説明

グルコースの非侵襲性測定法及びグルコースの非侵襲性測定装置

【課題】グルコースの非侵襲性測定において温度誘発糖分解を追跡すること。
【解決手段】皮膚栄養毛細管内のグルコース代謝変化誘発、グルコース代謝及びヘモグロビン変異体濃度変のために皮膚温度と異なる温度に調節された局在反射率光学プローブを皮膚に接触させる。信号に対する組織−プローブ適応性の影響が最小限に抑えられるデータ収集用の時間ウインドウを選択する。様々な光源−検出器間距離、様々な波長、様々な接触時間に対する局在反射光信号の変化をプローブの皮膚接触から一定時間の間測定する。グルコース代謝に対する温度の影響の結果としてヘモグロビンによる光吸収変化に対する熱刺激の影響に関連する関数変化を計算する。光散乱及び血流変化の結果として光減衰変化に対する熱刺激の効果に関連する関数変化を計算する。局在反射率の信号から導き出された関数の組み合わせとグルコース濃度との間の較正関係を導き出す。後続の時間での被検体中のグルコース濃度を予測するために測定及び確立した較正関係を使用する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
数件の先行技術の方法が、被検体中のグルコース濃度の非侵襲性(NI)測定を記載している。測定法は、光学プローブを体の部分と接触させ、一連の光学測定を行い、かつ一連の光信号を収集するステップを一般的に含む。これらの光信号又は派生光学パラメータは、次に較正関係を確立するために血糖濃度と相互に関連付けられる。グルコース濃度は、当時測定した光信号及び以前に確立した較正関係を使用することによって後続の測定から決定される。
【0002】
グルコースの非侵襲性(NI)測定法は、分子特性を追跡する方法及び組織特性に対するグルコース効果を追跡する方法のような2つの広いカテゴリーに分類される。第1のカテゴリーの方法は、近赤外(NIR)吸収係数、中赤外吸収係数、旋光、ラマンシフト帯、NIR光音響吸収等のような、グルコースの内因性特性を追跡する。これらの方法は、他の体の分析物と無関係に、かつ体の生理的状態と無関係に、組織又は血液中でグルコースを検出する能力を前提とする。第2タイプの方法は、組織の散乱係数、間質液(ISF)の屈折率又は組織内の音響伝播等のような組織の光学的性質に対するグルコース効果を測定することに頼る。
【0003】
グルコース分子特性を追跡する第1タイプの方法は、グルコースに特異的であるとみなされ得る極めて弱い信号のために、大きな難題に直面する。生物学的雑音、個人対個人差及び測定雑音は、グルコース特異的信号の僅かな変化を圧倒し得る。雑音のあるデータセットからグルコース関連情報を抽出するために、多変量解析が一般的に使用された。内因性グルコース分子特性の代わりに、組織特性に対するグルコース効果を追跡する第2タイプの方法は、測定されるパラメータの変化の非特異的性質のために、大きな難題に直面する。
【0004】
グルコース分子特性、又は組織特性に対するグルコース効果を追跡する両方のタイプの方法は、グルコース濃度変化への体の生理的応答を無視している。この応答は、血流の変化又は温度の変化の形で現れ得る。体の生理的応答の結果としての血流及び温度の変化は、NIR光信号に影響を及ぼす。両方のタイプの測定は、測定した信号に対する体−プローブ相互作用による効果も無視しており、かつ体−プローブ相互作用の開始からのデータ収集の特定時間ウィンドウを定義していない。
【0005】
吸収法:
特許文献1、2、3、4、5、6、7及び8は、光学プローブを体の部分と接触させることによってグルコースを測定し、かつ600〜1100nmの近赤外(NIR)中の反射又は透過信号を測定する方法を記載している。一般的に、血液を含む体の部分(例えば、指)が、1つ又はそれ以上の光波長によって照明され、かつ1つ又はそれ以上の検出器が、体の部分を透過した光を検出する。グルコースレベルは、グルコースの基準スペクトル及び背景干渉への比較から導かれる。これらの特許は、グルコース濃度変化への体の生理的応答を扱っておらず、測定した光信号に対する組織−プローブ適応効果を扱っていない。
【0006】
特許文献9、10、11は、1000〜1800nmに及ぶ長い波長でのグルコースNIR信号の測定の特許請求をしている。これらの特許は、遥かに大きな生物学的雑音の存在下で、極めて低い信号を測定することを試みる方法を開示している。これらの特許の方法は、測定部位での温度調節を提供せず、グルコース濃度変化への生理的応答を扱っておらず、かつ測定中に体がプローブと相互作用する時のプローブへの体の応答を扱っていない。
【0007】
特許文献12乃至19は、1000〜2000nmに及ぶ波長でのNIR反射率及び透過率測定を使用する、グルコースのNI測定法を開示している。これらの特許は、グルコースへの体の生理的応答を扱っておらず、温度刺激の適用を記載しておらず、かつプローブ−組織相互作用の問題を扱っていない。
【0008】
NIRグルコース内因性吸収信号の規模の例が、雑誌の記事(非特許文献1)で発表される水中のグルコースのモル消衰係数、εの最近測定された値によって例証されている。水中のグルコース吸収率は、1689nmで0.463M−1cm−1、2270nmで0.129M−1cm−1、かつ2293nmで0.113M−1cm−1(ここでMは、モル濃度を示す)として測定された。これらの吸収率の値は、自動血液分析器で血清グルコースの測定に通常使用される6.2×10+3モル−1cm−1の340nmでのNADHのε値よりも遥かに小さい。1mmの経路長を使用すると、10mモルグルコース溶液は、1686nmで4.63×10−4吸収度単位を、かつ2257nmで1.29×10−4吸収度単位を有する。1ミリメートル経路長は、NIR拡散反射率測定で遭遇する経路長よりも長く、局在反射率測定での経路長に匹敵する規模である。グルコースの内因性消衰係数は、2200nmで比較した、800nm〜1300nmのより高い倍音帯で遥かに低い規模を有する。このスペクトル域におけるデータの量的解釈は、高い信号対雑音比及び厳格な温度調節を有する極めて高感度な検出システム、及び生物学的背景雑音源の消去を必要とする。グルコースのIR吸収測定は、水溶液中で相当の特異性を有するが、被検体部位に試みた時に深刻な難題に直面する。
【0009】
NIR吸収及び反射率測定の使用の最も早い報告は、1992年に報告された(非特許文献2)が、NIRによるグルコースの非侵襲性測定用の商用機器は、現在のところ入手できない。
【0010】
散乱法:
Simonsen et alの特許文献20及びGratton et alの特許文献21は、子ウシ筋肉及び腹部のような深層組織構造内での散乱係数を測定する方法を開示している。測定プローブの幾何学的配置、光光源及び検出点の間の距離、並びに光輸送方程式への拡散近似の使用は、約数センチメートルの組織の深さでの光サンプリングを必要とした。
【0011】
グルコースのNI測定のための散乱法は、非特許文献3、4及び5によって雑誌の記事に記載された。組織散乱係数の規模に対するグルコース効果を用いる方法は、グルコース濃度の変化の結果生じる間質液(ISF)の屈折率の変化を追跡する。溶液の屈折率に対する溶質濃度の効果は、特定の化合物に特異的でない。他の可溶性代謝物及び電解質濃度又は組織水和の変化は、グルコース濃度の変化と同じように、屈折率に影響を及ぼす。発表された臨床結果は、特異性がないこと、及びグルコース濃度を予測することが不可能であることを示した(非特許文献6)。
【0012】
組織の散乱及び吸収特性に対して温度を変動させる効果は、非侵襲性モニタ技術において興味深いものであった。このことは、数件の雑誌の記事で論じられた。非特許文献7及び8を参照せよ。ヒト皮膚の光学的性質に対する温度の効果は、非特許文献9、10、11及び12によって雑誌の記事に報告された。これらの発表された報告は、温度変化後の、ヒト皮膚の散乱係数の可逆的線形変化、及び温度を変化させた後の皮膚の吸収係数のより可逆的でない変化を示している。
【0013】
熱放射法:
他の特許及び公開が、被検体からのIR放射に依存する方法を開示している。Sterling et alの特許文献22及び23は、グルコースのNI測定に熱変調IR放射を使用した。グルコース測定手段としての被検体からの代謝熱放射の使用は、Cho et alの特許文献24及び25、並びに特許文献26(2005年6月)及び特許文献27(2005年6月)によって開示された。数件の実験データが雑誌の記事で開示された:非特許文献13及び14である。Cho et alは、温度変化を引き起こす体の概日効果を、おそらく同様に温度変化を引き起こすグルコース濃度の変化と切り離さなかった。Cho et alは、光又は熱信号に対する皮膚−プローブ適応効果を考慮に入れず、かつグルコース代謝に影響を及ぼす温度変化を生じさせなかった。
【0014】
Buchertの特許文献28及び雑誌の記事:非特許文献15は、鼓膜からのIR放射のスペクトル分析に基づくグルコースのNI測定法を記載している。Buchert及びMalchoff et alは、グルコース代謝に影響を及ぼすための温度変化を誘発しなかった。
【0015】
被検体に対する光学測定と併用した温度変化の使用は、他のNI光学測定において記載された。特許文献29、30、31、32、33及び34は、体の部分に対して置かれるように設計された加熱素子を有する酸素測定プローブを記載している。特許文献35は、特定温度に導かれ、かつ散乱係数μ’を計算したグルコースセンサを記載し、かつ間質液(ISF)の屈折率に対するその効果からグルコース濃度を推定した。特許文献35は、グルコース代謝の生理的効果の結果としての酸素消費の計算を開示せず、温度強化グルコース代謝の使用を記載せず、かつ測定に対する組織−プローブ適応効果を最小限に抑えるための時間ウインドウの使用を開示していない。
【0016】
Millsによる特許文献36は、拡散反射率又は透過の測定から様々な温度で血液パラメータを測定する方法を記載している。それは、グルコース代謝の生理的効果の結果としての酸素消費の計算を開示せず、温度強化グルコース代謝の使用を記載せず、かつ測定に対する組織−プローブ適応効果を最小限に抑えるための時間ウインドウを考慮に入れていない。
【0017】
大量の先行技術及び過去10年の多数の発行された特許があるが、ヒト組織におけるグルコースの非侵襲性検出法は、どれも商業化に成功しなかった。従って、信号の規模及び特異性の問題を克服する、プローブの挿入又は試料の抽出のない被検体中のグルコースの非侵襲性測定方法が依然として必要である。
【特許文献1】米国特許第5077476号明細書
【特許文献2】米国特許第5068536号明細書
【特許文献3】米国特許第5576544号明細書
【特許文献4】米国特許第5703364号明細書
【特許文献5】米国特許第5028787号明細書
【特許文献6】米国特許第5086229号明細書
【特許文献7】米国特許第5324979号明細書
【特許文献8】米国特許第5237178号明細書
【特許文献9】米国特許第5360004号明細書
【特許文献10】米国特許第5460177号明細書
【特許文献11】米国特許第5379764号明細書
【特許文献12】米国特許第5747806号明細書
【特許文献13】米国特許第5945676号明細書
【特許文献14】米国特許第6280381号明細書
【特許文献15】米国特許第5957841号明細書
【特許文献16】米国特許第6016435号明細書
【特許文献17】米国特許第5636633号明細書
【特許文献18】米国特許第5655530号明細書
【特許文献19】米国特許第6230034号明細書
【特許文献20】米国特許第5551422号明細書
【特許文献21】米国特許第5492118号明細書
【特許文献22】米国特許第6049081号明細書
【特許文献23】米国特許第6556850号明細書
【特許文献24】米国特許第5795305号明細書
【特許文献25】米国特許第5924996号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2005/0124868号明細書
【特許文献27】欧州特許出願公開第1537822号明細書
【特許文献28】米国特許第5940182号明細書
【特許文献29】米国特許第3628525号明細書
【特許文献30】米国特許第4259963号明細書
【特許文献31】米国特許第4432365号明細書
【特許文献32】米国特許第4890619号明細書
【特許文献33】米国特許第4926867号明細書
【特許文献34】米国特許第5131391号明細書
【特許文献35】米国特許第5551422号明細書
【特許文献36】米国特許第5978691号明細書
【非特許文献1】Amerov et al、「Molar absorptivities of glucose and other biological molecules in aqueous solutions over the first overtone and combination regions of the near−infrared spectrum」、Applied Spectroscopy 58:1195−1204(2004)
【非特許文献2】Robinson et al、「Noninvasive glucose monitoring in diabetic patients:a preliminary evaluation」、Clinical Chemistry 1992 Sep;38(9):1618−22
【非特許文献3】Maier et al、「Non−invasive glucose determination by measuring variations of the reduced scattering coefficient of tissues in the near−infrared」、Optics Letter 1994;19:2062−64
【非特許文献4】Kohl et al、「Influence of glucose concentration on light scattering in tissue stimulating phantoms」、Optics Letters 1994;19:2170−72
【非特許文献5】Kohl et al、「The influence of glucose concentration upon the transport of light in tissue−stimulating phantoms」、Physics Medicine Biology 1995;40:1267−87
【非特許文献6】Heinmann et al、Diabetes Technology Therapeutics 2000;2:211−220
【非特許文献7】Laufer et al、「Effect of temperature on the optical properties of ex vivo human dermis and subdermis」、Phys.Med.Biol.(1998)volume43:2479−2489
【非特許文献8】Bruulsema et al、「Optical Properties of Phantoms and Tissue Measured in vivo from 0.9−1.3μm using Spatially Resolved Diffuse Reflectance」、SPIE Proceedings 2979(1997)325−334
【非特許文献9】Khalil et al、「Temperature modulation of the visible and near infrared absorption and scattering coefficients of intact human skin」、J Biomedical Optics、2003;8:191−205
