説明

グルコースデヒドロゲナーゼおよびその製造方法

【課題】D-グルコースに対する基質特異性が高いグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)および前記GDHを利用する高精度のグルコース測定法を提供する。
【解決手段】バシラス(Bacillus)・メガテリウム(megaterium)由来GDHのアミノ酸配列の259位および/または261位、あるいはそれと同等の位置のアミノ酸がアラニンあるいはバリンに置換されており、かつ、GDH活性を有する変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変異型グルコースデヒドロゲナーゼ、変異型グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子、変異型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法、および変異型グルコースデヒドロゲナーゼを含むグルコース測定用試薬、またはグルコースセンサなどに関する。
【背景技術】
【0002】
グルコースデヒドロゲナーゼ(以下、「GDH」という)は、グルコース定量用酵素として臨床検査や食品分野において試料分析に応用されており、工業的に重要な酵素のひとつである(特許文献1〜3)。
中でも、バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)由来GDHは基礎的にも応用的にも詳細に検討されており、酵素特性、遺伝子クローニング、結晶構造解析、変異体による酵素機能の改良など数多くの研究報告がある(特許文献1〜7,非特許文献1〜7)。
【0003】
しかしながら、GDHはD-グルコース以外の単糖にも作用することが知られている。バシラス・メガテリウム由来GDHの場合、複数のアイソザイムが存在し、それらの酵素特性が調べられているが、いずれの酵素もD-キシロース、D-マンノース、D-ガラクトース、D-グルコサミンにも作用することが報告されている(非特許文献4)。したがって、本酵素を用いたグルコース定量の精度を高めるため、D-グルコースに対する基質特異性の向上したGDH、より具体的には、他の糖に対する相対活性の低下したGDHが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平05−073387
【特許文献2】特許第3220471
【特許文献3】特開2003−310274
【特許文献4】特許第4012257
【特許文献5】特開2008−182984
【特許文献6】特開2008−263951
【特許文献7】特開2008−263952
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Europian Journal of Biochemistry, 174, 485-490, 1988
【非特許文献2】Journal of Biological Chemistry, 264, 6381-6385, 1989
【非特許文献3】Europian Journal of Biochemistry, 186, 389-393, 1989
【非特許文献4】Journal of Bacteriology, 174, 5013-5020, 1992
【非特許文献5】Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 62, 167-169, 1998
【非特許文献6】Journal of Biochemistry, 129, 303-312, 2001
【非特許文献7】Applied and Environmental Microbiology, 71, 3285-3293, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を解決することを課題とする。より詳細には、本発明は、D-グルコースに対する基質特異性が高いGDHを取得すること、さらにこれを利用することにより精度の高いグルコース測定を実現することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明者は探索及び研究を重ね、野生型GDHよりもD-グルコースに対する基質特異性が高く、他の糖に対する相対活性の低下した変異型GDHを造成することに成功した。具体的には、バシラス・メガテリウム由来GDHのカルボキシル末端付近の残基にアミノ酸置換を導入してなる新規なGDHを作成し、このGDHが上記の基質特異性を有することを見出した。さらに、この新規GDHを遺伝子工学的技術により高生産させ、高純度なGDHを安価に大量供給することを可能にし、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の各項に掲げる発明を提供する。
【0008】
項1.バシラス(Bacillus)属由来グルコースデヒドロゲナーゼに変異を導入してなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼであって、配列番号1のアミノ酸配列の259位および/または261位、あるいはそれと同等の位置のアミノ酸がアラニンあるいはバリンに置換されており、かつ、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
項2.以下の(A)〜(E)のいずれかのポリペプチド:
(A)配列番号1のアミノ酸配列において、259位および/または261位のアミノ酸がアラニンまたはバリンに置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B)配列番号1のアミノ酸配列において、
a.259位および/または261位のアミノ酸がアラニンまたはバリンに置換されており、さらに
b.1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された
アミノ酸配列からなり、かつ
配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドよりもグルコースデヒドロゲナーゼ活性の基質特異性が向上しているポリペプチド;
(C)配列番号1のアミノ酸配列において、
a.259位および/または261位のアミノ酸がアラニンまたはバリンに置換されており、さらに
b.1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された
アミノ酸配列からなり、かつ
配列番号1のアミノ酸配列において当該b.の欠失、置換若しくは付加がなされたアミノ酸配列からなるポリペプチド
よりもグルコースデヒドロゲナーゼ活性の基質特異性が向上しているポリペプチド;
(D)配列番号1のアミノ酸配列において、
a.259位および/または261位のアミノ酸がアラニンまたはバリンに置換されており、さらに
b.1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されることにより、
配列番号1のアミノ酸配列において当該a.の置換がなされたアミノ酸配列に対して90%以上の同一性の範囲内で修飾されてなるアミノ酸配列からなり、かつ配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドよりもグルコースデヒドロゲナーゼ活性の基質特異性が向上しているポリペプチド;
(E)配列番号1のアミノ酸配列において、
a.259位および/または261位のアミノ酸がアラニンまたはバリンに置換されており、さらに
b.1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されることにより、
配列番号1のアミノ酸配列において当該a.の置換がなされたアミノ酸配列に対して90%以上の同一性の範囲内で修飾されてなるアミノ酸配列からなり、かつ
配列番号1のアミノ酸配列において当該b.の欠失、置換若しくは付加がなされたアミノ酸配列からなるポリペプチド
