説明

グリース組成物

【課題】 低ノイズ特性を有するグリース組成物の使用を提供する。
【解決手段】 本発明は、鉱物及び/又は合成起源の基油、増稠剤、亜鉛ジチオホスフェート、及び無灰ジチオカルバメートを含むグリース組成物のノイズ減少グリース組成物としての使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
【0002】
本発明は、ノイズを減じるためのグリース組成物の使用、特に軸受の適用に関する。
【従来の技術】
【0003】
潤滑の主目的は、互いに相関して移動する固体表面を分離し、摩擦及び摩耗の影響を最小化することである。グリース組成物は主に油のような流動性潤滑剤及び増稠剤から構成され、そしてそれは継手や軸受のような機械成分の潤滑に使用される。例えば、グリースは、高い圧力が存在する場所、油滴が好まれない場所又は接触面の動作が断続的であるために軸受又は継手内の分離膜を維持することが困難な場所の適用にて使用される。
軸受は回転又は往復するシャフトを配置するために提供される支持体であり、そして工業、自動車及び家庭用器具の適用において広く使用される。軸受は、使用された場合、ノイズ又は振動を導きうる極度の回転力を受ける。このようなノイズは軸受の状態に有害であり、軸受を含む装置が、揺れ(shake)又は振動(judder)を被り、かつ音響的なビーティングノイズ(beating noises)を生成することになる。このようなノイズに関する問題は、低振動の適用においては、軸受の使用を妨げ得る。
【0004】
グリース組成物を使用した機械部品の潤滑は、摩擦及び摩耗を減じることができることは公知である。例えばWO 96/02615は等速継手用グリース組成物であり、(a)基油;(b)リチウム石鹸及びリチウム複合石鹸からなる群より選択されたリチウム含有増稠剤;(c)モリブデンジチオホスフェート及びモリブデンジチオカルバメートからなる群より選択される有機モリブデン化合物;並びに(d)亜鉛ジチオホスフェートからなる該グリース組成物に関する。WO 96/02615の7頁3行において、成分(c)として有機モリブデン化合物は潤滑される表面上で自己分解を受け、それゆえ粘弾性を有する高分子量化合物のフィルムを生成し、そのフィルムは潤滑される部分上の金属部分を被覆する、或いは一部に作用する摩擦力及びそれらの任意の摩耗を減じる自己分解モリブデンジサルファイドを通過して生成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ノイズ又は振動を減じるために特別に設計されたグリース組成物の入手可能な情報はほとんどない。さらに軸受に使用すると極度に高温になり、グリース組成物の粘度を減じ、ノイズ又は振動の増加を引き起こす。
US−A−4648985は、2−及び3−成分極圧潤滑剤添加システムを記載する。2成分システムでは、それらに記載された製法の金属有機ホスフェート及びジチオカルバメートを含む。
同様に、3成分システムでは、それらに記載された製法のジチオカルバメート、金属化合物及びホスフェート化合物を含む。
US−A−4648985の実施例11は、鉱油、無機クレイ増稠剤、4.0%の銅オクテート(「12.0% Copper Cem−All」 Mooney Chemicals,Inc.,Cleveland,Ohio)、4.0%のメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)(Vanlube 7723)、及び9.5%の亜鉛ジアレーンホスフォロジチオエート(OLOA 260)を含む潤滑グリースに関する。
【0006】
しかし、US−A−4648985には、グリース組成物を使用する継手及び軸受におけるノイズや振動を減じることに対して注目した教示はない。
US−A−5922654は荷重軸受特性及び極圧特性を有することが必要な部分、又は摩耗が許容される部分、例えば軸受及び等速継手への適用が好適であると言われる潤滑組成物に関する。
US−A−5922654に表3の実施例2は、ピペリジンペンタメチレンジチオカルバメート(2%)、テルルジエチルジチオカルバメート(1.5%)及び亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(1%)を含む尿素グリースを記載する。 US−A−5922654に表3の実施例3は、ピペリジンペンタメチレンジチオカルバメート(1.5%)、アンチモンジアルキルジチオカルバメート(.5%)、モリブデンジアルキルジチオカルバメート(0.5%)及び亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(0.5%)を含む尿素グリースに関する。
