説明

グリオキシル酸の生化学的製造方法

本発明は、工業的に有利なグリオキサールからのグリオキシル酸の生化学的製造方法を提供する。詳しくは、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する能力を有するオキシダーゼおよびデヒドロゲナーゼなどの酸化還元酵素をグリオキサールに作用させ、グリオキシル酸へ変換することを特徴とするグリオキシル酸の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は微生物および/または微生物由来の酵素を用いることによるグリオキサールからグリオキシル酸を製造する方法に関する。グリオキシル酸はバニリン、エチルバニリンなどの合成原料として用いられ、農薬、さらには医薬品の合成の中間体としても有用な化合物である。
【背景技術】
従来よりグリオキシル酸の製造方法としては、グリオキサールの硝酸酸化などの化学的手法が知られており、また現在はグリオキシル酸のほとんどがこれら化学的手法により製造されている。しかしながら、グリオキサールの硝酸酸化などの化学的手法はグリオキシル酸以外の有機酸などの副生成物を生じやすく、製造されたグリオキシル酸の品質に好ましくない影響を与え、これらを除去するためには煩雑な工程を必要とする。また、大量に使用された硝酸などの中和工程で生成する大量の塩類廃棄物の処理が問題となる。
グリオキシル酸の生化学的製造方法としては、植物由来のグリコール酸オキシダーゼを用いグリコール酸をグリオキシル酸へ変換する方法(特許特表平7−502895号公報、特表平8−508159号公報を参照)や、微生物によるグリコール酸からのグリオキシル酸への変換方法などが知られている(特開平7−163380号公報、特開平8−322581号公報参照)。しかし、エチレングリコールやアセトアルデヒドより容易に合成され、安価に入手可能な化合物であり、グリオキシル酸の化学的な合成法における原料としても用いられているグリオキサールからグリオキシル酸への生化学的手法による合成方法は、報告されていない。
また、アルデヒド基を酸化するオキシダーゼが、おもに動物、植物などに存在することが確認されているが、それら酵素がグリオキサールに対し活性を示すとの報告はない。また、Phanerochaete chrysosporiumなどの白色腐朽菌の一部が、グリオキサールと反応し過酸化水素を生成する活性を有する酵素(グリオキサールオキシダーゼと呼ばれている)を菌体外に産生することが知られている(Journal of Bacteriology,(1987),169,2195−2201、Pro.Natl.Acad.Sci.(1990),87,2936−2940参照)。しかし、これら白色腐朽菌が産生する酵素によるグリオキサールの酸化反応時の生成物の同定はなされておらず、これら木材腐朽菌の酵素は、グリオキシル酸に対してもグリオキサールと同程度の酸化活性を有するため、これらの酵素によりグリオキサールをグリオキシル酸へと変換・蓄積させることは難しい。なお、これら木材腐朽菌の酵素以外の、グリオキサールを酸化する微生物由来のオキシダーゼは報告されていない。
したがって、本発明は、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する活性を有する微生物および/または当該活性を有する酵素、ならびにこれらを用いた効率的なグリオキシル酸の製造方法を提供することを目的とする。
【発明の開示】
本発明者らは、グリオキシル酸の効率的な製造方法を開発すべく鋭意検討を行なった結果、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する活性を有する微生物を見出し、それら微生物および/または該微生物から得た酵素液を用いたグリオキシル酸合成について詳細な検討を行なうことにより本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する能力を有する酸化還元酵素、または該酸化還元酵素の産生能を有する微生物の培養液、培養液上清、菌体および菌体処理物のいずれか1種もしくは2種以上のそれらの混合物をグリオキサールに作用させ、グリオキシル酸へ変換することを特徴とするグリオキシル酸の製造方法に関する。
前記酸化還元酵素は、オキシダーゼであることが好ましい。
前記酸化還元酵素は、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)属、ストレプトミセス(Streptomyces)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、セルロモナス(Cellulomonas)属、セルロシミクロビウム(Cellulosimicrobium)属、モルガネラ(Morganella)属からなる群から選ばれる少なくとも1つの微生物から得られた酵素であることが好ましい。
前記微生物は、ステノトロフォモナス・スピーシーズ(Stenotrophomonas sp.)KNK235((寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、寄託日 平成14年9月6日、受託番号 FERM P−19002)、ストレプトミセス・スピーシーズ(Streptomyces sp.)KNK269((寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、寄託日 平成14年9月6日、受託番号 FERM BP−08556)、シュードモナス・スピーシーズ(Pseudomonas sp.)KNK058((寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、寄託日 平成14年12月13日、受託番号 FERM BP−08555)、シュードモナス・スピーシーズKNK254((寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、寄託日 平成14年9月6日、受託番号 FERM P−19003)、ミクロバクテリウム・スピーシーズ(Microbacterium sp.)KNK011((寄託機関 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、寄託日 平成14年12月13日、受託番号 FERM BP−08554)、アクロモバクター・スピーシーズ(Achromobacter sp.)IFO 13495(寄託機関 独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部・生物遺伝資源部門(NBRC)、あて名 〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ 鎌足2−5−8)、セルロモナス・スピーシーズ(Cellulomonas sp.)JCM 2471(寄託機関 独立行政法人理化学研究所微生物系統保存施設(JCM)、あて名 〒351−0198 日本国埼玉県和光市広沢2−1)、セルロモナス・タバタ(Cellulomonas turbata)IFO 15012(寄託機関 独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部・生物遺伝資源部門(NBRC)、あて名 〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ 鎌足2−5−8)、セルロモナス・タバタIFO 15014(寄託機関 独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部・生物遺伝資源部門(NBRC)、あて名 〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ 鎌足2−5−8)、セルロモナス・タバタIFO 15015(寄託機関 独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部・生物遺伝資源部門(NBRC)、あて名 〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ 鎌足2−5−8)、セルロシミクロビウム・セルランス(Cellulosimicrobium Cellulans)IFO 15013(寄託機関 独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部・生物遺伝資源部門(NBRC)、あて名 〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ 鎌足2−5−8)、セルロシミクロビウム・セルランスIFO 15516(寄託機関 独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部・生物遺伝資源部門(NBRC)、あて名 〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ 鎌足2−5−8)、セルロシミクロビウム・セルランスJCM 6201(寄託機関 独立行政法人理化学研究所微生物系統保存施設(JCM)、あて名 〒351−0198 日本国埼玉県和光市広沢2−1)、モルガネラ・モルガニイ(Morganella morganii)IFO 3848(寄託機関 独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部・生物遺伝資源部門(NBRC)、あて名 〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ 鎌足2−5−8)であることが好ましい。
前記グリオキシル酸の製造方法は、反応時にカタラーゼを共存させることが好ましい。
また、本発明は、グリオキサールに作用し、グリオキシル酸を生成する微生物由来のアルデヒドオキシダーゼに関する。
前記グリオキシル酸に対する活性は、グリオキサールに対する活性の1/10倍以下の活性であることが好ましい。
前記アルデヒドオキシダーゼは、ステノトロフォモナス属、ストレプトミセス属、シュードモナス属、ミクロバクテリウム属、アクロモバクター属、セルロモナス属、セルロシミクロビウム属、モルガネラ属からなる群から選ばれる少なくとも1つの微生物が産生するものであることが好ましい。
前記微生物は、ステノトロフォモナス・スピーシーズKNK235(FERM P−19002)、ストレプトミセス・スピーシーズKNK269(FERM BP−08556)、シュードモナス・スピーシーズKNK058(FERM BP−08555)、シュードモナス・スピーシーズKNK254(FERM P−19003)、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011(FERM BP−08554)、アクロモバクター・スピーシーズIFO 13495、セルロモナス・スピーシーズJCM 2471、セルロモナス・タバタIFO 15012、セルロモナス・タバタIFO 15014、セルロモナス・タバタIFO 15015、セルロシミクロビウム・セルランスIFO 15013、セルロシミクロビウム・セルランスIFO 15516、セルロシミクロビウム・セルランスJCM 6201、モルガネラ・モルガニイIFO 3848であることが好ましい。
前記アルデヒドオキシダーゼは、以下(1)〜(3)の理化学的性質を有するストレプトミセス属微生物が産生するアルデヒドオキシダーゼであることが好ましい。
(1)至適pH:6〜9
(2)熱安定性:pH7.2で60℃、20分処理したのち、90%以上の活性を保持している
(3)分子量:ゲル濾過分析において約11万であり、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析において、約2.5万、約3.5万、約8万の3つのサブユニットタンパク質を有する
前記アルデヒドオキシダーゼは、以下(1)〜(3)の理化学的性質を有するシュードモナス属に属する微生物が産生するアルデヒドオキシダーゼであることが好ましい。