よりもグルコースデヒドロゲナーゼ活性の基質特異性が向上しているポリペプチド。
項3.項1又は2に記載される変異型グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子。
項4.項3に記載の遺伝子を含むベクター。
項5.項4に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
項6.項5に記載の形質転換体を培養し、該培養物から変異型グルコースデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とする、変異型グルコースデヒドロゲナーゼの製造方法。
項7.項1または2に記載される変異型グルコースデヒドロゲナーゼを含むグルコース測定用試薬。
項8.項1または2に記載される変異型グルコースデヒドロゲナーゼを用いるグルコース測定方法。
項9.以下の(I)〜(III)のいずれかの工程を含む、グルコースデヒドロゲナーゼの基質特異性を向上させる方法:
(I)配列番号1のグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、259位および/または261位のアミノ酸をアラニンまたはバリンに置換する工程;
(II)配列番号1のアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列(ただし、配列番号1のアミノ酸配列の259位のアミノ酸が欠失されたアミノ酸配列、ならびに259位のアミノ酸がアラニンに置換されているものを除く。)からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、
配列番号1のアミノ酸配列の259位に相当する位置のアミノ酸をアラニンに置換する工程;及び
(III)配列番号1のアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列(ただし、配列番号1のアミノ酸配列の261位のアミノ酸が欠失されたアミノ酸配列、ならびに261位のアミノ酸がバリンに置換されているものを除く。)からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、
配列番号1のアミノ酸配列の261位に相当する位置のアミノ酸をバリンに置換する工程。
項10.以下の(i)〜(iii)のいずれかの工程を含む、基質特異性が向上したグルコースデヒドロゲナーゼの製造方法:
(i)配列番号1のグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、259位および/または261位のアミノ酸をアラニンまたはバリンに置換する工程;
(ii)配列番号1のアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列(ただし、配列番号1のアミノ酸配列の259位のアミノ酸が欠失されたアミノ酸配列、ならびに259位のアミノ酸がアラニンに置換されているものを除く。)からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、
配列番号1のアミノ酸配列の259位に相当する位置のアミノ酸をアラニンに置換する工程;及び
(iii)配列番号1のアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列(ただし、配列番号1のアミノ酸配列の261位のアミノ酸が欠失されたアミノ酸配列、ならびに261位のアミノ酸がバリンに置換されているものを除く。)からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、
配列番号1のアミノ酸配列の261位に相当する位置のアミノ酸をバリンに置換する工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、GDHに所定のアミノ酸置換を導入することによって、GDHが示すグルコースデヒドロゲナーゼ活性の基質特異性を向上させることができる。
また、本発明によれば、グルコース定量用酵素として有用な、基質特異性の高い新規グルコースデヒドロゲナーゼを生産することもできる。
さらに、本発明によれば、精度の高いグルコース測定を行うことできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】出発ポリペプチドと本発明のポリペプチドとの関係を示した模式図である。
【図2】各GDH酵素活性のpH依存性を示すグラフである。
【図3】各GDHの熱安定性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.本発明のポリペプチド
本発明において、GDH活性は、次の方法によって測定する。
【0012】
[GDH活性の測定方法]
0.1Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)2.6ml、1.5M D-グルコース水溶液0.3ml、80mg/mlNAD水溶液0.1mlをキュベットに調製し、37℃で約5分間予備加温する。次いで、酵素溶液(酵素活性の目安:〜1.2U/ml)0.05mlを添加し、ゆるやかに混和後、蒸留水を対照に37℃に制御された分光光度計で、NADH濃度を反映する340nmの吸光度の変化を5〜6分間記録し、その初期直線部分から1分間あたりの吸光度変化を測定する。盲検は酵素溶液の代わりに蒸留水を試薬混液に加えて、同様にして吸光度変化を測定する。このようにして求めた吸光度変化速度から酵素活性を算出する。上記条件下で1分間に1マイクロモルの還元型補酵素(NADH)を生成する酵素量を1単位とする。測定値が0.05単位以上であればGDH活性を有していると評価する。
【0013】
本発明において、「基質特異性が向上した」とは、GDH本来の基質とされるD-グルコースとは別の糖に対する相対活性が低下したことを意味する。ここで「D-グルコースとは別の糖に対する相対活性」とは、D-グルコースとは別の糖を基質として測定した活性値の、D-グルコースを基質として測定した活性値に対する割合をいう。
【0014】
「D-グルコースとは別の糖」は、特に限定されないが、好ましくはD-キシロース、D-マンノース、D-ガラクトース、及びD-グルコサミンからなる群より選択される一種であり、より好ましくは当該群より選択される二種であり、さらに好ましくは当該群より選択される三種であり、さらにより好ましくは当該群に属する全ての糖である。
【0015】
本発明において、GDH活性の基質特異性は、次の方法によって測定する。
【0016】
[GDH活性の基質特異性の測定方法]
活性測定法の試薬中、基質のD-グルコースのみを対象とする糖に置き換え、活性測定を行う。同一の酵素溶液にて測定した、対象とする糖での酵素活性値に対するD-グルコースでの酵素活性値の割合を、基質特異性とする。
【0017】
本発明のポリペプチドは、出発ポリペプチド(starting polypeptide)に所定のアミノ酸置換(本明細書において、「基質特異性関連アミノ酸置換」と表記することがある。)が導入されていることにより、出発ポリペプチドよりもD-グルコースに対する基質特異性が向上しているポリペプチドである(なお、本明細書において、出発ポリペプチドのアミノ酸配列中、基質特異性関連アミノ酸置換が導入されるアミノ酸部位のことを「基質特異性関連アミノ酸置換部位」と表記することがある。)。
【0018】
すなわち本発明のポリペプチドは、出発ポリペプチドよりも他の糖に対する相対活性が低下している。
【0019】
出発ポリペプチドは、GDH活性を示すポリペプチドであればよく特に限定されない。出発ポリペプチドとしては、種々の生物から取得されたGDH(本明細書において「天然型GDH」と表記することがある。)の他、天然型GDHが改変されたもの(本明細書において「改変型GDH」と表記することがある。)、及び人工的に設計されたもの(本明細書において「人工型GDH」と表記することがある。)も使用できる。なお、天然型GDHのうち、野生(自然)集団中で最も高頻度にみられる型のGDHのことを特に「野生型GDH」という。
