説明

グリーンシート成形用キャリヤーフィルム

【課題】厚みが1μm程度の超薄膜グリーンシートであっても、厚み不良やピンホール等の欠点を抑制し、剥離力が適正であり、ハンドリング性に優れたグリーンシート成形用キャリヤーフィルムの提供。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも一方の面に、メチルビニルシロキサンとジメチルシロキサンとの共重合体である特定なベースポリマーと、メチルハイドロジェンシロキサンとジメチルシロキサンとの共重合体である特定な架橋剤と、平均粒径20nm以上90nm以下の不活性粒子とを構成成分として含む塗膜を硬化してなる離型層を有するキャリヤーフィルムであって、離型層における不活性粒子の含有量が、離型層の質量を基準として2質量%以上20質量%以下であって、離型層の厚みが5nm以上40nm以下であって、一方の面における10点平均粗さRzが10nm以上100nm以下であるグリーンシート成形用キャリヤーフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグリーンシート成形用キャリヤーフィルムとして用いられる離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動通信機器等の電子機器の小型化や低消費電力化に伴い、セラミックコンデンサーの使用量の伸びは著しいものがある。
セラミックコンデンサーは、セラミック粉体、溶剤、バインダーおよびその他の添加剤(可塑剤、分散剤、帯電防止剤等)を適当な機械的分散方法により均質に分散させたスラリーを、流延キャスト法によりキャリヤーフィルム上に塗布、乾燥してグリーンシートを成形し、かかるグリーンシート上に内部電極を印刷し、所定の大きさに裁断したものを積層、焼結し、外部電極を取り付けることにより製造される。
【0003】
このようなセラミックコンデンサーの製造に用いられるキャリヤーフィルムとしては、従来、ポリエステル等からなるフィルムに、シリコーン樹脂等からなる離型層が設けられた、所謂離型フィルムが用いられている。そして、かかる離型フィルムとしては、厚みが均一で、ピンホール等の欠点のないグリーンシートを生産性良く製造するために、表面性、および離型性に優れたものが要求されている。
【0004】
例えば、キャリヤーフィルムの表面が粗面であると、その上に形成されるグリーンシートに、キャリヤーフィルム表面の凹凸形状がそのまま転写してしまい、厚み不良やピンホール等の欠点となってしまう。また、離型性が不十分であると、例えば剥離力が軽すぎる場合は、製造工程の途中でグリーンシートが剥離して浮いてしまったり、他方、剥離力が重すぎる場合は、グリーンシートをキャリヤーフィルムから剥離する際に、グリーンシートが破断したり、凝集破壊してしまい、生産性に劣るものとなってしまう。
一方で、キャリヤーフィルムの表面を平滑にしすぎると、滑り性が低下し、巻取り性等のハンドリング性に劣るものとなってしまう。
【0005】
そこで、キャリヤーフィルム中の滑剤や異物を調整して、離型層表面における表面粗さや粗大突起を制御して、グリーンシートへの転写を抑制する技術や、離型層表面と反対面の表面粗さを調整して、適度なハンドリング性を付与する技術が、例えば特許文献1〜5等に開示されている。
また、グリーンシートとの離型性を制御する技術が、例えば特許文献6、7等に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−16163号公報
【特許文献2】特開平10−229027号公報
【特許文献3】特開2000−30972号公報
【特許文献4】特開2002−283322号公報
【特許文献5】特開2004−323766号公報
【特許文献6】特開2000−49060号公報
【特許文献7】特開2002−178454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年においては、セラミックコンデンサーのさらなる小型化が求められており、すなわちグリーンシートのさらなる薄層化が求められている。具体的には、グリーンシートの厚みとしては1μm程度が要求されており、そのような超薄膜グリーンシートを製造することができるキャリヤーフィルムが要求されている。
【0008】
本発明者らは、上記特許文献等に開示されているような従来の離型フィルムでは、厚みが3μm程度のグリーンシートの場合は、ピンホールの発生もなく、厚み不良もなく、良好なグリーンシートを製造することができるが、厚みが1μm程度の超薄膜グリーンシートの場合は、ピンホールの発生、および厚み不良により、要求される品質の超薄膜グリーンシートを製造することが困難であることに着目した。
【0009】
すなわち、超薄膜グリーンシートの場合は、キャリヤーフィルムの離型層表面における表面性を、従来よりもさらに優れたものとする必要があると同時に、反対面の表面性を優れたものとする必要がある。超薄膜グリーンシートにおいては、グリーンシートを成形した後に巻き取ると、キャリヤーフィルムの離型層表面と反対面の表面凹凸形状がグリーンシート表面に転写してしまい、グリーンシートに凹部が形成されて厚み不良となったり、凹部が深い場合はピンホールとなってしまったり、従来よりもさらに欠点が発生しやすい。このような欠点は、従来の厚みが比較的厚いグリーンシートでは問題とはなっていなかった。
【0010】
また、超薄膜グリーンシートの場合は、グリーンシートの破断が生じやすく、そのためキャリヤーフィルムの離型性を向上する必要がある。さらに、上記のごとく、離型層表面やその反対面における表面性の要求は高いものであるが、反面、さらなる生産性向上のために、ハンドリング性のさらなる向上が要求されている。
【0011】
本発明の第一の目的は、上記のような課題に対して、厚みが1μm程度の超薄膜グリーンシートであっても、厚み不良やピンホール等の欠点を抑制し、剥離力が適正であり、ハンドリング性に優れたグリーンシート成形用キャリヤーフィルムを提供することである。
【0012】
さらに、近年は電子機器に対するコストダウン要求が強く、当然コンデンサー(キャパシタ)などの電子部品にもコストダウン要求が強い。そのため、キャリヤーフィルムにスラリーを塗布、乾燥してグリーンシートを製造する工程において、スラリーの塗工速度が上がってきており、それに伴いキャリヤーフィルムの走行速度も上がってきている。かかる工程においては、ロール状に巻き取った状態のキャリヤーフィルムを、ロールから繰り出しながら使用するが、キャリヤーフィルムの走行速度が上がったことにより、繰り出し時の帯電が生じやすくなり、種々の問題を引き起こす。例えば、異物を巻き込み易くなったり、放電現象により離型層の表面状態が変化してスラリー塗工外観が悪化したり、放電現象により離型層がダメージを受け離型性を失いグリーンシートの剥離不良を生じたりする。従って、グリーンシート成形用キャリヤーフィルムとしては、ロールの繰り出し帯電の抑制が要求されている。
【0013】
本発明の第二の目的は、上記のような課題に対して、厚みが1μm程度の超薄膜グリーンシートであっても、厚み不良やピンホール等の欠点を抑制し、剥離力が適正であり、ハンドリング性に優れ、さらに繰り出し時の帯電を抑制したグリーンシート成形用キャリヤーフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、超薄膜グリーンシートの製造においては、従来のごとくキャリヤーフィルム中の滑剤の態様を調整するのみでは、グリーンシートにおける欠点抑制とハンドリング性とを両立させることは困難であるため、これらに加えて、特に離型層におけるベースポリマーとして、特定の共重合の態様を有するベースポリマーを用いることで上記課題を解決できることを新たに見出した。
【0015】
すなわち本発明は、基材フィルムの少なくとも一方の面に、下記式[化1]で表されるベースポリマーと、下記式[化2]で表される架橋剤と、平均粒径20nm以上90nm以下の不活性粒子とを構成成分として含む塗膜を硬化してなる離型層を有するキャリヤーフィルムであって、離型層における不活性粒子の含有量が、離型層の質量を基準として2質量%以上20質量%以下であって、離型層の厚みが5nm以上40nm以下であって、少なくとも一方の面における10点平均粗さRzが10nm以上100nm以下であるグリーンシート成形用キャリヤーフィルムである。
【0016】
【化1】

(式[化1]中、mおよびnはそれぞれ1以上の整数を表し、8≦n/m≦35の関係を満たす。R1は炭素数12以下のアルキレン基を表すか、直接結合を表す。)
【0017】
【化2】