【非特許文献10】Yeh et al、「Near Infrared Thermo−Optical Response of The Localized Reflectance of Intact Diabetic and Non−Diabetic Human Skin」、J Biomedical Optics、2003;8:534−544
【非特許文献11】Yeh et al、「Tracking Blood Glucose Changes in Cutaneous Tissue by Temperature−Modulated Localized Reflectance Measurements」、Clinical Chemistry 2003;49:924−934
【非特許文献12】Khalil et al、「Response of near IR localized reflectance signals of intact diabetic human skin to thermal stimuli」、SPIE Proceedings 2003;5086:142−148
【非特許文献13】Cho et al、「Noninvasive measurement of glucose by metabolic heat conformation method」、Clinical Chemistry 2004;50:1984−1988
【非特許文献14】Ko et al、「Body metabolism provides a foundation for noninvasive blood glucose monitoring」、Diabetes Care、2004;27:1211−2
【非特許文献15】Malchoff et al、「A novel noninvasive blood glucose monitor」、Diabetes Care 2002;25:2268−75
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、グルコースの非侵襲性測定法及びグルコースの非侵襲性測定装置において、ヒトの皮膚で温度変化を誘発し、かつ幾つかの定義された光源−検出器間距離で局在反射率信号を測定し、かつ複数の波長及び光源−検出器間距離で反射率値から導き出された関数をグルコース濃度と相関させることによって、温度誘発糖分解を追跡することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のある局面は、強い色の生物学的指標としてヘモグロビン変異体による光散乱及び光吸収に応じて変化する反射光強度を用いたグルコースの非侵襲性測定法において、皮膚栄養毛細管内のグルコース代謝の変化を誘発させ、そして前記グルコース代謝の変化とともにヘモグロビン変異体濃度を変化させるために、皮膚の正常温度と実質的に異なる温度に調節された局在反射率光学プローブを皮膚に接触させるステップと、前記信号に対する組織−プローブ適応性の影響が最小限に抑えられるデータ収集用の時間ウインドウを選択するステップと、様々な光源−検出器間距離、様々な波長、様々な接触時間に対する局在反射光信号の変化を、プローブを皮膚に接触させてから一定時間の間測定するステップと、グルコース代謝に対する温度の影響の結果として、ヘモグロビンによる光吸収の変化に対する熱刺激の影響に関連する少なくとも1つの関数の変化を計算するステップと、光散乱及び血流の変化の結果として、光減衰の変化に対する熱刺激の効果に関連する少なくとも1つの関数の変化を計算するステップと、前記局在反射率の信号から導き出された前記関数の組み合わせと、グルコース濃度との間の較正関係を導き出すステップと、後続の時間での被検体中のグルコース濃度を予測するために前記測定及び前記確立した較正関係を使用するステップを含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ヒトの皮膚で温度変化を誘発し、かつ幾つかの定義された光源−検出器間距離で局在反射率信号を測定し、かつ複数の波長及び光源−検出器間距離で反射率値から導き出された関数をグルコース濃度と相関させることによって、温度誘発糖分解を追跡することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施形態は、被検体中のグルコース濃度の非侵襲性測定法に関する。該方法は、一過性グルコース代謝が温度の影響を受け、代謝変化に応じて光信号が変化する性質を利用する。
本発明の一実施形態は、Khalil et alの米国特許第6662030号明細書、並びにKhalil et al、J Biomed Opt.2003;8:191−205、Yeh et al、J Biomed Opt.2003;8:534−44、及びYeh et al Clin Chem.2003;49:924−34によって記載されたものと類似する温度調節した局在反射率光学プローブを用いる。米国特許第6662030号明細書(Khalil et al)に記載された、温度調節したプローブを使用する局在反射率信号の測定は、温度、又は所与の温度でのプローブ及び体の部分の間の接触時間に応じて光信号を生じさせる。検出した信号は、組織発色団及び赤血球による光吸収に、かつ組織散乱の中心及び赤血球からの光の散乱に対応する。血液による可視及びNIR光吸収は、主に赤血球(RBC)中のヘモグロビン変異体による光吸収による。それらは、オキシヘモグロビン(約95%)及びデオキシヘモグロビン(約5%)を含む。
【0022】
光学プローブのような固体物体が、皮膚と接触すると、幾つかの機械的効果が生じる。プローブは、皮膚を圧迫し、局在閉塞を引き起こし、かつ血流に影響を及ぼす。同様に、熱は、プローブ材料の熱伝導率、及び組織及びプローブの間の温度差次第で、プローブから皮膚に、及びその逆に伝達される。剛性金属プローブへの柔軟な皮膚の適応は、測定光信号の時間依存変化として現れ得る。皮膚への熱伝達は、測定部位での一時的な温度変化を誘発する。皮膚の栄養毛細管内で後続の温度変化が起き、血管拡張及び毛細管シャントの開口がその後に続く。大部分の毛細管シャントは、42℃から開きはじめ、46℃で完全に開口する。
【0023】
グルコースは、ヒト組織内で連続的に代謝する。グルコース代謝の変化は、患者の静脈に放射性グルコースを注射し、かつ陽電子射出断層撮影法(PET)によって組織内の放射性分布を観察することにより、腫瘍活性を検出するために使用された。脳酸素消費は、認知活性を示すためにNIR光信号から計算された。それは、腫瘍内の血管新生及び代謝過剰を検出するために、腫瘍内でも測定された。酸素消費を測定するもう一つの方法は、オキシ及びデオキシヘモグロビン内の鉄原子の磁気共鳴である。この技術は、機能的磁気共鳴影像法と呼ばれる。
【0024】
被検体中のグルコース代謝には、3つの経路があり、すなわち糖分解、脂質への変換、及びグリコーゲンとしてのグルコース貯蔵である。糖分解は、CO及び水へのグルコースの酸化であるが、全ての生細胞で起こる。脂質へのグルコース変換は、脂肪組織並びに筋及び肝細胞で起こる。グリコーゲンとしてのグルコース貯蔵は、肝細胞で起こる。
【0025】
本発明の一実施形態は、血液、特に赤血球中のグルコース代謝に対する温度の効果を用いる。(赤血球(erythrocytes)としても知られる)赤血球(red blood cell)は、グルコースを貯蔵すること、又は燃料として他の基質を使用することができない。糖分解は、赤血球中のグルコースの主な代謝経路である。赤血球中の酸素源は、酸素運搬蛋白ヘモグロビンである。赤血球へのグルコース(G)輸送は、瞬間的である。グルコースは、RBC中で二酸化炭素及び水に代謝するか、又は遊離グルコース分子としてとどまる。赤血球中の遊離グルコースは、血糖調節不良のマーカである、糖化ヘモグロビン、HbA1cへのヘモグロビンのグリコシル化を引き起こす。正常非糖尿病範囲を超えるグルコース濃度増加は、HbA1c濃度の増加に至らせる。高いHbA1レベルは、頻繁な高血糖発症の徴候である。
【0026】
