説明

グリコール化およびグリコシル化された家禽類由来の治療用たんぱく質

トランスジェニック鳥類から得られたグリコシル化された治療用アミノ酸配列を含む組成物であって、該治療用アミノ酸配列が糖たんぱく質であり、共有結合されたグリコール重合体を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願情報)
本出願は、2005年10月21日に提出した米国仮特許出願第60/729429号による優先権を主張するものであり、出典明示により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
患者や医療提供者へのたんぱく質治療のコストをより抑えたたんぱく質送達技術を開発することが強く望まれている。1つの解決策は、体内におけるたんぱく質治療の半減期を延長させる方法の開発である。この解決策は、「ユーザーフレンドリー」であるたんぱく質治療、例えば頻繁な投与(例、注射)を必要としないたんぱく質治療に対する患者の要求かつ要望を満たす。
【0003】
ポリエチレングリコール(PEG)のごときグリコール重合体とのたんぱく質の共有結合修飾は、体内におけるたんぱく質の半減期を延長させる有用な方法であることが立証されている(Abuchowski et al., 1984;Hershfield, 1987;Meyers et al., 1991)。グリコール重合体のたんぱく質への共有結合はたんぱく質の有効な大きさを増加させ、体からのクリアランスの速度を減少させることができる。PEGのごときグリコール重合体は多様な大きさ(すなわち、分子量)で市販されており、それらは、異なる大きさのグリコール重合体の使用によって、グリコール重合体により修飾されたたんぱく質の半減期をそれぞれの目的に合わせることができる。他に、PEG修飾のごときグリコール重合体修飾のインビボにおける利点として知られていることは、たんぱく質の溶解性、安定性の増加(おそらくプロテアーゼからのたんぱく質の保護のため)とたんぱく質免疫原性の減少である。例えば、Katreら,1987;Katre,1990を参照。さらにグリコシル化は、例えば、たんぱく質の有効な大きさを増加させ、その免疫原性と体からのクリアランスの速度を減少させることにより、たんぱく質治療の効果を高めることが示されている。
【0004】
(発明の要約)
鳥類で産生された治療用たんぱく質のグリコシル化と組み合わせたグリコール化(例、ペグ化)は、相乗効果を生み出すことができ、すなわち、そのたんぱく質の効果は、治療用たんぱく質のグリコシル化または治療用たんぱく質のグリコール化のどちらか1つのみにより得られる効果を有意に超えて高めることができることと知見されている。鳥類系で産生される治療用たんぱく質は、例えば、真核生物系(例、E.coli)で産生される治療用たんぱく質を用いる時に必要とされるインビトロのグリコシル化における必要性を除いて、グリコシル化されうる。
【0005】
一の有用な態様では、本発明は、トランスジェニックニワトリのごときトランスジェニック鳥類から得られるグリコシル化された治療用アミノ酸配列を含み、該治療用アミノ酸配列がグリコール重合体に結合された糖たんぱく質である組成物に関するものである。例えば、糖たんぱく質は、イオン結合または水素結合のごとき化学的相互作用によってグリコール重合体と結合されていてもよい。一の特に有用な具体例では、糖たんぱく質はグリコール重合体に共有結合される。本発明の特に有用な具体例では、治療用アミノ酸配列は外因性アミノ酸配列である。例えば、治療用アミノ酸配列はヒト内在性アミノ酸配列であってもよい。
【0006】
一の有用な具体例では、治療用アミノ酸配列はサイトカインである。例えば、治療用アミノ酸配列は顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、エリスロポイエチンまたは顆粒球マクロファージコロニー刺激因子であってもよい。一の態様では、サイトカインはヒト内在性サイトカインである。
【0007】
本発明の一の態様では、グリコシル化がトランスジェニック鳥類の卵管細胞により付与される。例えば、卵管細胞は管状腺細胞でありうる。
【0008】
一の具体例では、本発明は、鳥類の遺伝子発現系によって付与された結合によりたんぱく質に結合されたグリコシル化に関するものである。例えば、治療用アミノ酸配列がO−グリコシル化されていてもよく、および/または治療用アミノ酸配列がN−グリコシル化されていてもよい。
【0009】
本発明は、家禽類由来のグリコシル化された治療用たんぱく質に対する結合のための有用なグリコール重合体のいずれかの適用に関する。例えば、グリコール重合体は、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのごときポリアルキレングリコールであってもよい。本発明は、いずれの特定の分子量のグリコール重合体にも限定されない。例えば、グリコール重合体は約200から約400000まで、例えば約200から約20000までの分子量を有していてもよい。
【0010】
本発明は、当業者間で周知の有用な化学的な結合方法のいずれかによるグリコール重合体のグリコシル化たんぱく質への結合に関する。一の具体例では、グリコール重合体は治療用アミノ酸配列のアミノ基に共有結合される。別の例では、グリコール重合体は治療アミノ酸配列のカルボキシル基に共有結合される。
【0011】
一の有用な具体例では、トランスジェニック鳥類から得られたグリコシル化された治療用アミノ酸配列は糖たんぱく質であり、治療用アミノ酸配列のグリコシル化部分に共有結合されたグリコール重合体を含む。本発明は、グリコール重合体の治療アミノ酸配列のグリコシル化構成部分のいずれかへの結合に関する。例えば、これだけに限定されないが、本発明は、グリコール重合体の、n−アセチルガラクトサミン、n−アセチル−グルコサミン、ガラクトースおよび/またはn−アセチル−ノイラミン酸、あるいはグリコシル化で表されうる他の炭水化物構造のいずれかへの結合に関する。
【0012】
一の具体例では、本発明により産生された治療用たんぱく質は水相に可溶性であるか、または実質的に水相に可溶性である。本発明により産生された治療用たんぱく質は非免疫原性でありうるか、または他のグリコシル化されていない同一のグリコシル化された治療用たんぱく質と比べて免疫原性の減少を示しうる。
【0013】
(定義および用語)
ここで、本発明の記載にあたって用いられるさまざまな用語の意味と範囲を表し、定義するために一定の用語を以下で説明する。
【0014】
用語「活性成分」および「本発明の化合物」は、本発明の家禽類由来のグリコール化−グリコシル化された治療用たんぱく質を意味する。
【0015】
用語「鳥類」は、本明細書において、ニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ならびにダチョウ、エミューおよびヒクイドリを含む走禽類のごとき動物分類学上クラスavaの種、亜種または品種のいずれかを意味するが、これらだけに限らない。この用語は、ニワトリ類ガルス属の多種類の周知な系統、またはニワトリ(例えば、白色レグホン、茶色レグホン、横斑ロック(Barred−Rock)、スセックス(Sussex)、ニューハンプシャー(New Hampshire)、ロードアイランド(Rhode Island)、オーストラロープ、ミノルカ(Minorca)、アムロックス(Amrox)、カリフォルニアグレー(California Gray))、ならびにシチメンチョウ、キジ、ウズラ、カモ、ダチョウ、および他の一般的に商業的な量で飼育されている家禽類の系統を含む。また、この用語は、胚期および胎生期を含む全発生段階におけるそれぞれの鳥類の生物を含む。用語「鳥類」はまた、「鳥類(鳥)の細胞」のごとき「鳥に帰属するもの」を意味する。
【0016】