【0020】
天然型GDHの取得源としては、例えば、細菌、アーキア等が挙げられるが、特に限定されない。細菌としては、例えば、グラム陽性細菌(Firmicutes)、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、等が挙げられるが、特に限定されない。グラム陽性細菌(Firmicutes)の具体例としては、バシラス属、ジオバシラス属、アースロバクター属等が挙げられるが、特に限定されない。プロテオバクテリア(Proteobacteria)の具体例としては、シュードモナス属、バルクホルデリア属等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
天然型GDHとしては、なかでもバシラス・メガテリウム起源のGDHが好ましく、さらには、複数あるバシラス・メガテリウム由来GDHアイソザイムのうち、配列番号1で示されるアミノ酸配列を有する野生型GDHが好ましい。非特許文献4では4種類のアイソザイムが報告されている。配列番号1で示されるアミノ酸配列をコードする遺伝子は配列番号2で示される。バシラス・メガテリウム由来GDHのタンパク質および遺伝子は、非特許文献4に記載の方法にしたがって取得することができる。なお、配列番号1において、アミノ酸の表記は、最初のメチオニンを1として番号付けされている。
【0022】
天然型GDHとしては、ニコチンアデニンジヌクレオチド(NAD)依存性GDH(NADGDH)、またはニコチンアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)依存性GDH(NADPGDH)を好ましく用いることができる。
【0023】
出発ポリペプチドとして使用できる天然型GDHは、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるもの、又は配列番号1で示されるアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(本明細書において、これらを総称して「改変」と表記することがある。)されたアミノ酸配列からなるものであれば好ましい(図1)。ただし、基質特異性関連アミノ酸置換部位となるべきアミノ酸が当該欠失により予め取り除かれてしまっている天然型GDHは出発ポリペプチドとして使用できない。また、当該置換により予め基質特異性関連アミノ酸置換がなされてしまっている天然型GDHも出発ポリペプチドとして使用できない。
【0024】
天然型GDHにおける上記改変の程度は、特に限定されない。改変されるアミノ酸の数の上限としては例えば、50個、40個、25個、15個、10個、及び数個が挙げられる。中でも25個が好ましく、15個がより好ましく、10個がさらに好ましく、数個がよりさらに好ましい。
【0025】
また、天然型GDHにおける上記改変としては、改変がなされることにより、改変がなされる前のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、85%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、90%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、95%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、97%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、及び99%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変等も例示することができる。特に、改変の程度としては、90%以上の同一性の範囲内で修飾されていれば好ましく、95%以上の同一性の範囲内で修飾されていればより好ましく、97%以上の同一性の範囲内で修飾されていればさらに好ましい。なお、アミノ酸同一性は、Lipman−Pearson法(Science, 227, 1435, (1985))により計算される。
【0026】
出発ポリペプチドとして使用できる改変型GDHは、天然型GDHのアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が改変されたアミノ酸配列からなるものである。ただし、基質特異性関連アミノ酸置換部位となるべきアミノ酸が当該欠失により予め取り除かれてしまっている改変型GDHは出発ポリペプチドとして使用できない。また、当該置換により予め基質特異性関連アミノ酸置換がなされてしまっている改変型GDHも出発ポリペプチドとして使用できない。
【0027】
改変型GDHにおける改変の程度は、特に限定されない。改変されるアミノ酸の数の上限としては例えば、50個、40個、25個、15個、10個、及び数個が挙げられる。中でも25個が好ましく、15個がより好ましく、10個がさらに好ましく、数個がよりさらに好ましい。
【0028】
また、改変型GDHにおける改変としては、改変がなされることにより、改変がなされる前のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、85%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、90%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、95%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、97%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、及び99%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変等も例示することができる。特に、改変の程度としては、90%以上の同一性の範囲内で修飾されていれば好ましく、95%以上の同一性の範囲内で修飾されていればより好ましく、97%以上の同一性の範囲内で修飾されていればさらに好ましい。なお、アミノ酸同一性は、天然型GDHにおける改変におけるのと同様の方法により計算される。
【0029】
本発明のポリペプチドは、出発ポリペプチドよりも基質特異性が向上している限り、出発ポリペプチドのアミノ酸配列において、基質特異性関連アミノ酸置換に加えてさらに1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるものであってもよい。この場合におけるアミノ酸の改変のことを「付加的改変」という。
【0030】
付加的改変の程度は、特に限定されない。付加的改変において改変されるアミノ酸の数の上限としては例えば、50個、40個、25個、15個、10個、及び数個が挙げられる。中でも25個が好ましく、15個がより好ましく、10個がさらに好ましく、数個がよりさらに好ましい。
【0031】
また、付加的改変における改変としては、改変がなされることにより、改変がなされる前のアミノ酸配列に対して80%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、85%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、90%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、95%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、97%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変、及び99%以上の同一性の範囲内で修飾されている程度の改変等も例示することができる。特に、改変の程度としては、90%以上の同一性の範囲内で修飾されていれば好ましく、95%以上の同一性の範囲内で修飾されていればより好ましく、97%以上の同一性の範囲内で修飾されていればさらに好ましい。なお、アミノ酸同一性は、天然型GDHにおける改変におけるのと同様の方法により計算される。
