説明

グリップ

【課題】荷重が作用したときの応力の局所集中を緩和するグリップを提供すること。
【解決手段】グリップ1は、取付面101に固定されるグリップ本体2と、4つのリブ部(応力集中緩和部)10〜13を備える。4つのリブ部10〜13は、取付面101と対向するグリップ本体2の両端部にある2つの端面(対向面)3に設けられる。グリップ本体2に下向きの荷重が作用すると、端面3の下方縁部が取付面101に向かって押し付けられる。このとき、取付面101と端面3の間に介在するリブ部10〜13が取付面101と接触し、弾性変形してたわむ。リブ部10〜13を設けない場合と比べて、取付面101との接触面積が大きくなるため、グリップ本体2に生じる応力が分散される。また、リブ部10〜13が弾性変形することによりグリップ本体2に生じる応力が低減される。従って、グリップ本体2に生じる応力集中を緩和することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば身体を支える補助具として用いられるグリップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、浴槽の内壁や浴室の壁面に取付けられ、入浴者の入浴時の動作等を補助するためのグリップが知られている。このようなグリップは、例えば、入浴者が浴槽内で体勢を安定させるためや、浴槽から出る際に立ち上がる動作を補助するために用いられる。人がこのグリップに捉まりながら様々な動作をする場合、グリップには人の体重を支えるための荷重や、瞬間的に大きな荷重が作用する。グリップはそのような大きな力に耐えうることが求められる。
【0003】
このようなグリップは、一般的にボルト・ナットを用いて壁面に固定される。また、特許文献1、2に開示されているように、グリップが浴槽の内壁に取付けられる場合には、グリップと取付面との間に、ゴム等で形成されたリング状のパッキンが介装されることもある。なお、このパッキンは、グリップを取付けるために浴槽に開けた孔から水が漏れるのを防止するためのものである。
【0004】
【特許文献1】特開平7−59674号公報
【特許文献2】特開平9−65999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、グリップに作用する荷重の方向は、グリップの取付場所や使用目的により異なる。取付面と平行な方向の荷重成分がグリップに作用したときには、グリップの一部分のみが取付面に押し付けられて、全荷重がこの一部分に作用し、その結果、この部分に大きな応力が集中する。例えば、人がグリップに掴まりながら立ち上がる動作をした場合、グリップには主に下向きの荷重が作用する。このとき、グリップの取付座面の下方縁部が取付面に押し付けられ、局所的に大きな応力が生じる。グリップを使用し続けると、最悪の場合、グリップに塑性変形や亀裂等の破損が生じるという問題が生じる。また、その際にグリップと接触している取付面にもグリップからの反力が集中的に作用し、亀裂が生じる可能性がある。
【0006】
また、特許文献1、2に開示されているパッキンは、水漏れを防ぐためのものであるため、取付面とグリップとの間で圧縮された状態でグリップと取付面との間に配置されている。そのため、グリップに荷重が作用し、パッキンが取付面に押し付けられても、パッキンが弾性変形する余地は少ない。従って、パッキンにより外力を吸収し、グリップに作用する応力を低減することは困難である。従って、パッキンの有無に関わらず、グリップに荷重が作用したとき、グリップと取付面との接触部分に集中的に応力が生じるという問題が生じる。そのため、この局所的に生じる応力を緩和することが望ましい。
【0007】
そこで、本発明は、荷重が作用したときの応力の局所集中を緩和するグリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
請求項1のグリップは、取付面に固定されるグリップ本体と、前記グリップ本体の前記取付面との対向面の一部領域に設けられるとともに、前記グリップ本体に前記取付面と平行な方向の荷重成分が作用して、前記対向面の一部領域が前記取付面に向けて押し付けられたときに、前記取付面と前記対向面の間に介在して前記グリップ本体に生じる応力集中を緩和する、応力集中緩和部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
取付面に固定されたグリップ本体に、取付面と平行な方向の荷重成分が作用したとき、応力集中緩和部が取付面と接触する。グリップ本体の対向面が取付面と直接接触した場合と比較して接触面積が増加するため、グリップ本体に生じる応力を分散することができる。従って、グリップ本体に局所的に大きな応力が作用することを防ぐことができる。そのため、グリップ本体の破損を防ぐことができる。同時に、応力集中緩和部と接触する取付面に作用する応力も分散することができる。そのため取付面の破損を防ぐことができる。