本発明の一実施形態は、糖分解過程に対する温度ジャンプ効果を用いる。赤血球中の糖分解は、物理的に溶解した酸素(小さい部分)であったか、酸素輸送蛋白であるヘモグロビンによって運搬された酸素を消化する。オキシヘモグロビン分子は、デオキシヘモグロビン及び酸素に解離する。グルコース代謝の変化は、HbO濃度の瞬時変化に至らせる。次に酸化ヘモグロビンは、呼吸及び血流によって測定部位で補充される。本発明の一実施形態は、ヘモグロビン酸化変異体による光吸収に対応する、複数の波長で局所反射率信号に対する温度刺激効果を測定することによってこれらの効果を追跡する。
【0027】
本発明の一実施形態は、血液及び組織成分からの光散乱に対するグルコース代謝に対する温度の効果を使用する。組織の散乱係数は、組織散乱中心及びISF間の屈折率不整合によって決定される。ISFの屈折率、nISFは、グルコースに非特異的であるが、グルコース濃度によって決定される。米国特許第5551422及び5492118号明細書は、グルコースのNI測定のための散乱係数の変化の使用を開示した。被検体実験(Diabetes Technology and Therapeutics 2000;2:211−220)は、効果の非特異性及びグルコースとの相関関係の欠如を示した。糖分解の変化は、血液中のグルコース分子が消費されるにつれ、屈折率の変化を誘発する。温度変化の際の散乱及び吸収の変化を組み込むことにより、測定した信号の特異性が与えられる。
【0028】
本発明の一実施形態は、被検体中のグルコースの非侵襲性測定法である。方法は、皮膚組織内で突然の温度変化を引き起こすために、ヒトの皮膚の正常温度と実質的に異なる温度に設定される局在反射率光学プローブと皮膚を接触させることを含む。赤血球におけるグルコース代謝(糖分解)の温度強化変化が、起こり、かつ酸素を消費する。グルコース及びHbO濃度の間には、一時的な化学量論的関係がある。この関係は、信号特異性のもととなり得る。RBC中の酸素消費は、様々な波長及び様々な光源−検出器間距離での赤血球による光吸収から計算され得る。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、組織の正常温度と実質的に異なる温度にある局在反射率プローブとヒトの皮膚を接触させることは、周囲グルコース濃度に関連するグルコース濃度の変化を誘発する。この摂動の結果として、グルコース濃度は、物理的パラメータ及び生理的パラメータの点で表現され得る。物理的パラメータは、プローブ皮膚接触時間に応じた実効減衰係数の変化率に関連し、かつ血流の変化、血管拡張、並びに組織及び血球による散乱を説明する。生理的パラメータは、プローブ−皮膚接触時間に応じた酸素消費率に関連する。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、皮膚の正常温度より高い温度は、毛細管系が、血管拡張により、周囲組織との平衡に達する前に、栄養毛細管内で強化糖分解を引き起こし得る。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、RBC中の糖分解は、温度依存性である。その率は、30℃から42℃の範囲の温度変化と共に、変化する。それは、体の核心温度37℃で一定である。皮膚温度は、体の核心温度よりも低い。約60秒の短時間の突然の温度上昇は、酸素が血流及び正常な呼吸によって補充される前に、毛細管内で酸素の使用及び糖分解率の変化を引き起こし得る。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、血液グルコース濃度は、栄養毛細管内の糖分解率、及びその熱刺激への応答に影響を及ぼす。糖分解率は、赤血球中の初期グルコース濃度、及びそれ故に血液グルコース濃度によって決定される。温度誘発糖分解の開始からの定義された時間にわたる糖分解程度は、赤血球中の初期グルコース濃度、及びそれ故に血液グルコース濃度によって決定される。擬似一次率を使用すると、糖分解率を、
d[G]/dt=−k[G]RBC (1)
[G]RBC=χ[G]Blood (2)
(χは、人の糖尿病状態、インスリン濃度及びインスリン感性によって決定される分数である、分配係数である)のように表現することが可能である。
【0033】
本発明の一実施形態のもう一つの側面は、糖分解変化率が、赤血球中の酸素消費率に関連し、かつ少なくとも2つの波長で測定でき、その少なくとも2つは、デオキシヘモグロビンの消衰係数及びオキシヘモグロビンのそれに関して実質的に異なる値を有するということである。RBC中の酸素消費は、周囲皮膚温度と実質的に異なる温度にある測定プローブと皮膚の接触開始からの時間に応じて計算される。
d[G]/dt≒−kd[HbO]/dt=kd[酸素消費]/dt (3)
及び
d[G]/dt≒kdμeff/dt (4)
一次率速度論を前提とすれば、グルコース濃度は、次のように表現できる。
[G]≒kd[酸素消費]/dt (5)
及び
[G]≒kdμeff/dt (6)
本発明の一実施形態によれば、グルコース濃度は、2つの応答の和から次のように計算できる。
[G]=Σ[f1i(物理的応答)]+Σ[f2j(生理的応答)] (7)
本発明の一実施形態のもう一つの側面は、ヘモグロビン変異体による光吸収に対応する、2つの波長での相対反射率の変化が、栄養毛細管の適用した熱刺激の結果生じることである。毛細管床内のこのヘモグロビン吸収の変化は、赤血球内のグルコース代謝程度又は糖分解率の指標として使用される。糖分解は、赤血球中のグルコースの唯一の代謝経路なので、ヘモグロビンの酸素化状態の変化は、糖分解の特異的指標であり、かつ血液グルコース濃度の指標として使用できる。酸素消費率又は酸素消費程度は、生理的パラメータとして使用でき、かつグルコース濃度の変化と相関関係を有し得る。
【0034】
米国特許第6662030号明細書は、本発明の一実施形態の方法に使用できる温度調節した局在反射率プローブを記載している。温度調節プローブは、光導入ファイバ及び幾つかの光収集ファイバを有する。光収集ファイバは、光導入ファイバから短い間隔を置かれる。最大の光源−検出器間距離は、光導入ファイバの中心及び光収集ファイバの間の、2mm未満の中心−中心間距離である。2mm未満の光源−検出器間距離を選択することによって、脂肪組織又は筋組織からの信号を捕捉せずに、上部皮膚層から生じる光信号の測定が確実に行われる。
【0035】
本発明の一実施形態の一側面は、熱光学応答信号を収集するために皮膚正常温度と実質的に異なる温度に設定された局在反射率プローブの使用である。プローブは、皮膚正常温度と実質的に異なる温度に維持される。皮膚とプローブの接触の際の突然の温度変化は、皮膚栄養毛細管内のグルコース代謝の変化を誘発する。
【0036】
本発明の一実施形態のもう一つの側面は、グルコース濃度が、プローブ皮膚接触時間に応じて実効減衰係数の変化率に、かつプローブ−皮膚接触時間に応じて酸素消費率に関連することである。それ故に、我々は方程式7を、
[G]=Σ[a{(dμeff/dt)}λ]+Σ[b(dOC/dt)r] (8)
と表現する。
【0037】
第1項の合計は、使用した複数の波長(λ)にわたり、かつ第2項の合計は、局在反射率測定で使用した光源−検出器間距離の数(r)にわたる。項μeffは、実効減衰係数である。それは、媒体の吸収係数、μ=2303εC、及び媒体の散乱係数、μ’、に関係式μeff=[(3μ(μ+μ’)]1/2によって関連する。
【0038】
酸素消費の変化率は、デオキシヘモグロビン吸収がオキシヘモグロビン吸収よりも高い波長でのμの、デオキシヘモグロビン吸収がオキシヘモグロビン吸収よりも低い波長でのそれに対する比として表現できる。表1は、オキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンのε、及び2つの種及び95%の酸素飽和値での全ヘモグロビン、及び15g/dLの全ヘモグロビンの計算されたμの値を示す。選択された波長は、本発明の一実施形態をテストする装置に使用され、2つのヘモグロビン種のεの大きな差を示す。これら波長の幾つは、表1に示すが、表1でオキシヘモグロビン、デオキシヘモグロビン及び全ヘモグロビンのε及びμは、15g/dLの全ヘモグロビン濃度及び95%の酸素飽和値に関して計算される。