(式[化2]中、pおよびqはそれぞれ1以上の整数を表す。R2およびR3は炭素数4以下のアルキル基を表す。)
【0018】
また、本発明における好ましい態様の1つは、基材フィルムの一方の面に離型層を有するキャリヤーフィルムであって、基材フィルムの他方の面における10点平均粗さRzが10nm以上100nm以下であることをさらに具備する態様である。
【0019】
また、本発明における他の好ましい態様の1つは、基材フィルムの両面に離型層を有するキャリヤーフィルムであって、少なくとも一方の面における10点平均粗さRzが10nm以上100nm以下であることをさらに具備する態様である。
【0020】
また、本発明においては、基材フィルムと離型層との間に、アクリル樹脂とポリエステル樹脂と滑剤粒子とを構成成分として含む易接着層を有する態様が好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、厚みが1μm程度の超薄膜グリーンシートの製造に用いられ、グリーンシートにおける厚み不良やピンホール等の欠点が抑制され、剥離力が適正であり、ハンドリング性に優れたグリーンシート成形用キャリヤーフィルムを提供することができる。
【0022】
本発明における好ましい態様によれば、これらに加えさらに繰り出し帯電が良好に抑制されたグリーンシート成形用キャリヤーフィルムを提供することができる。これにより、異物の巻き込みが低減し、グリーンシートのピンホール発生を抑制することができる。また放電現象による離型層表面状態の変化を抑制し、スラリーの塗工斑を抑制することができる。また、放電による引火を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のグリーンシート成形用キャリヤーフィルムは、後述する基材フィルムの少なくとも一方の面に、後述する離型層を有するものである。
ここで、本発明のグリーンシート成形用キャリヤーフィルムにおける第一の態様は、後述する基材フィルムの一方の面に、後述する離型層を有するものである。
また、本発明のグリーンシート成形用キャリヤーフィルムにおける第二の態様は、後述する基材フィルムの両面に、後述する離型層を有するものである。
以下、本発明を構成する各構成成分について説明する。
【0024】
<基材フィルム>
本発明における基材フィルムは、特に限定されないが、可撓性を有し、耐熱性を備えた熱可塑性樹脂フィルムが好ましく用いられる。かかる熱可塑性樹脂フィルムを構成するポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく例示される。中でも、ポリエステルが好ましい。
【0025】
本発明におけるポリエステルは、第1成分としてのジカルボン酸成分および第2成分としてのグリコール成分からなる。ジカルボン酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等を例示できる。特に、基材フィルムの機械特性に優れるという観点から、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。また、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を例示できる。特に、基材フィルムの剛直性に優れるという観点から、エチレングリコールが好ましい。
【0026】
上記のポリエステルは、さらに第3成分として、上記ジカルボン酸成分あるいはグリコール成分を共重合したコポリエステルであっても良い。かかる第3成分としては、第1成分として選択されたジカルボン酸成分あるいは第2成分として選択されたグリコール成分とは異なる共重合成分を選択することができる。また、第3成分としては、三官能以上の多価カルボン酸成分あるいはポリオール成分を含んでも良いが、その場合の共重合量は、得られるポリエステルが実質的に線状となる範囲(例えば5モル%以下、さらに好ましくは3モル%以下)で少量共重合したポリエステルであることが好ましい。以上のような本発明におけるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが特に好ましい。
【0027】
かかるポリエステルは常法により作ることができ、ポリエステルの固有粘度(オルトクロロフェノール中、35℃における固有粘度)が、0.45(単位:dl/g)以上であると、フィルムの剛性が高い等機械特性に優れるため好ましい。また、上記ポリエステルにおいては、表面性に優れたものとするために、実質的に粒子を含有していないか、極少量の粒子しか含有していない態様が好ましいが、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機微粒子、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、架橋アクリル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂等の耐熱性ポリマーからなる有機微粒子を含有し、滑り性を向上したり、透明性を調整したりすることもできる。このほかに、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンコポリマー、オレフィン系アイオノマーのような他の樹脂、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤等を必要に応じて含有することもできる。
【0028】
本発明における基材フィルムは、二軸延伸フィルムであることが好ましい。かかる二軸延伸フィルムは、従来から知られている方法で製造することができる。例えば、ポリエステルからなる二軸延伸フィルムの場合は、ポリエステルを乾燥後、Tm〜(Tm+70)℃の温度(ただし、Tmはポリエステルの融点(単位:℃)を表す。)で押出機にて溶融し、ダイ(例えばT−ダイ、I−ダイ等)から回転冷却ドラム上に押出し、20〜90℃で急冷して未延伸フィルムを製造し、次いで、該未延伸フィルムを(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tgはポリエステルのガラス転移温度(単位:℃)を表す。)で縦方向に2.5〜8.0倍、好ましくは2.9〜5.0倍、さらに好ましくは3.2〜4.0倍の倍率で延伸し、横方向に2.5〜8.0倍、好ましくは3.1〜5.2倍、さらに好ましくは3.4〜4.2倍の倍率で延伸し、必要に応じて180〜250℃の温度で1〜60秒間熱固定することにより製造できる。延伸倍率を上記数値範囲とすることによって、グリーンシートの厚み斑をより小さくすることができる。
【0029】
本発明における基材フィルムの厚みは、機械特性やハンドリング性に優れるという観点、およびグリーンシートの製造コストの観点から、好ましくは3μm以上250μm以下、さらに好ましくは5μm以上100μm以下、特に好ましくは10μm以上50μm以下である。
【0030】
本発明においては、基材フィルムにおける離型層を設ける面に、コロナ処理およびプラズマ処理からなる群より選ばれる少なくとも1つの処理を施すと、基材フィルムと離型層との密着性をさらに向上させることができるため好ましい。
【0031】
<易接着層>
本発明においては、アクリル樹脂とポリエステル樹脂と滑剤粒子とを構成成分として含む易接着層を、基材フィルムと離型層との間に有することが好ましい。
【0032】
本発明の第一の態様においては、易接着層を有することによって基材フィルムと離型層との接着性を向上することができる。また、離型層表面に微細な凹凸を形成することができ、取り扱い性(易滑性)をより向上させることができる。かかる易接着層は、基材フィルムにおいて離型層が形成される側の一方の面にあれば上記のような作用効果を奏するが、両面にあることが好ましい。基材フィルムの両面に易接着層を有することによって、取り扱い性をさらに向上させることができる。
【0033】
本発明の第二の態様においては、易接着層を有することによって基材フィルムと離型層との接着性を向上することができる。また、離型層表面に微細な凹凸を形成することができ、取り扱い性(易滑性)をより向上させることができる。また、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。かかる易接着層は基材フィルムの少なくとも一方の面にあれば上記のような作用効果を奏するが、両面にあることが好ましい。基材フィルムの両面に易接着層を有することによって、取り扱い性をさらに向上させることができ、また離型層の両表面の帯電列がより近くなるためか、繰り出し帯電をさらに好適に抑制することができる。
【0034】
(アクリル樹脂)
本発明におけるアクリル樹脂としては、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸、イタコン酸、アクリル酸ソーダ等のアクリル系モノマーの単独重合体や共重合体、あるいはこれらのモノマーと他の不飽和モノマーとの共重合体を挙げることができる。他の不飽和モノマーとしては、例えばスチレン、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸ソーダ、アクリルニトリル等を挙げることができる。
【0035】
本発明においては、アクリル樹脂がヒドロキシ基を有することが好ましく、これにより繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。アクリル樹脂がヒドロキシ基を有するには、ヒドロキシ基を有するアクリル系モノマーを共重合すればよい。具体的には、例えば2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシ基を有するアクリルアミドやメタクリルアミドを含有することが好ましく、その共重合量は、好ましくは1〜10モル%であり、繰り出し帯電をさらに好適に抑制することができる。
【0036】
かかるアクリル樹脂は前記モノマーを常法によって重合させることで製造することができる。特に水性液(水溶液や水分散液)として製造することが、取り扱い性および環境の観点から好ましい。
【0037】
(ポリエステル樹脂)
本発明におけるポリエステル樹脂は、多価カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と多価ヒドロキシ化合物とを常法によって反応させることで製造することができる。その際、ポリマーに親水性を付与する目的で親水性基を有する化合物を反応させることができる。本発明におけるポリエステル樹脂は、水溶性ポリエステル樹脂または水分散性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0038】
多価カルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−Na−スルホイソフタル酸、トリメリット酸アンモニウム、アジピン酸、セバシン酸、トリメシン酸等を挙げることができる。
【0039】
多価ヒドロキシ化合物としては、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、p−キシリレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、ポリアルキレンオキシド、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールプロピオン酸ソーダ等を挙げることができる。
【0040】
上記多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物の中で、親水性基を有し、ポリマーに親水性を付与する化合物を少なくとも一種併用することで、水溶性ないし水分散性のごとく水性ポリエステル樹脂を得ることができる。本発明においては、かかる水性ポリエステル樹脂を用いることにより、繰り出し帯電をより好適に抑制することができるため好ましい。親水性を付与する化合物としては、5−Na−スルホイソフタル酸が好ましく、その共重合量は全多価カルボン酸成分100モル%に対して好ましくは1〜10モル%、さらに好ましくは1〜5モル%であり、繰り出し帯電をさらに好適に抑制することができる。
ポリエステル樹脂の数平均分子量は5,000〜100,000であることが好ましい。
【0041】
(滑剤粒子)
本発明における滑剤粒子は、平均粒径が0.01〜0.1μm、好ましくは0.02〜0.05μmの滑剤粒子であることが好ましい。平均粒径を上記数値範囲とすることによって、離型層表面に適度な凹凸を形成し、取り扱い性をより向上させることができる。また、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。平均粒径が小さすぎる場合は、易滑性付与作用が不足する傾向にあり、他方大きすぎる場合は、易接着層からの滑剤粒子の脱落が生じやすくなる傾向にある。滑剤粒子としては、有機系粒子でも無機系粒子でもよい。有機系粒子としては、例えば架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、架橋ポリスチレン−アクリル樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂等からなる滑剤粒子が挙げられる。無機系粒子としては、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、炭酸カルシウム等からなる滑剤粒子が挙げられる。
【0042】
本発明において、アクリル樹脂とポリエステル樹脂との混合比率は、質量比で80/20〜20/80が好ましく、60/40〜40/60がさらに好ましい。混合比率が上記数値範囲にあると、易接着性をより向上させることができる。また、繰り出し帯電をより抑制することができる。また、滑剤粒子の含有量は、易接着層の質量に対して、5〜30質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましく、離型層表面に適度な凹凸形状を形成しやすくなり、取り扱い性により優れるとともに、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。
【0043】
(易接着層の形成方法)
本発明における易接着層の形成は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、および滑剤粒子を含む水性塗液を基材フィルムの少なくとも片面に塗布し、乾燥させることで行う。アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、および滑剤粒子の混合は、任意の方法で行うことができるが、それぞれの水性液を調製し、水性液を混合するのが簡便で好ましい。また、該水性塗液には所望により、帯電防止剤、界面活性剤等を添加することができる。水性塗液の固形分濃度は1〜20質量%、特に1.5〜6質量%が塗布斑の観点から好ましい。また、塗布方法は任意に選ぶことができ、例えばロールコート法、グラビアコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法等の方法を適用することができる。塗布量は任意に決め得るが、易接着層の厚みが0.001〜2μmとなる量が好ましく、0.01〜0.05μmとなる量がさらに好ましく、易接着層の厚みをこのような範囲とすることによって適度な表面凹凸形状を形成し、取り扱い性をより向上させることができ、また繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。
【0044】
水性塗液を塗布する基材フィルムは、二軸延伸フィルムでもよいが、インラインコーティング法、すなわち塗布後更に延伸処理を行う方法が適用できる未延伸フィルム、一軸延伸フィルム等が好ましい。例えば、一軸延伸フィルムに水性塗液を塗布し、次いで乾燥、延伸、熱固定処理を行って易接着層を有する二軸延伸フィルムとするのが好ましい。
【0045】
<離型層>
本発明における離型層は、後述するベースポリマー、架橋剤、および不活性粒子を構成成分として含む塗膜を硬化させてなるものである。
【0046】
(ベースポリマー)
本発明におけるベースポリマーは、下記式[化3]で表されるような、メチルビニルシロキサン(以下、MVSと省略する場合がある。)とジメチルシロキサン(以下、DMSと省略する場合がある。)との共重合体である。
【0047】
【化3】