【0010】
請求項2のグリップは、請求項1において、前記応力集中緩和部が、それぞれ前記対向面に沿って前記荷重成分の方向と直交する方向に延在し、且つ、前記荷重成分の方向に並べて配置された複数のリブ部から構成されることを特徴とする。これにより、取付面に固定されたグリップ本体に荷重が作用したとき、リブ部と取付面が接触する。このリブ部が変形することにより、グリップ本体に作用する応力を低減することができる。
【0011】
請求項3のグリップは、請求項1において、前記応力集中緩和部が、エラストマで形成されることを特徴とする。これにより、取付面に固定されたグリップ本体に荷重が作用したとき、グリップ本体の対向面と取付面との間に介在する応力集中緩和部が圧縮されて変形する。そのため、グリップ本体に作用する応力を低減することができる。
【0012】
請求項4のグリップは、請求項1〜3の何れかにおいて、前記応力集中緩和部が、前記取付面に固定され、且つ、前記荷重成分が作用していない状態において、前記取付面に直交する方向の力を受けていないことを特徴とする。これにより、取付面に固定されたグリップ本体に荷重が作用したとき、応力集中緩和部が変形しやすい。従って、応力集中緩和部の応力を吸収する能力を効率的に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の第一実施形態について説明する。本実施形態のグリップ1は、例えば、浴槽の内壁、浴室の壁面、トイレの壁面等に取付けられ、入浴者等の入浴時等の動作を補助するために用いられる。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のグリップ1は、鉛直方向に平行な壁部100の取付面101に固定されている。なお、以下のグリップ1の説明において、取付面101と直交する方向を前後方向、取付面と平行な方向で、且つ、水平な方向を左右方向、取付面101の上下方向を上下方向と定義する。
【0015】
また、使用者によって把持されたときにグリップ1には、取付面101と平行、且つ、下向きに荷重が作用するものとして説明する。
【0016】
図1に示すように、グリップ1は、グリップ本体2と、4つのリブ部10〜13と、インサートボルト4を備えている。4つのリブ部10〜13が応力集中緩和部に相当する。
【0017】
グリップ本体2は、筒状体の両端が屈曲された形状に形成され、その両端部に平坦な2つの端面(対向面)3を有する。グリップ1は、グリップ本体2の長手方向が左右方向に一致するように、取付面101に固定されている。
【0018】
グリップ本体2は、合成樹脂で形成されており、例えば、射出成形法により作製される。合成樹脂は、例えば、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0019】
図1、2に示すように、グリップ本体2の2つの端面3は、グリップ本体2が取付面101に取付けられたときに、この取付面101と対向する面である。図3に示すように、取付面101側から見ると、端面3は楕円形状に形成されている。
【0020】
また、図1、2に示すように、グリップ本体2の2つの端面3には、2つのインサートボルト4がそれぞれ一体化して固定されている。即ち、インサートボルト4のボルト頭部6側がグリップ本体2に埋設され、インサートボルト4のねじ部5が端面3の中央部から突出している。
【0021】
グリップ本体2を取付面101に取付けるには、インサートボルト4のねじ部5にパッキン20を外嵌し、壁部100に形成されたボルト貫通孔102にそのねじ部5を挿入する。そして、ボルト貫通孔102を貫通したねじ部5にナット21を螺合し、締め付ける。このとき、端面3と取付面101との間は、圧縮された状態のパッキン20が介在することにより、若干の隙間が形成されている。
【0022】
次に、リブ部10〜13について詳しく説明する。
図2に示すように、4つのリブ部10〜13は、端面3の下側に設けられており、それぞれ合成樹脂で形成されている。合成樹脂は、例えば、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0023】
図2に示すように、リブ部10〜13は、それぞれ端面3と直交する方向(前後方向)に外側に突出している。また、図3に示すように、取付面101側から見ると、リブ部10〜13は、それぞれ左右方向に延在し、且つ、上下方向に並ぶように配置されている。さらに、図4(a)に示すように、リブ部10〜13の突出端面10a〜13aと端面3との距離は互いに等しい。即ち、各リブ部10〜13の端面3からの突出量は全て同じである。
【0024】