【表1】

【0039】
表1の波長対を使用すれば、酸素消費の変化率の概算を次のように表現することが可能である。
d(OC)/dt=α{d(μ660/μ940/dt} (9a)
d(OC)/dt=β{d(μ660/μ880/dt} (9b)
後者の関数形式は、パルスオキシメトリとして知られる心拍動中に動脈酸素飽和の計算に使用されるものと類似する。散乱及び吸収項の近似式
Ln(1/R(r)対Ln(R(r)/R(r)のプロットは、吸収係数及び散乱係数の間の相互作用のモンテカルログリッドでの追跡をもたらす。プローブ/皮膚相互作用中の様々な時点でのLn(1/R(r)対Ln(R(r)/R(r)のプロットは、モンテカルロ様グリッドをもたらし、その勾配は、実効減衰係数、μeffに関連し得る。
【0040】
定義された光源−検出器間距離及び波長での局在反射光強度比の点で散乱係数及び吸収係数の変化を概算することは、可能である。物理的応答の変化を下記の通り表現することが可能である。
Σ[a{(dμeff/dt)}λ]=Σ[a{dIn(1/R)/dLn(R/R)}λ] (10)
生理的応答の変化は、次のように表現できる。
Σ[b{d(μ660/μ940/dt}]=Σ[b{dLn(R660/R940)/dt}r] (11)
それ故に、血液グルコース濃度は、定義された光源−検出器間距離及び波長での局在反射光強度比の点で、次のように表現できる。
[G]=Σ[a{dIn(1/R)/dLn(R/R)}λ]+Σ[b{dLn(R660/R940)/dt}r] (12)
ここでλ=592、660又は880nmであり、かつrは、光源−検出器間距離である。t秒からt秒の間の同じ時間ウインドウ内の初期時間t秒へ各局在−反射率信号を正規化することは、次のような結果となる。
[G]=Σ[a{dIn(1/R)/dLn(R/R)}λ]+Σ[b{Ln(R660/R940)t/Ln(R660/R940)t}r] (13)
方程式(13)の第1項は、吸収及び散乱係数両方の変化を説明する。散乱は、最短の光源−検出器間距離及び低い吸収値で優位である。吸収は、最長の光源−検出器間距離及び高い吸収値で優位であり、このことは、ヘモグロビン吸収波長での測定に当てはまる。酸素消費の点で温度の代謝効果を表現する。
【0041】
酸素消費方程式の係数を導くための、オキシ及びデオキシヘモグロビンのε値を使用する本発明の一実施形態の方法のためのもう一つの計算。導かれた方程式は、定義された光源−検出器間距離及び波長での局在反射光強度及びヘモグロビンε値のグルコース濃度の変化に対する比の関連を示す。我々は、測定装置で使用した波長での血液のμの式から始める。
【0042】
開始時の(μ592nm≒Ln(R592=εC[HbO2(0)]+εC[Hb(0)]、592nmで (14)
時間t秒の(μ592nm≒Ln(R592=εC[HbO2(t)]+εC[Hb(t)]、592nmで (15)
開始時の(μ592nm≒Ln(R592=10,468C[HbO2(0)]+25,470[Hb(0)] (16)
時間t秒の(μ592nm≒Ln(R592=10,468C[HbO2(t)]+25,470[Hb(t)] (17)
同様の方程式が、他の波長660、880及び940nmで書ける。方程式(16)を方程式(17)から減じることにより、592nmでの吸収係数の変化が、温度ジャンプの結果として次のように示される。
Δ(μ592nm≒Ln[(R592/(R592]=10,468ΔC[HbO2]+25,470ΔC[Hb] (18)
ΔC[HbO2]は、温度誘発糖分解に必要な酸素を発生させる、HbO濃度の温度誘発変化である。同様の方程式が、他の波長で適用され、方程式(19)から(21)をもたらす。
Δ(μ660nm≒Ln[(R660/(R660]=320C[HbO2]+3,227C[Hb] (19)
Δ(μ880nm≒Ln[(R880/(R880]=1,214C[HbO2]+673C[Hb] (20)
Δ(μ940nm≒Ln[(R940/(R940]=1,214C[HbO2]+6,934C[Hb] (21)
方程式(21)を36.75で乗じることにより、C[HbO]に関して方程式(18)及び(21)を解き、方程式(22)を与える。
36.75Ln[(R940/(R940]=36.75×1,214C[HbO2]+25,470C[Hb] (22)
方程式(22)を方程式(18)から減じる。
{36.75Ln[(R940/(R940]−Ln[(R592/(R592]}=34,150ΔC[HbO2] (23)
ΔC[HbO]に関して解く。
ΔC[HbO]=(2.928×10−5{36.75Ln[(R940/(R940]−Ln[(R592/(R592]} (24)
880nm及び592nmに関して解くことにより、次の式が与えられる。
ΔC[HbO]=(2.928×10−5{36.75Ln[(R880/(R880]−Ln[(R592/(R592]} (25)
本発明の一実施形態の実施態様は、糖分解過剰によるグルコースのモル濃度の変化、Δ[G]が、ΔC[HbO2]に関連することである。
Δ[G]α2.928×10−5*{36.75Ln[(R940/(R940]−Ln[(R592/(R592]} (26)
Δ[G]をモル単位からmg/dlに変換するために、1.8×10で乗じる。
Δ[G]αΔC[HbO]αF(OC)=0.527{36.75Ln[(R940/(R940]−Ln[(R592/(R592]} (27)
F(OC)は、592nm及び940nmでの局在−反射率光学測定からの酸素消費を表現する関数である。
次の同じステップにより、660nm及び940nmで測定される反射率から、酸素消費関数F(OC)を計算することは、可能である。
【0043】
方程式(21)を4.6566で乗じることにより、ΔC[HbO2]に関して方程式(19)及び(21)を解き、方程式(28)を与える。
4.6566Ln[(R940/(R940]=5,653ΔC[HbO2]+3,227C[Hb] (28)
方程式(19)を方程式(28)から減じる。
{4.969Ln[(R940/(R940]−Ln[(R660/(R660]}=5,621ΔC[HbO2] (29)
ΔC[HbO2]=(1/5621){4.6566Ln[(R940/(R940]−Ln[(R660/(R660]} (30)
ΔC[HbO2]=1.779×10−4*{4.6566Ln[(R940/(R940]−Ln[(R660/(R660]} (31)
本発明の実施態様は、ΔC[HbO2]が、Δ[グルコース]、Δ[G]と相関関係を有し、熱刺激の結果生じる糖分解過剰によるグルコースのモル濃度の変化が、方程式(26)の場合と同じように、ΔC[HbO2]に比例することである。
Δ[G]α1.779×10−4*{4.6566Ln[(R940/(R940]−Ln[(R660/(R660]} (32)
Δ[G]濃度をモル単位からmg/dlに変換するために、1.8×10で乗じる。
Δ[G]αΔC[HbO]αF(OC)=3.2022{4.6566Ln[(R940/(R940]−Ln[(R660/(R660]} (33)
F(OC)は、660nm及び940nmでの局在−反射率光学測定からの酸素消費
を表現する関数である。酸素消費関数F(OC)及びF(OC)は、概念的に類似す
るが、皮膚構造効果により、異なる値を有し得る。
【0044】
全減衰係数の変化及び酸素消費関数の点でのグルコース濃度を表現する方程式の一般化した式は次の通りである。
[G]=a+Σ[a{dIn(1/R)/dLn(R/R)}λ]+Σ[b{F(OC)}r]+Σ[b{F(OC)}r] (34)
この方程式の様々な変形、及び方程式中の変数の範囲に対する様々な判定基準を使用することが、可能である。
【0045】
計算用の時間ウインドウ