【0048】
上記式[化3]中、mおよびnはそれぞれ1以上の整数を表すが、本発明におけるベースポリマーは、MVSユニット1モルに対して、8モル以上35モル以下のDMSユニットが共重合した態様であることが必要であり、すなわち上記式[化3]におけるmおよびnが、8≦n/m≦35を満たすことが必要である。
【0049】
MVSユニットとDMSユニットとの共重合比率(n/m)を上記数値範囲とすることによって、離型層が適度な硬さを有するようになるため、ハンドリング性および離型性に優れたものとなる。また、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。このように、本発明においては離型層が適度な硬さを有することが重要である。すなわち、このような態様とすることによって、ハンドリング性を向上させることができるため、ハンドリング性を向上させるために過剰の粒子を添加する必要がなく、そのため、優れたハンドリング性と優れた表面性とを同時に達成することができる。また、帯電防止剤のような成分を添加しなくても、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。n/mの値が8未満の場合は、MVSユニットの共重合比が高すぎるため、剥離力が高くなりすぎる傾向にあり、離型性に劣るものとなる。他方、n/mの値が35を超える場合は、MVSユニットの共重合比が低すぎるため、離型層が柔らかくなる傾向にあり、ブロッキングが生じやすくなる傾向にあり、ハンドリング性に劣るものとなる。また、離型層の強度が低くなる傾向にある。このような観点から、n/mの値は、好ましくは10以上25以下、さらに好ましくは12以上20以下、特に好ましくは14以上18以下である。
【0050】
また、上記式[化3]中、mが50〜1000、好ましくは100〜800、さらに好ましくは200〜700、特に好ましくは400〜600、nが400〜15000、好ましくは2000〜12000、さらに好ましくは5000〜10000、特に好ましくは7000〜9000の範囲であると、架橋反応が好適に進行し、離型層の強度が向上するため好ましい。また、離型層の硬さがより適度となる傾向にあり、離型性およびハンドリング性により優れたものとなる。また、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。さらに、m+nの値が1000〜15000、好ましくは4000〜12000、さらに好ましくは6000〜10000、特に好ましくは7000〜9000の範囲であると、離型層の強度がさらに向上するため好ましい。また、離型層の硬さがさらに適度となる傾向にあり、離型性およびハンドリング性にさらに優れたものとなる。また、繰り出し帯電をさらに好適に抑制することができる。なお、上記式[化3]は、ブロック共重合体である態様を意味しているのではなく、これらは単にそれぞれのユニットの合計数がm、nであることを示しているにすぎないと解すべきである。したがって、上記式[化3]におけるポリシロキサンは、ランダム共重合体であってもよく、またブロック共重合体であってもよい。
【0051】
上記式[化3]中、R1は炭素数12以下のアルキレン基を表すか、あるいは直接結合を表す。R1が炭素数12以下のアルキレン基を表す場合は、かかる炭素数が多すぎると、離型層が柔らかくなる傾向にあり、強度、離型性、およびハンドリング性に劣る傾向にある。また、繰り出し帯電を抑制しにくくなる傾向にある。このような観点から、炭素数は、さらに好ましくは8以下、特に好ましくは4以下である。本発明におけるベースポリマーは、R1が直接結合を表す態様、すなわち、アルキレン基を有さず、Siとビニル基が直接結合している態様が最も好ましい。
【0052】
(架橋剤)
本発明における架橋剤は、下記式[化4]で表されるような、メチルハイドロジェンシロキサン(以下、MHSと省略する場合がある。)とジメチルシロキサンとの共重合体である。
【0053】
【化4】