【0032】
さらに、本発明のポリペプチドは、グルコースに対する作用性が本質的に維持される限り、上記のようにして得られたポリペプチドにヒスチジンタグなどのタグを結合または挿入させた態様、上記のようにして得られたポリペプチドの少なくとも一方の末端に他のペプチドや他の蛋白質(たとえばストレプトアビジンやシトクロム)を融合させた態様、糖鎖や他の化合物により化学修飾された態様、上記のようにして得られたポリペプチド分子内および/または分子間でジスルフィド結合などにより架橋されたものやリンカーペプチドなどを介して連結されたもの等の態様を含みうる。あるいは、いくつかの上記のようにして得られたポリペプチドを組み合わせて構成したものを含みうる。
【0033】
本願明細書において、アミノ酸は1文字記号で表すことがある。また、アミノ酸の変異の位置については次のように表記することがある。例えば「G259A」は、259位のG(グリシン)をA(アラニン)に置換すること又は置換した改変体を意味する。
また、多重変異体については、同様の原則によって表記したものをプラス(+)でつなげて表記することがある。例えば、「G259A+G261A」は、259位のG(グリシン)をA(アラニン)、261位のG(グリシン)をA(アラニン)に置換すること又は置換した改変体を意味する。
【0034】
本発明のポリペプチドの作用温度は、通常5〜100℃、好ましくは10〜90℃である。
【0035】
本発明のポリペプチドの至適温度は、通常20〜80℃、好ましくは30〜70℃である。
【0036】
本発明のポリペプチドの作用pHは、通常3〜11、好ましくは4〜10である。
【0037】
本発明のポリペプチドの至適pHは、5〜9である。
【0038】
本発明のポリペプチドは、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの無機塩の存在下でより効率的に作用することができる場合がある。この作用効率の観点では、塩化ナトリウムの反応溶液中における存在濃度は、0.01〜2Mが好ましく0.1〜2Mがより好ましく、1〜2Mがさらに好ましい。
【0039】
本発明のポリペプチドは、従来のGDHよりも基質特異性が向上している。このため、例えば、より精度の高いグルコース測定が可能になる等の有用性を有する。
【0040】
本発明のポリペプチドは、遺伝子組換え技術を利用して本発明のポリペプチドをコードするDNAを調製し、これを適当な宿主で発現させることにより得ることもできる。
【0041】
以下、遺伝子組替え技術を利用して、本発明のポリペプチドを製造する方法について説明する。
【0042】
2.本発明のポリペプチドをコードするDNA
本発明のポリペプチドをコードしているDNAは、本発明のポリペプチドをコードしていればよく、特に限定されない。
【0043】
本発明のポリペプチドをコードする遺伝子は、例えば、微生物など種々の起源(由来)より得られる天然型GDHをコードする遺伝子を含むDNA断片を改変することにより得ることができる。具体的には、例えば、細菌、アーキア等が挙げられるが、特に限定されない。細菌としては、例えば、グラム陽性細菌(Firmicutes)、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、等が挙げられるが、特に限定されない。グラム陽性細菌(Firmicutes)の具体例としては、バシラス属、ジオバシラス属、アースロバクター属等が挙げられるが、特に限定されない。プロテオバクテリア(Proteobacteria)の具体例としては、シュードモナス属、バルクホルデリア属等が挙げられるが、これらに限定されない。なかでもバシラス・メガテリウムが好ましい。
【0044】
このような遺伝子はこれらの菌株より抽出してもよく、また化学的に合成することもできる。さらに、PCR法の利用により、天然型GDH遺伝子を含むDNA断片を得ることも可能である。
【0045】
本発明において、天然型GDHをコードする遺伝子を得る方法としては、次のような方法が挙げられる。例えばバシラス・メガテリウム由来の染色体を分離、精製した後、超音波処理、制限酵素処理等を用いてDNAを切断したものと、リニアーな発現ベクターと両DNAの平滑末端または付着末端においてDNAリガーゼなどにより結合閉鎖させて組換えベクターを構築する。該組換えベクターを複製可能な宿主微生物に移入した後、ベクターのマーカーと酵素活性の発現を指標としてスクリーニングして、天然型GDHをコードする遺伝子を含有する組換えベクターを保持する微生物を得る。
【0046】
次いで、上記組換えベクターを保持する微生物を培養して、該培養微生物の菌体から該組換えベクターを分離、精製し、該発現ベクターから天然型GDHをコードする遺伝子を採取することができる。例えば、遺伝子供与体であるバシラス・メガテリウムの染色体DNAは、具体的には以下のようにして採取される。
【0047】
該遺伝子供与微生物を例えば1〜3日間攪拌培養して得られた培養液を遠心分離により集菌し、次いで、これを溶菌させることにより天然型GDH遺伝子の含有溶菌物を調製することができる。溶菌の方法としては、例えばリゾチーム等の溶菌酵素により処理が施され、必要に応じてプロテアーゼや他の酵素やドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の界面活性剤が併用される。さらに、凍結融解やフレンチプレス処理のような物理的破砕方法と組み合わせてもよい。
【0048】
上記のようにして得られた溶菌物からDNAを分離精製するには、常法に従って、例えばフェノール処理やプロテアーゼ処理による除蛋白処理や、リボヌクレアーゼ処理、アルコール沈殿処理などの方法を適宜組み合わせることにより行うことができる。
微生物から分離、精製されたDNAを切断する方法は、例えば超音波処理、制限酵素処理などにより行うことができる。好ましくは特定のヌクレオチド配列に作用するII型制限酵素が適している。
【0049】
クローニングする際のベクターとしては、宿主微生物内で自律的に増殖し得るファージまたはプラスミドから遺伝子組換え用として構築されたものが適している。ファージとしては、例えばエシェリヒア・コリを宿主微生物とする場合にはLambda gt10 、Lambda gt11 などが例示される。また、プラスミドとしては、例えば、エシェリヒア・コリを宿主微生物とする場合には、pBR322、pUC19 、pBluescript などが例示される。
【0050】
クローニングの際、上記のようなベクターを、上述した天然型GDHをコードする遺伝子供与体である微生物DNAの切断に使用した制限酵素で切断してベクター断片を得ることができるが、必ずしも該微生物DNAの切断に使用した制限酵素と同一の制限酵素を用いる必要はない。微生物DNA断片とベクターDNA断片とを結合させる方法は、公知のDNAリガーゼを用いる方法であればよく、例えば微生物DNA断片の付着末端とベクター断片の付着末端とのアニーリングの後、適当なDNAリガーゼの使用により微生物DNA断片とベクターDNA断片との組換えベクターを作製する。必要に応じて、アニーリングの後、宿主微生物に移入して生体内のDNAリガーゼを利用し組換えベクターを作製することもできる。
クローニングに使用する宿主微生物としては、組換えベクターが安定であり、かつ自律増殖可能で外来性遺伝子の形質発現できるものであれば特に制限されない。一般的には、エシェリヒア・コリW3110 、エシェリヒア・コリC600、エシェリヒア・コリHB101 、エシェリヒア・コリJM109 、エシェリヒア・コリDH5αなどを用いることができる。
【0051】
宿主微生物に組換えベクターを移入する方法としては、例えば宿主微生物がエシェリヒア・コリの場合には、カルシウム処理によるコンピテントセル法やエレクトロポーレーション法などを用いることができる。