用語「サイトカイン」は、本明細書において、細胞間伝達に関連するたんぱく質シグナル化合物を意味する。サイトカインはさまざまな免疫学的、炎症性および感染性疾病において大きな役割を果たす。それらは胚発生におけるいくつかの発生過程にも関連する。サイトカインは、広く多くの細胞種、すなわち造血系と非造血系の両方において産生され、時には他の化学物質やサイトカインの存在に大きく依存して、生物を介して近傍の細胞また細胞に効果を示すことができる。サイトカインは、典型的には、8−30kDaの集団としてのより小さい水溶性たんぱく質、例えば糖たんぱく質である。
【0017】
「グリコール化」は、グリコール重合体のグリコシル化された家禽類由来の治療用たんぱく質への付加のごとき、グリコール重合体の分子への付加を意味する。「グリコール化された」は、グリコール重合体が付加されたグリコシル化された家禽類由来の治療用たんぱく質のごとき物質を意味する。
【0018】
「グリコール重合体」は、本明細書において、有用なアルケン、アルカンまたはアルキン(およびそれらの組合せ)の重合体グリコールのいずれかを意味する。例として、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリブチレングリコールを含むが、これらだけに限らない。
【0019】
用語「異種性」および「外因性」は、一般的に、一定の細胞、組織または他の構成成分中に見出されないか、あるいは生物によって生成されない核酸またはたんぱく質のごとき生体分子を意味する。例えば、卵に異種性または外因性のたんぱく質は、通常、卵では見出されないたんぱく質である。
【0020】
用語「inf」はインターフェロンを意味する。
【0021】
用語「PEG」はポリエチレングリコールを意味する。
【0022】
本明細書で用いられる「一般的な治療用たんぱく質」は、家禽類由来のグリコシル化パターンおよびグリコール重合体を含んでいない治療用たんぱく質である。一般的な治療用たんぱく質は、家禽類由来のグリコシル化パターンまたはグリコール重合体を含む治療用たんぱく質でありうる。
【0023】
「治療たんぱく質」、「治療用たんぱく質」、「医薬たんぱく質」、「治療用アミノ酸配列」は各々、全体または一部に薬物を構成するアミノ酸配列を意味する。一の具体例では、医薬組成物、医薬製剤または治療用組成物は、一またはそれ以上の治療用たんぱく質、医薬たんぱく質、治療用アミノ酸配列または治療用たんぱく質を含む。
【0024】
本明細書で用いられるように、「トランスジェニック鳥類」は、本明細書で定義されるように、鳥類の1個またはそれ以上の細胞がトランスジェニック技術などの操作により導入された異種性の核酸を含む鳥類のいずれかである。核酸は、マイクロインジェクションまたは組み換えレトロウイルスによる感染、例えば、鳥類胚の胚下腔への組み換え複製欠損レトロウイルスの注入のごとき計画的な遺伝学的操作による細胞の前駆体への導入によって直接または間接的に細胞に導入されてよい。遺伝学的操作はまた、古典的な交雑、またはインビトロ受精を含む。異種性の核酸は、人工染色体であってもよいし、または鳥類の染色体内に挿入されてもよく、あるいは染色体外でDNAを複製されてもよい。
【0025】
本明細書で用いられるように、「処置する」または「状態を処置する」は、病気を予防するおよび/または病気を処置するために医薬組成物または医薬製剤を投与することを意味する。病気を予防するとは、まだ病気ではないが、ある病気にかかりやすいか、または特定の病気にかかるリスクの高い患者の予防的処置を意味する。病気を処置する、または治療の処置のために使用するとは、すでに病気にかかっている患者に対して処置を施すことにより病気を改善させ、患者の状態を改善させることを意味する。それゆえ、処置するまたは状態を処置するとは、治療用または予防目的のどちらかで、1またはそれ以上のグリコール化−グリコシル化された家禽類由来の治療用たんぱく質を哺乳類に投与することである。
【0026】
略記「g」はグラムを意味する。略記「ml」はミリリットルを意味する。略記「mg」はミリグラムを意味する。略記「PEG」はポリエチレングリコールを意味する。略記「kDa」はキロダルトンを意味する。「℃」は摂氏温度を意味する。略記「mM」はミリモラーを意味する。略記「mU」はミリユニットを意味する。
【0027】
(発明の詳細な説明)
本発明は、グリコール化、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、カモ、ガチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、およびダチョウ、エミュー、ヒクイドリを含む走禽類を含むが、これらだけに限らない鳥類により産生されるグリコシル化された治療用たんぱく質のペグ化を特に提供する。一の特に有用な具体例では、本発明は、グリコール化、例えば、ニワトリで産生されるグリコシル化された治療用たんぱく質のペグ化に関するものである。
【0028】
典型的には、遺伝子配列は、たんぱく質のアミノ酸配列、炭水化物群の局在および一般的な構造に関する宿主生物の決定を提供する。炭水化物群は、一般的に、アスパラギン、セリンまたはスレオニンに結合する。本明細書に開示される治療用たんぱく質を産生するのに有用であるグリコシル化された治療用たんぱく質を産生する方法は当該技術分野で公知であり、例えば、2003年6月17日提出の米国特許出願第10/463980号(米国特許公表第2004/0019923号)および2005年2月28日提出の米国特許出願第11/068155号(米国特許公表第2006/0015960号)に記載される。
【0029】
本発明による特に有用である1つのグリコール重合体はポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは親水性、生体適合性および非毒性の一般式H(OCHCHOH(式中、n>4)の重合体である。その分子量は、例えば、200から20000ダルトンまでで実質的に変動することができる。本発明は、PEG分子が治療用たんぱく質に結合する特定の方法または用いられるPEGの特定の分子量を特に示していない。
【0030】
たんぱく質をグリコール化するための多くの有用な方法が当該技術分野で知られており、本発明はかかる方法の各々を用いることを意図する。例えば、本発明は、本明細書で開示される治療用たんぱく質を産生するために、ペグ化の有用な方法のいずれかが意図される。一の例では、たんぱく質をペグ化するための特定の周知な方法をN−ヒドロキシサクシニミド(NHS)−PEGのごとき化合物に用いることによりPEGを遊離アミン、典型的にはリジン残基またはN−末端アミノ酸に結合させる。かかる方法のいくつかは、非部位特異的様式で治療用たんぱく質をペグ化でき、特定の状況では好ましくないかもしれない。
【0031】
部位特異的なペグ化の方法もまた本発明に含まれる。かかる方法の1つは、システイン反応性PEGを用いてPEGをシステイン残基に結合させる。異なる反応基(例、マレイミド、ビニルスルホン)および異なる大きさのPEG(2−40kDa)を有する高い特異性を持つシステイン反応性PEGの多くが市販されている。中性pHにおいて、これらPEG試薬は「遊離」システイン残基、すわなち、ジスルフィド結合に関連しないシステイン残基に選択的に結合する。組み換えDNA技術を用いたインビトロ変異誘発を通して、付加システイン残基がたんぱく質の有用な位置のいずれかに導入されうる。新たに付加された「遊離」システインは、システイン反応性PEGを用いてPEG分子の特異的結合のための部位として提供されうる。この付加されたシステインは、たんぱく質中に存在するアミノ酸の代用であり、たんぱく質のアミノ末端の上流またはたんぱく質のカルボキシル末端の下流に付加されるか、あるいはたんぱく質の2つのアミノ酸の間に挿入されうる。代替的には、ある治療用たんぱく質に存在してもよい本来のジスルフィド結合に関連した2つのシステインのうちの1つは、欠失するか、または別のアミノ酸に置換され、本来のシステイン(通常、欠失または置換されたシステイン残基とジスルフィド結合を形成しているたんぱく質中のシステイン残基)を遊離させ、化学修飾に利用可能とされてもよい。一の具体例では、システインと置換されるアミノ酸は、セリンまたはアラニンのごとき中性アミノ酸である。さらに、ジスルフィド結合は、欠失または別のアミノ酸による置換の標的を提供する生物学的活性を妨げることなく、還元され、ヨードアセチミド(iodoacetimide)でアルキル化されうる。
