説明

グリコーゲンおよびアルギン酸塩の会合体に基づく徐放性製剤

本発明はマトリックス内に分散した少なくとも一種の活性成分を含む放出制御医薬製剤であって、前記マトリックスは少なくとも一種の徐放性の賦形剤を含み、前記賦形剤は少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属の塩類を含む医薬製剤およびその製造方法に関する。本発明はまた、少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属塩類の会合体を含む徐放性の賦形剤および、その徐放性医薬製剤の製造のためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放出制御の製剤処方および、その製造方法に関する。
【0002】
特に、本発明はマトリックスに分散した少なくとも一種の活性成分を含む医薬製剤であって、前記マトリックスは少なくとも一種の徐放性の賦形剤を含み、前記賦形剤は少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属塩類の会合体を含む放出制御医薬製剤および、その製造方法に関する。
【0003】
より詳細には、本発明はまた、少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属塩類の会合体を含む徐放性の賦形剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
活性成分に加えて、薬剤の投与用の薬学的組成物は賦形剤として知られる補助物質を含む。
【0005】
賦形剤は、医薬製剤の製造、保存および使用過程において果たす様々な重要な役割を有する。
【0006】
それらの役割によって、賦形剤は、充填用賦形剤、製造用賦形剤、保存用賦形剤、体裁(presentation)用賦形剤および放出用賦形剤として分類される。
【0007】
充填剤としての役割を有する賦形剤は、医薬製剤の容量を増やすために使われる希釈剤と、水分を吸収し保持するために使われる吸収剤と、ガス、毒素およびバクテリアを吸着するために使われる吸着剤とを含む。
【0008】
製造用の役割を有する賦形剤は、打錠機の金型と穿孔器との両方に粉末が付着することを防ぎ、錠剤の調製に用いられる滑剤、医薬製剤を小型化する結合剤、流れる粉末の流度を改善させる流動促進剤と、可塑剤と粘度調整剤とである。
【0009】
防腐剤の役割を有する賦形剤は、化学的、物理的、微生物学的、毒物学的、および治療学的な性質に関して薬学的調製における安定性を確保するために役立つ。これらの賦形剤は、微生物の繁殖を阻害する抗生物質と、活性成分の酸化分解を減少させる抗酸化物質と、活性成分を分解させる反応で触媒作用を及ぼすことができる金属で錯体をつくるキレート剤とを含む。
【0010】
体裁の役割を有する賦形剤は、医薬製剤が患者にさらなる好感を与えるために使用して、薬味、甘味料および着色剤を含む。
【0011】
活性成分を放出する役割を有する賦形剤で、体液との接触によって薬学的形態の分解を促進する崩壊剤と、コーティング剤または時間経過によって変化する活性成分を放出することを達成するマトリックスとして使用される高分子とがある。
【0012】
活性成分の放出の調整または制御に主に使用される高分子は、例えば、ポリエステル類、カルボマー類、アセトフタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリメタクリル酸類、エチルセルロース、ポリオキシエチレンおよび架橋された多糖類である。
【0013】
植物起源の化学修飾された多糖類は、例えば、澱粉またはその成分(アミロースおよびアミロペクチン)があり、それらの非毒性および生物分解性から、近年大きな成功があった。
【0014】
米国特許5,456,921号には活性成分と、エピクロルヒドリンまたは2,3−ジブロモプロパノールと架橋アミロース類から得られる架橋高分子との混合物を含む徐放性医薬製剤を記載する。
【0015】
国際特許出願98/35992号には、澱粉と高含量のアミロースを主成分とした徐放性医薬製剤の製造方法を記載し、ゼラチン化工程、架橋工程、脱塩工程、熱処理工程、および最後に徐放性の賦形剤の乾燥工程を含む。
【0016】
米国特許6,607,748号には、架橋工程をゼラチン化工程の前に行う上記と類似の方法を記載し、比較的少ない量の試薬がその方法で用いられ、良好な徐放性特徴を有する物質が得られることを記載する。
【0017】
徐放性経口剤の調製で使用される賦形剤の他の例は、アルギン酸誘導体、特にアルカリ金属とそれらの塩類である。アルギン酸はβ−D−マンヌロン酸およびα−L−グルクロン酸が1−4グリコシド結合で結合したものを含むコポリマーである。アルギン酸ナトリウムは、様々な種類の藻類から抽出され、それぞれの単糖残渣の数および鎖におけるそれらの配列は起源の藻類の性質に依存する。
【0018】
英国特許1,355,985号および米国特許3,640,741号には、徐放性医薬製剤の調製に関して、アルギン酸ナトリウムおよびカルシウム塩類の混合物の製造方法を記載する。
【0019】
米国特許4,842,866号には、活性成分と、アルギン酸ナトリウムならびにアルギン酸ナトリウムおよびカルシウムの混合物を含む固形の徐放性医薬製剤を記載する。
【0020】
国際特許出願97/22335号には、さらに活性成分の基本的性質の分解を助ける有機カルボン酸の存在を含む上記のものと類似の製剤を記載する。
【0021】
米国特許出願2002/0103181号には、活性成分としてβラクタム抗生物質と、アルギン酸ナトリウムおよびキサンタンゴムの混合物とを含む徐放錠を記載し、希釈剤の量によって活性成分の遅いまたは早い放出を示す。
【0022】
Il Farmaco 59, 2004, 999−1004には、様々な比率のアルギン酸ナトリウムおよび塩化カルシウムまたは塩化アルミニウムを含む製剤からテオフィリンの放出の過程を記載する。
【0023】
グリコーゲンは動物由来の多糖類で、主にα−1−4グリコシド結合によって結合するD−グルコースの分子と、α−1−6グリコシド結合によって形成される分枝状の全5−10グルコース単位とを含む。グリコーゲンの分枝の数および度合は、それを得た動物の種との関連で異なる。天然のグリコーゲンの分子量は、10−10ダルトンの次数である。自然界において、グリコーゲンはグリコーゲン合成の細胞過程で関連しているタンパク質、グリコゲニン、酵素と結合することが多い。商業的なグリコーゲンの品質は、タンパク質残渣(ppmで示される測定された窒素の量に対して)および、還元糖の多量または少量の存在に依存する。欧州特許654,048号には、低窒素および低還元糖の含有量での高品質グリコーゲンを記載する。
【0024】
グリコーゲンは、化粧品業界で皮膚軟化剤(特開87−178 505号に記載)および水和剤(特開88−290 809に記載)として、食品業界で添加物として、さらに眼溶液で湿潤剤および潤滑剤(WO 99/47120)として使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本願出願人は、従来技術で知られる徐放性製剤が多くの不利な点を有することに注目した。
【0026】
第一の不利な点は、アルギン酸ナトリウムおよびカルシウム塩の混合物を含む組成物の安定性および再現性が乏しくなり、おそらくそれはカルシウムイオンに対するアルギン酸塩の高い反応性があるためである。
【0027】