上記のように得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量の天然型GDHを安定に生産し得る。宿主微生物への目的組換えベクターの移入の有無についての選択は、目的とするDNAを保持するベクターの薬剤耐性マーカー発現する微生物を検索すればよい。
【0052】
上記の方法により得られた天然型GDH遺伝子の塩基配列は、Science ,第214巻,1205(1981)に記載されたジデオキシ法により解読することができる。また、天然型GDHのアミノ酸配列は上記のように決定された塩基配列より推定した。
上記のようにして、一度選択された天然型GDH遺伝子を保有する組換えベクターより、天然型GDH生産能を有する微生物にて複製できる組換えベクターへの移入は、天然型GDH遺伝子を保持する組換えベクターから制限酵素やPCR法により天然型GDH遺伝子であるDNAを回収し、他のベクター断片と結合させることにより容易に実施できる。
天然型GDHをコードする遺伝子は、好ましくは、配列番号2に記載の塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつGDH活性を有するタンパク質をコードするDNAである。
【0053】
本発明において、ストリンジェントな条件としては、2×SSC(300mMNaCl、30mMクエン酸)中で65℃、16時間のハイブリダイゼーション条件が挙げられる。
本発明の遺伝子は、さらに、野生型GDHをコードする遺伝子の改変により得られた変異型GDHをコードする遺伝子について、GDHの発現を向上させるように、コドンユーセージ(Codon usage)を変更したものを含みうる。
【0054】
出発ポリペプチドをコードする遺伝子を改変する方法としては、通常行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換することにより、或いは特定の塩基を挿入または欠失させることにより、改変蛋白質の遺伝情報を有するDNAが作成される。DNA中の塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(Transformer Site−Directed Mutagenesis Kit;Clonetech製,QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、或いはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。
【0055】
3.本発明のポリペプチドをコードするDNAを含むベクター
本発明のポリペプチドをコードするDNAを適当なベクターに連結することによって、該DNAを含有する組換えベクターを得ることができる。ベクターとしては、形質転換する宿主において当該ポリペプチドを発現させ得るものであれば、特に制限されない。例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス等のベクターを用いることができる。具体的には、大腸菌ベクターのpBR322、pUC19、pKK233-2、pET11a等、バチルス属細菌ベクターのpUB110、pC194、pE194、pTHT15、pBD16等、酵母用ベクターYip5、Yrp17、Yep24等、動物細胞用ベクターのpcDNA、pBAC等を例示できる。例えば、エシェリヒア・コリー(Escherichia coli)を宿主微生物とする場合にはpBluescript,pUC18などが使用できる。
【0056】
上記組換えベクターには、形質転換された細胞の選択を可能とするために、マーカー遺伝子が含まれていることが望ましい。当該マーカー遺伝子としては、例えば、宿主の栄養要求性を相補する遺伝子、又は薬剤に対する抵抗遺伝子等を挙げることができる。また、上記組換えベクターには、宿主で上記DNAの発現を可能にするためのプロモーターやその他の制御配列(例えば、エンハンサー配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列等)が含まれていることが好ましい。当該プロモーターとして、具体的にはSV40、CMV、ie1、T7、lac、trp、tac等のプロモーターを例示できる。
【0057】
4.本発明のポリペプチドをコードするDNAを含むベクターで形質転換された形質転換体
作製された改変タンパク質の遺伝情報を有するDNAは、プラスミドと連結された状態にて宿主微生物中に移入され、改変タンパク質を生産する形質転換体となる。
宿主微生物としては、例えば、エシェリヒア・コリー W3110、エシェリヒア・コリーC600、エシェリヒア・コリーJM109、エシェリヒア・コリーDH5αなどが利用できる。
【0058】
宿主微生物に組換えベクターを移入する方法としては、例えば宿主微生物がエシェリヒア属に属する微生物の場合には、カルシウムイオンの存在下で組換えDNAの移入を行なう方法などを採用することができ、更にエレクトロポレーション法を用いても良い。更には、市販のコンピテントセル(例えば、コンピテントハイJM109;東洋紡績製)を用いても良い。
【0059】
5.本発明のポリペプチドの製造方法
例えば上記のようにして得られた形質転換体である微生物は、栄養培地で培養されることにより、多量の改変タンパク質を安定して生産し得る。形質転換体である宿主微生物の培養形態は、宿主の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよく、多くの場合は液体培養で行う。工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。
【0060】
培地の栄養源としては,微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、ラクトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。また、窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。
【0061】
培養温度は菌が成育し、変異型GDHを生産する範囲で適宜変更し得るが、上記のようなGDH生産能を有する微生物の場合、好ましくは20〜42℃程度である。培養時間は条件によって多少異なるが、本発明のポリペプチドが最高収量に達する時期を見計らって適当時期に培養を完了すればよく、通常は6〜48時間程度である。培地のpHは菌が発育し、変異型GDHを生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくはpH6.0〜9.0程度の範囲である。
【0062】
培養物中の本発明のポリペプチドを生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し、利用することもできるが、一般には、常法に従って、本発明のポリペプチドが培養液中に存在する場合はろ過、遠心分離などにより、本発明のポリペプチド含有溶液と微生物菌体とを分離した後に利用される。本発明のポリペプチドが菌体内に存在する場合には、得られた培養物からろ過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いで、この菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また、必要に応じて、EDTA等のキレート剤及び界面活性剤を添加して本発明のポリペプチドを可溶化し、水溶液として分離採取する。
【0063】
上記のようにして得られた本発明のポリペプチド含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、さらに硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈殿法により沈殿せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。その後、吸着剤あるいはゲルろ過剤などによるゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーを行うことにより、精製された本発明のポリペプチドを得ることができる。
