紫外線硬化型接着剤を介して封止板を貼り合わせることにより、本発明の有機発光デバイスを得た。
【0132】
この有機発光デバイスについて、1000cd/m2の時の発光効率と、定電流駆動時に発光輝度が半減するまでの時間を素子寿命として評価したところ、発光効率が1.0cd/A、素子寿命が10万時間であった。尚、素子寿命は、初期の輝度が100cd/m2となるように電流値を設定し、その電流で連続駆動させ、50cdに半減するまでの時間で評価した。
【0133】
[比較例]
グラビア版として、実施例4のグラビア版G4−A(各セルにおける印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aが0.5)を使用した他は、実施例17と同様にして、有機発光デバイスを得た。この有機発光デバイスでは、正孔注入層の平均厚みが40nm、赤色発光層の平均厚みが60nmであった。
この有機発光デバイスについて、1000cd/m2の時の発光効率と、定電流駆動時に発光輝度が半減するまでの時間を素子寿命として評価したところ、発光効率が0.6cd/A、素子寿命が8000時間であり、発光効率、寿命が実施例17の有機発光デバイスに比べて劣るものであった。
【産業上に利用可能性】
【0134】
フルカラー表示装置、エリアカラー表示装置、照明等の種々の有機発光デバイスの製造において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明のグラビア版の一実施形態を説明するための図である。
【図2】本発明のグラビア版におけるセルの印刷方向の幅bとこれに直交する方向の幅aの比b/aを説明するための図である。
【図3】本発明のグラビア版の他の実施形態を説明するための図である。
【図4】本発明のグラビア版の他の実施形態を説明するための図である。
【図5】本発明のグラビア版の他の実施形態を説明するための図である。
【図6】本発明の発光層、正孔注入層の形成方法を説明するための図である。
【図7】本発明の発光層、正孔注入層の形成方法を説明するための図である。
【図8】本発明の発光層、正孔注入層の形成方法を説明するための図である。
【図9】グラビア版のセルを説明するための図である。
【図10】本発明の発光層の形成方法を説明するための図である。
【図11】本発明の発光層の形成方法を説明するための図である。
【図12】本発明の有機発光デバイスの一実施形態を示す部分断面斜視図である。
【図13】本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図14】発光層と絶縁層の開口部との関係を示す図である。
【図15】本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す斜視図である。
【図16】図15に示される有機発光デバイスのA−A線での断面図である。
【図17】本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分断面図である。
【図18】本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0136】
1,1′,11,11′…グラビア版
2,2′,12,12′…セル
3,13…非セル部
23…樹脂フィルム
24…ブランケット胴
41A…発光層被形成面
30…発光層用インキ
30′ 正孔注入層用インキ
31…発光層
31′ 正孔注入層
51,81,91,101…有機発光デバイス
52,82,92,102…透明基材
53…透明電極層
54,74…絶縁層
55,75…開口部
56…発光素子層
57…正孔注入層
58,58R,58G,58B,78R,78G,78G…発光層
59…電子注入層
60…電極層
73…電極配線パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光デバイスを構成する発光層や正孔注入層をグラビアオフセット印刷法で形成するためのグラビア版と、発光層や正孔注入層の形成方法と有機発光デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機のエレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機発光素子)は、自発光により視認性が高いこと、液晶ディスプレーと異なり全固体ディスプレーであること、温度変化の影響をあまり受けないこと、視野角が大きいこと等の利点をもっており、近年、フルカラー表示装置、エリアカラー表示装置、照明等の有機発光デバイスとして実用化が進んでいる。
有機発光素子には、発光層を構成する有機発光材料が低分子タイプのものと高分子タイプのものとがあり、例えば、高分子タイプの発光層は、有機発光材料を含有する発光層用インキを使用して種々の印刷方式、あるいはインクジェット方式により製造することができる。
【0003】
このような例として、粘度が100〜60000cPでチキソトロピー性の有機発光材料含有インキを用いて、凹版からシリコンブランケットに受理させ、その後、枚葉の基板に転移させるオフセット印刷方式により発光層を形成する方法がある(特許文献1)。
また、水分溶解度が5重量%以下の溶媒に有機発光材料を含有させたインキを用い、凹版からブランケットに受理させ、その後、基板に転移させるオフセット印刷方式により発光層を形成する方法がある(特許文献2)。
また、有機発光材料を含有するインキをグラビアロールを介してシリコンブランケット表面に供給して塗布膜を形成し、この塗布膜に凸版を押圧し、押圧部位の塗布膜を除去し、その後、シリコンブランケット表面に残った塗布膜を被形成面に転写して発光層を形成する方法がある(特許文献3)。
【0004】
さらに、有機発光材料を含有するインキと、このインキに用いる溶剤に浸漬したときの体積変化率が40%以下であるシリコーンエラストマーからなるブランケットとを使用し、インキを凹版の凹部からブランケットに転移させ、さらに、基板上に転写させる凹版オフセット印刷方式により発光層を形成する方法がある(特許文献4)。
このような発光層の形成方法は、正孔注入層の形成にも使用される。
【特許文献1】特開2001−93668号公報
【特許文献2】特開2001−291587号公報
【特許文献3】特開2004−178915号公報
【特許文献4】特開2003−308973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のようなグラビア版、凹版を用いた従来の発光層、正孔注入層の形成方法では、比較的高粘度のインキを使用するので、ドクターブレードによる凹版の凹部へのインキ充填に際し、掻き残しや厚みムラが生じやすく、均一な厚みの発光層形成が困難であった。このような問題を解消するためにインキを低粘度化すると、インキの低濃度化をきたし、しかもインキの転移量が低く、70nm以上の厚みの発光層や、50nm以上の厚みの正孔注入層の形成が困難であった。また、シリコンブランケットにインキが浸透し易く、このため形成された発光層、正孔注入層の表面が粗くなるとともに、シリコンブランケットの耐刷力が低下するという問題があった。
一方、有機発光材料や正孔注入材料を含有するインキをスピンコート法で基板上に塗布、乾燥することにより、均一な厚みの発光層、正孔注入層を形成することができる。しかし、スピンコート法を用いて所望のパターン形状の発光層や正孔注入層を形成するには、フォトリソグラフィー法との組み合わせが必要であり工程が複雑となり、また、インキの使用効率が低いという問題があった。これに対して、インクジェット方式では、パターン形状での発光層や正孔注入層の形成が容易であるが、吐出されたインキの流動性や表面張力等の制御が不十分であると、均一な厚みの発光層、正孔注入層を形成することが困難であった。
【0006】
さらに、従来のフルカラー、あるいはエリアカラーの表示装置としての有機発光デバイスは、上述のような発光層、正孔注入層の厚みムラ、厚み不足により、輝度、効率が不十分であり表示品質の向上に限界があり、信頼性も低いものであった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、均一な厚膜の発光層や正孔注入層を所望のパターンで形成するためのグラビア版と、これを用いた発光層や正孔注入層の形成方法と、高品質な表示が可能で信頼性が高い有機発光デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明は、有機発光デバイスの発光層および/または正孔注入層の形成に用いるグラビア版において、セルがストライプ形状であり、各セルにおける印刷方向の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aが0.6以上であり、各セルのセル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが0.8〜100の範囲であり、前記セル部長Lが10〜500μmの範囲、前記非セル部長Sが2〜500μmの範囲であり、版深が20〜200μmの範囲であるような構成とした。
【0008】
本発明は、有機発光デバイスの発光層および/または正孔注入層の形成に用いるグラビア版において、セルが複数に区画された形状であり、各セルにおける印刷方向の最大幅bと印刷方向に直交する方向での最大幅aの比b/aが0.6以上であり、成膜部位に占める総セル面積が55〜95%であり、非セル部長Sが2〜500μmの範囲であり、版深が20〜200μmの範囲であるような構成とした。
【0009】
また、本発明は、対向する電極と、該電極間に配設され少なくとも発光層を有する発光素子層と、を備えた有機発光デバイスの発光層形成方法において、少なくとも有機発光材料を含有する発光層用インキをグラビア版のセルに充填させ、該セルからブランケットに発光層用インキを受理させた後、前記ブランケット上の発光層用インキを発光層被形成面に転移する工程を有し、前記グラビア版は上述の本発明のグラビア版であり、前記ブランケットは表面張力が35dyne/cm以上である樹脂フィルムを表面層として備えるものであり、前記発光層用インキはせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5〜200cPの範囲であり、前記発光層用インキに用いる溶媒は表面張力が40dyne/cm以下で、かつ、沸点が150〜250℃の範囲であるような構成とした。
【0010】
本発明の他の態様として、前記樹脂フィルムの厚みは、5〜200μmの範囲であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケットは、ブランケット胴の周面に前記樹脂フィルムを一体的に備えるものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケットは、グラビア版から発光層用インキを受理する位置と発光層用インキを発光層被形成面に転移する位置とを少なくとも含む範囲において、回転するブランケット胴に巻き付く状態で前記樹脂フィルムが搬送されるものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケット胴は、表面にクッション層を備えるような構成とした。
【0011】
本発明の他の態様として、前記発光層用インキにおける前記有機発光材料の含有量は、1.5〜4.0重量%の範囲であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記グラビア版は、複数のセルによって1つのエリアカラー用の絵柄が構成されるものであり、1つの絵柄幅を200μm以上とするような構成とした。
本発明の他の態様として、複数組のグラビア版とブランケットを用いて発光色が異なる複数の発光層を連続して形成するような構成とした。
本発明の他の態様として、グラビア版を軸方向に複数に区画し、各区画毎に任意の発光層用インキを供給して、発光色が異なる複数の発光層を同時に形成するような構成とした。
【0012】
また、本発明は、対向する電極と、該電極間に配設され少なくとも正孔注入層と発光層を有する発光素子層と、を備えた有機発光デバイスの正孔注入層形成方法において、少なくとも正孔注入材料を含有する正孔注入層用インキをグラビア版のセルに充填させ、該セルからブランケットに正孔注入層用インキを受理させた後、前記ブランケット上の正孔注入層用インキを正孔注入層被形成面に転移する工程を有し、前記グラビア版は上述の本発明のグラビア版であり、前記ブランケットは表面張力が35dyne/cm以上である樹脂フィルムを表面層として備えるものであり、前記正孔注入層用インキはせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が1〜100cPの範囲で、かつ、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)が40dyne/cm以下であり、前記正孔注入層用インキに用いる溶媒は水とアルコール系溶媒との混合溶媒であり、前記アルコール系溶媒は沸点が250℃以下であり、混合溶媒中の前記アルコール系溶媒含有量は5〜70重量%の範囲であるような構成とした。
【0013】
本発明の他の態様として、前記樹脂フィルムの厚みは、5〜200μmの範囲であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケットは、ブランケット胴の周面に前記樹脂フィルムを一体的に備えるものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケットは、グラビア版から正孔注入層用インキを受理する位置と正孔注入層用インキを正孔注入層被形成面に転移する位置とを少なくとも含む範囲において、回転するブランケット胴に巻き付く状態で前記樹脂フィルムが搬送されるものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記ブランケット胴は、表面にクッション層を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記正孔注入層用インキにおける前記正孔注入材料の含有量は、0.3〜10.0重量%の範囲であるような構成とした。
【0014】
本発明の有機発光デバイスは、透明基材と、該透明基材上に所望のパターンで形成された透明電極層と、前記透明基材上に形成され前記電極層の所望の部位が露出する複数の開口部を有する絶縁層と、前記開口部内の前記透明電極層を被覆するように形成され少なくとも発光層と正孔注入層を有する発光素子層と、所望の前記開口部内に位置する前記発光素子層と接続するように形成された電極層と、を備え、前記発光素子層の発光層は、上述の本発明の発光層形成方法により形成されたものであり、前記発光素子層の正孔注入層は、上述の本発明の正孔注入層形成方法により形成されたものであるような構成とした。
【0015】
また、本発明の有機発光デバイスは、基材と、該基材上に所望のパターンで形成された電極層と、前記基材上に形成され前記電極層の所望の部位が露出する複数の開口部を有する絶縁層と、前記開口部内の前記電極層を被覆するように形成され少なくとも発光層と正孔注入層を有する発光素子層と、所望の前記開口部内に位置する前記発光素子層と接続するように形成された透明電極層と、を備え、前記発光素子層の発光層は、上述の本発明の発光層形成方法により形成されたものであり、前記発光素子層の正孔注入層は、上述の本発明の正孔注入層形成方法により形成されたものであるような構成とした。
【0016】
本発明の他の態様として、前記発光素子層を構成する前記発光層の厚みが70nm以上であり、前記正孔注入層の厚みが50nm以上であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記発光素子層は、少なくとも正孔注入層/発光層/電子注入層がこの順に積層されたものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、パッシブマトリックス型であるような構成とした。
本発明の他の態様として、アクティブマトリックス型であるような構成とした。
本発明の他の態様として、最大開口幅が10mm以上の前記開口部を前記絶縁層に備えた有機発光ポスターであるような構成とした。