第二の不利な点は、比較的に短い放出特性を有し、毎日一回の投与量の医薬製剤(すなわち、一日一回の投与分)、または複数の日数の投与量(すなわち、2,3またはそれ以上の日ごとに一回)を調製することができないことである。
【0028】
第三の不利な点は、放出特性が理想的なゼロ速度特性(すなわち、一定の率で放出)がしばしば異なる事実であり、放出速度が初期にとても高くそれから減少または、放出速度が初期にとても低くそれから増加または、可変的な速度であり予見できないことである。
【0029】
定義
本願明細書および次の請求項において、「会合体(association)」という用語は、イオン性、静電気的、親水性、新油性、極性、共有の結合の性質が、個々またはいずれかの組み合わせで形成される成分の混合物を意味するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
驚くべきことに、出願人はヒドロゲルの形成および次のそれの乾燥にわたって得られる少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属塩類の会合体が、活性成分と、上述した不利な点を克服する放出性の賦形剤としての前記会合体とを含む徐放性の医薬製剤を見出した。
【0031】
従って、本発明はマトリックス内に分散した少なくとも一種の活性成分を含む医薬製剤であって、前記マトリックスは少なくとも一種の徐放性の賦形剤を含み、前記賦形剤は少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属の塩の会合体を含むものに関する。
【0032】
出願人は、本発明による医薬製剤は長期にわたって安定で容易に再現可能であり、そしてアルギン酸カルシウムを含む製剤の典型的な不利な点が全くないことを見出した。
【0033】
出願人は、さらに、本発明による医薬製剤は実質的に0次、すなわち長期にわたって一定である放出速度で活性成分を放出することを観測した。
【0034】
更にまた、出願人は、活性成分の放出が十二時間以上の期間にわたり生じ、したがって一日一回の投与または数日に一回の投与が可能であることを観測した(活性成分の生物学的利用能に基づく)。
【0035】
別の態様において、本発明はまた、少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属塩類の会合体を含む徐放性賦形剤の医薬製剤の製造に関する。
【0036】
更なる態様において、本発明は少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属塩類の会合体を含む徐放性賦形剤の製造方法において、
(a)前記少なくとも一種のグリコーゲンおよび前記少なくとも一種のアルギン酸塩を親水性媒体に溶解する工程と、
(b)前記親水性媒体に可溶であるアルカリ土類金属の塩を加える工程と、
(c)前記親水性媒体を撹拌して、ヒドロゲルの形成によって親水性媒体ゲルになるまでそれを放置させる工程と、
(d)前記ヒドロゲルを乾操させる工程とを含む製造方法である。
【0037】
出願人は本発明による製造方法は経済的に有利で、産業の用途に容易に適していて、高い再現性があり、徐放性を向上させた医薬製剤を製造できることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は実施例2の錠剤1、2および4から6に関する放出特性を示す図である。
【図2】図2は実施例3の錠剤7から10に関する放出特性を示す図である。
【図3】図3は実施例4の錠剤11および12に関する放出特性を示す図である。
【図4】図4は実施例5の錠剤14から21に関する放出特性を示す図である。
【図5】図5は実施例6の錠剤22から21に関する放出特性を示す図である。
【図6】図6は実施例7の錠剤26および27に関する放出特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
従って、本発明はマトリックス内に分散した少なくとも一種の活性成分を含む医薬製剤であって、前記マトリックスは少なくとも一種の徐放性の賦形剤を含み、前記賦形剤は少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属の塩類の会合体を含むものに関する。
【0040】
これに加えて、本発明はまた、少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属塩類の会合体を含む医薬製剤の製造のための徐放性賦形剤に関する。
【0041】
本発明で使用されるグリコーゲンは、動物または細菌から抽出される天然のグリコーゲンから得られる。軟体動物、特にイガイ(Mytilus edulis and Mytilus gallus provincialis)は、低コストで大量に利用でき相当な量のグリコーゲン(平均で2.5重量%および3.9重量%の間)を含有するため、特に有用なグリコーゲンの供給源である。グリコーゲンの他の天然の供給源は、ハマグリ、カキのような他の二枚貝軟体動物、フナガイ(ネコゼフネガイ)のような数種の腹足類動物または海カタツムリ、並びに、肝臓および筋肉のようなグリコーゲンに豊富な脊椎動物の器官を含む。
【0042】
本発明で使用されるグリコーゲンは抽出過程で得られるものを使用して、次の精製過程で処理することができる。すでに言及したように、商業的なグリコーゲンの品質はタンパク質残渣(ppmで示された窒素の量に関して測定)および還元糖の多量または少量の存在に依存する。
【0043】
本発明のために、低い含有量の還元糖および窒素を有するグリコーゲンを使用することが好ましい。本発明で好ましく使用される商品の例は、Sigma−Aldrichで製造および流通しているグリコーゲンである。
【0044】
好ましくは、本発明で使用されるグリコーゲンは1重量%未満、さらに好ましくは0.25重量%未満の還元糖であり、これはF.D.Snell and Snell, “Colorimetric Methods of Analysis”, New York, 1954, vol. Ill, p. 204による方法で測定する。
【0045】
好ましくは、本発明で使用されるグリコーゲンは、Kjeldahlの測定方法で窒素が3,000ppm未満、より好ましくは1000ppm、さらに好ましくは窒素が100ppmで含む。
【0046】
好ましくは、本発明で使用するグリコーゲンはPolglumyt(商標)グリコーゲンであり、これは除タンパクしたグリコーゲン商品名をA.C.R.A.F.S.p.A.によって、ローマ、イタリアで製造および流通していて、そして欧州特許54048号で記載された方法に従って得られる。
【0047】
本発明において使用するアルギン酸塩は、海洋藻類から抽出される。
【0048】
最も頻繁に用いられる海洋藻類は、アスコフィルム属、ドゥルビレア属、カジメ属、ラミナリア属、レソニア属、マクロシスチス属およびホンダワラ属に属する。
【0049】
藻類の種類の選択は、それのアルギン酸塩の含有量およびそれのゲル化する能力に関連する経済的考慮に基づく。好ましい藻類は、優れたゲル化の性質で容易に抽出可能なアルギン酸塩を多量に含む。
【0050】
アルギン酸塩を、高温アルカリ性溶液、通常は炭酸ナトリウム内に刻んだ藻類を分散することによって抽出する。2時間以内に、藻類に存在するアルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムの形態で溶解し、この溶液は藻類の不溶解性の部分、主にセルロースを含むパルプになる。その粘度を減らすために希釈後、パルプは珪藻土を用いて前濾過し、その後、圧濾器で濾過する。それから、その結果として生じる溶液は酸化によってアルギン酸塩を除去し、乾燥させ、その後アルギン酸塩は再び炭酸ナトリウムに溶解し、そして再び乾燥させて、アルギン酸ナトリウムを形成する。