図4(a)に示すように、グリップ本体2に荷重が作用していないときは、リブ部10〜13の突出端面10a〜13aは、取付面101から離れている。即ち、グリップ本体2に荷重が作用していないとき、リブ部10〜13は取付面101と直交する方向の力を受けていない。
【0025】
次に、グリップ1に荷重が作用した場合について説明する。
まず、リブ部10〜13が設けられていない場合について説明する。グリップ本体2に下向きの荷重が作用すると、端面3の下方縁部が、取付面101に押し付けられる。従って、端面3の下方縁部には大きな応力が作用する。そのため、グリップ本体2が破損する可能性がある。さらに、端面3と接触する取付面101にも大きな応力が生じるため、取付面101も破損する可能性がある。
【0026】
本実施形態のグリップ1の場合、グリップ本体2に下向きの荷重が作用したとき、図4(b)に示すように、端面3の下方縁部が取付面101に向かって押されると、端面3の下方に設けられたリブ部10〜13が取付面101と接触する。
【0027】
具体的には、まず、最下端のリブ部13の突出端面13aが取付面101と接触する。突出端面13aが取付面101に押し付けられた状態で、さらに荷重が加えられると、リブ部13は弾性変形してたわむ。リブ部13がたわむことにより、リブ部13の前後方向の長さが短くなるため、リブ部13の上方にあるリブ部12が取付面101と接触し、変形する。同様に、荷重が増加すると、リブ部11、10が順次、取付面101と接触し、変形する。最終的には、突出端面10a〜13aが全て取付面101と接触する。そのため、端面3の下方縁部のみが取付面101と直接接触する場合に比べて、接触面積が増加するため、グリップ本体2に生じる応力が分散される。また、各リブ部10〜13が荷重の大きさに応じて弾性変形することにより、応力が低減される。従って、リブ部10〜13が端面3と取付面101との間に介在されることにより、グリップ本体2に生じる応力集中を緩和することができる。よって、グリップ本体2の破損を防ぐことができる。同時に、取付面101がグリップ1から受ける反力も低減されるため、取付面101に生じる応力集中を緩和することができる。よって、取付面101の破損を防ぐことができる。
【0028】
なお、リブ部10〜13の端面3からの突出量は、全て同じでなくてもよい。例えば、上端から順に突出量が大きくなるものであってもよい。
【0029】
また、リブ部の数は、4つに限られるものではなく、例えば、3つ又は5つ以上であってもよい。リブ部の材質、形状に応じて適宜設定される。
【0030】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。但し、第一実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0031】
図5に示すように、本実施形態のグリップ1の端面3の下側に、接触座面14が設けられている。接触座面14は、応力集中緩和部に相当するものであり、エラストマにより形成される。エラストマは、ゴムと熱可塑性エラストマがあるが、ゴム材料としては、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエン・モノマー(EPDM)、フッ素ゴム、シリコンゴム等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマとしては、スチレンブロック共重合体(SBC)、熱可塑性オレフィン(TPO)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等が挙げられる。
【0032】
図5に示すように、接触座面14は、取付面101側から見ると、左右方向に長い楕円形状に形成されている。また、図6(a)に示すように、接触座面14は、端面3と直行する方向(前後方向)に外側に突出している。接触座面14の突出端面14aは、端面3と平行である。
【0033】
図6(a)に示すように、グリップ本体2に荷重が作用していないときは、接触座面14の突出端面14aは、取付面101から離れている。即ち、グリップ本体2に荷重が作用していないとき、接触座面14は取付面101と直交する方向の力を受けていない。
【0034】
グリップ本体2に下向きの荷重が作用したとき、図6(b)に示すように、接触座面14の突出端面14aが取付面101に接触し、接触座面14が圧縮されて変形する。
【0035】
具体的には、グリップ本体2に荷重が作用したとき、接触座面14は取付面101から取付面101と直交する方向に外力を受け、取付面101とグリップ本体2との間で圧縮される。接触座面14は圧縮されて縮むと、取付面101に沿った方向に膨張する。このように接触座面14が圧縮変形することにより、外力が吸収され、グリップ本体2に生じる応力が低減される。また、端面3の下方縁部が取付面101に直接接触した場合と比較して、接触面積が増加するため、グリップ本体2に生じる応力が分散される。従って、接触座面14が端面3と取付面101との間に介在されることにより、グリップ本体2に生じる応力集中を緩和することができる。同時に、取付面101に作用する反力も低減されるため、取付面101に生じる応力集中を緩和することができる。
