説明

グリコサミノグリカン又はその塩を含む経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物。

【課題】グリコサミノグリカン又はその塩の経口吸収を向上させ、それらが本来有する薬効を高め、また速効させた医薬品、健康食品、栄養薬品組成物及び外用剤を提供する。
【解決手段】グリコサミノグリカン又はその塩と、グリチルリチン酸又はその塩とを含有する経口投与用医薬品、健康食品、栄養薬品組成物である。グリコサミノグリカン又はその塩は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、デルマタン硫酸、デルマタン硫酸塩、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩などである。更に、サポニン又はその塩を含有させてもよい。グリコサミノグリカン又はその塩に対する、グリチルリチン酸又はその塩の配合割合は質量比で1:0.0001〜2が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間や動物の結合組織(特に関節)の回復・維持、ひいては老化の防止、肌荒れ、小皺の改善や女性のバストの発育の増進、視力の回復・維持などの美容・健康の促進、回復、維持のための経口投与用の医薬品、健康食品、栄養薬品(nutraceutical)組成物に関係するものである。
【背景技術】
【0002】
グリコサミノグリカンは、ヒトの皮膚、腱、筋肉、軟骨、血管、脳など広範囲に体内に存在する生体成分であり、分子量5千〜数百万にもおよぶ高分子量のヒアルロン酸、並びにタンパク質に結合してプロテオグリカンとして存在するコンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸などが知られている。これらのグリコサミノグリカンは、直鎖の酸性多糖で、N-アセチルへキソサミンとウロン酸がβ-1,3結合した二糖単位がβ−1,4−ヘキソサミド結合した繰り返し構造を持つ。
【0003】
ヒアルロン酸は分子量が大きく、互いに反発する陰イオン性カルボキシル基を多く有すため、溶液中では乾燥時に比べ、1000倍もの容積を占め、高度に水和された分子として存在する。溶液中で大量の水と水和していることはヒアルロン酸が関節における潤滑剤やショック吸収剤として働くのに役立つ性質であり、ヒアルロン酸の極めて特長的な物理的性質である。臨床面では、眼科領域でヒアルロン酸やそのナトリウム塩が、それらの角膜上皮創傷治癒促進作用及び保水作用により、角結膜上皮障害治療用点眼剤として用いられている。またヒアルロン酸又はその塩は、変形性膝関節症や肩関節周囲炎の治療薬として、また膀胱炎治療薬として、更に血中脂質低下剤として有効である。さらに、最近では、化粧品や洗髪剤にヒアルロン酸が含まれている他、食用にもされ、皮膚の若返り、関節の柔軟性の回復、各種炎症の緩和などの観点から注目されている(非特許文献1、特許文献1〜3参照)
【0004】
また、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸は、組織の構築及び水分の保持、細胞膜の水分や電解質の調整、免疫系の活性化などに重要な役割を果たしているものと推定されている。デルマタン硫酸は糖尿病性腎炎に対する消炎作用や、経口投与したコンドロイチン硫酸の関節炎に対する効果などが注目を集めている。また、コンドロイチン硫酸又はその誘導体や大豆抽出物などを皮膚外用剤に含有させることが提案されている(非特許文献2〜3、特許文献4参照)。
【0005】
しかし、グリコサミノグリカンの体内動態、すなわち腸管吸収の可能性及び代謝経路は、未だ不明な点が多く、実際に経口投与したグリコサミノグリカンの薬理的効果は定かでない。近年、生体内におけるグリコサミノグリカンの生理活性とその機能が注目されており、特に食用ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などが健康食品として広く普及していることから、経口投与によるグリコサミノグリカンの吸収に関する解明が必要とされる。グリコサミノグリカンの体内動態を調べるため、グリコサミノグリカン分析を目的とした前処理法も検討されてきたが、従来のCPC沈殿法は煩雑な操作に熟練を要し、信頼性に欠けていた。最近、限外濾過膜を用いた前処理法が発表された(非特許文献4参照)。そして、本発明者らは、先に、グリコサミノグリカンにサポニンを添加することで、その経口吸収を増大させことを提案した(特許文献5)。
【0006】
【特許文献1】国際公開第98/29125号パンフレット
【特許文献2】特開2000−102362号公報
【特許文献3】特開平5−320058号公報
【特許文献4】特開2002−145752号公報
【特許文献5】特開2004−137183号公報
【非特許文献1】Athanasiou KA et al.,“Basic science of articular cartilage repair.”, Clin. Sports Med., 2001;20(2):223-247.