本実施形態の計算法は、複数の波長及び光源−検出器間距離で、局在反射率値の変化率を計算するステップを含む。本発明の一実施形態の変形例は、計算法が、複数の波長及び光源−検出器間距離での局在反射率値に対する温度刺激の時間依存効果に関連する少なくとも1つのパラメータにおける変化程度を計算するステップを含むことである。変化程度は、少なくとも1つの時間ウインドウで計算され、隣接時間ウインドウにわたって平均される。計算用の時間ウインドウは、皮膚−プローブ適応後に開始する。
【0046】
本実施形態の利点
本実施形態は、幾つかの側面で先行技術と異なる。本発明の一実施形態は、ヒトの皮膚で温度変化を誘発し、かつ幾つかの定義された光源−検出器間距離で局在反射率信号を測定し、かつ複数の波長及び光源−検出器間距離で反射率値から導き出された関数をグルコース濃度と相関させることによって、温度誘発糖分解を追跡する。
【0047】
米国特許第5795305及び5924996号明細書、並びに米国特許出願公開第2005/0124868号明細書、及び欧州特許出願公開第1537822号明細書は、光又は熱信号に対する皮膚−プローブ適応効果を考慮に入れず、かつグルコース代謝に影響を及ぼす温度変化を誘発しなかった。米国特許第5978691号明細書は、グルコース代謝の生理的効果の結果としての酸素消費の測定を開示せず、温度強化グルコース代謝の使用を開示せず、かつ測定に対する組織−プローブ適応効果を最小限に抑えるための時間ウインドウを考慮に入れていない。米国特許第5978691号明細書は、ヘモグロビン平衡の温度誘発変化を測定する。方法は、拡散反射率又は透過を測定することを含む。それは、定義された光源−検出器間距離を特定しておらず、かつそれ故に組織内の深さを特定していない。
【0048】
本実施形態の方法及び装置では、測定プローブへの皮膚の適応時間を設け、かつ信号に対する皮膚−プローブ相互作用効果が最小限に抑えられる、特定の時間ウインドウにわたって測定される信号を使用する。米国特許第5785305号明細書、米国特許第5924996号明細書、米国特許第5978691号明細書は、測定プローブへの皮膚の適応時間を設けておらず、かつ信号に対する皮膚−プローブ適応効果が最小限に抑えられる、特定の時間ウインドウにわたって測定される信号を使用しない。
【0049】
本実施形態の主な特徴としては、次の通りである。
a.オキシ及びデオキシヘモグロビンによる光吸収に対応する波長で、時間に応じた局在反射率の変化を測定し、かつ酸素消費の変化に関連する関数を計算するステップと、
b.信号に対する組織−プローブ適応効果が最小限に抑えられる時間ウインドウを選択するステップと、
c.これらの酸素消費関数の組み合わせと、グルコース濃度との間の較正関係を導き出し、かつ体のグルコース濃度を予測するために較正関係を使用するステップとが含まれる。
【0050】
図1に本実施形態に係るグルコースの非侵襲性測定装置を示している。図2には図1のグルコースの非侵襲性測定装置の測定ヘッド(プローブとも言う)の具体的な構造を示している。温度制御パック1は、発熱体としての熱電気モジュール2と、被検体の皮膚に接触するパッド3とからなる。熱電気モジュール2による発熱量は、温度コントローラ4により調節される。さらに温度コントローラ4の温度調節動作はコンピュータ5の制御下にある。コンピュータ5は温度調節制御とともに、本実施形態によるグルコース非侵襲性測定方法の処理手順の制御及び各ステップの処理を担っている。制御パック1の中央部には筒状に開口が形成され、そこに光ファイバ8、9が挿入される。光ファイバ8には光源6が光学的に結合され、光ファイバ9には光検出器(信号検出器)7が光学的に結合される。光源6と光ファイバ8との間にはビームスプリッタ11が配置され、光源6からの光の一部が基準検出器12に導入されるようになっている。
【0051】
光ファイバ8は中央に置かれ、その周囲に光ファイバ9が短い間隔で配置される。光ファイバ8から光ファイバ9までの最大距離は、2mm未満である。つまり直径4mmの略円形範囲に光ファイバ8、9が束ねられる。局在反射率プローブの波長と、光源6と検出器7までの距離との関係を表2に例示する。米国特許第6654620号明細書に記載されたように、一滴のシリコン油を、被検体の皮膚に適用し、かつ拭き取り、皮膚上に非常に薄い油の層を残して、熱伝導率を強化する。
【表2】

【0052】
酸素消費及び減衰係数変化の計算
図3は、被検体の前腕の皮膚に押し付けた、40℃の光学プローブへの糖尿病患者の皮膚の応答を示す。酸素消費関数は、方程式9の変形を使用して次のように計算した。
d(OC)/dt=γF(OC)=1000Ln(R660/R940/Ln(R660/R9405 sec (9c)
式中、Rは、各光源−検出器間距離での局在反射率を示す。信号は、5秒幅の信号に正規化した。
【0053】
計算したF(OC)は、40℃のプローブを皮膚と接触させると増加し、次に約120秒後、漸近値に達する。熱モデリング(J Biomedical Optics、2003;8。191−205)は、プローブが皮膚に接触する時、深さ2mm以内の温度は、120秒後に平衡に達したことを示している。F(OC)は、全ての光源−検出器間距離で増加する。F(OC)の増加順は、
F(OC)r>F(OC)r>F(OC)r>F(OC)r
である。F(OC)の最大の変化は、最初の90秒で起きる。図4に示すように、F(OC)値は、皮膚/プローブ接触時間と直線関係にある。
【0054】
表3は、図4のデータからの様々な光源−検出器間距離での酸素消費関数の計算結果を示す。
【表3】

【0055】
表3に示すように、計算酸素消費関数は、測定の時間ウインドウにわたる4つの光源−検出器間距離で、プローブ−皮膚相互作用時により線形に変化する。
【0056】
プローブ皮膚接触に応じた各波長での実効減衰係数の変化率の概算は、時間に対して各波長でLn(R/R)の値をプロットすること、及び勾配を計算することによって達成できる。
【0057】
図5は、40℃に加熱したプローブに関する、時間に対するLn(R/R)のプロットを示し、菱形は592nm、丸は660nm、Xは880nm、かつ三角は940nmである。表4は、図5のデータから様々な波長で計算した、かつLn(R/R)と表現するおおよそのμeffの計算結果を示す。
【表4】

【0058】
Ln(R/R)と表現し、かつ様々な波長で計算したおおよそのμeffは、最小勾配及び低いrを示す600nmの波長を除き、5−90秒ウインドウにわたる接触時間により線形に変化する。勾配は、μeffに近似し、かつ次の順序で変化する。
【0059】
Ln(R/R592nm>Ln(R/R880nm=Ln(R/R940nm>>Ln(R/R660nm
勾配の変化は、種々の波長で発表された消衰係数、ε(HbO)又はμ(HbO)の変化に似ているが、ε(HbO)が最小である660nmを除く。このことは、光吸収の変化が反射光強度の有力な誘因であることを示す。
【0060】
信号変化の程度及び信号変化の移動平均の使用
変化程度F(OC)は、移動平均計算を使用して、幾つかの隣接時間領域にわたって平均される。図6は、皮膚が、温度を約10℃高めた、加熱したプローブに接触する時の酸素消費率変化のプロフィールのシミュレーションを示す。四点移動平均領域は、15から30秒のデータ、20から35秒、25から40秒、及び30から45秒時間領域を含む。これらの時間領域は、実施形態8のデータを分析する際に使用される。
【0061】
血液グルコース濃度との臨床的相関
治療を承認し、かつインフォームドコンセントに署名した糖尿病患者に対して、病院にで臨床研究が行われた。倫理委員会は、研究手順を承認した。テスト時間は、3−5日に及んだ。各患者は、NI装置及び家庭グルコース計を使用して、1日数回テストされた。患者は、日常の活動及び治療養生法を維持した。方程式34の変形を使用して分析された6人の患者のデータを表5に示すが、表5には、後続の計算におけるデータ点の算入基準を含める。算入基準は、a)d(OC)/dt<0、b)dLn(R592)/dt<0