【0036】
また、接触座面14はポアソン比が大きいほど、その弾力性が富み、外力を吸収する作用が大きくなる。よって、接触座面14の材料としてはポアソン比の大きいものを用いることが好ましい。例えば、ポアソン比が0.4〜0.5の範囲内のエラストマを用いることが好ましい。
【0037】
なお、接触座面14の突出端面14aは、端面3と平行でなくてもよい。例えば、接触座面14の上部の突出量が下部の突出量よりも大きくなるように、突出端面14aが端面3に対して傾斜していてもよい。
【0038】
また、接触座面14の形状は、左右方向に長い楕円形状に限られない。例えば、多角形状であってもよい。また、2つ以上に分割された形状であってもよい。
【0039】
また、接触座面14は、エラストマで形成されるものに限られない。合成樹脂等で形成されていてもよい。
【0040】
上記第一実施形態及び第二実施形態は以下のように変更して実施できる。
【0041】
1]リブ部10〜13又は接触座面14は、端面3と直交する方向(前後方向)に突出していなくてもよい。端面3に対して斜め方向に突出して形成されてもよい。
【0042】
2]リブ部10〜13又は接触座面14は、グリップ本体2に荷重が作用していないときに、取付面101から離れているものに限られない。リブ部10〜13又は接触座面14は、変形する余地が十分に残されていれば、取付面101に接触し、取付面101から取付面101と直交する方向の力を受けていてもよい。
【0043】
3]リブ部10〜13又は接触座面14の設けられる位置は、端面3の下側に限られず、また、1箇所でなくてもよい。荷重の作用する方向に応じて適宜設定される。例えば、グリップ本体2に上向きと下向きの両方の荷重が作用する場合、端面3の上下両端の領域に、それぞれリブ部10〜13又は接触座面14は設けられる。
【0044】
4]グリップ1の取付方向は、グリップ本体2の長手方向が左右方向に一致する方向に限られない。グリップ1の使用目的に合わせて適宜設定される。例えば、グリップ本体2の長手方向が上下方向になるように取付けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第一実施形態に係るグリップを取り付けたときの長手方向断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】グリップの部分側面図である。
【図4】(a)は荷重が作用していないときの部分拡大図であり、(b)はグリップに荷重が作用したときの部分拡大図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係るグリップの部分側面図である
【図6】(a)は荷重が作用していないときの部分拡大図であり、(b)はグリップに荷重が作用したときの部分拡大図である。
【符号の説明】
【0046】
1 グリップ
2 グリップ本体
3 端面(対向面)
10、11、12、13 リブ部(応力集中緩和部)
14 接触座面(応力集中緩和部)
101 取付面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付面に固定されるグリップ本体と、
前記グリップ本体の前記取付面との対向面の一部領域に設けられるとともに、前記グリップ本体に前記取付面と平行な方向の荷重成分が作用して、前記対向面の一部領域が前記取付面に向けて押し付けられたときに、前記取付面と前記対向面の間に介在して前記グリップ本体に生じる応力集中を緩和する、応力集中緩和部と、
を備えていることを特徴とするグリップ。
【請求項2】
前記応力集中緩和部が、それぞれ前記対向面に沿って前記荷重成分の方向と直交する方向に延在し、且つ、前記荷重成分の方向に並べて配置された複数のリブ部から構成されることを特徴とする請求項1に記載のグリップ。
【請求項3】
前記応力集中緩和部が、エラストマで形成されることを特徴とする請求項1に記載のグリップ。
【請求項4】
前記応力集中緩和部が、前記取付面に固定され、且つ、前記荷重成分が作用していない状態において、前記取付面に直交する方向の力を受けていないことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のグリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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