【0032】
一の具体例では、グリコール化、例えばペグ化された糖たんぱく質を調製する方法は、(a)たんぱく質が1またはそれ以上のPEG基と結合する条件下において、たんぱく質を(PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導物のごとき)ポリエチレングリコールと反応させ、次いで(b)反応生成物を得る段階を含む。一般的に、反応の最適な反応条件は、公知のパラメーターおよび望ましい結果に基づいて個々の場合により決定される。
【0033】
当業者間で利用可能な多くの結合方法が存在している。例えば、Malik et al.(1992),Exp.Hematol.,20:1028−1035;Francis(1992),Focus on Growth Factors,3(2):4−10(Mediscript, Mountain Court,Friern Barnet Lane,London N20 OLD,UK);EP0154316;EP0401384;WO92/16221;WO95/34326;ならびにグリコール重合体のたんぱく質への付加(例、ペグ化)に関連する本明細書に引用される他の文献を、出典明示により本明細書に援用する。
【0034】
一の具体例では、ポリエチレングリコール重合体分子のごときグリコール重合体分子が「活性化される」ことにより、グリコール重合体分子の鳥類または家禽類由来のグリコシル化された治療用たんぱく質へのカップリングが容易になり得る。かかる活性化されるグリコール重合体の調製例は、出典明示により本明細書に援用する下記の文献により提供される。K.Yoshinaga and J.M.Harris,J.Bioact.Comp.Polym.,1,17−24(1989);K.Nilsson and K.Mosbach,Methods in Enzymology,104,56(1984);C.Delgado,G.E.Francis,and D.Fisher, in ”Separations Using Aqueous Phase Systems,”D.Fisher and I.A.Sutherland,Eds.,Plenum,London,1989,pp.211−213;M.−B.Stark and J.K.Holmberg,Biotech.Bioeng.,34,942(1989);J.M.Harris and K. Yoshinaga,J.Bioact.Compat.Polym.,4,281(1989);H.Walter,D.E.Brooks,and D.Fisher(Editors),”Partitioning in Aqueous Two−Phase Systems,”Academic Press,Orlando,Fla.,1985;D.Fisher and I.A.Sutherland(Editors),”Separations Using Aqueous Phase Systems:Applications in Cell Biology and Biotechnology,”Plenum,London,1989。
【0035】
出典明示により本明細書に一体化させた1977年1月11日発行の米国特許第4002531号は、PEGの酵素および他のたんぱく質への結合のためのPEGアセトアルデヒドの調製を記載する。かかる方法は、PEGのグリコシル化された治療用たんぱく質への結合に対して適用される。
【0036】
出典明示により本明細書に一体化させた1979年12月18日発行の米国特許第4179337号は、PEGがたんぱく質に結合して可溶性PEGたんぱく質抱合体が提供される特定の方法を記載する。かかる方法は、PEGのグリコシル化された治療用たんぱく質への結合に適用される。
【0037】
ペグ化のごときグリコール化は、例えば、反応性または活性化ポリエチレングリコール重合体分子とのアシル化反応またはアルキル化反応によって行われてもよい。それゆえ、本発明によって産生されたたんぱく質生成物はペグ化されたたんぱく質を含み、このPEG基はアシル基またはアルキル基により結合される。かかる生成物は、モノ−ペグ化またはポリ−ペグ化(例、2−6、および/または2−5、PEG基を含む)されていてもよい。このPEG基は、アミノ酸のアルファ基またはエプシロンアミノ基のたんぱく質に結合されうるが、このPEG基は、適する反応条件下において、十分反応性のあるたんぱく質に結合している基のいずれかに結合することによりPEG基に結合されうるようにも適用される。
【0038】
アシル化によるペグ化のごときグリコール化は、一般的に、PEGのごときグリコール重合体の活性化エステル誘導体とたんぱく質との反応に関連しうる。アシル化反応において、選択された重合体は単一の反応性エステル基を有しうる。公知または後に見出された反応性PEG分子のいずれもがペグ化反応を行うために用いられてもよい。有用な活性化PEGエステルは、N−ヒドロキシこはく酸(NHS)とエステル結合しているPEGである。本明細書で用いられるように、「アシル化」は、治療用たんぱく質およびPEGのごときグリコール重合体間の以下の種類の結合:アミド、カルバメート、ウレタン、およびそれらの類似結合(Chamow (1994), Bioconjugate Chem., 5 (2): 133-140)を含んで用いられるが、これらだけに限定されない。反応条件は、ペグ化の技術分野で知られる条件または後に改良された条件のいずれかから選択されてもよいが、治療用の家禽類由来の修飾たんぱく質を不活性にする温度、溶媒およびpHのごとき条件は避けるべきである。
【0039】
アシル化によるグリコール化は、一般的にポリ−ペグ化されたたんぱく質を生じる。一の具体例では、結合に関するものはアミドである。また、生じる生成物は、実質的に(例えば、>95%の)モノ、ジ−またはトリ−ペグ化のみされていてもよい。しかしながら、より高い程度のペグ化を伴ういくつかの種類は、用いられる特異的な反応条件に依存する量で形成されてもよい。望ましくは、より精製されたペグ化の種類は、他の種類もあるが、透析法、塩析法、限外濾過法、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーおよび電気泳動を含む一般的な精製技術によって混合物(特に未反応の種類)から分離されてもよい。
【0040】
アルキル化によるペグ化のごときグリコール化は、還元剤の存在下において、PEGのごときグリコール重合体の末端アルデヒド誘導物とたんぱく質を反応させることに関連しうる。還元性アルキル化反応においては、選択された重合体が単一の反応性アルデヒド基を有しうる。典型的な反応性PEGアルデヒドは、水安定性であるポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、あるいはそのモノC1−C10アルコキシまたはアリールオキシ誘導物である。例えば、出典明示により全体を本明細書に一体化させた、1993年10月12日発行の米国特許第5252714号を参照のこと。
【0041】
アルキル化によるペグ化のごときグリコール化はまた、ポリ−ペグ化されたたんぱく質を生じうる。さらに、反応条件を操作することにより、実質的にたんぱく質のN−末端のアルファアミノ基のみのグリコール化を有利に行って、モノ−ペグ化されたたんぱく質を提供することができる。どちらの場合においても、グリコール重合体基は−CH2−NH基によってたんぱく質に結合している。
【0042】
モノ−重合体/たんぱく質生成物の実質的に同種な集団を生成するための還元性アルキル化は、段階:
(a)たんぱく質のアミノ末端のアルファアミノ基の選択的な修飾を可能にする適切なpHの還元性アルキル化条件において、家禽類由来のグリコシル化された治療用たんぱく質と反応性PEG分子とを反応させ;次いで
(b)反応生成物を得ること
を含みうる。反応性アルキル化による誘導体化によりモノペグ化された生成物が生成される。
【0043】
