説明

グルタミン酸トランスポーター阻害剤

【課題】グルタミン酸トランスポーター阻害剤の提供。
【解決手段】次の一般式(1)


(式中、R1及びR2は、同一又は異って水素原子;ヒドロキシ基;ハロゲン原子;カルボキシル基;ハロゲン原子若しくはヒドロキシ基が置換していてもよいアルキル基などを示し;2個のR3は同一の基であって、水素原子、アルキル基又はフェニル基を示す)で表されるジフェニルブテン誘導体又はその塩を有効成分とするグルタミン酸トランスポーター阻害剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグルタミン酸トランスポーター阻害剤及びグルタミン酸トランスポーター活性の変調に起因する疾患の予防治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタミン酸は興奮性神経伝達物質であり、グルタミン酸トランスポーターは中枢神経においてはグルタミン酸を細胞内に隔離して細胞外の濃度を低値に保ち、神経細胞をグルタミン酸の興奮毒性から保護する役割を果たしている。グルタミン酸作動性シナプスにおいては、シナプス前部から放出されたグルタミン酸は主にグルタミン酸トランスポーターによる取り込みによりシナプス間隙から急速に消失し、シナプス伝達が終結する。グルタミン酸トランスポーターは、シナプス間隙からの急速なグルタミン酸の除去に重要な役割を持つタンパク質である。また、グルタミン酸トランスポーターは、Na+依存性であり、Cl-チャンネルとしても機能しているといわれている。
【0003】
このようにグルタミン酸トランスポーターの機能は、様々な神経疾患(脳卒中、てんかん、アルツハイマー病、エイズ関連の痴呆、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、悪性神経膠腫、神経因性疼痛、統合失調症等)に深く関与していることが知られており、この機能を制御することはこれらの疾患の予防治療に有用であると言われている(非特許文献1)。
【0004】
グルタミン酸トランスポーター阻害剤としては、スレオ−β−ヒドロキシ−アスパルテートが知られているが、その阻害有効濃度は数百μMと高濃度であり、薬剤として使用できるものではない(非特許文献2)。
【0005】
一方、ジフェニルブテン誘導体にはBKチャンネル(Ca依存性Kチャンネル)を調節する作用があることは知られている(非特許文献3)が、これらの化合物のグルタミン酸トランスポーターに対する作用は知られていない。
【非特許文献1】Shigeri Y, Seal RP, Shimamoto K. Molecular pharmacology of glutamate transporters, EAATs and VGLUTs. Brain Res Brain Res Rev. 2004 Jul;45(3):250-65. Review.
【非特許文献2】Bender AS, Woodbury DM, White HS. Beta-DL-methylene-aspartate, an inhibitor of aspartate aminotransferase, potently inhibits L-glutamate uptake into astrocytes. Neurochem Res. 1989 Jul;14(7):641-6.
【非特許文献3】Chem. Pharm. Bull. 53(10)1372-1373(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れたグルタミン酸トランスポーター阻害剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者らは、種々の化合物を用いてグルタミン酸トランスポーターに対する作用を検討してきたところ、下記一般式(1)で表される化合物がpMオーダーという極めて低濃度からグルタミン酸トランスポーターを介するアストロサイトへのグルタミン酸取り込みを阻害し、グルタミン酸トランスポーター阻害剤として有用であり、グルタミン酸トランスポーター活性の変調に起因する種々の疾患の予防治療薬として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の一般式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1及びR2は、同一又は異って水素原子;ヒドロキシ基;ハロゲン原子;カルボキシル基;ハロゲン原子若しくはヒドロキシ基が置換していてもよいアルキル基;又はハロゲン原子若しくはジアルキルアミノ基が置換していてもよいアルコキシ基を示し;2個のR3は同一の基であって、水素原子、アルキル基又はフェニル基を示す)
で表されるジフェニルブテン誘導体又はその塩を有効成分とするグルタミン酸トランスポーター阻害剤及びグルタミン酸トランスポーター活性の変調に起因する疾患の予防治療薬を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