【非特許文献2】Ofosu FA.,“Pharmacological actions of sulodexide.” Semin. Thromb. Hemost., 1998;24(2):127-138.
【非特許文献3】Echard BW et al.,“Effects of oral glucosamine and chondroitin sulfate alone and in combination on the metabolism of SHR and SD rats.” Mol. Cell Biochem., 2001;225(1-):85-91.
【非特許文献4】Sakai S. et al.,“Pretreatment procedure for the microdetermination of chondroitin sulfate in plasma and urine.”,Anal. Biochem., 2002;302(2):169-174.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、グリコサミノグリカン又はその塩の人体への経口吸収を向上、増大させた組成物を提供することを目的とする。すなわち、従来、経口投与しても元の分子量を維持した形で、有効に吸収させる方法がなかったグリコサミノグリカン又はその塩を経口吸収容易にした医薬品、健康食品、栄養薬品組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、グリコサミノグリカン又はその塩の人体への経口吸収の、向上、増大を目的に、グリコサミノグリカンと種々の物質を同時に経口投与することでグリコサミノグリカンの吸収に影響するかどうかを、非特許文献4記載の限外濾過膜を用いた前処理法を利用して経口投与したグリコサミノグリカンの体内動態を確認しながら、実験を行ったところ、グリチルリチン酸又はその塩の添加によりグリコサミノグリカンの経口吸収が飛躍的に増大することを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、グリコサミノグリカン又はその塩と、グリチルリチン酸又はその塩とを含有することを特徴とする経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物である。また本発明は、グリコサミノグリカン又はその塩と、グリチルリチン酸又はその塩と、サポニン又はその塩とを含有することを特徴とする経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物である。グリコサミノグリカン又はその塩に対する、グリチルリチン酸又はその塩の配合割合は質量比で1:0.0001〜2が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、グリチルリチン酸又はその塩を、グリコサミノグリカン又はその塩と共に投与することにより、グリコサミノグリカン又はその塩の経口吸収を飛躍的に増大させることができる。そのため、従来有効に経口吸収させる方法がなかった生理活性の高いグリコサミノグリカン又はその塩を経口吸収容易な形で利用できる。したがって、本発明によると、経口投与及び外用剤によるグリコサミノグリカン又はその塩の本来有する薬効を高めたり、速効させることができる。さらに、サポニン又はその塩を含有させることができる。本発明は、グリコサミノグリカン又はその塩の経口投与の分野で利用でき、例えば、人間や動物の結合組織(特に関節)の回復・維持、老化の防止、肌荒れ、小皺の改善、血中脂質低下、女性のバストの発育の増進、視力の回復・維持、関節痛治療、膀胱炎治療薬など美容・健康の促進、回復、維持に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いるグリコサミノグリカン又はその塩は、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、デルマタン硫酸、デルマタン硫酸塩、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸塩などである。本発明では、これらのうちの1種又は2種以上を用いる。本発明で用いるグリコサミノグリカンの分子量は特に限定されないが、通常7千〜100万、好ましくは7千〜10万更に好ましくは1万〜3万程度である。本発明で用いるグリコサミノグリカンは、薬理学的に許容できる塩の形態にあってもよい。このような塩としてはナトリウム塩やカリウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0012】
本発明で用いるグリコサミノグリカン又はその塩としては、動植物を抽出して得られたグリコサミノグリカン又はその塩を含有する抽出物が好ましく用いられる。例えば、鶏冠を抽出して得られたヒアルロン酸含有鶏冠エキス、魚類軟骨を抽出して得られたコンドロイチン硫酸含有抽出物、ブタ小腸粘膜やへその緒などを抽出して得られるヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸の複合ムコ多糖類含有抽出物などが用いられ、更に微生物醗酵抽出物も利用できる。グリコサミノグリカン又はその塩の1回の服用量は、その種類、使用目的によって適宜であるが、1mg〜50gが好ましい。