本発明の他の態様として、カラーフィルタ層を備えるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記カラーフィルタ層と前記透明電極との間に色変換蛍光体層を備えるような構成とした。
【0017】
本発明の他の態様として、前記発光素子層は、白色を含む所望の色の発光であるか、あるいは所望の複数の色の発光が所定のパターンで組み合わされたものであるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記発光素子層は、青色発光であり、前記色変換蛍光体層は青色光を緑色蛍光に変換して発光する緑色変換層と、青色光を赤色蛍光に変換して発光する赤色変換層とを備えているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記正孔注入層用の塗膜を形成した後1分以内に前記発光層用の塗膜を形成し、これら2層を100〜200℃の範囲で同時に一括乾燥して形成した正孔注入層と発光層とを備えるような構成とした。
【発明の効果】
【0018】
本発明のグラビア版は、発光層や正孔注入層を均一な厚みで、かつ、所望の厚みで形成することができる。
また、本発明の発光層の形成方法は、発光層を均一な厚みで、かつ、70nm以上の厚膜として形成することができ、また、各発光色毎の発光層を所望のパターンで形成することができる。また、本発明の正孔注入層の形成方法は、正孔注入層を均一な厚みで、かつ、50nm以上の厚膜として所望のパターンで形成することができる。そして、樹脂フィルム基材のような可撓性を有する基材への発光層や正孔注入層の形成も可能であるとともに、ブランケットの耐刷力が極めて高く、有機発光デバイスの製造コスト低減も可能である。
また、本発明の有機発光デバイスは、発光素子層の発光層と正孔注入層が本発明の方法で製造されているので、発光層や正孔注入層が均一な厚膜であり、発光素子層の発光時の輝度、効率が高く、高品質の表示が可能であるとともに、信頼性の高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について図面を参照しながら説明する。
[グラビア版]
本発明のグラビア版は、有機発光デバイスの発光層および/または正孔注入層の形成に用いるグラビア版である。
図1は、本発明のグラビア版の一実施形態を説明するための図である。本発明のグラビア版1は、セル2がストライプ形状であり、各セル2の間には非セル部3が存在する。そして、各セル2(斜線を付した部位)の幅(セル部長L)と、非セル部3の幅(非セル部長S)との比L/Sが0.8〜100、好ましくは1〜60の範囲であり、セル2の幅(セル部長L)が10〜500μm、好ましくは30〜300μmの範囲、非セル部3の幅(非セル部長S)が2〜500μm、好ましくは5〜200μmの範囲であり、セル2の深さ(版深)が20〜200μm、好ましくは30〜100μmの範囲である。
【0020】
また、本発明のグラビア版1は、図2(A)〜図2(C)に示されるように、各セル2(斜線を付した部位)における印刷方向(図の矢印Pが示す方向)の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aが0.6以上、好ましくは0.8以上であり上限には特に制限はない。尚、本発明において印刷方向とは、グラビア版の回転方向と同義である。
上記のセル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが0.8未満であると、厚膜形成が困難となり、100を超えると、グラビア版のセル形成が困難となり、また膜厚のバラツキが大きくなり好ましくない。また、セル2の幅(セル部長L)が10μm未満であると、厚膜形成が困難であり、500μmを超えると、膜厚のバラツキが大きくなり好ましくない。また、非セル部3の幅(非セル部長S)が2μm未満であると、グラビア版のセル形成が困難であり、500μmを超えると、膜厚のバラツキが大きく、また厚膜形成が困難となり好ましくない。
【0021】
また、セル2の深さ(版深)が20μm未満であると、厚膜形成が困難となり、200μmを超えるような版深としても、形成する塗膜の厚みは増加しない。さらに、比b/aが0.6未満であると、厚膜形成が困難となり、後述する発光層の形成において70nm以上の厚みの発光層の形成が困難となり、また、正孔注入層の形成において50nm以上の厚みの正孔注入層の形成が困難となり好ましくない。
【0022】
図3は、本発明のグラビア版の他の実施形態を説明するための図である。図3に示されるグラビア版11は、セル12が複数に区画された形状(図示例では、各セル12は正方形)であり、各セル12の間には非セル部13が存在する。また、図4は、本発明のグラビア版の他の実施形態を説明するための図である。図4に示されるグラビア版11は、セル12が複数に区画された形状であり、各セル12は菱形であり、各セル12の間には非セル部13が存在する。さらに、図5は、本発明のグラビア版の他の実施形態を説明するための図である。図5に示されるグラビア版11は、セル12が複数に区画された形状であり、各セル12は楕円形であり、各セル12の間には非セル部13が存在する。
【0023】
上記の図3〜図5に示されるグラビア版11は、各セル12(斜線を付した部位)における印刷方向(図の矢印Pが示す方向)の最大幅bと印刷方向に直交する方向での最大幅aの比b/aが0.6以上、好ましくは0.8以上であり上限には特に制限はない。また、成膜部位に占める総セル面積が55〜95%、好ましくは60〜90%であり、非セル部13の幅(非セル部長S1,S2)が2〜500μm、好ましくは10〜200μmの範囲であり、セル12の深さ(版深)が20〜200μm、好ましくは30〜100μmの範囲である。
【0024】
上記の比b/aが0.6未満であると、厚膜形成が困難となり、後述する発光層の形成において70nm以上の厚みの発光層の形成が困難となり、また、正孔注入層の形成において50nm以上の厚みの正孔注入層の形成が困難となり好ましくない。また、成膜部位に占める総セル面積が55%未満であると、厚膜形成が困難となり、95%を超えると、膜厚のバラツキが大きくなり好ましくない。また、非セル部13の幅(非セル部長S1,S2)が2μm未満であると、グラビア版のセル形成が困難であり、500μmを超えると、膜厚のバラツキが大きくなり、かつ厚膜形成が困難となり好ましくない。また、セル12の深さ(版深)が20μm未満であると、厚膜形成が困難となり、200μmを超えるような版深としても、形成する塗膜の厚みは増加しない。
尚、上述のグラビア版のセル形状は例示であり、これらの限定されるものではない。
【0025】
[発光層、正孔注入層の形成方法]
図6は、本発明の発光層、正孔注入層の形成方法を説明するための図である。図6において、印刷ユニット21を構成するインキパン27内の発光層用インキ30、あるいは正孔注入層用インキ30′は、回転するグラビア版1(11)の表面に供給され、ドクターブレード28で不要なインキ30,30′が掻き取られ、セル2(12)内にのみインキ30,30′が供給される。このセル2(12)内のインキ30,30′は、ブランケット22に受理され、その後、圧胴26上を搬送されている基材41の発光層あるいは正孔注入層の被形成面41Aに転移される。この基材41は、乾燥ゾーン29に送られ、インキ30,30′が乾燥されて発光層31、あるいは正孔注入層31′が形成される。
【0026】
このような本発明では、グラビア版1(11)として、上述の本発明のグラビア版を使用する。尚、ここでのグラビア版の説明は省略する。
また、本発明では、ブランケット22として、表面張力が35dyne/cm以上、好ましくは35〜65dyne/cmの範囲である樹脂フィルム23を、ブランケット胴24の表面に表面層として備えるものを使用する。
本発明で使用する発光層用インキ30は、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5〜200cP、好ましくは20〜150cPの範囲であり、使用している溶媒の表面張力が40dyne/cm以下、好ましくは20〜37dyne/cmの範囲であり、かつ、沸点が150〜250℃、好ましくは170〜230℃の範囲のものである。
【0027】
さらに、本発明で使用する正孔注入層用インキ30′は、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が1〜100cP、好ましくは3〜30cPの範囲で、かつ、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)が40dyne/cm以下、好ましくは35dyne/cm以下であり下限には特に制限はない。また、正孔注入層用インキ30′に用いる溶媒は水とアルコール系溶媒との混合溶媒であり、アルコール系溶媒は沸点が60〜250℃の範囲であり、混合溶媒中のアルコール系溶媒含有量は5〜70重量%、好ましくは10〜50重量%の範囲のものである。
【0028】
(樹脂フィルム)
上述のブランケット22の表面層を構成する樹脂フィルム23の表面張力が35dyne/cm未満であると、グラビア版1(11)からのインキ受理性が低下し、厚みが均一な発光層31、正孔注入層31′の形成が困難となる。尚、樹脂フィルム23の表面張力(固体の表面張力[γs])の測定は、2種以上の表面張力が判っている液体(標準物質)を使用して、自動接触角計(協和界面科学(株)製 DropMaster 700型)にて接触角θを測定し、γs(固体の表面張力)=γL(液体の表面張力)cosθ+γSL(固体の液体の表面張力)の式に基づいて求める。
【0029】
使用する樹脂フィルム23としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、易接着タイプのポリエチレンテレフタレートフィルム、コロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、コロナ処理を施したポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、易接着タイプのポリエチレンナフタレートフィルム、ポリノルボルネンフィルム、メラミン焼付けポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂フィルムを挙げることができる。樹脂フィルム23の厚みは、例えば、5〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲とすることができる。樹脂フィルム23の厚みが5μm未満であると、フィルム加工性、ブランケット胴24への装着性が低下して好ましくない。また、樹脂フィルム23の厚みが200μmを超えると、硬度が高くなりすぎ、柔軟性が低下して好ましくない。
【0030】
尚、図示例では、ブランケット胴24は、表面層である樹脂フィルム23の下層としてクッション層24aを備えている。このクッション層24aの硬度は、例えば、20〜80°の範囲とすることができ、厚みは、例えば、0.1〜30mmの範囲とすることができる。尚、上記の硬度は、JIS(K6253)デュロメータ硬さ試験によるTypeA硬度である。
【0031】
また、図6に示される例では、樹脂フィルム23は、ブランケット胴24に一体的に装着されたものであるが、図7に示されるように、ブランケット胴24に巻き付くように樹脂フィルム23がブランケット胴24の回転とともに搬送されるようにしてもよい。この場合、グラビア版1(11)からインキ30、30′を受理する位置(矢印aで示される位置)と、インキ30、30′を被形成面41Aに転移する位置(矢印bで示される位置)と、を少なくとも含む範囲において、ブランケット胴24に樹脂フィルム23を巻き付かせる必要がある。このような樹脂フィルム23は、図示しない供給ロールからブランケット胴24上に搬送供給され、図示しない巻上げローラに巻き上げられるようにすることができる。また、樹脂フィルム23をエンドレスフィルムの形状とし、図示していないローラとブランケット胴24との間の無限軌道上を搬送するようにしてもよい。
【0032】
また、本発明では、グラビア版を板状としてもよく、図8は、このような実施形態の例を示す図である。図8に示される例では、まず、板状のグラビア版1′(11′)の表面にインキ30、30′を供給し、図示しないドクターブレードで不要なインキ30、30′を掻き取ることによりセル2′(12′)内にのみインキ30、30′を供給する。次いで、このセル2′(12′)内のインキ30、30′は、ブランケット22に受理され、その後、板状の基材41の被形成面41Aに転移され、乾燥されて発光層、あるいは正孔注入層が形成される。また、圧胴26上を搬送されている基材41の被形成面41Aにインキ30、30′を転移し乾燥して発光層、あるいは正孔注入層を形成してもよい。
【0033】
(発光層用インキ)
本発明で使用する発光層用インキ30のせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5cP未満であると、インキダレが生じたり、所望の厚みの発光層の形成が困難となる。一方、200cPを超えると、グラビア版1(11)のセル目による凹凸大きくなり、均一な厚みの発光層の形成が困難となる。尚、上記の粘度測定は、Physica社製の粘弾性測定装置MCR301型により、測定温度23℃で定常流測定モードにより行うものとする。また、発光層用インキ30は、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)V1と、せん断速度1000/秒における粘度(インキ温度23℃)V2との比(V1/V2)が0.9〜1.5程度となり、ほぼニュートン流動を示すことが好ましい。
【0034】
また、発光層用インキ30に使用している溶媒の表面張力が40dyne/cmを超えると、グラビア版1(11)からの発光層用インキ30の受理性が低下して好ましくない。さらに、発光層用インキ30の溶媒の沸点が150℃未満であると、ブランケット22を構成する樹脂フィルム23から基材41の発光層被形成面41Aに転移された発光層用インキ30が直ちに乾燥して、発光層31にスジが発生し易くなる。また、250℃を超えると、乾燥が困難となり、乾燥ゾーン29での乾燥による基材41等への影響が生じたり、溶剤の残留を生じることがあり好ましくない。尚、溶媒の表面張力の測定は、協和界面科学(株)製の表面張力計CBVP−Z型により、液温20℃で行うものとする。
【0035】
発光層用インキ30に用いる有機発光材料としては、例えば、下記のような色素系、金属錯体系、高分子系のものを挙げることができる。
(1)色素系発光材料
シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマー等が挙げられる。
【0036】
(2)金属錯体系発光材料
アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポリフィリン亜鉛錯体、ユーロピウム錯体等、中心金属にAl、Zn、Be等、または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体が挙げられる。
【0037】
(3)高分子系発光材料
ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリフルオレン誘導体等が挙げられる。
発光層用インキ30における上述のような有機発光材料の含有量は、例えば、1.5〜4.0重量%の範囲で設定することができる。
【0038】