一般式(1)で表される化合物は、グルタミン酸トランスポーターをpMオーダーという極めて低い濃度から阻害し、グルタミン酸トランスポーター活性の変調に起因する種々の疾患、例えば種々の神経疾患、例えば脳卒中、てんかん、アルツハイマー病、エイズ関連の痴呆、ハンチントン舞踏病、筋萎縮性側索硬化症、悪性神経膠腫、神経因性疼痛、統合失調症等の予防治療薬として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のグルタミン酸トランスポーター阻害剤の有効成分は、上記一般式(1)で表される化合物又はその塩である。
一般式(1)中、R1及びR2は、同一又は異って水素原子;ヒドロキシ基;ハロゲン原子;カルボキシル基;ハロゲン原子若しくはヒドロキシ基が置換していてもよいアルキル基;又はハロゲン原子若しくはジアルキルアミノ基が置換していてもよいアルコキシ基を示す。ここでハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が含まれる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。ハロゲン原子が置換したアルキル基としては、ハロゲノC1-6アルキル基が挙げられ、具体例としてはトリフルオロメチル基等が挙げられる。また、ヒドロキシ基が置換したアルキル基としてはヒドロキシC1-6アルキル基が挙げられ、具体例としてはヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基等が挙げられる。
【0013】
アルコキシ基としては、炭素数C1-6のアルコキシ基が挙げられ、直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が含まれる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子が置換したアルコキシ基としては、ハロゲノC1-6アルコキシ基、例えばトリフルオロメトキシ基が挙げられる。またジアルキルアミノ基が置換したアルコキシ基としては、ジ(C1-6アルキル)アミノ−C1-6アルコキシ基が挙げられる。その具体例としては、ジメチルアミノエトキシ基、ジエチルアミノエトキシ基、ジメチルアミノプロピルオキシ基、ジエチルアミノプロピルオキシ基等が挙げられる。
【0014】
1及びR2としては、同一又は異って、水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ジアルキルアミノアルコキシ基、又はカルボキシル基であるのが好ましい。さらに、水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、ジメチルアミノエトキシ基又はカルボキシル基が特に好ましい。
【0015】
一般式(1)中、2個のR1は同一であり、水素原子、アルキル基又はフェニル基を示す。ここでアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が含まれる。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等が挙げられ、特にメチル基又はエチル基が好ましい。
【0016】
3としては、アルキル基又はフェニル基が好ましく、特にメチル基又はフェニル基が好ましい。
【0017】
本発明化合物(1)の塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、乳酸塩等の有機酸塩が挙げられる。また本発明化合物(1)又はその塩は、水和物等の溶媒和物で存在していてもよい。
【0018】
化合物(1)は、例えば次の反応式に従って製造することができる。
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、R1、R2及びR3は前記と同じ)
【0021】
すなわち、ベンゾフェノン(2)とアルカノン(3)とをマクマリー縮合反応に付すことにより化合物(1)が得られる(反応条件等は以下の文献に詳しい: J. E. McMurry, Chem. Rev., 1989, 89, 1513-1524.Carbonyl-Coupling Reactions Using Low-valent Titanium)。縮合反応は、TiCl4や亜鉛の存在下に行なわれる。反応溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロピラン等のようなエーテル系溶媒が用いられる。反応は、室温から溶媒の沸点までの温度で行えばよく、反応時間は30分〜48時間で十分である。
【0022】
なお、R1又はR2がジアルキルアミノアルコキシ基である化合物(1)は、ヒドロキシベンゾフェノンとアルカノンとの縮合で得られたヒドロキシジフェニルブテン類に、ジアルキルアミノアルキルハライドをアルカリの存在下に反応させることにより製造するのが好ましい。ここでアルカリとしては炭酸カリウム等が用いられる。
【0023】
得られたジフェニルブテン誘導体(1)又はその塩は、後記実施例に示すように、pMオーダーという極めて低濃度からグルタミン酸トランスポーター阻害活性を示すことから、グルタミン酸トランスポーターが変調、例えば亢進することに起因する種々の神経疾患の予防治療薬として有用である。