【0051】
本発明の実施に主に用いられる藻類はアルギン酸ナトリウムであるが、いずれかの他のアルギン酸塩も水性媒体内で溶解するという仮定の上で用いられ、例えばアルギン酸カリウムまたはアルギン酸アンモニウムである。
【0052】
上述されたように、アルギン酸は共重合体で、β−D−マンヌロン酸およびα−L−グルクロン酸の単位を含む共重合体である。結果として、アルギン酸ナトリウムはβ−D−マンヌロン酸ナトリウムおよびα−L−グルクロン酸ナトリウムの単位で含む。本発明で好ましく使用されるアルギン酸ナトリウムは、10,000から600,000ダルトンの間の分子量を有する。本発明で用いられるアルギン酸ナトリウムは、その1重量%水溶液の粘度によって特徴づけられる。粘度は50から1500cPsの範囲の間で変化し、そして特徴は低粘度の藻類の範囲が50から200cPs、中粘度の藻類が200から500cPsの範囲、および高粘度の藻類は500から1500cPsの範囲で製造することができる。
【0053】
低/中程度の粘度のアルギン酸塩は、本発明の目的で望ましい。本発明で好ましく使用される市販の藻類の例は、Keltone(登録商標)、Manucol(登録商標)、Manugel(登録商標)、Kelcosol(登録商標)、Kelset(登録商標)(ISP Pharmaceuticalsから発売)、Protanal(登録商標)(FMC BioPolymerから発売)、Sigma(登録商標) A2158およびA2033(シグマアルドリッチから発売)である。
【0054】
本発明による会合体との調製における、グリコーゲンおよびアルギン酸塩の重量の比率(アルギン酸ナトリウムとして算出)は、好ましくは90:10から10:90の間で、さらに好ましくは90:10から30:70で、そしてよりさらに好ましくは85:15から50:50の間である。
【0055】
本発明に用いられるアルカリ土類金属塩は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムといった水溶性塩の群から選択される。塩の選択は特に限定されない。実用的な例は、ハロゲン化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩等である。アルカリ土類金属塩の具体例は、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸バリウムまたはリン酸水素カルシウムである。本発明において好ましく使用される塩類は、塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、塩化ストロンチウムおよび臭化ストロンチウムである。
【0056】
本発明によるアルカリ土類金属類の会合体に用いられる量は好ましくは、グリコーゲン/アルギン酸塩の混合物1g当たり、0.050から5.000ミリモルの間で、より好ましくは0.100から2.000ミリモルの間で、さらにより好ましくは0.100から1.000ミリモルである。
【0057】
本発明で用いられる活性成分は経口で投与することができる活性成分の群から選択される。本発明は12時間を超え、好ましくは24時間以上の時間の期間にわたって制御投与することが必要である活性成分が特に実用的である。
【0058】
実用的な活性成分の例は、鎮痛薬、解熱剤、抗生物質、抗ヒスタミン剤、抗不安薬、抗炎症薬、制酸剤、血管拡張薬、血管収縮薬、刺激薬、充血除去薬、抗凝血剤、抗不整脈薬、血糖降下薬、利尿剤、抗うつ薬、気管支喘息治療薬、制吐剤および抗低血圧薬および鎮痙薬の群から選択される。
【0059】
本発明で好ましく用いられる活性成分の具体例は、イブプロフェン、パラセタモール、プルリフロキサシン、レボセチリジン二塩化水素化物、ロラゼパム、ナプロキセン、塩酸ラニチジン、イソソルビド、硝酸ナファゾリン、ピラセタム、塩酸チクロピジン、塩酸プロパフェノン、グリメピリド、フロセミド、塩酸トラゾドン、フルニソリドおよびジメンヒドリナートである。
【0060】
本発明による医薬製剤の製造に用いられる活性成分の量は、好ましくは医薬製剤の全体の重量に対して、5重量%から60重量%の間で、より好ましくは10重量%から50重量%の間で、さらにより好ましくは20重量%から40重量%の間である。
【0061】
本発明による医薬製剤は、本発明による徐放性賦形剤に加えて他の薬学的に受け入れられる賦形剤類を含む。薬学的に受け入れられる賦形剤という用語は、特定の制限することなく医薬品組成物の調製に適したいかなる原料で、動物に投与するはずのもの全てを意味する。
【0062】
この種の原料は、従来技術において知られ、例えば抗付着剤、結合剤、崩壊剤、充填剤、希釈剤、香味料、着色剤、流動化剤、潤滑剤、防腐剤、湿潤剤、吸収剤および甘味料である。
【0063】
薬学的に受け入れられる賦形剤の実用的な例は、例えばラクトース、ブドウ糖または蔗糖のような糖類、例えばトウモロコシ澱粉およびジャガイモ澱粉のような澱粉類、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロースおよびその誘導体、エチルセルロースおよび酢酸セルロース、トラガカントゴム、麦芽、ゼラチン、タルク、カカオバター、ワックス類、例えば落花生油、綿実油、紅花油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油のような油類、例えばポリプロピレングリコールのようなグリコール類、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールのような多価アルコール類、例えばエチルオレイン酸エステルおよびエチルラウリン酸エステルのようなエステル類、寒天等である。
【0064】
本発明による医薬製剤は、活性成分の経口投与の制御に実用的であるいかなる組成物であり、例えば懸濁液、乳液、粉末、錠剤、顆粒、ペレット、カプセル、トローチ剤および丸剤である。
【0065】
本発明による好ましい医薬製剤は、胃の環境でも抵抗性があり、そして腸管で活性成分の放出の開始を促進する腸溶性コーティングを含む。
【0066】
さらなる本発明の態様によれば、少なくとも1種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸とアルカリ土類金属の塩類の会合体を含む徐放性賦形剤の製造方法であって:
(a)前記少なくとも一種のグリコーゲンおよび前記少なくとも一種のアルギン酸塩を親水性媒体に溶解する工程と、
(b)前記親水性媒体内に可溶性であるアルカリ土類金属の塩を添加する工程と、
(c)前記親水性媒体を撹拌して、そしてヒドロゲルの形成で親水性媒体ゲルとなるまでそれを放置する工程と、
(d)前記ヒドロゲルを乾操させる工程とを含む。
【0067】
ヒドロゲルの調製に加えられるグリコーゲンおよびアルギン酸塩(アルギン酸ナトリウムとして算出)の全量は、好ましくは親水性媒体の量に対して、1重量%から20重量%の間で、好ましくは蒸留水を含み、それらを溶解するために用いる。より好ましくは、その量が1%から15%(w/v)の間で、そしてさらにより好ましくは1%から10%(w/v)の間である。
【0068】
好ましい親水性媒体は、蒸留水、脱塩水または脱イオン化水であり、好ましくは殺菌、例えば紫外線に照射された水である。
【0069】