(1)分子量:ゲル濾過分析において約15万
(2)反応至適温度:60〜70℃
(3)反応至適pH:5〜7
前記アルデヒドオキシダーゼは、以下の理化学的性質を有するミクロバクテリウム属微生物が菌体内および菌体外に産生するアルデヒドオキシダーゼであることが好ましい。
分子量:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析において約11万の単一タンパク質
前記アルデヒドオキシダーゼは、以下の理化学的性質を有するセルロシミクロビウム属微生物が菌体内および菌体外に産生するアルデヒドオキシダーゼであることが好ましい。
分子量:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析において約9〜10万の単一タンパク質
前記ストレプトミセス属に属する微生物は、ストレプトミセス・スピーシーズKNK269(FERM BP−08556)であることが好ましい。
前記シュードモナス属に属する微生物は、シュードモナス・スピーシーズKNK058(FERM BP−08555)であることが好ましい。
前記ミクロバクテリウム属に属する微生物は、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011(FERM BP−08554)であることが好ましい。
前記セルロシミクロビウム属に属する微生物は、セルロシミクロビウム・セルランスIFO 15516であることが好ましい。
前記アルデヒドオキシダーゼは、以下の(a)または(b)のタンパク質をサブユニットとして有するアルデヒドオキシダーゼであることが好ましい。
(a)配列番号1、2もしくは3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)アミノ酸配列(a)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれか1つを含むタンパク質
前記アルデヒドオキシダーゼは、以下の(a)または(b)のDNAによってコードされるタンパク質をサブユニットとして有するアルデヒドオキシダーゼであることが好ましい。
(a)配列番号4、5もしくは6の塩基配列からなるDNA
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAのいずれか1つとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
前記アルデヒドオキシダーゼは、以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなるアルデヒドオキシダーゼであることが好ましい。
(a)配列番号7、8、11もしくは12で表されるアミノ酸配列
(b)アミノ酸配列(a)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列
前記アルデヒドオキシダーゼは、以下の(a)または(b)のDNAによってコードされるアルデヒドオキシダーゼであることが好ましい。
(a)配列番号9、10、13もしくは14の塩基配列からなるDNA
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
さらに、本発明は、前記アルデヒドオキシダーゼをコードするDNAにも関する。
詳しくは、前記DNAは、以下の(a)または(b)のいずれかを含んでなる、前記アルデヒドオキシダーゼのサブユニットをコードするDNAであることが好ましい。
(a)配列番号4、5もしくは6の塩基配列からなるDNA
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAのいずれか1つとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
前記DNAは、以下の(a)または(b)のいずれかを含んでなる、前記アルデヒドオキシダーゼをコードするDNAであることが好ましい。
(a)配列番号9、10、13もしくは14の塩基配列からなるDNA
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAのいずれか1つとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
前記DNAは、配列番号1、2または3で表わされるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれかを含んでなる、前記アルデヒドオキシダーゼのサブユニットをコードするDNAであることが好ましい。
前記DNAは、配列番号7、8、11または12で表わされるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれかを含んでなる、前記アルデヒドオキシダーゼをコードするDNAであることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
図1は、オキシダーゼ反応の活性測定法の原理を示す図である。図2は、本発明のKNK269株由来酵素の反応至適pHを示す図である。緩衝液として、0.1M MacIlvine緩衝液(●)、0.1M リン酸緩衝液(○)、0.1M Tricine緩衝液(△)、または0.1M Glycine−HCl緩衝液(×)を使用した。図3は、本発明のKNK269株由来酵素の熱安定性を示す図である。図4は、本発明のKNK058株由来酵素の反応至適温度を示す図である。図5は、本発明のKNK058株由来酵素の反応至適pHを示す図である。緩衝液として、0.1M MacIlvine緩衝液(●)、0.1M リン酸緩衝液(○)、または0.1M Tricine緩衝液(×)を使用した。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明のグリオキサールのグリオキシル酸への変換反応を式1および式2に示す。

前記式1に示される反応は、オキシダーゼまたは該オキシダーゼを含有する微生物が介在する場合であり、前記式2に示される反応は、デヒドロゲナーゼまたは該デヒドロゲナーゼを含有する微生物が介在する場合である。本明細書において、グリオキサールからグリオキシル酸への変換は、前記式1および式2に示されるどちらの反応による変換をも包含しする。したがって、グリオキサールからグリオキシル酸へ変換する能力を有する酸化還元酵素とは、オキシダーゼまたはデヒドロゲナーゼを意味し、アルデヒドをカルボン酸に変換する酵素であればいずれでも良い。とくに、グリオキシル酸を蓄積するという点で、グリオキシル酸に対しては活性を有さないか、または低い活性しか有さない酵素が好ましい。
また、該酸化還元酵素の酸性能を有する微生物の培養液、培養上清、菌体および菌体処理物のいずれか1種または2種以上の混合物を用いて、グルオキサールからグリオキシル酸への変換することも可能である。反応がデヒドロゲナーゼにより触媒される場合(式2)、基質以外に補酵素、(たとえば、NAD(ニコチンアミド−アデニンジヌクレオチド)やNADP(ニコチンアミド−アデニンジヌクレオチドリン酸))が必要である。一方、反応がオキシダーゼにより触媒される場合は(式1)、基質であるグリオキサール以外に酸素があれば反応が進行するため、コスト的観点からオキシダーゼを用いることが有利である。
反応がオキシダーゼにより触媒される場合、グリオキシル酸以外に過酸化水素が生成され、この過酸化水素を検出することにより目的のオキシダーゼ活性は容易に検出できる。本発明における目的のオキシダーゼ活性の検出、定量は、図1に示すように、酸化反応により生成する過酸化水素を4−アミノアンチピリン(以下4−AA)とN−エチル−(2−ヒドロキシ−3−スルフォプロピル)−m−トルイジン(以下TOOS)と反応させ、生成するキノンイミン色素を検出、定量することにより行なうことができる。
具体的には以下の組成を含有する100mMリン酸緩衝液(pH7)0.9mlに、菌体懸濁液または酵素液0.1mlを添加し、30℃での波長555nmの吸光度の増加を測定することにより行なう。本発明において、1分間に1μmolのHを生成する酵素活性を1unitと定義する。
(組成)
グリオキサール 20mM
4−AA 0.67mM
TOOS 1.09mM
ワサビ由来ペルオキシダーゼ(以下POD) 2U/mL
また、グリオキサールおよびグリオキシル酸の定量は、高速液体クロマトグラフィーで行なうことができる。高速クロマトグラフィーによる分析は、たとえば、バイオラッド・アミネックスHPX−87H(7.8mm×300mm)カラムを用い、溶媒として5mMのHSO水溶液を用い、流速0.4ml/分で行なうことができる。検出は230nmの吸光度または示差屈折率を測定することにより行なう。本条件により、グリオキサールは16分、グリオキシル酸は15分に溶出される。
目的のオキシダーゼ活性を有する微生物は、たとえば、以下のようなスクリーニングにより取得することができる。炭素源として、グリオキサール、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはグリコールアルデヒド10g、硝酸アンモニウム2g、リン酸水素二カリウム1g、リン酸水素−ナトリウム、酵母エキス0.1g、硫酸マグネシウム7水和物0.2g、塩化カルシウム二水和物0.1g(いずれも1L当り)の組成からなる、高圧蒸気殺菌された(121℃、20分間)のS培地(pH7)5mlに、日本国内より採取した土壌サンプル各2gを10mlの生理食塩水に懸濁後の上清液0.2mlを加えて、28℃で3〜7日間集積培養を行なった。菌が生育した培養液を2%寒天を含むS培地プレートに0.1mlずつ塗布し、28℃で3〜7日間培養を行なった。そののち、生育したコロニーについて、再度2%寒天培地を含むS培地プレートにて静置培養を行ない、生育が確認された菌株を各炭素源に対する資化性菌とした。そののち、これら資化性菌について、グリオキサールのグリオキシル酸への変換活性を調べた。それぞれの菌体を試験管中S培地5mlで28℃、3〜5日間振とう培養後、菌体を遠心分離により集め、生理食塩水で洗浄したのち、100mM Tris−HCl緩衝液(pH8)0.5mlに懸濁した。その菌体懸濁液0.1mlを50mMグリオキサールを含む100mM Tris−HCl緩衝液(pH8)0.2mlに添加し、28℃で6〜12時間振とうさせた。そののち、反応液を遠心分離し、上澄液を高速液体クロマトグラフィーにより分析し、グリオキシル酸の生成の確認および定量を行なった。
また、グリオキサールの酸化が前記オキシダーゼにより触媒される場合、グリオキシル酸と同時に過酸化水素が生じるので、反応時に生成する過酸化水素を検出することによりオキシダーゼ保有菌を見出すこともできる。すなわち、前記S培地で培養して得られた菌体の菌体懸濁液0.1mlを50mMグリオキサール、1.34mM 4−AA、2.18mM TOOS、4U/mlペルオキシダーゼ含有する100mMリン酸緩衝液0.1mlに添加し、28℃で2時間振とうし、反応液が紫色になったもの、すなわちグリオキサールに対する反応により過酸化水素が生じた株を選別することにより、グリオキサールオキシダーゼ活性を保有する菌株を取得することが可能である。