【0054】
上記式[化4]中、pおよびqはそれぞれ1以上の整数を表すが、pが5〜100、好ましくは10〜70、さらに好ましくは15〜50、特に好ましくは20〜30、qが5〜150、好ましくは10〜100、さらに好ましくは20〜70、特に好ましくは30〜40の範囲であると、架橋反応が好適に進行し、離型層の強度が向上するため好ましい。また、離型層の硬さがより適度となる傾向にあり、離型性およびハンドリング性により優れたものとなる。また、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。さらに、p+qの値が15〜200、好ましくは25〜150、さらに好ましくは40〜100、特に好ましくは50〜80の範囲であると、離型層の強度がさらに向上するため好ましい。また、離型層の硬さがさらに適度となる傾向にあり、離型性およびハンドリング性にさらに優れたものとなる。また、繰り出し帯電をさらに好適に抑制することができる。なお、上記式[化4]は、ブロック共重合体である態様を意味しているのではなく、これらは単にそれぞれのユニットの合計数がp、qであることを示しているにすぎないと解すべきである。したがって、上記式[化4]におけるポリシロキサンは、ランダム共重合体であってもよく、またブロック共重合体であってもよい。
【0055】
また、上記式[化4]中、R2およびR3は炭素数4以下のアルキル基を表す。かかる炭素数が多すぎる場合は、離型層が柔らかくなる傾向にあり、強度、離型性、およびハンドリング性に劣る傾向にある。また、繰り出し帯電を抑制しにくくなる傾向にある。このような観点から、炭素数は、さらに好ましくは2以下、特に好ましくは1以下である。
【0056】
上記式[化4]中、MHSユニットとDMSユニットとの共重合比率(p/q)は0.5以上が好ましい。p/qの値を上記数値範囲とすることによって、離型層の硬さがより適度となる傾向にあり、離型性およびハンドリング性により優れたものとなる。また、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。
【0057】
本発明における離型層は、上記式[化3]で表されるベースポリマー、および上記式[化4]で表される架橋剤、および後述する不活性粒子を構成成分として含む塗膜を硬化させてなるものであるが、かかる塗膜において、ベースポリマーと架橋剤との配合割合は、ベースポリマーにおけるMVSユニット1モルに対して、架橋剤におけるMHSユニットが、1.2モル以上3.0モル以下となる範囲が好ましい。配合割合を上記数値範囲とすることによって、離型性をより優れたものとすることができる。また、シリコーン成分の移行を抑制することができる。また、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。上記配合割合が小さすぎる場合は、すなわち、MVSユニットに対してMHSユニットが少なすぎる場合は、硬化不良を生じやすくなる傾向にあり、塗膜の強度が低くなる傾向にあり、シリコーン成分の移行が増加する傾向にある。他方、含有割合が大きすぎる場合は、すなわち、MVSユニットに対してMHSユニットが多すぎる場合は、架橋反応に用いられなかった残存ハイドロジェンシランが増加する傾向にあり、経時で重剥離化しやすくなる傾向にある。このような観点から、含有割合は、ベースポリマーにおけるMVSユニット1モルに対して、架橋剤におけるMHSユニットが、1.4モル以上2.5モル以下となる範囲がさらに好ましく、1.5モル以上2.0モル以下となる範囲が特に好ましい。
【0058】
上記のようなベースポリマー、および架橋剤としては、本発明の要件を満たすものであれば、従来公知の方法により製造したものを用いることもできるし、既製品をそのまま用いることもできる。また、これらがあらかじめ混合されているシリコーン離型剤を用いることもでき、既製品としては、例えば東レ・ダウコーニング社製、商品名:SRX345、信越化学工業製、商品名:KS−3601、モメンティブ社製、商品名:XS56−A5729、XS56−A5731等を挙げることができる。
【0059】
(不活性粒子)
本発明における離型層は、不活性粒子を含有する。
かかる不活性粒子の平均粒径は、20nm以上90nm以下である。平均粒径を上記数値範囲とすることによって、ハンドリング性に優れたまま、離型層上に形成されるグリーンシートにおける厚み不良やピンホール等の欠点を抑制することができる。平均粒径が小さすぎる場合は、グリーンシートにおける欠点は減少する傾向にあるが、ハンドリング性に劣るものとなる。他方、平均粒径が大きすぎる場合は、ハンドリング性は向上する傾向にあるが、グリーンシートにおける欠点が増加し、厚み不良やピンホールが生じやすくなる。このような観点から、不活性粒子の平均粒径は、好ましくは30nm以上80nm以下、さらに好ましくは40nm以上60nm以下である。
【0060】
また、かかる不活性粒子の含有量は、離型層の質量を基準として2質量%以上20質量%以下である。含有量を上記数値範囲とすることによって、ハンドリング性と、上記のようなグリーンシートの欠点抑制とのバランスに優れる。含有量が少なすぎる場合は、ハンドリング性に劣る傾向にある。他方、含有量が多すぎる場合は、欠点が増加する傾向にある。このような観点から、不活性粒子の含有量は、離型層の質量を基準として、好ましくは3質量%以上18質量%以下、さらに好ましくは4質量%以上10質量%以下、特に好ましくは4質量%以上6質量%以下である。
【0061】
本発明における不活性粒子は、粒径分布がシャープであることが好ましい。具体的には、粒径分布の急峻度を表す相対標準偏差が0.5以下であることが好ましい。相対標準偏差が小さくなり、粒径分布が急峻であると、離型層表面における突起の高さが均一となる。これによりハンドリング性の向上効果を高くすることができる。また、離型層における粗大粒子や粗大突起が減少する傾向にあり、グリーンシートにおける欠点がより減少する傾向にあり、より好ましいグリーンシートを得ることができる。他方、相対標準偏差が大きすぎると、粗大粒子や粗大突起が増加する傾向にあり、グリーンシートにおける欠点がより増加する傾向にある。このような観点から、不活性粒子の粒径分布を表す相対標準偏差は、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.2以下である。
【0062】
また、本発明における不活性粒子は、その形状が実質的に球状、もしくは真球状である態様が好ましい。そのような態様とすることで、ハンドリング性の向上効果を高くすることができる。具体的には、粒子の球状の度合いを表す粒径比が1.0以上1.3以下であることが好ましい。粒径比は、さらに好ましくは1.0以上1.2以下、特に好ましくは1.0以上1.1以下である。
【0063】
以上のような不活性粒子は、有機粒子であってもよいし、無機粒子であってもよい。不活性有機粒子としては、例えば架橋ポリスチレン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン−アクリル樹脂粒子、架橋ジビニルベンゼン−アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル樹脂粒子、ポリイミド樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等が挙げられる。また、不活性無機粒子としては、(1)二酸化ケイ素(水和物、ケイ砂、石英等を含む);(2)各種結晶形態のアルミナ;(3)SiO成分を30質量%以上含有するケイ酸塩(例えば非晶質もしくは結晶質の粘土鉱物、アルミノシリケート(焼成物や水和物を含む)、温石綿、ジルコン、フライアッシュ等);(4)Mg、Zn、Zr、およびTiの酸化物;(5)Ca、およびBaの硫酸塩;(6)Li、Ba、およびCaのリン酸塩(1水素塩や2水素塩を含む);(7)Li、Na、およびKの安息香酸塩;(8)Ca、Ba、Zn、およびMnのテレフタル酸塩;(9)Mg、Ca、Ba、Zn、Cd、Pb、Sr、Mn、Fe、Co、およびNiのチタン酸塩;(10)Ba、およびPbのクロム酸塩;(11)炭素(例えばカーボンブラック、グラファイト等);(12)ガラス(例えばガラス粉、ガラスビーズ等);(13)Ca、およびMgの炭酸塩;(14)ホタル石;(15)スピネル型酸化物等が挙げられる。これらのうち、滑り性および耐削れ性により優れるという観点から、不活性無機粒子であることが好ましく、中でも炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子が好ましく、シリカ粒子が特に好ましい。これらは、前述の通り球状であることが好ましく、滑り性および耐削れ性にさらに優れるという観点から、球状シリカ粒子が特に好ましい。
【0064】
(白金系触媒)
本発明においては、離型層は、白金系触媒を含有することが好ましい。白金系触媒は、ベースポリマーにおけるMVSと、架橋剤におけるMHSとの付加重合を促進するための触媒であり、かかる付加重合に用いられる触媒として公知のものが使用できる。このような白金系触媒としては、例えば塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液やアルデヒド溶液、塩化白金酸の各種オレフィンまたはビニルシロキサンとの錯体等が挙げられる。
【0065】
かかる白金系触媒の添加量は、通常用いられる量であればよいが、ベースポリマー100質量部に対して、白金金属の量が、好ましくは1〜1000ppm、さらに好ましくは10〜300ppmとなるような添加量であると、離型層の強度が高くなり、かつ経済的にも優れる。
【0066】
<製造方法>
本発明においては、ベースポリマーと、架橋剤と、不活性粒子と、任意に添加してもよい白金系触媒とを構成成分として含む塗液を、基材フィルムに塗布し、得られた塗膜を硬化することによって離型層を形成する。
【0067】
