説明

グリコペプチド抗生物質誘導体

【課題】新規なグリコペプチド抗生物質誘導体の提供。
【解決手段】新規なバンコマイシン誘導体からなるグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩またはそれらの溶媒和物。またはそれらの溶媒和物は、MRSAを含むブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌、腸球菌等種々の細菌に対して抗菌活性を示し、特にバンコマイシン耐性型腸球菌(VRE)やバンコマイシン耐性型黄色ブドウ球菌(VRSA)に対しても有効であり、よって、髄膜炎、敗血症、肺炎、関節炎、腹膜炎等、気管支炎、膿胸等、種々の細菌感染症を治療または予防するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグリコペプチド抗生物質誘導体およびそれを含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グリコペプチド抗生物質は、様々な微生物により産生される複雑な多環ペプチド構造を有する抗生物質であり、大部分のグラム陽性菌に対して有効な抗菌剤を提供する。近年、ペニシリン、セファロスポリンなどに耐性の細菌が現れ、多耐性およびメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)感染は医療現場において重要な問題を招いている。バンコマイシンのようなグリコペプチド抗生物質は典型的に、このような微生物に対して有効であり、そしてバンコマイシンはMRSAおよび他の耐性菌感染の最後のツール薬物となっている。
【0003】
しかし、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)など、特定の微生物はバンコマイシンに対する耐性を現し始めている。VREは保有する遺伝子のタイプによって耐性の機構や程度が異なり、それはVanA、B、C、D、E、G等の耐性に関与する遺伝子に依存する。この中で例えば、VanB型VREには、バンコマイシンと同じグリコペプチド系の抗生物質であるテイコプラニンが有効である。一方、VanA型のVREは臨床上、特に対策を必要とする菌種であるが、このような耐性株に有効なグリコペプチド系抗生物質で上市に至ったものは無い。また最近では、VREの耐性を獲得した黄色ブドウ球菌(VRSA)も発見されている。従って、改善された活性や選択性を有するグリコペプチド誘導体を開発する必要性が依然としてある。
【0004】
バンコマイシンおよび他のグリコペプチドの多数の誘導体が公知であり、その中にはレゾルシノール部分が修飾されたものも記載されている(特許文献1〜10および非特許文献1〜3)参照。
【0005】
【特許文献1】国際出願公開WO2006/057303 A1
【特許文献2】国際出願公開WO03/018608 A2
【特許文献3】米国特許出願公開US2003/0008812 A1
【特許文献4】国際出願公開WO01/98328 A2
【特許文献5】国際出願公開WO01/98327 A2
【特許文献6】国際出願公開WO01/57071 A2
【特許文献7】特開2000−302687号
【特許文献8】国際出願公開WO00/39156 A1
【特許文献9】仏国特許出願公開第2778184 A1
【特許文献10】国際出願公開WO99/42476 A1
【非特許文献1】Antiviral Research (2006), 72(1), 20-33
【非特許文献2】Journal of Antibiotics (2004), 57(5), 326-336
【非特許文献3】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 12 (2002) 3027-3031
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のグリコペプチド抗生物質に比べて増大し改善された特性を有するグリコペプチド抗生物質の新規な誘導体を提供する。本発明の特定のグリコペプチド誘導体、特にバンコマイシン誘導体はバンコマイシン自体と比較して増大した抗菌活性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、
(1)式:
【化1】

(式中、
Aは、式:−X1−Ar1−X2−Y−X3−Ar2で示される基
1、X2およびX3はそれぞれ独立して、
1)単結合、
2)−N=、=N−、−NR1−(ここに、R1は水素または低級アルキル)、−O−、−S−、−SO−および−SO2-からなる群から選択されるヘテロ原子基、またはそれらの連結基、または
3)−N=、=N−、−NR1−(ここに、R1は水素または低級アルキル)、−O−、−S−、−SO−および−SO2-からなる群から選択される同一もしくは異なるヘテロ原子基が1個もしくはそれ以上介在していてもよくかつ置換されていてもよいアルキレンまたはアルケニレン;
Yは、−NR2CO−、−CONR2−(ここに、R2は水素または低級アルキル)、または式:
【化2】

(式中、R3はアルキレン)
で示される基;および
Ar1およびAr2はそれぞれ独立して、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン化低級アルキル、およびハロゲン化低級アルコキシからなる群から選択される1または2以上の基で置換されていてもよくかつ不飽和結合を有していてもよい炭素環またはヘテロ環;
Bは、−OHまたは−NR55’または−OR6
5およびR5’はそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいアルキル、−NH−R’、−NH−COR’、−NH−CONHR’、−OR’またはアミノ糖残基;
R’は、それぞれ独立して水素または置換されていてもよいアルキル;
6は、置換されていてもよいアルキルであって、該アルキル部分にはヘテロ原子基が介在していてもよく;
Cは、
1)−NH−X4−Ar3(X4は、−O−、−S−、−SO−および−SO2-からなる群から選択される同一もしくは異なるヘテロ原子基が1個もしくはそれ以上介在していてもよくかつ置換されていてもよい低級アルキレン;Ar3は置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリール)、
2)式:
【化3】

で示される、置換されていてもよく縮合していてもよいN原子含有ヘテロ環式基、または
3)モノまたはジ低級アルキルアミノ低級アルキルアミノ;
Rは置換されていてもよいアルキル;
但し、Ar2がジクロロフェニルである場合、RCは以下の1)〜3)
【化4】

に示されるいずれかの基である)
で示される、グリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(2)RAは、以下
【化5】

のいずれかで示される基である、上記(1)記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(3)
Cは以下の1)〜3)
【化6】