グリオキサールをグリオキシル酸へと変換する能力を有する微生物としては、ステノトロフォモナス属、ストレプトミセス属、シュードモナス属、ミクロバクテリウム属、アクロモバクター属、セルロモナス属、セルロシミクロビウム属、モルガネラ属等に属する微生物をあげることができる。それらのなかで代表的な微生物として、ステノトロフォモナス・スピーシーズKNK235(FERM P−19002)、ストレプトミセス・スピーシーズKNK269(FERM BP−08556)、シュードモナス・スピーシーズKNK058(FERM BP−08555)、シュードモナス・スピーシーズKNK254(FERM P−19003)、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011(FERM BP−08554)、アクロモバクター・スピーシーズIFO 13495、セルロモナス・スピーシーズJCM 2471、セルロモナス・タバタIFO 15012、セルロモナス・タバタIFO 15014、セルロモナス・タバタIFO 15015、セルロシミクロビウム・セルランスIFO 15013、セルロシミクロビウム・セルランスIFO 15516、セルロシミクロビウム・セルランスJCM 6201、モルガネラ・モルガニイIFO 3848などをあげることができる。これらの微生物のうちIFO 13495、IFO 15012、IFO 15014、IFO 15015、IFO 15013、IFO 15516、IFO 3848は公知であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部・生物遺伝資源部門(NBRC)(〒292−0818 日本国千葉県木更津市かずさ 鎌足2−5−8)から容易に入手することができる。JCM 2471およびJCM 6201もまた公知であり、独立行政法人理化学研究所微生物系統保存施設(JCM)(〒351−0198 日本国埼玉県和光市広沢2−1)から容易に入手することができる。その他の微生物は本発明者により土壌から新たに分離・同定され、それぞれ前記寄託番号にて独立法人産業技術総合研究所特許微生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に寄託されている。前記ステノトロフォモナス・スピーシーズKNK235(以下、単にKNK235株という場合もある)、シュードモナス・スピーシーズKNK058(以下、単にKNK058株という場合もある)、シュードモナス・スピーシーズKNK254(以下、単にKNK254株という場合もある)およびミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011(以下、単にKNK011株という場合もある)の菌学的性質を表1に示す。

ストレプトミセス・スピーシーズKNK269株(以下、単にKNK269株という場合もある)の同定は以下の周知の方法にもとづき行なった。該菌株の16SリボゾーマルRNA遺伝子(16SrDNA)のうち5‘末端側約500bpの領域をPCRで増幅して、塩基配列を決定し、MicroSeq Bacterial 500library v.0023(Applied Biosystems社、CA,USA)データベースを用いて相同性検索を行ない、分子系統樹を作製する方法で行なった。
前記アルデヒドオキシダーゼが、ストレプトミセス属微生物が産生するアルデヒドオキシダーゼの場合、以下(1)〜(3)の理化学的性質を有することが好ましい。
(1)至適pH:6〜9
(2)熱安定性:pH7.2で60℃、20分処理したのち、90%以上の活性を保持している
(3)分子量:ゲル濾過分析において約11万であり、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析において、約2.5万、約3.5万、約8万の3つのサブユニットタンパク質を有する
また、ストレプトミセス属微生物のなかでも、ストレプトミセス・スピーシーズKNK269(FERM BP−08556)が好ましい。
前記アルデヒドオキシダーゼが、シュードモナス属に属する微生物が産生するアルデヒドオキシダーゼの場合、以下(1)〜(3)の理化学的性質を有することが好ましい。
(1)分子量:ゲル濾過分析において約15万
(2)反応至適温度:60〜70℃
(3)反応至適pH:5〜7
また、シュードモナス属微生物のなかでも、シュードモナス・スピーシーズKNK058(FERM BP−08555)が好ましい。
前記アルデヒドオキシダーゼが、ミクロバクテリウム属微生物が菌体内および菌体外に産生するアルデヒドオキシダーゼの場合、以下の理化学的性質を有することが好ましい。
分子量:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析において約11万の単一タンパク質
また、ミクロバクテリウム属微生物のなかでも、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011(FERM BP−08554)が好ましい。
前記アルデヒドオキシダーゼが、セルロシミクロビウム属微生物が菌体内および菌体外に産生するアルデヒドオキシダーゼの場合、以下の理化学的性質を有することが好ましい。
分子量:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析において約9〜10万の単一タンパク質
また、セルロシミクロビウム属微生物のなかでも、セルロシミクロビウム・セルランスIFO 15516が好ましい。
本発明において、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する能力を有する酸化還元酵素の産生能を有する微生物を培養するための培地は、その微生物が増殖し得るものであれば特に限定されない。たとえば、炭素源として、グルコースおよびシュークロースなどの糖質、エタノール、グリセロール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのアルコール類、グリオキサールなどのアルデヒド類、オレイン酸およびステアリン酸などの脂肪酸ならびにそのエステル類、菜種油および大豆油などの油類;窒素源として、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、ペプトン、ガザミノ酸、酵母エキス、肉エキスおよびコーンスチープリカーなど;無機塩類として、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸一水素カリウムおよびリン酸二水素カリウムなど;その他に、麦芽エキス、肉エキスなどを含有する通常の液体培地が使用され得る。
本発明によるグリコール酸の製造方法は、前記酸化還元酵素、または該酸化還元酵素の産生能を有する微生物の培養液、培養液から分離した微生物菌体、微生物菌体処理物、さらには微生物菌体外にも前記酸化酵素が産生される場合は培養液上清のいずれかをグリオキサールに作用させ、グリオキシル酸へと変換蓄積せしめることを特徴とする。
ここで、微生物菌体処理物とは、たとえば、凍結乾燥菌体、アセトン乾燥菌体、それら菌体の破砕物、または粗酵素液などを意味する。用語「粗酵素液」には、たとえば、菌体のグラスビーズなどを用いる物理的破砕方法、酵素などを用いる生化学的方法などにより破砕または溶解した溶液、さらには遠心分離などにより該溶液中の固形物を除去して得た無細胞抽出液が含まれる。また、さらには、当業者が通常用いる方法、たとえば、透析、硫酸アンモニウム沈澱、クロマトグラフィーを単独でまたは組合わせて用い、前記無細胞抽出液を部分的に精製した酵素も「粗酵素液」に含まれる。また、微生物菌体処理物は、公知の手段で固定化して用いることもできる。固定化は当業者に周知の方法(たとえば、架橋法、物理的吸着法、包括法など)で行ない得る。
反応条件は使用する酵素、微生物またはその処理物により異なるが、最適な反応条件としては、温度は10〜80℃、好ましくは熱安定性の観点から20〜40℃の範囲、pHはpH4〜12、好ましくはpH安定性の観点からpH6〜10の範囲である。反応は振とう、撹拌条件下で実施するのが好ましい。
反応がオキシダーゼにより触媒される場合、反応系に過酸化水素が生成する。過酸化水素は酵素を失活させたり、グリオキシル酸をギ酸へと分解する場合もあるが、カタラーゼを添加することにより、反応により生じた過酸化水素を分解除去し、酵素の失活やグリオキシル酸の分解を防ぐことが可能である。
本発明の酵素としては、グリオキシル酸に対しては、低い活性しか示さないものが望ましい。とくに、本発明の酵素は、グリオキシル酸に対する活性が、グリオキサールに対する活性の1/10倍以下であるものが好ましく、1/20倍以下であることがより好ましく、1/100倍以下であることがさらに好ましい。オキシダーゼのグリオキシル酸に対する活性が、グリオキサールに対する活性の1/10倍をこえると、グリオキサールが酸化されて生成したグリオキシル酸がさらに酸化されるため、反応系にグリオキシル酸が蓄積されない、または蓄積量が低下する傾向がある。このように、本発明のオキシダーゼは、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換することだけでなく、グリオキシル酸に対し活性が低いことが特徴である。グリオキサールに対し活性を示すことが知られている木材腐朽菌が産生するグリオキサールオキシダーゼは、グリオキシル酸に対しても高い活性を示す。表2に本発明酵素と木材腐朽菌が産生する酵素それぞれの、グリオキサールとグリオキシル酸に対する活性を示す。本発明酵素はグリオキサールに比べ、グリオキシル酸には非常に低い活性しか示さない。

さらに、本発明は、前記アルデヒドオキシダーゼを効果的に組換え生産するため使用することができる前記アルデヒドオキシダーゼをコードするDNAに関する。詳しくは、本発明は、配列番号4、5または6の塩基配列からなるアルデヒドオキシダーゼのサブユニットをコードするDNAに関し、さらには、該塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAのいずれか1つとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも、該DNAによってコードされるタンパク質をサブユニットとして有するタンパク質が、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する活性を有する限りにおいて、本発明のDNAに含まれる。
また、本発明は、配列番号9、10、13または14の塩基配列からなるアルデヒドオキシダーゼをコードするDNAにも関し、さらには該塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAのいずれか1つとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも、該DNAによってコードされるタンパク質が、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する活性を有する限りにおいて、本発明のDNAに含まれる。
また、配列番号1、2または3で表わされるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれかを含んでなるタンパク質をコードするDNAも、該DNAによってコードされるタンパク質をサブユニットとして有するタンパク質が、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する活性を有する限りにおいて、本発明のDNAに含まれる。
さらに、配列番号7、8、11または12で表わされるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれかを含んでなるタンパク質をコードするDNAも、該DNAによってコードされるタンパク質が、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する活性を有する限りにおいて、本発明のDNAに含まれる。
本発明は、配列番号4、5もしくは6の塩基配列からなるDNAによってコードされるタンパク質をサブユニットとして有するアルデヒドオキシダーゼ、または配列番号9、10、13もしくは14の塩基配列からなるDNAによってコードされるアルデヒドオキシダーゼにも関する。さらには、配列番号4、5もしくは6の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAのいずれか1つとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるタンパク質をサブユニットとして有するアルデヒドオキシダーゼ、配列番号9、10、13もしくは14の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアルデヒドオキシダーゼも、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する活性を有する限りにおいて、本発明のオキシダーゼに含まれる。