溶解を、好ましくは製造工程の規模によって機械式または磁気式の撹拌器による撹拌と共に実行する。
【0070】
溶解工程(a)は、室温で、好都合なことに実行される。親水性媒体、好ましくは精製水または蒸留水の温度は、溶解率をさらに促すために室温より高くすることができる。好ましくは、温度は、いずれにしても50℃未満である。
【0071】
アルカリ土類金属の塩を添加する工程(b)は、固形相内または、好ましくは水溶液内に塩の添加を含む。溶液内に添加するアルカリ土類塩の濃度は、好ましくは0.01Nから1Nの間で、好ましくは0.05から0.5Nの間である。工程(a)で得られるグリコーゲンおよびアルギン酸溶液に添加するアルカリ土類塩の量は、グリコーゲン/アルギン酸塩の混合物1グラム当たり、好ましくは0.050から5.000ミリモルの間で、より好ましくは0.100から2.000ミリモルの間で、さらにより好ましくは0.100から1.000ミリモルの間である。
【0072】
アルカリ土類塩は、撹拌しながら添加される。添加後、撹拌は工程(c)で一定期間維持される。撹拌時間は変更することができるが、それは好ましくは10から120分間で、または好ましくは30から60分間である。撹拌後に、工程(c)は静止時間、好ましくは6から24時間で、より好ましくは8から16時間の間で終了する。この工程の間で、アルカリ土類金属イオン類は、カルシウム、バリウム、およびストロンチウムから選択され、グリコーゲン、アルギン酸塩およびそれら自身の金属イオンとの間に、個々またはいずれかの組み合わせの様々な種類の結合(共有結合、イオン結合、静電気結合、親水性結合、脂溶性結合、極性結合)、およびヒドロゲル形成を伴うゾルーゲル転移の形成で、会合体の生成を促進する。
【0073】
本発明による次の工程(d)において、工程(c)の終了後に得られるヒドロゲル内に存在する水を、本発明による徐放性賦形剤を含む、好ましい態様ではグリコーゲンおよびアルギン酸塩の会合体とカルシウム、バリウム、またはストロンチウム塩類を含む無水粉末が得られるまで、従来の乾燥および脱水の技術で取り除く。
【0074】
また本発明は、上述したように、マトリックス内に分散した少なくとも一種の活性成分を含む医薬製剤の製造方法を含み、前記マトリックスは少なくとも一種の徐放性の賦形剤を含み、前記賦形剤は少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属の塩類の会合体を含む。
【0075】
従って、本発明は、医薬製剤の製造方法において、マトリックス内に分散した少なくとも一種の活性成分を含む徐放性賦形剤であって、
A.少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属塩類の会合体を調製する工程と、
B.前記活性成分と前記会合体を混合する工程と、
C.任意に、少なくとも一種のさらなる薬学的に受け入れられる賦形剤を添加する工程と、
D.懸濁液、乳液、粉末、錠剤、顆粒、ペレット、カプセル、トローチ剤および丸剤の群から選択される医薬製剤を生産する工程とを含む。
【0076】
工程(A)による会合体の調製を、好ましくは上記の通りに実行する。活性成分を混合する工程(B)を、好ましくは会合体の形成後、均等な分散が得られるまで実行する。
【0077】
しかしながら、活性成分を混合する工程(B)は、会合体の調製工程(A)の間に行うことができる。この場合、活性成分は、前に記載された少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属塩類の会合体の製造方法の工程(a)、(b)および(c)の前、間、または後に添加することができる。
【0078】
特に活性成分を、第一の工程(a)の間の、グリコーゲンおよびアルギン酸塩の添加前、その間、もしくはその後、工程(b)の、アルカリ土類金属塩の添加前、その間、もしくはその後、または工程(c)の、撹拌の間、撹拌後、ヒドロゲル形成の前もしくは後に添加することができる。好ましくは、活性成分を工程(a)において添加することができる。
【0079】
任意の工程(C)の間、少なくとも一種の更なる薬学的に受け入れられる賦形剤を添加した。上述のように、これらの構成要素は従来技術において知られていて、例えば、抗粘着剤、結合剤、崩壊剤、充填剤、希釈剤、香味料、着色剤、流動化剤、滑剤、防腐剤、保湿剤、吸収剤、甘味料を含む。
【0080】
最終的な医薬製剤は工程(D)で従来の技術を用いて、懸濁液、乳液、粉末、錠剤、顆粒、ペレット、カプセル、トローチ剤および丸剤が生産され、粒末状、溶解、乾燥、混合、粉砕、篩がけ、殺菌、圧縮等の工程を含む。好ましくは、本発明による医薬製剤は、胃の環境に抵抗性のある腸溶性コーティングの層を有するコーティングの最終的な処理を受ける。
【実施例】
【0081】
以下の実施例は、本発明を例示するものであって、それに限定するものではない。
【0082】
実施例1
手順の説明
錠剤の調製において使用される手順を以下に記載する。
【0083】
製法A(比較例)
下記の表1−4に示した比率で、下記の表1−4に示した高分子成分のW/V%で含む蒸留水の溶液を、500mLビーカー内で激しく機械的な撹拌をすることで調製した。
【0084】
この様にして得られた溶液を、乾燥して、粉砕した。この様にして得られた粉末は、下記の表1−4において示される割合の活性成分で混合し、そして乳鉢内で蒸留水とともに造粒した。
【0085】
この様にして得られた造粒物は減圧下乾燥炉内で一晩、約50〜60℃の温度で乾燥させ、乳鉢で挽いて、そして所望の粒径(0.125mm)になるように篩にかけた。
【0086】
そして250mgのアリコートを得て、液圧プレスを使用して3分間2.5トン/cmの圧力で錠剤に加工した。
【0087】
製法B(比較例)
下記の表1〜4に示した割合で高分子成分を、下記の表1〜4で示される割合で活性成分を混合し、その後、乳鉢内で蒸留水とともに造粒した。この様にして得られた造粒物は減圧下乾燥炉内で一晩、約50〜60℃の温度で乾燥させ、乳鉢で挽いて、そして所望の粒径(0.125mm)になるように篩にかけた。
【0088】
その後250mgのアリコートを得て、そして液圧プレスで3分間2.5トン/cmの圧力で錠剤に加工した。
【0089】
製法C(発明例)
下記の表1−4に示した比率で、下記の表1−4に示した高分子成分のW/V%で含む蒸留水の溶液を、500mLビーカー内で激しく機械的な撹拌をすることで調製した。
【0090】
0.1NのCaCl水溶液(または表示がない場合はBaClまたはSrCl)を下記の表1−4に示す量で添加し、約1時間撹拌し、そして一晩放置してヒドロゲルを形成した。
【0091】
得られたヒドロゲルを乾燥させ、粉砕し、下記の表1−4に示した比率で活性成分を均一に混合し、その後、蒸留水と一緒に乳鉢で造粒した。
【0092】
この様にして得られた造粒物は減圧下乾燥炉内で一晩、約50〜60℃の温度で乾燥させ、乳鉢で挽いて、そして所望の粒径(0.125mm)になるように篩にかけた。
【0093】
そして250mgのアリコートを得て、液圧プレスで3分間2.5トン/cmの圧力で錠剤に加工した。
【0094】
方法D(比較)
下記の表1−4に示した割合の高分子成分を下記に示した割合で活性成分と混合した。
【0095】
そして250mgのアリコートを得て、そして液圧プレスで3分間2.5トン/cmの圧力で錠剤に加工した。
【0096】
実施例2
錠剤1−6の調製
表1における成分を含有する一連の錠剤1から6を、表1に示した方法を用いて調製した。使用した活性成分は、トラゾドン塩酸塩であった。
【0097】
【表1】