【0013】
本発明で用いるグリチルリチン酸は、甘草より抽出される成分として知られている。グリチルリチン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが用いられる。本発明では、グリチルリチン酸又はその塩として、甘草抽出物を用いてもよい。また、醗酵法で製造されたグリチルリチン酸又はその塩を用いてもよい。本発明において、グリコサミノグリカン又はその塩に対する、グリチルリチン酸又はその塩の配合割合は、質量比で1:0.0001〜2、好ましくは1:0.001〜1、より好ましくは1:0.01〜0.1である。その配合割合が1:0.0001未満ではグリチルリチン酸又はその塩の配合割合が少ないため、グリコサミノグリカン及びその塩の経口吸収作用が十分に発揮されなく、また配合比が1:2を超えてグリチルリチン酸又はその塩を増量してもそれに応じた経口吸収効果の向上は期待できない。
【0014】
本発明のグリコサミノグリカン又はその塩と、グリチルリチン酸又はその塩とを含有する経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物において、更にサポニン又はその塩を含有させてもよい。サポニン又はその塩としては、大豆から得られるサポニン又はサポニン塩或はこれらの混合物が好ましく用いられる。大豆サポニンは、大豆グループAサポニン、大豆グループBサポニン、大豆グループEサポニン、DDMPサポニンなどが知られているが、特に限定されない。大豆を抽出して得られたサポニン又はその塩を含有する抽出物を用いるのが特に好ましい。そして、グリコサミノグリカン又はその塩に対する、サポニン又はその塩の配合割合は、質量比で1:0.0001〜2、好ましくは1:0.001〜0.1である。
【0015】
また、本発明の経口投与用医薬品、健康食品、栄養薬品組成物には、さらに薬学的に許容し得る添加剤を含有させてもよい。添加剤は賦形剤、結合剤、調味剤、滑沢剤、保存剤、ミネラル補強剤、糖補強剤、ビタミン類、アミノ酸類、甘味料などである。賦形剤、結合剤としてはメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、クロスポピドン、乳糖、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースなどが用いられる。調味剤としてはアスパルテーム、白糖、メントール、果汁エキスなどが用いられる。滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、トウモロコシ油、大豆油などが用いられる。保存剤としては安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル類、ソルビン酸、クエン酸、プロピレングリコールなどが用いられる。ミネラル補強剤としては塩化カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、塩化亜鉛などが用いられる。糖補強剤としてはグルコサミン塩などが用いられる。このグルコサミン塩はカニやエビの殻由来のキチンオリゴ糖など抽出物が好ましく使用できる。これらは2種以上用いてもよい。
【0016】
本発明の経口投与用組成物は、1回当たりの服用量が、グリコサミノグリカン又はその塩1mg〜50gと、グリチルリチン酸又はその塩0.1mg〜5gと、場合によりサポニン又はその塩0.1mg〜5gと、薬学的に許容し得る添加剤20mg〜100gであるものが好ましい。本発明は、グリコサミノグリカン又はその塩の経口投与の分野において利用できる。本発明によると、経口投与によるグリコサミノグリカン又はその塩の吸収効率を向上、増大させることができ、その薬効を高め、また速効させることができる。
【0017】
本発明の医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物は錠剤、顆粒剤、細粒剤、液剤、カプセル剤、シロップ剤などの剤型、更には食品に混合した形態にして服用したり、食する。本発明の組成物は、経口投与によって、結合組織(特に関節)の回復・維持、また眼精疲労の回復・維持、美容健康の促進、回復、維持のために投与される。本発明の組成物は、具体的には、関節炎治療剤、変形性膝関節症治療薬、肩関節周囲炎治療薬、膀胱炎治療薬、糖尿病性腎炎治療剤、血中脂質低下剤などとして用いられる。
〔試験例〕
【0018】
限外濾過膜を用いた前処理法(非特許文献4参照)を用いて、経口投与したグリコサミノグリカンの体内動態を調べた。試験方法、薬品、装置などを以下に示す。なお、下記試験例において用いられている略号の意味するところは次の通りである.