また、発光層用インキ30に用いる溶媒としては、表面張力が上記の範囲(40dyne/cm以下)を満足し、かつ、沸点が上記の範囲(150〜250℃)を満足するもの、例えば、クメン、アニソール、n−プロピルベンゼン、メシチレン、1,2,4−トリメチルベンゼン、リモネン、p−シメン、o−ジクロロベンゼン、ブチルベンゼン、ジエチルベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、安息香酸メチル、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、アミルベンゼン、テトラリン、安息香酸エチル、フェニルヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸ブチル等を単独で使用することができる。また、混合溶媒を使用する場合には、混合比に応じた割合で計算した表面張力と沸点が上記の範囲を満足するものを使用する。例えば、表面張力がAdyne/cm、沸点がB℃の溶媒1と、表面張力がCdyne/cm、沸点がD℃の溶媒2とを3:7の重量比で混合した混合溶媒の場合、混合比に応じた割合で計算した表面張力[(A×3/10)+(C×7/10)]が上記の範囲(40dyne/cm以下)を満足し、かつ、混合比に応じた割合で計算した沸点[(B×3/10)+(D×7/10)]が上記の範囲(150〜250℃)を満足することが必要となる。したがって、混合溶媒を構成する個々の溶媒は、表面張力と沸点が上記の範囲から外れるものであってもよい。
【0039】
(正孔注入層用インキ)
本発明で使用する正孔注入層用インキ30′のせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が1cP未満であると、インキダレが生じたり、所望の厚みの正孔注入層の形成が困難となる。一方、100cPを超えると、グラビア版1(11)のセル目による凹凸大きくなり、均一な厚みの正孔注入層の形成が困難となる。尚、上記の粘度測定は、上述の発光層用インキの粘度測定と同様である。また、正孔注入層用インキ30′の2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)が40dyne/cmを超えると、グラビア版1(11)のセル目による凹凸大きくなり、均一な厚みの正孔注入層の形成が困難となる。上記の動的表面張力の測定は、液中に気泡を発生させ、液体からその気泡にかかる圧力から表面張力を測定する方法(最大泡圧法)により行うものであり、SITA t60/2(SITA Messtechnik GmbH社製)を用い、測定温度23℃で気泡を2Hz周期にて発生させたときの動的表面張力値を読み取るものとする。
【0040】
尚、正孔注入層用インキ30′は、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)V1と、せん断速度1000/秒における粘度(インキ温度23℃)V2との比(V1/V2)が0.9〜1.3程度となり、さらに、正孔注入層用インキ30′は、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)を10Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)で除した値が0.8〜1.1程度となり、ほぼニュートン流動を示すことが好ましい。
正孔注入層用インキ30′に用いる水とアルコール系溶媒との混合溶媒において、使用するアルコール系溶媒は沸点が250℃以下、例えば、60〜250℃のものである。沸点が250℃を超えると、乾燥が困難となり、乾燥ゾーン29での乾燥による基材41等への影響が生じたり、溶剤の残留を生じることがあり好ましくない。また、混合溶媒中のアルコール系溶媒の含有量が5重量%未満であると、セル目による凹凸やはじきが生じて均一な膜厚を得ることが困難であり、70重量%を超えると、インキ中に凝集物が生じやすくなり好ましくない。
【0041】
正孔注入層用インキ30′に用いる正孔注入材料としては、例えば、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー等の誘電性高分子オリゴマー等、を挙げることができる。
【0042】
さらに、正孔注入材料として、ポリフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物を挙げることもできる。上記のポリフィリン化合物としては、ポリフィン、1,10,15,20−テトラフェニル−21H、23H−ポリフィン銅(II)、アルミニウムフタロシアニンクロリド、銅オクタメチルフタロシアニン等を挙げることができる。また、芳香族第三級アミン化合物およびスチリルアミン化合物としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−ジアミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−[4(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン、4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル、4,4′,4″−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン等を挙げることができる。
正孔注入層用インキ30′における上述のような正孔注入材料の含有量は、例えば、0.3〜10.0重量%の範囲で設定することができる。
【0043】
また、正孔注入層用インキ30′の混合溶媒に用いるアルコール系溶媒としては、沸点が上記の範囲(250℃以下、例えば、60〜250℃)を満足するものであり、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブタノール、n−プロパノール、sec−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、1,3−ブチレングリコール、1−ブトキシエトキシ−2−プロパノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、1,5−ペンタジオール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート等を例示することができ、これらを単独で使用することができる。また、2種以上のアルコール系溶媒を使用する場合には、混合比に応じた割合で計算した沸点が上記の範囲を満足するものを使用する。例えば、沸点がA℃の溶媒1と、沸点がB℃の溶媒2とを3:7の重量比で混合した混合溶媒の場合、混合比に応じた割合で計算した沸点[(A×3/10)+(B×7/10)]が上記の範囲(250℃以下、例えば、60〜250℃)を満足することが必要となる。したがって、混合溶媒を構成する個々のアルコール系溶媒は、沸点が上記の範囲から外れるものであってもよい。
【0044】
また、本発明の発光層の形成方法では、グラビア版1(11)に形成するセル2(12)を、複数のセルによって1つのエリアカラー用の絵柄が構成されるようにしてもよい。図9は、上述のグラビア版11を例として示すものであり、複数(図示例では15個)のセル12により絵柄(鎖線で示す形状)が構成される。この場合、1つの絵柄幅Wは200μm以上、好ましくは300μm以上とすることができる。尚、絵柄幅Wは、グラビア版11の回転方向(図9に矢印aで示した方向)に直交する方向の最小幅である。絵柄幅Wが200μm未満であると、絵柄のエッジ付近の厚み変動が10%以上となり好ましくない。また、上述のグラビア版1を使用しても、同様に、エリアカラー用の絵柄で発光層を形成することができる。
【0045】
また、本発明の発光層の形成方法では、複数組のグラビア版とブランケットを用いて発光色が異なる複数の発光層を連続して形成してもよい。図10は、このような例を示すものであり、赤発光層形成用のグラビア版1R(11R)と、ブランケット22、圧胴26を備えたユニット21R、緑発光層形成用のグラビア版1G(11G)と、ブランケット22、圧胴26を備えたユニット21G、青発光層形成用のグラビア版1B(11B)と、ブランケット22、圧胴26を備えたユニット21Bとを備えている。各ユニット21R,21G,21Bは、上述の印刷ユニット21と同様であり、各ユニット21R,21G,21Bのインキパン27には、対応する赤色発光層用インキ30R、緑色発光層用インキ30G、青色発光層用インキ30Bが供給されている。そして、基材41の発光層被形成面41A側に対して、ユニット21R,21G,21Bの順で連続して赤色発光層用インキ30R、緑色発光層用インキ30G、青色発光層用インキ30Bを転移させ、その後、乾燥することにより、赤色発光層31R、緑色発光層31G、青色発光層31Bを形成することができる。尚、各発光層の形成パターン等は任意に設定することができ、形成順序は上記の順に限定されるものではない。
【0046】
また、本発明の発光層の形成方法では、グラビア版1(11)を軸方向に複数に区画し、各区画毎に任意の発光層用インキを供給して、発光色が異なる複数の発光層を同時に形成してもよい。図11は、このような例を、上述のグラビア版11を例として説明するための図面であり、グラビア版11を軸方向(矢印b方向)に3つ(11G,11R,11B)に区画し、各区画にはエリアカラー用の絵柄を形成するための複数のセル12が形成されている。そして、緑色発光層用インキ、赤色発光層用インキ、青色発光層用インキを、それぞれ、区画11G,11R,11Bに供給(例えば、ディスペンサー方式)し、上述のように、基材41の発光層被形成面41A側に対して、赤色発光層用インキ、緑色発光層用インキ、青色発光層用インキを同時に転移させ、その後、乾燥することにより、エリアカラー絵柄である赤色発光層31R、緑色発光層31G、青色発光層31Bを形成することができる。尚、絵柄のパターン、寸法、位置関係等は任意に設定することができる。また、上述のグラビア版1を使用しても、同様に、エリアカラー絵柄である赤色発光層31R、緑色発光層31G、青色発光層31Bを形成することができる。
【0047】
尚、上述の実施形態におけるブランケット22は、グラビア版1(11)と圧胴26の回転方向に対し順方向回転であるが、形成する発光層、正孔注入層のパターンに応じて、逆方向回転としてもよい。また、基材41は枚葉であってもよく、グラビア版1(11)への発光層用インキ30、正孔注入層用インキ30′の供給は、インキパン27を使用せずにディスペンサー等を用いてもよい。
【0048】
[有機発光デバイス]
図12は、本発明の有機発光デバイスの一実施形態を示す部分断面斜視図である。図12において、有機発光デバイス51は、透明基材52と、この透明基材52上に矢印a方向に延設さられた帯状パターンの複数の透明電極層53と、ストライプ形状の開口部55を有する絶縁層54と、各透明電極層53上に位置するストライプ形状の開口部55内の透明電極層53を被覆するように配設された発光素子層56と、この発光素子層56上に透明電極層53と直交するように矢印b方向に延設された帯状パターンの複数の電極層60とを備えている。
上記の絶縁層54の開口部55は、矢印a方向に沿ったストライプ形状の開口部であり、各透明電極層53上に位置している。
【0049】
また、発光素子層56は、各開口部55内の透明電極層53を被覆するように配設された正孔注入層57と発光層58と電子注入層59とからなる。図示例では、発光層58は、帯状パターンの赤色発光層58R、緑色発光層58G、青色発光層58Bが、この順で矢印b方向に繰り返し配列されている。尚、正孔注入層57と発光層58、電子注入層59が、開口部55の周縁の絶縁層54に乗り上げるように形成されたものであってもよい。
このような有機発光デバイス51は、帯状パターンの透明電極層53と電極層60とが交差する部位が発光領域となるパッシブマトリックス型であり、発光素子層56の正孔注入層57と発光層58は、本発明の正孔注入層、発光層の形成方法により形成されたものである。このため、正孔注入層57の厚みが50nm以上であり、また、発光層58の厚みが70nm以上であり、発光素子層56の発光時の輝度、効率が高く、高品質の表示が可能である。また、開口部55の周縁の絶縁層54に乗り上げるように発光素子層56を形成した場合には、発光素子層56を挟持する位置に存在する透明電極層53と電極層60との短絡を生じることがなく、信頼性が更に高いものである。
【0050】
次に、本発明の有機発光デバイス51の各構成部材について説明する。
有機発光デバイス51を構成する透明基材52は、通常、観察者側の表面に設けられ、発光層58からの光を観察者が容易に視認することができる程度の透明性を有するものである。尚、後述するように、発光層58からの光を取り出す方向を反対方向とする場合には、透明基板52に替えて不透明な基板を使用してもよい。
透明基板52(これに替わる不透明な基板も含む)としては、ガラス材料、樹脂材料、または、これらの複合材料からなるもの、例えば、ガラス板に保護プラスチックフィルムもしくは保護プラスチック層を設けたもの等が用いられる。
【0051】
上記の樹脂材料、保護プラスチック材料としては、例えば、フッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、液晶性ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオキシメチレン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリレート、アクリロニトリル−スチレン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、非晶質ポリオレフィン等が挙げられる。この他の樹脂材料であっても、有機発光デバイス用として使用できる高分子材料であれば、使用可能である。
透明基板52の厚さは、通常、50μm〜1.1mm程度である。
【0052】
このような透明基板52においては、その用途にもよるが、水蒸気や酸素等のガスバリアー性の良好なものであれば更に好ましい。また、透明基板52に、水蒸気や酸素等のガスバリアー層を形成してもよい。このようなガスバリアー層としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機酸化物をスパッタリング法や真空蒸着法等の物理蒸着法により形成したものであってよい。
また、有機発光デバイス51を構成する透明電極層53は、図示例では陽極であり、発光層58に正電荷(正孔)を注入するために、正孔注入層57に隣接して配設されている。尚、透明電極層53は陰極であってもよく、この場合、発光素子層56を構成する正孔注入層57と電子注入層59とが入れ替わって配設される。
【0053】
透明電極層53は、通常の有機発光デバイスに使用されるものであれば特に限定されず、金属、合金、これらの混合物等を使用することができ、例えば、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛、酸化第二錫、または金等の薄膜電極材料を挙げることができる。中でも、正孔が注入し易いように、仕事関数の大きい(4eV以上)透明、または半透明材料であるITO、IZO、酸化インジウム、金が好ましい。
透明電極層53は、シート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、材質にもよるが、透明電極層53の厚みは、例えば、0.005〜1μm程度とすることができる。
この透明電極層53は、周辺の端子部から中央の画素領域まで所望のパターン形状で配設されている。このようなパターン形状の透明電極層53は、スパッタリング法や真空蒸着法等によりメタルマスクを用いてパターン形状、または、全面に成膜した後、感光性レジストをマスクとしてエッチングすることにより形成される。
【0054】
有機発光デバイス51を構成する絶縁層54は、各透明電極層53上に位置するストライプ形状の開口部55を有している。この絶縁層54は、例えば、透明電極層53を覆うように全面に感光性樹脂材料を塗布し、パターン露光、現像を行って形成したり、熱硬化性樹脂材料を用いて形成することができ、この絶縁層54が形成された部分は非発光部となる。絶縁層54の厚みは、絶縁層54を構成する樹脂固有の絶縁抵抗に応じて適宜設定できるが、例えば、0.05〜5.0μm程度とすることができる。また、上述の樹脂材料にカーボンブラックや、チタン窒化物、チタン酸化物、チタン酸窒化物等のチタン系黒色顔料の1種、あるいは2種以上の遮光性微粒子を混合することにより、ブラックマトリックスを形成して絶縁層54としてもよい。
尚、このような絶縁層54の形状は、上述の形状に限定されるものではない。
【0055】