【0024】
本発明の医薬の投与量は成人一日当たり1mgから1g、好ましくは10mgから300mgの範囲である。この一日量を一日1回、あるいは2〜4回にわけて投与することができる。
【0025】
化合物(1)を含有する医薬組成物は投与法に応じ適当な製剤を選択し、通常用いられている各種製剤の調製法にて調製できる。化合物(1)を主剤とする医薬組成物の剤形としては例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤等の固形製剤や、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、油性ないし水性の懸濁液等を経口用製剤として例示できる。
注射剤としては製剤中に安定剤、防腐剤、溶解補助剤を使用することもあり、これらの補助剤を含むこともある溶液を容器に収納後、凍結乾燥等によって固形製剤として用事調製の製剤としてもよい。また一回投与量を一の容器に収納してもよく、また多投与量の一の容器に収納してもよい。
また外用製剤として液剤、懸濁液、乳濁液、軟骨、ゲル、クリーム、ローション、スプレー、貼付剤等を例示できる。
固形製剤としては化合物(1)とともに薬学上許容されている添加物を含み、例えば充填剤類や増量剤類、結合剤類、崩壊剤類、溶解促進剤類、湿潤剤類、潤滑剤類等を必要に応じて選択して混合し、製剤化することができる。
液体製剤としては溶液、懸濁液、乳液剤等を挙げることができるが添加剤として懸濁化剤、乳化剤等を含むこともある。
【実施例】
【0026】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0027】
融点は融点測定器(Yanaco社製)を用いて測定し、未補正である。1H−NMR及び13C−NMRはTMSを内部標準物質としてJEOL−400NMR装置で計った。FAB−MSと高分解能FAB−MSはJMS700−MSTATION(JEOL,日本電子)で測定した。薄層クロマトグラフィー(TLC)はsilica gel HF254(Merck製)を用い、フラッシュクロマトグラフィーは silica gel H(Merck製)を用いた。
【0028】
合成例1
4−(2−エチル−1−フェニル−ブタ−1−エニル)−フェノール(化合物01):
30mLの脱水THFに亜鉛末(0.86g,13.2mmol)をサスペンドし、Ar置換下−5℃で、TiCl4(0.72mL,6.6mmol)を滴下する。混合液を2h還流する。4−ヒドロキシベンゾフェノン(341.1mg,1.7mmol)と3−ペンタノン(0.50mL,5.0mmol)の50mLの脱水THF溶液を一気に加え、反応液を6h還流する。反応液を室温まで冷却し、10% K2CO3水溶液(100mL)を加えて反応を止め、酢酸エチル(3回×80mL)で抽出する。有機層を飽和食塩水(50mL)で洗い、Na2SO4で脱水し、エバポレーションで有機溶媒を留去した。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーに付して化合物01(381mg,88%)を白色固体として得た。
Mp 178.4〜178.5℃. 1H-NMR(CDCl3)δ:6.35-7.26 (m, 9H), 2.14 (q, 2H×2, J=7.2 Hz), 0.99(t, 3H×2, J=7.2Hz). FAB-MS: ([M]+, m/z) 252.2. HR-FAB-Mass: 252.1528.
【0029】
合成例2
{2−[4−(2−エチル−1−フェニル−ブタ−1−エニル)−フェノキシ]エチル}ジメチルアミン 塩酸塩(化合物02):
2−ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩(282.4mg,2.0mmol)とK2CO3 (1.5734g,11.4mmol)をアセトンー水混合液(18mL/2mL)に0℃で加え攪拌し、そこに化合物01(139.1mg,0.55mmol)とK2CO3(421.1mg,3.1mmol)を加える。30分後に還流を開始し24時間環流する。室温に冷却後、濾過し、濾液をエバポレーションで濃縮する。残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィーに付して(EtOAc/Et3N 100:1)、白色固体(88.0mg)を得る。この固体を酢酸エチルに溶解し、HCl・エーテル溶液を加え、沈殿物(化合物02)を得た(95.0mg,48%)。エタノール/AcOEt.から再結晶した。
Mp: 129.5〜130.2℃. 1H-NMR(CDCl3)δ:6.90-7.26 (m, 9H), 4.07 (t, 2H, J=6.0Hz), 2.75 (t, 2H, J=6.0Hz), 2.40 (s, 6H), 2.15(d, 4H, J=7.2Hz), 1.00(t, 6H, J=7.2Hz). FAB-MS ([M+H]+, m/z 324.3. HR-FAB-Mass:324.2321.