【0064】
例えば、セファデックス(Sephadex)ゲル(GEヘルスケアバイオサイエンス)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL−6B(GEヘルスケアバイオサイエンス)、オクチルセファロースCL−6B(GEヘルスケアバイオサイエンス)等のカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
【0065】
上記のようにして得られた精製酵素を、例えば凍結乾燥、真空乾燥やスプレードライなどにより粉末化して流通させることが可能である。その際、精製酵素はリン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液やGOODの緩衝液に溶解しているものを用いることができる。好適なも
のはGOODの緩衝液であり、なかでも、PIPES、MESもしくはMOPS緩衝液が特に好ましい。また、グルタミン酸、グルタミン、リジン等のアミノ酸類、さらに血清アルブミン等を添加することにより本発明のポリペプチドをより安定化することができる。
【0066】
6.本発明のポリペプチドを用いるグルコース測定方法、及び本発明のポリペプチドを含むグルコース測定用試薬
本発明のポリペプチドを用いるグルコース測定方法は、上記の本発明のポリペプチドを用いてグルコースを測定する方法である。
【0067】
グルコースの測定は、適当な緩衝剤、グルコースを含む測定対象、本発明のポリペプチド、及び必要な補酵素等を含む溶液中で、グルコースを本発明のポリペプチドが触媒する脱水素反応によってD-グルコノ-1,5-ラクトンへと変換させ、それと同時に還元される補酵素の量を測定することにより行う。
【0068】
測定対象は、グルコースを含むものであればよく特に限定されない。例えば、血液、血清、血漿、尿などの生体試料、食品や食品原料、植物組織や植物抽出液、化粧品や化粧品原料、医薬品や医薬品原料、微生物培養液や培養細胞などの生物検体等を用いることができる。
【0069】
緩衝剤としては、一般的に使用されるものであれば良く、通常、組成物のpHを5〜10とするものが好ましい。緩衝剤としてさらに好ましくは、ホウ酸や酢酸といった緩衝剤や、BES、Bicine、Bis−Tris、CHES、EPPS、HEPES、HEPPSO、MES、MOPS、MOPSO、PIPES、POPSO、TAPS、TAPSO、TES、TricineといったGood緩衝剤が挙げられる。
測定系には、本発明のポリペプチドの特性に応じてさらに適当な補酵素を添加する。補酵素としては、NAD、NADP、チオNADなどの修飾NADあるいは修飾NADP等が挙げられる。
【0070】
測定開始時における各成分の含有量は、測定対象、使用する本発明のポリペプチドの特性等によって適宜決定される。例えば、測定開始時における各成分の濃度の例として、グルコース0.005〜0.05M、本発明のポリペプチド1〜20mg/L、当該ポリペプチドが必要とする補酵素0.5〜5g/L等が挙げられる。
また、さらに血清アルブミンを含有させてもよい。血清アルブミンの含有量は0.05〜0.5重量%であることが好ましい。使用できるアルブミンとしては、牛血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン(OVA)などが挙げられる。特にBSAが好ましい。
【0071】
脱水素反応は、適当な反応条件で行うことができる。反応温度としては、5〜50℃、好ましくは10〜40℃を挙げることができる。反応pHとしては、3〜11、好ましくは4〜10を挙げることができる。
【0072】
還元された補酵素の量を測定する手段としては、例えば、分光光度計で還元された補酵素に対応する吸光度の変化を測定することによって行うことができるが、これに限定されない。例えば、補酵素としてNADを用いる場合、還元されたNADHに対応する吸光度は340nmである。
【0073】
本発明のポリペプチドを含むグルコース測定用試薬の形態は特に制約されないが、グルコース測定用組成物、および/またはグルコース測定キットとしての形態をとりうる。
上記各形態において、本発明のポリペプチド、グルコース測定用組成物、グルコース測定キットは、液状(水溶液、懸濁液等)、粉末、凍結乾燥など種々の形態をとることができる。凍結乾燥法としては、特に制限されるものではなく常法に従って行えばよい。本発明の酵素を含む組成物は凍結乾燥物に限られず、凍結乾燥物を再溶解した溶液状態であってもよい。
【0074】
さらに上記各形態において、本発明のポリペプチド、グルコース測定用組成物、グルコース測定キットは、その形態や使用方法に応じて、精製された状態であっても良いし、必要により他の成分、例えば界面活性剤、安定化剤、賦形剤など種々の添加物が加えられていても良い。
【0075】
本発明へのそれらの添加物の配合法は特に制限されるものではない。例えば本発明のポリペプチドを含む緩衝液に安定化剤を配合する方法、安定化剤を含む緩衝液に本発明のポリペプチドを配合する方法、あるいは本発明のポリペプチドと安定化剤を緩衝液に同時に配合する方法などが挙げられる。
【0076】
含有される緩衝液としては上記したものが挙げられる。凍結乾燥物中においては緩衝剤の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1%(重量比)以上、特に好ましくは0.1〜30%(重量比)の範囲で使用される。
【0077】
また、さらに血清アルブミンを含有させてもよい。前記の水性組成物に血清アルブミンを添加する場合、その含有量は0.05〜0.5重量%であることが好ましい。
使用できるアルブミンとしては、牛血清アルブミン(BSA)、卵白アルブミン(OVA)などが挙げられる。特にBSAが好ましい。
【0078】
一方、上記各形態においてグルコース測定用組成物ならびにグルコース測定用キットは、血清アルブミン等のタンパク質成分を追加で含有させない構成とすることもできる。
このような構成にすることにより、グルコース測定系における非特異反応が低減する可能性が考えられる。
【0079】
また、変異型GDHと緩衝剤から基本的に成る組成物に、アミノ酸、あるいは有機酸をさらに加えてもかまわない。また、これらを含有するものであれば、水性組成物、凍結乾燥物を問わない。
【0080】
7.本発明のGDHの基質特異性を向上させる方法、及び基質特異性が向上したGDHの製造方法
本発明のポリペプチドでは基質特異性が向上している。このことは、例えば、臨床診断薬でのグルコース定量の精度を高めることができる。
【0081】
本発明は、また、配列表の配列番号1の配列に記載されるアミノ酸配列の259位および/または261位、あるいはそれと同等の位置のアミノ酸をアラニンまたはバリンに置換することを特徴とする、GDHの基質特異性を向上させる方法である。
また、本願発明のさらに別の一つの態様は、配列表の配列番号1の配列に記載されるアミノ酸配列の259位および/または261位、あるいはそれと同等の位置のアミノ酸をアラニンまたはバリンに置換することを特徴とする、基質特異性が向上したGDHの製造方法である。
【0082】
さらには、本発明は、GDHを用いるグルコース測定系において、上記のいずれかに記載のアミノ酸変異を行ったGDHを含有させることを含む、測定精度が向上したグルコース測定用組成物を製造する方法である。
【実施例】
【0083】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0084】
実施例1(染色体DNAの分離)
バシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)IAM1030株の染色体DNAを次の方法で分離した。