かかる塗液は、上記のベースポリマー、架橋剤、不活性粒子、任意に添加しても良い白金系触媒を、攪拌羽根等を用いて均一に混合することにより製造できる。各成分をより均一に混合するために、適当な有機溶剤を用いて希釈したり、溶解したり、分散したりしたものを用いてもよい。また、塗布する際の塗液としては、混合により得られた塗液をそのまま用いても良いが、適当な有機溶剤で希釈し、適度な粘度となるように調整した塗液を用いることが、均一で、外観が良好な離型層が得られるという観点から好ましい。
【0068】
塗液を基材フィルムに塗布するための塗布方法としては、公知の任意の塗布方法が適用でき、例えばグラビアロールコート法、リバースロールコート法、ダイコート法、キスコート法、リバースキスコート法、オフセットグラビアコート法、マイヤーバーコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法、ドクターブレード法等を単独または組み合わせて適用することができる。また、ハジキなど塗布外観の安定性を向上させる目的で、塗液には若干量の界面活性剤を含有させることができる。
【0069】
塗液を基材フィルムに塗布後、乾燥、および硬化する条件としては、100℃以上180℃以下の温度で10秒以上120秒以下の時間加熱することが好ましく、120℃以上160℃以下の温度で20秒以上90秒以下の時間加熱することがさらに好ましく、130℃以上150℃以下の温度で30秒以上60秒以下の時間加熱することが特に好ましい。上記のごとく乾燥条件を採用することによって、離型層の強度をより高くすることができる。また、基材フィルムと離型層との密着性をより高くすることができる。また、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。
【0070】
<離型層の厚み>
本発明における離型層の厚みは、5nm以上40nm以下である。本発明においては、離型層が含有する不活性粒子の平均粒径を本発明の規定する数値範囲とすると同時に、厚みを上記数値範囲とすることによって、離型層表面における不活性粒子による突起の高さが均一となり、それによって適度な滑り性を得ることができ、ハンドリング性に優れると同時に、離型層上に形成されるグリーンシートにおける厚み不良やピンホール等の欠点を抑制することができる。さらに、厚みが上記数値範囲にあると、離型性に優れる。また、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。厚みが薄すぎる場合は、剥離力が増大する傾向にあり、離型性に劣る。さらに、離型層が含有する不活性粒子が脱落しやすくなる傾向にある。他方、厚みが厚すぎる場合は、離型層の表面において、不活性粒子による突起が形成されにくい傾向にある。また、突起の態様が同等だとしても、滑り性に劣る傾向にあり、ハンドリング性に劣る傾向にある。また、剥離力が低くなる傾向にあり、剥離力が低すぎると、グリーンシートを剥離する前の搬送工程において、グリーンシートがキャリヤーフィルムから剥離してしまう等の問題を生じる場合がある。このような観点から、シリコーン離型層の厚みは、好ましくは8nm以上25nm以下、さらに好ましくは10nm以上20nm以下である。
なお、離型層の厚みは、塗液を塗布する際の塗液の濃度およびウェットの塗布量を適宜調整する等、公知の任意の方法によって調整することができる。
【0071】
<キャリヤーフィルムの特性>
(表面粗さ)
本発明のグリーンシート成形用キャリヤーフィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有するキャリヤーフィルムであるが、少なくとも一方の面における10点平均粗さRzは、10nm以上100nm以下である。
【0072】
(第一の態様における表面粗さ)
本発明のグリーンシート成形用キャリヤーフィルムにおける第一の態様は、基材フィルムの一方の面に離型層を有するキャリヤーフィルムであるが、基材フィルムの他方の面における10点平均粗さRzは、10nm以上100nm以下である。基材フィルムの他方の面における10点平均粗さRzを上記数値範囲とすることによって、グリーンシートを成形した後に巻き取る工程において、かかる面の表面形状がグリーンシートへ転写するのを抑制することができ、グリーンシートにおける欠点を抑制することができる。また同時に、ハンドリング性に優れたものとすることができる。また、グリーンシートの浮きを抑制することができる。10点平均粗さRzが小さすぎる場合は、ハンドリング性に劣る傾向にある。また、グリーンシートの浮きが生じやすくなる傾向にある。他方、10点平均粗さRzが大きすぎる場合は、グリーンシートにおける欠点が増加する傾向にある。このような観点から、基材フィルムの他方の面における10点平均粗さRzは、好ましくは12nm以上90nm以下、さらに好ましくは15nm以上60nm以下、特に好ましくは20nm以上30nm以下である。
【0073】
また、本発明のグリーンシート成形用キャリヤーフィルムの第一の態様においては、基材フィルムの他方の面における中心線平均表面粗さRaが2nm以上14nm以下であることが好ましい。基材フィルムの他方の面における中心線平均表面粗さRaを上記数値範囲とすることによって、グリーンシートへの転写をより抑制することができ、欠点をより抑制することができる。また同時に、ハンドリング性により優れたものとすることができる。中心線平均表面粗さRaが小さすぎる場合は、ハンドリング性の向上効果が低くなる傾向にある。他方、中心線平均表面粗さRaが大きすぎる場合は、グリーンシートにおける欠点抑制の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、基材フィルムの他方の面における中心線平均表面粗さRaは、好ましくは2nm以上8nm以下、さらに好ましくは2nm以上6nm以下、特に好ましくは2nm以上4nm以下である。
【0074】
上記のような10点平均粗さRz、および中心線平均表面粗さRaは、フィルム基材に含有する粒子の平均粒径や添加量を適宜調整したり、フィルム基材にコーティング層を設ける場合においては、かかるコーティング層に含有される粒子の平均粒径や添加量等を適宜調整したりすることによって達成される。本発明における特に好ましい態様は、実質的に粒子を含有していない(基材フィルムの質量に対して5ppm以下)か、極少量(基材フィルムの質量に対して50ppm以下)の粒子しか含有していない基材フィルムに、粒子を含有するコーティングを施し、表面を租面化する態様である。
【0075】
かかるコーティング層としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等の有機高分子樹脂からなるバインダー成分に、上述の離型層が含有する不活性粒子と同様の種類の粒子を分散させたものを挙げることができる。かかる粒子の平均粒径は、好ましくは10nm以上200nm以下、さらに好ましくは20nm以上150nm以下、特に好ましくは30nm以上50nm以下である。また、かかる粒子の添加量は、コーティング層の固形分質量を基準として、好ましくは5質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上20質量%以下である。また、かかるコーティング層の厚みは、好ましくは5nm以上100nm以下、さらに好ましくは10nm以上30nm以下である。実質的に粒子を含有していないか、極少量の粒子しか含有していない基材フィルムに、上記のようなコーティング層を設けることによって、本発明における10点平均粗さRzを達成することができる。コーティング層としては、前述の易接着層が好ましい。
【0076】
なお、本発明においては、基材フィルムの一方の面に離型層を有するキャリヤーフィルムの、他方の面において10点平均粗さRzが上記のような態様であればよく、かかる他方の面は離型層等の機能層を有していてもよい。
【0077】
また、本発明のグリーンシート成形用キャリヤーフィルムの第一の態様においては、離型層表面における10点平均粗さRzが10nm以上100nm以下であることが好ましい。離型層表面における10点平均粗さRzを上記数値範囲とすることによって、ハンドリング性の向上効果を高くすることができる。また同時に、グリーンシートにおける欠点抑制の向上効果を高くすることができ、これらのバランスがより良好となる。10点平均粗さRzが小さすぎる場合は、ハンドリング性の向上効果が低くなる傾向にある。他方、10点平均粗さRzが大きすぎる場合は、グリーンシートにおける欠点抑制の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、離型層表面における10点平均粗さRzは、好ましくは12nm以上90nm以下、さらに好ましくは15nm以上60nm以下、特に好ましくは20nm以上30nm以下である。
【0078】
さらに、本発明のグリーンシート成形用キャリヤーフィルムの第一の態様においては、離型層表面における中心線平均表面粗さRaが2nm以上14nm以下であることが好ましい。離型層表面における中心線平均表面粗さRaを上記数値範囲とすることによって、ハンドリング性の向上効果を高くすることができる。また同時に、グリーンシートにおける欠点抑制の向上効果を高くすることができ、これらのバランスがより良好となる。中心線平均表面粗さRaが小さすぎる場合は、ハンドリング性の向上効果が低くなる傾向にある。他方、中心線平均表面粗さRaが大きすぎる場合は、グリーンシートにおける欠点抑制の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、離型層表面における中心線平均表面粗さRaは、好ましくは2nm以上8nm以下、さらに好ましくは2nm以上6nm以下、特に好ましくは2nm以上4nm以下である。
【0079】