US−A−5922654は、ノイズや振動を減じるために設計されたグリース組成物に対し注目した教示を示していない。
【0007】
GB−A−2255103は、摩耗を減じ、振動を調節しそして耐久性を改良すると言われる等速継手において使用するためのグリース組成物を記載する。
GB−A−2255103に記載されたグリース組成物は、潤滑油、尿素増稠剤、(A)1〜5重量%のモリブデンサルファイドジアルキルジチオカルバメート、(B)0.2〜1重量%のモリブデンジサルファイド、(C)0.5〜3重量%の一般式:
【化1】

(式中Rはアルキル又はアリール基)により表される亜鉛ジチオホスフェートの極圧添加剤及び(D)0.5〜5重量%の、必須成分として植物油及び脂肪の少なくとも1つから構成される油性試薬を含み、成分(B)対成分(A)の重量比は0.04〜0.5である。
GB−A−2255103はこの中で記載された組成物は振動を調節するが、この観点において実験的な測定は与えられておらず、そして実験は摩擦及び摩耗試験を意図するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、有利な低ノイズ特性を有する亜鉛ジチオホスフェート含有グリース組成物を製造し得ることが、今般見出された。
本発明は、鉱物及び/又は合成起源の基油、増稠剤、亜鉛ジチオホスフェート、及び無灰ジチオカルバメートを含むグリース組成物のノイズ減少グリース組成物としての使用を提供する。
【0009】
本発明において使用されるグリース組成物は、好ましくは全組成物を基準として少なくとも75重量%の基油を含む。
本発明において使用されるグリース組成物中で使用される基油は、典型的には油潤滑について通常選択される基油と同じであることができる。基油は鉱物及び/又は合成起源であることができる。鉱物起源の基油は鉱油、例えば溶媒精製又は水素化法により製造されるものであることができる。合成起源の基油は、典型的にはC10〜C50炭化水素ポリマーの混合物、例えばアルファオレフィンの液体ポリマー、エステル型合成油又はエーテル型合成油である。それらは、それらの混合物であってもよい。好ましくは、基油は鉱物起源のものである。
便利に使用することができる鉱油の例としては、Royal Dutch/Shell Groupの構成会社(member companies of the Royal Dutch/Shell Group)により「HVI」、「MVIN」又は「HMVIP」の名称で販売されるものを含む。ポリアルファオレフィン及びRoyal Dutch/Shell Groupの構成会社により「XHVI」(商標)の名称で販売されるような蝋の水素化異性化により製造される型の基油を使用することもできる。
【0010】
本発明において使用されるグリース組成物は、全組成物を基準にして、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは5〜20重量%、最も好ましくは5〜12重量%の増稠剤を含む。
本発明で使用されるグリース組成物において使用することができる増稠剤は、単純(simple)増稠剤、例えばリチウム、カルシウム、ナトリウム、アルミニウム及びバリウムの脂肪酸石鹸;複合(complex)増稠剤、すなわち複合剤をさらに含む単純増稠剤;粘土;及び尿素型化合物を含む。
増稠剤として尿素型化合物を使用する場合は、それはモノ−、ジ−、トリ−及びテトラ−尿素化合物又は尿素含有化合物、例えば尿素−ウレタン及び/又は尿素−イミド化合物であることができる。
【0011】
本発明の好ましい増稠剤は石鹸増稠剤であり、より好ましくはリチウム石鹸増稠剤である。リチウム石鹸増稠剤とは、単純及び複合リチウム石鹸増稠剤を意味する。
単純リチウム石鹸はC10-24 、好ましくはC15-18 飽和又は不飽和脂肪酸或いはそれらの誘導体から誘導される。好ましい脂肪酸誘導体の一つは水素化ひまし油であり、それは12−ヒドロキシステアリン酸のグリセリドである。12−ヒドロキシステアリン酸が特に好ましい脂肪酸である。
複合リチウム石鹸増稠剤は、単純リチウム石鹸内に複合剤が導入された増稠剤である。一般的に使用される複合剤は、安息香酸又はホウ酸或いはリチウムボレートのような、低〜中分子量酸又は二塩基酸或いはその塩の一つである。
本発明において使用される最も好ましい増稠剤は、単純リチウム石鹸増稠剤である。
【0012】
本発明において使用されるグリース組成物は、全組成物を基準にして、好ましくは0.1〜5重量%;より好ましくは0.1〜2重量%及び最も好ましくは0.2〜1重量%の亜鉛ジチオホスフェートを含む。