):比較 ():発明
Polglumyt:欧州特許654,048号に記載された方法で調製され、窒素を60ppm未満および還元糖を0.25重量%未満を含むグリコーゲン。
アルギン酸塩:褐藻類由来のアルギン酸ナトリウムで、25℃で2%溶液の粘度が約250cPsである。製造業者Sigma−Aldrich。製造業者コードSIGMA A2158。
【0098】
錠剤1、2、4、5および6はリン酸塩緩衝液(USP XXIII)内で24時間の間、最初の1時間はpH値6.4で、残りの23時間は7.4で維持して溶解試験を行った。調製物3における造粒は処理することが困難であり、そしてそれは対応する錠剤を調製することが可能ではない。
【0099】
その結果を下記の表R1および図1に示す。
【0100】
【表2】

):比較 ():発明
【0101】
表R1のデータは、グリコーゲンまたはアルギン酸塩のみを含む錠剤1、2および4は、使用した工程の種類にも関わらず、徐放特性を示さなかったことを明らかに示した。同様に、製法Bを用いて得られたグリコーゲンとアルギン酸塩の混合物を含む錠剤5は徐放特性を全く示さなかった。逆に、本発明によるグリコーゲン−塩化カルシウム−アルギン酸塩の会合体を含む錠剤6は、約14時間の期間にわたってほぼ0オーダーの速度で優れた徐放特性を示した。
【0102】
実施例3
錠剤7〜10の調製
表2における成分を含有する一連の錠剤7から10を、表2に示した方法を用いて調製した。
【0103】
【表3】