上記のような離型層表面における10点平均粗さRz、および中心線平均表面粗さRaは、フィルム基材に含有する粒子の平均粒径や添加量を適宜調整したり、フィルム基材にコーティング層を設ける場合においては、かかるコーティング層に含有される粒子の平均粒径や添加量等を適宜調整したり、離型層に含有する不活性粒子の平均粒径、添加量、および離型層の厚み等を適宜調整したりすることによって達成される。かかる離型層表面における10点平均粗さRz、および中心線平均表面粗さRaを達成するための特に好ましい態様は、実質的に粒子を含有していないか、極少量の粒子しか含有していない基材フィルムが、本発明における離型層を有する態様である。
【0080】
(第二の態様における表面粗さ)
本発明のグリーンシート成形用キャリヤーフィルムにおける第二の態様は、基材フィルムの両面に離型層を有するキャリヤーフィルムであるが、少なくとも一方の面における10点平均粗さRzは、10nm以上100nm以下である。ここで少なくとも一方の面とは、グリーンシートが形成されない側の離型層表面の一方の面か、あるいは両方の離型層表面を示す。かかる面における10点平均粗さRzを上記数値範囲とすることによって、グリーンシートを成形した後に巻き取る工程において、かかる面の表面形状がグリーンシートへ転写するのを抑制することができ、グリーンシートにおける欠点を抑制することができる。また同時に、ハンドリング性に優れたものとすることができる。また、グリーンシートの浮きを抑制することができる。また、繰り出し帯電を好適に抑制することができる。10点平均粗さRzが小さすぎる場合は、ハンドリング性に劣る傾向にある。また、グリーンシートの浮きが生じやすくなる傾向にある。他方、10点平均粗さRzが大きすぎる場合は、グリーンシートにおける欠点が増加する傾向にある。このような観点から、基材フィルムの他方の面における10点平均粗さRzは、好ましくは12nm以上90nm以下、さらに好ましくは15nm以上60nm以下、特に好ましくは20nm以上30nm以下である。本発明においては、グリーンシートが形成されない側の離型層表面の一方の面が上記態様であれば、上記のような作用効果を奏するが、両方の離型層表面が上記態様であることが好ましく、より好適に上記のような作用効果を奏する。また、繰り出し帯電をより好適に抑制する事ができる。
【0081】
また、本発明のグリーンシート成形用キャリヤーフィルムの第二の態様においては、少なくとも一方の面における中心線平均表面粗さRaが2nm以上14nm以下であることが好ましい。ここで少なくとも一方の面とは、グリーンシートが形成されない側の離型層表面の一方の面か、あるいは両方の離型層表面を示す。基材フィルムの他方の面における中心線平均表面粗さRaを上記数値範囲とすることによって、グリーンシートへの転写をより抑制することができ、欠点をより抑制することができる。また同時に、ハンドリング性により優れたものとすることができる。また、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。中心線平均表面粗さRaが小さすぎる場合は、ハンドリング性の向上効果が低くなる傾向にある。他方、中心線平均表面粗さRaが大きすぎる場合は、グリーンシートにおける欠点抑制の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、基材フィルムの他方の面における中心線平均表面粗さRaは、好ましくは2nm以上8nm以下、さらに好ましくは2nm以上6nm以下、特に好ましくは2nm以上4nm以下である。本発明においては、グリーンシートが形成されない側の離型層表面の一方の面が上記態様であれば、上記のような作用効果を奏するが、両方の離型層表面が上記態様であることがさらに好ましく、さらに好適に上記のような作用効果を奏する。また、繰り出し帯電をさらに好適に抑制することができる。
【0082】
また、本発明のグリーンシート成形用キャリヤーフィルムの第二の態様においては、グリーンシートが形成される側の離型層表面における10点平均粗さRzが10nm以上100nm以下であることが好ましい。かかる離型層表面における10点平均粗さRzを上記数値範囲とすることによって、ハンドリング性の向上効果を高くすることができる。また同時に、グリーンシートにおける欠点抑制の向上効果を高くすることができ、これらのバランスがより良好となる。10点平均粗さRzが小さすぎる場合は、ハンドリング性の向上効果が低くなる傾向にある。他方、10点平均粗さRzが大きすぎる場合は、グリーンシートにおける欠点抑制の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、グリーンシートが形成される側の離型層表面における10点平均粗さRzは、好ましくは12nm以上90nm以下、さらに好ましくは15nm以上60nm以下、特に好ましくは20nm以上30nm以下である。
【0083】
さらに、本発明のグリーンシート成形用キャリヤーフィルムの第二の態様においては、グリーンシートが形成される側の離型層表面における中心線平均表面粗さRaが2nm以上14nm以下であることが好ましい。かかる離型層表面における中心線平均表面粗さRaを上記数値範囲とすることによって、ハンドリング性の向上効果を高くすることができる。また同時に、グリーンシートにおける欠点抑制の向上効果を高くすることができ、これらのバランスがより良好となる。中心線平均表面粗さRaが小さすぎる場合は、ハンドリング性の向上効果が低くなる傾向にある。他方、中心線平均表面粗さRaが大きすぎる場合は、グリーンシートにおける欠点抑制の向上効果が低くなる傾向にある。このような観点から、グリーンシートが形成される側の離型層表面における中心線平均表面粗さRaは、好ましくは2nm以上8nm以下、さらに好ましくは2nm以上6nm以下、特に好ましくは2nm以上4nm以下である。
【0084】
上記のような離型層表面における10点平均粗さRz、および中心線平均表面粗さRaは、フィルム基材に含有する粒子の平均粒径や添加量を適宜調整したり、フィルム基材にコーティング層を設ける場合においては、かかるコーティング層に含有される粒子の平均粒径や添加量等を適宜調整したり、離型層に含有する不活性粒子の平均粒径、添加量、および離型層の厚み等を適宜調整したりすることによって達成される。かかる離型層表面における10点平均粗さRz、および中心線平均表面粗さRaを達成するための特に好ましい態様は、実質的に粒子を含有していないか、極少量の粒子しか含有していない基材フィルムに、前述のようなコーティング層を設け、その上に本発明における離型層を有する態様である。コーティング層としては、前述の易接着層が好ましい。
【0085】
(剥離力)
本発明におけるグリーンシート成形用キャリヤーフィルムは、離型層表面におけるグリーンシートの剥離力が1.0g/25mm以上6.0g/25mm以下であることが好ましい。剥離力が上記数値範囲にあると、搬送工程等において、キャリヤーフィルムからグリーンシートが剥離したり、あるいは浮いたりしてしまうことをより抑制することができる。また、キャリヤーフィルムからグリーンシートを剥離する工程においては、グリーンシートの破断、あるいは凝集破壊をより抑制することができる。剥離力が軽すぎる場合は、搬送工程において、グリーンシートの剥離、あるいは浮きが生じやすくなる傾向にある。他方、剥離力が重すぎる場合は、剥離工程において、グリーンシートの破断、あるいは凝集破壊が生じやすくなる傾向にある。また、繰り出し帯電を抑制しにくくなる傾向にある。このような観点から、剥離力は、さらに好ましくは1.5g/25mm以上5.0g/25mm以下、特に好ましくは2.0g/25mm以上4.0g/25mm以下である。
【0086】
上記のような剥離力は、離型層におけるベースポリマーと架橋剤との配合割合を適宜調整したり、ベースポリマーにおけるMVSユニットとDMSユニットとの共重合比率を適宜調整したり、離型層の厚みを適宜調整したりすることによって達成される。
【0087】
(摩擦係数)
本発明においては、グリーンシート成形用キャリヤーフィルムの一方の表面と、他方の表面との間の摩擦係数が、0.75以下であることが好ましい。摩擦係数が低いと、ハンドリング性の向上効果が高くなる。また、繰り出し帯電をより好適に抑制することができる。このような観点から、摩擦係数は、さらに好ましくは0.60以下、特に好ましくは0.50以下である。かかる摩擦係数は、ハンドリング性の観点からは低い程好ましいが、本発明における摩擦係数の下限は、現実的には0.10程度である。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
【0089】
(1)離型層の厚み
キャリヤーフィルムを三角形の小片に切り出した後、コーティングにより、厚み2nmのPt(白金)層を離型層表面に形成した。得られたサンプルを多軸包埋カプセルに固定して、エポキシ樹脂を用いて包埋処理し、ミクロトームULTRACUT−Sを用いて、キャリヤーフィルムの面方向に垂直な方向にスライスして、厚さ50nmの超薄サンプルを得た。次いで、得られた超薄サンプルをグリッドに載台して、2%オスミウム酸により、60℃、2時間の条件で蒸気染色した。蒸気染色後の超薄サンプルについて、透過電子顕微鏡LEM−2000により、加速電圧100kvの条件で観測し、離型層の厚みを測定した。測定は、キャリヤーフィルムの任意の10点について実施し、それらの平均値を離型層の厚み(単位:nm)とした。
【0090】
(2)粒子の平均粒径
試料台上に、粒子の粉体を個々の粒子ができるだけ重ならないように散在させ、金スパッター装置によりこの表面に金薄膜蒸着層を厚み200〜300オングストロームで形成し、走査型電子顕微鏡を用いて1万〜3満倍で観察し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて、少なくとも110個の粒子について、長径(Dli)、短径(Dsi)、および面積円相当径(Di)を求めた。
【0091】
粒子の個数nとし、上記で得られた値を下記式に用いて、面積相当粒径(Di)の数平均値を平均粒径(D)とした。
【数1】