GAG:グリコサミノグリカン
ChS:コンドロイチン硫酸
DS:デルマタン硫酸
HA:ヒアルロン酸
GlcA:グルクロン酸
IdoA:イズロン酸
GalNAc:N−アセチルガラクトサミン
GlcNAc:N−アセチルグルコサミン
【0019】
DDi-0S:2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(b−D−グルコ−4−エネピルアノシルウロン酸)−D−ガラクトース
DDi-4S:2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(b−D−グルコ−4−エネピルアノシルウロン酸)−4−O−スルホ−D−ガラクトース
DDi-6S:2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(b−D−グルコ−4−エネピルアノシルウロン酸)−6−O−スルホ−D−ガラクトース
DDi-diSB:2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(2−O−スルホ−b−D−グルコ−4−エネピルアノシルウロン酸)−4−O−スルホ−D−ガラクトース
【0020】
DDi-diSD:2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(2−O−スルホ−b−D−グルコ−4−エネピルアノシルウロン酸)−6−O−スルホ−D−ガラクトース
DDi-diSE:2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(2−O−スルホ−b−D−グルコ−4−エネピルアノシルウロン酸)−4,6−ビス−O−スルホ−D−ガラクトース DDi-triS:2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(2−O−スルホ−b−D−グルコ−4−エネピルアノシルウロン酸)−4,6−ビス−O−スルホ−D−ガラクトース
【0021】
1.限外濾過膜を用いた血液サンプルの前処理法
血液中のグリコサミノグリカン抽出のため、血液サンプルを非特許文献4に従って処理した。すなわち、アクチナーゼを加えたトリス−アセテート緩衝液に血液サンプルを懸濁させ、タンパク質を十分に消化、分解した。酢酸を加えて除タンパクし、その上清を分子量5000カットの遠心フィルターにのせ、水酸化ナトリウムで中和させた。遠心機を用いてフィルターを透過させ、濾過した後、トリス−アセテート緩衝液及びエタノールで洗浄し、粗グリコサミノグリカンを収集した。この粗グリコサミノグリカンを、フィルター上で一定量のグリコサミノグリカン分解酵素を用いて分解し、グリコサミノグリカンを不飽和二糖として得た。
【0022】
2.試薬など
(1)グリコサミノグリカンの標準品、グリチルリチン酸
ヒアルロン酸(大腸菌由来、分子量2万)は紀文フードケミファ株式会社製を用いた。コンドロイチン硫酸(ウシ気管軟骨由来、分子量1.5万)及びデルマタン硫酸(ブタ皮膚由来、分子量2万)は生化学工業株式会社製を用いた。また、不飽和二糖標準品のDDi-0S、DDi-4S、DDi-6S、DDi-UA2S、DDi-HA、DDi-SB、DDi-SD、DDi-SE、DDi-SB、DDi-triSは生化学工業株式会社製を用いた。グリチルリチン酸は和光純薬株式会社製を用いた。
(2)酵素
Chondroitinase B:IdoA1→3GalNAc構造に作用、GlcA1→3GalNAc構造に作用せず。
ABC:IdoA1→3GalNAc構造、GlcA1→3GalNAc構造の両構造に作用。
ACII:IdoA1→3GalNAc構造に作用せず、GlcA1→3GalNAc構造に作用、ヒアルロン酸にも作用。
いずれも、生化学工業株式会社製を用いた。
(3)限外濾過膜
MILLIPORE 社「ULTRAFREE-MC 5000NMWL Filter Unit BIOMAX-5」を使用した。
(4)高速液体クロマトグラフィー用試薬
蛍光試薬の2−シアノアセトアミドは和光純薬工業株式会社製を使用した。蛍光試薬の混合液に使用した水酸化ナトリウム、及び溶離液に用いた重炭酸アンモニウムは和光純薬工業株式会社製を使用した。同じく溶離液に用いたアセトニトリルは Aldrich Chemical 社製を使用した。他の有機溶媒は全て蒸留して用いた。水はミリポア超純粋装置により作製された精製水を用いた。
(5)ラット
ラット(SD系、雄、体重120−150g)は購入後1週間自由に飼料、水を与えて予備飼育し、24時間絶食ののち試験に供した。