有機発光デバイス51を構成する発光素子層56は、図示例では、透明電極層53側から正孔注入層57、発光層58、および電子注入層59が積層された構造であるが、正孔注入層57と発光層58とからなる構造、発光層58と電子注入層59からなる構造、さらに、正孔注入層57と発光層58との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層58と電子注入層59との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
また、発光波長を調整したり、発光効率を向上させる等の目的で、上記の各層に適当な材料をドーピングすることもできる。
【0056】
発光素子層56の発光層58は、図示例では、赤色発光層58R、緑色発光層58G、青色発光層58Bからなっているが、有機発光デバイスの使用目的等に応じて、所望の発光色(例えば、黄色、水色、オレンジ色)である発光層を単独で、また、赤色発光、緑色発光、青色発光以外の他の複数の発光色の所望の組み合わせ等、いずれであってもよい。
発光素子層56の正孔注入層57に用いる正孔注入材料、および、発光層58に用いる有機発光材料は、上述の本発明の正孔注入層、発光層の形成方法で挙げた正孔注入材料、有機発光材料を使用することができる。
発光素子層56の各層に用いるドーピング材料、正孔輸送材料、電子注入材料等は、下記に例示するような無機材料、有機材料いずれでもよい。発光素子層56の各層の厚みは特に制限はなく、例えば、10〜1000nm程度とすることができる。
【0057】
(ドーピング材料)
ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポリフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン等が挙げられる。
【0058】
(正孔輸送材料)
オキサジアゾール系、オキサゾール系、トリアゾール系、チアゾール系、トリフェニルメタン系、スチリル系、ピラゾリン系、ヒドラゾン系、芳香族アミン系、カルバゾール系、ポリビニルカルバゾール系、スチルベン系、エナミン系、アジン系、トリフェニルアミン系、ブタジエン系、多環芳香族化合物系、スチルベン二量体等が挙げられる。
また、π共役系高分子として、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリ(P−フェニレン)、ポリ(P−フェニレンスルフィド)、ポリ(P−フェニレンオキシド)、ポリ(1,6−ヘプタジエン)、ポリ(P−フェニレンビニレン)、ポリ(2,5−チエニレン)、ポリ(2,5−ピロール)、ポリ(m−フェニレンスルフィド)、ポリ(4,4′−ビフェニレン)等が挙げられる。
また、電荷移動高分子錯体として、ポリスチレン・AgC104、ポリビニルナフタレン・TCNE、ポリビニルナフタレン・P−CA、ポリビニルナフタレン・DDQ、ポリビニルメシチレン・TCNE、ポリナフタアセチレン・TCNE、ポリビニルアントラセン・Br2、ポリビニルアントラセン・I2、ポリビニルアントラセン・TNB、ポリジメチルアミノスチレン・CA、ポリビニルイミダゾール・CQ、ポリ−P−フェニレン・I2、ポリ−1−ビニルピリジン・I2、ポリ−4−ビニルピリジン・I2、ポリ−P−1−フェニレン・I2、ポリビニルピリジウム・TCNQ等が挙げられ、さらに、電荷移動低分子錯体として、TCNQ−TTF等が、高分子金属錯体としては、ポリ銅フタロシアニン等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、イオン化ポテンシャルの小さい材料が好ましく、特に、ブタジエン系、エナミン系、ヒドラゾン系、トリフェニルアミン系が好ましい。
【0059】
(電子注入材料)
カルシウム、バリウム、アルミリチウム、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ニトロ置換フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、上記のオキサジアゾール環の酸素原子をイオウ原子に置換したチアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有したキノキサリン誘導体、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−キノリノール誘導体の金属錯体、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ジスチリルピラジン誘導体等を挙げることができる。
【0060】
発光素子層56を構成する各層の形成は、正孔注入層57、発光層58については、上述の本発明の形成方法により形成する。また、正孔注入層57と発光層58の形成を、正孔注入層用の塗膜を形成した後1分以内に発光層用の塗膜を形成し、これら2層を100〜200℃の範囲で同時に一括乾燥して形成することにより行うこともできる。
また、電子注入層59は、画像表示領域に相当する開口部を備えたマスク(周辺部の透明電極層53からなる電極端子への成膜を防止するためのマスク)を介して真空蒸着法等により成膜して形成することができる。また、スクリーン印刷法等の印刷方法により電子注入層59を形成することもできる。
【0061】
有機発光デバイス51を構成する電極層60は、図示例では陰極であり、発光層58に負電荷(電子)を注入するために、電子注入層59に隣接して配設されている。尚、電極層60は陽極であってもよく、この場合、発光素子層56を構成する正孔注入層57と電子注入層59とが入れ替わって配設される。
このような電極層60の材料としては、通常の有機発光デバイスに使用されるものであれば特に限定されず、上述の透明電極層53と同様に、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛、酸化第二錫、または金等の薄膜電極材料、さらに、マグネシウム合金(例えば、MgAg等)、アルミニウムまたはその合金(AlLi、AlCa、AlMg等)、銀等を挙げることができる。中でも、電子が注入し易いように仕事関数の小さい(4eV以下)マグネシウム合金、アルミニウム、銀等が好ましい。このような電極層60はシート抵抗が数百Ω/□以下が好ましく、このため、電極層60の厚みは、例えば、0.005〜0.5μm程度とすることができる。
上記の電極層60は、上述の電極材料を用いてマスクを介したスパッタリング法や真空蒸着法等の方法によりパターン形状に成膜して形成することができる。
【0062】
本発明の有機発光デバイスは、例えば、上述の有機発光デバイス51において、電極層60を透明な電極層とすることにより、光を取り出す方向を反対方向とした有機発光デバイスが可能である。この場合、基材52は透明でなくてもよく、また、透明電極層53は不透明な電極層であってもよい。
【0063】
また、本発明の有機発光デバイスは、アクティブマトリックス型であってもよい。図13および図14は、アクティブマトリックス型の本発明の有機発光デバイスの一例を説明するための図である。図13は電極配線パターンを示す図であり、透明基材(図示せず)上に形成された電極配線パターン73は、信号線73A、走査線73B、TFT(薄膜トランジスタ)73C、透明電極(画素電極)層73Dからなる。また、これらの電極配線パターン73を被覆するように絶縁層74(図13で斜線を付した部位)が形成されており、この絶縁層74は、各透明電極層73D上に位置する開口部75を備えている。また、絶縁層74には、各開口部75内の透明電極層73Dを被覆するように発光素子層(図示せず)が形成され、この発光素子層上に電極(共通電極)層(図示せず)が配設される。
【0064】
上記の発光素子層は、絶縁層74と各開口部75内の透明電極層73Dとを被覆するように配設された正孔注入層と、開口部75内の透明電極層73D(正孔注入層)を被覆するように各開口部75毎に配設された複数の発光層と、これらを被覆するように配設された電子注入層と、から構成することができる。図14は、絶縁層74の開口部75と発光層との関係を示す図である。図14では、発光層は、開口部75よりも大きい所望のパターン形状の赤色発光層78R、緑色発光層78G、青色発光層78Bからなっている。
【0065】
このようなアクティブマトリックス型の本発明の有機発光デバイスも、正孔注入層と発光層(赤色発光層78R、緑色発光層78G、青色発光層78B)は、本発明の形成方法により形成されたものである。このため、正孔注入層の厚みが50nm以上であり、また、発光層(赤色発光層78R、緑色発光層78G、青色発光層78B)の厚みが70nm以上であり、発光素子層の発光時の輝度、効率が高く、高品質の表示が可能である。また、開口部75の周縁の絶縁層74に乗り上げるように発光素子層を形成した場合、発光素子層を挟持する位置に存在する透明電極層73Dと電極層(図示せず)との短絡を生じることがなく、信頼性が更に高いものとなる。
尚、上記の発光素子層は、上述の実施形態と同様に、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層とからなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0066】
図15は、本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分斜視図であり、図16は図15に示される有機発光デバイスのA−A線における断面図である。図15および図16において、有機発光デバイス81は、透明基材82と、この透明基材82上に長方形状に形成された透明電極層83と、ひし形開口部85aと長方形状開口部85bとを有する絶縁層84と、各開口部85a、85b内の透明電極層83を被覆するように配設された発光素子層86と、この発光素子層86を被覆するように形成された電極層90とを備えている。
上記の発光素子層86は、積層配設された正孔注入層87、発光層88、電子注入層89からなっている。尚、発光素子層86が各開口部85a、85bの周縁の絶縁層84に乗り上げるように形成されたものであってもよい。
【0067】
このような有機発光デバイス81は、各開口部85a、85bが存在する部位が表示領域となるエリアカラー表示であり、例えば、各開口部85a、85bの最大開口幅を10mm以上に設定して有機発光ポスターとしての使用が可能である。有機発光デバイス81を構成する正孔注入層87と発光層88は、本発明の形成方法により形成されたものである。このため、正孔注入層87の厚みが50nm以上であり、また、発光層88の厚みが70nm以上であり、発光素子層86の発光時の輝度、効率が高く、高品質の表示が可能である。また、開口部85a、85bの周縁の絶縁層84に乗り上げるように発光素子層86を形成した場合、発光素子層86を挟持する位置に存在する透明電極層83と電極層90との短絡を生じることがなく、信頼性が更に高いものとなる。
【0068】
尚、各開口部85a、85bに位置する各発光層の発光色が異なるものであってもよく、さらに、各開口部85a、85b上に配設される電極層90を電気的に独立したものとして、各発光層毎に発光できるようにしてもよい。
また、上記の発光素子層86は、上述の実施形態と同様に、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層からなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0069】
図17は、本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分断面図である。図17に示される有機発光デバイス91は、透明基材92と、この透明基材92上に設けられた帯状パターンの赤色着色層93R、緑色着色層93G、青色着色層93Bからなるカラーフィルタ層93と、このようなカラーフィルタ層93を覆うように配設された透明平滑化層95と、この透明平滑化層95上に、上述の実施形態の有機発光デバイス51と同様に形成された帯状パターンの複数の透明電極層53と、各透明電極層53上にストライプ形状の開口部55が位置するように配設された絶縁層54と、各開口部55内の透明電極層53を被覆するように配設された発光素子層56と、この発光素子層56上に透明電極層53と直交するように延設された帯状パターンの複数の電極層60とを備えている。
【0070】
上記の帯状パターンの複数の透明電極層53は、帯状パターンの赤色着色層93R、緑色着色層93G、青色着色層93B上に位置するものである。また、発光素子層56は、各開口部55内の透明電極層53を被覆するように配設された正孔注入層57と、開口部55内の透明電極層53(正孔注入層57)を被覆するように各開口部55毎に配設された複数の発光層58と、これらを被覆するように配設された電子注入層59と、からなる。図示例では、発光層58は、帯状パターンの白色発光層である。尚、発光素子層56を開口部55の周縁の絶縁層54に乗り上げるように形成したものであってもよい。
【0071】
このような有機発光デバイス91は、カラーフィルタ層93と透明平滑化層95とを備え、発光層58が白色発光層である点を除いて、上述の有機発光デバイス51と同様である。したがって、同様の部材には、同じ部材番号を付し、ここでの説明は省略する。尚、上記の発光素子層56は、上述の実施形態と同様に、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層とからなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0072】
上記のカラーフィルタ層93は、発光素子層56からの光を色補正したり、色純度を高めるものである。カラーフィルタ層93を構成する赤色着色層93R、緑色着色層93G、青色着色層93Bは、発光素子層56の発光特性に応じて適宜材料を選択することができ、例えば、顔料、顔料分散剤、バインダー樹脂、反応性化合物および溶媒を含有する顔料分散組成物で形成することができる。このようなカラーフィルタ層93の厚みは、各着色層の材料、有機EL素子層の発光特性等に応じて適宜設定することができ、例えば、1〜3μm程度の範囲で設定することができる。
【0073】
また、透明平滑化層95は、カラーフィルタ層93以下の構成により段差(表面凹凸)が存在する場合に、この段差を解消して平坦化を図り、発光素子層56の厚みムラ発生を防止する平坦化作用をなす。このような透明平滑化層95は、透明(可視光透過率50%以上)樹脂により形成することができる。具体的には、アクリレート系、メタクリレート系の反応性ビニル基を有する光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂を使用することができる。また、透明樹脂として、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等を使用することができる。
このような透明平滑化層95の厚みは、使用する材料を考慮し、平坦化作用が発現できる範囲で設定することができ、例えば、1〜5μm程度の範囲で適宜設定することができる。
【0074】
また、図18は、本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分断面図である。図18に示される有機発光デバイス101は、透明基材102と、この透明基材102上に設けられた帯状パターンの赤色着色層103R、緑色着色層103R、青色着色層103Bからなるカラーフィルタ層103と、このようなカラーフィルタ層103の赤色着色層103R、緑色着色層103R、青色着色層103Bを覆うように帯状パターンの赤色変換蛍光体層104R(青色光を赤色蛍光に変換する層)、緑色変換蛍光体層104G(青色光を緑色蛍光に変換する層)、青色変換ダミー層104B(青色光をそのまま透過する層)からなる色変換蛍光体層104が設けられ、さらに、これらを覆うように配設された透明平滑化層105と、この透明平滑化層105上に、上述の実施形態の有機発光デバイス51と同様に形成された帯状パターンの複数の透明電極層53と、各透明電極層53上にストライプ形状の開口部55が位置するように配設された絶縁層54と、各開口部55内の透明電極層53を被覆するように配設された発光素子層56と、この発光素子層56上に透明電極層53と直交するように延設された帯状パターンの複数の電極層60とを備えている。
【0075】