同菌株を、バクトトリプトン(ディフコ社製)10g/l、酵母エキス(ディフコ社製)5g/l、NaCl5g/lを加え、NaOHでpHを7.2に調節した培地で30℃、一晩振とう培養した後、遠心分離(8,000rpm、15分間)により集菌した。
遠心チューブ内に残存する培養液をキムワイプで拭き取った後、細胞1gあたり20%シュークロース、100mMトリス−塩酸(pH8.0)、50mM EDTA、0.1% SDSを含んだ溶液15mlに懸濁し、150μlのプロテアーゼK溶液(10mg/ml)と150μlのRNAseA(10mg/ml)とを加え、37℃、12時間保温した。これを等量のクロロホルム/フェノール溶液で処理後遠心分離により水層を分取する操作を3回繰り返した。
得られた水層に600μlの5M NaClを加え混合した後、0.8倍量のイソプロピルアルコールを加え、転倒混和後に出現するDNAを硝子棒に巻き付け精製DNA標品とした。この精製DNAを5mlの1mM EDTAを含んだ10mMトリス塩酸(pH8.0)溶液(以下、TEと略記する)に再溶解し、200μlの5MNaClを加え混合した後0.8倍量のイソプロピルアルコールを加え再抽出したDNAを70%エタノール溶液で洗浄後、風乾の後1mlのTE(トリス塩酸−EDTA)緩衝液で溶解した。
【0085】
実施例2(GDHをコードするDNAを含む組み換えベクターの調製)
バシラス・メガテリウムIAM1030のgdhIII及びgdhIV遺伝子の塩基配列(D10625、D10626;GenBank、EMBL、DDBJ)は非常に相同性が高い。そこで、各遺伝子の上流と下流の配列情報に基づき、gdhIIIは配列番号3に示すセンスプライマーと配列番号4に示すアンチセンスプライマーを、gdhIVは配列番号5に示すセンスプライマーと配列番号6に示すアンチセンスプライマーをそれぞれ合成した。このプライマーセットと、Pfu turbo DNAポリメラーゼとを用い、実施例1で得られたDNAを鋳型として、以下のサイクルでPCRを行った。
ステップ1:94℃、1分間
ステップ2:50℃、1分間
ステップ3:72℃、2.0分間(30サイクル)
得られたPCR産物を1%アガロースゲルにて泳動すると、約1.00kbの大きさの特異的バンドが認められた。それぞれのDNA断片を鋳型として、gdhIIIは配列番号7に示すセンスプライマーと配列番号8に示すアンチセンスプライマーを、gdhIVは配列番号7に示すセンスプライマーと配列番号9にアンチセンスプライマーをそれぞれ合成した。このプライマーセットと、Pfu turbo DNAポリメラーゼとを用い、以下のサイクルでPCRを行った。
ステップ1:94℃、1分間
ステップ2:50℃、1分間
ステップ3:72℃、2.0分間(30サイクル)
得られたPCR産物を1%アガロースゲルにて泳動すると、0.8kbの大きさの特異的バンドが認められた。このDNA断片を、制限酵素NdeI及びXhoIで消化し、このDNA断片を同じくNdeI及びXhoIで消化することにより得られたベクターpET28の開環物とライゲーションした。このようにして、pET28/gdhIII及びgdhIVを得た。各組み換えベクターは、タンパク質のN末端側にヒスチジンタグが付加されるように構築した。この組み換えベクターによりエシェリヒア・コリXL1/Blue株(Stratagene社)を形質転換した。
【0086】
実施例3(塩基配列の決定)
pET28/gdhIII、gdhIV及び変異型gdh遺伝子の約0.8kbpの挿入DNAについて、BigDye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit(アプライドバイオシステムズ社)及びABI3100(アプライドバイオシステムズ社)を用いて塩基配列を決定した。決定した塩基配列(gdhIII、gdhIV)のオープンリーディングフレーム及びこれに対応するアミノ酸配列を、それぞれ配列番号2及び配列番号1に示した。アミノ酸配列から求められるタンパク質の分子量は約28.200であった。
【0087】
実施例4(形質質転換体の作製)
エシェリヒア・コリBL21(DE3)RIL株(Stratagene社)のコンピテントセルをpET28/gdhで形質転換し、形質転換体エシェリヒア・コリBL21(DE3)RIL(pET28/gdh)を得た。
【0088】
実施例5(形質転換体からのGDHの製造)
LB培地100mLを500mLフラスコに分注し、121℃、20分間オートクレーブを行い、放冷後、別途無菌濾過した20mg/mlカナマイシン、34mg/mlクロラムフェニコール(Sigma社)0.1mlを添加した。この培地にLB培地で予め37℃、17時間振とう培養したエシェリヒア・コリBL21(DE3)RIL(pET28/gdh)の培養液20mlを接種し、37℃で6時間通気攪拌培養した。
LB培地900mLを3000mLフラスコに分注し、121℃、20分間オートクレーブを行い、放冷後、別途無菌濾過した20mg/mlカナマイシン、34mg/mlクロラムフェニコール(Sigma社)0.9mlを添加した。この培地に先程の6時間培養したエシェリヒア・コリBL21(DE3)RIL(pET28/gdh)の培養液100mlを接種し、1MのIPTG(Isopropyl-b-D-thiogalactopyranoside)を400μL加え、30℃で16時間通気攪拌培養した。培養液中の菌体を遠心分離により集菌し、BufferA(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、300mM塩化ナトリウム、pH8.0)に懸濁した。菌体懸濁液を超音波で破砕し、遠心分離を行い、上清液を得た。得られた粗酵素液を、BufferAで平衡化したHis-Select HF Nickel Affinity Gel(Sigma社)に供した。素通り画分のタンパク質が完全に流出した後に、BufferB(50mMリン酸ナトリウム緩衝液、300mM塩化ナトリウム、10%グリセロール、pH6.0)により洗浄後、0-400mMイミダゾールによる濃度勾配によって精製を行い、精製酵素標品を得た。本方法により得られたGDH標品は、電気泳動(SDS−PAGE)によりほぼ単一なバンドを示した。
【0089】
実施例6 変異型gdh遺伝子の作製
インバースPCRを使用した変異導入方法(M.J.McPherson,Philip Quirke and Graham R.Taylor(1986)PCR1:A Practical Approach.Oxford University Press)に準じて、アミノ酸配列の259位および/または261位、あるいはそれと同等の位置のアミノ酸をアラニンまたはバリンに置換した変異体を得た。センスプライマー及びアンチセンスプライマーをT4ポリヌクレオチドキナーゼ(Stratagene社)で37℃、30分間反応させ、プライマーのリン酸化を行なった。pET28/gdhIVを鋳型として、A258Fは配列番号17に示すセンスプライマーと配列番号18に示すアンチセンスプライマーを用い、インバースPCRを行った。A258Tは配列番号19に示すセンスプライマーと配列番号18に示すアンチセンスプライマーを用い、インバースPCRを行った。G259Aは配列番号10に示すセンスプライマーと配列番号11に示すアンチセンスプライマーを用い、インバースPCRを行った。G259Vは配列番号12に示すセンスプライマーと配列番号11に示すアンチセンスプライマーを用い、インバースPCRを行った。G261Aは配列番号13に示すセンスプライマーと配列番号14に示すアンチセンスプライマーを用い、インバースPCRを行った。G261Vは配列番号15に示すセンスプライマーと配列番号14に示すアンチセンスプライマーを用い、インバースPCRを行った。G259A+G261AはpET28/gdhIV(G261A)をテンプレートに配列番号16に示すセンスプライマーと配列番号11に示すアンチセンスプライマーを用い、インバースPCRを行った。得られたインバースPCR産物を1%アガロースゲルにて泳動すると、約6.0kbの大きさの特異的バンドが認められた。このDNA断片を、DNA ligation kit Ver.I(Takara社)を用いてセルフライゲージョンを行ない、この組み換えベクターによりエシェリヒア・コリXL1/Blue株(Stratagene社)を形質転換した。