【0092】
また、下記式から得られた長径の平均値(Dl)と短径の平均値(Ds)から、粒径比はDl/Dsとして算出した。
【数2】

【数3】

【0093】
相対標準偏差は、面積相当粒径(Di)、平均粒径(D)から、下記式により求めた。
【数4】

【0094】
(3)表面粗さ
(3−1)中心線平均表面粗さ(Ra)
非接触式3次元粗さ計(小坂研究所製、ET30HK)を用いて波長780nmの半導体レーザー、ビーム径1.6μmの光触針で測定長(Lx)1mm、サンプリングピッチ2μm、カットオフ0.25mm、縦方向拡大倍率5000倍、横方向拡大倍率200倍、走査線数100本(したがって、Y方向の測定長Ly=0.2mm)の条件にてフィルム表面の突起プロファイルを測定し、その粗さ曲面をZ=f(x,y)で表したとき、次の式で得られる値を中心線平均表面粗さ(Ra、単位:nm)とした。
【数5】

【0095】
(3−2)10点平均粗さ(Rz)
また、上記により得られたフィルム表面の突起プロファイルにおいて、ピーク(Hp)の高い方から5点と谷(Hv)の低い方から5点をとり、次の式により10点平均粗さ(Rz、単位:nm)を求めた。
【数6】

表面粗さ測定においては、サンプルが片面に離型層を有する場合は、「離型層表面」および「離型層表面と反対面」につき測定を行った。サンプルが両面に離型層を有する場合は、任意の一方の離型層表面を「離型層表面1」(易接着層が片面に設けられている場合は、易接着層を有する側を優先)とし、他方の離型層表面を「離型層表面1と反対面」とし、測定を行った。
【0096】
(4)摩擦係数
ASTM D1894−63に準じ、東洋テスター社製のスリッパリー測定器を使用し、キャリヤーフィルムの一方の表面(離型層側の表面)と他方の表面(基材フィルム側の表面)との間の静摩擦係数(μs)を測定した。但し、スレッド板はガラス板とし、荷重は1kgとした。
【0097】
(5)グリーンシートの成形
<セラミック粉体分散スラリーの調製>
以下の各成分を混合し、ボールミルにてヘッグマングラインドゲージで7以上となるように分散させ、セラミック粉体分散スラリーを調製した。
(a)ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、商品名:エスレックBX−5)(4質量部)
(b)トルエン/エタノール(質量比;1/1)混合溶剤(35質量部)
(c)セラミック粉体(チタン酸バリウム)(100質量部)
(d)ジブチルフタレート(2質量部)
【0098】
<キャリヤーフィルムとグリーンシートとの積層体の作成>
上記で得られたセラミック粉体分散スラリーを、1milの間隙を有するストレートエッジアプリケーターを用いてキャリヤーフィルムの離型層表面に塗布し、100℃で3分間乾燥して、厚さ1μmのグリーンシートを成形し、キャリヤーフィルムとグリーンシートとの積層体を得た。
【0099】
(6)グリーンシートの欠点検査(厚み不良とピンホール)
上記(5)の方法で作成したキャリヤーフィルムとグリーンシートとの積層体を、10cm×10cmの正方形に切り出した。得られた積層体サンプルを、グリーンシートの表面とキャリヤーフィルムの背面とが接するように、10枚重ねて、20g/cmの荷重下、40℃で2週間放置した。次いで、10枚の積層体サンプルのうち、一番上と一番下を除いた内側の8枚の積層体サンプルについてキャリヤーフィルムを剥離し、厚さ1μmのグリーンシートを得て、バックライト付き拡大鏡を用いて観察した。ここで、ピンホール、および背面の凹凸転写による厚み不良は、明点として観測される。かかる明点の発生状況について下記の基準で判定した。
○ : 明点がほとんど見られない。(5個以下)
△ : 明点がある程度見られた。(6個以上20個以下)
× : 明点が多数見られた。(21個以上)
また、上記において、10枚重ねの積層体サンプルを1枚ずつに剥離する際、キャリヤーフィルムとグリーンシートとの界面における浮きの状態を目視で観察して、グリーンシートの浮きについて評価した。
【0100】
(7)グリーンシートの剥離試験
上記(5)の方法で作成したキャリヤーフィルムとグリーンシートとの積層体を、幅25mm、長さ150mmに切り出し、両面テープを貼ったアルミ板にキャリヤーフィルム側を貼り合せて固定し、引張試験機にて、速度300mm/分、角度180度の条件でグリーンシートを剥離し、剥離力を測定した。任意の5点について測定を実施し、それらの平均値を剥離力(単位:g/25mm)とした。
【0101】
(8)剥離帯電評価(繰り出し帯電評価)
コーターで巻き取ったロール状のキャリヤーフィルムを、スリット工程で1000m長さのロールに巻き直し、さらにかかる1000m長さのロールを速度=80m/分で巻き出し巻き取る工程において、ロールから巻き出した直後のキャリヤーフィルム表面(1000m長さのロールにおいて、巻き内側の表面)から、垂直上方、距離5cmの位置に、集中電位測定器(春日電機株式会社製、商品名:静電電位測定器SV−10)を設置して、温度:23℃、湿度:55%RHの雰囲気下において剥離帯電量を測定した。離型フィルムのロールの全長1000mを巻き出す間に、約50m毎に、少なくとも15点剥離帯電量を計測し、それらの平均値をキャリヤーフィルムの剥離帯電量(単位:kV)とした。
上記測定方法によって求められる剥離帯電量が8kV以下であれば、繰り出し帯電は十分に抑制されていることを意味し好ましい。かかる剥離帯電量は、より好ましくは7kV以下、さらに好ましくは5kV以下、特に好ましくは3kV以下である。
【0102】
[実施例1]
(塗液の調整)
MVSユニット1モルに対して、16モルのDMSユニットを有するベースポリマーと、架橋剤とがあらかじめ混合されているシリコーン離型剤(東レ・ダウコーニング社製、商品名:SRX345、不揮発分30質量%)100質量部に、メチルエチルケトン(MEK)とトルエンとの混合溶媒(混合比率(体積);MEK:トルエン=70:30)9900質量部を加えて希釈した。これに、不活性粒子として、平均粒子径50nmのシリカ粒子のMEK分散体(日産化学工業社製、商品名:MEK−ST−L、不揮発分30質量%)5.3質量部を添加して、次いで、白金系触媒として、東レ・ダウコーニング社製、商品名:NC25(不揮発分10質量%)を1.5質量部添加して、固形分濃度0.32質量%の塗液を得た。また、この塗液から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
シリコーン離型剤:94.5質量%
不活性粒子:5.0質量%
その他(NC25由来の成分):0.5質量%
【0103】
(基材フィルム1)
片面に易滑コーティングが施されている、厚み38μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:O3X−38)をそのまま用いて基材フィルムとした。なお、かかるポリエステルフィルムは、易滑コーティングが施されていない表面の中心線平均表面粗さ(Ra)は1nm、10点平均粗さ(Rz)は8nmであった。また、易滑コーティングが施されている表面の中心線平均表面粗さ(Ra)は3nm、10点平均粗さ(Rz)は25nmであった。
【0104】
(キャリヤーフィルムの作成)
上記で得られた塗液を、基材フィルム1の易滑コーティングが施されていない表面に、#200のグラビアロールをリバース回転、キスコート法を用いて塗布し、140℃で45秒間乾燥、硬化させてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0105】
[実施例2]
MEKとトルエンとの混合溶媒の添加量を29900質量部とすることで、塗液の固形分濃度を0.11質量%として、離型層の厚みを5nmとする以外は、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0106】
[実施例3]
MEKとトルエンとの混合溶媒の添加量を4900質量部とすることで、塗液の固形分濃度を0.63質量%として、離型層の厚みを30nmとする以外は、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0107】
[実施例4]
MEKとトルエンとの混合溶媒の添加量を9700質量部、不活性粒子として、シリカ粒子のMEK分散体の添加量を3.1質量部とする以外は、実施例1と同様にして塗液を得た。得られた塗液の固形分濃度は0.32質量%であった。また、この塗液から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
シリコーン離型剤:96.5質量%
不活性粒子:3.0質量%
その他(NC25由来の成分):0.5質量%
上記で得られた塗液を用いて、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0108】
[実施例5]
MEKとトルエンとの混合溶媒の添加量を11500質量部、不活性粒子として、シリカ粒子のMEK分散体の添加量を22質量部とする以外は、実施例1と同様にして塗液を得た。得られた塗液の固形分濃度は0.32質量%であった。また、この塗液から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
シリコーン離型剤:81.6質量%
不活性粒子:18.0質量%
その他(NC25由来の成分):0.4質量%
上記で得られた塗液を用いて、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0109】
[実施例6]
不活性粒子として、平均粒子径50nmのシリカ粒子のMEK分散体の代わりに、平均粒径20nmのシリカ粒子のMEK分散体(日産化学工業社製、商品名:MEK−ST−ML、不揮発分30質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0110】
[実施例7]
不活性粒子として、平均粒子径50nmのシリカ粒子のMEK分散体の代わりに、平均粒径87nmのシリカ粒子のMEK分散体(日産化学工業社製、商品名:MEK−ST−ZL、不揮発分30質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0111】
[実施例8]
シリコーン離型剤として、東レ・ダウコーニング社製、商品名:SRX345の代わりに、MVSユニット1モルに対して、12モルのDMSユニットを有するベースポリマーと、架橋剤とがあらかじめ混合されているシリコーン離型剤(モメンティブ社製、商品名:XS56−A5729、不揮発分30質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0112】
[実施例9]
シリコーン離型剤として、東レ・ダウコーニング社製、商品名:SRX345の代わりに、MVSユニット1モルに対して、30モルのDMSユニットを有するベースポリマーと、架橋剤とがあらかじめ混合されているシリコーン離型剤(モメンティブ社製、商品名:XS56−A5731、不揮発分30質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0113】
[比較例1]
MEKとトルエンとの混合溶媒の添加量を9400質量部とし、不活性粒子を添加しない以外は、実施例1と同様にして塗液を得た。得られた塗液の固形分濃度は0.32質量%であった。また、この塗液から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
シリコーン離型剤:99.5質量%
不活性粒子:0.0質量%
その他(NC25由来の成分):0.5質量%
上記で得られた塗液を用いて、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
比較例1で得られたキャリヤーフィルムは、滑り性が悪く、ピンプルやシワの発生により、2000m以上巻き取ることが出来なかった。
【0114】
[比較例2]
MEKとトルエンとの混合溶媒の添加量を12500質量部、不活性粒子として、シリカ粒子のMEK分散体の添加量を33.5質量部とする以外は、実施例1と同様にして塗液を得た。得られた塗液の固形分濃度は0.32質量%であった。また、この塗液から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
シリコーン離型剤:74.6質量%
不活性粒子:25.0質量%
その他(NC25由来の成分):0.4質量%
上記で得られた塗液を用いて、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0115】
[比較例3]
シリコーン離型剤として、東レ・ダウコーニング社製、商品名:SRX345の代わりに、MVSユニット1モルに対して、50モルのDMSユニットを有するベースポリマーと、架橋剤とがあらかじめ混合されているシリコーン離型剤(信越化学工業社製、商品名:KS847T、不揮発分30質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
比較例3で得られたキャリヤーフィルムは、滑り性が悪く、ピンプルやシワの発生により、100m以上巻き取ることが出来なかった。
【0116】
[比較例4]
不活性粒子として、平均粒子径50nmのシリカ粒子のMEK分散体の代わりに、平均粒径13nmのシリカ粒子のMEK分散体(日産化学工業社製、商品名:MEK−ST、不揮発分30質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0117】
[比較例5]
不活性粒子として、平均粒子径50nmのシリカ粒子のMEK分散体の代わりに、平均粒径100nmのシリカ粒子(共立マテリアル社製、商品名:SG−SO100)をMEKに分散させたMEK分散体(不揮発分30質量%)を用いた以外は、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0118】
[比較例6]
基材フィルムとして、片面に易滑コーティングが施されている、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:O3X−38の代わりに、易滑コーティングが施されていない、厚み38μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:O3−38)をそのまま用いて基材フィルム2とした。なお、かかるポリエステルフィルムの中心線平均表面粗さ(Ra)は1nm、10点平均粗さ(Rz)は8nmであった。
上記の基材フィルム2を用いて、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
比較例6で得られたキャリヤーフィルムは、滑り性が悪く、ピンプルやシワの発生により、500m以上巻き取ることが出来なかった。
【0119】
[比較例7]
基材フィルムとして、片面に易滑コーティングが施されている、帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:O3X−38の代わりに、易滑コーティングが施されていない、厚み38μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:X2−38)をそのまま用いて基材フィルム3とした。なお、かかるポリエステルフィルムの中心線平均表面粗さ(Ra)は18nm、10点平均粗さ(Rz)は600nmであった。
上記の基材フィルム3を用いて、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
【0120】
[比較例8]
MEKとトルエンとの混合溶媒の添加量を2900質量部とすることで、塗液の固形分濃度を1.06質量%として、離型層の厚みを50nmとする以外は、実施例1と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表1に示す。
比較例8で得られたキャリヤーフィルムは、滑り性が悪く、ピンプルやシワの発生により、1000m以上巻き取ることが出来なかった。
【0121】
【表1】