ハイブリダイゼーションは、当業者に周知の操作により実施することができる。たとえば、具体的には、配列番号4、5、6、9、10、13、または14に示した塩基配列の2本鎖DNAをニックトランスレーション法により32Pで末端標識したDNAをプローブDNAとして用いたサザンハイブリダイゼーションにより実施できる(Molecular Cloning 第3版2001年(Cold Spring Harbor Laboratory Press、 Cold Spring Harbor、New York、USA),Vol.1、チャプター6.50〜55参照)。任意の生物、微生物から調製した染色体DNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、人工的に作製されたベクターDNA、またはこれらのDNAを適当な制限酵素で消化したDNA断片をアガロースゲル電気泳動で分離後、ニトロセルロースフィルターに固定し、前記プローブDNAと結合するDNAをオートラジオフラフィーで検出することで、本発明に使用しうるアルデヒドオキシダーゼの遺伝子を検出することができる。ハイブリダイゼーションにおけるストリンジェントな条件としては、ニトロセルロースフィルターに固定したDNAと標識プローブDNAを6×SSC、5×デンハルト試薬、0.5% SDS、1μg/m poly(A)、100μg/mlサケ精子DNAからなる緩衝液中、68℃でハイブリダイズし、2×SSC、0.5%SDSからなる緩衝液でリンスした後、2×SSC、0.1%SDSからなる緩衝液を用い、30℃で30分の洗浄を2回行なう場合であり、さらにストリンジェントな条件としては1×SSC、0.5%SDSからなる緩衝液を用い、65℃で30分の洗浄を4回行なう場合である。1×SSCは0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウムからなる水溶液で、1×デンハルト試薬は、0.02%Ficoll 400(Sigma−Aldrich Corporation製)、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%牛血清アルブミン(Sigma−Aldrich Corporation製、FractionV)からなる。
また、本発明は、配列番号1、2もしくは3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質をサブユニットとして有するアルデヒドオキシダーゼ、または配列番号7、8、11もしくは12で表されるアミノ酸配列のアミノ酸配列からなるアルデヒドオキシダーゼにも関する。さらに、配列番号1、2または3で表されるアルデヒドオキシダーゼのサブユニットγ、βまたはαのアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれか1つを含むタンパク質も、該タンパク質をサブユニットとして有するタンパク質が、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する活性を有する限り、本発明のオキシダーゼに含まれる。また、配列番号7、8、11または12で表されるアミノ酸配列において、1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列を含むタンパク質も、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する活性を有する限り、本発明のオキシダーゼに含まれる。
特定のアミノ酸を欠失、置換または付加する方法としては、特定アミノ酸のコドンを欠失、または他のアミノ酸のコドンに置換、または他のアミノ酸のコドンを付加した塩基配列を含む合成DNAプライマーを使用したPCR、または化学的なDNA合成法などの公知の方法により作製した酵素の遺伝子を、遺伝子発現用のベクターに連結し、大腸菌などを宿主として組換え発現する方法などの従来公知の方法が用いられ、当業者であれば容易に実施し得る。
微生物の菌体外に分泌される酵素では、一般に遺伝子の開始コドンから数十アミノに相当する部分に分泌シグナル配列がコードされており、菌体内で合成された酵素タンパク質が菌体外に分泌される過程で分泌シグナル配列は切断されて成熟型の酵素となることが知られている。本発明に記載されている酵素のうちのいくつかでは菌体外にも活性な酵素が分泌されるが、これらの酵素の組換え生産においては、分泌シグナル配列を人為的に除去した遺伝子を用いることにより、酵素タンパク質を宿主となる微生物の菌体内に生産させて使用することができる。本発明はこの目的において使用できる分泌シグナル配列を除去した酵素遺伝子(配列番号10および14)も提供する。また、一方では、酵素の組換え発現において宿主微生物の菌体外に酵素を生産させる目的で、分泌シグナル配列を含んだ遺伝子(配列番号9および13)を用いることもできる。さらには、本来の分泌シグナル配列を宿主微生物に適した分泌シグナル配列に置換したキメラ遺伝子を作製して使用することも当業者に公知の方法により可能である。
本発明に使用できる酵素の遺伝子は以下に述べる方法で得ることができる。すなわち、グリオキサールをグリオキシル酸に変換する酵素を生産する微生物の菌体または培養液から酵素タンパク質を精製し、酵素タンパク質をプロテアーゼ消化して得られるペプチドを用いて部分アミノ酸配列を決定する。次に、周知の方法により、これらの部分アミノ酸配列をもとに合成したプライマーを用いて、ゲノムDNAを鋳型としてPCRを行なうことによって酵素遺伝子の一部を増幅し、遺伝子内部の塩基配列を決定することができる。N−末端アミノ酸配列、またはC−末端近傍のアミノ酸配列から合成したDNAプライマーを用いてインバースPCRを行なうことでシグナル配列、N−末端アミノ酸配列およびC−末端アミノ酸配列などを決定することができる(Cell Science 1990、vol.6 No.5 370−376)。塩基配列を決定したアルデヒドオキシダーゼの遺伝子はPCRを用いて容易に取得できる。また、遺伝子の一部の配列を利用して公知の方法により微生物の染色体DNAまたはゲノムDNAから取得することが可能である。
本発明に用いる酵素は、天然酵素であってもよく、また組換え技術により得られた酵素であってもよい。組換え技術の方法としては、たとえば、酵素の遺伝子をプラスミドベクター、ファージベクターなどに挿入し、大腸菌などの細菌、酵母やカビなどの微生物、動物、植物、または動植物の細胞などの宿主を形質転換する方法などが有効である。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【実施例1】
エチレングリコール10g、酵母エキス1g、NUTRIENT BROTH(Difco社製)8g、リン酸水素一カリウム3g、リン酸水素二カリウム7g(いずれも1L当り)の組成からなる液体培地(EG−NB培地(pH7))5mlを大型試験管に分注し、121℃で20分間高圧蒸気殺菌した。この培地に表3に示す微生物を無菌的に一白金耳植菌し、28℃で2日間培養し、前培養液を得た。ついで、500ml容坂口フラスコ中100mlの殺菌処理後のEG−NB培地に、得られた前培養液を1ml植菌し、28℃で3日間培養した。得られた培養液100mlより遠心分離により菌体を集め、100mMTris−HCl緩衝液(pH8.0)で洗浄後、同緩衝液(pH8.0)5mlに懸濁した。本菌体懸濁液をミニビートビーター(BIOSPEC社製)で破砕後、遠心分離により上澄液(無細胞抽出液)を得た。得られた無細胞抽出液0.8mlに500mMグリオキサール水溶液0.1ml、50,000U/mlのカタラーゼ溶液を0.1ml添加し、試験管中で、28℃で4時間振とう反応を行ない、得られた反応液を高速液体クロマトグラフィーにより分析した。グリオキシル酸の生成量を表3にまとめた。

【実施例2】
実施例1で調製した表3記載の微生物の無細胞抽出液0.1mlに、試験管中で4−AA1.34mM、TOOS2.19mM、POD6U/mlを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7)0.05mlを添加した。さらに100mMグリオキサール水溶液または水を0.05ml添加し、28℃、2分間振とうし、反応液の色の変化を観察した。その結果を表4に示す。いずれの微生物を用いた反応においても、グリオキサール水溶液を添加したものは反応液が濃い紫色に着色したが、グリオキサール水溶液の代わりに水を添加した場合、反応液は変色しなかった。グリオキサールの酸化反応時に過酸化水素が生成することがわかり、このことよりグリオキサールの酸化反応を触媒している酵素はオキシダーゼであることが判った。

【実施例3】
実施例1と同様な方法で調製したシュードモナス・スピーシーズKNK254株、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株、セルロモナス・タバタIFO15015株およびセルロモナス・スピーシーズJCM2471株の培養液100mlより遠心分離により菌体を集め、0.1mMリン酸緩衝液(pH7)で洗浄後、同緩衝液5mlに懸濁した。試験管中、本菌体懸濁液0.45mlに500mMグリオキサール水溶液0.05mlを添加し、4時間振とうして反応を行なった。反応後の上澄みをHPLCで分析し、生成したグリオキシル酸を算出した。その結果シュードモナス・スピーシーズKNK254株では20mM、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株では14mM、セルロモナス・タバタIFO15015株では30mM、セルロモナス・スピーシーズJCM2471株では33mMのグリオキシル酸が生成していた。
【実施例4】
以下の方法に従って、ストレプトミセス・スピーシーズKNK269株より、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する活性を有するアルデヒドオキシダーゼの精製を行なった。
エチレングリコール10g、酵母エキス3g、Nutrient broth8g、リン酸水素二カリウム3g、リン酸水素二カリウム7g(いずれも1Lあたり)の組成よりなる培地(pH7)50mlを500ml容坂口フラスコにいれて高圧蒸気殺菌後、ストレプトミセス・スピーシーズKNK269株を一白金耳植菌し、28℃で3日間振とう培養し、前培養液を得た。ついで、10リットルミニジャーに前記組成の培地6Lをいれて高圧蒸気殺菌後、前培養液50mlを植菌し、28℃、通気0.5vvm、撹拌300rpmで2日間培養を行なった。本ミニジャー培養を繰り返し95Lの培養液を取得し、ついで得られた培養液95Lから遠心分離により菌体を集め、0.05Mリン酸緩衝液(pH7)3Lに懸濁した。
得られた菌体懸濁液をダイノミル(Dyno−Mill社製)で破砕後、遠心分離により菌体残渣を除き、無細胞抽出液2.5Lを得た。得られた無細胞抽出液2.5Lに氷冷下スターラーで撹拌しながら、所定量の硫酸アンモニウムを添加し、硫酸アンモニウム30−55%飽和で沈殿するタンパク質を遠心分離により集めた。