【0090】
実施例7 変異型gdh遺伝子:塩基配列の決定、形質転換体の作製、形質転換体からの変異型GDHの製造
変異型gdh遺伝子の塩基配列決定、形質転換体の作製、形質転換体からの変異型GDHの製造については、実施例3、実施例4、実施例5と同様に実施した。
【0091】
実施例8 各GDHの基質特異性
実施例5、実施例7において製造した各GDHの精製酵素標品を用い、基質特異性を比較した。結果を表1に示す。
【0092】
【表1】

【0093】
表1に示されるように、G259または/およびG261変異体の基質特異性が向上していることが明らかとなった。より具体的には、G259または/およびG261変異体は、野生型GDHと比較してキシロース、マンノース、ガラクトース、グルコサミンに対する反応性が有意に低下した。
さらに、野生型GDHおよび各変異体の至適pH、熱安定性を確認した。結果を図2、図3に示す。G259または/およびG261変異体は、野生型GDHと比較して酸性側での相対活性の向上が見られた。熱安定性については、G261A、G261Vが野生型GDHと比較して安定性の向上が見られた。
以上の通り、本発明者は、同一タンパク質のサブユニット構造を有するGDHの基質との結合に、隣接するサブユニットのカルボキシル末端の重要性を見出した。さらに、カルボキシル末端から1番目または3番目のアミノ酸残基の置換により、野生型GDHよりも他の糖に対する相対活性の低下した変異型GDHを創出できることを見出した。カルボキシル末端から1番目または3番目のアミノ酸残基は、配列表の配列番号1においては261位または259位に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バシラス(Bacillus)属由来グルコースデヒドロゲナーゼに変異を導入してなる変異型グルコースデヒドロゲナーゼであって、配列番号1のアミノ酸配列の259位および/または261位、あるいはそれと同等の位置のアミノ酸がアラニンあるいはバリンに置換されており、かつ、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有する変異型グルコースデヒドロゲナーゼ。
【請求項2】
以下の(A)〜(C)のいずれかのポリペプチド:
(A)配列番号1のアミノ酸配列において、259位および/または261位のアミノ酸がアラニンまたはバリンに置換されたアミノ酸配列からなるポリペプチド;
(B)配列番号1のアミノ酸配列において、
a.259位および/または261位のアミノ酸がアラニンまたはバリンに置換されており、さらに
b.1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された
アミノ酸配列からなり、かつ
配列番号1のアミノ酸配列からなるポリペプチドよりもグルコースデヒドロゲナーゼ活性の基質特異性が向上しているポリペプチド;
(C)配列番号1のアミノ酸配列において、
a.259位および/または261位のアミノ酸がアラニンまたはバリンに置換されており、さらに
b.1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加された
アミノ酸配列からなり、かつ
配列番号1のアミノ酸配列において当該b.の欠失、置換若しくは付加がなされたアミノ酸配列からなるポリペプチド
よりもグルコースデヒドロゲナーゼ活性の基質特異性が向上しているポリペプチド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリペプチドをコードする遺伝子。
【請求項4】
請求項2に記載の遺伝子を含むベクター。
【請求項5】
請求項3に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
【請求項6】
請求項4に記載の形質転換体を培養し、該培養物から請求項1に記載のポリペプチドを採取することを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチドの製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載のポリペプチドを含むグルコース測定用試薬。
【請求項8】
請求項1または2に記載のポリペプチドを用いるグルコース測定方法。
【請求項9】
以下の(I)〜(III)のいずれかの工程を含む、グルコースデヒドロゲナーゼの基質特異性を向上させる方法:
(I)配列番号1のグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、259位および/または261位のアミノ酸をアラニンまたはバリンに置換する工程;
(II)配列番号1のアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列(ただし、配列番号1のアミノ酸配列の259位のアミノ酸が欠失されたアミノ酸配列、ならびに259位のアミノ酸がアラニンに置換されているものを除く。)からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、
配列番号1のアミノ酸配列の259位に相当する位置のアミノ酸をアラニンに置換する工程;及び
(III)配列番号1のアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列(ただし、配列番号1のアミノ酸配列の261位のアミノ酸が欠失されたアミノ酸配列、ならびに261位のアミノ酸がバリンに置換されているものを除く。)からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、
配列番号1のアミノ酸配列の261位に相当する位置のアミノ酸をバリンに置換する工程。
【請求項10】
以下の(i)〜(iii)のいずれかの工程を含む、基質特異性が向上したグルコースデヒドロゲナーゼの製造方法:
(i)配列番号1のグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、259位および/または261位のアミノ酸をアラニンまたはバリンに置換する工程;
(ii)配列番号1のアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列(ただし、配列番号1のアミノ酸配列の259位のアミノ酸が欠失されたアミノ酸配列、ならびに259位のアミノ酸がアラニンに置換されているものを除く。)からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、
配列番号1のアミノ酸配列の259位に相当する位置のアミノ酸をアラニンに置換する工程;及び
(iii)配列番号1のアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列(ただし、配列番号1のアミノ酸配列の261位のアミノ酸が欠失されたアミノ酸配列、ならびに261位のアミノ酸がバリンに置換されているものを除く。)からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するグルコースデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列において、
配列番号1のアミノ酸配列の261位に相当する位置のアミノ酸をバリンに置換する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−103792(P2011−103792A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260394(P2009−260394)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】