に示されるいずれかの基である、上記(1)記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(4)
Cは、1)に示されるいずれかの基である、上記(3)記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(5)
Cは、2)に示されるいずれかの基である、上記(3)記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(6)
Aが請求項2に記載の基である、上記(3)記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(7)
Aは上記(2)に記載の基であり、RCは1)または2)に示されるいずれかの基である、上記(3)記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(8)
BはOH;Rは−CH(NHRD)CH2CH(CH32(ここに、RDは、水素または低級アルキル)である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(9)
以下の実施例に記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含有する医薬組成物
に関する。
【0008】
本発明はさらに、上記本発明の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含有する医薬組成物、好ましくは抗菌剤に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のグリコペプチド抗生物質誘導体、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物は、MRSAを含むブドウ球菌、レンサ球菌、肺炎球菌、腸球菌等種々の細菌に対して抗菌活性を示す。特に、本化合物はそれら由来のバンコマイシン耐性型菌に対しても有効であり、特にバンコマイシン耐性型腸球菌(VRE)やバンコマイシン耐性型黄色ブドウ球菌(VRSA)に対しても有効である。よって、髄膜炎、敗血症、肺炎、関節炎、腹膜炎等、気管支炎、膿胸等、種々の細菌感染症を治療または予防するのに有用である。またより好ましい本発明化合物は水溶性が高く、体内動態が良好であり、および/または毒性面でも安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明化合物の説明のため、本明細書中で用いる用語を以下に説明する。各用語は単独でまたは他の用語と一緒になって同一の意義を有する。
【0011】
「低級アルキル」は、炭素数1〜6個の直鎖状または分枝状の飽和炭化水素鎖のモノラジカルを意味し、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ぺンチル、イソぺンチル、ネオぺンチル、tert-ぺンチル、n-ヘキシル、イソヘキシルが挙げられる。
【0012】
「ヘテロ原子基」は、−N=、=N−、−NR1−(ここに、R1は水素または低級アルキル)、−O−、−S−、−SO−および−SO2-からなる群から選択される基である。
【0013】
1、X2およびX3の定義における「連結基」とは、上記ヘテロ原子基からなる連結基を意味し、例えば−S−S−、−NR1CO−、−NR1O−、−NR1S−、−OSO2−、−OCO−、−SO2NR1−等が挙げられる。
【0014】
「アルキレン」は、炭素数1〜6個の直鎖状または分枝状の飽和炭化水素鎖のジラジカルを意味し、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、プロピレン、テトラメチレン、エチルエチレン、ペンタメチレン又はヘキサメチレン等が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜4個の直鎖状のアルキレンであり、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレンまたはテトラメチレンが挙げられる。好ましくはメチレンである。
【0015】
「アルケニレン」は、上記「アルキレン」に1個またはそれ以上の二重結合を有する炭素数2〜6個の直鎖状又は分枝状の不飽和炭化水素鎖のジラジカルを意味し、例えば、ビニレン、プロペニレンまたはブテニレンが挙げられる。好ましくは、炭素数2〜3個の直鎖状のアルケニレンであり、例えば、ビニレンまたはプロペニレンが挙げられる。
【0016】
「置換されていてもよいアルキレンまたはアルケニレン」とは、1〜5個の置換基、好ましくは1〜3個の置換基を有するアルキレンまたはアルケニレンを表し、ここに、置換基は以下からなる群から選択される:置換されていてもよいアルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、ベンジル、カルバモイルアルキル(例:カルバモイルメチル)、モノまたはジアルキルカルバモイルアルキル(例:ジメチルカルバモイルエチル)、ヒロドキシアルキル、ヘテロサイクルアルキル(例:モルホリノエチル、テトラヒドロピラニルエチル)、アルコキシカルボニルアルキル(例:エトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルエチル)、モノまたはジアルキルアミノアルキル(例:ジメチルアミノエチル)等)、アルコキシアルキル(例えば、メトキシエチル、エトキシメチル、エトキシエチル、i-プロポキシエチル等)、アシル(例えば、ホルミル、置換されていてもよいアルキルカルボニル(例えば、アセチル、プロピロニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、メトキシエチルカルボニル、2,2,2-トリフルオロエチルカルボニル、エトキシカルボニルメチルカルボニル、アルコキシアルキルカルボニル(例:メトキシエチルカルボニル)、アルキルカルバモイルアルキルカルボニル(例:メチルカルバモイルエチルカルボニル)、アルコキシカルボニルアセチル等)、置換されていてもよいアリールカルボニル(例えば、ベンゾイル、トルオイル等))、置換されていてもよいアラルキル(例えば、ベンジル、4−F−ベンジル等)、ヒドロキシ、置換されていてもよいアルキルスルホニル(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル、イソプロピルスルホニル、2,2,2-トリフルオロエタンスルホニル、ベンジルスルホニル、メトキシエチルスルホニル等)、アルキルまたはハロゲンで置換されていてもよいアリールスルホニル(例えば、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル、4-フルオロベンゼンスルホニル)、シクロアルキル(例えば、シクロプロピル等)、アルキルで置換されていてもよいアリール(例えば、4−メチルフェニル等)、アルキルアミノスルホニル(例えば、メチルアミノスルホニル、ジメチルアミノスルホニル等)、アルキルアミノカルボニル(例えば、ジメチルアミノカルボニル等)、アルコキシカルボニル(例えば、エトキシカルボニル等)、シクロアルキルカルボニル(例えば、シクロプロピルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル等)、置換されていてもよいスルファモイル(例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル等)、アルキルカルボニルアミノ(例:メチルカルボニルアミノ)、ヘテロサイクル(例:モルホリノ、テトラヒドロピラニル)、置換されていてもよいアミノ(例:モノまたはジアルキルアミノ(例:ジメチルアミノ)、ホルミルアミノ)。
【0017】
従って、「同一もしくは異なるヘテロ原子基が1個もしくはそれ以上介在していてもよくかつ置換されていてもよいアルキレンまたはアルケニレン」とは、−N=、=N−、−NR1−(ここに、R1は水素または低級アルキル)、−O−、−S−、−SO−および−SO2−からなる群から選択される同一もしくは異なるヘテロ原子基が1個もしくはそれ以上介在していてもよくかつ置換されていてもよいアルキレンまたはアルケニレンを意味する。ここで「介在」とは、ヘテロ原子基がアルキレンまたはアルケニレンを構成する炭素原子間に存在する場合および、該炭素原子とAr1、YまたはAr2の間に存在する場合のいずれをも意味する。例えば、−O−CH2−、−CH2−O−、−CH2−O−CH2−、CH2−NH−CH2−、−O−CH2−O−、−CH2−O−CH2−NH−CH2−、CH2−N=CH−、−CH2−O−CH=N−CH2−、ならびに−O−CH=CH−、−CH=CH−O−、−CH=CH−O−CH2−、CH2−NH−CH=CH−、−O−CH=CH−O−、あるいは−(CH2−O)−Ar1−(O−CH2−O)−Y−(O−CH2)−Ar2などが例示される。またアルキレンがオキソで置換された場合としては、好ましくは−CO−が例示される。
【0018】
1は好ましくは、C1〜C3アルキレンである。
【0019】
2は好ましくは、単結合、C1〜C3アルキレン、OまたはNHである。特に好ましくは単結合である。
【0020】
Y−は好ましくは、−NHCO−、−CONH−、−NMeCO−または−CONMeである。特に好ましくは−NHCO−または−CONH−である。
【0021】
Ar1およびAr2の定義における「不飽和結合を有していてもよい炭素環基」とは、炭素数3〜10のシクロアルキル、炭素数3〜10のシクロアルケニルまたはアリールを意味する。
【0022】
「シクロアルキル」は例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。好ましくは、炭素数3〜6のシクロアルキルであり、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。
【0023】
「シクロアルケニル」は例えば、シクロプロペニル(例えば、1−シクロプロペニル)、シクロブテニル(例えば、1−シクロブテニル)、シクロペンテニル(例えば、1−シクロペンテン−1−イル、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル)、シクロヘキセニル(例えば、1−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル)、シクロヘプテニル(例えば、1−シクロヘプテニル)、シクロオクテニル(例えば、1−シクロオクテニル)等が挙げられる。特に、1−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イルが好ましい。
【0024】
「アリール」は単環芳香族炭化水素基(フェニル)および多環芳香族炭化水素基(例えば、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル等)を意味する。好ましくは、フェニルまたはナフチル(1−ナフチル、2−ナフチル)が挙げられる。
【0025】
Ar1およびAr2の定義における「不飽和結合を有していてもよいヘテロ環基」とは、ヘテロサイクルまたはヘテロアリールを意味する。
【0026】
「ヘテロサイクル」とは、窒素原子、酸素原子、または硫黄原子を少なくとも1以上環内に有する、置換可能な任意の位置に結合手を有する5〜8員の非芳香族複素環式基を意味し、例えば、1−ピロリニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、1−ピロリジニル、2−ピロリジニル、3−ピロリジニル、1−イミダゾリニル、2−イミダゾリニル、4−イミダゾリニル、1−イミダゾリジニル、2−イミダゾリジニル、4−イミダゾリジニル、1−ピラゾリニル、3−ピラゾリニル、4−ピラゾリニル、1−ピラゾリジニル、3−ピラゾリジニル、4−ピラゾリジニル、ピペリジノ、2−ピペリジル、3−ピペリジル、4−ピペリジル、1−ピペラジニル、2−ピペラジニル、2−モルホリニル、3−モルホリニル、モルホリノ、テトラヒドロピラニル等が挙げられる。なお、「非芳香族複素環式基」は、非芳香族であれば、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。
【0027】
「ヘテロアリール」は、単環芳香族複素環式基および縮合芳香族複素環式基を意味する。単環芳香族複素環式基は、酸素原子、硫黄原子、および/または窒素原子を環内に1〜4個含んでいてもよい5〜8員の芳香環から誘導される、置換可能な任意の位置に結合手を有していてもよい基を意味する。縮合芳香族複素環式基は、酸素原子、硫黄原子、および/または窒素原子を環内に1〜4個含んでいてもよい5〜8員の芳香環が、1〜4個の5〜8員の芳香族炭素環もしくは他の5〜8員の芳香族ヘテロ環と縮合している、置換可能な任意の位置に結合手を有していてもよい基を意味する。
【0028】