グリース組成物は単一の亜鉛ジチホスフェート或いは2種又はそれ以上の亜鉛ジチホスフェートの組み合わせを含み、その又はそれぞれの亜鉛ジチホスフェートは、亜鉛ジアルキル−、ジアリール−、アルキルアリール−ジチホスフェートから選択される。本発明の好ましい亜鉛ジチホスフェートは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートである。本発明で使用される亜鉛ジアルキルジチオホスフェートのアルキル部位は、直鎖又は分岐鎖であり、そして好ましくは1〜20個の炭素を含み、より好ましくは8〜20個の炭素原子を含み、そして最も好ましくは8〜12個の炭素原子を含む。好ましい亜鉛ジチホスフェートの例は、Rhein Chemie Rheinau GmbHにより「Additin RC 3180」の名称で入手できる2−エチルヘキシル亜鉛ジチオホスフェート及びRhein Chemie Rheinau GmbH.により「Additin RC 3212」の名称で入手できる長鎖亜鉛ジチオホスフェートである(「Additin」はRhein Chemie Rheinau GmbH.の商標)。
【0013】
本発明において使用されるグリース組成物は、全組成物を基準にして、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%、最も好ましくは0.2〜1重量%の無灰ジチオカルバメートを含む。
グリース組成物は、単一の無灰ジチオカルバメート或いは2種又はそれ以上の無灰ジチオカルバメートの組み合わせを含み、その又はそれぞれの無灰ジチオカルバメートは、無灰ジアルキル−、ジアリール−又はアルキルアリール−ジチオカルバメートから選択される。本発明の好ましい無灰ジチオカルバメートは、無灰ジアルキルジチオカルバメートであり、より好ましくはメチレン−ビス−ジアルキルジチオカルバメートである。本発明において使用される無灰ジアルキルジチオカルバメートのアルキル部位は、直鎖又は分岐鎖であり、そして好ましくは1〜12個の炭素を含み、最も好ましくは2〜6個の炭素原子を含む。好ましい無灰ジチオカルバメートの例としては、Rhein Chemie Rheinau GmbHにより「Additin RC 6340」の名称で入手できる
メチレン−ビス−ジブチル−ジチオカルバメートである。
【0014】
本発明において使用されるグリース組成物は、さらに慣用のグリース添加剤を、当業界で通常使用される量で含むことができ、酸化耐久性、粘着性、極圧特性、腐食抑制のような所定の所望の特性をグリースに授与し、そして摩擦及び摩耗を減じることができる。
好適な添加剤は、1種又はそれ以上の極圧/抗摩耗剤、例えばモリブデンジチオホスフェート、ボレート、置換チアジアゾール、例えばジアルコキシアミンと置換有機ホスフェートとの反応により作成される重合窒素/燐化合物、アミンホスフェート、天然又は合成起源の硫化鯨油、硫化ラード、硫化エステル、硫化脂肪酸エステル、及び類似の硫化物質、例えば式(OR)3 P=Oの有機ホスフェート(式中Rはアルキル、アリール又はアラルキル基を示す)、及びトリフェニルホスフォロチオネート;カルシウム又はマグネシウムアルキルサリチレート、アルキルアリールスルホネート又はアルキルスルホネートのような1種又はそれ以上の塩基側(overbased)金属含有洗浄剤;ポリイソブテニルコハク酸無水物とアミン又はエステルとの反応生成物のような、1種又はそれ以上の無灰分散剤添加剤;封鎖フェノール又はアミン、例えばフェニルアルファナフチルアミンのような1種又はそれ以上の抗酸化剤;亜鉛ナフテネートのような1種又はそれ以上の抗錆添加剤;1種又はそれ以上の摩擦改質剤;1種又はそれ以上の
粘度指数改良剤;1種又はそれ以上の流動点低下剤;並びに1種又はそれ以上の
粘着剤がある。
【0015】
用語「アリール」が上記使用されているが、アリール基は好ましくはフェニル基である;用語「アラルキル」が上記使用されているが、アラルキル基は好ましくはベンジル基である。
本発明において使用されるグリース組成物は、亜鉛ジチオホスフェート、無灰ジチオカルバメート及びさらに基油中に導入する任意の添加剤をプレミックスし、そしてその混合物を基油及び増稠剤を含むベースグリースに加え、又はそれぞれの添加剤をベースグリース中に個々に加えることにより製造することができる。これは高温又は低温混合後、続けてホモゲナイズにより添加剤成分の均一な分散を確保することにより達成できる。
本発明において使用されるグリース組成物は優れた低ノイズを示し、軸受の適用において非常に効果的であることが見出された。従って、本発明はさらに本発明に関するグリース組成物の使用を提供し、軸受の適用においてノイズを減じる。
【実施例】
【0016】
本発明は、以下の例証となる実施例によりさらに理解されるであろう。実施例において、種々の添加剤を以下に示す。:
(a)ZnDTP(1)は、Rhein Chemie Rheinau GmbHより「Additin RC 3180」の名称で入手できる2−エチルヘキシル亜鉛ジチオホスフェートである。
(b)ZnDTP(2)は、Rhein Chemie Rheinau GmbHより「Additin RC 3212」の名称で入手できる長鎖亜鉛ジアルキルジチオホスフェートである。
(c)無灰DTPは、Rhein Chemie Rheinau GmbHより「Additin RC 6340」の名称で入手できるメチレン−ビス−ジブチルジチオカルバメート。
(d)MoDTCは、R.T.Vanderbilt Company Inc.より「Molyvan 822」の名称で入手できる鉱油中50/50w/w溶液の形態の、モリブデンオキシサルファイドジチオカルバメート。
【0017】
基油
1.12重量%LiOH.H2 Oのスラリーと水とを、5部の水に対し1部のLiOH.H2 Oの割合で、75mm2 /sの粘度を有する低温パラフィン性基油中の9.15重量%水素化ひまし油脂肪酸(Royal Dutch/Shell Groupの構成会社により「HMVIP 105」の名称で入手できる)に加え、そして封止したオートクレーブ内で混合物を150℃に加熱した。蒸気をベントオフし、加熱を220℃まで続け、1分あたり1〜3℃の速度で反応塊を冷却した、そして生成物をホモゲナイズして約8重量%のLi12−ヒドロキシステアレート及び92重量%のパラフィン性基油を含む基油を生じた。
本発明の実施例のグリース及び比較例のグリースを、基油中に添加剤を導入することにより得た。
【0018】
ノイズ試験手順
グリース試料を以下の手順によりノイズ試験にかけた。DIN623において記載されたような608型の新しい軸受を、分析品質のn−ヘキサン中で入念に洗浄し、そしてそれから乾燥キャビネット内で乾燥させた。冷却後即座に、軸受にグリースを充填した。軸受保持器の外側からグリースを除去した後、それぞれの軸受はおよそ0.31〜0.35gのグリースを含んだ。
ノイズ測定は、スリーブ軸受取付け精密シャフト(sleeve−bearing−mounted precision shaft)を使用して、軸受台座上で測定した。試験する軸受をシャフトの軸上に配置した;そして外側軸受リングを適所に配置しかつ軸方向に荷重をかけた、軸方向の荷重の程度は調節可能である。それからシャフトを、柔軟な運転ベルトを通して動く電気モーターにより、前もって選択した回転速度に達するまで回転させた。軸受が回転するとそれは振動し、そしてこれらの振動を、磨かれたプローブチップを有する加速度検出器(acceleration sensor)により半径方向に記録した。加速度検出器は滑動台にフレキシブルに取り付けられ、その重量が検出器を軸受上に押しつけている。加速度信号はBruel&Kjaer GmbH.により提供されるような2626電荷増幅器にてプレアンプされ、完全な(integral)Microstar DAP 2400/e4信号プロセッサ(「Microstar」は商標)を有するA/Dコンバータを装備したIBM−コンパチブル486/50 PCでプレフィルタし、そしてそれから処理をした。処理された加速度信号から、50〜20000Hzの周波数において生じる振動についての平均ラインを得た。このデータから、それぞれの試験で生成したノイズの量をキャリブレーショングリース及び先の測定のものと比較することができる。ノイズにおける差異はデシベル(dB)レベルにおける差異として表現した。
以下の例においては、1800rpmのシャフト回転速度と14ニュートンの重量を適用した。ノイズ測定は3秒間のウォーミングアップ時間に続いて、7秒間の時間行った。
【0019】
実施例1〜6及び比較例A
実施例1〜6のグリース組成物は、亜鉛ジチオホスフェートと無灰ジチオカルバメートとをパラフィン性基油中で混合し、そして得られた混合物を単純リチウム石鹸ベースグリース中に加えることにより製造した。製造されたグリース成分を表1に示す。
比較例Aのグリース組成物は、実施例1〜6と同様の方法で製造したが、無灰ジチオカルバメートのかわりにモリブデンジチオカルバメートを使用した。
前記グリースを上記手順のノイズ試験にかけ、結果をキャリブレーショングリースのものと比較した。キャリブレーショングリースと実施例1〜6及び比較例Aの挙動を、25℃で3〜5個の軸受で、平均測定を使用して試験した。実施例1〜6のグリース組成物とキャリブレーショングリースとのノイズの差異を表1に表す。デシベルレベル(dB)の負の変化は、キャリブレーショングリースと比較した場合のノイズレベルの減少を示す。同様に、比較例Aのグリース組成物とキャリブレーショングリースとのノイズの差異も表1に示す。キャリブレーショングリースは、Royal Dutch/Shell Groupの構成会社より「Alvania RS」(「Alvania」は商標)の商品名で入手できる良好なノイズ挙動を有することが公知である市販入手可能な潤滑グリースで