【0023】
3.装置
高速液体クロマトグラフィー(HPLC):
溶離液送液ポンプは、日本分光工業株式会社(JASCO)製Intelligent HPLC pump PU-980、反応試薬送液ポンプは島村製作所製ダブルプランジャーポンプ SPU-2.5 NP 型、カラム恒温層はタイタック株式会社製THERMO MINDER Mini-80、検出器は日本分光工業株式会社製JASCO Intelligent Fluorescence Detector FP-920S、反応層は島村計器製作所製Dry Reaction Bach DB-5、記録計は日立製作所製Chromato Integrator D-2500を使用した。
【0024】
4.添加回収実験
血漿サンプルにおける添加回収実験
血漿サンプルに2.0mg/mL、20.0mg/mLの添加濃度でコンドロイチン硫酸又はヒアルロン酸を添加し、それぞれ非特許文献4記載の前処理法を行い、高感度ポストカラムの高速液体クロマトグラフィー法によって不飽和二糖を分離、定量した。
【0025】
試験例1 ヒアルロン酸の経口投与
ラットの血漿中にはヒアルロン酸はほとんど含まれていない(Murata K.et al.,Blood Vessels, 1988;25(1):1-11.)。そこで分子量2万のヒアルロン酸を用いて投与試験を行った。すなわち、ラットにヒアルロン酸(50mg/kg)の単独経口投与し、またヒアルロン酸(50mg/kg)とヒアルロン酸に対し1.0質量%のグリチルリチン酸とを同時に経口投与し、各投与後120分にわたって経時的に血液を採取し、前処理を行い、高感度ポストカラムの高速液体クロマトグラフィー法を用いて分離、定量を行った。
【0026】
その結果を図1に示す。図1はヒアルロン酸投与による血漿中ヒアルロン酸濃度の変化を経時的に示した。ヒアルロン酸単独投与群の場合、投与後60分までは徐々に上昇し、その後はほとんど変化しなかった。一方、グリチルリチン酸同時投与群の場合は、ヒアルロン酸の単独投与の場合とは異なり、投与後15分後からヒアルロン酸の急激な増加が見られた。すなわち、ヒアルロン酸の経口投与において、血漿中のヒアルロン酸量の増加が認められ、ヒアルロン酸が経口投与によって血液中へ吸収されることが明らかになった。また、グリチルリチン酸の同時投与により吸収速度が速くなり、かつその吸収量も上昇した。このことから、グリチルリチン酸がヒアルロン酸の吸収速度を速め、吸収を促進していることが明らかになった。
【0027】
試験例2 コンドロイチン硫酸の経口投与
血漿中にはインターアルファトリプシンインヒビター(ビクニン)に結合した低硫酸化コンドロイチン4硫酸鎖が含まれている(Imanari T.et al.,J. Pharmacobiodyn., 1992;15(5):231-237.)。そのため、GalNAc4硫酸残基を含むコンドロイチン硫酸を試験に用いるのは好ましくない。そこで血漿中にはほとんど見いだされないGalNAc6硫酸を多く含むサメ軟骨由来コンドロイチン硫酸を用いて経口投与試験を行った。すなわち、ラットにコンドロイチン硫酸(50mg/kg)の単独経口投与し、またコンドロイチン硫酸(50mg/kg)とコンドロイチン硫酸に対し1.0質量%のグリチルリチン酸とを同時に経口投与し、各投与後120分にわたって経時的に血液を採取し、前処理を行い、高感度ポストカラムの高速液体クロマトグラフィー法を用いて分離、定量を行った。
【0028】
その結果を図2に示す。図2はコンドロイチン硫酸投与による血漿中コンドロイチン硫酸濃度の変化を経時的に示した。コンドロイチン硫酸単独投与群の場合、投与後における血清中の濃度は経時的に殆ど変化しなかった。コンドロイチン硫酸とグリチルリチン酸の同時投与群の場合は、コンドロイチン硫酸の単独投与と異なり、投与後約15分後にコンドロイチン硫酸の急激な増加が見られた。このことから、グリチルリチン酸がコンドロイチン硫酸の吸収速度を速め、吸収を促進していることが明らかになった。
以下に実施例をあげて本発明を具体的に説明するが本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
鶏冠エキス1g(ヒアルロン酸200mg含有)、グリチルリチン酸40mgを混合し、さらに賦形剤及び滑剤として乳糖、アスパルテーム及びステアリン酸マグネシウムを少量加え混合したものを常法に従い打錠機にて成形して錠剤にした。この錠剤を、一回1錠づつ1日3回服用する。
【実施例2】
【0030】