「ヘテロアリール」としては、例えば、フリル(例えば、2−フリル、3−フリル)、チエニル(例えば、2−チエニル、3−チエニル)、ピロリル(例えば、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル)、イミダゾリル(例えば、1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル)、ピラゾリル(例えば、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル)、トリアゾリル(例えば、1、2、4−トリアゾール−1−イル、1、2、4−トリアゾリール−3−イル、1、2、4−トリアゾール−4−イル)、テトラゾリル(例えば、1−テトラゾリル、2−テトラゾリル、5−テトラゾリル)、オキサゾリル(例えば、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル)、イソキサゾリル(例えば、3−イソキサゾリル、4−イソキサゾリル、5−イソキサゾリル)、チアゾリル(例えば、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル)、チアジアゾリル、イソチアゾリル(例えば、3−イソチアゾリル、4−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル)、ピリジル(例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)、ピリダジニル(例えば、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル)、ピリミジニル(例えば、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル)、フラザニル(例えば、3−フラザニル)、ピラジニル(例えば、2−ピラジニル)、オキサジアゾリル(例えば、1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)、ベンゾフリル(例えば、2−ベンゾ[b]フリル、3−ベンゾ[b]フリル、4−ベンゾ[b]フリル、5−ベンゾ[b]フリル、6−ベンゾ[b]フリル、7−ベンゾ[b]フリル)、ベンゾチエニル(例えば、2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル、4−ベンゾ[b]チエニル、5−ベンゾ[b]チエニル、6−ベンゾ[b]チエニル、7−ベンゾ[b]チエニル)、ベンズイミダゾリル(例えば、1−ベンゾイミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、4−ベンゾイミダゾリル、5−ベンゾイミダゾリル)、ジベンゾフリル、ベンゾオキサゾリル、キノキサリル(例えば、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、6−キノキサリニル)、シンノリニル(例えば、3−シンノリニル、4−シンノリニル、5−シンノリニル、6−シンノリニル、7−シンノリニル、8−シンノリニル)、キナゾリル(例えば、2−キナゾリニル、4−キナゾリニル、5−キナゾリニル、6−キナゾリニル、7−キナゾリニル、8−キナゾリニル)、キノリル(例えば、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、6−キノリル、7−キノリル、8−キノリル)、フタラジニル(例えば、1−フタラジニル、5−フタラジニル、6−フタラジニル)、イソキノリル(例えば、1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル、6−イソキノリル、7−イソキノリル、8−イソキノリル)、プリル、プテリジニル(例えば、2−プテリジニル、4−プテリジニル、6−プテリジニル、7−プテリジニル)、カルバゾリル、フェナントリジニル、アクリジニル(例えば、1−アクリジニル、2−アクリジニル、3−アクリジニル、4−アクリジニル、9−アクリジニル)、インドリル(例えば、1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル)、イソインドリル、ファナジニル(例えば、1−フェナジニル、2−フェナジニル)またはフェノチアジニル(例えば、1−フェノチアジニル、2−フェノチアジニル、3−フェノチアジニル、4−フェノチアジニル)等が挙げられる。
【0029】
Ar1およびAr2を構成する炭素環基および/またはヘテロ環基は芳香族環と非芳香族環が縮合したものも含まれる。
【0030】
Aの定義式から明らかなとおり、Ar1は2価の原子団であるから、1価の置換基として表現された上記の炭素環基若しくはヘテロ環基を構成する炭素原子若しくはヘテロ原子が、Ar1においては更に他の原子団との結合に関与することとなる。
【0031】
Ar1およびAr2の定義における「不飽和結合を有していてもよい炭素環またはヘテロ環」の置換基としては、具体的には、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン基、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル等の低級アルキル基、およびメトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n−ブチルオキシ、イソブチルオキシ、t−ブチルオキシ等の低級アルコキシ、並びに上記具体的な置換基の組合せから誘導されるハロゲン化低級アルキルおよびハロゲン化低級アルコキシ等が挙げられる。
【0032】
これらの置換基は、Ar1またはAr2上に、好ましくは1〜3個置換し得る。
【0033】
Ar1としては、好ましい態様の1つは、置換されていてもよいフェニレンである。フェニレン上の好ましい置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシ、ヒドロキシ低級アルキル、置換されていてもよい低級アルコキシ、置換されていてもよいアミノ(置換基の例:低級アルキル、ヘテロ環、ヘテロ環低級アルキル、低級アルコキシ低級アルキル、ヒドロキシ低級アルキル、低級アルキルスルホニル)、置換されていてもよいアミノ低級アルキル、置換されていてもよいヘテロ環、置換されていてもよいヘテロ環低級アルキル、置換されていてもよいヘテロ環低級アルキルによって置換されていてもよいフェニレン、置換されていてもよいカルバモイル(置換基の例:低級アルキル)、置換されていてもよいカルバモイル低級アルケニルである。ヘテロ環としてこのましくは、それぞれ低級アルキル等によって置換されていてもよいヘテロサイクル(例:モルホリノ、ピペラジノ、ピペリジノ)、ピリジルが例示される。
【0034】
Ar1としては、好ましい態様の1つは、窒素原子を1〜2個含有する置換されていてもよい5〜7員ヘテロ環である。ヘテロ環上の置換基として好ましくは、低級アルキル、オキソ、ハロゲン、アミノ低級アルキル、モノまたはジ低級アルキルアミノ低級アルキル、低級アルコキシ低級アルキルが例示される。特に好ましくはオキソである。
【0035】
Ar2としては、ハロゲン、モノ、ジまたはトリハロゲン化低級アルキル、モノ、ジ、トリ、またはテトラハロゲン化低級アルコキシ、モノ、ジ、トリ、またはテトラハロゲン化低級アルキルチオ、モノまたはジ低級アルキルアミノ、シクロアルキルメチルオキシ、置換されていてもよいベンジルオキシ、低級アルコキシカルボニルアミノ、ニトロ、ヘテロ環(例:それぞれ低級アルキル等によって置換されていてもよいモルホリノ、ピペラジノ、ピペリジノ、ピロリジノ)、置換されていてもよいアセチルアミノ、置換されていてもよい低級アルコキシ、アシル(例:置換されていてもよい低級アルキルカルボニル)、および置換されていてもよい低級アルキルオキシカルボニルからなる群から選択される1またはそれ以上の置換基によって置換されていてもよいアリールまたはヘテロ環が好ましい。特に好ましくは置換フェニル(置換基:ハロゲン、ハロゲン化低級アルコキシ)である。
【0036】
「アラルキルオキシ」とは、上記「アリール」が置換した上記「アルキル」が酸素原子に置換している基を意味し、例えば、ベンジルオキシ、ジフェニルメチルオキシ、トリフェニルメチルオキシ、フェネチルオキシ、1-ナフチルメチルオキシ、2-ナフチルメチルオキシ等が挙げられる。
【0037】
「低級アルコキシ」とは、上記「低級アルキル」が酸素原子に置換している基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシなどが挙げられる。特に、メトキシ、エトキシが好ましい。
【0038】
「アリールオキシ」とは、上記「アリール」が酸素原子に置換している基を意味する。
【0039】
「置換されていてもよいアミノ」は、置換または非置換のアミノを意味する。
【0040】
「置換されていてもよいカルバモイル」は、置換または非置換のカルバモイルを意味する。
【0041】
「置換されていてもよいアミノ」および「置換されていてもよいカルバモイル」の置換基としては、置換されていてもよいアルキル(例えば、メチル、エチル、イソプロピル、ベンジル、カルバモイルアルキル(例:カルバモイルメチル)、モノまたはジアルキルカルバモイルアルキル(例:ジメチルカルバモイルエチル)、ヒロドキシアルキル、ヘテロサイクルアルキル(例:モルホリノエチル、テトラヒドロピラニルエチル)、アルコキシカルボニルアルキル(例:エトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルエチル)、モノまたはジアルキルアミノアルキル(例:ジメチルアミノエチル)等)、アルコキシアルキル(例えば、メトキシエチル、エトキシメチル、エトキシエチル、i-プロポキシエチル等)、アシル(例えば、ホルミル、置換されていてもよいアルキルカルボニル(例えば、アセチル、プロピロニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、メトキシエチルカルボニル、2,2,2-トリフルオロエチルカルボニル、エトキシカルボニルメチルカルボニル、アルコキシアルキルカルボニル(例:メトキシエチルカルボニル)、アルキルカルバモイルアルキルカルボニル(例:メチルカルバモイルエチルカルボニル)、アルコキシカルボニルアセチル等)、置換されていてもよいアリールカルボニル(例えば、ベンゾイル、トルオイル等))、置換されていてもよいアラルキル(例えば、ベンジル、4−F−ベンジル等)、ヒドロキシ、置換されていてもよいアルキルスルホニル(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル、イソプロピルスルホニル、2,2,2-トリフルオロエタンスルホニル、ベンジルスルホニル、メトキシエチルスルホニル等)、アルキルまたはハロゲンで置換されていてもよいアリールスルホニル(例えば、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル、4-フルオロベンゼンスルホニル)、シクロアルキル(例えば、シクロプロピル等)、アルキルで置換されていてもよいアリール(例えば、4−メチルフェニル等)、アルキルアミノスルホニル(例えば、メチルアミノスルホニル、ジメチルアミノスルホニル等)、アルキルアミノカルボニル(例えば、ジメチルアミノカルボニル等)、アルコキシカルボニル(例えば、エトキシカルボニル等)、シクロアルキルカルボニル(例えば、シクロプロピルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル等)、置換されていてもよいスルファモイル(例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル等)、アルキルカルボニルアミノ(例:メチルカルボニルアミノ)、ヘテロサイクル(例:モルホリノ、テトラヒドロピラニル)、置換されていてもよいアミノ(例:モノまたはジアルキルアミノ(例:ジメチルアミノ)、ホルミルアミノ)等が挙げられる。上記置換基でモノまたはジ置換されていてもよい。
【0042】
「置換されていてもよいアミノ」および「置換されていてもよいカルバモイル」のアミノ基は、アルキレン(例えば、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン)等で置換され、アミノ基の窒素原子と共に、O、S原子を含有してもよい環を形成していてもよい。
【0043】
「置換されていてもよいアミノ」および「置換されていてもよいカルバモイル」のアミノ基は、アミノ基の2つの置換基が隣接する窒素原子と共に硫黄原子および/または酸素原子を環内に含有していてもよい含窒素ヘテロサイクル(、好ましくは5〜7員環であり、また好ましくは飽和である)を形成してもよく、該環はオキソ、低級アルキルまたはヒドロキシ等で置換されていてもよい。環を形成する硫黄原子はオキソで置換されていてもよい。例えば、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、ピロリジノ、チアジナン-2-イル、2-オキソピペリジノ、2-オキソピロリジノ、1,1-ジオキシド-1,2-チアジナン-2-イル、4-ヒドロキシモルホリノ等の5員または6員の環等が好ましい。
【0044】
「置換されていてもよいアリール」および「置換されていてもよいヘテロアリール」の置換基は、「置換されていてもよいアミノ基」の場合と同様である。
【0045】
本発明において特に好ましいAr1は、下記の基から選択される。
【化7】