得られたタンパク質を0.05Mリン酸緩衝液(pH7)で溶解し、同緩衝液により透析を行なったのち、これを同緩衝液で予め平衡化したDEAE−トヨパール650M(東ソー株式会社製)カラム(130ml)にチャージし、素通り画分を除去後、0.5M塩化ナトリウムを含む0.05Mリン酸緩衝液(pH7)で溶出し、活性画分を集めた。得られた酵素液に、硫酸アンモニウムを0.6Mになるように添加し、0.6M硫酸アンモニウムを含む0.05Mリン酸緩衝液で予め平衡化したPhenyl−トヨパール650M(東ソー株式会社製)カラム(300ml)にチャージし、0.6〜0.1Mの硫酸アンモニウム直線濃度勾配により溶出し、活性画分を集めた。得られた酵素液を0.05Mリン酸緩衝液(pH7)により透析を行ない、予め同緩衝液で平衡化したDEAE−トヨパール650Mカラム(130ml)にチャージし、0〜0.25Mの塩化ナトリウム直線濃度勾配により溶出を行ない、活性画分を集めたのち、硫酸アンモニウムを60%飽和になるまで添加し、遠心分離により、沈殿するタンパク質を集め、0.05Mリン酸緩衝液(pH7)で溶解し、同緩衝液により透析を行なった。ついで、この透析後の酵素液を、0.05Mリン酸緩衝液(pH7)で予め平衡化したBenzamidine Sepharose(Amersham Pharmacia Biotech社製)カラム(10ml)にチャージし、0〜0.1Mの塩化ナトリウム直線濃度勾配により溶出を行ない、活性画分を集めた。本酵素液を限外濾過により濃縮して、0.15M塩化ナトリウムを含む0.05Mリン酸緩衝液(pH7)で予め平衡化したSuperdex 200HR16/60(Amersham Pharmacia Biotech社製)カラム(120ml)にチャージし、同緩衝液で溶出を行なった。分子量17万に相当する画分に、280nmのタンパク質吸収と活性が一致する溶出ピークを得た。本活性画分を未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ、単一バンドを形成した。
また、本酵素をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ、分子量約2.5万、3.5万、8万に相当する3つのタンパク質バンドを形成した。これらのことより、本酵素は分子量約2.5万、3.5万、8万のサブユニット構造を有することがわかった。
【実施例5】
以下の方法に従って、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株より、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する活性を有するアルデヒドオキシダーゼの精製を行なった。
酵母エキス5g、硝酸アンモニウム2g、リン酸水素二カリウム2g、リン酸水素一ナトリウム二水和物1g、硫酸マグネシウム・七水和物0.2g、塩化カルシウム・二水和物0.1g(いずれも1Lあたり)の組成よりなる培地(pH7)50mlを500mlにいれて高圧蒸気殺菌後、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株を一白金耳植金し、28℃で3日間振とう培養し、前培養液を得た。ついで、5リットルミニジャーに前記組成の培地3Lをいれて高圧蒸気殺菌後、前培養液30mlを植菌し、28℃、通気0.5vvm、撹拌400rpmで28時間培養を行なった。本ミニジャー培養を繰り返し69Lの培養液を取得し、ついで得られた培養液69Lから遠心分離により菌体を集め、0.05Mリン酸緩衝液(pH7)に懸濁した。得られた菌体懸濁液をダイノミル(Dyno−Mill社製)で破砕後、遠心分離により菌体残渣を除き、無細胞抽出液2Lを得た。得られた無細胞抽出液2Lに氷冷下、スターラーで撹拌しながら、所定量の硫酸アンモニウムを添加し、硫安アンモニウム20−40%飽和で沈殿するタンパク質を遠心分離により集めた。
得られたタンパク質を0.05Mリン酸緩衝液(pH7)で溶解し、同緩衝液により透析を行なったのち、これを同緩衝液で予め平衡化したDEAE−トヨパール650Mカラム(300ml)にチャージし、0〜0.6Mの塩化ナトリウム直線濃度勾配により溶出し、活性画分を集めた。この活性画分に硫酸アンモニウム濃度が0.7Mになるように所定量の硫酸アンモニウムを添加し、予め0.7M硫酸アンモニウムを含む0.05Mリン酸緩衝液(pH7)で平衡化したPhenyl−トヨパール650Mカラム(160ml)にチャージ後、0.7〜0Mの硫酸アンモニウム直線濃度勾配により溶出し、活性画分を集めた。得られた酵素液を0.05Mリン酸緩衝液(pH7)により透析を行なった。ついで、この透析後の酵素液を0.05Mリン酸緩衝液で予め平衡化したResouce Q(Amersham Pharmacia Biotech社製)カラム(6ml)にチャージし、0.15〜0.45Mの塩化ナトリウム直線濃度勾配により溶出を行ない、活性画分を集めた。得られた酵素液を限外濾過により濃縮を行ない、0.3M濃度になるように、硫酸アンモニウムを添加後、0.3M硫酸アンモニウムを含む0.05Mリン酸緩衝液(pH7)で予め平衡化したResouce Phe(Amersham Pharmacia Biotech社製)カラム(6ml)にチャージし、0.3〜0Mの硫酸アンモニウム直線濃度勾配により溶出し、活性画分を集めた。
得られた酵素液をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ、分子量約11万に相当する単一のタンパク質バンドを形成した。
【実施例6】
以下の方法に従って、シュードモナス・スピーシーズKNK058株より、グリオキサールをグリオキシル酸へ変換するアルデヒドオキシダーゼの精製を行なった。
エチレングリコール10g、NUTRIENT BROTH8g、リン酸水素二カリウム7g、リン酸二水素カリウム3g(いずれも1Lあたり)の組成よりなる培地(pH7)5mlを大型試験管中で高圧蒸気殺菌後、シュードモナス・スピーシーズKNK058株を一白金耳植菌し、28℃で2日間培養後、ついで、本培養液を滅菌済みの前記培地500mlを含んだ2L振盪フラスコに植菌し、28℃、18時間、振盪培養し、前培養液を得た。ついで、殺菌済みの前記培地60Lを含んだジャーファメンターに植菌し、28℃、通気1vvm、撹拌200rpmで40時間培養を行なった。得られた培養液60Lから遠心分離により菌体を集め、0.02Mリン酸緩衝液(pH7)に懸濁した。得られた菌体懸濁液をInconator 201M超音波破砕装置(株式会社久保田製作所製)で60分間破砕後、遠心分離により菌体残渣を除き、無細胞抽出液を得た。得られた無細胞抽出液を冷却下、スターラー撹拌しながら、所定量の硫酸アンモニウムを添加し、硫酸アンモニウム20−60%飽和で沈殿するタンパク質を遠心分離により集めた。
得られたタンパク質を0.02Mリン酸緩衝液(pH7)で溶解し、同緩衝液により透析を行なったのち、その酵素液に1.5LのDEAE−Sephacel樹脂を添加し、4℃で1時間撹拌後、未吸着のタンパク質液を濾過により除いたのち、1M塩化ナトリウムで樹脂に吸着した酵素タンパク質の溶出を行なった。
得られた酵素液を0.02Mリン酸緩衝液(pH7)で透析後、0.02Mリン酸緩衝液(pH7)で平衡化したHiPrep 16/10−Q−XL(Amersham Pharmacia Bioscience社製)カラム(16ml)にチャージし、0〜1Mの塩化ナトリウムの直線濃度勾配法により溶出を行ない、活性画分を集めた。この活性画分に硫酸アンモニウム濃度が1.2Mになるように所定量の硫酸アンモニウムを添加し、予め、1.2Mの硫酸アンモニウムを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7)で平衡化したPhenyl Superose HR 10/10(Amersham Pharmacia Bioscience社製)カラム(10ml)にチャージし、1.2〜0Mの硫酸アンモニウムの直線濃度勾配法に溶出を行ない、活性画分を集めた。次に、得られた酵素液を0.02Mリン酸緩衝液で透析後、同緩衝液で平衡化したMonoQ HR 10/10(Amersham Pharmacia Bioscience社製)カラム(10ml)にチャージし、塩化ナトリウムの直線濃度勾配法により溶出を行ない、活性画分を集めた。さらに得られた酵素液を0.02Mの塩化ナトリウムを含む0.02Mリン酸緩衝液で平衡化したHiPrep Sephacryl S−200 16/60(Amersham Pharmacia Bioscience社製)カラム(60ml)にチャージし、同緩衝液で溶出を行なった。活性画分を集め、これを0.005Mリン酸緩衝液(pH7)で透析後、同緩衝液で予め平衡化したHydroxyapatite(生化学工業株式会社製)カラム(10ml)にチャージし、0.005〜0.5Mリン酸緩衝液の直線濃度勾配法により溶出を行なった。活性画分を集め、これを0.005mMリン酸緩衝液で透析後、同緩衝液で平衡化したBio−Scale CHT5−I(Bio−Rad社製)カラム(6.4ml)にチャージし、0.005〜0.5Mリン酸緩衝液の直線濃度勾配法により溶出を行ない、活性画分を集めた。本活性画分を未変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供したところ、単一バンドを形成した。
【実施例7】
以下の方法に従って、セルロシミクロビウム・セルランスIFO15516株の培養上清からグリオキサールをグリオキシル酸に変換するアルデヒドオキシダーゼの精製を行なった。
酵母エキス10g、硫酸アンモニウム2g、リン酸水素2カリウム1g、リン酸水素1ナトリウム1g、硫酸マグネシウム・7水和物0.2g、塩化カルシウム・2水和物0.1g(いずれも1リットル当り)の組成よりなる培地(pH7)60mlを500ml容坂口フラスコに入れ高圧蒸気滅菌後、セルロシミクロビウム・セルランスNBRC15516株を1白金耳植菌し、28℃で2日間振とう培養し、前培養液を得た。ついで、5Lミニジャーに前記組成の培地3Lを入れ、高圧蒸気滅菌後、前培養液60mlを植菌し、28℃、通気0.5vvm、撹拌400rpmで27時間培養を行なった。同様の培養を繰返して得た合計45Lの培養液をpH7に調整し、遠心分離により45Lの培養上清を得た。得られた培養上清を撹拌型ウルトラホルダーUHP150(アドバンテック東洋株式会社製)を用いて2.4Lに濃縮後、氷冷下、撹拌しながら所定量の硫酸アンモニウムを添加し、硫酸アンモニウム0〜60%飽和の範囲で沈澱するタンパク質を遠心分離により集めた。得られたタンパク質を20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7)で溶解し、充分量の同緩衝液に対して透析を行なったのち、同緩衝液で予め平衡化したDEAE−トヨパール650Mカラム(300ml)にチャージし、塩化ナトリウム0〜0.5Mの濃度勾配で溶出し、活性画分を集めた。この活性画分に硫酸アンモニウムを終濃度1Mとなるよう添加し、予め1M硫酸アンモニウムを含む20mMリン酸カリウム緩衝液pH7で平衡化したPhenyl−トヨパール650M(60ml)にチャージし、硫酸アンモニウム1〜0.5Mの直線濃度勾配で溶出し、活性画分を集めた。得られた酵素液を20mMリン酸カリウム緩衝液pH7に透析し、ついで、予め同緩衝液で平衡化したResourceQ(Amersham Pharmacia Biotech社製)カラム(6ml)にチャージし、塩化ナトリウム0.35Mを含む同緩衝液で洗浄後、塩化ナトリウム0.35〜0.5Mの直線濃度勾配で溶出し、活性画分を集めた。得られた酵素液を限外濾過濃縮し、0.15M塩化ナトリウムを含む20mMリン酸カリウム緩衝液pH7で平衡化したSuperdex200HRカラム(24ml)(Amersham Pharmacia Biotech社製)にチャージし、同緩衝液で溶出した。得られた活性画分を用いてSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行なった結果、分子量9〜10万の単一バンドを形成した。
【実施例8】