【0030】
合成例3
4−[2−エチル−1−(4−ヒドロキシフェニル)−ブタ−1−エニル]−フェノール(化合物03)
化合物01と同様に合成した。
収率99 % Mp: 147.1-147.2℃. 1H-NMR (CDCl3)δ:6.90 (d, 2H×2, J= 8.4Hz), 6.30 (d, 2H×2, J=8.4Hz), 2.14 (q, 2H×2, J=7.4 Hz), 0.98 (t, 3H×2, J=7.4 Hz). FAB-MS m/z 268.2 [M]+. HR-FAB-Mass:268.1493.
【0031】
合成例4
1−[2−エチル−1−(4−メトキシフェニル)−ブタ−1−エニル]−4−メトキシシベンゼン(化合物04)
化合物01と同様に合成した。
収率:86 %. Mp 116.4-116.6℃. 1H-NMR (CDCl3)δ:6.99 (d, 2H×2, J= 8.4 Hz), 6.73 (d, 2H×2, J=8.4 Hz), 3.76 (s, 3H×2), 2.13 (q, 2H×2, J= 7.6Hz), 1.00(t, 3H×2, J=7.6 Hz). FAB-MS m/z 296.2 [M]+. HR-FAB-Mass:296.1823.
【0032】
合成例5
4−(2−エチル−1−フェニル−ブタ−1−エニル)−安息香酸(化合物05)
(1)エステル体の合成:4−(2−エチル−1−フェニル−ブタ−1−エニル)−安息香酸メチルエステル
化合物01と同様に合成した。
収率74%, 1H-NMR(CDCl3) δ:0.99 (t, 3H, J=7.2Hz), 1.03(t, 3H, J=7.2Hz), 2.12 (q, 2H, J=7.6Hz), 2.16 (q, 2H, J=7.6Hz), 3.88 (s,3H),7.12-7.95 (m, 9H), FAB-MS m/z 295.2[M+H]+. HR-FAB-Mass:294.1613.
【0033】
(2)エステルの加水分解
上記のエステル体(673.0mg,2.28mmol)とNaOH(1.20g)を5mL MeOH/3mL H2O混合液に溶解させ、100℃の油浴で4時間加熱還流する。冷却後、pHを3.0に調節してからエーテルで抽出する。有機層をNa2SO4で脱水乾燥後、溶媒を留去して化合物05(646.7mg,2.28mmol)を得る。
収率100%, Mp 210.2-210.9℃. 1H-NMR (CDCl3)δ:11.6(br, 1H), 8.00-8.02 (m, 2H), 7.12-7.30 (m, 7H), 2.15(q, 2H×2, J=7.4 Hz), 1.03 (t, 3H×2, J=7.4Hz). FAB-MS m/z 280.2[M]+. HR-FAB-Mass:280.1442.
【0034】
合成例6
{2−[4−(2−ベンジル−1,3−ジフェニルプロパノール)−フェノキシ]−エチル}−ジメチルアミン 塩酸塩(化合物06)
化合物01の合成に準じて合成した。
収率54 %, Mp 169.2℃. 1H-NMR (CDCl3)δ:6.80-7.25(m, 19H), 4.00(t, 2H, J=6.0Hz), 2.69(t, 2H, J=6.0Hz), 2.30(s, 3H×2), 3.34(s,2H), 3.38(s, 2H). FAB-MS m/z 448.3[M+H]+.