【0046】
Ar2は、好ましくは置換されていてもよいアリール、特に置換されていてもよいフェニルである。本発明において特に好ましいAr2は、下記の基から選択される。
【化8】

【0047】
Aにおける式:−X1−Ar1−X2−Y−X3−Ar2で示される基の好ましい態様を以下に示す。
(1)−CH2−(置換)Ph−CONR−(置換Ph)
(2)−CH2−(置換)Ph−NRCO−(置換Ph)
(3)−CH2−(置換)Ph−CH2−CONR−(置換Ph)
(4)−CH2−(置換)Ph−CH2−NRCO−(置換Ph)
(5)−CH2−(置換)Ph−CONR−CH2−(置換Ph)
(6)−CH2−(置換)Ph−NRCO−CH2−(置換Ph)
(7)−CH2−(置換)Ph−X−CONR−(置換Ph)
(8)−CH2−(置換)Ph−X−NRCO−(置換Ph)
(9)−CH2−(置換)Ph−CONR−X−(置換Ph)
(10)−CH2−(置換)Ph−NRCO−X−(置換Ph)
(11)−CH2−(置換)Ph−CH2−CONR−CH2−(置換Ph)
(12)−CH2−(置換)Ph−CH2−NRCO−CH2−(置換Ph)
(13)−CH2−(置換)Ph−X−CONR−CH2−(置換Ph)
(14)−CH2−(置換)Ph−X−NRCO−CH2−(置換Ph)
(15)−CH2−(置換)Het−CONR−(置換Ph)
(16)−CH2−(置換)Het−NRCO−(置換Ph)
(17)−CH2−(置換)Het−CH2−CONR−(置換Ph)
(18)−CH2−(置換)Het−CH2−NRCO−(置換Ph)
(19)−CH2−(置換)Het−CONR−CH2−(置換Ph)
(20)−CH2−(置換)Het−NRCO−CH2−(置換Ph)
(21)−CH2−(置換)Het−X−CONR−(置換Ph)
(22)−CH2−(置換)Het−X−NRCO−(置換Ph)
(23)−CH2−(置換)Het−CONR−X−(置換Ph)
(24)−CH2−(置換)Het−NRCO−X−(置換Ph)
(25)−CH2−(置換)Het−CH2−CONR−CH2−(置換Ph)
(26)−CH2−(置換)Het−CH2−NRCO−CH2−(置換Ph)
(27)−CH2−(置換)Het−X−CONR−CH2−(置換Ph)
(28)−CH2−(置換)Het−X−NRCO−CH2−(置換Ph)
(29)−CH2−(置換)Het−NRCO−CH=CH−(置換Ph)
(30)−(CH2m−(置換)Ph−CONR−(置換Ph)
(31)−(CH2m−(置換)Ph−NRCO−(置換Ph)
(32)−(CH2m−(置換)Ph−CH2−CONR−(置換Ph)
(33)−(CH2m−(置換)Ph−CH2−NRCO−(置換Ph)
(34)−(CH2m−(置換)Ph−CONR−CH2−(置換Ph)
(35)−(CH2m−(置換)Ph−NRCO−CH2−(置換Ph)
(36)−(CH2m−(置換)Ph−X−CONR−(置換Ph)
(37)−(CH2m−(置換)Ph−X−NRCO−(置換Ph)
(38)−(CH2m−(置換)Ph−CONR−X−(置換Ph)
(39)−(CH2m−(置換)Ph−NRCO−X−(置換Ph)
(40)−(CH2m−(置換)Ph−CH2−CONR−CH2−(置換Ph)
(41)−(CH2m−(置換)Ph−CH2−NRCO−CH2−(置換Ph)
(42)−(CH2m−(置換)Ph−X−CONR−CH2−(置換Ph)
(43)−(CH2m−(置換)Ph−X−NRCO−CH2−(置換Ph)
(44)−(CH2m−(置換)Het−CONR−(置換Ph)
(45)−(CH2m−(置換)Het−NRCO−(置換Ph)
(46)−(CH2m−(置換)Het−CH2−CONR−(置換Ph)
(47)−(CH2m−(置換)Het−CH2−NRCO−(置換Ph)
(48)−(CH2m−(置換)Het−CONR−CH2−(置換Ph)
(49)−(CH2m−(置換)Het−NRCO−CH2−(置換Ph)
(50)−(CH2m−(置換)Het−X−CONR−(置換Ph)
(51)−(CH2m−(置換)Het−X−NRCO−(置換Ph)
(52)−(CH2m−(置換)Het−CONR−X−(置換Ph)
(53)−(CH2m−(置換)Het−NRCO−X−(置換Ph)
(54)−(CH2m−(置換)Het−CH2−CONR−CH2−(置換Ph)
(55)−(CH2m−(置換)Het−CH2−NRCO−CH2−(置換Ph)
(56)−(CH2m−(置換)Het−X−CONR−CH2−(置換Ph)
(57)−(CH2m−(置換)Het−X−NRCO−CH2−(置換Ph)
(58)−(CH2m−(置換)Het−NRCO−CH=CH−(置換Ph)
[上記式中、Ph=フェニル;R=水素または低級アルキル;X=OまたはNH;Hetは、ヘテロアリールまたはヘテロサイクル(好ましくは窒素原子を1〜2個含有する5〜7員環であり、Het上の置換基は得に好ましくはオキソである。);mは2または3;(置換)は置換されていてもよい、を示す]
【0048】
本発明の一態様では、RBは、−OHである。
【0049】
本発明のさらなる態様では、RBは、−NR55’で示される基である。ここで、R5およびR5’としては、それぞれ、例えば水素、置換されていてもよいアルキル、−NH−R’、−NH−COR’、−NH−CONHR’、−OR’またはアミノ糖残基が挙げられる。R’としては水素または置換されていてもよいアルキルが挙げられる。アルキルの好ましい置換基としては、OH、CN、低級アルコキシ、アミノ、=O、ハロゲン、複素環基等が挙げられる。
【0050】
本発明のさらなる態様では、RBは−OR6で示される基である。ここで、R6としては、上記のアルキルが挙げられ、該アルキル部分には、例えば−O−、−S−、−SO−および−SO2-からなる群から選択されるヘテロ原子基が介在していてもよい。
【0051】
「置換されていてもよいアルキル」の置換基としては、OH,低級アルコキシ、置換されていてもよいアミノ、=O、ハロゲン、SO3H、置換されていてもよいカルバモイル、複素環基等が挙げられる。複素環基としては、上記「ヘテロサイクル」および「ヘテロアリール」について例示したものが挙げられるが、モルホリニル、イミダゾイル、テトラヒドロピラニル等の5または6員環の複素環基が好ましい。「置換されていてもよい複素環」の置換基としては、ヒドロキシ、アミノ、カルボキシ、アミノ低級アルキル、4級アンモニウム低級アルキルが例示される。また4級アンモニウム基上の低級アルキル基はさらに置換アルキル(置換基:カルボキシ、ヒドロキシ、4級アンモニウム基)で置換されていてもよい。「置換されていてもよい低級アルケニル」の置換基としては、OH、CN、低級アルコキシ、アミノ、=O、ハロゲン、NH3等が挙げられる。「置換されていてもよいアミノ」および「置換されていてもよいカルバモイル 」の置換基としては、アルキル(例えば、メチル、エチル、ジメチル等)、アルコキシカルボニル(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アルコキシアルキル(例えば、エトキシメチル、エトキシエチル等)、アシル(例えば、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、トルオイル等)、アラルキル(例えば、ベンジル等)、ヒドロキシ、CN、アルキルスルホニル(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル等)、SO2NH2、アルキルで置換されていてもよいアリールスルホニル(例えば、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)、シクロアルキル(例えば、シクロプロピル等)、アルキレン(例えば、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン)、アルキルで置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル、トリチル等)等が挙げられる。「置換されていてもよいアミノ」である場合は、アミノ基の2つの置換基が隣接する窒素原子と共に硫黄原子を環内に含有していてもよい含窒素ヘテロサイクルを形成してもよく、該環はオキソで置換されていてもよい。
【0052】
Cは、以下の(3−1)〜(3−3)からなる群から選択される:
(3−1)−NH−X4−Ar3(X4は、−O−、−S−、−SO−および−SO2-からなる群から選択される同一もしくは異なるヘテロ原子基が1個もしくはそれ以上介在していてもよくかつ置換されていてもよい低級アルキレン;Ar3は置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリール)。
【0053】
この群の特に好ましいRCは、以下の基から選択される。
【化9】