上記の帯状パターンの複数の透明電極層53は、帯状パターンの赤色変換蛍光体層104R、緑色変換蛍光体層104G、青色変換ダミー層104B上に位置するものである。また、発光素子層56は、各開口部55内の透明電極層53を被覆するように配設された正孔注入層57、発光層58、電子注入層59とからなる。図示例では、発光層58は、帯状パターンの青色発光層である。尚、発光素子層56は、開口部55の周縁の絶縁層54に乗り上げるようなものであってもよい。
【0076】
このような有機発光デバイス101は、カラーフィルタ層103と色変換蛍光体層104と透明平滑化層105とを備え、発光層58が青色発光層である点を除いて、上述の有機発光デバイス51と同様である。したがって、同様の部材には、同じ部材番号を付し、ここでの説明は省略する。また、カラーフィルタ層103、透明平滑化層105は、上述のカラーフィルタ層93、透明平滑化層95と同様であり、ここでの説明は省略する。尚、上記の発光素子層56は、上述の実施形態と同様に、正孔注入層と発光層とからなる構造、発光層と電子注入層とからなる構造、さらに、正孔注入層と発光層との間に正孔輸送層を介在させた構造、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を介在させた構造等とすることができる。
【0077】
上記の赤色変換蛍光体層104Rおよび緑色変換蛍光体層104Gは、蛍光色素単体からなる層、あるいは、樹脂中に蛍光色素を含有した層である。青色発光を赤色蛍光に変換する赤色変換蛍光体層104Rに使用する蛍光色素としては、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピラン等のシアニン系色素、1−エチル−2−[4−(p−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル]−ピリジウム−パークロレート等のピリジン色素、ローダミンB、ローダミン6G等のローダミン系色素、オキサジン系色素等が挙げられる。また、青色発光を緑色蛍光に変換する緑色変換蛍光体層104Gに使用する蛍光色素としては、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジノ(9,9a,1−gh)クマリン、3−(2′−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2′−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン等のクマリン色素、ベーシックイエロー51等のクマリン色素系染料、ソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116等のナフタルイミド色素等が挙げられる。さらに、直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料等の各種染料も蛍光性があれば使用することができる。上述のような蛍光色素は単独、あるいは、2種以上の組み合わせで使用することができる。赤色変換蛍光体層104Rおよび緑色変換蛍光体層104Gが樹脂中に蛍光色素を含有したものである場合、蛍光色素の含有量は、使用する蛍光色素、色変換蛍光体層の厚み等を考慮して適宜設定することができるが、例えば、使用する樹脂100重量部に対し0.1〜1重量部程度とすることができる。
【0078】
また、青色変換ダミー層104Bは、発光素子層56で発光された青色光をそのまま透過してカラーフィルタ層103に送るものであり、赤色変換蛍光体層104R、緑色変換蛍光体層104Gとほぼ同じ厚みの透明樹脂層とすることができる。
赤色変換蛍光体層104Rおよび緑色変換蛍光体層104Gが樹脂中に蛍光色素を含有したものである場合、樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリ塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂等の透明(可視光透過率50%以上)樹脂を使用することができる。また、色変換蛍光体層104のパターン形成をフォトリソグラフィー法により行う場合、例えば、アクリル酸系、メタクリル酸系、ポリケイ皮酸ビニル系、環ゴム系等の反応性ビニル基を有する光硬化型レジスト樹脂を使用することができる。さらに、これらの樹脂は、上述の青色変換ダミー層104Bに使用することができる。
【0079】
色変換蛍光体層104を構成する赤色変換蛍光体層104Rと緑色変換蛍光体層104Gは、蛍光色素単体で形成する場合、例えば、所望のパターンマスクを介して真空蒸着法、スパッタリング法により帯状に形成することができる。また、樹脂中に蛍光色素を含有した層として形成する場合、例えば、蛍光色素と樹脂とを分散、または可溶化させた塗布液をスピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布して成膜し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングする方法、上記の塗布液をスクリーン印刷法等でパターン印刷する方法等により赤色変換蛍光体層104Rや緑色変換蛍光体層104Gを形成することができる。また、青色変換ダミー層104Bは、所望の感光性樹脂塗料をスピンコート、ロールコート、キャストコート等の方法で塗布して成膜し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングする方法、所望の樹脂塗布液をスクリーン印刷法等でパターン印刷する方法等により形成することができる。
【0080】
このような色変換蛍光体層104の厚みは、赤色変換蛍光体層104Rおよび緑色変換蛍光体層104Gが発光素子層56で発光された青色光を十分に吸収し蛍光を発生する機能が発現できるものとする必要があり、使用する蛍光色素、蛍光色素濃度等を考慮して適宜設定することができ、例えば、10〜20μm程度とすることができ、赤色変換蛍光体層104Rと緑色変換蛍光体層104Gとの厚みが異なる場合があってもよい。
青色発光である有機発光材料としては、例えば、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤、金属キレート化オキシノイド化合物、スチリルベンゼン系化合物、ジスチリルピラジン誘導体、芳香族ジメチリディン系化合物等を挙げることができる。
【0081】
具体的には、2−2′−(p−フェニレンジビニレン)−ビスヘンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系; 2−[2−[4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾイミダゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニル]ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系; 2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4′−ビス(5,7−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、2−[2−(4−クロロフェニル)ビニル]ナフト[1,2−d]オキサゾール等のベンゾオキサゾール系等の蛍光増白剤を挙げることができる。
また、上記の金属キレート化オキシノイド化合物としては、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ[f]−8−キノリノール)亜鉛等の8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピントリジオン等を挙げることができる。
【0082】
また、上記のスチリルベンゼン系化合物としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メチルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−エチルベンゼン等を挙げることができる。
また、上記のジスチリルピラジン誘導体としては、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ナフチル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス[2−(4−ビフェニル)ビニル]ピラジン、2,5−ビス[2−(1−ピレニル)ビニル]ピラジン等を挙げることができる。
【0083】
また、上記の芳香族ジメチリディン系化合物としては、1,4−フェニレンジメチリディン、4,4−フェニレンジメチリディン、2,5−キシレンジメチリディン、2,6−ナフチレンジメチリディン、1,4−ビフェニレンジメチリディン、1,4−p−テレフェニレンジメチリディン、9,10−アントラセンジイルジルメチリディン、4,4′−ビス(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニル、4,4′−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル等、およびその誘導体を挙げることができる。
【0084】
さらに、発光層の材料として、一般式(Rs−Q)2−AL−O−Lで表される化合物も挙げることができる(上記式中、ALはベンゼン環を含む炭素原子6〜24個の炭化水素であり、O−Lはフェニラート配位子であり、Qは置換8−キノリノラート配位子であり、Rsはアルミニウム原子に置換8−キノリノラート配位子が2個以上結合するのを立体的に妨害するように選ばれた8−キノリノラート置換基を表す)。具体的には、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(パラーフェニルフェノラート)アルミニウム(III)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム(III)等が挙げられる。
尚、上述の実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、カラーフィルタ層93,103の非形成部位にブラックマトリックスを備えるものであってもよい。
【実施例】
【0085】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
セル部長Lを10〜500μm、非セル部長Sを2〜500μmの範囲で変更することにより、セル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが下記表1の範囲となるようにして、ストライプ状のセル(セルの深さ35μm)が印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)に沿って形成された10種の板状のグラビア版(G1−A〜G1−J)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであった。
【0086】
また、下記組成の赤色発光層用のインキA1を調製した。このインキA1のせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を、Physica社製の粘弾性測定装置MCR301型により定常流測定モードで測定した結果、80cPであった。また、溶媒として使用するメシチレンとテトラリンの表面張力を、協和界面科学(株)製の表面張力計CBVP−Z型により、液温20℃で測定した。
(赤色発光層用のインキA1の組成)
・ポリフルオレン誘導体系の赤色発光材料 … 2.5重量%
(分子量:300,000)
・溶媒(メシチレン:テトラリン=50:50の混合溶媒)… 97.5重量%
(混合溶媒の表面張力=32dyne/cm、沸点=186℃)
(メシチレンの表面張力=28dyne/cm、沸点=165℃)
(テトラリンの表面張力=35.5dyne/cm、沸点=207℃)
【0087】
また、下記組成の正孔注入層用のインキB1を調製した。このインキB1のせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を上記のインキA1と同様に測定した結果、15cPであった。また、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)をSITA t60/2(SITA Messtechnik GmbH社製)を用いて測定した結果、30dyne/cmであった。
(正孔注入層用のインキB1の組成)
・PEDOT(ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン)/PSS
(ポリスチレンスルフォネート)(混合比=1/20) … 70重量%
(バイエル社製 Baytron PCH8000)
・混合溶媒 … 30重量%
(水:イソプロピルアルコール(沸点82.4℃)=70:30)
【0088】
また、樹脂フィルムとして、易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を準備した。尚、このフィルムの表面張力は、2種以上の表面張力が判っている液体(標準物質)を使用して、自動接触角計(協和界面科学(株)製 DropMaster 700型)にて接触角θを測定し、γs(樹脂フィルムの表面張力)=γL(液体の表面張力)cosθ+γSL(樹脂フィルムと液体の表面張力)の式に基づいて求めた。
次いで、直径12cm、胴幅30cmのブランケット胴(表面にクッション層(硬度70°)を備える)の周面に、上記の樹脂フィルムを装着してブランケットを作製した。尚、クッション層の硬度はJIS(K6253)デュロメータ硬さ試験によるTypeA硬度である。
【0089】
次に、上記の各グラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、グラビア版に上記の赤色発光層用のインキA1、正孔注入層用のインキB1をそれぞれ供給し、ブレードを用いて不要なインキを除去して、セル内にインキを充填した。次いで、基材として、洗浄処理と紫外線プラズマ洗浄を施したガラス基板を準備し、グラビア版からブランケットにインキを受理させ、その後、ブランケットからガラス基板上にインキを転移させることによって、赤色発光層の形成、および正孔注入層の形成を行った。尚、印刷速度は1000mm/秒であり、乾燥は120℃に設定したホットプレート上で1時間とした。
【0090】
上記のように、セル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを測定して、結果を下記の表1に示した。尚、赤色発光層や正孔注入層の厚みは、セイコーインスツルメンツ(株)製のNanopics 1000を使用し、この装置標準のコンタクトモード用カンチレバーを用いて、測定エリア100μm、スキャンスピード90sec/frameで測定した。
【0091】
【表1】
表1に示されるように、セル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが0.8〜100の範囲であるグラビア版G1−B〜G1−Iを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0092】
[実施例2]
セル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが1〜10の範囲となるように、セル部長Lと非セル部長Sを、下記表2に示される数値に設定して、ストライプ状のセル(セルの深さ35μm)が印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)に沿って形成された9種の板状のグラビア版(G2−A〜G2−I)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであった。
このグラビア版を使用した他は、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、セル部長Lと非セル部長Sが異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表2に示した。