前記反応は、たんぱく質のリジン残基のイプシロンアミノ基およびN−末端残基のアルファアミノ基間のpKaの相違を利用することができるpHで行われうる。一般的には、pHがより低い場合、たんぱく質に対して、より過剰量の重合体が好ましい(すなわち、N−末端アルファアミノ基の反応性が低ければ、最適な条件にするためにより多くの重合体が必要とされる)。pHがより高い場合、重合体:たんぱく質の割合が大きい必要はない(すなわち、より反応性の高い基が利用可能であれば、重合体分子はあまり必要とされない)。一の具体例では、pHは3から9の範囲内、例えば3から6の範囲内でありうる。還元性アルキル化では、還元剤は水性水溶液中で安定であるべきで、好ましくは還元性アルキル化の最初の工程で形成されるシッフ塩基のみを還元できる。適する還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボランおよびピリジンボランから選択されてもよい。特に適する還元剤はシアノ水素化ホウ素ナトリウムである。溶媒、反応時間、温度および生成物の精製手段のごとき他の反応パラメーターは、水溶性重合体を有するたんぱく質の誘導体化に関して公表された情報に基づいて個別に決定されうる。
【0044】
かかる選択的な誘導体化により、アルデヒドのごとき反応性のある基を含むグリコール重合体のたんぱく質への結合が調節される。重合体との抱合がたんぱく質のN−末端で優位に起こり、リジン側鎖アミノ基のごとき他の反応性のある基の有意な修飾は起こらない。調製物は、典型的には、未反応の観察可能な分子の残り(すなわち、重合体の一部を欠いたたんぱく質)を伴う、90%以上のモノ重合体/たんぱく質抱合体、または95%以上のモノ重合体/たんぱく質抱合体であり得る。
【0045】
グリコール化はまた、少なくとも1つの反応性のあるヒドロキシル基(例えば、ポリエチレングリコール)を有する水溶性重合体により行われてもよい。このヒドロキシル基は、反応性カルボニル、ニトリル、スルホン基を有する試薬と反応させてヒドロキシル基を反応性ミハエル受容体に変換することができ、それにより多種類のたんぱく質を修飾して改善された生物学的に活性な抱合体を提供するのに有用な活性化されたリンカーが形成されうる。反応性カルボニル、ニトリルまたはスルホンは、カルボニル、ニトリルまたはスルホン基に由来する第2炭素上にチオール特異的にカップルする反応性部位を有し、2つの炭素基が結合しているカルボニル、ニトリルまたはスルホン基を意味する。例えば、出典明示により全体を本明細書に援用するWO92/16221を参照。
【0046】
活性化されたリンカーは単官能基、二官能基、または多官能基でありうる。前記方法に用いられうる反応性スルホン基を有する有用な試薬は、クロロスルホン、ビニルスルホンおよびジビニルスルホンを含むが、これらだけに限らない。
【0047】
特定の具体例では、グリコール重合体はミハエル受容体で活性化される。出典明示により全体を本明細書に一体化させるWO95/13312は、これ以外にもあるが、特に、分子および表面上のアミノ部分の代わりにチオール部分とのカップリングに高い選択性を有する水溶性スルホン活性化PEGを記載する。これらのPEG誘導物は、約11またはそれ以下のpHの水性環境において長期間加水分解に対して安定であり、分子との結合を形成して加水分解にも安定な抱合体を形成することができる。PEGと生物学的に活性のある分子がカップルすることによる結合は、チオール部分にカップルするスルホン部分を含み、構造PEG−−SO−−CH−−CH−−S−−Wを有し、ここで、Wは生物学的に活性な分子を表し、スルホン部分はビニルスルホンまたは活性なエチルスルホンであり得る。2つの有用な同質二官能基の誘導物はPEG−bis−クロロスルホンおよびPEG−bis−ビニルスルホンである。
【0048】
一の特に有用な具体例では、グリコシル化された治療用たんぱく質は、たんぱく質上に存在するグリコシル化を介したグリコール重合体のグリコシル化された治療用たんぱく質へのカップリングによりグリコール化される(例、ペグ化される)。それゆえ、本発明は、グリコシル化された治療用たんぱく質のグリコシル化構造にカップルしたポリエチレングリコールのごときグリコール重合体を有するグリコシル化された治療用たんぱく質およびかかるグリコシル化−グリコール化された治療用たんぱく質を作成する方法を含む。
【0049】
本発明の使用に適用される一の特定の具体例では、本発明は、ポリアルキレングリコールを活性化させ、活性化ポリアルキレングリコールをジアミノ化合物と反応させ、それにより活性化ポリアルキレングリコールがジアミノ化合物のジアミノ基のうちの1つを介してジアミノ化合物にカップルされ、家禽類由来のグリコシル化された治療用たんぱく質を酸化させることによりその中の少なくとも1つのグリコシル基を活性化させ、次いでジアミノ化合物にカップルしたポリアルキレングリコールを巨大分子中の酸化グリコシル基と反応させることを含む、グリコシル化された巨大分子のグリコール化の工程を提供する。例えば、本発明は、
(a)式CHO−(CHCHO)−Hのポリエチレングリコールをo−クロロギ酸ニトロフェニルおよびトリエチルアミンと反応させて式CHO−(CHCHO)−COO−Ph−NOのニトロ化合物が生成され、
(b)前記ニトロ化合物を式HN−(CH−NHのジアミノアルカンと反応させて式CHO−(CHCHO)−CO−NH−(CH−NHのアミノ化合物が生成され、
(c)鳥類由来のグリコシル化された治療用たんぱく質上の糖基を酸化させて酸化糖残基を有する巨大分子が生成され、次いで
(d)前記アミノ化合物を活性化巨大分子と反応させてペグ化分子が生成されること
を含むグリコシル化された巨大分子のペグ化のための工程を含みうる。一の具体例では、ポリエチレングリコールの分子量は約24000までであり;したがってnは約2から約500までである。この具体例では、ジアミノアルカン中のxは、典型的には約1から約20までである。
【0050】
この好ましい工程の結果は、ペグ化され、グリコシル化された鳥類由来のグリコシル化された治療用たんぱく質であって、このPEGがそのグリコシル化を介してたんぱく質に結合される治療用たんぱく質、特に、式PEG−OCO−NH−アルキレン−N=CH−の鳥類由来のグリコシル化治療用たんぱく質である。本発明のグリコシル化された治療用たんぱく質をグリコール化する方法の他の態様は、1994年3月17日公表のWO94/05332に開示され、出典明示により全体を本明細書に一体化させる。
【0051】
本発明は、融合たんぱく質、成長ホルモン、サイトカイン、構造たんぱく質、ならびにヒト成長ホルモン、インターフェロン、リソソーム、およびβ−カゼインを含む酵素のごとき広範囲の好ましいグリコール化およびグリコシル化された治療用たんぱく質を生成するのに用いられうる。本明細書に記載されるごとき修飾に用いられうる他のたんぱく質は、アルブミン、α−1アンチトリプシン、アンチトロンビンIII、コラーゲン、ファクターVIII、IX、X(およびその類似物)、フィブリノーゲン、ヒアルロン酸、インスリン、ラクトフェリン、プロテインC、エリスロポイエチン(EPO)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、組織型プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ソマトトロピン、およびキモトリプシンを含むが、これらだけに限らない。修飾された免疫グロブリンおよび抗体は、ヒト腫瘍細胞上の表面抗原に結合し、これらを破壊する免疫毒素を含み、本明細書で開示されるように生成されうる。
【0052】