【0054】
(3−2)式:
【化10】

で示される、置換されていてもよく縮合していてもよいN原子含有ヘテロ環式基。この群の特に好ましいRCは、例えば以下に示す基である。
【化11】

【0055】
(3−3)モノまたはジ低級アルキルアミノ低級アルキルアミノ。この群の特に好ましいRCは、例えば以下に示す基である。
【化12】

【0056】
本発明は、上記化合物、その製薬上許容される塩およびそれらの溶媒和物を包含する。本発明化合物の理論上可能なすべての互変異性体、幾何異性体等も、本発明の範囲内である。
【0057】
「製薬上許容される」とは、予防上または治療上有害ではないことを意味する。
本発明化合物の製薬上許容される塩としては、塩基性塩として、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ブロカイン塩、メグルミン塩、ジエタノールアミン塩またはエチレンジアミン塩等の脂肪族アミン塩;N,N-ジベンジルエチレンジアミン、ベネタミン塩等のアラルキルアミン塩;ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等のヘテロ環芳香族アミン塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩;アルギニン塩、リジン塩等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられる。酸性塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過塩素酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩等の有機酸塩;メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等の酸性アミノ酸等が挙げられる。
また本発明化合物の溶媒和物、各種溶媒和物も本発明の範囲内であり、例えば、一溶媒和物、二溶媒和物、一水和物、二水和物等が挙げられる。
【0058】
(2)一般的製造法
以下に代表的な製造法を記載するが、特にこれらの製法に限定する意味ではなく、他の製造法によっても本発明化合物を製造することができる。
本発明化合物は、バンコマイシンまたはその公知の誘導体を原料に用いて、アミノ糖のアミノ部分(RA)、またはC末端部分(RB)、レゾルシノール部分(RC)、もしくはN末端部分のメチルアミノ部分(RD)を種々化学修飾することにより合成できる。当該化学修飾は、例えば、特開平7−258289号、WO00/39156号、特開平2001−163898号等に記載の方法に準じて行えばよい。詳しくは以下の通りである。
1)RA部分の修飾
代表的には、バンコマイシンを原料に用いて、アミノ糖のアミノ部分に、RA部分:式:
−X1−Ar1−X2−Y−X3−Ar2
で示される側鎖に対応する種々のアルデヒドを所望により塩基存在下で反応させ、中間体であるシッフ塩基を形成し、これを続いて還元することによりN−アルキル化して、目的の2級アミンを形成させればよい。
詳細には、シッフの塩基の形成反応は、所望により窒素またはアルゴンのような不活性雰囲気下に、ジメチルホルムアミドまたはメタノールのような極性溶媒またはそれらの混合溶媒中で、所望により塩基存在下、約25℃から約100℃の温度で実施する。この反応は通常、室温〜100℃、好ましくは約60℃から約80℃の温度で、約30分から2時間行われる。使用する塩基としては、アルキルアミン(例:ジイソプロピルエチルアミン)などが例示される。
次に中間体のシッフ塩基を、好ましくは単離せずに、水素化金属錯体により還元するか接触還元すればよい。水素化金属錯体としては、水素化ホウ素ナトリウムまたは水素化シアノホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素金属が使用できる。接触還元は、クラブトリー触媒、ウイルキンソン触媒、パラジウム炭、白金炭またはロジウム炭のような均一系または不均一系触媒の存在下、水素を使用して行われる。還元反応は約25℃から約100℃の温度で約1〜24時間行われる。好ましくは、水素化シアノホウ素ナトリウムの過剰量(例:3〜5モル当量)用い、上記溶媒中で、約60℃から約80℃で実施される。
【0059】
2)RB部分の修飾
代表的には、バンコマイシン骨格のC末端であるカルボン酸部分を、適当な試薬を用いて常法によりアミド化することにより、RB=−NR55’または−OR6で示される各種アミド誘導体に変換できる。
【0060】
Bが−NR55’で示される基である場合は、NHR55’(R5、R5’は前記と同意義)で示される化合物を用い、適当な溶媒(ジメチルホルムアミド(DMF)等)中、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ピロリジノ)ホスホニウム ヘキサフルオロフォスフェート(PyBOP)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)等の存在下で、バンコマイシン骨格のC末端のカルボキシル基と反応させることにより得られる。
【0061】
また、RBが−OR6で示される基である場合は、HOR6(R6は前記と同意義である)で示される化合物を用い、適当な溶媒(ジメチルホルムアミド(DMF)等)中、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ピロリジノ)ホスホニウム ヘキサフルオロフォスフェート(PyBOP)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)等の存在下で、バンコマイシン骨格のC末端のカルボキシル基と反応させることにより得られる。
【0062】
上記の反応で用いる試薬は、いずれも商業的に入手可能であるか、商業的に入手可能な試薬を用い、当業者に周知の方法にしたがって容易に調製することが可能である。
【0063】
アミド化の反応条件は、好ましくは、室温または加熱下にジメチルホルムアミド等の溶媒中、数分〜数時間である。
【0064】
3)RC部分の修飾
代表的には、バンコマイシンを原料に用い、HRC(RCは前記と同意義)で示される化合物を、適当な溶媒(水、アセトニトリルまたはそれらの混合溶媒等)中、ホルムアルデヒド、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)等の存在下で、バンコマイシン骨格のレゾルシノール部分と反応させることにより得られる。
【0065】
4)RD部分の修飾
代表的には、バンコマイシンを原料に用いて、N末端部分のメチルアミン部分を常法により例えばN−アルキル化すればよい。
【0066】
(3)医薬組成物
本発明はまた、本発明の新規なグリコペプチド誘導体を含有する医薬組成物を含む。従って、好ましくは製薬上許容される塩の形態のグリコペプチド化合物は、細菌感染の治療処置および予防処置のための経口または非経口投与用に処方され得る。
経口投与による場合、本発明化合物は通常の製剤、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形剤;水剤;油性懸濁剤;またはシロップ剤もしくはエリキシル剤等の液剤のいずれかの剤形としても用いることができる。非経口投与による場合、本発明化合物は、水性または油性懸濁注射剤、点鼻液として用いることができる。その調製に際しては、慣用の賦形剤、結合剤、滑沢剤、水性溶剤、油性溶剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、安定剤等を任意に用いることができる。抗菌薬としては、特に経口剤、静脈注射剤等が好ましい。
【0067】
本発明の製剤は、治療有効量の本発明化合物を製薬上許容される担体または希釈剤とともに組み合わせる(例えば混合する)ことによって製造される。本発明化合物の製剤は、周知の、容易に入手できる成分を用いて既知の方法により製造される。
【0068】
本発明化合物の医薬組成物を製造する際、活性成分は担体と混合されるかまたは担体で希釈されるか、カプセル、サッシェー、紙、あるいは他の容器の形態をしている担体中に入れられる。担体が希釈剤として働く時、担体は媒体として働く固体、半固体、または液体の材料であり、それらは錠剤、丸剤、粉末剤、口中剤、エリキシル剤、懸濁剤、エマルジョン剤、溶液剤、シロップ剤、エアロゾル剤(液体媒質中の固体)、軟膏にすることができ、例えば、10%までの活性化合物を含む。本発明化合物は投与に先立ち、製剤化するのが好ましい。
【0069】
当業者には公知の適当な担体はいずれもこの製剤のために使用できる。このような製剤では担体は、固体、液体、または固体と液体の混合物である。例えば、静脈注射のために本発明化合物を4%デキストロース/0.5%クエン酸ナトリウム水溶液中に溶解する。固形の製剤は粉末、錠剤およびカプセルを包含する。固形担体は、香料、滑沢剤、溶解剤、懸濁剤、結合剤、錠剤崩壊剤、カプセル剤にする材料としても役立つ1またはそれ以上の物質である。経口投与のための錠剤は、トウモロコシデンプン、アルギン酸などの崩壊剤、および/またはゼラチン、アカシアなどの結合剤、およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、滑石などの滑沢剤とともに炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムなどの適当な賦形剤を含む。
【0070】
粉末剤では担体は細かく粉砕された活性成分と混合された、細かく粉砕された固体である。錠剤では活性成分は、適当な比率で、必要な結合性を持った担体と混合されており、所望の形と大きさに固められている。粉末剤および錠剤は約1〜約99重量%の本発明の新規化合物である活性成分を含んでいる。適当な固形担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、滑石、砂糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、ココアバターである。
【0071】
液体製剤は懸濁剤、エマルジョン剤、シロップ剤、およびエリキシル剤を含む。活性成分は、滅菌水、滅菌有機溶媒、または両者の混合物などの製薬上許容し得る担体中に溶解または懸濁することができる。活性成分はしばしば適切な有機溶媒、例えばプロピレングリコール水溶液中に溶解することができる。水性デンプン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液、または適切な油中に細かく砕いた活性成分を散布することによってその他の組成物を製造することもできる。
【0072】
本発明化合物の投与量は、投与方法、患者の年齢、体重、状態および疾患の種類によっても異なるが、通常、経口投与の場合、成人1日あたり約0.1mg〜7000mg、好ましくは、約0.5mg〜2000mgを、要すれば分割して投与すればよい。また、非経口投与の場合、成人1日あたり約0.1mg〜1000mg、好ましくは、約0.5mg〜500mgを投与する。
【実施例】
【0073】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はいかなる意味においてもこれら実施例に制限されるものではない。
【0074】
実施例1:化合物24の製造
(工程1)
3−フルオロ−N−(4−ヒドロキシメチル−フェニル)−4−トリフルオロメトキシ−ベンズアミド(24b)
【化13】

窒素ガス気流下、4−アミノベンジルアルコール2.711g(21.5mモル)をテトラヒドロフラン30mLに溶解させた。氷冷下まで冷却後、ジイソプロピルエチルアミン4.2mLを滴下して加え、更に3−フルオロ−4−トリフルオロメトキシベンゾイルクロリド(24a)5.23g(21.5mモル)のテトラヒロドフラン(20mL)溶液を10℃以下の温度を維持させながら滴下して加えた。その後室温で7時間撹拌した。反応液を氷水200mLに注ぎ、酢酸エチル200mLで抽出し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥剤を濾去後、濾液を減圧濃縮した。得られた粗固体をアセトンに溶解させ、活性炭5gを加えて室温で10分静置後、活性炭を濾去し濾液を減圧濃縮した。得られた粗固体をジイソプロピルエーテルより再結晶化を行い、無色結晶の表題化合物(24b)6.13g(収率86%)を得た。
【0075】
(工程2)
3−フルオロ−N−(4−ホルミル−フェニル)−4−トリフルオロメトキシ−ベンズアミド(24c)
【化14】

3−フルオロ−N−(4−ヒドロキシメチル−フェニル)−4−トリフルオロメトキシ−ベンズアミド(24b)6.132g(18.6mモル)をテトラヒドロフラン120mLに溶解させ、二酸化マンガン12.26gを加え、室温で19時間撹拌した。ハイフロスーパーセルを用いて二酸化マンガンを濾去し、アセトン120mLで濾去物をリンスした。得られた黄色濾液に活性炭6.1gを加えて室温で10分間静置した。活性炭を濾去し濾液を減圧濃縮後、得られた粗固体をアセトン−ヘキサンより再結晶化を行い、無色結晶の表題化合物(24c)2.94g (収率48%)を得た。
【0076】
(工程3)
3−フルオロ−N−(4−ホルミル−フェニル)−4−トリフルオロメトキシ−ベンズアミド(24d)
【化15】

バンコマイシン塩酸塩11.88g(8.0ミリモル)、3−フルオロ−N−(4−ホルミル−フェニル)−4−トリフルオロメトキシ−ベンズアミド2.62g(8.0ミリモル)をジメチルホルムアミド120mLとメタノール120mLの混合溶媒に溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン2.8mLを加え室温で4.5時間撹拌した。反応混合液を氷冷下まで冷却後、水素化シアノホウ素ナトリウム838mgを加え、更にトリフルオロ酢酸1.85mLをゆっくり滴下して加え、氷冷下で1時間撹拌した。ジイソプロピルエチルアミン5.65mLを加えて反応をクエンチした後、反応溶液中のメタノールを減圧留去し、残液を酢酸エチル600mL中に注加した。生成した沈殿物を濾過により集め、得られた粗固体を5%食塩水300mLによってリンスすることにより未反応の水素化シアノホウ素ナトリウムを除去した。得られた粗固体を、逆相カラムクロマトグラフィーによって精製することにより、無色固体の表題化合物(24d)3.80g(収率27%)を得た.
【0077】
(工程4)
化合物24
【化16】

4−(2−アミノエチル)ピリジン0.90mL(7.14ミリモル)をアセトニトリル20mLと精製水20mLの混合溶媒に溶解させた。ジイソプロプルエチルアミン3.63mL、35%ホルマリン液83μL(1.07ミリモル)を順次滴下後、24d2.13g(1.02ミリモル)を加えて室温下に18時間攪拌した。反応液をアセトン400mL中に滴下して加え、生成した沈殿物を濾過により集め、逆相カラムクロマトグラフィーにより精製して、無色固体の表題化合物(24)589mg(収率26%)を得た。
[M+1]+ = 1893
元素分析(C89H94Cl2F4N12O26・16.3H2O・3.5HCl)
計算値: C: 46.16%, H: 5.66%. N: 7.26%, Cl: 8.42%, F: 3.28%
実測値: C: 46.11%, H: 5.50%. N: 7.36%, Cl: 8.36%, F: 3.17%
【0078】
実施例2:化合物41の製造
(工程1)
3−フルオロ−N−(4−ヒドロキシメチル−フェニル)−4−トリフルオロメチル−ベンズアミド(41b)
【化17】