【0093】
【表2】
表2に示されるように、セル部長Lが10〜500μmの範囲で、かつ、非セル部長Sが2〜500μmの範囲であるグラビア版G2−A〜G2−C、G2−F、G2−Gを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0094】
[実施例3]
セル部長Lが120μm、非セル部長Sが30μmで、比L/Sが4であるストライプ状のセルが印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)に沿って形成され、版深が下記の表3に示されるものである7種の板状のグラビア版(G3−A〜G3−G)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであった。
このグラビア版を使用した他は、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、版深が異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表3に示した。
【0095】
【表3】
表3に示されるように、版深が20〜200μmの範囲であるグラビア版G3−B〜G3−Fを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0096】
[実施例4]
セル部長Lが120μm、非セル部長Sが30μmで、比L/Sが4であるストライプ状のセル(セルの深さ35μm)を、各セルにおける印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aが下記の表4に示される値となるように作製した6種の板状のグラビア版(G4−A〜G4−F)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであった。
このグラビア版を使用した他は、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、比b/aが異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表4に示した。
【0097】
【表4】
表4に示されるように、比b/aが0.6以上であるグラビア版G4−B〜G4−Fを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0098】
[実施例5]
セル部長Lを100μm、非セル部長Sを25μmとし、各セルの長辺が印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)に対する角度を適宜設定して、格子形状に配列された長方形の複数のセル(深さ35μm)を備え、各セルにおける印刷方向の最大幅bと印刷方向に直交する方向での最大幅aの比b/aが下記の表5に示される値となるように作製した6種の板状のグラビア版(G5−A〜G5−F)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであり、成膜部位に占める総セル面積は68〜72%であった。
このグラビア版を使用した他は、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、比b/aが異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表5に示した。
【0099】
【表5】
表5に示されるように、比b/aが0.6以上であるグラビア版G5−B〜G5−Fを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0100】
[実施例6]
格子形状に配列された長方形(200μm×100μm)のセル(深さ35μm)を、非セル部長Sを10〜500μmの範囲で変化させることにより、成膜部位に占める総セル面積率が下記の表6に示される値となるように作製した6種の板状のグラビア版(G6−A〜G6−F)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであった。また、各セルの長辺は印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)に対して0°の方向であり、各セルの印刷方向の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aは2であった。
このグラビア版を使用した他は、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、総セル面積率が異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表6に示した。
【0101】
【表6】
表6に示されるように、総セル面積率が55〜95%の範囲であるグラビア版G6−B〜G6−Eを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0102】
[実施例7]
非セル部長Sが25μmとなるように格子形状に配列された長方形(200μm×100μm)のセルが、各セルの長辺が印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)と平行(各セルの印刷方向の最大幅bと印刷方向に直交する方向での最大幅aの比b/aは2)となるように形成され、版深が下記の表7に示されるものである6種の板状のグラビア版(G7−A〜G7−F)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであり、成膜部位に占める総セル面積は64%であった。
このグラビア版を使用した他は、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、版深が異なるグラビア版を使用した赤色発光層形成時、および正孔注入層形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表7に示した。
【0103】
【表7】
表7に示されるように、版深が20〜200μmの範囲であるグラビア版G7−B〜G7−Eを使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0104】
[実施例8]
セル部長Lが120μm、非セル部長Sが30μmで、比L/Sが4であるストライプ状のセル(深さ35μm)が印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)に沿って形成された板状のグラビア版(G8)を準備した。尚、グラビア版の有効幅は50mmであった。
また、樹脂フィルムとして、表面張力が異なる下記の5種の樹脂フィルム(F1〜F5)を準備した。
(樹脂フィルム)
・F1 :ポリプロピレンフィルム(東レ(株)製 トレファンBOタイプ2500)、
厚み50μm、表面張力30dyne/cm
・F2 :メラミン焼付けポリエチレンテレフタレートフィルム(パナック(株)製
PET100SG−1)、厚み100μm、表面張力35dyne/cm
・F3 :ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 T60)、
厚み75μm、表面張力38dyne/cm
・F4 :ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人(株)製 Q51)、
厚み75μm、表面張力45dyne/cm
・F5 :易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製 U10)、
厚み100μm、表面張力60dyne/cm
【0105】
次いで、実施例1と同様のブランケット胴の周面に、上記の各樹脂フィルム(F1〜F5)を装着して5種のブランケットを作製した。
次に、上記のグラビア版と各ブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、実施例1と同様にして、赤色発光層と正孔注入層の形成を行った。
上記のように、表面張力が異なる樹脂フィルムを装着したブランケットを使用した赤色発光層の形成時、および正孔注入層の形成時の印刷適性を観察した。また、赤色発光層と正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表8に示した。
【0106】
【表8】
表8に示されるように、樹脂フィルムの表面張力が35dyne/cm以上であるブランケットF2〜F5を使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層、および、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0107】
[実施例9]
実施例1で使用した赤色発光層用のインキA1をもとに、下記の表9に示される沸点の混合溶媒を使用した8種の赤色発光層用のインキ(A1−1〜A1−8)を調製した。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。尚、混合溶媒の表面張力は40dyne/cm以下であり、せん断速度100/秒におけるインキ粘度(インキ温度23℃)は5〜200cPの範囲内であった。
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
【0108】
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各赤色発光層用のインキ(A1−1〜A1−8)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に赤色発光層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、沸点が異なる溶媒を用いた赤色発光層用のインキ(8種)を使用しての赤色発光層形成時の印刷適性を観察し、また、赤色発光層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表9に示した。
【0109】
【表9】
表9に示されるように、沸点が150〜250℃の範囲の溶媒を用いたインキ(A1−3〜A1−7)を使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層を形成できることが確認された。
【0110】
[実施例10]
実施例1で使用した赤色発光層用のインキA1をもとに、下記の表10に示される表面張力の混合溶媒を使用した8種の赤色発光層用のインキ(A2−1〜A2−8)を調製した。尚、混合溶媒の沸点は150〜250℃の範囲内であり、せん断速度100/秒におけるインキ粘度(インキ温度23℃)は5〜200cPの範囲内であった。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
【0111】
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各赤色発光層用のインキ(A2−1〜A2−8)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に赤色発光層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、表面張力が異なる溶媒を用いた赤色発光層用のインキ(8種)を使用しての赤色発光層形成時の印刷適性を観察し、また、赤色発光層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表10に示した。
【0112】
【表10】
表10に示されるように、表面張力が40dyne/cm以下の溶媒を用いたインキ(A2−1〜A2−7)を使用することにより、実用レベルの赤色発光層(厚み70nm以上)を形成できることが確認された。
【0113】
[実施例11]
実施例1で使用した赤色発光層用のインキA1をもとに、赤色発光材料の含有量を2〜3重量%の範囲で適宜変更し、また、混合溶媒のメシチレンとテトラリンの混合比を変えることにより表面張力を25〜40dyne/cmの範囲で、沸点を150〜250℃の範囲で適宜変更して、下記表11に示されるように、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を3cP〜250cPまで振った12種の赤色発光層用のインキA3−1〜A3−12を調製した。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。
【0114】
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各赤色発光層用のインキ(A3−1〜A3−12)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に赤色発光層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、粘度が異なる赤色発光層用のインキ(12種)を使用した赤色発光層の形成時の印刷適性を観察し、また、赤色発光層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表11に示した。
【0115】
【表11】
表11に示されるように、インキ粘度が5〜200cPであるインキ(A3−2〜A3−11)を使用することにより、実用レベル(厚み70nm以上)の赤色発光層を形成できることが確認された。
【0116】
[実施例12]
実施例1で使用した正孔注入層用のインキB1をもとに、沸点が下記の表12に示すようなアルコール系溶媒を用いて、7種の正孔注入層用のインキB1−1〜B1−7を調製した。尚、これらのインキのせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)は1〜100cPの範囲であり、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)は40dyne/cm以下であった。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。
【0117】
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各正孔注入層用のインキ(B1−1〜B1−7)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に正孔注入層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、アルコール系溶媒の沸点が異なる正孔注入層用のインキ(7種)を使用した正孔注入層の形成時の印刷適性を観察し、また、正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表12に示した。
【0118】
【表12】
表12に示されるように、使用するアルコール系溶媒の沸点が250℃以下であるインキ(B1−2〜B1−6)を使用することにより、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0119】
[実施例13]
実施例1で使用した正孔注入層用のインキB1をもとに、PEDOTとPSSの配合比は変えずに、これらの含有量を0.3〜10重量%の範囲で適宜変更し、また、混合溶媒の水とイソプロピルアルコール(IPA)の混合比を95:5〜30:70の範囲(IPA含有量5〜70重量%)で適宜変更して、下記表13に示されるように、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)を25〜70dyne/cmの範囲で振った6種の正孔注入層用のインキB2−1〜B2−6を調製した。尚、これらのインキのせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)は1〜100cPの範囲であった。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。
【0120】