魚類軟骨抽出物1g(コンドロイチン硫酸200mg含有)、グリチルリチン酸50mgを混合し、さらに複合ビタミン類1g、賦形剤及び滑剤として乳糖、ステアリン酸マグネシウム及びトウモロコシ油を少量加え混合したものを常法に従い打錠機にて成形して錠剤にした。
【実施例3】
【0031】
複合ムコ多糖類抽出物2g(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸を含有)、グリチルリチン酸100mgを混合し、さらに複合ビタミン剤500mg、複合アミノ酸500mg、保存剤適量、賦形剤及び滑剤としてアスパルテーム、乳糖、ステアリン酸マグネシウムを少量加え混合したものを混合して液剤とした。
【実施例4】
【0032】
ヒアルロン酸400mg、甘草抽出物200mg(グリチルリチン酸4mg含有)を混合し、さらにグルコサミン塩酸塩400mg、複合ビタミン類500mg、複合アミノ酸100mg、アスパルテーム少量を加え混合したものを常法に従い粉末剤とした。
【実施例5】
【0033】
魚類軟骨抽出物1g(コンドロイチン硫酸200mg含有)、グリチルリチン酸20mg、大豆サポニン10mgを混合し、さらにカニ・エビ殻由来のキチンオリゴ糖1g(グルコサミン塩酸塩200mg含有)、複合ビタミン類1g、賦形剤及び滑剤として乳糖、ステアリン酸マグネシウムを少量加え混合したものを常法に従い打錠機にて成形して錠剤にした。
【実施例6】
【0034】
鶏冠エキス1g(ヒアルロン酸200mg含有)、甘草抽出物1.5g(グリチルリチン酸30mg含有)、大豆サポニン15mgを混合し、さらにカニ・エビ殻由来のキチンオリゴ糖1g(グルコサミン塩酸塩200mg含有)、賦形剤及び滑剤として乳糖、アスパルテーム、ステアリン酸マグネシウムを少量加え混合したものを常法に従い打錠機にて成形して錠剤にした。
【実施例7】
【0035】
複合ムコ多糖類抽出物2g(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸を含有)、グリチルリチン酸20mg、大豆サポニン15mgを混合し、さらにカニ・エビ殻由来のキチンオリゴ糖1g(グルコサミン塩酸塩200mg含有)、賦形剤及び滑剤として乳糖、トウモロコシ油、ステアリン酸マグネシウムを少量加え混合したものを常法に従い打錠機にて成形して錠剤にした。
【実施例8】
【0036】
複合ムコ多糖類抽出物2g(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸を含有)、甘草抽出物1g(グリチルリチン酸20mg含有)を混合し、さらにカニ・エビ殻由来のキチンオリゴ糖1g(グルコサミン塩酸塩200mg含有)複合ビタミン類1g、複合アミノ酸2g、賦形剤としてアスパルテームを少量加え混合したものを常法に従い打錠機にて成形して錠剤にした。
【実施例9】
【0037】
複合ムコ多糖類抽出物2g(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸を含有)、甘草抽出物250mg(グリチルリチン酸5mg含有)、大豆サポニン20mgを混合し、さらにカニ・エビ殻由来のキチンオリゴ糖1g(グルコサミン塩酸塩200mg含有)、複合ビタミン類1g、複合アミノ酸2g、炭酸カルシウム500mg、アスパルテーム、緩衝剤、乳化剤を少量加え常法に従い液剤を得た。
【実施例10】
【0038】
複合ムコ多糖類抽出物2g(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸を含有)、甘草抽出物500mg(グリチルリチン酸10mg含有)を混合し、さらにカニ・エビ殻由来のキチンオリゴ糖1g(グルコサミン塩酸塩200mg含有)複合ビタミン類1g、複合アミノ酸2g、賦形剤としてアスパルテームを少量加え混合したものを常法に従い打錠機にて成形して錠剤にした。
【実施例11】
【0039】
コンドロイチン硫酸400mg、甘草抽出物500mg(グリチルリチン酸10mg含有)を混合し、さらにグルコサミン塩酸塩として400mg、複合ビタミン類500mg、複合アミノ酸100mg、結合剤としてアスパルテームを少量加え混合したものを常法に従い成形して顆粒剤を得た。
【実施例12】
【0040】
鶏冠エキス1g(ヒアルロン酸200mg含有)、グリチルリチン酸30mg、大豆サポニン50mgを混合し、さらにカニ・エビ殻由来のキチンオリゴ糖1g(グルコサミン塩酸塩200mg含有)、賦形剤及び滑剤として乳糖、アスパルテーム、ステアリン酸マグネシウムを少量加え混合したものを常法に従い打錠機にて成形して錠剤にした。