窒素ガス気流下、4−アミノベンジルアルコール5.375g(42.7mモル)をテトラヒドロフラン60mLに溶解させた。氷冷下まで冷却後、ジイソプロピルエチルアミン8.18mLを滴下して加え、更に3−フルオロ−4−トリフルオロメチルベンゾイルクロリド(41a)10.2g(42.7mモル)のテトラヒロドフラン(30mL)溶液を10℃以下の温度を維持させながら滴下して加えた。その後室温で1時間撹拌した。反応液を0.1規定塩酸200mLに注ぎ、酢酸エチル200mLで抽出し、有機層を5%重曹水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。乾燥剤を濾去後、濾液を減圧濃縮した。得られた粗固体をアセトンに溶解させ、活性炭5gを加えて室温で10分静置後、活性炭を濾去し濾液を減圧濃縮した。得られた粗固体をジイソプロピルエーテルより再結晶化を行い、無色結晶の表題化合物(41b)8.67g(収率65%)を得た。
【0079】
(工程2)
3−フルオロ−N−(4−ホルミル−フェニル)−4−トリフルオロメチル−ベンズアミド(41c)
【化18】

3−フルオロ−N−(4−ヒドロキシメチル−フェニル)−4−トリフルオロメチル−ベンズアミド(41b)8.67g(27.678mモル)をテトラヒドロフラン100mLに溶解させ、二酸化マンガン24.06g(276.78mモル)を加え、室温で2.5時間撹拌した。ハイフロスーパーセルを用いて二酸化マンガンを濾去し、酢酸エチルで濾去物をリンスした。得られた黄色濾液を減圧濃縮後、得られた粗固体をアセトン−ヘキサンより再結晶化を行い、無色結晶の表題化合物(41c)7.013g(収率81%)を得た。
【0080】
(工程3)
化合物41d
【化19】

バンコマイシン塩酸塩14.857g(10ミリモル)、3−フルオロ−N−(4−ホルミル−フェニル)−4−トリフルオロメチル−ベンズアミド3.424g(11ミリモル)をジメチルホルムアミド150mLに溶解させた。ジイソプロピルエチルアミン3.48mLと、モレキュラーシーブス3A(ビーズタイプ)30gを加え、室温で5時間撹拌した。反応混合液を氷冷下まで冷却後、トリフルオロ酢酸2.67mLをゆっくり滴下して加え、更に水素化シアノホウ素ナトリウム1.047g(15mモル)、メタノール30mLを加え、室温で19時間撹拌した。ジイソプロピルエチルアミン6.1mLを加えて反応をクエンチした後、モレキュラーシーブスを濾去し、メタノール100mLで十分に洗浄した。濾液中のメタノールを減圧留去し、残液を酢酸エチル1.2L中に注加した。生成した沈殿物を濾過により集め、得られた粗固体を10%食塩水200mLによってリンスすることにより未反応の水素化シアノホウ素ナトリウムを除去した。得られた粗固体を、逆相カラムクロマトグラフィーによって精製して、無色固体の表題化合物(41d)7.997g(収率46%)を得た。
【0081】
(工程4)
化合物41
【化20】

4−(2−アミノエチル)ピリジン1.52mL(12.84ミリモル)をアセトニトリル30mLと精製水30mLの混合溶媒に溶解させた。ジイソプロプルエチルアミン6.39mL、35%ホルマリン液153μL(1.92ミリモル)を順次滴下後、工程3で得た41d3.20g(1.83ミリモル)を加えて室温下で26時間攪拌した。反応液を氷冷したアセトン600mL中に滴下して加え、生成した沈殿物を濾過により集め、逆相カラムクロマトグラフィーにより精製して、無色固体の表題化合物(41)1.397g(収率41%)を得た。
[M+1]+ =1877
元素分析(C88H94Cl2F4N12O25・8.4H2O・3.4HCl)
計算値: C: 49.63%, H: 5.34%. N: 7.80%, Cl: 8.89%, F: 3.53%
実測値: C: 49.93%, H: 5.50%. N: 6.60%, Cl: 8.89%, F: 2.77%
【0082】
上記実施例記載の手順に従い、以下の化合物を製造した。
【0083】
実施例3
化合物1
【化21】

[M+1]+ = 1905
元素分析(C88H96Cl4N14O26・11.7H2O・3.8HCl)
計算値: C: 46.83%, H: 5.50%. N: 8.69%, Cl: 12.25%
実測値: C: 46.80%, H: 5.54%. N: 8.77%, Cl: 12.34%
【0084】
実施例4
化合物2
【化22】

[M+1]+ = 1905
元素分析(C88H96Cl4N14O26・13.4H2O・3.7HCl)
計算値: C: 46.28%, H: 5.58%. N: 8.59%, Cl: 11.95%
実測値: C: 46.25%, H: 5.52%. N: 8.70%, Cl: 11.97%
【0085】
実施例5
化合物3
【化23】

[M+1]+ = 1983
元素分析(C89H98Cl4N14O28S・12.4H2O・2.4HCl)
計算値: C: 46.55%, H: 5.49%. N: 8.54%, Cl: 9.88%, S: 1.40%
実測値: C: 46.58%, H: 5.40%. N: 8.53%, Cl: 9.85%, S: 1.42%
【0086】
実施例6
化合物4
【化24】

[M+1]+ = 1917
元素分析(C89H96Cl4N14O26・10.2H2O・3.8HCl)
計算値: C: 47.68%, H: 5.40%. N: 8.75%, Cl: 12.33%
実測値: C: 47.70%, H: 5.40%. N: 8.86%, Cl: 12.29%
【0087】
実施例7
化合物5
【化25】

[M+1]+ = 1883
元素分析(C89H97Cl3N14O26・14.4H2O・4.0HCl)
計算値: C: 46.67%, H: 5.71%. N: 8.56%, Cl: 10.84%
実測値: C: 46.59%, H: 5.63%. N: 8.66%, Cl: 10.94%
【0088】
実施例8
化合物6
【化26】

[M+1]+ = 1883
元素分析(C91H96Cl4N12O25・12.6H2O・2.5HCl)
計算値: C: 49.28%, H: 5.62%. N: 7.58%, Cl: 10.39%
実測値: C: 49.22%, H: 5.54%. N: 7.69%, Cl: 10.41%
【0089】
実施例9
化合物7
【化27】

[M+1]+ = 1897
元素分析(C91H96Cl4N12O25・12.6H2O・2.5HCl)
計算値: C: 49.28%, H: 5.62%. N: 7.58%, Cl: 10.39%
実測値: C: 49.22%, H: 5.54%. N: 7.69%, Cl: 10.41%
【0090】
実施例10
化合物8
【化28】

[M+1]+ = 1858
元素分析(C89H95Cl4N11O25・12.7H2O・2.5HCl)
計算値: C: 49.02%, H: 5.68%. N: 7.07%, Cl: 10.57%
実測値: C: 48.99%, H: 5.56%. N: 7.18%, Cl: 10.55%
【0091】
実施例11
化合物9
【化29】

[M+1]+ = 1892
元素分析(C89H94Cl5N11O25・21.6H2O・2.7HCl)
計算値: C: 44.87%, H: 5.92%. N: 6.47%, Cl: 11.46%
実測値: C: 44.87%, H: 5.86%. N: 6.52%, Cl: 11.45%
【0092】
実施例12
化合物10
【化30】

[M+1]+ = 1874
元素分析(C89H95Cl4N11O26・10.6H2O・2.4HCl)
計算値: C: 49.60%, H: 5.55%. N: 7.15%, Cl: 10.53%
実測値: C: 49.56%, H: 5.49%. N: 7.32%, Cl: 10.48%
【0093】
実施例13
化合物11
【化31】

[M+1]+ = 1873
元素分析(C89H96Cl4N12O25・13.6H2O・3.0HCl)
計算値: C: 47.94%, H: 5.70%. N: 7.54%, Cl: 11.13%
実測値: C: 47.94%, H: 5.65%. N: 7.69%, Cl: 11.14%
【0094】
実施例14
化合物12
【化32】

[M+1]+ = 1859
元素分析(C88H94Cl4N12O25・12.7H2O・3.2HCl)
計算値: C: 47.89%, H: 5.60%. N: 7.62%, Cl: 11.57%
実測値: C: 47.86%, H: 5.54%. N: 7.86%, Cl: 11.69%
【0095】
参考例1
化合物13
【化33】

[M+1]+ = 1635
元素分析(C74H82Cl4N10O24・11.2H2O・2.2HCl)
計算値: C: 46.31%, H: 5.60%. N: 7.30%, Cl: 11.45%
実測値: C: 46.27%, H: 5.60%. N: 7.36%, Cl: 11.52%
【0096】
参考例2
化合物14
【化34】

[M+1]+ = 1615
元素分析(C75H85Cl3N10O24・10.7H2O・2.0HCl)
計算値: C: 47.85%, H: 5.80%. N: 7.44%, Cl: 9.42%
実測値: C: 47.85%, H: 5.83%. N: 7.48%, Cl: 9.33%
【0097】
参考例3
化合物15
【化35】

[M+1]+ = 1649
元素分析(C75H84Cl4N10O24・10.0H2O・3.2HCl)
計算値: C: 46.24%, H: 5.55%. N: 7.19%, Cl: 13.10%
実測値: C: 46.19%, H: 5.58%. N: 7.27%, Cl: 13.16%
【0098】
参考例4
化合物16
【化36】