実施例1記載の方法により得たKNK235株、KNK058株の無細胞抽出液を0.05Mリン酸緩衝液(pH7)で予め平衡化したResouce Qカラム(6ml)にチャージし、0〜0.5Mの塩化ナトリウム直線濃度勾配により溶出を行ない、活性画分を集めた。これらKNK235株およびKNK058株の粗精製酵素液と実施例4、5および7で得たストレプトミセス・スピーシーズKNK269株、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株およびセルロシミクロビウム・セルランスIFO15516株から得られた精製酵素を用い、それらのグリオキサール、グリオキシル酸に対するオキシダーゼ活性を測定した。酵素活性測定は100mMリン酸緩衝液(pH7)中、グリオキサールまたはグリオキシル酸10mM、4−AA0.67mM、TOOS1.09mM、POD2U/ml、およびKNK235株およびKNK058株の粗精製酵素または実施例4、5および7で取得したKNK269株、KNK011株およびIFO15516株からの精製酵素を含む1.0mlの反応液を30℃で反応させ、波長555nmの吸光度の増加を測定することにより行なった。各酵素のグリオキサールとグリオキシル酸に対する活性の比較を表5に示す。

各酵素ともグリオキシル酸には、グリオキサールに比べ低い活性しか示さなかった。
【実施例9】
実施例4で得たストレプトミセス・スピーシーズKNK269株から得た酵素の理化学的性質について検討した。酵素活性の測定は、基本的には、実施例8記載の方法により行なった。
(至適pH)
pH5〜9の範囲で基質としてグリオキサールを用いて活性測定を行なった。その結果を図2に示す。至適pHは6〜9であった。
(熱安定性)
0.05Mリン酸緩衝液(pH7.2)中、30〜70℃の各温度で20分間処理したのち、グリオキサールを基質にして本酵素の残存する活性測定を行なった。その結果を図3に示す。70℃の処理で90%以上の活性が残存していた。
【実施例10】
実施例6で得たシュードモナス・スピーシーズKNK058株から得た酵素の理化学的性質について検討した。酵素活性の測定は、基本的には、実施例8記載の方法により行なった。
(分子量)
本酵素の分子量はTSK−G3000SWカラム(東ソー株式会社製)を用いて測定した場合、約15万であった。
(至適温度)
基質としてグリオキサールを用いて、温度25〜75℃の範囲で活性測定を行なった。その結果を図4に示す。60〜70℃の範囲で高い活性を示した。
(至適pH)
緩衝液としてMcIlvine緩衝液、リン酸緩衝液またはTricine緩衝液を用いてpH4〜9の範囲で基質としてグリオキサールを用いて活性測定を行なった。その結果を図5に示す。pH5〜7の範囲で高い活性を示した。
【実施例11】
実施例4、5、6および7で得たストレプトミセス・スピーシーズKNK269株由来酵素、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株由来酵素、シュードモナス・スピーシーズKNK058株由来酵素、およびセルロシミクロビウム・セルランスIFO15516株由来酵素を用い、グリオキサールを基質として反応を行なった。各株由来の酵素0.2U/ml、グリオキサール50mM、カタラーゼ5000U/mlを含む100mMトリス−HCl緩衝液1mlを試験管に加え、30℃、3時間振とう反応を行なった。反応後、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、KNK269株由来酵素では7.6mM、KNK011株由来酵素では25mM、KNK058株由来酵素では5.7mM、IFO15516株由来酵素では26mMのグリオキシル酸が生成した。
【実施例12】
以下の方法によりセルロモナス・タバタIFO15012株、セルロモナス・タバタIFO15014株、セルロシミクロビウム・セルランスIFO15013株、セルロシミクロビウム・セルランスIFO15516株、セルロシミクロビウム・セルランスJCM6201株、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株の培養菌体のアルデヒドオキシダーゼ活性を測定した。
硝酸アンモニウム2g、リン酸水素二カリウム1g、リン酸水素一ナトリウム1.3g、酵母エキス5g、硫酸マグネシウム7水和物0.2g、塩化カルシウム0.1g(いずれも1Lあたり)pH7の組成からなる培地5mlを大型試験管に分注し、高圧蒸気殺菌した。前記の菌株を白金耳植菌し、28℃で2日間の前培養を行なった。ついで、500ml容坂口フラスコ中60mlの同培地に、得られた前培養液を1ml植菌し、28℃で2日間培養した。得られた培養液から遠心分離により菌体を集め、100mMリン酸カリウム緩衝液pH7で2回洗浄後、同緩衝液5.0mlに懸濁した。本菌体懸濁液1.0mlに133mMグリオキサール水溶液0.45ml、50,000U/mlのカタラーゼ溶液を0.05ml添加し、試験管中で、28℃で4時間振とう反応を行ない、得られた反応液を高速液体クロマトグラフィーにより分析した。その結果、いずれの菌株でもグリオキサールからグリオキシル酸が生成していた。
また、菌体懸濁液0.1mlを50mMグリオキサール、1.34mM 4−AA,2.18mMTOOS、4U/ml ペルオキシダーゼを含有する100mMリン酸カリウム緩衝液0.1mlに添加し、28℃で2時間振とうし、反応液の発色を目視する方法でオキシダーゼ活性の判定を行なった。対照としてグリオキサール無添加の同一反応系を同時に行なった。その結果、いずれの菌株でもグリオキサールを添加した場合のみオキシダーゼ活性による発色が観察され、グリオキサールがオキシダーゼによって酸化されることが明らかになった。これらの結果を表6にまとめた。

【実施例13】
実施例12で調製したミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株、セルロシミクロビウム・セルランスIFO15516株の培養液上清を用いてアルデヒドオキシダーゼの菌体外への分泌を確認した。培養液を遠心し、菌体を除いた培養上清をアミコンCentriplus YM−10(MILLIPORE社製)を用いた限外濾過により濃縮、緩衝液を100mMリン酸カリウム緩衝液pH7に交換し、12倍濃縮液を調製した。こうして得た培養上清濃縮液0.1mlを用いて実施例12と同様にグリオキサールを基質として発色によるオキシダーゼ活性の判定を行なった。その結果、表7に示した通り、培養上清も菌体懸濁液と同等の酵素活性を示した。

【実施例14】
実施例4で精製したストレプトミセス・スピーシーズKNK269株のアルデヒドオキシダーゼのアミノ酸配列を以下の方法で決定した。酵素を構成する3種類のサブユニットを分離するために逆相HPLCを用いた。カラムはYMC−Pack PROTEIN−RPカラム(250×4.6mm)(YMC社製)を使用し、移動相には0.1%トリフルオロ酢酸を用い、精製酵素300μgをチャージしたのち、アセロニトリル0〜56%(流速1ml/分、110分)の直線濃度勾配で溶出する方法でサブユニットを分離した。保持時間約85分で分子量2.5万(以下サブユニットγ)、約90分で分子量3.5万(以下サブユニットβ)、約92分で分子量8万(以下サブユニットα)が溶出された。分取した各サブユニットタンパク質の1/10を使用して、Protein Sequencing System 490 procise(Applied Biosystems社製)を用いたエドマン分解法でN末端アミノ酸配列を決定した。次に、各サブユニットタンパク質の内部アミノ酸配列を決定した。各サブユニットタンパク質の残り全量を9M尿素で変性後、緩衝液を0.3Mトリス塩酸緩衝液pH9.0に交換し、リジルエンドペプチダーゼで30℃、19時間消化した。分解物をYMC−Pack PROTEIN−RPカラムを用いて逆相HPLC法により精製した。移動相に0.1%トリフルオロ酢酸を用い、アセロニトリル10〜48%までの直線濃度勾配でペプチドを溶出した。溶出した各ピークを分取し、同様の方法でサブユニット内部のアミノ酸配列を決定した。得られたアミノ酸配列のうち主なものを配列番号15〜20に示した。
【実施例15】
決定した部分アミノ酸配列をもとにミックストDNAプライマー(配列番号21〜26)を合成し、ストレプトミセス・スピーシーズKNK269株のゲノムDNAを鋳型として、TAKARA LA Taq DNAポリメラーゼ(宝酒造株式会社製)を用い、GC緩衝液(宝酒造株式会社製)中でPCRを行なった。得られた増幅DNAをアガロースゲル電気泳動し、QIAquick Gel Extractionキット(QIAGEN社製)を用いてバンドを形成したDNAを抽出した。得られたDNAを用いて、直接シークエンシング、またはpT7Blue−2(Novagen社製)にTAクローニングしたのち、プラスミドを用いてDNAシークエンシングを行ない、塩基配列を決定した。配列番号21〜26に示したプライマー(1)と(2)、(3)と(4)および(5)と(6)の組合せでPCRを行なって得られた増幅DNAの配列をアミノ酸に変換し、実施例14で決定したアミノ酸配列と照合し、整列した結果、3種類のサブユニットをコードする遺伝子は、上流からγ、α、βの順にゲノム上に隣接、または一部重複して存在していた。ミックストプライマー部分の塩基配列決定には周辺の塩基配列をプライマーとして用いて同様の方法で決定した。こうしてサブユニットγ、α、βの全遺伝子をコードするゲノム領域のうちサブユニットγのN末端近傍とサブユニットαのC末端近傍を除いた全塩基配列を決定した。得られた塩基配列から導かれたアミノ酸配列は実施例14で得られた各サブユニットの部分アミノ酸配列と完全に一致した。決定したサブユニットγ、α、βのアミノ酸配列を配列番号1〜3に、塩基配列を配列番号4〜6に示した。配列番号1および4は、それぞれ、サブユニットγの精製タンパク質のN末端以降のアミノ酸配列、およびGlu12から終止コドンまでの塩基配列を示している。配列番号2および5は、それぞれ、サブユニットβの全アミノ酸配列、および開始コドンから終止コドンまでの全塩基配列を示している。配列番号3および6は、それぞれ、サブユニットαのMet1からThr693までのアミノ酸配列、および開始コドンからArg685までの塩基配列を示している。配列番号18に示す精製したKNK269株由来酵素のサブユニットαのN末端アミノ酸配列は、遺伝子配列から決定した配列番号3のアミノ酸配列のAla5から始まっていた。
【実施例16】
実施例5で精製したミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株アルデヒドオキシダーゼのアミノ酸配列を決定した。限外濾過膜を用いて脱塩した精製酵素10μgを使用し、実施例14で用いたのと同様の方法でN末端アミノ酸配列を決定した。次に、タンパク質内部のアミノ酸配列を決定するため、精製酵素のプロテアーゼ消化ペプチドのアミノ酸配列決定を行なった。精製酵素100μgを9M尿素で変性後、緩衝液を0.2Mトリス塩酸緩衝液pH9.0に交換し、リジルエンドペプチダーゼで30℃、16時間消化した。こうして得た消化ペプチド混合物をYMC−Pack PROTEIN−RPカラム(250×4.6mm)を用いた逆相HPLCにより実施例14と同様の方法で分離した。溶出した各ピークを分取し、同様の方法でアミノ酸配列を決定し、酵素タンパク質の内部部分アミノ酸配列を決定した。得られたアミノ酸の主なものを配列番号27〜29に示した。
【実施例17】