、c)dLn(R880)/dt<0であった。
【表5】

【0062】
線形最小二乗回帰分析が、計算酸素消費、計算減衰関数、及び侵襲的に測定されたグルコース濃度の組み合わせの間で、5項、4項、3項及び2項回帰モデルを発生させるために使用された。較正の標準誤差及び較正相関係数が、研究の最初の日々に関して決定された。発生したモデルは、後日のデータ点からグルコース濃度を予測するために使用された。各患者のデータは、別個に処理された。計算較正点及び予測点は、方程式34の変形を使用して、クラークエラーグリッド(Clarke Error Grid)散布図にプロットされた。クラークエラーグリッドは、プロットの様々な領域内の予測グルコース値分布を提示するために通常使用され、プロットの各領域は、予想される介入における特殊な臨床的有意性を有する。
【表6】

【0063】
5項方程式34a、34b、34c(定数+2減衰係数項+2OC項)は、近似直線過剰の証拠を示す。方程式34d、34e、34fは、種々の波長及び算入基準で2項方程式(定数+減衰係数項)である。全てが、良好な較正及び予測パラメータ、及びクラークエラーグリッドのA及びBゾーン内で分布を有する。592nmでの減衰係数項(ヘモグロビンに関して最高の吸収度)が、最良の相関パラメータを有する。592及び880nmでの2つの全減衰項を組み合わせ、3項方程式34g及び34hを与え、それが、2項方程式34d、34e、及び15fを改良する結果になる。
【0064】
OC項の使用を、方程式34iから34kに示す。方程式34i及び34jは、2項方程式であり、かつ34kは、2OC項を有する3項方程式である。表6のデータは、3つのOCモデルの較正及び予測能力を示す。μeff項を方程式34kに加えることにより、方程式34l、34m及び34nが生じる。3つのモデル全体は、34kに対して較正を僅かに改良する結果になる。この計算が行われる時間ウインドウは、プローブ−皮膚相互作用から5秒から60秒に及んだ。
【0065】
最適時間間隔の選択
本実施形態において、方程式34kが、6人の患者の分析に適用された。方程式34kは、定数及び2OC項からなる3項モデルである。1及び2日目のデータが、較正セットに使用された。3日目のデータ点は、各患者の予測セットとして使用した。累積クラークエラーグリッドが、全患者データ点に関して確立され、かつ全体的較正及び予測パラメータが計算された。5秒から60秒のプローブ−皮膚相互作用ウインドウ内の10の時間間隔が選択され、結果として55秒及び30秒の間の時間間隔をもたらした。選択された間隔内の時点数は、12から7の間である。計算結果は、表7に示す。
【0066】
表7の結果は、30秒から60秒の間の時間間隔を使用することが、結果としてより良い較正及び予測結果をもたらすことを示す。データを計算に使用するために、プローブ−皮膚接触開始から30秒の遅延時間を使用することは、相関への皮膚−プローブ適応の寄与を最小限に抑えたので、グルコースとの最良の相関を有した。
【表7】

【0067】
同様の結果が、592nmでのμeff項及び2OC項を含む4項モデルである方程式34lの時に得られた。方程式34mも、880nmでのμeff項及び2OC項を含む4項モデルである。30秒から60秒の間の時間間隔を使用することは、3項モデルが使用されるにせよ、4項モデルが使用されるにせよ、結果としてより良い較正及び予測モデルをもたらすことが、計算により示された。30秒の時間間隔の使用は、相関への皮膚−プローブ適応の寄与を最小限に抑える。
【0068】
時間間隔は、30から60秒であったが、7つのデータ点が、率の計算に使用される。全体的予測相関係数値は、完全な5から60秒の時間ウインドウが計算に使用された、表6に示すものよりも高い。
【表8】

【0069】
この実施形態において、様々な3項の酸素消費のみのモデルが試みられた。
【0070】
一般化方程式は、次の通りである。
[G]=a+a[F(OC)@r−F(OC)@r]±a[F(OC)@r−F(OC)@r] (35)
F(OC)1及びF(OC)2の関数は、以前次のように定義された。
F(OC)=0.527{36.75Ln[(R940/(R940]−Ln[(R592/(R592]} (27)
F(OC)=3.2022{4.6566Ln[(R940/(R940]−Ln[(R660/(R660]} (33)
異なる光源−検出器間距離でF(OC)1及びF(OC)2の組み合わせを使用する3項モデルは次の方程式を与える。
[G]=a+a[F(OC)@r−F(OC)@r]±a[F(OC)@r−F(OC)@r] (36)
4つの酸素消費関数が計算されたが、近似直線方程式は、3項のみを有する。様々な光源−検出器間距離で各2つのOC関数の組み合わせを使用すると、近似直線方程式中の項数が5から3に減少し、このことは、データを過剰近似直線させる可能性を最小限に抑える。方程式36の様々な変形は、以下の通りである。
[G]=a+aF(OC)@r−aF(OC)@r、 (37)
[G]=a+aF(OC)@r−aF(OC)@r、 (38)
[G]=a+a[F(OC)@r−F(OC)@r]+a[F(OC)@r−F(OC)@r] (39)
[G]=a+a[F(OC)@r−F(OC)@r]+a[F(OC)@r−F(OC)@r] (40)
これらの方程式は、患者1001に関してデータを分析するために使用された。OC関数は、対数関数なので、(37)及び(38)の2OC項、及び方程式40のF(OC)及びF(OC)の差の項の場合のような2つの減算は、2つの光源−検出器間距離での局在反射率比の比率項を表す。
【0071】
患者のデータ点は、7日に及ぶ期間で収集された。30のデータ点の16が、算入基準に合格した。上述したような時間応答の4×15秒領域平均が、使用された。較正は、臨床研究の1日目から3日目の12のデータ点を使用し、他方で予測は、臨床研究の5日目から7日目の4つのデータ点を使用した。結果は、図を用いて図7Aから図7Dに示す。
【0072】
方程式37は、定数及び2つのF(OC)項の間の差を含む3項方程式である。方程式37の回帰係数は以下の通りである。
[G]=195.2+432.3F(OC)@r−391.6F(OC)@r (37a)
データは、図7Aにプロットする。較正及び予測パラメータは、表9に示すように良好である。4つの予測グルコース値は、クラークエラーグリッドのAゾーンに位置する。表10に示すように、4つの予測グルコース値を測定グルコース値に近似直線させることにより、r=0.19が生じる。
【0073】
もう一つの実施形態において、方程式38が、被検体番号1001のデータを分析するために使用された。3項近似直線方程式38、2つの変数の較正で得られた係数a、a及びaは、方程式38aにおいて与えられる。
グルコース=167.9+7351.3F(OC)@r−7985.2F(OC)@r (38a)
データは、図7Bにプロットする。較正及び予測パラメータは、表9に示すように良好である。4つの予測グルコース値は、クラークエラーグリッドのAゾーンに位置する。表10に示すように、4つの予測グルコース値を測定グルコース値に近似直線させることにより、高い相関関数、r=0.75が生じる。F(OC)の使用は、この患者に関して、結果としてより良い相関をもたらす。
【0074】
もう一つの実施形態において、方程式39が、被検体番号1001のデータを分析するために使用された。3項近似直線方程式39、2つの変数の較正で得られた係数a、a及びaは、方程式39aにおいて与えられる。
[G]=178.7+115.2(F(OC)@r−F(OC)@r)−8303.9(F(OC)@r−F(OC)@r) (39a)
データは、図7Cにプロットする。較正及び予測パラメータは、表9に示すように良好である。4つの予測グルコース値は、クラークエラーグリッドのAゾーンに位置する。表10に示すように、4つの予測グルコース値を測定グルコース値に近似直線させることにより、高い相関関数、r=0.75が生じる。
【0075】