):比較 ():発明
【0104】
Polglumyt:欧州特許654,048号に記載された方法で調製され、窒素を60ppm未満および還元糖を0.25重量%未満を含むグリコーゲン。
アルギン酸塩:褐藻類由来のアルギン酸ナトリウムで、25℃で2%溶液の粘度が約250cPsである。製造業者Sigma−Aldrich。製造業者コードSIGMA A2158。
【0105】
錠剤7から10をリン酸塩緩衝液(USP XXIII)内で24時間の間、最初の1時間はpH値6.4、そして残りの23時間は7.4のリン酸塩バッファ(USP XXIII)で維持し、溶解試験を行った。
【0106】
その結果を、下の表R3および図2に例示する。
【0107】
【表4】

):比較 ():発明
【0108】
表R2のデータは、製法Aによって調製したグリコーゲンおよびアルギン酸塩の混合物を含む錠剤7が、良好な放出速度ではなく、そしてマトリックスがその中に存在する全ての薬剤を中断しない傾向にあることを明らかに示した。これに加えて、製法BからDにそれぞれ従って調整したグリコーゲンおよびアルギン酸塩の混合物を含む錠剤8から10は、徐放特性を全く示さなかった。逆に、本発明によるグリコーゲン−塩化カルシウム−アルギン酸塩の会合体を含む錠剤9は徐放特性を、約11時間の期間にわたって、ほぼゼロオーダーの速度で示した。
【0109】
実施例 4
錠剤11〜13の調製
表3における成分を含有する一連の錠剤11から13を、製法Cに従って調製した。使用した活性成分は、トラゾドン塩酸塩であった。
【0110】
【表5】

):比較 ():発明
【0111】
Polglumyt:欧州特許654,048号に記載された方法で調製され、窒素を60ppm未満および還元糖を0.25重量%未満を含むグリコーゲン。
アルギン酸塩:褐藻類由来のアルギン酸ナトリウムで、25℃で2%溶液の粘度が約250cPsである。製造業者Sigma−Aldrich。製造業者コードSIGMA A2158。
アミロペクチン:コーンアミロペクチン、製造業者Fluka。製造業者コード10120。
澱粉:(精製された)小麦澱粉。製造業者Sigma−Aldrich。製造業者コードSIGMA S−2760。
【0112】
錠剤11から13を、リン酸塩緩衝液(USP XXIII)内で24時間の間、最初の1時間はpH値6.4で、残りの23時間は7.4で維持して、溶解試験を行った。
【0113】
その結果を、下の表R3および図3に例示する。
【0114】
【表6】

):比較 ():発明
【0115】
表R3のデータは、製法Cに従って調製しても、アミロペクチン/澱粉とアルギン酸塩の混合物を含む錠剤12および13は徐放特性を全く示さなかった。逆に、本発明によるグリコーゲン−塩化カルシウム−アルギン酸塩の会合体を含む錠剤11はまた、徐放特性を、約9時間の期間で、事実上ゼロオーダーの速度を示した。
【0116】
実施例 5
錠剤14−21の調製
表4における成分を含有する一連の錠剤14から20を、製法Cに従って調製した。使用した活性成分はトラゾドン塩酸塩である。
【0117】
【表7】

): 発明
【0118】
Polglumyt:欧州特許654,048号に記載された方法で調製され、窒素を60ppm未満および還元糖を0.25重量%未満を含むグリコーゲン。
アルギン酸塩:褐藻類由来のアルギン酸ナトリウムで、25℃で2%溶液の粘度が約250cPsである。製造業者Sigma−Aldrich。製造業者コードSIGMA A2158。
アルギン酸塩M:褐藻類由来のアルギン酸ナトリウムで、25℃で2%溶液の粘度が約3500cPsである。製造業者Sigma−Aldrich。製造業者コードSIGMA A2033。
【0119】
錠剤14から21を、リン酸塩緩衝液(USP XXIII)内で24時間の間、最初の1時間はpH値6.4で、残りの23時間は7.4で維持して、溶解試験を行った。
【0120】
その結果を、下の表R4および図4で例示する。
【0121】
【表8】

):比較 ():発明
【0122】
表R4のデータは、本発明によるグリコーゲン−塩−アルギン酸塩の会合体を含む本発明による錠剤14−21はまた徐放特性を、錠剤17の場合は21時間に達した期間にわたって、ほぼゼロオーダーの速度で明らかに示した。
【0123】
本発明による徐放性の賦形剤の様々な成分の間および/または本発明による錠剤の様々な成分の間で、質的および量的の割合における変化は重要でないことが判明した。逆に、80/20(例えば錠剤18および19)以外のグリコーゲン/アルギン酸塩の比率もしくは異なる塩(錠剤20)、または23%を超える活性成分の量(例えば錠剤17および18)で、本発明によるグリコーゲン−塩−アルギン酸塩の会合体を含む錠剤は、前の実施例において評価した錠剤のものと同一または優れた徐放特性を示した。
【0124】
実施例6
錠剤22〜25の調製
表5における成分を含有する一連の錠剤22から25を、表5に示した方法および活性成分を用いて調製した。
【0125】
【表9】