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各正孔注入層用のインキ(B2−1〜B2−6)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に正孔注入層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、2Hzにおける動的表面張力が異なる正孔注入層用のインキ(6種)を使用した正孔注入層の形成時の印刷適性を観察し、また、正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表13に示した。
【0121】
【表13】
表13に示されるように、2Hzにおける動的表面張力が40dyne/cm以下であるインキ(B2−1〜B2−4)を使用することにより、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0122】
[実施例14]
実施例1で使用した正孔注入層用のインキB1をもとに、PEDOTとポリスチレンスルフォネートの配合比は変えずに、これらの含有量を0.3〜10重量%の範囲で適宜変更し、また、混合溶媒の水とイソプロピルアルコールの混合比を95:5〜30:70の範囲で適宜変更して、下記表14に示されるように、せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)を0.5cP〜120cPまで振った9種の正孔注入層用のインキB3−1〜B3−9を調製した。尚、これらのインキの2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)は20〜40dyne/cmの範囲であった。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。
【0123】
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各正孔注入層用のインキ(B3−1〜B3−9)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に正孔注入層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、粘度が異なる正孔注入層用のインキ(9種)を使用した正孔注入層の形成時の印刷適性を観察し、また、正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表14に示した。
【0124】
【表14】
表14に示されるように、インキ粘度が1〜100cPであるインキ(B3−2〜B3−8)を使用することにより、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0125】
[実施例15]
実施例1で使用した正孔注入層用のインキB1をもとに、イソプロピルアルコール(IPA)の含有量が下記の表15に示すような7種の水−IPA混合溶媒を用いて、7種の正孔注入層用のインキB4−1〜B4−7を調製した。尚、これらのインキのせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)は1〜100cPの範囲であり、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)は40dyne/cm以下であった。
一方、グラビア版として、実施例8と同じグラビア版G8を準備した。
【0126】
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、樹脂フィルムとして易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、各正孔注入層用のインキ(B4−1〜B4−7)を用いて、実施例1と同様にして、ガラス基板上に正孔注入層の形成を行った。また、乾燥条件も実施例1と同様とした。
上記のように、IPAの含有量が異なる正孔注入層用のインキ(7種)を使用した正孔注入層の形成時の印刷適性を観察し、また、正孔注入層の厚み変動率[(最大厚み−最小厚み)/平均厚み]×100(%)と平均厚みを実施例1と同様に測定して、結果を下記の表15に示した。
【0127】
【表15】
表15に示されるように、混合溶媒のIPAの含有量が5〜70重量%の範囲であるインキ(B4−2〜B4−6)を使用することにより、実用レベル(厚み50nm以上)の正孔注入層を形成できることが確認された。
【0128】
[実施例16]
(透明電極層の形成)
まず、ガラス基板(厚み0.7mm)に対して、イオンプレーティング法により膜厚200nmの酸化インジウムスズ(ITO)電極膜を形成し、このITO電極膜上に感光性レジストを塗布し、マスク露光、現像、ITO電極膜のエッチングを行って、幅2.2mmのストライプ形状の透明電極層を4mmピッチで10本形成した。
(絶縁層の形成)
次に、上記のガラス基板(厚み0.7mm)に、洗浄処理と紫外線プラズマ洗浄を施し、その後、ネガ型感光性樹脂をスピンコート法で塗布し、フォトリソグラフィープロセスでパターニングして、各透明電極層上に2mm×2mmの発光エリア(開口部)が4mmピッチで存在するような絶縁層(厚み1μm)を形成した。
【0129】
(正孔注入層の形成)
グラビア版として、実施例8と同じグラビア版を準備した。
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、実施例8の樹脂フィルムF5(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、実施例1の正孔注入層用のインキB1(せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が15cP、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)が30dyne/cm、水−IPA(沸点=82.4℃)混合溶媒中のIPA含有量が30重量%)を用いて、実施例1と同様にして、正孔注入層(厚み約70nm)を形成した。
【0130】
(赤色発光層の形成)
グラビア版として、実施例8と同じグラビア版を準備した。
また、実施例1と同じブランケット胴の周面に、実施例8の樹脂フィルムF5(東レ(株)製 U10、厚み100μm、表面張力60dyne/cm)を装着してブランケットとした。
次に、上記のグラビア版とブランケットを平台オフセット印刷機に装着し、実施例1の赤色発光層用のインキA1(せん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が80cP、混合溶媒の表面張力32dyne/cm、沸点=186℃)を用いて、実施例1と同様にして、正孔注入層上に赤色発光層(厚み約100nm)の形成を行った。
【0131】
(電子注入層の形成)
赤色発光層を形成した面側に、2.2mm幅のストライプ状の開口部を4mmピッチで備えたメタルマスクを、この開口部が上記のストライプ形状の透明電極層と直交し、かつ、上記の絶縁層の発光エリア(開口部)上に位置するように配置した。次に、このマスクを介して真空蒸着法によりカルシウムを蒸着(蒸着速度=0.1nm/秒)して成膜して電子注入層(厚み10nm)を4mmピッチで10本形成した。
(電極層の形成)
次に、電子注入層の形成に用いたメタルマスクをそのまま使用して、真空蒸着法によりアルミニウムを蒸着(蒸着速度=0.4nm/秒)して成膜した。これにより、電子注入層上に、アルミニウムからなる幅2.2mmのストライプ形状の電極層(厚み300nm)を形成した。
最後に、電極層を形成した面側に、紫外線硬化型接着剤を介して封止板を貼り合わせることにより、本発明の有機発光デバイスを得た。
【0132】
この有機発光デバイスについて、1000cd/m2の時の発光効率と、定電流駆動時に発光輝度が半減するまでの時間を素子寿命として評価したところ、発光効率が1.0cd/A、素子寿命が10万時間であった。尚、素子寿命は、初期の輝度が100cd/m2となるように電流値を設定し、その電流で連続駆動させ、50cdに半減するまでの時間で評価した。
【0133】
[比較例]
グラビア版として、実施例4のグラビア版G4−A(各セルにおける印刷方向(ブランケット胴の稼動方向)の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aが0.5)を使用した他は、実施例17と同様にして、有機発光デバイスを得た。この有機発光デバイスでは、正孔注入層の平均厚みが40nm、赤色発光層の平均厚みが60nmであった。
この有機発光デバイスについて、1000cd/m2の時の発光効率と、定電流駆動時に発光輝度が半減するまでの時間を素子寿命として評価したところ、発光効率が0.6cd/A、素子寿命が8000時間であり、発光効率、寿命が実施例17の有機発光デバイスに比べて劣るものであった。
【産業上に利用可能性】
【0134】
フルカラー表示装置、エリアカラー表示装置、照明等の種々の有機発光デバイスの製造において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明のグラビア版の一実施形態を説明するための図である。
【図2】本発明のグラビア版におけるセルの印刷方向の幅bとこれに直交する方向の幅aの比b/aを説明するための図である。
【図3】本発明のグラビア版の他の実施形態を説明するための図である。
【図4】本発明のグラビア版の他の実施形態を説明するための図である。
【図5】本発明のグラビア版の他の実施形態を説明するための図である。
【図6】本発明の発光層、正孔注入層の形成方法を説明するための図である。
【図7】本発明の発光層、正孔注入層の形成方法を説明するための図である。
【図8】本発明の発光層、正孔注入層の形成方法を説明するための図である。
【図9】グラビア版のセルを説明するための図である。
【図10】本発明の発光層の形成方法を説明するための図である。
【図11】本発明の発光層の形成方法を説明するための図である。
【図12】本発明の有機発光デバイスの一実施形態を示す部分断面斜視図である。
【図13】本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す平面図である。
【図14】発光層と絶縁層の開口部との関係を示す図である。
【図15】本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す斜視図である。
【図16】図15に示される有機発光デバイスのA−A線での断面図である。
【図17】本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分断面図である。
【図18】本発明の有機発光デバイスの他の実施形態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0136】
1,1′,11,11′…グラビア版
2,2′,12,12′…セル
3,13…非セル部
23…樹脂フィルム
24…ブランケット胴
41A…発光層被形成面
30…発光層用インキ
30′ 正孔注入層用インキ
31…発光層
31′ 正孔注入層
51,81,91,101…有機発光デバイス
52,82,92,102…透明基材
53…透明電極層
54,74…絶縁層
55,75…開口部
56…発光素子層
57…正孔注入層
58,58R,58G,58B,78R,78G,78G…発光層
59…電子注入層
60…電極層
73…電極配線パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機発光デバイスの発光層および/または正孔注入層の形成に用いるグラビア版において、
セルがストライプ形状であり、各セルにおける印刷方向の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aが0.6以上であり、各セルのセル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが0.8〜100の範囲であり、前記セル部長Lが10〜500μmの範囲、前記非セル部長Sが2〜500μmの範囲であり、版深が20〜200μmの範囲であることを特徴とするグラビア版。
【請求項2】
有機発光デバイスの発光層および/または正孔注入層の形成に用いるグラビア版において、
セルが複数に区画された形状であり、各セルにおける印刷方向の最大幅bと印刷方向に直交する方向での最大幅aの比b/aが0.6以上であり、成膜部位に占める総セル面積が55〜95%であり、非セル部長Sが2〜500μmの範囲であり、版深が20〜200μmの範囲であることを特徴とするグラビア版。
【請求項3】
対向する電極と、該電極間に配設され少なくとも発光層を有する発光素子層と、を備えた有機発光デバイスの発光層形成方法において、
少なくとも有機発光材料を含有する発光層用インキをグラビア版のセルに充填させ、該セルからブランケットに発光層用インキを受理させた後、前記ブランケット上の発光層用インキを発光層被形成面に転移する工程を有し、前記グラビア版は請求項1または請求項2に記載のグラビア版であり、前記ブランケットは表面張力が35dyne/cm以上である樹脂フィルムを表面層として備えるものであり、前記発光層用インキはせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5〜200cPの範囲であり、前記発光層用インキに用いる溶媒は表面張力が40dyne/cm以下で、かつ、沸点が150〜250℃の範囲であることを特徴とする発光層形成方法。
【請求項4】
前記樹脂フィルムの厚みは、5〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項3に記載の発光層形成方法。
【請求項5】
前記ブランケットは、ブランケット胴の周面に前記樹脂フィルムを一体的に備えるものであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の発光層形成方法。
【請求項6】
前記ブランケットは、グラビア版から発光層用インキを受理する位置と発光層用インキを発光層被形成面に転移する位置とを少なくとも含む範囲において、回転するブランケット胴に巻き付く状態で前記樹脂フィルムが搬送されるものであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の発光層形成方法。
【請求項7】
前記ブランケット胴は、表面にクッション層を備えることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の発光層形成方法。
【請求項8】
前記発光層用インキにおける前記有機発光材料の含有量は、1.5〜4.0重量%の範囲であることを特徴とする請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の発光層形成方法。
【請求項9】
前記グラビア版は、複数のセルによって1つのエリアカラー用の絵柄が構成されるものであり、1つの絵柄幅を200μm以上とすることを特徴とする請求項3乃至請求項8のいずれかに記載の発光層形成方法。
【請求項10】
複数組のグラビア版とブランケットを用いて発光色が異なる複数の発光層を連続して形成することを特徴とする請求項3乃至請求項9のいずれかに記載の発光層形成方法。
【請求項11】
グラビア版を軸方向に複数に区画し、各区画毎に任意の発光層用インキを供給して、発光色が異なる複数の発光層を同時に形成することを特徴とする請求項9に記載の発光層形成方法。
【請求項12】
対向する電極と、該電極間に配設され少なくとも正孔注入層と発光層を有する発光素子層と、を備えた有機発光デバイスの正孔注入層形成方法において、