図7Dは、被検体番号1001のデータを分析するための、方程式40の使用を示す。方程式40は、定数、2つのF(OC)項の間の差、及び2つのF(OC)項の和を含む3項近似直線方程式である。第1の括弧は、2つの光源−検出器間距離r及びrでの局在反射率比を結果としてもたらす2つのF(OC)の間の差である。括弧内の第2項は、乗算を結果としてもたらす2つのF(OC)項の和である。3つのパラメータ近似直線方程式、2つの変数の較正で得られた係数a、a及びaは、方程式40aにおいて与えられる。
[G]=154−529.8(F(OC)@r−F(OC)@r)−1351(F(OC)@r−F(OC)@r) (40a)
【表9】

【0076】
表9に示すように、方程式38及び39は、最良の較正パラメータ及び良好な予測パラメータを生じさせた。
【表10】

【0077】
3項(定数+2酸素消費項)の使用は、7日の期間にわたる糖尿病患者のグルコース濃度変化の較正及び予測モデルを導いた。酸素消費は、局在反射率測定において2つの光源−検出器間距離で計算される。この実施形態は、一人の患者の較正である。モデル中の係数、又はOC関数のタイプは、病状、患者が使用する薬物のタイプ、及び糖尿病の期間次第で、患者によって異なる。
【0078】
本発明の一実施形態は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本実施形態によるグルコースの非侵襲性測定装置の構成を示す図である。
【図2】図1の非侵襲性測定装置の読み取りヘッドの構造を示す図である。
【図3】様々な光源−検出器間距離に関する40℃のプローブを使用した酸素消費関数を示す。0.559mmは菱形、0.879mmは丸、1.318mmは三角、かつ1.758mmはXである。
【図4】40℃のプローブを使用したF(OC)であり、0−90秒の時間ウインドウ、5秒データ点に正規化されたデータ、0.559mmは菱形、0.879mmは丸、1.318mmは三角、かつ1.758mmはX。線は、線形最小二乗近似である。
【図5】40℃に加熱したプローブに関する、時間に対するLn(R/R)のプロットを示し、菱形は592nm、丸は660nm、Xは880nm、かつ三角は940nmである。
【図6】皮膚が、温度を約10℃高めた、加熱したプローブに接触する時の酸素消費率変化のプロフィールのシミュレーションを示す。
【図7A】方程式37を使用する、非侵襲性グルコース測定のクラークエラーグリッド表示である。菱形は較正データ点であり、丸は、予測グルコース値である。線は、予測及び実際のグルコース値の間の近似直線である。
【図7B】方程式38を使用する、非侵襲性グルコース測定のクラークエラーグリッド表示である。菱形は較正データ点であり、丸は、予測グルコース値である。線は、予測及び実際のグルコース値の間の近似直線である。
【図7C】方程式39を使用する、非侵襲性グルコース測定のクラークエラーグリッド表示である。菱形は較正データ点であり、丸は、予測グルコース値である。線は、予測及び実際のグルコース値の間の近似直線である。
【図7D】方程式40を使用する、非侵襲性グルコース測定のクラークエラーグリッド表示である。菱形は較正データ点であり、丸は、予測グルコース値である。線は、予測及び実際のグルコース値の間の近似直線である。
【符号の説明】
【0080】
1…温度制御パック1、2…熱電気モジュール、3…パッド、4…温度コントローラ、5…コンピュータ、6…光源、7…光検出器(信号検出器)、8、9…光ファイバ、11…ビームスプリッタ、12…基準検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強い色の生物学的指標としてヘモグロビン変異体による光散乱及び光吸収に応じて変化する反射光強度を用いたグルコースの非侵襲性測定法において、
皮膚栄養毛細管内のグルコース代謝の変化を誘発させ、そして前記グルコース代謝の変化とともにヘモグロビン変異体濃度を変化させるために、皮膚の正常温度と実質的に異なる温度に調節された局在反射率光学プローブを皮膚に接触させるステップと、
前記信号に対する組織−プローブ適応性の影響が最小限に抑えられるデータ収集用の時間ウインドウを選択するステップと、
様々な光源−検出器間距離、様々な波長、様々な接触時間に対する局在反射光信号の変化を、プローブを皮膚に接触させてから一定時間の間測定するステップと、
グルコース代謝に対する温度の影響の結果として、ヘモグロビンによる光吸収の変化に対する熱刺激の影響に関連する少なくとも1つの関数の変化を計算するステップと、
光散乱及び血流の変化の結果として、光減衰の変化に対する熱刺激の効果に関連する少なくとも1つの関数の変化を計算するステップと、
前記局在反射率の信号から導き出された前記関数の組み合わせと、グルコース濃度との間の較正関係を導き出すステップと、
後続の時間での被検体中のグルコース濃度を予測するために前記測定及び前記確立した較正関係を使用するステップを含む方法。
【請求項2】
前記計算ステップは、複数の波長及び光源−検出器間距離での局在反射率値に対する温度刺激の時間依存効果に関連する少なくとも1つの関数の変化率を計算するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計算ステップは、複数の波長及び光源−検出器間距離での局在反射率値に対する温度の時間依存効果に関連する少なくとも1つの関数の変化程度を計算するステップを含み、前記変化程度は、少なくとも1つの時間ウインドウで計算され、かつ少なくとも2つの隣接時間ウインドウにわたって平均される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記局在反射率プローブ内の最大光源−検出器間距離が2mm以下である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記計算に使用される前記データ点は、皮膚−プローブ接触から少なくとも5秒後に開始する時間ウインドウ内にある請求項1に記載の方法。
【請求項6】
強い色の生物学的指標としてヘモグロビン変異体による光散乱及び光吸収に応じて変化する反射光強度を用いたグルコースの非侵襲性測定装置において、
皮膚栄養毛細管内のグルコース代謝の変化を誘発させ、そして前記グルコース代謝の変化とともにヘモグロビン変異体濃度を変化させるために、皮膚に接触された局在反射率光学プローブの温度を皮膚の正常温度と実質的に異なる温度に調節する手段と、
前記信号に対する組織−プローブ適応性の影響が最小限に抑えられるデータ収集用の時間ウインドウを選択する手段と、
様々な光源−検出器間距離、様々な波長、様々な接触時間に対する局在反射光信号の変化を、プローブを皮膚に接触させてから一定時間の間測定する手段と、
グルコース代謝に対する温度の影響の結果として、ヘモグロビンによる光吸収の変化に対する熱刺激の影響に関連する少なくとも1つの関数の変化を計算する手段と、
光散乱及び血流の変化の結果として、光減衰の変化に対する熱刺激の効果に関連する少なくとも1つの関数の変化を計算する手段と、
前記局在反射率の信号から導き出された前記関数の組み合わせと、グルコース濃度との間の較正関係を導き出す手段と、
後続の時間での被検体中のグルコース濃度を予測するために前記測定及び前記確立した較正関係を使用する手段とを具備するグルコースの非侵襲性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【公開番号】特開2011−206591(P2011−206591A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162533(P2011−162533)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【分割の表示】特願2005−347194(P2005−347194)の分割
【原出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】