):比較 ():発明
【0126】
Polglumyt:欧州特許654,048号に記載された方法で調製され、窒素を60ppm未満および還元糖を0.25重量%未満を含むグリコーゲン。
アルギン酸塩:褐藻類由来のアルギン酸ナトリウムで、25℃で2%溶液の粘度が約250cPsである。製造業者Sigma−Aldrich。製造業者コードSIGMA A2158。
PCTML:パラセタモール
NPSSN:ナプロキセンナトリウム
【0127】
錠剤22から25を、リン酸塩緩衝液(USP XXIII)内で24時間の間、最初の1時間はpH値6.4で、残りの23時間は7.4で維持して、溶解試験を行った。
【0128】
その結果を、下の表R5および図5で例示する。
【0129】
【表10】

):比較 ():発明
【0130】
表R5のデータは、本発明による錠剤24および25は、本発明によるグリコーゲン−塩−アルギン酸塩の会合体を含み、7−8時間の期間にわたってほぼゼロオーダーの速度で徐放特性を、パラセタモールおよびナプロキセンナトリウムのような非常に高い固有の放出速度を有する薬剤の場合でさえ示したことを明らかに示した。
【0131】
実施例7
錠剤26〜27の調製
表6の成分を含む一連の錠剤26から27を方法Cに従って調製した。使用した活性成分は、トラゾドン塩酸塩であった。
【0132】
【表11】

):発明
グリコーゲン O:カキから抽出されるグリコーゲン。製造業者Sigma−Aldrich。製造者のコードSIGMA G8751であり、窒素2600ppmおよび還元糖1027ppm(約0.1重量%)を含む。
グリコーゲン B:ウシの肝臓から抽出されるグリコーゲン。製造業者Sigma−Aldrich。製造者コードSIGMA G0885であり、窒素626ppmおよび還元糖9373ppm(約0.9重量%)を含む。
アルギン酸塩:褐藻類由来のアルギン酸ナトリウムで、25℃で2%溶液の粘度が約250cPsである。製造業者Sigma−Aldrich。製造業者コードSIGMA A2158。
【0133】
錠剤26および27を、リン酸塩緩衝液(USP XXIII)内で24時間の間、最初の1時間はpH値6.4で、残りの23時間は7.4で維持して、溶解試験を行った。
【0134】
その結果を、下の表R6および図6に例示する。
【0135】
【表12】

):比較 ():発明
【0136】
実施例8
工業的調製
本発明によるグリコーゲン−塩化カルシウム−アルギン酸塩の会合体260gを、上述の製法Cに従って8%に相当する高分子の量を、グリコーゲン/アルギン酸塩の割合80:20および12mLの0.1NCaCl溶液で調製し、トラゾドン塩酸塩173gと共に、混合物を水と造粒するグラットGCPG1造粒機に装填して、5重量%未満の水量まで減少させるために乾燥させる。その造粒および乾燥の条件を、下記の表6に示す。
【0137】
【表13】