グリコール化とグリコシル化の組み合わせを企図する治療用たんぱく質の他の特定な例は、ファクターVIII、b−ドメイン欠損ファクターVIII、ファクターVIIa、ファクターIX、抗凝固薬;ヒルジン、アルテプラーゼ、tpa、レテプラーゼ、tpa、5つのドメインのうち3つが欠失されたtpa、インスリン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルジン、長期作用型インスリンアナログ、hgh、グルカゴン、tsh、フォリトロピン−ベータ、fsh、gm−csf、pdgh、ifnアルファ2a、inf−アルファ、inf−ベータ1b、ifn−ベータ1a、ifn−ガンマ1b、il−2、il−11、hbsag、ospa、t−リンパ球抗原に対するマウスmab、tag−72に対するマウスmab、腫瘍関連糖たんぱく質、血小板表面受容体gpII(b)/III(a)に対するキメラmab由来のfab断片、腫瘍関連抗原ca125に対するマウスmab断片、ヒトガン胎児性抗原ceaに対するマウスmab断片、ヒト心筋ミオシンに対するマウスmab断片、腫瘍表面抗原psmaに対するマウスmab断片、hmw−maaに対するマウスmab断片(fab/fab2混合)、ガン関連抗原に対するマウスmab断片(fab)、nca90に対するmab断片(fab)、表面顆粒球非特異的交差反応抗原、bリンパ球の表面で見出されたcd20抗原に対するキメラmab、il2受容体のアルファ鎖に対するヒト化mab、il2受容体のアルファ鎖に対するキメラmab、tnf−アルファに対するキメラmab、呼吸器多核体ウイルスの表面上のエピトープに対するヒト化mab、her2、すなわちヒト上皮成長因子受容体2に対するヒト化mab、サイトケラチン腫瘍関連抗原抗−ctla4に対するヒトmab、bリンパ球ドルナーゼアルファdnaseのcd20表面抗原に対するキメラmab、ベータグルコセレブロシダーゼ、tnf−アルファ、il−2−ジフテリア毒素融合たんぱく質、tnfr−Igg断片融合たんぱく質ラロニダーゼ、DNAアーゼ、アレファセプト、ダルベポエチンアルファ(コロニー刺激因子)、トシツモマブ、マウスmab、アレムツズマブ、ラスブリカーゼ、アガルシダーゼベータ、テリパラチド、副甲状腺ホルモン誘導物、アダリムマブ(Igg1)、アナキンラ、生物学的修飾因子、ネシリチド、ヒトb−型ナトリウム利尿ペプチド(hbnp)、コロニー刺激因子、ペグビソマント、ヒト成長ホルモン受容体アンタゴニスト、組み換え型活性化プロテインC、オマリズマブ、免疫グロブリンE(Ige)ブロッカー、イブリツモマブチウキセタン、ACTH、グルカゴン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、チモシン、副甲状腺ホルモン、色素性ホルモン、ソマトメジン、エリスロポイエチン、黄体ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、視床下部放出因子、抗利尿ホルモン、プロラクチン、および副甲状腺刺激ホルモンを含むが、これらだけに限らない。一の具体例では、本発明は、本明細書で開示されるたんぱく質のヒト形態(すなわち、ヒト内在性)のごとき、家禽類に由来するグリコール化−グリコシル化されたヒトたんぱく質の生成を提供する。
【0053】
本発明は、本明細書に開示されるごとき免疫グロブリンおよび他の多量体たんぱく質の修飾を提供する。本発明の方法で修飾されてもよい治療用抗体の例は、転移性乳ガンにかかっている患者の治療用のヒト化抗−HER2モノクローナル抗体であるHERCEPTIN(登録商標)(トラスツズマブ)(カリフォルニア州のジェネンテック);血栓形成予防用の血小板上の抗糖たんぱく質IIb/IIIa受容体であるREOPRO(登録商標)(アブシキシマブ)(セントコア社);急性腎同種移植片拒絶予防用の免疫抑制性ヒト化抗−CD25モノクローナル抗体であるZENAPAX(登録商標)(ダクリズマブ)(スイスのロッシュ製薬);マウス抗−l7−IA細胞表面抗原IgG2a抗体であるPANOREX(登録商標)(グラクソウェルカム/セントコア社);マウス抗−イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体であるBEC2(イムクローン社);キメラ抗−EGFR IgG抗体であるIMC−C225(イムクローン社);ヒト化抗−αVβ3インテグリン抗体であるVITAXIN(登録商標)(Applied Molecular Evolution/MedImmune);ヒト化抗CD52 IgG1抗体であるキャンパス1H/LDP−03(ロイコサイト社);ヒト化抗−CD33 IgG抗体であるスマートM195(Protein Design Lab/鐘紡);キメラ抗−CD2O IgG1抗体であるRITUXAN(登録商標)(ファーマスーティカルズ社/ジェネンテック、ロッシュ/Zettyaku);ヒト化抗−CD22 IgG抗体であるLYMPHOCIDE(登録商標)(イミュノメディックス);ヒト化抗ICAM3抗体であるICM3(ICOS Pharm);霊長類の抗−CD80抗体であるIDEC−114(IDEC Pharm/三菱);放射性標識されたマウス抗−CD20抗体であるZEVALIN(登録商標)(IDEC/シエーリング);ヒト化抗−CD40L抗体であるIDEC−13l(IDEC/エイザイ);霊長類化(primatized)抗−CD4抗体であるIDEC−151(IDEC);霊長類化(primatized)抗−CD23抗体(IDEC/セイカガク)であるIDEC−152;ヒト化抗−CD3 IgGであるSMART抗−CD3(Protein Design Lab);ヒト化抗−補体因子5(CS)抗体である5G1.1(アレクシオン・ファーマスーティカルズ);ヒト化抗−TNF−α抗体であるD2E7(CATIBASF);ヒト化抗−TNF−α Fab断片であるCDP870(Celltech);霊長類化抗−CD4 IgG1抗体であるIDEC−151(IDEC Pharm/スミスクラインビーチャム);ヒト化抗−CD4 IgG抗体であるMDX−CD4(Medarex/エイザイ/Genmab);ヒト化抗−TNF−α IgG4抗体であるCDP571(Celltech);ヒト化抗−α4β7抗体であるLDP−02(LeukoSite/ジェネンテック);ヒト化抗−CD4 IgG抗体であるオルソクローンOKT4A(Ortho Biotech);ヒト化抗−CD40L IgG抗体であるANTOVA(登録商標)(Biogen);ヒト化抗−VLA−4 IgG抗体であるANTEGREN(登録商標)(Elan);ならびにヒト抗−TGF−β2抗体、CAT−152(Cambridge Ab Tech)を含むが、これらだけに限らない。
【0054】
一の態様では、本明細書に開示されるごとき修飾に適用される治療用たんぱく質は選択的に抗原に結合できる抗体であり、この抗体は少なくとも1つの免疫グロブリン重鎖の可変領域および少なくとも1つの免疫グロブリン軽鎖の可変領域に結合されることにより生じてもよく、例えば、少なくとも1つのジスルフィド結合により架橋されてもよい。2つの可変領域の組合せは、当該技術分野で周知な抗体の認識方法を用いて抗原に結合する結合部位を生じる。
【0055】
治療における使用には、本発明のたんぱく質がそのまま投与されてもよいが、医薬製剤の一部として該たんぱく質を投与することが好ましい。
【0056】
それゆえ、本発明はさらに、家禽類由来のグリコシル化−グリコール化された治療用たんぱく質またはそれらの1つもしくはそれ以上の医薬上許容されうるキャリアと一緒のそれらの医薬上許容されうる誘導体、ならびに任意選択的に他の治療用および/または予防用活性成分を含む医薬製剤を提供する。前記キャリアは、製剤の他の活性成分に生物適合性があり、その受容者に対して有害でないという意味で「許容」されなければならない。
【0057】
医薬製剤は、経口、直腸、鼻腔、(口腔内および舌下を含む)局所、膣または(筋肉内、皮下および静脈内を含む)非経口投与に適する医薬製剤、あるいは吸入または吹送による投与に適する形態の医薬製剤を含む。これらの製剤は、適宜個々の用量単位で利便的に提供されてもよく、薬学の分野で周知の方法により調製されてもよい。全ての方法は、活性化合物を液体キャリアもしくは微粉化された固体キャリアまたはその両方と接触させ、次いで必要に応じて生成物を望まれる剤形に成形する段階を含む。
【0058】