決定した部分アミノ酸配列をもとにミックストDNAプライマー(配列番号30〜33)を合成し、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株のゲノムDNAを鋳型として実施例15と同様の方法でPCRを行なった。増幅DNAをアガロースゲル電気泳動し、QIAquick Gel Extractionキット(QIAGEN社製)を用いてバンドを形成したDNAを抽出し、直接、またはpT7Blue−2にTAクローニングしたのち、DNAシークエンシングを行なって塩基配列を決定した。配列番号30〜33のプライマー(1)と(2)、(3)と(4)の組合せのPCRから得られた塩基配列とアミノ酸配列を照合し、実施例15と同様の方法によって精製酵素のN末端とC末端周辺を除く約2.8kbの塩基配列を決定した。精製酵素N末端とC末端周辺の塩基配列決定は、インバースPCR法によって行なった(Cell Science 1990、Vol.6 No.5 370−376参照)。ゲノムDNAを各種の制限酵素で処理したのち、終濃度2.5ng/mlでセルフライゲーションし、各末端近傍の塩基配列から合成したプライマーを用いてPCRを行なった。得られた増幅DNAをpT7Blue−2にライゲーションしたのち、同様に塩基配列を決定した。ゲノムDNAのPvuI消化物を用いたインバースPCRで得られた約650塩基の増幅バンドから開始コドン上流から精製酵素のN末端下流の配列、ApaI消化物を用いたインバースPCRで得られた約1.9k塩基の増幅バンドから終止コドン周辺の塩基配列を決定した。こうして決定した開始コドンから終止コドンまでの遺伝子全長は3348塩基、アミノ酸配列にして1115残基であった。この塩基配列から導かれたアミノ酸は精製酵素のアミノ酸配列分析で得られたアミノ酸配列と完全に一致していた。一方、菌体から精製した酵素のN末端は、開始コドンMet1から数えて47番目のValであった。ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株は培養液上清にも同一の酵素を産生していることから、Met1からAla46間は分泌シグナル配列として分泌過程で切断されることが明らかになった。決定した酵素タンパク質、酵素遺伝子の全アミノ酸配列、全塩基配列を配列番号7、9に示した。分泌後の成熟型酵素の全アミノ酸配列とこれをコードする塩基配列を配列番号8、10に示した。
【実施例18】
実施例17で遺伝子配列を決定したミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株のアルデヒドオキシダーゼの遺伝子を発現用ベクターにクローニングし、発現実験を行なった。Ala46のコドンを開始コドンatgに置換し、制限酵素NdeI認識配列を付加した合成プライマー(配列番号34)と終止コドン下流63〜68塩基に制限酵素EcoRI認識配列を付加した相補配列の合成プライマー(配列番号35)を用い、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株のゲノムDNAを鋳型にしたPCRを行ない、約3.7kbの増幅バンドを得た。このバンドを形成したDNAをアガロースゲル電気泳動し、QIAquick Gel Extractionキット(QIAGEN社製)を用いて抽出し、NdeIおよびEcoRIで消化した。消化DNAをアガロースゲル電気泳動して同様に抽出し、NdeIおよびEcoRI消化した発現ベクターpUCNT(特開2003−116552)にライゲーションし、E.コリDH5αに形質転換した。得られた形質転換株をアンピシリン100μgを含むLB培地で一晩培養後、新しい同培地に継植して培養し、2時間後に1mMのIPTGを添加して5時間培養後、培養菌体をSDS処理して全タンパク質のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行なった結果、約11kDaの位置に酵素タンパク質のバンドが確認できた。
【実施例19】
実施例7で得られたセルロシミクロビウム・セルランスIFO15516株のアルデヒドオキシダーゼを用いてアミノ酸配列の決定を行なった。限外濾過膜を用いて脱塩した精製酵素10μgを使用し、プロテインシークエンシングシステム モデル490プロサイズ(Applied Biosystems社製)を用いてアミノ酸配列を決定した。次に、精製酵素100μgを9M尿素で変性後、緩衝液を0.2Mトリス塩酸緩衝液pH9.0に交換し、リジルエンドペプチダーゼで30℃、16時間消化した。分解物をYMC−Pack PROTEIN−RPカラム(YMC社製)を用いて逆相HPLC法により精製した。移動相に0.1%トリフルオロ酢酸を用い、アセロニトリル10〜55%までの直線濃度勾配でペプチドを溶出した。溶出した各ピークを分取し、同様にタンパク質内部のアミノ酸配列を決定した。得られたアミノ酸配列の主なものを配列番号36〜38に示した。
【実施例20】
実施例19で決定した部分アミノ酸配列をもとに合成したミックストDNAプライマー(配列番号39〜41)、およびミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株のアルデヒドオキシダーゼの遺伝子の2521〜2545塩基の相補鎖DNAのミックストDNAプライマー(配列番号42)を用いて、セルロシミクロビウム・セルランスIFO15516株のゲノムDNAを鋳型としてPCRを行なった。配列番号39〜42のプライマー(1)と(2)、(3)と(4)の組合せのPCRで得られた増幅DNAをアガロースゲル電気泳動し、QIAquick Gel Extractionキット(QIAGEN社製)を用いてバンドを形成したDNAを抽出した。これらのDNAを、直接、またはpT7Blue−2にTAクローニングしたのち、DNAシークエンシングを行なって塩基配列を決定した。得られた塩基配列を、アミノ酸配列と照合し、実施例15と同様の方法によって精製酵素のN末端とC末端周辺を除く約2.5kbの塩基配列を決定した。精製酵素N末端とC末端周辺の塩基配列決定は実施例17と同様にインバースPCR法によって行なった。ゲノムDNAを各種の制限酵素で処理したのち、終濃度2.5ng/mlでセルフライゲーションし、各末端近傍の塩基配列から合成したプライマーを用いてPCRを行なった。得られた増幅DNAをpT7Blue−2にライゲーションしたのち、同様に塩基配列を決定した。ゲノムDNAのNaeI消化物を用いたインバースPCRで得られた約1kbの増幅バンドから開始コドン上流から精製酵素のN末端下流の配列、NcoI消化物を用いたインバースPCRで得られた約1.1kbの増幅バンドから終止コドン周辺の塩基配列を決定した。こうして決定した開始コドンから終止コドンまでの遺伝子全長は3324塩基、アミノ酸配列にして1107残基であった。この塩基配列から導かれたアミノ酸は精製酵素のアミノ酸配列分析で得られたアミノ酸配列と完全に一致していた。菌体から精製した酵素のN末端は、開始コドンMet1から数えて39番目のAspであった。培地中に分泌された酵素ではMet1からAla38は分泌シグナル配列として分泌過程で切断されていた。決定した酵素タンパク質、酵素遺伝子の全アミノ酸配列、全塩基配列を配列番号11、13に示した。分泌後の成熟型酵素の全アミノ酸配列とこれをコードする塩基配列を配列番号12、14に示した。
【産業上の利用可能性】
本発明による微生物、酵素を用いたグリオキサールからのグリオキシル酸の製造方法によれば、温和な条件でグリオキシル酸を製造することが可能であり、従来の硝酸酸化法などの化学的合成方法で問題点であった大量の塩類の生成などなくグリオキシル酸を製造できる。
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:アルデヒドオキシダーゼのサブユニットγのアミノ酸配列
配列番号2:アルデヒドオキシダーゼのサブユニットβのアミノ酸配列
配列番号3:アルデヒドオキシダーゼのサブユニットαのアミノ酸配列
配列番号4:アルデヒドオキシダーゼのサブユニットγのDNA配列
配列番号5:アルデヒドオキシダーゼのサブユニットβのDNA配列
配列番号6:アルデヒドオキシダーゼのサブユニットαのDNA配列
配列番号7:シグナルペプチドを含むアルデヒドオキシダーゼのアミノ酸配列
配列番号8:アルデヒドオキシダーゼのアミノ酸配列
配列番号9:シグナルペプチドを含むアルデヒドオキシダーゼのDNA配列
配列番号10:アルデヒドオキシダーゼのDNA配列
配列番号11:シグナルペプチドを含むアルデヒドオキシダーゼのアミノ酸配列
配列番号12:アルデヒドオキシダーゼのアミノ酸配列
配列番号13:シグナルペプチドを含むアルデヒドオキシダーゼのDNA配列
配列番号14:アルデヒドオキシダーゼのDNA配列
配列番号15:アルデヒドオキシダーゼのサブユニットγのN末端アミノ酸配列
配列番号16:アルデヒドオキシダーゼのサブユニットβのN末端アミノ酸配列
配列番号17:アルデヒドオキシダーゼのサブユニットβのアミノ酸配列(Ala231〜Ala266)
配列番号18:アルデヒドオキシダーゼのサブユニットαのN末端アミノ酸配列
配列番号19:アルデヒドオキシダーゼのサブユニットαのアミノ酸配列(Leu261〜Glu298)
配列番号20:アルデヒドオキシダーゼのサブユニットαのアミノ酸配列(Gly659〜Thr693)
配列番号21:ストレプトミセス・スピーシーズKNK269株のアルデヒドオキシダーゼのサブユニットγのN末端アミノ酸配列に対応するミックストDNAプライマー(1)
配列番号22:ストレプトミセス・スピーシーズKNK269株のアルデヒドオキシダーゼのサブユニットβのアミノ酸配列(Asp251〜Ala258)に対応する相補的なミックストDNAプライマー(2)
配列番号23:ストレプトミセス・スピーシーズKNK269株のアルデヒドオキシダーゼのサブユニットβのアミノ酸配列(Asp251〜Ala258)に対応するミックストDNAプライマー(3)
配列番号24:ストレプトミセス・スピーシーズKNK269株のアルデヒドオキシダーゼのサブユニットαのアミノ酸配列(Leu274〜Glu281)に対応する相補的なミックストDNAプライマー(4)
配列番号25:ストレプトミセス・スピーシーズKNK269株のアルデヒドオキシダーゼのサブユニットαのアミノ酸配列(Leu274〜Glu281)に対応するミックストDNAプライマー(5)
配列番号26:ストレプトミセス・スピーシーズKNK269株のアルデヒドオキシダーゼのサブユニットαのアミノ酸配列(Leu686〜Glu693)に対応する相補的なミックストDNAプライマー(6)
配列番号27:アルデヒドオキシダーゼのN末端アミノ酸配列
配列番号28:アルデヒドオキシダーゼの内部アミノ酸配列
配列番号29:アルデヒドオキシダーゼの内部アミノ酸配列
配列番号30:ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株由来のアルデヒドオキシダーゼのN末端アミノ酸配列に対応するミックストDNAプライマー(1)
配列番号31:ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株由来のアルデヒドオキシダーゼのアミノ酸配列(Asp513〜Phe521)に対応する相補的なミックストDNAプライマー(2)
配列番号32:ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株由来のアルデヒドオキシダーゼのアミノ酸配列(Asp513〜Phe521)に対応するミックストDNAプライマー(3)
配列番号33:ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株由来のアルデヒドオキシダーゼのアミノ酸配列(Phe959〜Thr969)に対応する相補的なミックストDNAプライマー(4)
配列番号34:ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株由来のアルデヒドオキシダーゼの、クローニングのためのNdeI制限部位を含むDNAプライマー
配列番号35:ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011株由来のアルデヒドオキシダーゼの、クローニングのためのEcoRI制限部位を含むDNAプライマー
配列番号36:アルデヒドオキシダーゼのN末端アミノ酸配列
配列番号37:アルデヒドオキシダーゼの内部アミノ酸配列
配列番号38:アルデヒドオキシダーゼの内部アミノ酸配列
配列番号39:セルロシミクロビウム・セルランスIFO15516株由来のアルデヒドオキシダーゼのN末端アミノ酸配列に対応するミックストDNAプライマー(1)