少なくとも正孔注入材料を含有する正孔注入層用インキをグラビア版のセルに充填させ、該セルからブランケットに正孔注入層用インキを受理させた後、前記ブランケット上の正孔注入層用インキを正孔注入層被形成面に転移する工程を有し、前記グラビア版は請求項1または請求項2に記載のグラビア版であり、前記ブランケットは表面張力が35dyne/cm以上である樹脂フィルムを表面層として備えるものであり、前記正孔注入層用インキはせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が1〜100cPの範囲で、かつ、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)が40dyne/cm以下であり、前記正孔注入層用インキに用いる溶媒は水とアルコール系溶媒との混合溶媒であり、前記アルコール系溶媒は沸点が250℃以下であり、混合溶媒中の前記アルコール系溶媒含有量は5〜70重量%の範囲であることを特徴とする正孔注入層形成方法。
【請求項13】
前記樹脂フィルムの厚みは、5〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項12に記載の正孔注入層形成方法。
【請求項14】
前記ブランケットは、ブランケット胴の周面に前記樹脂フィルムを一体的に備えるものであることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の正孔注入層形成方法。
【請求項15】
前記ブランケットは、グラビア版から正孔注入層用インキを受理する位置と正孔注入層用インキを正孔注入層被形成面に転移する位置とを少なくとも含む範囲において、回転するブランケット胴に巻き付く状態で前記樹脂フィルムが搬送されるものであることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の正孔注入層形成方法。
【請求項16】
前記ブランケット胴は、表面にクッション層を備えることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の正孔注入層形成方法。
【請求項17】
前記正孔注入層用インキにおける前記正孔注入材料の含有量は、0.3〜10.0重量%の範囲であることを特徴とする請求項12乃至請求項16のいずれかに記載の正孔注入層形成方法。
【請求項18】
透明基材と、該透明基材上に所望のパターンで形成された透明電極層と、前記透明基材上に形成され前記電極層の所望の部位が露出する複数の開口部を有する絶縁層と、前記開口部内の前記透明電極層を被覆するように形成され少なくとも発光層と正孔注入層を有する発光素子層と、所望の前記開口部内に位置する前記発光素子層と接続するように形成された電極層と、を備え、前記発光素子層の発光層は、請求項3乃至請求項11のいずれかの方法により形成されたものであり、前記発光素子層の正孔注入層は、請求項12乃至請求項17のいずれかの方法により形成されたものであることを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項19】
基材と、該基材上に所望のパターンで形成された電極層と、前記基材上に形成され前記電極層の所望の部位が露出する複数の開口部を有する絶縁層と、前記開口部内の前記電極層を被覆するように形成され少なくとも発光層と正孔注入層を有する発光素子層と、所望の前記開口部内に位置する前記発光素子層と接続するように形成された透明電極層と、を備え、前記発光素子層の発光層は、請求項3乃至請求項11のいずれかの方法により形成されたものであり、前記発光素子層の正孔注入層は、請求項12乃至請求項17のいずれかの方法により形成されたものであることを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項20】
前記発光素子層を構成する前記発光層の厚みが70nm以上であり、前記正孔注入層の厚みが50nm以上であることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の有機発光デバイス。
【請求項21】
前記発光素子層は、少なくとも正孔注入層/発光層/電子注入層がこの順に積層されたものであることを特徴とする請求項18乃至請求項20のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項22】
パッシブマトリックス型であることを特徴とする請求項18乃至請求項21のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項23】
アクティブマトリックス型であることを特徴とする請求項18乃至請求項21のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項24】
最大開口幅が10mm以上の前記開口部を前記絶縁層に備えた有機発光ポスターであることを特徴とする請求項18乃至請求項22のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項25】
カラーフィルタ層を備えることを特徴とする請求項18乃至請求項24のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項26】
前記カラーフィルタ層と前記透明電極との間に色変換蛍光体層を備えることを特徴とする請求項25に記載の有機発光デバイス。
【請求項27】
前記発光素子層は、白色を含む所望の色の発光であるか、あるいは所望の複数の色の発光が所定のパターンで組み合わされたものであることを特徴とする請求項18乃至請求項26のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項28】
前記発光素子層は、青色発光であり、前記色変換蛍光体層は青色光を緑色蛍光に変換して発光する緑色変換層と、青色光を赤色蛍光に変換して発光する赤色変換層とを備えていることを特徴とする請求項26に記載の有機発光デバイス。
【請求項29】
前記正孔注入層用の塗膜を形成した後1分以内に前記発光層用の塗膜を形成し、これら2層を100〜200℃の範囲で同時に一括乾燥して形成した正孔注入層と発光層とを備えることを特徴とする請求項18乃至請求項28のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項1】
有機発光デバイスの発光層および/または正孔注入層の形成に用いるグラビア版において、
セルがストライプ形状であり、各セルにおける印刷方向の幅bと印刷方向に直交する方向での幅aの比b/aが0.6以上であり、各セルのセル部長Lと非セル部長Sとの比L/Sが0.8〜100の範囲であり、前記セル部長Lが10〜500μmの範囲、前記非セル部長Sが2〜500μmの範囲であり、版深が20〜200μmの範囲であることを特徴とするグラビア版。
【請求項2】
有機発光デバイスの発光層および/または正孔注入層の形成に用いるグラビア版において、
セルが複数に区画された形状であり、各セルにおける印刷方向の最大幅bと印刷方向に直交する方向での最大幅aの比b/aが0.6以上であり、成膜部位に占める総セル面積が55〜95%であり、非セル部長Sが2〜500μmの範囲であり、版深が20〜200μmの範囲であることを特徴とするグラビア版。
【請求項3】
対向する電極と、該電極間に配設され少なくとも発光層を有する発光素子層と、を備えた有機発光デバイスの発光層形成方法において、
少なくとも有機発光材料を含有する発光層用インキをグラビア版のセルに充填させ、該セルからブランケットに発光層用インキを受理させた後、前記ブランケット上の発光層用インキを発光層被形成面に転移する工程を有し、前記グラビア版は請求項1または請求項2に記載のグラビア版であり、前記ブランケットは表面張力が35dyne/cm以上である樹脂フィルムを表面層として備えるものであり、前記発光層用インキはせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が5〜200cPの範囲であり、前記発光層用インキに用いる溶媒は表面張力が40dyne/cm以下で、かつ、沸点が150〜250℃の範囲であることを特徴とする発光層形成方法。
【請求項4】
前記樹脂フィルムの厚みは、5〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項3に記載の発光層形成方法。
【請求項5】
前記ブランケットは、ブランケット胴の周面に前記樹脂フィルムを一体的に備えるものであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の発光層形成方法。
【請求項6】
前記ブランケットは、グラビア版から発光層用インキを受理する位置と発光層用インキを発光層被形成面に転移する位置とを少なくとも含む範囲において、回転するブランケット胴に巻き付く状態で前記樹脂フィルムが搬送されるものであることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の発光層形成方法。
【請求項7】
前記ブランケット胴は、表面にクッション層を備えることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の発光層形成方法。
【請求項8】
前記発光層用インキにおける前記有機発光材料の含有量は、1.5〜4.0重量%の範囲であることを特徴とする請求項3乃至請求項7のいずれかに記載の発光層形成方法。
【請求項9】
前記グラビア版は、複数のセルによって1つのエリアカラー用の絵柄が構成されるものであり、1つの絵柄幅を200μm以上とすることを特徴とする請求項3乃至請求項8のいずれかに記載の発光層形成方法。
【請求項10】
複数組のグラビア版とブランケットを用いて発光色が異なる複数の発光層を連続して形成することを特徴とする請求項3乃至請求項9のいずれかに記載の発光層形成方法。
【請求項11】
グラビア版を軸方向に複数に区画し、各区画毎に任意の発光層用インキを供給して、発光色が異なる複数の発光層を同時に形成することを特徴とする請求項9に記載の発光層形成方法。
【請求項12】
対向する電極と、該電極間に配設され少なくとも正孔注入層と発光層を有する発光素子層と、を備えた有機発光デバイスの正孔注入層形成方法において、
少なくとも正孔注入材料を含有する正孔注入層用インキをグラビア版のセルに充填させ、該セルからブランケットに正孔注入層用インキを受理させた後、前記ブランケット上の正孔注入層用インキを正孔注入層被形成面に転移する工程を有し、前記グラビア版は請求項1または請求項2に記載のグラビア版であり、前記ブランケットは表面張力が35dyne/cm以上である樹脂フィルムを表面層として備えるものであり、前記正孔注入層用インキはせん断速度100/秒における粘度(インキ温度23℃)が1〜100cPの範囲で、かつ、2Hzにおける動的表面張力(インキ温度23℃)が40dyne/cm以下であり、前記正孔注入層用インキに用いる溶媒は水とアルコール系溶媒との混合溶媒であり、前記アルコール系溶媒は沸点が250℃以下であり、混合溶媒中の前記アルコール系溶媒含有量は5〜70重量%の範囲であることを特徴とする正孔注入層形成方法。
【請求項13】
前記樹脂フィルムの厚みは、5〜200μmの範囲であることを特徴とする請求項12に記載の正孔注入層形成方法。
【請求項14】
前記ブランケットは、ブランケット胴の周面に前記樹脂フィルムを一体的に備えるものであることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の正孔注入層形成方法。
【請求項15】
前記ブランケットは、グラビア版から正孔注入層用インキを受理する位置と正孔注入層用インキを正孔注入層被形成面に転移する位置とを少なくとも含む範囲において、回転するブランケット胴に巻き付く状態で前記樹脂フィルムが搬送されるものであることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の正孔注入層形成方法。
【請求項16】
前記ブランケット胴は、表面にクッション層を備えることを特徴とする請求項14または請求項15に記載の正孔注入層形成方法。
【請求項17】
前記正孔注入層用インキにおける前記正孔注入材料の含有量は、0.3〜10.0重量%の範囲であることを特徴とする請求項12乃至請求項16のいずれかに記載の正孔注入層形成方法。
【請求項18】
透明基材と、該透明基材上に所望のパターンで形成された透明電極層と、前記透明基材上に形成され前記電極層の所望の部位が露出する複数の開口部を有する絶縁層と、前記開口部内の前記透明電極層を被覆するように形成され少なくとも発光層と正孔注入層を有する発光素子層と、所望の前記開口部内に位置する前記発光素子層と接続するように形成された電極層と、を備え、前記発光素子層の発光層は、請求項3乃至請求項11のいずれかの方法により形成されたものであり、前記発光素子層の正孔注入層は、請求項12乃至請求項17のいずれかの方法により形成されたものであることを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項19】
基材と、該基材上に所望のパターンで形成された電極層と、前記基材上に形成され前記電極層の所望の部位が露出する複数の開口部を有する絶縁層と、前記開口部内の前記電極層を被覆するように形成され少なくとも発光層と正孔注入層を有する発光素子層と、所望の前記開口部内に位置する前記発光素子層と接続するように形成された透明電極層と、を備え、前記発光素子層の発光層は、請求項3乃至請求項11のいずれかの方法により形成されたものであり、前記発光素子層の正孔注入層は、請求項12乃至請求項17のいずれかの方法により形成されたものであることを特徴とする有機発光デバイス。
【請求項20】
前記発光素子層を構成する前記発光層の厚みが70nm以上であり、前記正孔注入層の厚みが50nm以上であることを特徴とする請求項18または請求項19に記載の有機発光デバイス。
【請求項21】
前記発光素子層は、少なくとも正孔注入層/発光層/電子注入層がこの順に積層されたものであることを特徴とする請求項18乃至請求項20のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項22】
パッシブマトリックス型であることを特徴とする請求項18乃至請求項21のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項23】
アクティブマトリックス型であることを特徴とする請求項18乃至請求項21のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項24】
最大開口幅が10mm以上の前記開口部を前記絶縁層に備えた有機発光ポスターであることを特徴とする請求項18乃至請求項22のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項25】
カラーフィルタ層を備えることを特徴とする請求項18乃至請求項24のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項26】
前記カラーフィルタ層と前記透明電極との間に色変換蛍光体層を備えることを特徴とする請求項25に記載の有機発光デバイス。
【請求項27】
前記発光素子層は、白色を含む所望の色の発光であるか、あるいは所望の複数の色の発光が所定のパターンで組み合わされたものであることを特徴とする請求項18乃至請求項26のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【請求項28】
前記発光素子層は、青色発光であり、前記色変換蛍光体層は青色光を緑色蛍光に変換して発光する緑色変換層と、青色光を赤色蛍光に変換して発光する赤色変換層とを備えていることを特徴とする請求項26に記載の有機発光デバイス。
【請求項29】
前記正孔注入層用の塗膜を形成した後1分以内に前記発光層用の塗膜を形成し、これら2層を100〜200℃の範囲で同時に一括乾燥して形成した正孔注入層と発光層とを備えることを特徴とする請求項18乃至請求項28のいずれかに記載の有機発光デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−18948(P2007−18948A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201189(P2005−201189)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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