【0138】
この様にして得られた造粒物を、混合用のドラムに装填した。Aerosil(登録商標)(Degussa Agilent GmbH、フランクフルト、ドイツで生産したコロイド状二酸化ケイ素を主成分とした流動促進剤)2.1gを造粒物に加えて、約2分間混合し、そして生じた混合物を30メッシュの篩でふるいにかけ、さらに5分間混合した。PRUVR(JRS Pharma GmbH、ローゼンベルク、ドイツで生産したステアリルフマル酸ナトリウムを主成分とした潤滑剤)6.4gを、生じた混合物に加え、さらに5分間混合した。この様にして得られた混合物を、AMBS回転錠剤形成機のモデルにおいて、6箇所および重力送り機構で圧縮した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリックス内に分散した少なくとも一種の活性成分を含む医薬製剤であって、前記マトリックスは少なくとも一種の徐放性の賦形剤を含み、前記賦形剤は少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属の塩類の会合体を含む医薬製剤。
【請求項2】
前記グリコーゲンが、1重量%未満の還元糖を含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記グリコーゲンが、0.25重量%未満の還元糖を含む、請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記グリコーゲンが3,000ppm未満の窒素を含む、前記請求項のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記グリコーゲンが1,000ppm未満の窒素を含む、請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記グリコーゲンが100ppm未満の窒素を含む、請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記アルギン酸塩の1重量%の水溶液が、50から1500cPsの範囲の粘度を有する、前記請求項のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記アルギン酸塩の前記1重量%水溶液が、50から500cPsの範囲の粘度を有する、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
グリコーゲンとアルギン酸ナトリウムで算出したアルギン酸塩との重量比が、90:10から10:90の間である、前記請求項のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項10】
グリコーゲンとアルギン酸ナトリウムで算出したアルギン酸塩との重量比が、90:10から30:70の間である、請求項9に記載の医薬製剤。
【請求項11】
前記請求項のいずれかに記載の医薬製剤が、前記医薬製剤の総量に対して、95重量%から50重量%の間の量を含む医薬製剤。
【請求項12】
前記アルカリ土類金属塩がマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの水溶性塩を含む群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項13】
前記アルカリ土類金属塩が、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、臭化バリウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化ストロンチウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸バリウムまたはリン酸水素カルシウムを含む群から選択される、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項14】
前記アルカリ土類金属塩が塩化カルシウム、臭化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、塩化ストロンチウムおよび臭化ストロンチウムを含む群から選択される、請求項12に記載の医薬製剤。
【請求項15】
前記会合体がグリコーゲン/アルギン酸塩の混合物1g当たり、0.050から5000ミリモルの間の前記アルカリ土類金属塩類の量を含む、前記請求項のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項16】
前記会合体がグリコーゲン/アルギン酸塩の混合物1g当たり、0.100から2.000ミリモルの間の前記アルカリ土類金属塩類の量を含む、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
前記会合体がグリコーゲン/アルギン酸塩の混合物1g当たり、0.100から1.000ミリモルの間の前記アルカリ土類金属塩類の量を含む、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項18】
前記活性成分は、鎮痛薬、解熱剤、抗生物質、抗ヒスタミン剤、不安緩解剤、抗炎症剤、制酸剤、血管拡張薬、血管収縮薬、刺激薬、鬱血除去薬、抗凝血剤、抗不整脈薬、低血糖性薬品、利尿剤、抗うつ薬、気管支喘息治療薬、制吐剤および抗低血圧薬および鎮痙薬を含む群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項19】
前記活性成分は、イブプロフェン、パラセタモール、プルリフロキサシン、レボセチリジン、ロラゼパム、ナプロキセン、塩酸ラニチジン、イソソルビド、硝酸ナファゾリン、ピラセタム、塩酸チクロピジン、塩酸プロパフェノン、グリメピリド、フロセミド、塩酸トラゾドン、フルニソリドおよびジメンヒドリナートを含む群から選択される、請求項18に記載の医薬製剤。
【請求項20】
前記請求項のいずれかに記載の医薬製剤が、前記医薬製剤の総量に対して、5重量%から50重量%の間の前記活性成分の量で含む医薬製剤。
【請求項21】
前記請求項のいずれかに記載の医薬製剤が、抗付着剤、結合剤、分解剤、充填剤、希釈剤、香味料、着色剤、流動化剤、潤滑剤、防腐剤、湿潤剤、吸収剤および甘味料を含む群から選択される少なくとも一種の賦形剤を含む医薬製剤。
【請求項22】
前記医薬製剤は懸濁液、乳液、粉末、錠剤、顆粒、ペレット、カプセル、トローチ剤および丸剤を含む群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項23】
前記医薬製剤は腸溶性コーティングを含む、請求項22に記載の医薬製剤。
【請求項24】
徐放性の医薬製剤の製造のための賦形剤において、請求項2から23に記載の前記賦形剤は少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属の塩類の会合体を含む賦形剤。
【請求項25】
少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属塩類の会合体を含む徐放性の賦形剤の製造方法であって、
(a)前記少なくとも一種のグリコーゲンおよび前記少なくとも一種のアルギン酸塩を親水性媒体内に溶解する工程と、
(b)可溶性のアルカリ土類金属の塩を前記親水性媒体に添加する工程と、
(c)前記親水性媒体を撹拌して、ヒドロゲルの形成により親水性媒体ゲルになるまで維持する工程と、
(d)前記ヒドロゲルを乾操させる工程とを含む製造方法。
【請求項26】
前記親水性媒体は蒸留水、脱塩水、および脱イオン水を含む群から選択される、請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
前記グリコーゲンと、前記親水性媒体内に溶解するアルギン酸ナトリウムで算出した前記アルギン酸塩との総量が、親水性媒体の量に対して、1重量%から20重量%の間である、請求項24または25に記載の製造方法。
【請求項28】
前記グリコーゲンと、前記親水性媒体内に溶解するアルギン酸ナトリウムで算出した前記アルギン酸塩が、親水性媒体の量に対して、1重量%から15重量%の間である、請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
グリコーゲンとアルギン酸ナトリウムで算出したアルギン酸塩との間の重量比率が90:10から10:90の間である、請求項25から28のいずれかに記載の製造方法。
【請求項30】
工程(a)で得られたグリコーゲンおよびアルギン酸塩溶液に添加する前記アルカリ土類塩の量が、グリコーゲン/アルギン酸塩の混合物1g当たり0.050から5.000ミリモルの間である、請求項25から29のいずれかに記載の製造方法。
【請求項31】
工程(c)で撹拌する時間を10から120分間で維持する、請求項25から30のいずれかに記載の製造方法。
【請求項32】
工程(c)で静止時間を6から24時間で維持する、請求項25から31のいずれかに記載の製造方法。
【請求項33】
マトリックス内に分散した少なくとも一種の活性成分を含む医薬製剤の製造方法であって、前記マトリックスは少なくとも一種の徐放性の賦形剤を含み、
A.請求項25から32のいずれかに記載の少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属塩類の会合体を製造する工程と、
B.前記活性成分と前記会合体を混合する工程と、
C.任意的に少なくとも一種のさらなる薬学的に受け入れられる賦形剤を添加する工程と、
D.懸濁液、乳液、粉末、錠剤、粒状、ペレット、カプセル、トローチ剤および丸剤を含む群から選択する薬学的形状を製造する工程とを含む製造方法。
【請求項34】
徐放性医薬製剤の製造のために、請求項2から23に記載の少なくとも一種のグリコーゲンおよび少なくとも一種のアルギン酸塩とアルカリ土類金属塩類の会合体を含む賦形剤の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−519820(P2011−519820A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540124(P2010−540124)
【出願日】平成20年12月23日(2008.12.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/068256
【国際公開番号】WO2009/083561
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(592160973)アジェンデ・キミケ・リウニテ・アンジェリニ・フランチェスコ・ア・チ・エレ・ア・エフェ・ソシエタ・ペル・アチオニ (36)
【氏名又は名称原語表記】AZIENDE CHIMICHE RIUNITE ANGELINI FRANCESCO A.C.R.A.F.SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】