[M+1]+ = 1740
元素分析(C81H89Cl4N11O24・14.8H2O・2.5HCl)
計算値: C: 46.32%, H: 5.81%. N: 7.34%, Cl: 10.97%
実測値: C: 46.28%, H: 5.75%. N: 7.46%, Cl: 11.00%
【0099】
参考例5
化合物17
【化37】

[M+1]+ = 1790
元素分析(C85H91Cl4N11O24・13.6H2O・2.8HCl)
計算値: C: 47.71%, H: 5.70%. N: 7.20%, Cl: 11.27%
実測値: C: 47.66%, H: 5.62%. N: 7.32%, Cl: 11.33%
【0100】
参考例6
化合物18
【化38】

[M+1]+ = 1791
元素分析(C84H90Cl4N12O24・15.2H2O・2.4HCl)
計算値: C: 46.82%, H: 5.74%. N: 7.80%, Cl: 10.53%
実測値: C: 46.77%, H: 5.57%. N: 7.86%, Cl: 10.59%
【0101】
実施例15
化合物19
【化39】

[M+1]+ = 1852
元素分析(C89H96Cl3N13O25・17.1H2O・3.4HCl)
計算値: C: 46.76%, H: 5.89%. N: 7.96%, Cl: 9.92%
実測値: C: 46.78%, H: 5.73%. N: 7.97%, Cl: 9.87%
【0102】
実施例16
化合物20
【化40】

[M+1]+ = 1877
元素分析(C89H94Cl2F4N12O25・12.6H2O・2.6HCl)
計算値: C: 48.58%, H: 5.58%. N: 7.64%, Cl: 7.41%, F: 3.45%
実測値: C: 48.62%, H: 5.61%. N: 7.45%, Cl: 7.45%, F: 3.31%
【0103】
実施例17
化合物21
【化41】

[M+1]+ = 1878
元素分析(C88H93Cl2F4N13O25・15.6H2O・2.9HCl)
計算値: C: 46.63%, H: 5.65%. N: 8.03%, Cl: 7.66%, F: 3.35%
実測値: C: 46.73%, H: 5.42%. N: 7.82%, Cl: 7.59%, F: 3.19%
【0104】
実施例18
化合物22
【化42】

[M+1]+ = 1853
元素分析(C88H95Cl3N14O25・16.3H2O・3.4HCl)
計算値: C: 46.50%, H: 5.81%. N: 8.63%, Cl: 9.98%
実測値: C: 46.51%, H: 5.75%. N: 8.76%, Cl: 9.99%
【0105】
実施例19
化合物23
【化43】

[M+1]+ = 1883
元素分析(C89H97Cl3N14O26・16.5H2O・3.0HCl)
計算値: C: 46.64%, H: 5.85%. N: 8.56%, Cl: 9.28%
実測値: C: 46.63%, H: 5.81%. N: 8.66%, Cl: 9.32%
【0106】
実施例20
化合物25
【化44】

[M+1]+ = 1894
元素分析(C88H93Cl2F4N13O26・15.1H2O・2.9HCl)
計算値: C: 46.49%, H: 5.59%. N: 8.01%, Cl: 7.64%, F: 3.34%
実測値: C: 46.44%, H: 5.56%. N: 8.10%, Cl: 7.64%, F: 3.27%
【0107】
実施例21
化合物26
【化45】

[M+1]+ = 1908
元素分析(C89H95Cl2F4N13O26・15.2H2O・3.1HCl)
計算値: C: 46.55%, H: 5.64%. N: 7.93%, Cl: 7.87%, F: 3.31%
実測値: C: 46.53%, H: 5.60%. N: 8.01%, Cl: 7.80%, F: 3.19%
【0108】
実施例22
化合物27
【化46】

[M+1]+ = 1924
元素分析(C89H95Cl2F4N13O27・17.0H2O・3.5HCl)
計算値: C: 45.30%, H: 5.66%. N: 7.72%, Cl: 8.26%, F: 3.22%
実測値: C: 45.26%, H: 5.61%. N: 8.13%, Cl: 8.32%, F: 2.95%
【0109】
実施例23
化合物28
【化47】

[M+1]+ = 1909
元素分析(C90H95Cl3N14O27・18.2H2O・3.3HCl)
計算値: C: 45.82%, H: 5.75%. N: 8.31%, Cl: 9.47%
実測値: C: 45.79%, H: 5.42. N: 8.20%, Cl: 9.36%
【0110】
実施例24
化合物29
【化48】

[M+1]+ = 1875
元素分析(C89H95Cl2F3N12O26・14.3H2O・3.7HCl)
計算値: C: 47.11%, H: 5.65%. N: 7.41%, Cl: 8.91%, F: 2.51%
実測値: C: 47.10%, H: 5.44%. N: 7.29%, Cl: 8.87%, F: 2.42%
【0111】
実施例25
化合物30
【化49】

[M+1]+ = 1894
【0112】
実施例26
化合物31
【化50】

[M+1]+ = 1876
元素分析(C88H94Cl2F3N13O26・14.4H2O・3.3HCl)
計算値: C: 46.82%, H: 5.63%. N: 8.07%, Cl: 8.32%, F: 2.52%
実測値: C: 46.75%, H: 5.48%. N: 8.30%, Cl: 8.25%, F: 2.41%
【0113】
実施例27
化合物32
【化51】

[M+1]+ = 1906
元素分析(C89H96Cl2F3N13O27・16.6H2O・2.6HCl)
計算値: C: 46.45%, H: 5.77%. N: 7.91%, Cl: 7.09%, F: 2.48%
実測値: C: 46.41%, H: 5.54%. N: 8.04%, Cl: 7.14%, F: 2.72%
【0114】
実施例28
化合物33
【化52】

[M+1]+ =1860
元素分析(C88H94Cl2F3N13O25・14.3H2O・3.8HCl)
計算値: C: 46.81%, H: 5.64%. N: 8.06%, Cl: 9.11%, F: 2.52%
実測値: C: 46.88%, H: 5.57%. N: 7.83%, Cl: 9.10%, F: 2.44%
【0115】
実施例29
化合物34
【化53】

[M+1]+ =1875
元素分析(C89H95Cl2F3N12O26・20.5H2O・3.1HCl)
計算値: C: 45.31%, H: 5.94%. N: 7.13%, Cl: 7.66%, F: 2.42%
実測値: C: 45.33%, H: 5.88%. N: 7.23%, Cl: 7.62%, F: 2.41%
【0116】
実施例30
化合物35
【化54】

[M+1]+ =1834
元素分析(C90H101Cl2N13O25・14.5H2O・4.0HCl)
計算値: C: 48.20%, H: 6.02%. N: 8.12%, Cl: 9.48%
実測値: C: 48.17%, H: 5.93%. N: 8.20%, Cl: 9.44%
【0117】
実施例31
化合物36
【化55】

[M+1]+ =1906
元素分析(C89H96Cl2F3N13O27・14H2O・3.4HCl)
計算値: C: 46.80%, H: 5.62%. N: 7.97%, Cl: 8.38%, F: 2.50%
実測値: C: 46.88%, H: 5.62%. N: 7.62%, Cl: 8.42%, F: 2.37%
【0118】
実施例32
化合物37
【化56】

[M+1]+ =1833
元素分析(C91H102Cl2N12O25・12.9H2O・3.2HCl)
計算値: C: 50.05%, H: 6.05%. N: 7.70%, Cl: 8.44%
実測値: C: 50.05%, H: 6.03%. N: 7.76%, Cl: 8.47%
【0119】
実施例33
化合物38
【化57】

[M+1]+ =1864
元素分析(C91H103Cl2N13O26・14H2O・3HCl)
計算値: C: 49.07%, H: 6.06%. N: 8.17%, Cl: 7.96%
実測値: C: 49.05%, H: 6.05%. N: 8.28%, Cl: 7.97%
【0120】
実施例34
化合物39
【化58】

[M+1]+ =1878
元素分析(C88H96Cl2F3N13O26・15H2O・3.7HCl)
計算値: C: 46.26%, H: 5.72%. N: 7.97%, Cl: 8.84%, F: 2.49%
実測値: C: 46.20%, H: 5.48%. N: 8.14%, Cl: 8.81%, F: 2.43%
【0121】
実施例35
化合物40
【化59】

[M+1]+ =1878
元素分析(C88H93Cl2F4N13O25・14H2O・3.2HCl)
計算値: C: 47.01%, H: 5.57%. N: 8.10%, Cl: 8.20%, F: 3.38%
実測値: C: 47.00%, H: 5.51%. N: 8.19%, Cl: 8.17%, F: 3.24%
【0122】
実施例36
化合物42
【化60】

[M+1]+ =1908
元素分析(C89H95Cl2F4N13O26・11.3H2O・4.4HCl)
計算値: C: 47.01%, H: 5.41%. N: 8.01%, Cl: 9.98%, F: 3.34%
実測値: C: 46.98%, H: 5.36%. N: 8.11%, Cl: 10.00%, F: 3.15%
【0123】
実施例37
化合物43
【化61】

[M+1]+ =1940
元素分析(C93H98Cl2F3N13O26・12.2H2O・2.4HCl)
計算値: C: 49.67%, H: 5.59%. N: 8.10%, Cl: 6.94%, F: 2.53%
実測値: C: 49.62%, H:5.62%. N: 8.36%, Cl: 6.87%, F: 2.55%
【0124】
実施例38
化合物44
【化62】

M=C+ + Cl-
[C]+=1855
元素分析(C87H100Cl3F3N12O26・2(HCl)・15(H2O))
計算値: C 46.73%, H : 5.95%, Cl : 7.93%, F : 2.55%, N : 7.52%, O : 29.33%
実測値: C 46.6%, H : 5.84%, Cl : 8.13%, F : 2.43%, N : 7.67%
【0125】
実施例39
化合物45
【化63】