【0122】
[実施例10]
(塗液の調整)
MVSユニット1モルに対して、16モルのDMSユニットを有するベースポリマーと、架橋剤とがあらかじめ混合されているシリコーン離型剤(東レ・ダウコーニング社製、商品名:SRX345、不揮発分30質量%)100質量部に、メチルエチルケトン(MEK)とトルエンとの混合溶媒(混合比率(体積);MEK:トルエン=70:30)9900質量部を加えて希釈した。これに、不活性粒子として、平均粒子径50nmのシリカ粒子のMEK分散体(日産化学工業社製、商品名:MEK−ST−L、不揮発分30質量%)5.3質量部を添加して、次いで、白金系触媒として、東レ・ダウコーニング社製、商品名:NC25(不揮発分10質量%)を1.5質量部添加して、固形分濃度0.32質量%の塗液を得た。また、この塗液から得られる離型層100質量%における各成分の固形分比率は、以下の通りとなる。
シリコーン離型剤:94.5質量%
不活性粒子:5.0質量%
その他(NC25由来の成分):0.5質量%
【0123】
(基材フィルム4)
両面に易接着層が施されている、厚み38μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:O4P3W−38)をそのまま用いて基材フィルムとした。なお、かかるポリエステルフィルムは、易接着層を有する表面の中心線平均表面粗さ(Ra)は4nm、10点平均粗さ(Rz)は36nmであった。
【0124】
(キャリヤーフィルムの作成)
上記で得られた塗液を、基材フィルム4の両面(易接着層の上)に、#200のグラビアロールをリバース回転、キスコート法を用いて塗布し、140℃で45秒間乾燥、硬化させてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表2に示す。
【0125】
[実施例11]
MEKとトルエンとの混合溶媒の添加量を29900質量部とすることで、塗液の固形分濃度を0.11質量%として、離型層の厚みを5nmとする以外は、実施例10と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表2に示す。
【0126】
[実施例12]
MEKとトルエンとの混合溶媒の添加量を4900質量部とすることで、塗液の固形分濃度を0.63質量%として、離型層の厚みを30nmとする以外は、実施例10と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表2に示す。
【0127】
[実施例13]
シリコーン離型剤として、東レ・ダウコーニング社製、商品名:SRX345の代わりに、MVSユニット1モルに対して、30モルのDMSユニットを有するベースポリマーと、架橋剤とがあらかじめ混合されているシリコーン離型剤(モメンティブ社製、商品名:XS56−A5731、不揮発分30質量%)を用いた以外は、実施例10と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表2に示す。
【0128】
[実施例14]
基材フィルムとして、片面に易接着層を有する、厚み38μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:O3X−38)を用いた以外は実施例10と同様にしてキャリヤーフィルムを得た。得られたキャリヤーフィルムの特性、およびそれを用いた評価結果を表2に示す。
なお、かかるポリエステルフィルムは、易接着層を有しない表面の中心線平均表面粗さ(Ra)は1nm、10点平均粗さ(Rz)は8nmであった。また、易接着層を有する表面の中心線平均表面粗さ(Ra)は3nm、10点平均粗さ(Rz)は25nmであった。
【0129】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも一方の面に、下記式[化1]で表されるベースポリマーと、下記式[化2]で表される架橋剤と、平均粒径20nm以上90nm以下の不活性粒子とを構成成分として含む塗膜を硬化してなる離型層を有するキャリヤーフィルムであって、離型層における不活性粒子の含有量が、離型層の質量を基準として2質量%以上20質量%以下であって、離型層の厚みが5nm以上40nm以下であって、少なくとも一方の面における10点平均粗さRzが10nm以上100nm以下であるグリーンシート成形用キャリヤーフィルム。
【化1】

(式[化1]中、mおよびnはそれぞれ1以上の整数を表し、8≦n/m≦35の関係を満たす。R1は炭素数12以下のアルキレン基を表すか、直接結合を表す。)
【化2】

(式[化2]中、pおよびqはそれぞれ1以上の整数を表す。R2およびR3は炭素数4以下のアルキル基を表す。)
【請求項2】
基材フィルムの一方の面に離型層を有するキャリヤーフィルムであって、基材フィルムの他方の面における10点平均粗さRzが10nm以上100nm以下である請求項1に記載のグリーンシート成形用キャリヤーフィルム。
【請求項3】
基材フィルムの両面に離型層を有するキャリヤーフィルムであって、少なくとも一方の面における10点平均粗さRzが10nm以上100nm以下である請求項1に記載のグリーンシート成形用キャリヤーフィルム。
【請求項4】
基材フィルムと離型層との間に、アクリル樹脂とポリエステル樹脂と滑剤粒子とを構成成分として含む易接着層を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のグリーンシート成形用キャリヤーフィルム。

【公開番号】特開2010−69868(P2010−69868A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170123(P2009−170123)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】