配列番号40:セルロシミクロビウム・セルランスIFO15516株由来のアルデヒドオキシダーゼのアミノ酸配列(Ile350〜Val358)に対応する相補的なミックストDNAプライマー(2)
配列番号41:セルロシミクロビウム・セルランスIFO15516株由来のアルデヒドオキシダーゼのアミノ酸配列(Thr176〜Thr183)に対応するミックストDNAプライマー(3)
配列番号42:ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011由来のアルデヒドオキシダーゼのDNA配列(2521〜2545)に対応する相補的なミックストDNAプライマー(4)
【配列表】

























































【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリオキサールをグリオキシル酸へ変換する能力を有する酸化還元酵素、または該酸化還元酵素の産生能を有する微生物の培養液、培養液上清、菌体および菌体処理物のいずれか1種もしくは2種以上のそれらの混合物をグリオキサールに作用させ、グリオキシル酸へ変換することを特徴とするグリオキシル酸の製造方法。
【請求項2】
前記酸化還元酵素がオキシダーゼである請求の範囲第1項記載のグリオキシル酸の製造方法。
【請求項3】
前記酸化還元酵素がステノトロフォモナス属、ストレプトミセス属、シュードモナス属、ミクロバクテリウム属、アクロモバクター属、セルロモナス属、セルロシミクロビウム属、モルガネラ属からなる群から選ばれる少なくとも1つの微生物から得られた酵素である請求の範囲第1項または第2項記載のグリオキシル酸の製造方法。
【請求項4】
前記微生物が、ステノトロフォモナス・スピーシーズKNK235(FERM P−19002)、ストレプトミセス・スピーシーズKNK269(FERM BP−08556)、シュードモナス・スピーシーズKNK058(FERM BP−08555)、シュードモナス・スピーシーズKNK254(FERM P−19003)、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011(FERM BP−08554)、アクロモバクター・スピーシーズIFO 13495、セルロモナス・スピーシーズJCM 2471、セルロモナス・タバタIFO 15012、セルロモナス・タバタIFO 15014、セルロモナス・タバタIFO 15015、セルロシミクロビウム・セルランスIFO 15013、セルロシミクロビウム・セルランスIFO 15516、セルロシミクロビウム・セルランスJCM 6201、モルガネラ・モルガニイIFO 3848である請求の範囲第3項記載のグリオキシル酸の製造方法。
【請求項5】
反応時にカタラーゼを共存させる請求の範囲第1項記載のグリオキシル酸の製造方法。
【請求項6】
グリオキサールに作用し、グリオキシル酸を生成する微生物由来アルデヒドオキシダーゼ。
【請求項7】
グリオキシル酸に対する活性が、グリオキサールに対する活性の1/10倍以下の活性である請求の範囲第6項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
【請求項8】
前記アルデヒドオキシダーゼが、ステノトロフォモナス属、ストレプトミセス属、シュードモナス属、ミクロバクテリウム属、アクロモバクター属、セルロモナス属、セルロシミクロビウム属、モルガネラ属からなる群から選ばれる少なくとも1つの微生物が産生する請求の範囲第6項または第7項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
【請求項9】
前記微生物が、ステノトロフォモナス・スピーシーズKNK235(FERM P−19002)、ストレプトミセス・スピーシーズKNK269(FERM BP−08556)、シュードモナス・スピーシーズKNK058(FERM BP−08555)、シュードモナス・スピーシーズKNK254(FERM P−19003)、ミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011(FERM BP−08554)、アクロモバクター・スピーシーズIFO 13495、セルロモナス・スピーシーズJCM 2471、セルロモナス・タバタIFO 15012、セルロモナス・タバタIFO 15014、セルロモナス・タバタIFO 15015、セルロシミクロビウム・セルランスIFO 15013、セルロシミクロビウム・セルランスIFO 15516、セルロシミクロビウム・セルランスJCM 6201、モルガネラ・モルガニイIFO 3848である請求の範囲第8項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
【請求項10】
以下(1)〜(3)の理化学的性質を有するストレプトミセス属微生物が産生する請求の範囲第8項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
(1)至適pH:6〜9
(2)熱安定性:pH7.2で60℃、20分処理したのち、90%以上の活性を保持している
(3)分子量:ゲル濾過分析において約11万であり、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析において、約2.5万、約3.5万、約8万の3つのサブユニットタンパク質を有する
【請求項11】
以下(1)〜(3)の理化学的性質を有するシュードモナス属に属する微生物が産生する請求の範囲第8項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
(1)分子量:ゲル濾過分析において約15万
(2)反応至適温度:60〜70℃
(3)反応至適pH:5〜7
【請求項12】
以下の理化学的性質を有するミクロバクテリウム属微生物が菌体内および菌体外に産生する請求の範囲第8項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
分子量:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析において約11万の単一タンパク質
【請求項13】
以下の理化学的性質を有するセルロシミクロビウム属微生物が菌体内および菌体外に産生する請求の範囲第8項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
分子量:SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動分析において約9〜10万の単一タンパク質
【請求項14】
ストレプトミセス属に属する微生物がストレプトミセス・スピーシーズKNK269(FERM BP−08556)である請求の範囲第10項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
【請求項15】
シュードモナス属に属する微生物がシュードモナス・スピーシーズKNK058(FERM BP−08555)である請求の範囲第11項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
【請求項16】
ミクロバクテリウム属に属する微生物がミクロバクテリウム・スピーシーズKNK011(FERM BP−08554)である請求の範囲第12項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
【請求項17】
セルロシミクロビウム属に属する微生物がセルロシミクロビウム・セルランスIFO 15516である請求の範囲第13項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
【請求項18】
以下の(a)または(b)のタンパク質をサブユニットとして有する請求の範囲第6項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
(a)配列番号1、2もしくは3で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)アミノ酸配列(a)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列のいずれか1つを含むタンパク質
【請求項19】
以下の(a)または(b)のDNAによってコードされるタンパク質をサブユニットとして有する請求の範囲第6項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
(a)配列番号4、5もしくは6の塩基配列からなるDNA
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAのいずれか1つとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
【請求項20】
以下の(a)または(b)のアミノ酸配列からなる請求の範囲第6項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
(a)配列番号7、8、11もしくは12で表されるアミノ酸配列
(b)アミノ酸配列(a)において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列
【請求項21】
以下の(a)または(b)のDNAによってコードされる請求の範囲第6項記載のアルデヒドオキシダーゼ。
(a)配列番号9、10、13もしくは14の塩基配列からなるDNA
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
【請求項22】
以下の(a)または(b)のいずれかを含んでなる、請求の範囲第6項記載のアルデヒドオキシダーゼのサブユニットをコードするDNA。
(a)配列番号4、5もしくは6の塩基配列からなるDNA
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAのいずれか1つとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
【請求項23】
以下の(a)または(b)のいずれかを含んでなる、請求の範囲第6項記載のアルデヒドオキシダーゼをコードするDNA。
(a)配列番号9、10、13もしくは14の塩基配列からなるDNA
(b)(a)の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAのいずれか1つとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA
【請求項24】
配列番号1、2または3で表わされるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれかを含んでなる、請求の範囲第6項記載のアルデヒドオキシダーゼのサブユニットをコードするDNA。
【請求項25】
配列番号7、8、11または12で表わされるアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列のいずれかを含んでなる、請求の範囲第6項記載のアルデヒドオキシダーゼをコードするDNA。

【国際公開番号】WO2004/072281
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【発行日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505009(P2005−505009)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001577
【国際出願日】平成16年2月13日(2004.2.13)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】