経口投与に適する医薬製剤は、粉末または顆粒;溶液;懸濁液;または乳剤として一定量の活性成分を含む各カプセル、カシェット(cachets)または錠剤のごとき個々の単位として利便的に提供されてもよい。活性成分はまた、ボーラス、舐剤またはペースト剤として提供されてもよい。経口投与用の錠剤およびカプセルは、結合剤、注入剤、潤滑剤、崩壊剤、または湿潤剤のごとき慣用的な賦形剤を含んでもよい。錠剤は当業者間に周知の方法によりコーティングされてもよい。経口用の液体製剤は、例えば、水性もしくは油性の懸濁液、溶液、乳液、シロップまたはエリキシル剤などの形態であってもよく、使用前には水または他の適するビヒクルとの構成からなる乾燥生成物として提供されてもよい。かかる液体製剤は、懸濁剤、乳化剤、(食用油を含んでもよい)非水性ビヒクルまたは保存剤のごとき慣用的な添加剤を含んでもよい。
【0059】
本発明による化合物はまた、非経口投与用(例、インジェクション、例えば、ボーラスインジェクションまたは連続吸入による)に製剤化されてもよく、アンプルの単位用量形態、プレフィルドシリンジ、小体積吸入または添加保存剤含有の複数回用量容器において提供されてもよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、または乳剤のごとき形態であってもよく、懸濁剤、安定剤および/または分散剤のごとき形態剤(formulatory agents)を含んでもよい。代替的に、活性成分は、使用前に、適するビヒクル、例えば、滅菌された発熱性物質のない水との構成において、滅菌溶液の無菌単離または溶液の凍結乾燥によって得られた粉末の形態であってもよい。
【0060】
皮膚に対する局所投与用には、本発明による化合物は、軟膏剤、クリームまたはローションとして、あるいは経皮貼布として製剤化されてもよい。軟膏剤およびクリームは、例えば、適する増粘剤および/またはゲル化剤の添加と一緒に水性または油性の基剤と製剤化されてもよい。ローションは、水性または油性の基剤と一緒に製剤化されてよく、一般的には、1またはそれ以上の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤または着色剤を含む。
【0061】
口腔内局所投与に適する製剤は、香味基剤、一般的にはスクロースおよびアラビアゴムまたはトラガント中に活性成分を含むローゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアラビアゴムのごとき不活性な基剤中に活性成分を含むトローチ;ならびに適する液体キャリア中に活性成分を含む洗口剤を含む。
【0062】
直腸投与に適する医薬製剤であって、キャリアが溶液である医薬製剤は、単位用量の坐剤として提供されるのが最も好ましい。適するキャリアは、ココアバターおよび当該技術分野で一般的に用いられる他の原料を含み、坐剤は、軟化または溶解させたキャリアと活性化合物とを混合させ、次いで冷却し、型で成形することにより利便的に形成されてもよい。
【0063】
膣投与に適する製剤は、適宜当該技術分野で公知のキャリアを活性成分に添加して含むペッサリー、クリーム、ゲル、ペースト、気泡またはスプレーとして提供されてもよい。
【0064】
鼻腔内投与には、本発明の化合物は、液体スプレーまたは分散粉末として、あるいは点滴の形態で使用されてもよい。
【0065】
点滴はまた、1またはそれ以上の分散剤、可溶化剤または懸濁剤を含む水性または非水性基剤と一緒に製剤化されてもよい。液体スプレーは加圧型パックから利便的に送達されてもよい。
【0066】
吸入による投与では、本発明による化合物は、吸入器、ネブライザーまたは加圧型パック、あるいはエアロゾルスプレーを送達する他の利便的な手段から利便的に送達される。加圧型パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適するガスのごとき適する噴射剤を含んでもよい。加圧エアロゾルの場合、用量単位は一定用量を送達するバルブを取り付けることにより測定されてもよい。
【0067】
代替的に、吸入または吹送による投与では、本発明による化合物は乾燥粉末組成物、例えば、化合物とラクトースまたはでんぷんのごとき適する粉末基剤の粉末組成物の形態であってもよい。この粉末組成物は、例えば、カプセルまたはカートリッジ、あるいは、例えば、粉末が吸入または吹送の目的で投与されてもよいゼラチンまたはブリスター包装中に単位用量の形態で提供されてもよい。
【0068】
望ましくは、活性成分の持続的な除放を与えるのに適合した上記記載の製剤が用いられてもよい。
【0069】
本発明による医薬組成物はまた、抗微生物剤または保存剤のごとき他の活性成分を含んでもよい。
【0070】
さらに、本発明の化合物は、他の治療剤と組み合わせて用いられうることが意図されている。例えば、家禽類由来のグリコシル化−グリコール化されたヒトインターフェロンアルファ(例、インターフェロンアルファ2b)がリバビリンおよび/またはビリミジンと組み合わせて用いられることによりC型肝炎のごときウイルス感染が処置されうる。
【0071】
本発明の組成物または化合物は、様々な状態を処置することに用いられうる。例えば、処置の治療がたんぱく質治療の分野の実施者に周知である多くの状態がある。本発明は、たんぱく質の治療剤が家禽類由来のグリコシル化パターンを生じる鳥類系で産生され、次いで、本発明によるグリコール化は、かかる状態を処置するために用いられうることが意図される。すなわち、本発明は、鳥類系で産生され、グリコシル化およびグリコール化される同一の一定のアミノ酸配列を有するたんぱく質治療剤を投与することにより、一定のアミノ酸配列を有するたんぱく質治療剤により処置可能であることが知られている状態の処置が意図される。
【0072】
本発明により生成されるグリコシル化−グリコール化治療たんぱく質は、鳥類のグリコシル化およびグリコール化を有していない同一のたんぱく質治療剤を用いて状態を処置することに必要とされる投与頻度および/または投与量(すなわち、一般的なたんぱく質治療剤)と比較して、治療たんぱく質の投与頻度の減少および/または投与量の減少が必要とされる。例えば、本発明のグリコシル化−グリコール化された治療たんぱく質の投与量は、鳥類のグリコシル化およびグリコール化を有していない同一たんぱく質の治療剤(すなわち、一般的なたんぱく質)を用いて状態または前状態を治療することに典型的に用いられる投与量の約10%または約20%または約30%または約40%または約50%または約60%または約70%または約80%に相当する量が用いられてもよい。本発明のグリコシル化−グリコール化された治療たんぱく質の投与頻度は、鳥類グリコシル化およびグリコール化を有していない同一のたんぱく質治療剤(すなわち、一般的なたんぱく質治療剤)の投与頻度と比較して、例えば、約10%または約20%または約30%または約40%または約50%または約60%または約70%または約80%まで減少されてもよい。
【0073】
一般的に、投与される投薬量は、患者の年齢、健康および体重、併用する治療の種類、治療の頻度、およびこれらに類似する因子のごとき既知の因子に依存して変動しうる。通常、活性成分の投薬量は体重キログラムあたり約0.0001と約10ミリグラムの間でありうる。適切な投与量、投与頻度および処置期間は治療たんぱく質投与の当業者によって適宜決定されうる。
【0074】
下記の実施例は、本発明によるグリコシル化およびグリコール化されたたんぱく質治療剤の産生に特に有用でありうる方法であるが、本発明の治療たんぱく質を作成するいずれかの特定の方法に限定されるものではなく、本発明が、当該技術分野で周知のかかる有用な方法全てかつまだ創作されていない方法を網羅するものと理解される。
【0075】
実施例1
グリコシル化−ペグ化された家禽類由来のヒトエリスロポイエチンの調製
PEG−4−ヒドロキシ−6−クロロ−1,3,5−トリアジン(PEG−HTA)
30gのPEG750(約0.04モル)または80gのPEG2000(約0.04モル)を8gのNaCOを含む150mlの無水ベンゼンに溶解させる。この溶液を10℃まで冷まし、7.38gの塩化シアヌルを添加する。この溶液を10℃で一晩撹拌させる。5mlの水を添加し、次いで溶液を数時間室温に移した後、40℃で一晩加熱する。不溶性の物質を遠心分離により除去し、溶媒を40℃のロータリー・エバボレーター中において減圧により除去する。濃縮時に時々現れる少量の沈殿物を少量のベンゼンの添加により取り除いて粘性を低下させた後、遠心分離と再濃縮を行う。40℃で粘性の液体であるPEG−3−ヒドロキシ−6−クロロ−1,3,5−トリアジンを冷蔵庫で保存する。