[M+1]+=1859
元素分析(C88H94Cl4N12O25・3.8(HCl)・13(H2O))
計算値: C 47.30%, H : 5.58%, Cl : 12.38%, N : 7.52%, O : 27.21%
実測値 C: 47.38%, H : 5.48%, Cl : 12.21%, N : 7.61%
【0126】
実施例40
化合物46
【化64】

[M+1]+=1875
元素分析(C89H95Cl2F3N12O26・3(HCl)・13(H2O))
計算値: C 48.15%, H : 5.63%, Cl : 7.98%, F : 2.57%, N : 7.57%, O : 28.10%
実測値: C 47.93%, H : 5.58%, Cl : 8.16%, F : 2.49%, N : 7.57%
【0127】
実施例41
化合物47
【化65】

[M+1]+=1909
元素分析(C87H92Cl4N12O27S・2(HCl)・12(H2O))
計算値: C 47.48%, H : 5.40%, Cl : 9.67%, N : 7.64%, O : 28.35%, S : 1.46%
実測値: C 47.56%, H : 5.36%, Cl : 9.69%, N : 7.67%, S : 1.32%
【0128】
実施例42
化合物48
【化66】

[M+1]+=1876
元素分析(C87H94Cl2F3N13O26・3(HCl)・14(H2O))
計算値: C 46.92%, H : 5.66%, Cl : 7.96%, F : 2.56%, N : 8.18%, O : 28.73%
実測値: C 46.80%, H : 5.57%, Cl : 7.96%, F : 2.54%, N : 8.15%
【0129】
実施例43
化合物49
【化67】

[M+1]+=1921
元素分析(C88H92Cl4N12O27S・1.4(HCl)・13(H2O))
計算値: C 47.85%, H : 5.45%, Cl : 8.67%, N : 7.61%, O : 28.97%, S : 1.45%
実測値: C 48.00%, H : 5.47%, Cl : 8.66%, N : 7.72%, S : 1.37%
【0130】
実施例44
化合物50
【化68】

[M+1]+=1857
元素分析(C87H98Cl2F4N12O25・3(HCl)・11(H2O))
計算値: C 48.24%, H : 5.72%, Cl : 8.18%, F : 3.51%, N : 7.76%, O : 26.59%
実測値: C 48.01%, H : 5.75%, Cl : 8.43%, F : 3.34%, N : 7.80%
【0131】
実施例45
化合物51
【化69】

[M+1]+=1877
元素分析(C89H94Cl2F4N12O25・3(HCl)・11(H2O))
計算値: C 48.90%, H : 5.49%, Cl : 8.11%, F : 3.48%, N : 7.69%, O : 26.35%
実測値: C 48.73%, H : 5.57%, Cl : 8.30%, F : 3.22%, N : 7.71%
【0132】
実施例46
化合物52
【化70】

[M+1]+=1878
元素分析(C88H93Cl2F4N13O25・2.4(HCl)・12(H2O))
計算値: C 48.41%, H : 5.51%, Cl : 7.14%, F : 3.48%, N : 8.34%, O : 27.11%
実測値: C 48.41%, H : 5.44%, Cl : 7.19%, F : 3.28%, N : 8.39%
【0133】
実施例47
化合物53
【化71】

[M+1]+=1910
元素分析(C86H91Cl4N13O27S・2.4(HCl)・13(H2O))
計算値: C 46.23%, H : 5.39%, Cl : 10.16%, N : 8.15%, O : 28.64%, S : 1.44%
実測値: C 46.26%, H : 5.28%, Cl : 10.34%, N : 8.16%, S : 1.40%
【0134】
実施例48
化合物54
【化72】

[M+1]+=1922
【0135】
実施例49
化合物55
【化73】

[M+1]+=1859
元素分析(C89H95Cl2F3N12O25・3.5(HCl)・14(H2O))
計算値: C 47.71%, H : 5.69%, Cl : 8.70%, F : 2.54%, N : 7.50%, O : 27.85%
実測値: C 47.50%, H : 5.45%, Cl : 8.88%, F : 2.43%, N : 7.56%
【0136】
実施例50
化合物56
【化74】

[M+1]+=1890
元素分析(C89H96Cl2F3N13O26・4.7(HCl)・16(H2O))
計算値: C 45.46%, H : 5.69%, Cl : 10.10%, F : 2.42%, N : 7.74%, O : 28.58%
実測値: C 45.19%, H : 5.40%, Cl : 10.16%, F : 2.32%, N : 7.77%
【0137】
実施例51
化合物57
【化75】

[M+1]+=1839
元素分析(C87H99Cl2F3N12O25・3.5(HCl)・12(H2O))
計算値: C 47.83%, H : 5.84%, Cl : 8.93%, F : 2.61%, N : 7.69%, O : 27.10%
実測値: C 47.83%, H : 5.90%, Cl : 8.88%, F : 2.49%, N : 7.77%
【0138】
実施例52
化合物58
【化76】

[M+1]+=1912
元素分析(C88H102Cl2F3N15O26・4.2(HCl)・11.4(H2O))
計算値: C 46.52%, H : 5.72%, Cl : 9.67%, F : 2.51%, N : 9.25%, O : 26.33%
実測値: C 46.04%, H : 5.71%, Cl : 9.82%, F : 2.36%, N : 9.75%
【0139】
試験例1
抗菌活性のインビトロ測定
(試験方法)
当業者に周知の陽イオン調整ミューラーヒントン液体培地を用いた微量液体希釈法により、本発明化合物のいくつかについて最小発育阻止濃度(MIC)を測定した。
(結果)
本発明の化合物は、高度耐性型MRSAやバンコマイシン耐性菌を含む種々の細菌に対して強い抗菌活性を示した。例えば、実施例1の化合物24、実施例2の化合物41は、高度耐性型MRSAであるS.aureus SR3637(H−MRSA)に対してはMIC=0.25μg/mLであり、バンコマイシン耐性菌であるE. faecium SR 7940(van A)に対してはMIC=2.0μg/mLであった。
【0140】
試験例2
本発明化合物の水溶性および毒性を調べた。
実施例1の化合物24および実施例2の化合物41は、良好な水溶性を示した(室温で1%以上)。またラットやモルモット等での毒性試験においても良好な結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明のグリコペプチド誘導体、その製薬上許容される塩およびそれらの溶媒和物は、医療処置において有用であり、抗菌活性を含む生体活性を示す。従って、本発明は、感染性疾患、特に、動物においてグラム陽性微生物によって引き起こされる疾患を処置するための方法を提供し、本発明の化合物は、特にメチシリン耐性ブドウ球菌によって引き起こされる感染を処置するのに有用である。また、この化合物は、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)を含む、腸球菌による感染を処置するのに有用である。このような疾患の例には、重篤なブドウ球菌性の感染、例えば、ブドウ球菌心内膜炎およびブドウ球菌敗血症がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、
Aは、式:−X1−Ar1−X2−Y−X3−Ar2で示される基
1、X2およびX3はそれぞれ独立して、
1)単結合、
2)−N=、=N−、−NR1−(ここに、R1は水素または低級アルキル)、−O−、−S−、−SO−および−SO2-からなる群から選択されるヘテロ原子基、またはそれらの連結基、または
3)−N=、=N−、−NR1−(ここに、R1は水素または低級アルキル)、−O−、−S−、−SO−および−SO2-からなる群から選択される同一もしくは異なるヘテロ原子基が1個もしくはそれ以上介在していてもよくかつ置換されていてもよいアルキレンまたはアルケニレン;
Yは、−NR2CO−、−CONR2−(ここに、R2は水素または低級アルキル)、または式:
【化2】

(式中、R3はアルキレン)
で示される基;および
Ar1およびAr2はそれぞれ独立して、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン化低級アルキル、およびハロゲン化低級アルコキシからなる群から選択される1または2以上の基で置換されていてもよくかつ不飽和結合を有していてもよい炭素環またはヘテロ環;
Bは、−OHまたは−NR55’または−OR6
5およびR5’はそれぞれ独立して水素、置換されていてもよいアルキル、−NH−R’、−NH−COR’、−NH−CONHR’、−OR’またはアミノ糖残基;
R’は、それぞれ独立して水素または置換されていてもよいアルキル;
6は、置換されていてもよいアルキルであって、該アルキル部分にはヘテロ原子基が介在していてもよく;
Cは、
1)−NH−X4−Ar3(X4は、−O−、−S−、−SO−および−SO2-からなる群から選択される同一もしくは異なるヘテロ原子基が1個もしくはそれ以上介在していてもよくかつ置換されていてもよい低級アルキレン;Ar3は置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリール)、
2)式:
【化3】

で示される、置換されていてもよく縮合していてもよいN原子含有ヘテロ環式基、または
3)モノまたはジ低級アルキルアミノ低級アルキルアミノ;
Rは置換されていてもよいアルキル;
但し、Ar2がジクロロフェニルである場合、RCは以下の1)〜3)
【化4】

に示されるいずれかの基である)
で示される、グリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項2】
Aは、以下
【化5】

のいずれかで示される基である、請求項1記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項3】
Cは以下の1)〜3)
【化6】

に示されるいずれかの基である、請求項1記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項4】
Cは、1)に示されるいずれかの基である、請求項3記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項5】
Cは、2)に示されるいずれかの基である、請求項3記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項6】
Aが請求項2に記載の基である、請求項3記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項7】
Aは請求項2に記載の基であり、RCは1)または2)に示されるいずれかの基である、請求項3記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項8】
BはOH;Rは−CH(NHRD)CH2CH(CH32(ここに、RDは、水素または低級アルキル)である、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のグリコペプチド化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物を含有する医薬組成物。

【公開番号】特開2009−29730(P2009−29730A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193316(P2007−193316)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【Fターム(参考)】