ある。
【0020】
表1に示されるように、驚くべきことに実施例1〜6のグリース組成物は、キャリブレーショングリースよりも低いノイズ記録を示した。
表1から分かるように、実施例3のグリース組成物は、比較例Aのモリブデンジチオカルバメートグリースよりも優秀なノイズ減少を示すことが、さらに理解できる。

【0021】
【表1】

【0022】
実施例7〜10及び比較例B〜G
グリース組成物7〜10及び比較例B〜Gを、添加剤を直接的に単純リチウム石鹸グリース中に導入することにより製造した。製造されたグリースの成分を表2に示す。
グリース組成物7〜10及び比較例B〜Gを高温操作試験にかけた。ここで試験グリースを含有する軸受を25℃でノイズ試験にかけ、それらのグリースについてキャリブレーション記録を与え、軸受をそれから100℃に加熱し、そして試験条件で3時間操作し、その後更なるノイズ測定を高温軸受に行い、そしてキャリブレーション測定からのデシベル(dB)レベルの増加を記録した。それから軸受を25℃に冷却し、そしてさらなるノイズ測定を冷却した軸受に行い、キャリブレーション測定との差異を再び記録した。結果を市販入手できるグリース「Alvania RS」を使用して、この工程にて得られる結果とともに表2に示す。
表2より、亜鉛ジチオホスフェートと無灰ジチオカルバメートとのグリース組成物中での組み合わせは、軸受が操作温度に加熱される場合に、亜鉛ジチオホスフェート又は無灰ジチオカルバメート単独のいずれか(比較例C+D)、又は市販入手できる低ノイズグリース「Alvania RS」と比べて、発生するノイズを減少させることが分かった。さらに、本発明のグリース組成物は、無灰ジチオカルバメートと組み合わせたモリブデンジチオカルバメート(比較例B)を含むグリースより優れた挙動を示し、そしてモリブデンジチオカルバメートと亜鉛ジチオホスフェート(比較例E)とを組み合わせた組成物と少なくとも同程度に効果的であることが理解できる。

【0023】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総量を基準として少なくとも75重量%の鉱物及び/又は合成起源の基油、5〜20重量%の増稠剤、0.1〜5重量%の亜鉛ジチオホスフェート、及び0.1〜5重量%の無灰ジチオカルバメートを含むグリース組成物のノイズ減少グリース組成物としての使用。
【請求項2】
前記増稠剤がリチウム石鹸増稠剤である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記増稠剤が単純リチウム石鹸増稠剤である請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記亜鉛ジチオホスフェートが、8〜12個の炭素原子を含むアルキル部位を有する亜鉛ジアルキルジチオホスフェートである請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記無灰ジチオカルバメートが無灰ジアルキルジチオカルバメートである請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記無灰ジチオカルバメートがメチレン−ビス−ジアルキルジチオカルバメートである請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記無灰ジチオカルバメートのアルキル部位が1〜12個の炭素原子を含む請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
軸受の適用におけるノイズ減少のための請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。

【公開番号】特開2012−246502(P2012−246502A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204530(P2012−204530)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2001−250615(P2001−250615)の分割
【原出願日】平成13年8月21日(2001.8.21)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】