【0076】
PEG−HTA−EPO抱合体の調製
参照することにより全体を本明細書に一体化させる2004年5月4日公表の米国特許第6730822号に開示されるように、家禽類由来のグリコシル化されたEPOを生成する。10mgのEPOを1mlの0.1Mホウ酸塩緩衝液に、pH9.2で溶解させ、179mgのPEG−HTA2000を添加する。2時間後、未反応のPEG−HTAをこの溶液をSephadex G−10のカラムを通すことにより除去する。PEG−HTA−EPO抱合体をロータリー・エバボレーターで濃縮し、冷蔵庫で保存する。
【0077】
PEG−750を用いること以外は前記手順に従って、同様の生成物を得ることができる。pH8.5とpH10で反応を行うこと以外は前記手順に従っても、同様の生成物を得ることができる。
【0078】
実施例2
O−PEG−(P−アゾ家禽類由来のグリコシル化されたインターフェロンアルファ2−bベンジル)エーテルの調製
O−PEG−p−アミノベンジルエーテルの形成
3.46gのp−ニトロベンジル塩化物、2.0gの粉末状の水酸化ナトリウム、20mlの無水テトラヒドロフランおよび0.01モルのPEGを3時間還流させる。この溶液を減圧下で濾過および蒸発させ、PEG−p−ニトロネンジルエーテルを石油エーテル(沸点30℃から40℃)の添加により沈殿させる。ニトロエーテルをエタノール(50ml)中のラニーニッケル触媒(約1g)の存在下で大気圧の水素とともに減少させる。触媒を取り除き、ろ液を蒸発させてO−PEG−p−アミノベンジルエーテルを得る。
【0079】
インターフェロンアルファ2−bとのカップリング
O−PEG−p−アミノベンジルエーテルを亜硝酸と0℃の水性溶液中でジアゾ化させる。精製したジアゾ化溶液に、2004年5月4日公表の米国特許第6730822号で開示される方法により生成された0.25%のグリコシル化されたインターフェロンアルファ2bの水性溶液を添加し、混合物を0℃に2時間保つ。溶液を5℃から10℃で透析してグリコシル化−ペグ化されたインターフェロンアルファ2bを得る。
【0080】
実施例3
O−PEGメチルカルボキシ家禽類由来のヒトGM−CSFの調製
PEG−メチルカルボメトキシエステルの調製
2.0gのPEG750を30mlの液体アンモニアに溶解させ、青色が5分間持続するまで溶液をナトリウムで処理する。アンモニアは乾燥窒素の蒸気で蒸発させることを可能にする。残渣を5mlのクロロ酢酸メチルで処理し、混合物を室温で一晩静置させ、次いで100℃で1時間加熱する。余分な試薬を減圧下で除去してPEG−メチルカルボキシエステルを得る。
【0081】
PEGの活性化
10mlの水中の1.0gのO−PEG−メチルカルボメトキシエステル溶液に、10mlの10%アセトン中の1.0gのN−エトキシカルボニル−2−エトキシ1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)を滴下する。pHを7.0に維持し、30分後、pHを濃塩酸で1.0に調整し、pHを90秒間維持して余分なEEDQを粉砕する。次いで、この溶液のpHをpH8.0に調整する。
【0082】
GM−CSFへのカップリング
リン酸緩衝液、pH8.0中に、2004年5月4日公表の米国第6730822号で開示される通りに産生された50mgのヒトグリコシル化GM−CSFを4℃から5℃で活性化PEGの溶液に添加する。1/2時間後、この溶液を水に対して透析させてグリコシル化−ペグ化された家禽類由来のGM−CSFを得る。
【0083】
実施例4
1−(家禽類由来のヒトG−CSF−2−ヒドロキシプロポキシ)−4−3”−O−PEG−2”−ヒドロキシプロポキシブタンの調製
PEGのオキシランエーテル
5.0gのPEG、1mlの1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルおよび2mgの水素化ホウ素ナトリウムを含む1mlの0.6M水酸化ナトリウム溶液を室温で8時間撹拌させる。溶液を中和させ、蒸発させる。残渣をアセトンで抽出し、PEGエーテルを余分な石油エーテルの添加により沈殿させる。
【0084】
G−CSFへのカップリング
1.0gのオキシラン−PEGと2004年5月4日公表の米国第6730822号で開示される通りに産生された50mgのヒトグリコシル化GM−CSFを、緩衝溶液(pH8.5)中において室温で48時間反応させる。溶液を透析して家禽類由来のグリコシル化−ペグ化されたG−CSFを得る。
【0085】
実施例5
ペグ化され、グリコシル化された家禽類由来のヒトインターフェロンベータ1aの調製
メトキシ−PEG(mPEG)の活性化
2グラムの15KDaのmPEG(0.1mM、最終濃度)を、0.24gのo−ニトロフェニルクロロホルメート(1.2mM)と33マイクロリットルのトリエチルアミン(1.2mM)と一緒に20mlのアセトニトリルに溶解させ、室温で24時間撹拌させる。
【0086】
次いで、塩化トリエチルアンモニウムを焼結ガラス漏斗を用いて濾過する。200mlのエチルエーテルを添加し、続いて結晶化するまで溶液を4℃で一晩放置する。生成物を濾過し、エーテルで洗浄して黄色がなくなるまで取り除き、アセトニトリルから再結晶させる。次いで生成物をε−アミノ−n−カプロン酸(ACA)によるp−ニトロフェノールの遊離により分光光度的に測定する。
【0087】
家禽類由来のヒトインターフェロンベータ1aのリジン基を介するペグ化
2004年5月4日公表の米国特許第6730822号で開示される方法により生成された、5mgの家禽類由来のヒトインターフェロンベータ1aを50mMのホウ酸ナトリウム緩衝液pH8.3中で大規模に透析する。
【0088】
2mlの透析サンプルに、3mgの活性化mPEGを添加し、5モル過剰とする。すぐに、3mgの活性化mPEGを添加し、室温で撹拌させながらさらに30分間インキュベートさせる。この反応を2時間後に停止させ、サンプルにNAP25(Pharmacia)を積載し、カラムで脱塩し、次いで50mM NaPO緩衝液、pH6.8で溶離することにより最終モル過剰が20倍となる。脱塩サンプルをsuperose 6 カラム(1x30cm BioRad Econocolumn(登録商標))上に充填し、50mM NaPO緩衝液、pH6.8で溶離する。Superoseカラムから生じたピークをSDS−PAGEによりアッセイし、溜める。
【0089】
実施例6
インターフェロン上に存在するグリコシル化構造にカップルされるPEGを有する家禽類由来のヒトインターフェロンベータ1aの調製
mPEG−μ−pNPのアミノ誘導物(PEG−μ−ブタミン)の作成
0.5gのmPEG−μ−p−ニトロフェニルを、44.25mg(100ミリモル)の1,4−アミノブタンを含む5mlの50mM Na−ホウ酸緩衝液、pH9.0にゆっくり添加する。反応物を撹拌させながら室温で3時間インキュベートさせる。反応を、NAP25脱塩カラムを通し、水で溶離し、次いでMilli−QのHO中で透析することにより停止させる。透析物質を凍結乾燥させ(lypophylized)、重さを測定する。
【0090】
家禽類由来のヒトインターフェロンベータ1aの酸化
カップリング緩衝液: 0.05M 酢酸ナトリウム
0.1M 塩化ナトリウム、pH5.0
洗浄緩衝液: 0.1M 酢酸ナトリウム
0.5M 塩化ナトリウム、pH3.5
保存緩衝液: 0.05M リン酸ナトリウム、pH6.8
【0091】
0.5mgの家禽類由来のヒトインターフェロンベータ1aをNAP−10(Pharmacia)脱塩カラムを用いてカップリング緩衝液へ緩衝液交換する。家禽類由来のたんぱく質溶液に0.1mlの新たに調製された100mM 過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)を添加する。溶液を穏やかに混合し、密封された反応管を光から保護し、室温で30分間インキュベートする。反応を止めるために、サンプルを、NAP−10脱塩カラムを通し、洗浄緩衝液で平衡化する。このカラムを抱合緩衝液で溶離する。