【0035】
試験例1
(方法)
P3ラット脳から大脳皮質を採取し、0.25%トリプシン及び0.01%DNaseで処理し、得られた大脳皮質を10%FBS含有改変DMEM培地でコンフルエントになるまで10〜15日間培養した。フラスコを振とうし、培養細胞からアストロサイト以外の細胞を除去し、再度コンフルエントになるまで7日間培養した。0.1%トリプシン1mM EDTAを添加してアストロサイトを再播種し、さらに7日間培養した。培地を10%HS(馬血清)含有改変DMEM培地に変え、7日間培養した。被検化合物を添加し、1日インキュベートし、L−グルタミン酸取り込み量を測定した。L−グルタミン酸取り込み量は、培地に100μMのL−グルタミン酸を添加し、一時間後の培地中グルタミン酸残存量により算出した。
【0036】
(結果)
(1)L−グルタミン酸クリアランス(グルタミン酸トランスポーター活性)のタイムコースを図1に示す。図1の結果からアストロサイトにおけるグルタミン酸の取り込みは60分で測定するのがよいことが判明した。
【0037】
(2)培養アストロサイト中のグルタミン酸トランスポーターはGLASTが支配的であることが判明した。すなわち、GLT1特異的阻害剤であるDHKでは阻害されず、GLAST及びGLT1の阻害剤であるTHAによって阻害されたことから、培養アストロサイト中のグルタミン酸トランスポーターはGLASTが支配的であることが判明した(図2)。
【0038】
(3)化合物01〜化合物06を添加した場合、1pMから1nMでグルタミン酸の取り込み量が低下し、強力なグルタミン酸トランスポーター阻害活性が認められた。これらの化合物のうち、化合物01の阻害活性を図3に、化合物06の阻害活性を図4に示す。図3及び図4から明らかなように、化合物01及び06は、いずれも1pMという低濃度からグルタミン酸トランスポーター阻害活性を有することがわかる。
また、化合物01及び化合物06についてMTT/LDHアッセイにより細胞障害性を検討したところ、1pM〜1μMの間では細胞障害は認められなかった(図5及び図6)。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】アストロサイトにおけるL−グルタミン酸クリアランスのタイムコースを示す。
【図2】アストロサイトのL−グルタミン酸トランスポーターのサブタイプの同定を示す。
【図3】化合物01のグルタミン酸トランスポーター阻害活性を示す。
【図4】化合物06のグルタミン酸トランスポーター阻害活性を示す。
【図5】化合物01のMTT/LDHアッセイ結果を示す。
【図6】化合物06のMTT/LDHアッセイ結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の一般式(1)
【化1】

(式中、R1及びR2は、同一又は異って水素原子;ヒドロキシ基;ハロゲン原子;カルボキシル基;ハロゲン原子若しくはヒドロキシ基が置換していてもよいアルキル基;又はハロゲン原子若しくはジアルキルアミノ基が置換していてもよいアルコキシ基を示し;2個のR3は同一の基であって、水素原子、アルキル基又はフェニル基を示す)
で表されるジフェニルブテン誘導体又はその塩を有効成分とするグルタミン酸トランスポーター阻害剤。
【請求項2】
1及びR2が水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ジアルキルアミノアルコキシ基、又はカルボキシル基であり、R3がアルキル基又はフェニル基である請求項1記載のグルタミン酸トランスポーター阻害剤。
【請求項3】
次の一般式(1)
【化2】

(式中、R1及びR2は、同一又は異って水素原子;ヒドロキシ基;ハロゲン原子;カルボキシル基;ハロゲン原子若しくはヒドロキシ基が置換していてもよいアルキル基;又はハロゲン原子若しくはジアルキルアミノ基が置換していてもよいアルコキシ基を示し;2個のR3は同一の基であって、水素原子、アルキル基又はフェニル基を示す)
で表されるジフェニルブテン誘導体又はその塩を有効成分とするグルタミン酸トランスポーター活性の変調に起因する疾患の予防治療薬。
【請求項4】
1及びR2が水素原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、ジアルキルアミノアルコキシ基、又はカルボキシル基であり、R3がアルキル基又はフェニル基である請求項1記載のグルタミン酸トランスポーター活性の変調に起因する疾患の予防治療薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−93805(P2011−93805A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32687(P2008−32687)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】