【実施例13】
【0041】
魚類軟骨抽出物1g(コンドロイチン硫酸200mg含有)、グリチルリチン酸30mgを混合し、さらにカニ・エビ殻由来のキチンオリゴ糖1g(グルコサミン塩酸塩200mg含有)、複合ビタミン類1g、賦形剤及び滑剤として乳糖、ステアリン酸マグネシウムを少量加え混合したものを常法に従い打錠機にて成形して錠剤にした。
【実施例14】
【0042】
ヒアルロン酸400mg、甘草抽出物200mg(グリチルリチン酸30mg含有)、大豆サポニン10mgを混合し、さらにグルコサミン塩酸塩400mg、複合ビタミン類500mg、複合アミノ酸100mg、アスパルテーム少量を加え混合したものを常法に従い粉末剤とした。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ヒアルロン酸の血漿中濃度の経時変化を示すグラフ
【図2】コンドロイチン硫酸の血漿中濃度の経時変化を示すグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコサミノグリカン又はその塩と、グリチルリチン酸又はその塩とを含有することを特徴とする経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物。
【請求項2】
グリコサミノグリカン又はその塩と、グリチルリチン酸又はその塩と、サポニン又はその塩とを含有することを特徴とする経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物。
【請求項3】
グリコサミノグリカン又はその塩が、動植物を抽出して得られたものである請求項1又は2記載の経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物。
【請求項4】
グリコサミノグリカン又はその塩が、ヒアルロン酸又はその塩である請求項1又は2記載の経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物。
【請求項5】
グリコサミノグリカン又はその塩が、デルマタン硫酸又はその塩である請求項1又は2記載の経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物。
【請求項6】
グリコサミノグリカン又はその塩が、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸及びコンドロイチン硫酸塩から選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2記載の経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物。
【請求項7】
グリチルリチン酸又はその塩が甘草抽出物である請求項1〜6記載の経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物。
【請求項8】
サポニンが大豆サポニンである請求項1〜7記載の経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物。
【請求項9】
グリコサミノグリカン又はその塩に対する、グリチルリチン酸又はその塩の配合割合が、質量比で1:0.0001〜2である請求項1〜8のいずれかに記載の経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物。
【請求項10】
更に薬学的に許容し得る添加剤を配合してなる請求項1〜9記載の経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物。
【請求項11】
薬学的に許容し得る添加剤が、賦形剤、結合剤、調味剤、滑沢剤、保存剤、ミネラル補強剤、糖補強剤、ビタミン類、アミノ酸類及び甘味料から選ばれた1種又は2種以上である請求項10記載の経口投与用医薬品、健康食品又は栄養薬品組成物。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−298791(P2006−298791A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119753(P2005−119753)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(592086318)壽製薬株式会社 (24)
【Fターム(参考)】