【0092】
酸化された家禽類由来のヒトインターフェロンベータ1aのPEG−μ−ブタンへのカップリング
脱塩、酸化された家禽類由来のヒトインターフェロンベータ1aに、5mgのPEG−μ−ブタミンを添加する。反応混合物を窒素で重層させ、4℃で一晩穏やかに撹拌させる。家禽類由来のヒトインターフェロンベータ1aのPEG−μ−ブタミンに対するモル比は1:100である。次いでサンプルを任意選択的な還元の後にSuperose 6カラム上に積み上げる。ピークを含むインターフェロンを貯蓄し、アミコンにより撹拌される細胞濃縮器上で濃縮する。
【0093】
実施例7
ST3Ga1IIIを用いて家禽類由来のヒト抗体に結合されるO結合型の40キロダルトンPEGの調製
脱シアル化
この段階において、家禽類由来のグリコシル化されたヒト抗体を脱シアル化する。GlcNAc−Gal結合は、修飾されたシアル酸PEGの移行のための受容基としての機能を果たす。
【0094】
家禽類由来のグリコシル化されたヒト抗体溶液10ml(0.33μmol)をトリス緩衝液(20mM Tris、50mM NaCl、5mM CaCl、0.02% NaN、pH7.2)で緩衝液交換して最終体積10mlにする。次いで、Arthrobacter Ureafaciens由来の750mU 2,3,6,8−neuramidaseを溶液に添加する。生じた混合物を32℃で48時間振蘯させる。
【0095】
O結合型のペグ化
この段階において、O−シアル酸転移酵素を用いることにより、修飾されたシアル酸−PEG部分を脱シアル化された家禽類由来のグリコシル化ヒト抗体に転移させる。CMP−シアル酸−PEG(40KDa、33mg、0.825μmol)、O−シアル酸転移酵素(1.4U/ml、300mU)、および0.25mlの100mM MnClを上記混合物に添加する。次いで混合物を32℃で48時間振蘯させる。48時間経過後、反応混合物を限外濾過(MWCO5K)により2.8mlまで濃縮し、次に25mM NaOAc+0.001% Tween−80、pH6.0で最終体積3mlまで緩衝液交換する。最終生成物をイオン交換により精製する。ペグ化された家禽類由来のグリコシル化されたヒト抗体を収集し、限外濾過により濃縮する。
【0096】
CHO−家禽類由来のグリコシル化されたヒト抗体−Galnac−Gal−SA−PEGのシアル化の完全終結
プロセスのこの工程において、修飾されたシアル酸残基を持たないグリコシル構造の末端にシアル酸を付加する。
【0097】
一緒にしたペグ化された家禽類由来のグリコシル化ヒト抗体(約2mg)を限外濾過(MWCO5K)により濃縮し、次いでトリス緩衝液(0.05M Tris、0.15M NaCl、0.001M CaCl+0.005% NaN)で最終体積2mlまで緩衝液交換し、次にCMP−N−アセチルノイラミン酸(CMP−NANA;1.5mg、2.4μmol)、ST3Ga;1III(8.9U/ml、10μl、0.098U)および50μlの1100mM MnClを添加する。生じた混合物を32℃で24時間振蘯させ、次いで最終体積1mlまで濃縮する。この溶液を直接Superdex200精製にかける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスジェニック鳥類から得られたグリコシル化された治療用アミノ酸配列を含む組成物であって、該治療用アミノ酸配列が糖たんぱく質であり、共有結合されたグリコール重合体を含むものである、組成物。
【請求項2】
鳥類がニワトリである、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
治療用アミノ酸配列が外因性アミノ酸配列である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
治療用アミノ酸配列がヒト内在性アミノ酸配列である、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
治療用アミノ酸配列がサイトカインである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
治療用アミノ酸配列が顆粒球コロニー刺激因子、インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、エリスロポイエチンおよび顆粒球マクロファージコロニー刺激因子からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
治療用アミノ酸配列がヒト内在性アミノ酸配列である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
治療用アミノ酸配列が抗体である、請求項6記載の組成物。
【請求項9】
グリコシル化がトランジェニック鳥類の卵管細胞により付与される、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
卵管細胞が管状腺細胞である、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
治療用アミノ酸配列がO−グリコシル化された、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
治療用アミノ酸配列がN−グリコシル化された、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
グリコール重合体がポリアルキレングリコールである、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
グリコール重合体がポリエチレングリコールである、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
グリコール重合体がポリプロピレングリコールである、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
グリコール重合体が約300から約200000の分子量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
グリコール重合体が治療用アミノ酸配列のアミノ基に共有結合される、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
グリコール重合体が治療用アミノ酸配列のカルボキシル基に共有結合される、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
トランスジェニック鳥類から得られたグリコシル化された治療用アミノ酸配列を含む組成物であって、該治療用アミノ酸配列が糖たんぱく質であり、治療用アミノ酸配列のグリコシル化部分に共有結合されたグリコール重合体を含むものである、組成物。
【請求項20】
トランスジェニックニワトリから得られたグリコシル化された治療用アミノ酸配列を含む組成物であって、該治療用アミノ酸配列が糖たんぱく質であり、共有結合されたグリコール重合体を含むものである、組成物。

【公表番号】特表2009−514814(P2009−514814A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536869(P2008−536869)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/041343
【国際公開番号】WO2007/048047
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(500176090)シナジェバ・バイオファーマ・コーポレイション (7)
【氏名又は名称原語表記】Synageva Biopharma Corp.
【Fターム(参考)】